(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0043】
<第1の実施の形態>
<ガスセンサの構成>
図1は、本実施の第1の形態において組立の対象となるガスセンサ(より詳細には、その本体部)1の外観斜視図である。
図2は、係るガスセンサ1の内部の主要構成を示す部分断面図である。本実施の形態において、ガスセンサ1とは、その内部に備わるセンサ素子10(
図2)によって所定のガス成分(例えば、NOx等)を検出するためのものである。
【0044】
なお、センサ素子10は、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質セラミックスからなる素子体を主たる構成材料とする長尺の柱状あるいは薄板状の部材である。センサ素子10は、第1先端部10aの側にガス導入口や内部空所などを備えるとともに、素子体表面および内部に種々の電極や配線パターンを備えた構成を有する。センサ素子10においては、内部空所に導入された被検ガスが内部空所内で還元ないしは分解されて酸素イオンが発生する。ガスセンサ1においては、素子内部を流れる酸素イオンの量が被検ガス中における当該ガス成分の濃度に比例することに基づいて、係るガス成分の濃度が求められる。なお、
図2において正面を向いている面をセンサ素子10の主面S1と称し、この主面S1と垂直でかつ長手方向に沿う面を側面S2と称する。なお、センサ素子10の表面の、第1先端部10aから長手方向における所定の範囲は、保護膜Pで被覆されてなる(
図2参照)。保護膜Pは、熱的な衝撃から第1先端部10a近傍を保護するために設けられる、例えばAl
2O
3などからなる厚みが10μm〜2000μm程度の多孔質膜であり、耐熱衝撃保護層とも称される。保護膜Pは、その目的に照らして、50N程度までの力に耐え得るように形成されるのが好ましい。ただし、
図2および以降の各図における保護膜Pの形成範囲はあくまで例示であって、実際の形成範囲は、センサ素子10の具体的構造に応じて適宜に定められる。
【0045】
ガスセンサ1の外側は、主として、第1カバー2と、固定ボルト3と、第2カバー4とから構成される。
【0046】
第1カバー2は、センサ素子10のうち、使用時に被検ガスに直接に接触する部分、具体的には、ガス導入口11や閉空間12(緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12c)などが備わる第1先端部10aを保護する、略円筒状の外装部材である。なお、
図2および以降の図面においては、理解の助けのために、ガス導入口11および閉空間12(緩衝空間12a、第1内部空所12b、第2内部空所12c)が主面S1に形成されているように示しているが、実際には、これらの部位は、主面S1において露出しているわけではなく、ガス導入口11がセンサ素子10の
図2における最下端部である第1先端部10aにおいて開口しているのを除き、それぞれ、センサ素子10の内部に設けられてなる。
【0047】
また、より詳細には、第1カバー2は、外側カバー2aと内側カバー(図示省略)との2層構造となっている。外側カバー2aと内側カバーは、それぞれ、一方側が有底の円筒状をしているとともに、側面部分に気体が通過可能な複数の貫通孔が設けられてなる。なお、
図1には、外側カバー2aに設けられた貫通孔H1を例示しているが、これはあくまで例示であって、貫通孔の配置位置および配置個数は、第1カバー2の内部への被測定ガスの流入態様を考慮して適宜に定められてよい。
【0048】
固定ボルト3は、ガスセンサ1を測定位置に固定する際に用いられる環状の部材である。固定ボルト3は、ねじ切りがされたボルト部3aと、ボルト部3aを螺合する際に保持される保持部3bとを備えている。ボルト部3aは、ガスセンサ1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット部にボルト部3aが螺合されることで、ガスセンサ1は、第1カバー2の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。
【0049】
第2カバー4は、ガスセンサ1の他の部位を保護する円筒状部材である。第2カバー4の端部からは、ガスセンサ1と図示しない駆動制御部とを電気的に接続するためのケーブルCが延在している。
【0050】
図2は、ガスセンサ1の内部構成、より具体的には、ガスセンサ1から、
図1に示した第1カバー2と、固定ボルト3と、第2カバー4とを除いた構成を示している。
【0051】
図2に示すように、ガスセンサ1の内部においては、センサ素子10のうち、ガス導入口11等が備わる第1先端部10aとケーブルCとの接続端子13などが備わる第2先端部10bとを除く部分に、ワッシャー7と、3つのセラミックサポータ8(8a、8b、8c)と、2つの圧粉体9(9a、9b)とが、それぞれ、センサ素子10が軸中心に位置する態様にて環装されている。セラミックサポータ8は、セラミックス製の碍子である。一方、圧粉体9は、タルクなどのセラミックス粉末を成型したものである。なお、以降の説明においては、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9を環装部品と総称することがある。
【0052】
図3は、ワッシャー7と、セラミックサポータ8(8a、8b、8c)と、圧粉体9(9a、9b)とをセンサ素子10に環装する様子を概略的に示す図である。
【0053】
係る環装は、
図3に示すように、概略、センサ素子10の保護膜Pが設けられていない側の端部(第2先端部10b)を、セラミックサポータ8c、圧粉体9b、セラミックサポータ8b、圧粉体9a、セラミックサポータ8a、ワッシャー7の順に挿入することによって実現される。各部材は円板状または円柱状をなしているが、係る環装を実現するため、ワッシャー7の軸中心位置には、円形状の貫通孔7hが設けられており、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cにはそれぞれ、センサ素子10の断面形状に応じた矩形状の貫通孔8ah、9ah、8bh、9bh、8chが設けられている。これらの貫通孔が、センサ素子10と嵌め合わされることで、各部材がセンサ素子10に環装される。なお、セラミックサポータ8cの貫通孔8chと反対側の部分は、貫通孔8chよりも大きな開口を有する開口部8ch’となっている。また、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、同軸に配置される。
【0054】
なお、気密性の確保の観点から、セラミックサポータ8の貫通孔と圧粉体9の貫通孔とは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が0.25mm〜0.35mmであるように、そして、寸法公差が0.1mmであるように構成される。一方、ワッシャー7の貫通孔7hは、センサ素子10の設計上の断面サイズとの差が最低でも1mm以上1.3mm以下であるように設けられる。また、ワッシャー7と、セラミックサポータ8と、圧粉体9とは、外径の値の差が最大でも0.35mm程度に収まるように構成されてなる。
【0055】
また、
図2に示すように、ワッシャー7、セラミックサポータ8(8a、8b、8c)、および圧粉体9(9a、9b)の外周には、セラミック製の円筒状部材であるハウジング5と金属製の円筒状部材である内筒6とが一体となった円筒状の筒状体(内筒溶接品)30が環装されてなる。以降の説明においては、係る筒状体30が環装された構成のものを組立体40と称する。
【0056】
筒状体30は、内筒6の一端部に備わる、外側へと屈曲する屈曲部6aが、ハウジング5の端面5sに溶接されることで、一体に構成されてなる。また、ハウジング5と内筒6とは、略同じ内径を有するとともに、同軸に接続されてなる。なお、筒状体30の内径は、各環装部品の最大外径の設計値よりも大きく設定されている。
【0057】
また、ハウジング5内部の一方端側にはテーパー部5cが設けられてなり、内筒6のワッシャー7の直上の位置には、内側に向けて窪んだ凹部6bが形成されてなる。これらテーパー部5cと凹部6bとによって、センサ素子10に環装されたワッシャー7、セラミックサポータ8(8a、8b、8c)、および圧粉体9(9a、9b)が筒状体30の内部に係止されてなる。
【0058】
より詳細には、圧粉体9は環装後に圧縮されており、センサ素子10と密着している。また、凹部6bは、圧粉体9を圧縮させたうえで設けられてなる。圧粉体9とセンサ素子10との密着状態が実現されてなることで、筒状体30の内部においては、センサ素子10が固定されてなるとともに、センサ素子10のガス導入口11等が備わる第1先端部10a側とケーブルCとの接続端子13などが備わる第2先端部10bとの間が封止される。これにより、センサ素子10の第1先端部10aが接する、被検ガス(被測定ガス)が存在する被測定ガス空間と、第2先端部10bが接する例えば大気である基準ガスが存在する基準ガス空間との間の気密性が確保される。凹部6bは、圧粉体9の圧縮状態を維持するために設けられている。
【0059】
このような構成を有する組立体40が第1カバー2、固定ボルト3、および第2カバー4にて被覆されたものが、ガスセンサ1である。具体的には、ハウジング5の先端の筒状部5aには、第1カバー2が接続される。また、ハウジング5の外周には、突起部(フランジ部)5bと接触する態様にて固定ボルト3が環装される。さらに、係る環装によって形成される、固定ボルト3とハウジング5との間の環状の溝部に嵌め込む態様にて、第2カバー4が取り付けられる。
【0060】
以上のような構成を有することで、ガスセンサ1では、所定位置に取り付けられた状態において、センサ素子10の第1先端部10aの周りの雰囲気(第1カバー2内の雰囲気)と外部の雰囲気とが完全に遮断されるようになっており、これにより、被検ガス中における対象ガス成分の濃度を精度良く測定できるようになっている。
【0061】
<組立体の組立手順>
次に、本実施の形態において行う、組立体40の組立手順について説明する。
図4は、係る組立を行う組立装置100の概略的な構成を示すブロック図である。
【0062】
組立装置100は、CPU101a、ROM101b、RAM101c等から構成され組立装置100全体の動作を制御する制御部101と、組立装置100に対して種々の実行指示などを与えるためのスイッチやボタン、タッチパネルなどからなる入力インタフェースである操作部102と、組立装置100の種々の動作メニューや動作状態などを表示するディスプレイや計器類などの表示部103と、組立装置100の動作プログラム104pや図示しない動作条件データなどが格納される記憶部104とを備える。組立装置100においては、動作プログラム104pが制御部101にて実行されることにより、以下に示す一連の組立動作が自動処理にて行われる。
【0063】
組立装置100は、さらに、実際の組立動作を担う構成要素として、素子ダミー121の昇降動作を担うダミー昇降機構120と、環装部品待機部131から環装部品を所定の位置にまで搬送する環装部品搬送機構130と、ハウジング固定治具141の動作を担うハウジング固定治具駆動機構140と、素子待機部151からセンサ素子10を所定の位置にまで搬送する素子搬送機構150と、素子案内治具161の動作を担う素子案内治具駆動機構160と、反転治具171による中間体40β(後述)の反転動作を担う反転機構170と、封止治具181の昇降動作を担う封止治具昇降機構180と、カシメ治具191の動作を担うカシメ治具駆動機構190と、完成した組立体40を組立体待機部201まで搬送する組立体搬送機構200とを備える。
【0064】
図5ないし
図9は、係る組立装置100を用いて組立体40を組み立てる際の手順を説明するための、組立体40の組立途中の様子を示す模式断面図である。なお、
図5ないし
図9においては、鉛直方向上向きをz軸正方向と表している。
【0065】
まず、
図5(a)に示すように、支持台110に素子ダミー121が挿通される。
【0066】
支持台110は、組立体40の組立工程において環装部品を下方から支持するための部材である。支持台110は、鉛直方向上端側に平坦な水平面110sを有するとともに、鉛直方向に沿って設けられてなる、素子ダミー121が挿通される貫通孔110hを有する。
【0067】
素子ダミー121は、長手方向に垂直な断面の形状が、センサ素子10の長手方向の断面形状に類似する、センサ素子10と同様の長尺板状をなす部材である。素子ダミー121は、
図5において図示しないダミー昇降機構120によって鉛直方向に昇降自在とされてなる。ただし、素子ダミー121は、センサ素子10のようなセラミックスにて設けられる必要はなく、耐久性や耐摩耗性などを勘案した適宜の材料にて設けられてよい。素子ダミー121は、セラミックサポータ8、および、圧粉体9の貫通孔よりも小さいもののセンサ素子10よりもわずかに大きい厚みおよび幅を有してなる。素子ダミー121は、ダミー昇降機構120によって支持台110の鉛直下方側から支持台110へと挿通され、鉛直方向に長手方向を有するように配置される。このとき、ダミー昇降機構120は、素子ダミー121を鉛直方向に長手方向を有するように配置するダミー配置手段として機能している。係る場合において、素子ダミー121は、その鉛直方向上端部分と支持台110の水平面110sとの距離が、全ての環装部品の厚みの総和よりも大きくなる位置にまで、挿入される。
【0068】
係る素子ダミー121の挿入が完了すると、続いて、素子ダミー121に環装部品が環装され、これに続いて筒状体30が環装される。
【0069】
まず、あらかじめ装置外部から搬入されて環装部品待機部131に待機させられていた環装部品を、
図5において図示しない環装部品搬送機構130が、ワッシャー7、セラミックサポータ8a、圧粉体9a、セラミックサポータ8b、圧粉体9b、セラミックサポータ8cの順に素子ダミー121のところまで搬送し、さらに、それぞれの部品の貫通孔を素子ダミー121に嵌め合わせる。これによって、
図5(b)に示すように、素子ダミー121に順次に嵌め合わされた各環装部品が、支持台110の上端部によって鉛直下方から支持された状態が、実現される。このとき、環装部品搬送機構130は、環装部品の貫通孔を素子ダミー121に嵌合させる環装部品嵌合手段として機能している。
【0070】
係る環装が完了すると、続いて、環装部品搬送機構130が、同じく装置外部から搬入されて環装部品待機部131に待機させられていた筒状体30を、環装部品が環装された素子ダミー121の上方へと搬送し、さらに、内筒6を鉛直方向下側に向けた姿勢にて筒状体30を下降させて、環装部品の外周に嵌め合わせる。これによって、
図5(c)に示すように、筒状体30が嵌め合わされた環装部品が、支持台110の上端部によって鉛直下方から支持された状態が実現される。このとき、環装部品搬送機構130は、筒状体30を環装部品の外周に嵌合させる筒状体嵌合手段として機能している。
【0071】
より詳細には、環装部品搬送機構130は、ハウジング5の突起部5bがハウジング固定治具141を構成する支持部141aに上方から当接するまで、筒状体30を下降させる。係る当接によって、筒状体30は支持部141aによって鉛直下方から支持されるようになる。換言すれば、鉛直方向における筒状体30の高さ位置は支持部141aによって規定されてなる。そして、係る態様にて突起部5bが支持部141aによって鉛直下方から支持された後、
図5において図示しないハウジング固定治具駆動機構140が、図示しない所定の退避位置に退避していたハウジング固定治具141の可動部141bを、矢印AR1にて示すように、鉛直上方から突起部5bの方へと下降させて突起部5bに当接させる。これによって、
図5(c)に示すように、ハウジング固定治具141によってハウジング5の突起部5bが挟持固定される。すなわち、ハウジング5を含む筒状体30がハウジング固定治具141によって固定された状態が実現される。
【0072】
なお、環装部品搬送機構130による、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9の搬送および素子ダミー121への嵌め合わせ、および、その後に行うそれら環装部品の外周への筒状体30の嵌め合わせは、環装部品搬送機構130が、それぞれの部品の形状や材質に応じた構造や材質を有する相異なる搬送アーム等を備え、それら搬送アーム等を用いて実現される態様であってよい。
【0073】
また、ハウジング固定治具141を構成する支持部141aと可動部141bの形状は、鉛直上下方向からハウジング5の突起部5bを挟持固定できるものであれば、特に限定されない。例えば支持部141aおよび可動部141bがそれぞれに、対称な形状を有する1対の部材から構成されていてもよいし、平面視C字状やU字状をなす一の部材から構成されていてもよい。また、支持部141aと可動部141bとが相異なる形状を有していてもよい。
【0074】
上述した態様にてハウジング5を含む筒状体30が固定されると、続いて、センサ素子10が、
図6(a)に示すように保護膜Pが形成された側の端部(第1先端部10a)を上端側とする姿勢で、素子ダミー121と一直線上に並ぶように素子ダミー121に当接配置される。係るセンサ素子10の配置は、
図6において図示しない素子搬送機構150が、あらかじめ素子外部から搬入されて素子待機部151に待機させられていたセンサ素子10を、保護膜Pと接触しない態様にて素子ダミー121の上方へと搬送し、さらに、
図6(a)にて矢印AR2にて示すように素子ダミー121の鉛直上方において下降させ、素子ダミー121の上端に当接させることによって実現される。素子搬送機構150は、当該位置にてセンサ素子10を保持する。このとき、素子搬送機構150は、センサ素子10を素子ダミー121の上端部に当接配置する素子配置手段として機能している。また、
図6以降の各図においては、保護膜Pの厚みを誇張しており、実際の保護膜Pの厚みは、以降において説明する環装部品や筒状体30の環装に支障が無い程度となっている。
【0075】
なお、素子搬送機構150の具体的な構成は、保護膜Pと接触しない態様でのセンサ素子10搬送および保持が好適に行える限りにおいて、特に限定されない。
【0076】
係るセンサ素子10の配置がなされると、
図6において図示しない素子案内治具駆動機構160が作動することにより、
図6(a)において矢印AR3にて示すように、素子案内治具161がセンサ素子10の側方位置に配置される。素子案内治具161は、次の工程でセンサ素子10を鉛直下方に降下させる際にセンサ素子10を支持および案内するために配置されるものである。それゆえ、素子案内治具161のセンサ素子10と対向する面は、センサ素子10が接触しても傷を付けることのない材質にて形成されてなり、センサ素子10と近接または接触する位置において鉛直方向に延在するように配置される。
【0077】
素子案内治具161が配置されると、素子搬送機構150によるセンサ素子10の保持は解除され、センサ素子10がその下端部(第2先端部10b)を素子ダミー121によって支持された状態となるとともに、
図6において図示しないダミー昇降機構120が再び作動することにより、
図6(b)において矢印AR4にて示すように、素子ダミー121が鉛直下方へと下降させられる。すると、係る下降に呼応して、下端部(第2先端部10b)を素子ダミー121によって支持されていたセンサ素子10も鉛直下方へと下降していく。これにより、環装部品の貫通孔内においては素子ダミー121とセンサ素子10とが順次に入れ替わっていき、結果として、センサ素子10に環装部品が環装された状態が実現される。このとき、ダミー昇降機構120は、センサ素子10に環装部品の貫通孔を嵌め合わせる素子嵌合手段として機能していることになる。
【0078】
係る態様によれば、環装部品は常に、素子ダミー121もしくはセンサ素子10に環装された状態となっているので、環装部品に位置ずれが生じてセンサ素子10が組み込めないという不具合の発生が、好適に抑制される。
【0079】
係るセンサ素子10の下降が一定程度進行し、素子案内治具161による支持および案内がなくともセンサ素子10が鉛直下方に下降していくようになると、素子案内治具駆動機構160が再び作動して、
図6(b)において矢印AR6にて示すように、素子案内治具161をセンサ素子10から離隔させる。これは、保護膜Pが素子案内治具161に接触しないようにするためでもある。
【0080】
素子ダミー121を下降させることによるセンサ素子10の下降は、
図6(c)に示すように、センサ素子10がワッシャー7を貫通し、かつ、センサ素子10の上端部(第1先端部10a)の近傍がハウジング5の上端の位置に到達する状態まで行う。なお、センサ素子10の上端部のハウジング5からの具体的な突出の度合いは、適宜に定められてよいが、後述するように、最終的に組立体40が得られるまでの間において、センサ素子10は所定の位置に位置決めされるようになっている。
【0081】
センサ素子10の下降が完了すると、
図7において図示しない反転機構170が、センサ素子10の挿入までが行われた組立途中の組立体40(以下、これを中間体40βと称する)の姿勢を上下反転させる。
【0082】
具体的には、まず、ハウジング固定治具141による固定の解除(ハウジング固定治具141の退避)と同時に、反転機構170が反転治具171を駆動し、
図7に示すように、反転治具171に、センサ素子10の挿入までが行われた組立途中の組立体40(以下、これを中間体40βと称する)を側方から保持させる。より詳細には、ハウジング5の側方からの保持が行われる。
【0083】
続いて、反転機構170が、矢印AR7に示すように、中間体40βを保持している反転治具171を中間体40βともども180°回転させる。これによって、中間体40βの姿勢が上下反転される。このとき、反転治具171と反転機構170とが、中間体40βの姿勢を上下反転させる反転手段として機能していることになる。なお、反転治具171および反転機構170の具体的な構成は、中間体40βの姿勢反転が好適に行える限りにおいて、特に限定されない。
【0084】
さらに、反転機構170は、係る姿勢反転に連続して、中間体40βを保持した状態を保ちつつ反転治具171を移動させることで、反転によって最下端部となっている、保護膜Pで被覆されてなるセンサ素子10の第1先端部10aが封止補助治具111の鉛直方向上端部に接触するように、中間体40βを配置させる。
【0085】
封止補助治具111は、後工程として行われる圧粉体9(9a、9b)の圧縮による封止に際して、センサ素子10を位置決めする(センサ素子10の位置ずれを抑制する)ための部材である。封止補助治具111は、その鉛直方向上端部に、上方から作用する衝撃(荷重)に対する緩衝能(耐衝撃能)を有する部材(緩衝材)からなる衝撃緩衝部112を有する。具体的には、衝撃緩衝部112は、
図7にて矢印AR8にて示すように、作用する衝撃(荷重)の大きさに応じて鉛直方向に変形する(縮む)ことにより、作用した作用する衝撃(荷重)を和らげることができるように設けられてなる。そして、上述した姿勢反転後の中間体40βの配置は、保護膜Pで被覆されてなるセンサ素子10の第1先端部10aがこの衝撃緩衝部112に接触する態様にてなされる。
【0086】
衝撃緩衝部112は、ロックウェル硬さ(HRC)が1以上200以下の材料にて、鉛直方向において0.1mm以上1.0mm以下程度の厚みを有するように設けられる。これらをみたすことで、組立装置100においては、後述する封止治具181による封止の際に、保護膜Pおよびセンサ素子10に加わる衝撃の緩和と、センサ素子10の変位の抑制とが、好適に実現される。衝撃緩衝部112の材料としては、例えばポリプロピレンに代表されるような樹脂系材料が例示される。また、衝撃緩衝部112は、緻密に設けられてもよいし、発泡体などのような多孔体として設けられてもよい。
【0087】
係る態様にて中間体40βの姿勢反転および封止補助治具111上への配置がなされると、続いて、
図8に示すように、封止治具181を用いた圧粉体9(9a、9b)の圧縮による、中間体40β内部の封止がなされる。
【0088】
封止治具181は、鉛直方向に長手方向を有する円筒状の部材である。また、封止治具181は、
図8において図示しない封止治具昇降機構180によって鉛直方向に昇降自在とされてなる。なお、封止治具181の長手方向に垂直な外径は、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9の外径よりも小さくなっており、封止治具181の内径は、ワッシャー7、セラミックサポータ8、および、圧粉体9の貫通孔の最大サイズよりも大きくなっている。これにより、封止治具181は、環装部品をその鉛直方向上端側から押下できるようになっている。
【0089】
封止に際してはまず、封止治具昇降機構180が、封止治具181を、反転治具171による保持されてなる中間体40βの鉛直上方であって中間体40βと封止治具181とが同軸となる位置に配置する。続いて、封止治具昇降機構180が
図8(a)にて矢印AR9にて示すように封止治具181を下降させる。係る下降が開始されると、やがて、センサ素子10に環装されてなる環装部品のうち最上位置にあるワッシャー7の上面に封止治具181が当接する。この状態からさらに封止治具181が下降させられると、
図8(b)に示すように、反転治具171によって外周を保持されている筒状体30の内部において、ワッシャー7さらには環装部品全体が、鉛直下方へと押圧される。このとき、反転治具171による保持によって筒状体30の位置は固定されていることから、結果として、ワッシャー7とセラミックサポータ8cとの間で圧粉体9(9a、9b)が所定の厚みに圧縮され、筒状体30の内部において、センサ素子10のガス導入口11等が備わる第1先端部10a側とケーブルCとの接続端子13などが備わる第2先端部10bとの間が封止される。これにより、ガスセンサ1における被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密性が確保される。このとき、封止治具181と封止治具昇降機構180とが、押圧によって圧粉体を圧縮する押圧手段として機能していることになる。なお、係る押圧手段として好適に機能するのであれば、ワッシャー7に当接する封止治具181の先端部は径方向において連続している必要はなく、例えばスリットが入っているなど、断続的な形状を有していてもよい。
【0090】
なお、係る態様にて封止がなされ、圧粉体9が圧縮されることによって、センサ素子10も筒状体30の内部で固定されることになるが、係る固定がなされるまでは、センサ素子10は、部分的に環装部品やハウジング5と接触してはいるものの、鉛直方向に変位し得るものとなっている。しかしながら、本実施の形態に係る組立装置100においては、上述のように封止に先立ってセンサ素子10の第1先端部10aを(より詳細には保護膜Pを)封止補助治具111に接触させるようにすることで、封止に伴ってセンサ素子10が本来の配置位置から鉛直下方にずれることを防止し、センサ素子10の位置を所定の公差範囲内に収めることができるようになっている。
【0091】
しかも、封止補助治具111の鉛直方向上端部に衝撃緩衝部112が設けられてなることから、封止治具181による押圧に伴ってセンサ素子10が封止補助治具111に押しつけられる力は衝撃緩衝部112によって吸収される。これにより、第1先端部10aを被覆する保護膜Pあるいはさらに第1先端部10a自体に押圧に伴う衝撃が加わって保護膜Pおよび第1先端部10aが破損することが、好適に防止されてなる。
【0092】
なお、衝撃緩衝部112は、必ずしも保護膜Pが設けられたセンサ素子10を組み立て対象とする場合にのみ作用効果を奏するものではない。衝撃緩衝部112は、保護膜Pが設けられていないセンサ素子10が組み立て対象とされる場合であっても、ガス導入口11が備わる第1先端部10aの近傍が封止の際に破損することを防止する効果を有する。
【0093】
封止治具181による封止が完了すると、カシメ治具駆動機構190による内筒6の加締めがなされる。具体的には、封止治具181による押圧がなされた状態で、
図9において図示しないカシメ治具駆動機構190が作動することにより、
図9(a)に矢印AR10にて示すように、カシメ治具191が内筒6に対し側方から接近し、ワッシャー7の直上の高さ位置において、内筒6をその外周側から加締める。上述した封止治具181による圧粉体9の圧縮の結果、内筒6の内部であってワッシャー7の上方には空間が出来ているので、係る加締めがなされることで、
図9(b)に示すように、内筒6には、ワッシャー7の直上の位置に凹部6bが好適に形成される。係る凹部6bが形成されることで、以降の工程において環装部品が脱落することが防止され、上述したように、筒状体30の内部における環装部品の係止が実現される。このとき、カシメ治具191およびカシメ治具駆動機構190が筒状体30をなす内筒6に環装部品が係止される凹部6bを形成する加締め手段として機能していることになる。なお、凹部6bの形成に続いて、圧粉体9aの側方位置において内筒6を加締める増し締めが行われてもよい。これにより、筒状体30の内部における環装部品の係止と、ガスセンサ1における気密封止とが、さらに確実化される。
【0094】
上述した凹部6bの形成によって(あるいはその後の増し締めによって)、組立体40が完成したことになる。係る凹部6bの形成後、
図9において図示しない封止治具昇降機構180が再び作動して、
図9(b)において矢印AR11にて示すように封止治具181を所定の退避位置に退避させる。最後に、
図9において図示しない組立体搬送機構200が、組立体40を組立体待機部201へと搬送する。なお、組立体搬送機構200の具体的な構成は、組立体40の搬送が好適に行える限りにおいて、特に限定されない。
【0095】
以上により、組立装置100における一連の組立手順が完了する。引き続き別の組立体40を組み立てる場合には、
図5(a)に示した状態から同様の手順が繰り返される。また、得られた組立体40は、組立装置100の外部に供されて、第1カバー2、固定ボルト3、および第2カバー4を取り付けられる。これにより、ガスセンサ(の本体部)1が完成する。
【0096】
以上説明した、本実施の形態において実現される組立体の組み立て手順によれば、環装部品は常に、素子ダミーもしくはセンサ素子に環装された状態となっているので、位置ずれが生じてセンサ素子が組み込めないという不具合の発生が、好適に抑制される。
【0097】
また、開口部が設けられたセンサ素子の第1先端部が環装部品の貫通孔内を通過することがないので、第1先端部側に保護膜が形成されてなるセンサ素子を用いる場合であっても、組立を好適に行うことが出来る。
【0098】
さらには、封止補助治具によってセンサ素子が位置決めされることで、組立体を封止する際にセンサ素子に位置ずれが生じることが、好適に防止される。
【0099】
しかも封止補助治具が衝撃緩衝部を備えることで、封止の際にセンサ素子に設けた保護膜あるいはセンサ素子自体が強い衝撃力を受けることもないので、保護膜あるいはセンサ素子を破損することなく組立体を封止することが出来る。
【0100】
<第1の実施の形態の変形例>
第1の実施の形態に係る組立装置100においては、封止補助治具111の鉛直方向上端部に衝撃緩衝部112が設けられてなることで封止補助治具111が鉛直上方から作用する衝撃に対して緩衝能を有するものとなっており、センサ素子10の第1先端部10aに設けられた保護膜Pを係る衝撃緩衝部112に接触させた状態で押圧による封止を行うことにより、保護膜Pの破損を防止する態様となっている。しかしながら、封止補助治具111の構成はこれに限られるものではなく、封止治具181による押圧に際して保護膜Pに加わる衝撃を緩和できるのであれば、他の構成が採用されてよい。
【0101】
図10は、第1の実施の形態とは異なる構成の封止補助治具111を模式的に示す図である。
図10に示す封止補助治具111は、鉛直方向の途中部分に、鉛直方向に弾性を有する弾性体からなる衝撃緩衝部113を備える。衝撃緩衝部113は、バネ部材にて構成されるのが好適な一例である。係る封止補助治具111を備える場合も、上述の実施の形態と同様に、中間体40βは反転機構170によって反転され、さらに保護膜Pで被覆されてなるセンサ素子10の第1先端部10aが封止補助治具111の鉛直方向上端部に接触するように配置される。
【0102】
封止補助治具111の鉛直方向上端部は単なる水平面ではあるものの、衝撃緩衝部113が備わっていることから、
図10に示す構成においても、封止治具181による押圧がなされる際、センサ素子10が封止補助治具111に押しつけられる力は衝撃緩衝部113によって吸収される。これにより、第1先端部10aを被覆する保護膜Pに押圧に伴う衝撃が加わって保護膜Pおよび第1先端部10aが破損することが、好適に防止されてなる。
【0103】
なお、衝撃緩衝部113も衝撃緩衝部112と同様、必ずしも保護膜Pが設けられたセンサ素子10を組み立て対象とする場合にのみ作用効果を奏するものではない。すなわち、衝撃緩衝部113は、保護膜Pが設けられていないセンサ素子10が組み立て対象とされる場合であっても、ガス導入口11が備わる第1先端部10aの近傍が封止の際に破損することを防止する効果を有する。
【0104】
<第2の実施の形態>
上述した第1の実施の形態およびその変形例においては、中間体40βを上下反転させた後、筒状体30の内部を封止するに際して、センサ素子10を下方から支持する封止補助治具111として、鉛直上方から作用する衝撃に対して緩衝能を有するものを用いることで、センサ素子10の第1先端部10aに保護膜Pが備わる場合であっても、保護膜Pおよび第1先端部10aを破損することなく封止を行えるようになっていた。しかしながら、筒状体30の内部を封止する態様はこれに限られるものではない。本実施の形態においては、組立体40を組み立てる過程において、係る封止を2段階に分けて行うようにする。以下に詳細に説明する。
【0105】
図11は、本実施の形態において組立体40の組立を行う組立装置1100の概略的な構成を示すブロック図である。組立装置1100の構成要素の一部は、第1の実施の形態に係る組立装置100の構成要素と共通している。それらの構成要素については、組立装置100と同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0106】
具体的には、組立装置1100は、組立装置100と共通する構成要素として、CPU101a、ROM101b、RAM101c等から構成される制御部101と、操作部102と、表示部103と、動作プログラム104pなどが格納される記憶部104と、ダミー昇降機構120と、素子ダミー121と、環装部品搬送機構130と、環装部品待機部131と、ハウジング固定治具駆動機構140と、支持部141aおよび可動部141bを有するハウジング固定治具141と、素子搬送機構150と、素子待機部151と、素子案内治具駆動機構160と、素子案内治具161と、カシメ治具駆動機構190と、カシメ治具191とを備える。
【0107】
組立装置1100は、さらに、実際の組立動作を担う構成要素として、第1反転治具1171および第2反転治具1172による中間体40βの反転動作を担う反転機構1170と、仮封止治具(押下治具)1181の昇降動作を担う仮封止治具昇降機構1180Aと、本封止治具(当接治具)1182の昇降動作を担う本封止治具昇降機構1180Bと、素子位置決め治具1191の昇降動作を担う位置決め治具昇降機構1190と、中間体40βおよび組立体40を搬送する組立体搬送機構1200と、組立完了後の組立体40が保管される組立体待機部1201とを備える。
【0108】
図12ないし
図15は、係る組立装置1100を用いて組立体40を組み立てる際の手順を説明するための、組立体40の組立途中の様子を示す模式断面図である。なお、
図12ないし
図15においても、
図5ないし
図9と同様、鉛直方向上向きをz軸正方向と表している。
【0109】
組立装置1100による組立体40の組み立て手順のうち、素子ダミー121への環装部品の環装と、筒状体30の環装部品の外周への環装と、素子ダミー121とセンサ素子10との入れ替えとについては、第1の実施の形態と同様に、すなわち、
図5および
図6に示した態様にて、行われる。それゆえ、本実施の形態においてはその説明を省略する。
【0110】
センサ素子10と素子ダミー121との入れ替えが完了すると、中間体40βは、その姿勢を保ったまま組立体搬送機構1200によって搬送され、
図12(a)に示すように、封止補助治具(支持治具)1192上に載置される。
【0111】
封止補助治具1192は、組立装置1100に備わる、z軸方向に長手方向を有する上端部が平坦な筒状の部材であり、その上端部にワッシャー7が当接されることによって、中間体40βを下方支持できるようになっている。なお、封止補助治具1192の上端部の外径は、筒状体30の内径(および各環装部品の外径)よりも小さくなっている。封止補助治具1192の上端部の内径は、各環装部品に備わる貫通孔の最大サイズよりも大きくなっている。
【0112】
また、係る載置(下方支持)の際、鉛直下方に突出しているセンサ素子10の第2先端部10bは、封止補助治具1192の貫通孔1192aに挿入される。それゆえ、封止補助治具1192とセンサ素子10とが干渉することはない。ただし、貫通孔1192aには、素子位置決め治具1191が備わっている。
【0113】
素子位置決め治具1191は、次述する仮封止の際のセンサ素子10の鉛直方向における配置位置を定める(センサ素子10を位置決めする)ためのものである。素子位置決め治具1191は、位置決め治具昇降機構1190によって鉛直方向に昇降自在とされてなり、その上端部が仮封止後のセンサ素子10の下端部の配置位置となるように、配置される。
【0114】
なお、
図12(a)においては、センサ素子10の下端部が素子位置決め治具1191の上端部に当接されているが、中間体40βが封止補助治具1192に載置された時点では、係る当接は必須ではない。
【0115】
以上のような態様にて中間体40βが封止補助治具1192に載置され、センサ素子10が位置決めされると、仮封止治具1181を用いた圧粉体9(9a、9b)の圧縮による、中間体40β内部の一度目の封止である仮封止(一次圧縮)がなされる。仮封止は、センサ素子10を中間体40βの内部において仮に固定することを主たる目的として行う封止工程である。ここで、「仮に」と言っているのは、この後に行う本封止(二次圧縮)の際にセンサ素子10にわずかながら第1の位置からの変位が生じるからである。
【0116】
仮封止治具1181は、鉛直方向に長手方向を有する円筒状の部材である。仮封止治具1181は、
図12において図示しない仮封止治具昇降機構1180Aによって鉛直方向に昇降自在とされてなる。より詳細には、中間体40βが封止補助治具1192によって下方支持されてなる状態において、仮封止治具1181が矢印AR14にて示すように鉛直下方に下降させられると、仮封止治具1181の下端部が、筒状体30を構成するハウジング5の外周に備わる突起部(フランジ部)5bに当接するようになっている。すなわち、仮封止治具1181の少なくとも下端部近傍は、係る当接が実現される径および厚みを有する。
【0117】
なお、仮封止治具1181はその内側に上方に開口した空隙部1181aを有している。中間体40βが封止補助治具1192載置された状態においては、センサ素子10の保護膜Pを有する第1先端部10aが筒状体30の端部から鉛直上方に突出しているが、仮封止治具1181が突起部5bに当接する際、第1先端部10aは仮封止治具1181の空隙部1181aに挿入されるので、封止補助治具1192とセンサ素子10とが干渉することはない。それゆえ、保護膜Pが傷つけられたり剥がれたりして破損することもない。
【0118】
仮封止治具1181は、その下端部がハウジング5の突起部5bに当接した後もさらに下降させられる。すると、係る下降に伴い、矢印AR15にて示すように筒状体30が鉛直下方に押し下げられる。一方、筒状体30内部の環装部品は封止補助治具1192によって下方支持されているので、その位置を維持しようとする。それゆえ、筒状体30の下降に伴いワッシャー7が相対的に筒状体30の内部へと押し込まれることになる。結果として、封止補助治具1192の上端部がワッシャー7を押圧し、ワッシャー7に対して鉛直上向きの力(荷重)F1(第1の力)を印加させる状態が実現される。なお、ワッシャー7に対し力F1を好適に印加できるのであれば、ワッシャー7に当接する封止補助治具1192の先端部、および、ハウジング5の突起部5bに当接する仮封止治具1181の先端部はいずれも、径方向において連続している必要はなく、例えばスリットが入っているなど、断続的な形状を有していてもよい。
【0119】
係る態様にて封止補助治具1192からワッシャー7に対して力F1が作用すると、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも力F1が圧縮力として作用する。これにより、圧粉体9a、9bは圧縮され、環装部品は全体として、筒状体30の内部へと押し込まれた状態となる。また、係る圧縮に伴い、圧粉体9a、9bとセンサ素子10との間に存在していた隙間はなくなり、圧粉体9a、9bはセンサ素子10に密着する。これにより、それまでは鉛直方向に変位可能であったセンサ素子10が、素子位置決め治具1191によって位置決めされつつ圧粉体9a、9bによって固定される。これが、本実施の形態において行う仮封止である。なお、係る仮封止後の中間体40βにおけるセンサ素子10の配置位置を、第1の位置とする。
【0120】
ここで、力F1は、センサ素子10の固定が実現される一方でセンサ素子10に欠け(あるいは割れ)が生じることのない範囲の大きさにて、印加されるようにする。すなわち、仮封止においては、圧粉体9はセンサ素子10が固定される程度には圧縮されるが、気密性が十分に確保される程度にまでは圧縮されない。係る気密性の確保は、後段の本封止工程に委ねられる。
【0121】
仮封止の過程においてセンサ素子10の存在する第1の位置が許容される下限位置よりも下降するような場合には、位置決め治具昇降機構1190を上昇させることにより、第1の位置が下限位置を下回らないようにされる。
【0122】
なお、
図12(b)に示すように、組立装置1100がレーザー変位計1185を備えており、空隙部1181aに露出しているセンサ素子10の第1先端部10aに向けてレーザー変位計1185からレーザー光LBを照射することによりセンサ素子10の高さ位置をモニタできる態様であってもよい。この場合、係るモニタの結果に基づいて、位置決め治具昇降機構1190および素子位置決め治具1191によってセンサ素子10を位置決めすることができる。
【0123】
仮封止が完了すると、仮封止治具1181は退避させられ、中間体40βは、組立体搬送機構1200によってその姿勢を保ったまま第1反転治具1171および第2反転治具1172に受け渡される。
【0124】
反転機構1170は、組立体搬送機構1200から受け渡された仮封止後の中間体40βの姿勢を、上下反転させる。具体的には、まず、反転機構1170が第1反転治具1171および第2反転治具1172を駆動し、
図13に示すように、反転機構1170に備わる第1反転治具1171および第2反転治具1172のそれぞれに中間体40βを把持させる。第1反転治具1171は中間体40βの下部において鉛直下方に向けて突出しているセンサ素子10を側方から把持し、第2反転治具1172は、筒状体30を(より具体的にはハウジング5を)側方から把持する。
【0125】
そして、反転機構1170は、第1反転治具1171による把持部分と第2反転治具1172による把持部分との上下関係が入れ替わるように、それぞれの把持状態を保ちつつ、第1反転治具1171と第2反転治具1172とを所定の水平軸回りにおいて180°周回移動させる。これによって、矢印AR16にて示すように、中間体40βの姿勢が上下反転される。すなわち、中間体40βは、保護膜Pが備わるセンサ素子10の第1先端部10a側が最下端部となる姿勢とされる。このとき、第1反転治具1171、第2反転治具1172および反転機構1170が、中間体40βの姿勢を上下反転させる反転手段として機能していることになる。なお、第1反転治具1171、第2反転治具1172、および反転機構170の具体的な構成は、中間体40βの姿勢反転が好適に行える限りにおいて、特に限定されない。
【0126】
なお、本実施の形態においては、係る姿勢反転に先立つ仮封止によって圧粉体9がある程度圧縮されているので、仮封止を行うことなく中間体40βを反転させる第1の実施の形態に比して、反転に伴う圧粉体9の脱落(こぼれ)が生じにくくなっている。
【0127】
姿勢反転がなされた中間体40βは、
図14(a)に示すように、組立体搬送機構1200に備わる搬送パレット1210に載置される。組立体搬送機構1200において、搬送パレット1210は鉛直方向に昇降自在とされてなる。なお、搬送パレット1210は、全ての組立工程が完了することで得られる組立体40を組立体待機部1201に搬送する際にも用いられる。
【0128】
搬送パレット1210は、鉛直方向と直交するその上面の側に、組立体40を構成するハウジング5に応じた形状の凹部である嵌合部1210aを有している。係る嵌合部1210aにハウジング5が嵌め合わされることで、中間体40βは、長手方向を鉛直方向に延在させる姿勢にて搬送パレット1210に載置固定される。
【0129】
好ましくは、係る載置固定の際、中間体40βは水平面内において回転ずれを起こさないように位置決めされる。これは例えば、ハウジング5の外周形状に異方性を持たせ、嵌合部1210aもこれに応じた形状とすることで実現されてもよいし、搬送パレット1210に備わる図示しない保持手段が中間体40βの水平姿勢を保持する態様であってもよい。
【0130】
また、嵌合部1210aの下方には孔部1210bが設けられている。中間体40βの下部においてはセンサ素子10の保護膜Pを有する第1先端部10aが筒状体30の端部から鉛直下方に突出しているが、中間体40βが搬送パレット1210に載置される際、第1先端部10aは孔部1210bに挿入されるので、搬送パレット1210と干渉することはない。それゆえ、保護膜Pが傷つけられたり剥がれたりして破損することはない。
【0131】
搬送パレット1210に中間体40βが載置固定されると、続いて、本封止(二次圧縮)がなされる。本封止は、被測定ガス空間と基準ガス空間との間の気密の確保を主たる目的として行う封止工程である。
【0132】
本封止に際してはまず、
図14(a)において図示しない本封止治具昇降機構1180Bが、
図14(a)において矢印AR17にて示すように、本封止治具1182を中間体40βの上方から鉛直下方に向けて下降させ、その下端部をワッシャー7に当接させる。
【0133】
本封止治具1182は、鉛直方向に長手方向を有する円筒状の部材であり、本封止治具昇降機構1180Bによって鉛直方向に昇降自在とされてなる。なお、本封止治具1182の長手方向に垂直な外径は、各環装部品の外径よりも小さくなっており、本封止治具1182の内径は、各環装部品に備わる貫通孔の最大サイズよりも大きくなっている。
【0134】
本封止治具1182がワッシャー7に当接されると、
図14(b)において矢印AR18にて示すように、組立体搬送機構200は搬送パレット1210を鉛直上方に上昇させる。
【0135】
すると、係る上昇に伴い、筒状体30も鉛直上方に押し上げられる。一方、筒状体30内部の環装部品のうち、最上部にあるワッシャー7には、その上方から本封止治具1182が当接しているので、環装部品はその位置を維持しようとする。それゆえ、搬送パレット1210の上昇に伴いワッシャー7が相対的に筒状体30の内部へと押し込まれることになる。結果として、本封止治具1182の下端部がワッシャー7を押圧し、ワッシャー7に対して鉛直下向きの力(荷重)F2(第2の力)を印加させる状態が実現される。なお、ワッシャー7に対し力F2が好適に印加できるのであれば、ワッシャー7に当接する本封止治具1182の先端部は径方向において連続している必要はなく、例えばスリットが入っているなど、断続的な形状を有していてもよい。
【0136】
本封止治具1182からワッシャー7に対して力F2が作用すると、セラミックサポータ8a、8bを介して圧粉体9a、9bにも力F2が圧縮力として作用する。このとき、F2>F1であれば、圧粉体9a、9bはさらに圧縮され、環装部品は全体として、筒状体30の内部へとさらに押し込まれる。その結果、被測定ガス空間と基準ガス空間との間が気密封止される。これが、本実施の形態において行う本封止である。
【0137】
本封止の間、センサ素子10の保護膜Pを有する第1先端部10aは、孔部1210bに挿入されており、かつ、他の部材と当接することもないので、本封止の際に保護膜Pが傷つけられたり剥がれたりして破損することもない。
【0138】
第1の実施の形態においては、組立体40を封止する際、衝撃に対する緩衝能を有する封止補助治具111を用いることで、保護膜Pを破損から保護していたが、本実施の形態によれば、仮封止および本封止に際しセンサ素子10の保護膜Pを有する第1先端部10aが他の部材と当接しないので、封止補助治具111を用いずとも、保護膜Pを破損から保護しつつ、組立体40における封止を実現することができる。
【0139】
気密封止を確実なものとするには、ワッシャー7に対し印加される力F2が、仮封止の際にワッシャー7に印加させる力F1に比して十分に、大きくなるようにする必要がある。その一方で、本封止は、センサ素子10の第1先端部10a側のみならず、第2先端部10bの側についても、他の部材に当接させることなく行うことから、仮封止の段階でいったんは圧粉体9a、9bによって固定され、第1の位置に配置されていたセンサ素子10が、本封止の際にわずかではあるがさらに変位し得る。しかしながら、この本封止後のセンサ素子10の配置位置を第2の位置とした場合において、第2の位置がガスセンサ1において所望される特性に照らして許容される所定の誤差範囲内でありさえすれば、たとえそのような変位が生じたとしても、センサ素子10は第2の位置において良好に固定されたものとみなすことができる。
【0140】
それゆえ、本封止にあたっては、本封止治具1182がワッシャー7に与える圧力が、係る第2の位置があらかじめ定められた許容誤差範囲に収まるような大きさとなるように、搬送パレット1210を上昇させるようにする。なお、係る圧力の上限値は、本封止治具1182やワッシャー7あるいはセラミックサポータ8の材料強度等を鑑みて適宜に定められればよい。
【0141】
また、本実施の形態において行う2段階封止は、封止を一度のみ行う態様に比して、センサ素子10に欠けや割れが生じるリスクをより低める効果がある。
【0142】
具体的にいえば、気密封止に際しては、圧粉体9を圧縮させるべく強い力が加える必要がある一方で、センサ素子10を所定の位置に位置決めする必要がある。それゆえ、位置決めを行うべくセンサ素子10を他の部材に当接させた状態で気密封止を行うと、センサ素子10と他の部材との当接部分にも強い力が作用し、センサ素子10に欠けや割れが生じる可能性がある。
【0143】
これに対し、本実施の形態の場合は、センサ素子10の位置決めを目的とする仮封止においては、センサ素子10を素子位置決め治具1191に当接させるものの圧粉体9に加える圧縮力は気密封止に必要な力よりも小さくしている。そして、その後の本封止においては、圧粉体9に加える圧縮力は気密封止が実現されるよう大きくする一方で、すでにある程度位置決めされているセンサ素子10は他の部材には当接されないようにしている。これにより、センサ素子10と他の部材との当接部分に強い力が作用することはないので、センサ素子10に欠けや割れが生じるリスクはより低められている。
【0144】
本封止が完了すると、第1の実施の形態と同様、カシメ治具駆動機構190による内筒6の加締めがなされる。具体的には、搬送パレット1210および本封止治具1182の配置を本封止後もそのまま維持した状態で、
図15において図示しないカシメ治具駆動機構190が作動することにより、
図15(a)に矢印AR19にて示すように、カシメ治具191が内筒6に対し側方から接近し、ワッシャー7の直上の高さ位置において、内筒6をその外周側から加締める。上述した本封止の結果、内筒6の内部であってワッシャー7の上方には空間が出来ているので、係る加締めがなされることで、
図15(b)に示すように、内筒6には、ワッシャー7の直上の位置に凹部6bが好適に形成される。係る凹部6bが形成されることで、以降の工程において環装部品が脱落することが防止され、上述したように、筒状体30の内部における環装部品の係止が実現される。このとき、カシメ治具191およびカシメ治具駆動機構190が筒状体30をなす内筒6に環装部品が係止される凹部6bを形成する加締め手段として機能していることになる。なお、第1の実施の形態と同様、本実施の形態においても、凹部6bの形成に続いて増し締めが行われてもよい。
【0145】
上述した凹部6bの形成によって(あるいはその後の増し締めによって)、組立体40が完成したことになる。係る凹部6bの形成後、
図15において図示しない本封止治具昇降機構1180Bが再び作動して、
図15(b)において矢印AR20にて示すように本封止治具1182を上昇させて所定の退避位置に退避させる。一方、
図15において図示しない組立体搬送機構1200が、
図15(b)において矢印AR21にて示すように、搬送パレット1210を鉛直下方に下降させ、本封止前の位置に復帰させる。その後、組立体搬送機構1200は、組立体40を組立体待機部1201へと搬送する。
【0146】
以上により、組立装置1100における一連の組立手順が完了する。引き続き別の組立体40を組み立てる場合には、
図5(a)に示した状態から同様の手順が繰り返される。また、得られた組立体40は、組立装置1100の外部に供されて、第1カバー2、固定ボルト3、および第2カバー4を取り付けられる。これにより、ガスセンサ(の本体部)1が完成する。
【0147】
以上説明した、本実施の形態において実現される組立体の組み立て手順においても、第1の実施の形態と同様、環装部品は常に、素子ダミーもしくはセンサ素子に環装された状態となっているので、位置ずれが生じてセンサ素子が組み込めないという不具合の発生が、好適に抑制される。
【0148】
また、開口部が設けられたセンサ素子の第1先端部が環装部品の貫通孔内を通過することがないので、第1先端部側に保護膜が形成されてなるセンサ素子を用いる場合であっても、組立を好適に行うことが出来る。
【0149】
さらには、本実施の形態の場合、仮封止および本封止に際しセンサ素子の保護膜を有する第1先端部が他の部材と当接しないので、第1の実施の形態において用いられるような封止補助治具を用いずとも、保護膜を破損から保護しつつ、組立体における封止を実現することができる。
【0150】
また、仮封止および本封止の双方においてセンサ素子と他の部材との当接部分に強い力が作用することはないので、センサ素子が他の部材と当接される態様にて封止が行われる場合に比して、センサ素子に欠けや割れが生じるリスクはより低められている。
【0151】
なお、第1の実施の形態において説明した組み立て手順と同様、本実施の形態における組み立て手順も、必ずしも保護膜Pが設けられたセンサ素子を組み立て対象とする場合にのみ作用効果を奏するものではない。すなわち、本実施の形態における組み立て手順は、保護膜が設けられていないセンサ素子が組み立て対象とされる場合であっても、保護膜に関係しない作用効果については、同様に得ることができる。
【0152】
<第2の実施の形態の変形例>
上述した第2の実施の形態においては、本封止治具1182をワッシャー7に当接させた状態で搬送パレット1210を上昇させることにより本封止を行っていたが、これに代わり、搬送パレット1210は静止状態としたままで、ワッシャー7に当接している本封止治具1182を鉛直下方に下降させることによって本封止を行う態様であってもよい。