(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点と、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバと、を備えるエネルギ管理システムを制御する方法であって
前記制御部は、
過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を実行するステップと、
前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行するステップと、
前記自律制御が実行された前記負荷設備の自律制御容量の集計と、前記デマンド制御が実行される前記負荷設備のデマンド制御容量の算出を行い、それらの大小を前記指定時間ごとに比較して、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量以上であれば前記自律制御を継続して実行し、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量未満であれば前記デマンド制御を必要と判定して前記デマンド制御容量と前記自律制御容量の差分について追加制御を実行するステップと、
運転時間条件を満たした前記負荷設備を制御候補として制御待ち行列に投入し、投入されるたびに前記制御待ち行列中の前記負荷設備を過剰運転の程度の高い優先順にソートし、そして、前記優先順に前記負荷設備の前記自律制御を実行して前記自律制御容量を集計するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点と、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバと、を備えるエネルギ管理システムを動作させるプログラムであって、
前記制御部に、
過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を行う処理と、
前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を行う処理と、
前記自律制御が実行された前記負荷設備の自律制御容量の集計と、前記デマンド制御が実行される前記負荷設備のデマンド制御容量の算出を行い、それらの大小を前記指定時間ごとに比較して、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量以上であれば前記自律制御を継続して実行し、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量未満であれば前記デマンド制御を必要と判定して前記デマンド制御容量と前記自律制御容量の差分について追加制御を実行する処理と、
運転時間条件を満たした前記負荷設備を制御候補として制御待ち行列に投入し、投入されるたびに前記制御待ち行列中の前記負荷設備を過剰運転の程度の高い優先順にソートし、そして、前記優先順に前記負荷設備の前記自律制御を実行して前記自律制御容量を集計する処理と、を実行させることを特徴とするプログラム。
複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点を備えるエネルギ管理システムにおいて、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバ装置であって、
前記制御部は、
過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を実行し、
前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行するし、
前記自律制御が実行された前記負荷設備の自律制御容量の集計と、前記デマンド制御が実行される前記負荷設備のデマンド制御容量の算出を行い、それらの大小を前記指定時間ごとに比較して、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量以上であれば前記自律制御を継続して実行し、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量未満であれば前記デマンド制御を必要と判定して前記デマンド制御容量と前記自律制御容量の差分について追加制御を実行し、
運転時間条件を満たした前記負荷設備を制御候補として制御待ち行列に投入し、投入されるたびに前記制御待ち行列中の前記負荷設備を過剰運転の程度の高い優先順にソートし、そして、前記優先順に前記負荷設備の前記自律制御を実行して前記自律制御容量を集計する、ことを特徴とするサーバ装置。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな分野で電力コストの削減が命題となっている。特に、高圧受電の需要家では、デマンド時限における受電電力平均値(デマンド)の年間で一番大きい値を次年の基本料金算定基準契約容量の決定要因とされており、需要家は電気料金適正化のためにこの値を抑える工夫をする(デマンド制御)。
【0003】
エネルギ管理システムとしては、例えば、再生可能エネルギ発電装置や蓄電池などが導入された場合においても、正確に時限完了時デマンド値を予測することができる電力デマンド管理システムとして、電力デマンド管理システムが備えるデマンド値予測装置10は、受電部2で受電する電力量の積算値の変化量のみならず、再生エネルギ発電装置5で発電する電力量の積算値の変化量や蓄電池4で充放電する電力量の積算値の変化量をも考慮して、時限完了時デマンド値Pを予測する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、現在のわが国においては、上記のデマンド時限を30分間(時計の正時〜30分、30分〜翌時0分の30分間)とし、このデマンド時限(需要時限)30分間の平均電力をデマンド(需要電力)と呼び、デマンド(kW)=30分間(デマンド時限)内の平均電力としている。毎月の電気料金は、その月の電気使用量に関わらず契約で算出される「基本料金」と、その月の使用量に応じて算出される「電力量料金」とで構成されるが、基本料金は、契約電力が基準となっており、その契約電力は、過去1年間の最大デマンド(最大需要電力)に基づいて算出される。したがって、最大デマンドが大きくなれば契約電力も大きくなるため、最大デマンドの削減が基本料金削減のポイントになる。
【0005】
このため、需要家は、当該1年の最大デマンドを超過することのないように、エネルギ管理システムを設置して、デマンド時限完了時のデマンド値を常時予測し、契約した最大デマンドを超過することのないように制御している。
【0006】
しかしながら、特許文献1を含め、デマンド時限を30分間として予測していることから、よりきめ細かな制御しようとした場合、需要家が我慢を強いられることもあり、また、諸外国では、デマンド時限を例えば15分間とする国もあるなど、既知のエネルギ管理システムでは対応できない、という問題があった。
【0007】
さらに、社会全般、環境への関心の高まりを受けて負荷設備の高効率化の取り組みは広く行われており、巨大ビルや大型工場では中央監視システムによる環境監視、設備監視制御も行われている。その一方で、需要家数が多く自動監視・制御が必要な中小規模事業所においては、人手不足という状況もあり、運用は現場任せ(成り行き任せ)、設備管理は故障発生時の後手後手対応で、エネルギの使用状況は請求書を見てから一喜一憂という状況が実状になっている。これらの問題点を改善するため、需要家フレンドリーな、すなわち、自律的でかつ目標デマンドを達成容易なエネルギ管理システム(本発明者は、これを「EEMS(Environment Energy Management System);環境エネルギ管理システム」と呼んでいる)を提供することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、負荷設備の制御のために需要家に我慢を強いることが少なく、また、制御に関わる時間の設定にかかわりなく円滑な制御が可能なエネルギ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る第1の観点は、エネルギ管理システムであって、複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点と、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバと、を備え、前記制御部は、過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を実行し、前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行する、ことを特徴とする。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記制御部は、前記自律制御が実行された前記負荷設備の自律制御容量の集計と、前記デマンド制御が実行される前記負荷設備のデマンド制御容量の算出を行い、それらの大小を前記指定時間ごとに比較して、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量以上であれば前記自律制御を継続して実行し、前記自律制御容量が前記デマンド制御容量未満であれば前記デマンド制御を必要と判定して前記デマンド制御容量と前記自律制御容量の差分について追加制御を実行する。
【0012】
(3)上記(2)の構成において、前記制御部は、運転時間条件を満たした前記負荷設備を制御候補として制御待ち行列に投入し、投入されるたびに前記制御待ち行列中の前記負荷設備を過剰運転の程度の高い優先順にソートし、そして、前記優先順に前記電気消費設備の前記自動制御を実行して前記自律制御容量を集計してもよい。
【0013】
(4)上記(2)の構成において、前記制御部は、前記指定時間ごとに、前記電力需要拠点の全体について、前回指定時間T
1の受電電力の計量平均、前回指定時間T
1の制御量平均、前記目標デマンド、及び前回指定時間T
1の受電電力の計量変化量を指定時間T
1で除した傾きを用い、式(1)によって次回指定時間T
2の前記デマンド制御容量を算出してもよい。
式(1):次回指定時間T
2の制御容量={(前回指定時間T
1の計量平均)+(前回指定時間T
1の制御量平均)−(目標デマンド)}+(前回指定時間T
1の傾き)×前回指定時間T
1
【0014】
(5)本発明に係る第2の観点は、複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点と、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバと、を備えるエネルギ管理システムを制御する方法であって、前記制御部は、過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を実行するステップと、前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行するステップと、を含む、ことを特徴とする。
【0015】
(6)本発明に係る第3の観点は、複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点と、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバと、を備えるエネルギ管理システムを動作させるプログラムであって、前記制御部に、過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を行う処理と、前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を行う処理、を実行させることを特徴とする。
【0016】
(7)本発明に係る第4の観点は、複数の負荷設備が設置されている電力需要拠点を備えるエネルギ管理システムにおいて、前記電力需要拠点と閉域網を介して接続され、システム全体を制御する制御部を有するサーバ装置であって、前記制御部は、過剰運転となっている前記負荷設備を自律的に制御する自律制御を実行し、前記電力需要拠点に設定された目標デマンドに沿うように前記負荷設備を強制的に制御するデマンド制御の要否について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷設備の制御のために需要家に我慢を強いることが少なく、また、制御に関わる時間の設定にかかわりなく円滑な制御が可能なエネルギ管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0020】
[実施形態]
(エネルギ管理システム1の全体構成)
エネルギ管理システム1は、その要旨として、複数の負荷設備12が設置されている電力需要拠点10と、電力需要拠点10と閉域網8を介して接続され、システム全体を制御する制御部41を有するサーバ4と、を備えており、詳しくは後述するように、制御部41は、過剰運転となっている負荷設備12を自律的に制御する自律制御を実行し、電力需要拠点10に設定された目標デマンドに沿うように負荷設備12を強制的に制御するデマンド制御の必要性について電力料金の基礎となるデマンド時限を区分した指定時間ごとに判定して、必要な場合には次回指定時間においてデマンド制御を実行する。なお、本明細書及び図面において、エネルギ管理システム1の略称としてEEMSと表記することがある。
【0021】
図1を参照して、本実施形態に係るエネルギ管理システムの全体構成について、その概要を説明する。エネルギ管理システム1に参加する顧客PC2は、インターネット3などのネットワークを介してサーバ4(クラウドサーバ)に接続されており、サーバ4は、専用線5、携帯電話網6を介してエネルギ管理システム1の管理者の事務所7に接続されている。一方、管理者の事務所7は、携帯電話網6を介して顧客拠点10(以下、電力需要拠点ともいう)と閉域網8を形成するように接続されている。電力需要拠点10には、管理者の事務所7と通信するボックスサーバ11(Box PC Server)が設けられており、ボックスサーバ11は、電力需要拠点10内に配置されてエネルギ管理の対象となる各種負荷設備12(空調機、全熱交換器、照明器などの負荷)、パワーコンディショニングシステム13(PCS)、蓄電池14(BATT)などを監視、制御する。負荷設備12において監視する項目は、例えば、温度、湿度、照度、CO
2、電力Whなどである。ボックスサーバ11は、電力量計15(WHM)のパルス(Pulse)を用いてデータを収集する。また、電力需要拠点10には、自家発電用として太陽光発電16を屋上に設置けてもよい。
【0022】
(エネルギ管理システム1の動作)
エネルギ管理システム1の動作について、引き続き
図1を参照して、その概要を説明する。エネルギ管理システム1は、監視機能として、当該システムに参加する負荷設備12等の運転状態、故障信号、順潮流/逆潮流、蓄電池残量などを監視する。
【0023】
そして、エネルギ管理システム1は、管理機能として、負荷設備12等の運転状態、警報有無、温度(室内温度・外気温度)、湿度、照度、不快指数、CO
2濃度、受電電力、ローカル電力データを収集し、これらを状態管理の情報として自動制御の判断基準に使用する。
【0024】
制御の概要は、例えば、次のように行う。負荷設備12が空調機のときには、温度(湿度)及び不快指数等の状態により過剰運転がある場合、自律制御として、状態が快適な順(例えば、目標温度差が小さい順。以下、優先順ともいう)に、これを抑制する。また、目標デマンドを維持する場合、デマンド制御として、エネルギ管理システムよりも更に上位の発変電送配電系統からの下げデマンド要請(デマンドレスポンス要請)がある場合、やはり状態が快適な順すなわち優先順で運転を抑制する。
【0025】
負荷設備12が全熱交換機のときには、CO
2濃度に余裕(環境基準の1,000ppmに対して十分低い、例えば、950ppm未満)がある場合、全熱交換機の換気運転を抑制又は停止する。ただし、冷房時期に外気温が低い場合は、積極的に換気して空調機の負担を軽くするようにしてもよい(ナイトパージなど、例えば、冷房時に外気温が23℃未満)。
【0026】
負荷設備12が照明のときには、太陽光の影響などで照明の運転が過剰になる場合、運転を抑制する。また、上位の発変電送配電系統の状況などによる上げ(下げ)デマンド要請及び解除連絡のあるときは、省エネモード運転に切替制御、通常モードへの復帰制御を行う。
【0027】
スケジュール管理については、曜日、時間条件で起動/停止信号を出力できるカレンダータイマー制御運転管理とする。
【0028】
パワーコンディショニングシステム13(PCS)、蓄電池14(BATT)については、受電端の状況(逆潮流の検出、電力・力率・電流)により、PCS13の出力を調節する。さらに、上位の発変電送配電系統からの上げ(下げ)デマンド要請及び解除連絡のある場合、蓄電池14の充放電指示、PCS13の能力制御を行う。
【0029】
個々の負荷設備12に対し、例えば、次のような監視を行う。設備異常信号、設備故障信号を検出したときには、設備ごとに登録されているメンテナンス会社(及びシステムの管理者)に自動でメール連絡する。メンテナンス会社では、WEBメニューにより、運転状態、電力・電流推移により異常や故障内容を推測し、必要な準備をして現地に急行する。この結果、非常に速い対応が可能となり、現地スタッフ(従業員)の管理負担が軽くなり本来の業務に集中できることとなる。また、電力・電流・温度・湿度などにプレアラームの閾値を設定しておくことで、故障に至る前に注意連絡を送ることができ、メンテナンスの効率を上げることができる。
【0030】
(エネルギ管理システム1の機能)
エネルギ管理システム1の機能について、詳細を説明する。なお、以下の表1に示すプログラム上の点数を含め、以下に説明する各種の数値等は本実施形態の理解を補助するための一例であって、本実施形態ひいては本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではないので、留意されたい。
【0032】
データ処理は、例えば、次のようにして行う。サンプリング周期条件を1分、定数条件をkx+a(k及びa;定数、x;計測値)、保存周期を1分/回とし、例えば、15分間平均とする。この15分間平均は、諸外国のデマンド時限である15分間を想定したものであるが、我が国のデマンド時限に合わせ、30分間平均などとしてもよいし、例えば5分間平均など十分に短くしてもよい。
【0033】
本実施形態では、積算パルスをカウントすることで電力の使用状況を把握する。積算パルスについては、ON/OFF判定基準はメーカー仕様によるものとし、1パルスあたりの重みである乗数として、例えば、0.048kWh/pulseとする。
【0034】
電力データは、受電電力の取引計器に応じ、1パルスあたりの重みは、[線路容量÷計器定数]とする。ここで、線路容量は、[(VT一次電圧)×(CT一次電流)÷(計器定数)]により得る(VT:計器用変成器、CT:変流器)。例えば、VT変圧比6,600/110V、変流比200/5A、計器定数50,000pulse/kWhの場合、[(VT比)×(CT比)÷(計器定数)=60×40÷50,000=0.048kWh/pulse]となる。
【0035】
ただし、設備容量を管理するのは電力値(kW)であるため、値を揃えるため、次のように換算する。サンプリング条件(1回/分)及びkWhは1時間の平均電力kWと等しい値であり、1分間の区間平均電力に電力量kWhから換算する場合、1時間が60分間なので、[(1分間区間平均電力量;kWh/分)×60分=(1分間の平均電力;kW)]となる。同様に、汎用電力モニター設定が0.01kWh/pulseの場合、エネルギ管理システムでは、[0.01×60=0.6]により、1パルスあたりの重みは、0.6kWh/pulseと登録する(登録0.6)。パス規格RS485などの通信でデータを収集している場合も60を乗じることとする。データ供給元の仕様は、通常、[(前回取得電力―今回取得電力=サンプリング周期使用電力量)×60]になる。
【0036】
流量データは、流量もサンプリング周期が1分であるため、[(1分間の区間平均流量)=パルス定数×1]とする。例えば、[1m
3/pulse×1=1]と認識(=1分間当たりの流量)する。なお、電力の計測なのか、流量の計測なのかの選択を行う。測温抵抗体データ及びアナログデータは、データ収集端末でA/D変換されるため、この値を取り込む。状態管理は、ON状態について、継続時間条件(登録値)満了でONとみなす。
【0037】
(自律制御とデマンド制御)
エネルギ管理システム1は、前述したように、自律制御を実行するとともに、必要な場合にはデマンド制御を実行するが、制御部は、自律制御が実行された負荷設備の自律制御容量の集計と、デマンド制御が実行される負荷設備のデマンド制御容量の算出を行い、それらの大小を指定時間ごとに比較して、自律制御容量がデマンド制御容量以上であれば自律制御を継続して実行し、自律制御容量がデマンド制御容量未満であればデマンド制御を必要と判定して前記デマンド制御容量と前記自律制御容量の差分について追加制御を実行する。以下、自律制御及びデマンド制御について、説明する。
【0038】
(自律制御)
制御部41は、運転時間条件を満たした負荷設備12を制御候補として制御待ち行列に投入し、投入されるたびに制御待ち行列中の負荷設備12を過剰運転の程度の高い優先順にソートし、そして、優先順に電気消費設備12の自律制御を実行して自律制御容量を集計する。具体的には、次のとおりであり、制御の対象である負荷設備12が空調機である場合を例に説明する。他の負荷設備12についても、それぞれの設備の性状に応じ、同様の考え方で適用できる。制御待ち行列は、温度(室内温度・外気温度)、湿度、照度、不快指数、CO
2濃度などの要素ごとに作成される。
【0039】
負荷設備12である複数の空調機は、
図2に示すように、グルーピングされる。
図2では、群1として空調機がAC1〜AC4の4機、群2として空調機がAC5〜AC8の4機、それぞれグルーピングされた例を示している。群1及び群2には、それぞれ、温度センサ12sとしてTH1,TH2が1機ずつ配置されている。群1、群2は、例えば、部屋ごと、フロアごとなどで区画されている。
【0040】
これら複数の空調機は、
図3に示すように、制御ロジックとして、制御待ち行列の作成及びソートによって、制御される空調機が選定されていく。まず、運転時間条件を満了した空調機が制御待ち行列の中に制御候補として投入される。そして、新たな制御候補が投入されるたびに、各制御候補の空調機は、過剰運転の程度の高い優先順、すなわち、目標温度に近い順にソートされる。
図3では、例として、待ち行列の中に3機の空調機があり、上2機の空調機が適正範囲、最下の空調機が過剰運転(過剰空調)となっている場合を示している。この最下の空調機が制御条件成立ということで、制御される。ソートに際しては、空調機が属する群1の温度センサTH1又は群2の温度センサTH2の計測温度と各々の空調機に設定された目標温度の差が小さい順にソートする。
【0041】
図4は、エネルギ管理システム1の自律制御及びデマンド制御を含む全体の制御フローを示しているが、ここでは、自律制御に関するステップS1からステップS9までを説明する。エネルギ管理システム1は、起動(スタート)されると、空調機などの運転状態を監視し(ステップS1)、運転時間条件を満了した空調機について(ステップS2;“Yes”の場合)、当該空調機を、前述したとおり、制御待ち行列の制御候補へ移動(投入)させる(ステップS3)。運転時間条件を満了していない空調機については(ステップS2;“No”の場合)、運転状態の監視に戻る。そして、制御待ち行列に投入された空調機が設置されている群1又は群2(すなわち部屋やフロアなど)の温度状態を監視し(ステップS4)、空調機ごとに目標温度差でソートする(ステップS6)。ここで、温度状態監視(ステップS4)の際にエネルギ管理システム1の運転が停止された場合には(ステップS5;“No”の場合)、運転状態の監視(ステップS1)の状態に戻る。エネルギ管理システム1の運転が継続された場合には(ステップS5;“Yes”の場合)、計測温度・設定温度比較で過剰空調と判定された空調機について(ステップS7;“Yes”の場合)、当該空調機は、自律制御が実行される(ステップS8)。計測温度・設定温度比較で過剰空調と判定されなかった空調機については(ステップS7;“No”の場合)、温度状態監視(ステップS4)に戻る。このように自律制御された空調機の容量は自律制御容量Zとして集計される(ステップS9)。
【0042】
図5は、
図3及び
図4を補完して、制御待ち行列の処理を説明する図である。前述したように、運転時間条件を満了した空調機(例えば、更衣室空調機、※※室空調機)が制御待ち行列(例えば、設計室空調機、事務所空調機などが既に投入されている)の中に制御候補として投入される。そして、新たな制御候補が投入されるたびに、又は、指定時間の周期ごとに、各制御候補の空調機は、過剰運転の程度の高い優先順、すなわち、目標温度に近い順にソートされる。ここでは、分かり易くするため、目標温度との差が小さい空調機から下から上に順に並べ替えており、優先順の高い下の空調機から、自律制御が実行された空調機の容量を自律制御容量分として集計する。各空調機は、運転時間満了待ちグループから、制御待ちグループ、制御中グループ、復帰待ちグループを経て、運転時間満了待ちグループに復帰する。なお、制御実行前にエネルギ管理システム1が停止(制御していないにもかかわらず運転信号が切れるなど)した場合には、どの段階のグループも運転時間満了待ちグループに移行する。
【0043】
エネルギ管理システム1は、その稼働にあたり、例えば、次のような項目が登録設定される。
・名称
・警報信号アドレス(パルスと同じ。以下同様):不具合信号を監視する。
・運転状態監視アドレス:空欄の場合は状態入力無しの場合、常時運転とみなす。
・冷房運転条件(温度条件・暦条件・接点条件)/暖房運転条件(温度条件・暦条件・接点条件):冷房・暖房各々に指定。外気温条件運転禁止モード設定、暦で使用許可・使用禁止を決めるだけでなく、外室温条件・暦条件のand/orで、冷房では、外気温〇〇度以上の時使用許可、△△度未満では使用禁止、暖房では、外気温××度未満時の使用許可、□□度以上で使用禁止の運用を可能とする(この時の操作機能は遠方発停を使用)。
・自律制御時時間帯別目標温度及び復帰温度:冷房・暖房各々5時間帯別ブロック/日。外気温差制御Y/N○○℃のように、外気温比較での制御を選択及び温度差を設定する(想定使用状態は冷房時に使用…例えば、設定温度差10℃)。
・限界温度:各々の目標温度に対して制御候補になる限界温度を設定する。限界温度を超えて劣悪環境にある場合、制御候補から外す。
・運転時間:○○分(0分〜59分)とし、停止中設備への制御・起動直後の制御を防止する。
・制御時間:○○分(0分〜59分)
・効果容量:〇○○.○○kW(有効桁数;下二桁)
・制御信号アドレス:通常制御アドレス及び起動/停止アドレス
・紐付け温度計測ID(=群ID)、外気温計測ID
・紐付け電力計測ID
【0044】
エネルギ管理システム1は、アナログ制御として、アナログ値を検出してその値(比率)に閾値(上限・下限)を設けることにより、その条件を基準にして制御(起動)信号を出せる機能を備える。閾値には、ON/OFFの幅が無いと、信号が切れたり入ったりするハンチング現象が発生することが想定されるので、その対策として、
図6に示すように、往差(ヒステリシス)を設ける。制御方式は、比例制御・PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)とし、[サンプリング周期=1回/1分]とする。
【0045】
動作内容は、次のとおりである。
・警報管理:警報信号の有無を管理する。
・運転管理:制御対象の運転状態を監視して運転継続時間、停止時間を管理する。
・制御時間:制御対象設備によって異なる“最短制御時間”を設定する。
・待機時間:制御対象設備によって異なる“最短運転時間”を設定する。
・閾値条件:通常時とデマンドモード時の2段階、ヒステリシス条件。
・予測時間:○○分
・効果容量:制御の効果容量を登録する。
【0046】
エネルギ管理システム1は、テナント店舗対応設備の発停を想定した場合、次のようにスケジュール制御を行ってもよい。動作モードとして、カレンダー条件は、金曜日(休日前)、土曜日、日曜日、平日、祝日、店休日の条件とし、時間条件は、各々のカレンダー条件ごとのON時間・OFF時間(抑制運転時間)を設定する。履歴については、サンプリング時刻として、運転・停止・制御の履歴を残す。履歴データは、OFF「0」、ON「1」で表示する。15分間などの換算データは、平均値で表示する。
【0047】
エネルギ管理システム1は、PCS13及び蓄電池14の監視制御を行う。PCS13については、逆潮流防止として、需要家使用電力の急激な減少、自家発電電力の急激な上昇による需要拠点から送配電系統への電力の逆流を防止する。
【0048】
PCS13及び蓄電池14の監視制御は、例えば、
図7に示すような構成で達成できる。すなわち、エネルギ管理システム1は、電力量計15を介して送配電系統と接続され、受電電力パルスが積算パルス入力(EEMS_Pi)として処理されるが、これに加えて、電力変換器17を介して送配電系統と接続され、電力変換器17の出力はアイソレータ18を経由してアナログ入力(EEMS_Ai)として処理される。電力変換器17で送配電系統からの受電電力を管理し、逆潮流が迫ってきたとき、電力変換器17の出力すなわちEEMS_Ai入力が小さくなる。この値が予め設定されている閾値を下回る場合、PCS13の出力を加減して基準値に入るように調節する。その際、ホームエネルギマネジメントシステム(HEMS)の標準プロトコルであるエコーネットライト(ECHONET Lite)通信などでPCS13の出力を加減して逆潮流を防止し、逆潮流しない範囲で、再生可能エネルギ発電量を最大活用する。また、蓄電池14の残量もエコーネットライト通信などで収集し、受電電力状況や外部要請により、充電指示・放電指示(EEMS_command)をPCS13経由で行う。
【0049】
(デマンド監視)
エネルギ管理システム1は、デマンド監視を行う。ここで、デマンドの定義として、デマンド値は、デマンド時限内の区間平均電力(単位;kW)とする。ここで、わが国ではデマンド時限が30分であるのに対し、東南アジアでは15分であるなど国によって異なる(デマンドという基準が無い国もある)。本実施形態に係るエネルギ管理システムはデマンド時限にかかわらず適用できるものであり、以下の説明では、わが国を基準として記載するものの、諸外国の基準にも対応できることに留意されたい。
【0050】
デマンド時限は、時計の0分〜30分・30分〜0分(=60分)の30分間とする。デマンド値は電力の基本料金の基準になる値なのでデマンドを管理基準においている需要家も多いが(ESG対策(環境;Environment、社会;Social、ガバナンス;Governance)もこれに準ずる)、例えば、10kWの負荷設備を30分間連続で使用した時のデマンド値は10kW、1時間連続して使用した場合の消費電力量は10kWhとなる。
【0051】
デマンド値の計量方法は、電力会社の取引計器(電力量計15;デマンドメータ)から供給される電力使用状況に比例した積算パルス入力(EEMS_Pi)をカウントすることで電力の使用状況を把握する。取引計器のパルス仕様は、取引計器定格の定格電圧110V、定格電流5A、計器定数50,000pulse/kWh、パルス幅10msecとなる。
【0052】
パルスカウントによる計量については、[(パルス乗数)=(電力量)/50,000pulse/kWh]となるが、これは、計測器が1kWh計測した時に50,000pulse出力することを意味している。ここで、[(電力量)=(計器用変圧器一次電圧)×(変流器一次電流)×(力率cosθ)×√3×時間]により、提供されるパルス発信源の取引計器の前段に接続されている計器用変圧器(VT)・変流器(CT)が減圧減流している比率(変成比)を乗じることで線路容量(受電系統の電力量)の計測に換算できる。例えば、取引計器付属変成器仕様VT比6,600/110V、変流器CT比200/5Aの場合、[変成比={(6600÷110)×(200÷5)}→2,400倍]となり、線路容量は、2,400kW、110V、5Aで1時間当たり2,400kWhの電力量、この時の出力パルス数は50,000pulse/h提供されることから、積算パルスの電力量は、[2,400÷50,000=0.048kWh/pulse]ということになる。
【0053】
サンプリング周期が1分の場合の例を示すと、前分00秒のカウンター値1,500、今分00秒のカウンター値1,510の場合、この1分間のパルス数は10なので、1分間区間平均電力は、[0.048kWh/pulse×10pulse=0.48kWh]となる。使用電力量に換算する場合、分→時換算として60倍することにより、[0.48×60=28.8kWh]をデマンドの表現としてデマンド値28.8kW、すなわち、『この1分間の区間平均電力(デマンド値)は28.8kW』となる。目標デマンドは、過去データなどにより、登録値として設定される。なお、その他のパルス管理についても、パルス乗数が登録される。
【0054】
(デマンド制御)
エネルギ管理システム1は、自律制御を基本とし制御されるが、受電電力の推移に伴い、目標デマンド設定値などの条件により、前述したようなデマンド制御移行条件が成立した場合、デマンド制御を行う。このため、制御部41は、指定時間ごとに、電力需要拠点の全体について、指定時間T
1の受電電力の計量平均、前回指定時間T
1の制御量平均、目標デマンド、及び前回指定時間T
1の受電電力の計量変化量を指定時間T
1で除した傾きを用い、式(1)によって次回指定時間T
2のデマンド制御容量を算出する。
式(1):次回指定時間T
2の制御容量={(前回指定時間T
1の計量平均)+(前回指定時間T
1の制御量平均)−(目標デマンド)}+(前回指定時間T
1の傾き)×前回指定時間T
1
【0055】
デマンド制御の成立条件の設定にあたって、次のとおり定義する。「デマンド」は、受電電力の30分間(0分〜30分・30分〜0分)の平均電力とする。「最大デマンド」は、1ヶ月間の最大を「月次最大デマンド」、1年間の最大の「最大デマンド」とする。「デマンド制御容量」は、目標デマンドを守るために必要な制御容量(最適調整容量)とする。「デマンド時限」は、デマンドをカウントする時間(国内では30分間)とし、○○時0分〜〇〇時30分のデマンド時限及び○○時30分〜○☆時0分のデマンド時限となる。例えば、14時00分〜14時30分のデマンド時限のデータは、「14時30分デマンド値」と呼ぶ。「制御中容量」は、制御している設備の登録容量合計とする。「デマンド時限内計量平均」は、デマンド時限内の計量平均とする。「デマンド時限内制御量平均」は、デマンド時限内の制御容量平均とする。
【0056】
ここで
図4に戻り、エネルギ管理システム1の制御フローのうち、デマンド制御を含むステップS10からステップS18までを説明する。自律制御容量Zの集計(ステップS9)に引き続き、受電電力が計量され(ステップS10)、受電電力が集計された(ステップS11)後、デマンド制御容量Dが前述の式(1)により算出される(ステップS12)。そして、自律制御容量Zとデマンド制御容量Dの大小関係が比較され(ステップS13)、自律制御容量Zがデマンド制御容量D以上である場合(ステップS13;“Yes”の場合)は自律制御を継続して実行し、自律制御容量Zがデマンド制御容量D未満である場合(ステップS13;“No”の場合)は不足容量分つまりデマンド制御容量Dと自律制御容量Zの差分について追加制御を実行する(ステップS14)。それぞれの場合について総制御容量を集計し(ステップS15)、制御時間・温度が監視される(ステップS16)。監視の結果、復帰条件として、制御時間を満了していること、計測温度が復帰温度条件を満足していること、デマンド制御時は限界温度条件を満足していることが確認されると(ステップS17;“Yes”の場合)、復帰条件成立と判定されて制御信号が停止され(ステップS18)、運転状態の監視(ステップS1)に戻る。復帰条件が成立していない場合(ステップS17;“No”の場合)は、制御時間・温度の監視(ステップS16)に戻る。なお、デマンド制御の対象となる個々の空調機の選定については、前述した制御待ち行列の制御ロジックを用いてもよい。
【0057】
自律制御とデマンド制御との関係の一例を、
図8に示す。
図8では、一例として、制御前電力推移が一定で140kW、自律制御容量Zが20kWで自律制御後の計量が120kW、目標デマンドが100kW、デマンド制御容量Dが60kW(=140kW−80kW)となった場合を示している。デマンド時限は30分、指定時間は5分としており、1回目の指定時間(0分〜5分)では自律制御が実行され、2回目の指定時間(5分〜10分)ではデマンド制御が実行されている。目標デマンドと制御前電力推移との関係から、2回目の指定時間では、デマンド制御容量(60kW)が自律制御容量(20kW)を上回っているため、自律制御容量(20kW)に加えて、デマンド制御として、デマンド制御容量Dと自律制御容量Zの差分(40kW)を追加制御する。制御の対象は、前述したように、制御待ち行列の優先度の高い空調機から順に制御することとなり、その結果、電力需要拠点10にとって最も負担の軽いデマンド制御を行うことができる。このように、計量した電力がどのように制御をした結果であるかを把握した上で、制御容量の過不足を調整した量を制御実行する。また、この制御を連続して行うことにより、デマンド時限に関係なく目標デマンドに沿った推移を達成することができる。
【0058】
デマンド制御容量Dは、前数分間の計量平均と制御量平均と目標デマンド値を用いて、「○○kW制御をした結果、××kWの目標デマンドとの差異があるので、次回はその内容を反映した制御を実行し、これを継続して行う」ことにより、算出される。例えば、制御の指定時間を5分間とした場合、制御容量は、[次回制御容量={(前5分計量平均)+(前5分制御量平均)−(目標デマンド)}+(前5分傾き)×5]によって算出される。なお、「傾き」とは、指定時間(ここでは、5分)当たりの計量の変化量÷経過時間を示す。指定時間は、デマンド時限を5分間としたような場合や、デマンド時限が30分間であってもさらにきめ細かく制御するような場合には、例えば1分間などとしてもよい。
【0059】
参考までに、従来の一般的なデマンド監視を
図9に示す。
図9に示されるように、一般的なデマンド監視は、デマンド時限内のデマンド推移によりデマンド値を予測し、その予測値が目標デマンドを超える場合に警報、制御を行っている。このため、予測に使用するデータが乏しい範囲(通常0分〜5分ないし6分)では、何もしないマスクタイムのような時間が存在し、そのツケを残りのデマンド時限内で帳尻合わせをする必要があるが、本実施形態に係るエネルギ管理システム1では、マスクタイムを解消することが可能となる。
【0060】
[変形例1]
(制御待ち行列におけるアナログ一元管理)
上記した実施形態において説明した制御待ち行列については、アナログ値をもって一元管理するようにしてもよい。
【0061】
エネルギ管理システム1では、前述したとおり、制御対象となる個々の負荷設備12を選定する際に、制御ロジックとして制御待ち行列を用いている。実施形態では、温度(室内温度・外気温度)、湿度、照度、不快指数、CO
2濃度などの要素ごとに制御待ち行列を作成し、過剰運転(空調機ならば過剰空調)の度合いを基準に並べ替えを行っているが、要素間の優先度を決めるため、目標(閾値)に対しての近さ度合いすなわち余裕度(快適比率)で並べ替えた制御待ち行列を用いて一元管理するようにしてもよい。
【0062】
例を挙げると、
図5で説明した制御待ち行列をすべての要素を対象とするアナログ制御用の同一の制御待ち行列として構成し、例えば温度については、次のような余裕度を指標として、運転時間条件を満了した空調機(負荷設備12)を投入して管理する。
・上限管理(例;暖房時の空調管理)の場合:{(計測値)÷(目標値)−1}×100=(余裕度)%
・下限管理(例;冷房時の空調管理)の場合:{1−(計測値)÷(目標値)}×100=(余裕度)%
そして、制御待ち行列に投入されたすべての要素に係る空調機(負荷設備12)を、この余裕度が小さい順にソートする。これにより、温度、CO
2濃度などのすべての要素における計測値と目標値というアナログ値から算出した余裕度を用いて、すべての要素に係るアナログ値の一元管理が可能になる。
【0063】
[変形例2]
(目標デマンドの自動修正)
上記した実施形態において説明した目標デマンドについては、AI機能として、目標デマンド修正自動機能を付加するようにしてもよい。
【0064】
従来のエネルギ管理システムでは、デマンドコントロールを行う場合、(a)効果を出したくて厳しすぎる目標デマンドを設定してしまった、(b)想定以上に使用量が多く予定した目標デマンド維持には制御対象の運転を著しく抑制する必要が生じた、(c)過去のデータを参考に目標デマンド設定を行ったがその後の運用改善などでベースが下がり目標デマンドを大きく下回った推移をしている、などの理由で室内環境の悪化を招き、それ以降はエネルギ管理システムを停止したり、制御が効かないようにしたりするなどの不具合が発生し、本来の目的からは外れてしまうことがあった。
【0065】
特に、上記(a)も(b)も実際の使用状態に対して目標デマンドの設定が低すぎたために起きる不具合であり、目標デマンドを維持しようと厳しく制御を行ったことにより発生する。そこで、本実施形態に係るエネルギ管理システム1では、制御を推奨比率に抑えるため、必要な目標デマンドの変更を自動計算して目標デマンドを書き換えるようにしてもよい。
【0066】
例えば、次のような手順で目標デマンドを書き換えることができる。以下の説明で、(イ)から(ホ)は目標デマンドが厳しすぎる(低すぎる)場合に、(ヘ)は目標デマンドが緩すぎる(高すぎる)場合に、それぞれの目標デマンドを修正する動作を表す。まず、デマンド制御の対象となっている負荷設備12の容量を合計(イ)するとともに、対象となっていない負荷設備12の容量を合計(ロ)する。次に、デマンド制御を実行中の負荷設備12の容量と自律制御を実行中の負荷設備12の容量の差分を計算(ハ)を計算する。一方、エネルギ管理システム1の基本動作条件として想定上限デマンド制御容量を設定しておく(ニ)。そして、(ハ)と(ニ)の差分を計算し(ホ)、(ホ)の値が正の場合、この値を目標デマンドに加算する。過去1年間の個々の最大デマンドを集計し(ヘ)、目標デマンドの値を(ヘ)の値に書き換える。
【0067】
(実施形態の効果)
本実施形態に係るエネルギ管理システムは、上記したように、自律制御とデマンド制御を組み合わせることにより、負荷設備の制御のために需要家に我慢を強いることが少なく、また、制御に関わる時間の設定にかかわりなく円滑な制御が可能なエネルギ管理システムを提供することができる。
【0068】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。