特許第6937951号(P6937951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937951ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、繊維積層体及び人工皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6937951
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、繊維積層体及び人工皮革
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20210909BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20210909BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20210909BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20210909BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210909BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08L75/08
   C08G18/32
   D06N3/14 101
   B32B27/40
   B32B27/12
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-23107(P2021-23107)
(22)【出願日】2021年2月17日
【審査請求日】2021年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 文弥
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓真
(72)【発明者】
【氏名】水上 新也
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2020/129605(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/159359(WO,A1)
【文献】 特開2017−119755(JP,A)
【文献】 特開2019−044292(JP,A)
【文献】 特開2016−027114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08L 1/00−43/00
B32B 1/00−43/00
D06N 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、アニオン性親水性基を有するポリオールと、を含むポリオールと、
ポリイソシアネートと、
の反応物を、ポリアミンにより鎖伸長したものであり、
前記ポリエーテルポリオールの前記ポリオール中に占める配合割合が50質量%以上90質量%以下であり、
前記1,10−デカンジオールの前記ポリオール中に占める配合割合が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリエーテルポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリエーテルポリオールの前記ポリオール中に占める配合割合が60質量%以上90質量%以下であることを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が500以上2500以下であることを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物を用いて形成された表皮層と、繊維布帛層とを備えることを特徴とする、繊維積層体。
【請求項7】
請求項に記載の繊維積層体を備えることを特徴とする、人工皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、繊維積層体及び人工皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水性ポリウレタン樹脂組成物は、耐久性を付与できることから、スエード調の人工皮革といった皮革様シートに利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、1,10−デカンジオールに由来する構造単位を含有するポリカーボネートジオール及び官能基としてヒドロキシル基のみを含有する分子量400以下の多価アルコールを含むポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応生成物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ基を1分子中に2個以上含有するポリアミン化合物により鎖伸長した水分散型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−119755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポリウレタン樹脂は、低温にすると柔軟性が損なわれるという課題があることを本発明者らは発見した。このため、耐久性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れる技術の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することができる。
(1)本発明の一形態によれば、ポリウレタン樹脂組成物が提供される。このポリウレタン樹脂組成物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、アニオン性親水性基を有するポリオールと、を含むポリオールと、ポリイソシアネートと、の反応物を、ポリアミンにより鎖伸長したものであり、前記ポリエーテルポリオールの前記ポリオール中に占める配合割合が50質量%以上90質量%以下であり、前記1,10−デカンジオールの前記ポリオール中に占める配合割合が1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする。
その他、本発明は、以下の形態として実現することができる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、ポリウレタン樹脂組成物が提供される。このポリウレタン樹脂組成物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、アニオン性親水性基を有するポリオールと、を含むポリオールと、ポリイソシアネートと、の反応物を、ポリアミンにより鎖伸長したものであることを特徴とする。
【0008】
この形態のポリウレタン樹脂組成物によれば、耐久性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れる。
【0009】
(2)上記形態のポリウレタン樹脂組成物において、前記ポリエーテルポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含んでもよい。
【0010】
この形態のポリウレタン樹脂組成物によれば、耐久性により優れるとともに、低温での柔軟性により優れる。
【0011】
(3)上記形態のポリウレタン樹脂組成物において、前記ポリエーテルポリオールの前記ポリオール中に占める配合割合が60質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0012】
この形態のポリウレタン樹脂組成物によれば、耐久性により優れるとともに、低温での柔軟性により優れる。
【0013】
(4)上記形態のポリウレタン樹脂組成物において、前記1,10−デカンジオールの前記ポリオール中に占める配合割合が1質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0014】
この形態のポリウレタン樹脂組成物によれば、耐久性により優れるとともに、低温での柔軟性により優れる。
【0015】
(5)上記形態のポリウレタン樹脂組成物において、前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が500以上2500以下であってもよい。
【0016】
この形態のポリウレタン樹脂組成物によれば、耐久性により優れるとともに、低温での柔軟性により優れる。
【0017】
(6)本発明の他の形態によれば、上記形態のポリウレタン樹脂組成物の硬化物が提供される。
【0018】
(7)本発明の他の形態によれば、上記形態のポリウレタン樹脂組成物を用いて形成された表皮層と、繊維布帛層とを備える繊維積層体が提供される。
【0019】
(8)本発明の他の形態によれば、上記形態の繊維積層体を備える人工皮革が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ポリウレタン樹脂組成物>
本発明の実施形態であるポリウレタン樹脂組成物は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、の反応物を、ポリアミンにより鎖伸長したものである。本実施形態のポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」とも呼ぶ)とポリプロピレングリコール(以下、「PPG」とも呼ぶ)との少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、アニオン性親水性基を有するポリオールと、を含むことを特徴とする。本実施形態のポリウレタン樹脂組成物は、水分散体の形態として存在することができる。
【0021】
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物は、耐久性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れる。このメカニズムは定かでないが、推定メカニズムとしては、1,10−デカンジオールを有することにより耐久性を有するとともに、PTMGとPPGとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールを有することにより低温での柔軟性に優れると考えられる。
【0022】
<ポリオール>
(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)
本実施形態のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)は特に限定されないが、低温での柔軟性に優れる観点から、PTMGの数平均分子量は、例えば、500以上が好ましく、800以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、1800以上が特に好ましい。一方、耐摩耗性に優れる観点から、PTMGの数平均分子量は、例えば、3400以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましく、2300以下が特に好ましい。
【0023】
(ポリプロピレングリコール)
本実施形態のポリプロピレングリコール(PPG)は特に限定されないが、低温での柔軟性に優れる観点から、PPGの数平均分子量は、例えば、500以上が好ましく、800以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、1800以上が特に好ましい。一方、耐摩耗性に優れる観点から、PPGの数平均分子量は、例えば、3400以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましく、2300以下が特に好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、耐久性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れる観点から、PTMGを含むことが好ましい。
【0024】
ポリエーテルポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とポリプロピレングリコール(PPG)以外のポリエーテルポリオールをさらに用いてもよい。このようなポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、例えば、500以上が好ましく、800以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましく、1800以上が特に好ましい。一方、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、例えば、3400以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましく、2300以下が特に好ましい。
【0026】
上記のポリオールに占めるポリエーテルポリオールの配合割合は、特に限定されないが、耐摩耗性と低温での柔軟性とに優れる観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、78質量%以上であることが特に好ましい。一方、上記のポリオールに占めるポリエーテルポリオールの配合割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
上記のポリオールに占める1,10−デカンジオールの配合割合は、特に限定されないが、耐摩耗性と低温での柔軟性とに優れる観点から、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることが特に好ましい。一方、上記のポリオールに占める1,10−デカンジオールの配合割合は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
1,10−デカンジオールに対するポリエーテルポリオールの配合割合(ポリエーテルポリオール/1,10−デカンジオール)は、特に限定されないが、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、6以上であることが特に好ましい。一方、1,10−デカンジオールに対するポリエーテルポリオールの配合割合(ポリエーテルポリオール/1,10−デカンジオール)は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、13以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0029】
(アニオン性親水性基を有するポリオール)
本明細書において、アニオン性親水性基としては、カルボキシ基又はその塩、スルホン酸基又はその塩を示す。
【0030】
カルボキシ基を有するポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物が挙げられるとともに、これらの誘導体、これらの塩に加え、これらを使用したポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0031】
スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸含有化合物が挙げられるとともに、これらの誘導体、これらの塩に加え、これらを使用したポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0032】
これらのカルボキシ基又はスルホン酸基は、中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタンの水分散性に優れるため好ましい。この中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。中和は、ウレタン化反応前、反応中、又は反応後の何れにおいても行うことができる。
【0033】
アニオン性親水性基を有するポリオールとしては、ポリウレタン水分散体の保存安定性を向上させる観点から、カルボキシ基を有するポリオールが好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
【0034】
<ポリイソシアネート>
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物に用いられるポリイソシアネートは、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等を挙げることができる。耐摩耗性と低温での柔軟性とに優れる観点から、ポリイソシアネートとしては、脂環族ポリイソシアネートを含むことが好ましい。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
脂環族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0037】
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0039】
また、ポリイソシアネートとして、上述の有機ポリイソシアネートの変性体を用いてもよい。有機ポリイソシアネートの変性体としては、特に限定されないが、例えば、カルボジイミド体、アロファネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等を挙げることができる。尚、ポリイソシアネートは、単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0040】
耐摩耗性と低温での柔軟性とに優れる観点から、ポリイソシアネートとして、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を用いることが好ましい。
【0041】
また、ポリイソシアネートの平均分子量は、特に限定されないが、100以上400以下が好ましく、120以上300以下がより好ましく、150以上280以下がより好ましい。
【0042】
<ポリアミン>
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物に用いられるポリアミンは、特に限定されないが、例えば、当該技術分野で一般的に使用される鎖伸長剤を用いることができる。ポリアミンとしては、例えば、ジアミン、トリアミン、テトラアミンが挙げられる。ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン等が挙げられる。トリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等が挙げられる。トリアミンとしては、例えば、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0043】
<その他>
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、特に限定されないが、例えば、鎖伸長剤、架橋剤、触媒等が挙げられる。
【0044】
鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノプラスト化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、グリセリン等を挙げることができる。
【0045】
触媒としては、特に限定されないが、例えば、金属触媒やアミン系触媒等を挙げることができる。金属触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテート等の錫触媒、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛等の鉛触媒、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどのビスマス触媒等を挙げることができる。アミン系触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等が挙げられる。
【0046】
<製造方法>
ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、上記アニオン性親水性基を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを、反応させることによりイソシアネート末端のウレタンプレポリマーを合成する。この反応は、溶剤なしで行うか、または活性水素基を有しない有機溶媒中で行う。その後、必要に応じてアニオン性親水基の中和を行った後、水中において分散乳化を行う。その後、上記ウレタンプレポリマーに残存するイソシアネート基より少ない当量の鎖伸張剤(例えば、イソシアネート基と鎖伸張剤中のアミノ基との当量比1:0.5〜0.95)を加えた後、乳化ミセル中のイソシアネート基と鎖伸張剤とを界面重合反応させることにより、ウレア結合を生成させる。この反応によって、乳化ミセル内の高分子量化が進み、ポリウレタン樹脂水分散体が得られる。その後、必要に応じて使用した溶剤を除去することにより、ポリウレタン樹脂組成物の水分散体を得ることができる。この方法では、ポリイソシアネートのイソシアネート基と、上記ポリオールの水酸基および鎖伸張剤のアミノ基の合計と、の当量比は、1:0.85〜1.1であることが好ましい。
【0047】
上記イソシアネート末端のウレタンプレポリマーを水中において分散乳化を行う場合に、乳化剤として界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0048】
非イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数8〜24のアルコール類、炭素数8〜24のアルケノール類、多環フェノール類、炭素数8〜44のアミン類、炭素数8〜44のアミド類、炭素数8〜24の脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類、ポリプロピレングリコールのアルキレンオキサイド付加物、多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物、プルロニック(登録商標)型非イオン界面活性剤等が挙げられる。多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリスチリルフェニルエーテル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。ここで、非イオン界面活性剤中に2種以上のアルキレンオキサイドが付加している場合、ブロック付加であってもランダム付加であってもよい。
【0049】
アニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類、アルケノール類、前記非イオン界面活性剤のアルキレンオキサイド付加物のアニオン化物等が挙げられる。
【0050】
カチオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のアルキルイミダゾリン4級塩等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、他の成分との混合性に優れる観点から、非イオン界面活性剤が好ましく、多環フェノール類のアルキレンオキサイド付加物、プルロニック(登録商標)型非イオン界面活性剤がより好ましい。
【0052】
界面活性剤の使用量としては、上記イソシアネート末端のウレタンプレポリマー固形分100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲の場合、耐摩耗性と低温での柔軟性により優れたポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
ポリウレタン樹脂組成物の分子量は、特に限定されず、例えば、重量平均分子量が5000〜500000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量の測定は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPC装置により行い、ポリスチレン換算値として求められる。具体的な測定条件は、下記のとおりである。
カラム:東ソー社製のポリスチレンゲルカラム(TSK gel G4000HXL+TSK gel G3000HXL+TSK gel G2000HXL+TSK gel G1000HXL2本をこの順で直列に接続)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製のRID−6A)
流速:1ml/分。
【0054】
ポリウレタン樹脂組成物の酸価は、特に限定されず、例えば、0.1mgKOH/g〜20mgKOH/gであることが好ましく、0.3mgKOH/g〜15mgKOH/gであることがより好ましい。ここでの、酸価はJIS K0070−1992に準じて測定される酸価を示す。
【0055】
本実施形態のポリウレタン樹脂組成物は、耐摩耗性と低温での柔軟性とに優れるため、
人工皮革等として有効に用いることができる。本実施形態のポリウレタン樹脂組成物で人工皮革を作製する方法としては、特に限定されず、従来の方法を用いることができる。例えば、ポリウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布した後、水分を蒸発させることにより表皮層を形成し、この表皮層のうえに接着剤を塗布した後、繊維布帛層と貼り合わせて水分を蒸発させることにより、人工皮革を作製することができる。この方法は、本実施形態のポリウレタン樹脂組成物を用いて形成された表皮層と、繊維布帛層とを備える繊維積層体を作製する方法であり、この繊維積層体が人工皮革に相当する。得られた人工皮革は、例えば、車両、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等に使用することができる。人工皮革としては、さらに表皮層や繊維布帛層以外の層(例えば、金属層等)を備えていてもよい。この方法に使用する接着剤は表皮層と繊維基材を貼り合わせることのできるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリウレタン接着剤が挙げられる。また、本実施形態のポリウレタン樹脂組成物を乾燥させることにより硬化物を得ることができる。また、本実施形態で得られた硬化物や繊維積層体は、更に、表面処理、揉み加工等の後加工を施してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」と記載されているものは、特に指定しない限り質量基準とする。
【0057】
<使用試薬>
(i)ポリオール
(PTMG)
・PolyTHF(登録商標)2000(三菱ケミカル社製)(官能基数:2、数平均分子量:2000)
・PolyTHF(登録商標)1000(三菱ケミカル社製)(官能基数:2、数平均分子量:1000)
・PolyTHF(登録商標)3000(三菱ケミカル社製)(官能基数:2、数平均分子量:3000)
(PPG)
・エクセノール2020(旭硝子社製)(官能基数:2、数平均分子量:2000)
(デカンジオール)
・1,10−デカンジオール(豊国製油社製)(官能基数:2、数平均分子量:174.28)
(アニオン性親水基を有するポリオール)
・ジメチロールプロピオン酸(Perstorp社製Bis−MPA(登録商標))(官能基数:2、数平均分子量:134.13)
(その他のポリオール)
・デュラノール(登録商標)T4672(旭化成社製)(官能基数:2、数平均分子量:2000)
・ニッポラン4010(東ソー社製)(官能基数:2、数平均分子量:2000)
・テスラックTA22−781(日立化成社製)(官能基数:2、数平均分子量:1780)
・ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製PEG−2000)(官能基数:2、数平均分子量:2000)
・トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)(官能基数:3、数平均分子量:134.17)
・ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製PEG−600S)(官能基数:2、数平均分子量:600)
(ポリイソシアネート)
・IPDI(VESTANAT(登録商標)IPDI(Evonik社製))(官能基数:2、数平均分子量:222.29)
(その他)
・トリエチルアミン(ダイセル社製)(数平均分子量:101.19)
・イソホロンジアミン(VESTAMIN(登録商標)IPD(Evonik社製))
【0058】
<実施例>
以下の表に示す配合(質量部)に従って、実施例及び比較例のポリウレタン樹脂組成物を作製した。
【0059】
<ポリウレタン水分散体の合成>
[実施例1]
PTMGと、1,10−デカンジオールと、トリメチロールプロパンと、IPDIと、ジメチロールプロピオン酸と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製PEG−600S)と、メチルエチルケトンとを混合し、70〜75℃で120分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.8質量%であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、トリエチルアミンを添加し中和を行った。その後、この溶液に水を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化させた。得られた乳化分散体に、イソホロンジアミンを溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し固形分40質量%、酸価6.3mgKOH/gのポリウレタン樹脂組成物の水分散体を得た。
【0060】
<皮膜の作製>
得られたポリウレタン樹脂組成物の水分散体を、乾燥膜厚が200μmとなるように離型紙にキャストした後、80℃で6時間乾燥させることにより、皮膜を作製した。
【0061】
<柔軟性の評価>
得られた皮膜をあらかじめ定められた大きさに裁断した試料を、JIS K 6301に準じて、引張速度200mm/分で引っ張り、規定の伸びを与えたときの応力(100%モジュラス)を測定した。柔軟性の評価は、試料を作成した直後と、5℃で2週間保持した後と、5℃で4週間保持した後との3度行った。応力が小さいほど、柔軟性に優れる。
【0062】
柔軟性については、以下のように評価した。
◎:5.0MPa以下
○:5.0MPa超8.0MPa以下
△:8.0MPa超10.0MPa以下
×:10.0MPa超
【0063】
<耐摩耗性>
平面摩耗試験機(大栄科学精器製作所社製PA−300A)を用いて、荷重500g/cm2、60回/分にて、得られた皮膜の表面を2000回摩擦し、傷の発生の有無を目視により観察した。傷や剥がれが起こらないほど、耐摩耗性に優れる。
【0064】
耐摩耗性については、以下のように評価した。
◎:摩擦回数2000回で傷、剥がれ無し
○:摩擦回数1000回以上2000回未満で傷または剥がれ発生
△:摩擦回数1000回未満で傷または剥がれが発生
【0065】
【表1】
【0066】
表の結果から以下のことが分かった。つまり、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、を含む実施例は、1,10−デカンジオールを含まない比較例1や、ポリテトラメチレンエーテルグリコールやポリプロピレングリコールを含まない比較例2−5と比較して、耐摩耗性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れることが分かった。
【0067】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【要約】
【課題】耐久性に優れるとともに、低温での柔軟性に優れる技術を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂組成物は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールとポリプロピレングリコールとの少なくとも一方のポリエーテルポリオールと、1,10−デカンジオールと、アニオン性親水性基を有するポリオールと、を含むポリオールと、ポリイソシアネートと、の反応物を、ポリアミンにより鎖伸長したものであることを特徴とする。
【選択図】なし