(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937984
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ペグ化IL−11の組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20210909BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20210909BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20210909BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20210909BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20210909BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20210909BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20210909BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20210909BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
C07K14/54ZNA
A61K38/20
A61K47/60
A61K45/00
A61P5/38
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P19/00
A61P1/00
A61P29/00
A61P11/00
A61P9/00
A61P25/04
A61K9/19
A61P7/00
A61P43/00 121
【請求項の数】23
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-565038(P2017-565038)
(86)(22)【出願日】2016年3月1日
(65)【公表番号】特表2018-508580(P2018-508580A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】US2016020294
(87)【国際公開番号】WO2016140983
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】62/127,748
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519258725
【氏名又は名称】ナンシャ・バイオロジックス・(ホンコン)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANSHA BIOLOGICS (HONG KONG) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ユ,クォ‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョオ,クィ‐リム
(72)【発明者】
【氏名】フォック,マンソン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ジョンソン,イゥ‐ナム
【審査官】
原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/020079(WO,A1)
【文献】
特表2012−500845(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0051246(KR,A)
【文献】
特開2011−051991(JP,A)
【文献】
特開2005−281302(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0111240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40Kdの平均分子量を有する分枝PEG成分に共有結合したインターロイキン11(IL−11)ポリペプチド鎖からなるPEG−IL−11コンジュゲートを含み、
前記PEG成分が前記IL−11ポリペプチド鎖に、前記分枝PEG成分の前記IL−11ポリペプチド鎖に対するモル比が1〜2で、アミド結合の形成および還元的アミノ化から選択されるN末端選択様式により共有結合し、そして、
前記IL−11ポリペプチド鎖がヒトまたはヒト化ポリペプチド鎖であり、
前記PEG−IL−11コンジュゲートがI40NYであり、そして、前記PEG−IL−11コンジュゲートの純度が、改変IL−11調製物中で93%以上である、改変インターロイキン(IL−11)調製物。
【請求項2】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、ヒトIL−11ポリペプチド鎖である請求項1に記載の改変IL−11調製物。
【請求項3】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、N末端プロリンの欠失によって短縮されている請求項1または2に記載の改変IL−11調製物。
【請求項4】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、配列番号1の配列を有する請求項1に記載の改変IL−11調製物。
【請求項5】
前記IL−11ポリペプチドのPEG成分に対するモル比が1:1である請求項1に記載の改変IL−11調製物。
【請求項6】
前記分枝PEG成分が、アミン結合により前記IL−11ポリペプチドのN末端アミノ酸に共有結合している請求項1に記載の改変IL−11調製物。
【請求項7】
薬剤的に許容される担体と組み合わせた治療有効量の請求項1に記載の改変IL−11調製物を含む医薬組成物。
【請求項8】
注射用に製剤された請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記改変IL−11調製物が、小児または成人患者に対して10〜100μg/kgの投与単位を提供する量で存在する請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
凍結乾燥された請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
第二薬剤的活性化合物をさらに含む請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記第二薬剤的活性化合物が、ステロイド、骨髄における血小板産生を刺激する薬剤、抗体、鎮痛剤、または、抗炎症剤である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物の製造における請求項1に記載の改変IL−11調製物の使用。
【請求項14】
前記医薬組成物が、(a)原発事故/放射線誘発性骨および胃腸障害、(b)化学療法誘発性骨および胃腸障害、(c)熱傷誘発性血小板減少症および胃腸障害、(d)化学療法誘発性血小板減少症、(e)外傷誘発性、癌誘発性、もしくは、感染誘発性胃腸障害または炎症性腸疾患、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、ならびに(g)心血管疾患からなる群から選択される状態の治療のために有用である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬組成物が、注射用に製剤された請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物が、凍結乾燥された請求項13に記載の使用。
【請求項17】
インターロイキン11(IL−11)化合物の血清半減期を増加させる方法であって、IL−11ポリペプチド鎖を分枝PEG成分に共有結合させて、PEG−IL−11コンジュゲートを含む改変IL−11調製物を作成することを含み、
前記分枝PEG成分が40Kdの平均分子量を有し、
前記分枝PEG成分が、前記IL−11ポリペプチド鎖に、前記分枝PEG成分の前記IL−11ポリペプチド鎖に対するモル比が1〜2でアミド結合の形成および還元的アミノ化から選択されるN末端選択様式により共有結合し、そして、
前記IL−11ポリペプチド鎖がヒトまたはヒト化ポリペプチド鎖であり、
前記PEG−IL−11コンジュゲートがI40NYであり、そして、前記PEG−IL−11コンジュゲートの純度が、前記IL−11調製物中で93%以上である、方法。
【請求項18】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、ヒトIL−11ポリペプチド鎖である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、N末端プロリンの欠失によって短縮されている請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記IL−11ポリペプチド鎖が、配列番号1の配列を有する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記IL−11ポリペプチド鎖の前記分枝PEG成分に対するモル比が、1:1である請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記IL−11ポリペプチド鎖中のアミノ基により第二PEG成分を共有結合させる工程をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記分枝PEG成分が、アミン結合によりN末端アミノ酸に共有結合している請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年3月3日に出願され、本発明者らの同時係属米国特許仮出願第62/127748号の優先権を主張し、この出願は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明の分野は、特に、ペグ化インターロイキン11(IL−11)に関する医薬組成物および方法である。
【背景技術】
【0003】
背景の記載は、本発明の理解に役立つ可能性のある情報を含む。本明細書中で提供する情報のいずれも本発明の先行技術または関連技術であることを認めるものではない、あるいは具体的または暗に参照される刊行物のいずれをも先行技術であることを認めるものではない。本明細書中の全ての刊行物は、それぞれの刊行物または特許出願があたかも具体的かつ個別に参照により組み入れられることを表示するのと同様に参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献中の用語の定義または使用が、本明細書中で提供されるその語の定義と矛盾するかまたは反対である場合、本明細書中で提供されるその語の定義が適用され、参考文献中のその語の定義は適用されない。
【0004】
現行の治療レジメンは血小板の輸血を採用し、血小板の輸血は供給が不足し、かつウイルス汚染の危険が伴う可能性があるので、化学療法誘発性血小板減少症は依然として満たされていない医学的ニーズである。その一方で、組換えヒトIL−11を患者に投与して血小板産生を刺激することができる。しかしながら、IL−11投与は毎日投与する必要があり、臨床効果が低くなり、血漿増量に至る。
【0005】
IL−11はサイトカインであり、造血において、そして特に巨核球成熟の刺激において、主なシグナル伝達物質として作用する。IL−11の作用は、典型的にはIL−11受容体および糖タンパク質gpl30によって媒介され、続いてgpl30のリン酸化/活性化が起こる。IL−11の臨床用途には、化学療法に関連する副作用の治療が含まれ、これは巨核球形成を増強し、そして血小板数を増加させると考えられる。組換えヒトIL−11は、NEUMEGA(登録商標)(Oprelvekin, Wyeth−Ayerst)として市販され、重度の血小板減少症の危険性が高い非骨髄性悪性腫瘍の成人患者において骨髄抑制化学療法後の重度の血小板減少症の予防および血小板輸血の必要性の低減のために承認されている。NEUMEGA(登録商標)は、典型的には、1mLの注射用滅菌水で再構成される凍結乾燥粉末として5mgのIL−11を含む単回使用バイアルで供給される(25〜50μg/kg/日の用量で投与)。NEUMEGA(商標)に関連する最も頻度の高い有害事象は、命を脅かす心房性不整脈、失神、呼吸困難、鬱血性心不全、および肺水腫に至る血漿増量である。
【0006】
IL−11は比較的急速に循環系から除去され、したがって頻回注射を必要とする。例えば、健常男性に皮下投与されたNeumega(商標)は約6.9時間の終末相半減期を有する(Neumega(商標)の添付文書)。迅速な腎排泄およびタンパク分解などの薬物動態が不良であること、またそれに関連する副作用のために、臨床的罹患率が低下することが多い。さらに、毎日の注射はまた、有害事象を管理するための入院を意味し、これは医療費を増やすだけでなく、患者の生活の質を損なう。その結果、血小板輸血は依然として化学療法誘発性血小板減少症(CIT)を治療するための代表的な方法である。
【0007】
そのような組成物の有益な治療可能性を維持しつつ、血清安定性を増加させるいくつかの試みが当該技術分野においてなされてきた。例えば、米国特許出願第2010/0098658号(特許文献1)は、酸分解に対する耐性の増強と血清半減期の増加を示すポリマー(PEG)と関連したIL−11アナログ(mIL−11)を報告している。IL−11を安定化させる別の試みでは、米国特許第8133480号(特許文献2)で記載されているように、IL−11のシステイン変異体を調製し、選択されたムテインをPEGでさらに改変して血清安定性を増加させた。これらの修飾はIL−11の血清安定性または半減期を少なくともある程度まで改善したが、骨髄抑制動物における低い有効性、複雑な製法、反復投与、注射液への処方をはじめとする1つ以上の欠点が依然としてある。
【0008】
IL−11ではシステイン残基が欠失しているため、米国特許第8133480号(特許文献2)では、C末端アミノ酸配列中にシステイン残基を挿入し、官能基を付与して、チオール反応性ポリエチレングリコール鎖のコンジュゲーションを可能にすることを記載している。生物学的活性は保存されるが、システインの導入により分子間二量体が生じる可能性があり、昆虫細胞の産生収率は細菌生産よりも低い可能性がある。さらに、そのように改変されたIL−11の血清半減期は、オスSprague−Dawleyラットに静脈内投与した場合、40KD PEG化について約5.6時間であり、あまり望ましくない。さらに、シクロホスファミドで治療したラットを使用した動物実験では、有効性はジ・アザ・デイ(the−other−day)投薬スキームではわずかであった。IL−11のN末端がトランケートされた配列への20KDのPEGを用いてアミンまたはアミド結合を介した別の採用されたPEGコンジュゲーションがUS2010/0098658に記載された。N末端トランケーションはその生物学的活性を低下させないが、オスSprague−Dawleyラットに皮下投与された血清半減期は約8.5時間であり、ここでも望ましい安定性に及ばない。さらに、動物疾患モデルにおける有効性は不明であった。
【0009】
IL−11のアミン基にコンジュゲートした20KDの直線状または分枝PEGが報告され(Takagi et al. 2007, “Enhanced pharmacological activity of recombinant human interleukin−11(rhIL11) by chemical modification with polyethylene glycol.”J Control Release,119(3):271−278(非特許文献1))、そのような非特異的コンジュゲーションの結果、リシン、ヒスチジン、およびチロシン残基ならびにN末端アミンとの反応により、しばしば多PEG化が起こった。
【0010】
他の報告は、N末端およびループなどのIL−11の「非コア」領域上のある炭水化物修飾が細胞刺激活性を増強したことを証明しており、このことは、これらの領域がおそらくはIL−11の生物学的活性を限定するように設計されていることを示唆する(Yanaka et al.2011,“Non−core region modulates interleukin−11 signaling activity:generation of agonist and antagonist variants.”J. Biol. Chem.,286:8085−8093(非特許文献2))。しかしながら、未改変IL−11よりも高い安定性および活性を有する望ましい改変は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0098658号
【特許文献2】米国特許第8133480号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Takagi et al. 2007, “Enhanced pharmacological activity of recombinant human interleukin−11(rhIL11) by chemical modification with polyethylene glycol.”J Control Release,119(3):271−278
【非特許文献2】Yanaka et al.2011,“Non−core region modulates interleukin−11 signaling activity:generation of agonist and antagonist variants.”J. Biol. Chem.,286:8085−8093
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、IL−11を安定化させるいくつかの方法が当該技術分野で知られているが、全てまたはほとんど全ては、有効性が限られ、また反復投与が必要であるなどの1つ以上の欠点を有する。さらに重要なことには、改変形態においてさえも、IL−11の悪影響(例えば、血漿増量)は軽減されなかった。したがって、IL−11を安定化させる一方で同時に悪影響を軽減する、改善された組成物および方法が依然として必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
発明の主題は、生物学的活性を維持し、かつ副作用を軽減しながら、血清中のIL−11の安定性および半減期を改善する化合物、組成物、および方法に関する。特に好ましい態様において、本発明者らは、アミノ酸位置、結合方法、およびPEGの種類が、安定かつ生物学的に活性なペグ化IL−11を製造するために重要であり、特に好ましいペグ化IL−11は天然のヒトIL−11と同じ配列を有するが、N末端の最初のアミノ酸であるプロリンがないことを見出した。さらに、そのようなIL−11は、好ましくはN末端にて、ポリペプチド鎖内のあるリシン残基の可能な第二の部位で共有結合により改変される。最も典型的には、IL−11とIL−11に結合するPEG化合物との平均モル比は1:1である。
【0015】
本発明の主題の一態様において、本発明者らは、PEG成分に共有結合したIL−11ポリペプチド鎖を含む改変インターロイキン11(IL−11)化合物であって、PEG成分が10〜50Kdの平均分子量を有し、かつ異なる第一および第二PEG部分を有し、PEG成分がN末端アミノ酸に共有結合し、IL−11ポリペプチド鎖がヒトまたはヒト化ポリペプチド鎖である、改変インターロイキン11(IL−11)化合物を想定する。
【0016】
最も一般的には、IL−11ポリペプチド鎖はヒトIL−11ポリペプチド鎖である、および/またはN末端プロリンの欠失によって短縮されていてもよい。例えば、特に好適なIL−11ポリペプチド鎖は配列番号1の配列を有し得る。PEG成分に関して、当該成分が20Kdまたは40Kdの平均分子量を有すること、および/またはPEG成分がY字型を有することが概して好ましい。発明の主題に限定されないが、ポリペプチド鎖のPEG成分に対するモル比は約1:1(例えば、0.9:1〜1:0.9、または0.8:1〜1:0.8)であることが好ましい。加えて、第二PEG成分がIL−11ポリペプチド鎖のアミノ基を介して改変IL−11に共有結合し得ることが想定される。さらに、PEG成分がアミン結合(ただし、アミド結合も特に想定される)を介してN末端アミノ酸に共有結合することが概して好ましい。
【0017】
別の視点から見ると、本発明者らはまた、治療有効量の発明の主題のIL−11化合物(例えば、上述のとおり)を薬剤的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物も想定する。望ましい場合、組成物は注射用に処方することができ、IL−11化合物を含んでもよく、IL−11化合物は小児または成人患者に対して10〜100μg/kgの投与単位を提供する量で存在する。さらに、組成物は凍結乾燥することができるか、または注射もしくは点滴用液体形態であることが想定される。最も好適なものとして、医薬組成物はさらに、第二薬剤的活性化合物を別に含んでもよいか、またはIL−11化合物との混合物で含んでもよい。したがって、想定される医薬組成物を他の成分(例えば、ステロイド、骨髄における血小板産生を刺激する薬剤、抗体、鎮痛剤、もしくは抗炎症剤などの第二薬剤的活性化合物、または再構成用の溶媒)とともに含むキットも明らかに本明細書中で想定される。
【0018】
したがって、本発明者らはまた、医薬組成物の製造における本発明の主題のIL−11化合物の使用も想定する。発明の主題に限定されないが、特に想定される治療としては、(a)原発事故/放射線誘発性骨および胃腸障害、(b)化学療法誘発性骨および胃腸障害、(c)熱傷誘発性血小板減少症および胃腸障害、(d)化学療法誘発性血小板減少症、(e)外傷誘発性、癌誘発性、もしくは感染誘発性胃腸障害または炎症性腸疾患、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、ならびに(g)心血管疾患が挙げられる。上述のように、医薬組成物を注射用に処方すること、および/または医薬組成物を凍結乾燥することが、概して想定される。
【0019】
したがって、発明の主題のさらなる態様において、本発明者らはまた、インターロイキン11(IL−11)化合物の血清半減期を増加させる方法も想定する。好ましい方法には、IL−11ポリペプチド鎖をPEG成分に共有結合させるステップであって、PEG成分が10〜50Kdの平均分子量を有し、かつ異なる第一および第二PEG部分を有し、PEG成分がN末端アミノ酸に共有結合し、IL−11ポリペプチド鎖がヒトまたはヒト化ポリペプチド鎖であるステップが含まれる。最も一般的には、IL−11ポリペプチド鎖はヒトIL−11ポリペプチド鎖である、および/またはIL−11ポリペプチド鎖はN末端プロリンの欠失によって短縮されている(例えば、配列番号1の配列を有する)。
【0020】
さらなる想定される方法において、PEG成分は20Kdまたは40Kdの平均分子量を有する、および/またはY字型を有し得る。望ましい場合、ポリペプチド鎖のPEG成分に対するモル比は約1:1であり、当該方法がIL−11ポリペプチド鎖中のアミノ基によって第二PEG成分を共有結合させるステップをさらに含み得ることがさらに想定される。前述と同様に、PEG成分をアミン結合によりN末端アミノ酸に共有結合させることが想定される。
【0021】
さらなる想定される方法において、本発明者らは、IL−11の投与に反応する状態を治療する方法を想定する。そのような方法は、典型的には、想定される医薬組成物を治療有効量で、それを必要とする患者に投与するステップを含む。例えば、好適な状態は、(a)原発事故/放射線誘発性骨および胃腸障害、(b)化学療法誘発性骨および胃腸障害、(c)熱傷誘発血小板減少症および胃腸障害、(d)化学療法誘発性血小板減少症、(e)外傷誘発性、癌誘発性、もしくは感染誘発性胃腸障害または炎症性腸疾患、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、ならびに(g)心血管疾患からなる群から選択することができる。これらの方法についての例示的な好ましい医薬組成物は、IL−11 I40NYまたはI20NYを含み得、IL−11を10〜100μg/kgの投与量で投与(例えば、皮下)することがさらに想定される。
【0022】
発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、添付の図面と合わせて、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からさらに明らかになり、図中、同じ数字は同じ成分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、N末端プロリンのないIL−11の一次配列を表す。
【
図2】
図2は、分子量マーカーおよび図示するようなIL−11の様々なペグ化形態を有するSDS−PAGEゲルの画像である。
【
図3】
図3は、単回静脈内投与後の様々なIL−11組成物の血漿濃度を表すグラフである。
【
図4】
図4は、様々なIL−11組成物の単回静脈内投与後の血小板増加を表すグラフである。
【
図5】
図5は、非コンジュゲート化IL−11、I40NYおよびI40KYのトリプシン消化に関するペプチドマップを比較したクロマトグラフを表す。
【
図6】
図6は、様々なIL−11組成物の皮下投与(IL−11については連続14日間毎日注射、ペグ化対応物については毎週注射)後の血小板増加を表すグラフである。
【
図7】
図7は様々なIL−11組成物の皮下投与(IL−11については連続14日間毎日注射、ペグ化対応物については毎週注射)後のヘマトクリット減少を表すグラフである。
【
図8】
図8は最大血小板誘導とヘマトクリットの最大減少との間の相関関係を示唆するグラフである。
【
図9】
図9は、非コンジュゲート化IL−11と比較した、7TD1アッセイにおけるペグ化化合物の細胞増殖活性を表すグラフである。
【
図10】
図10は、様々なローディング量でのI40NYの純度を示す銀染色での非還元SDS−PAGEゲルの画像である。
【
図11】
図11は、I40NYのモノペグ化構成要素の生成物純度を表すHPLCクロマトグラムである。
【
図12】
図12は、非コンジュゲート化IL−11の単回皮下投与と比較した、単回皮下投与後のI40NYの血漿濃度のカイネティックを表す薬物動態プロフィールである。
【
図13】
図13は、IL−11およびI40NYの円二色性スペクトルのオーバーレイである。
【
図14】
図14は、温度の関数としてのIL−11およびI40NYについての楕円率プロットである。
【
図15】
図15は、骨髄抑制ラットの動物モデルにおいて想定される化合物の血小板産生を示す薬力学プロフィールである。
【
図16】
図16は、骨髄抑制ラットの動物モデルにおいて想定される化合物のヘマトクリット減少を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、PEG化合物の種類、共有結合の位置、およびIL−11の一次配列がそのような改変IL−11の安定性および活性に対する決定因子であることを見出した。特に好ましい予想外の態様において、本発明者らは、1つのアミノ酸によってN末端でトランケートされ、次いでPEG化される場合、実質的に改善された安定性を有することを見出した。さらに、本発明者らは、PEG成分の特定の種類および分子量が以下でより詳細にさらに記載するように、安定性、活性、および毒性のさらなる決定因子であることも見出した。
【0025】
想定される化合物
PEGの種類、分子量、およびIL−11に対する結合位置の影響を調査するために、本発明者らは、
図1で示すような一次配列を有する組換えヒトIL−11(天然のヒトIL−11配列と同一であるが、N末端プロリンが欠失している)から様々なペグ化IL−11分子を調製した。IL−11タンパク質は、N末端がトランケートされているかまたは改変されたヒトIL−11であることが概して好ましい。例えば、特に好ましいトランケートされた形態には、少なくとも1個または2個または3個(またはそれ以上)のN末端アミノ酸が欠失しているIL−11分子が含まれる。あるいは、IL−11はまた、ヒト未改変対応物とは異なるN末端アミノ酸を有するように改変されていてもよい。例えば、改変IL−11は第一N末端アミノ酸が欠失していてもよく、未改変ヒトIL−11で見られる第二アミノ酸以外の第二アミノ酸を有し得る(例えば、Pが欠失し、VによってGが置換されている)。最も一般的には、N末端アミノ酸はアミノ酸を安定化させ、したがって、特にM、G、A、S、T、V、またはPを含み、さらなる想定される態様では、不安定化アミノ酸(例えば、F、Q、N、Rなど)は安定化アミノ酸によって置換されていてもよい。N末端からの1個以上のアミノ酸の欠失は、通常、最初の10個、または最初の5個、または最初の3個のアミノ酸に限定される。その一方で、あまり好ましくない態様では、1個、2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のアミノ酸の欠失は、IL−11成分のC末端でも起こり得る。一般的指針として、欠失は概して、生物学的活性および/または安定性に悪影響を及ぼさないかまたはごくわずかしか及ぼさないものに限定される(例えば、活性および/または安定性の喪失は20%未満であり、さらに一般的には10%未満である)。あるいは、またはさらに、想定されるIL−11分子はまた、IL−11との融合タンパク質も含み、例示的な融合タンパク質としては、参照することにより本明細書中に組み込まれるUS2010/0143973に記載されているものが含まれる。最も典型的には、IL−11は組換えタンパク質であり、好適な発現系で、最も好ましくは原核細胞系(例えば、大腸菌E.coli)または酵母系(例えば、Pichia pasteuris)で発現される可能性がある。もちろん、IL−11の特に好ましい形態が成熟形態(すなわち、リーダー配列がない)であることも理解されるべきである。
【0026】
さらに、好適なIL−11分子は、ヒトIL−11である必要はなく、任意の他の(一般的には哺乳類)起源のものであり得ると理解すべきである。したがって、好適なIL−11源(組換えまたは天然)としては、霊長類、マウス、ブタ、ウマなどが挙げられる。これらの配列はしたがって、少なくとも部分的にヒト化されて、ヒトにおいて免疫原性が低下し得る、ならびに/または安定性および/もしくは活性が増加し得る。同様に、合成コンセンサス配列も本明細書中で想定される。
【0027】
想定されるIL−11分子のPEG化は多くの方法で実施することができ、共有的ならびに非共有的方法が含まれる。しかしながら、PEG化がIL−11に対する共有結合を使用することが概して好ましい。PEG基をタンパク質に共有結合させるために当該技術分野で公知の多くの方法があり、好適な方法には、N末端アミノ基またはC末端カルボン酸基をPEG成分上の好適な反応性基(例えば、アルデヒド、マレイミド、酸塩化物など)、またはスルフヒドリル反応性基(例えば、マレイミド、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホンなど)と反応させ、それによってシステイン基、またはリシンアミノ酸のε−アミノ基(例えば、NHS−エステル、NHS−カーボネート、トリアジン基など)と反応するアミノ反応性試薬に対するジスルフィド結合を可能にするものが含まれる。したがって、1個以上のアミノ酸をNおよび/またはC末端に添加して、PEG化基の結合に好適な反応性基を導入することができることも想定される。例えば、セリンまたはトレオニンを、N−アセチルガラクトサミンもしくはPEGシアル酸誘導体(sialic derivative)を使用する酵素結合を可能にするために添加することができ、またはε−アミノ基に対する共有結合のためにリシン、またはヒドロキシル基に対する結合のためにフェニルアラニンもしくはトレオニン基を添加することができる。
【0028】
本明細書中での使用に好適なPEG分子に関して、概して、PEGについて様々な分子量が適切であると考えられ、考えられる分子量は2Kd〜200Kd(平均または公称分子量)である。しかしながら、特に好ましい分子量(平均または公称分子量)には、PEG化成分において直鎖あたり10〜50Kdのものが含まれる。さらに、PEG成分は一本の直線状、またはY字型状のPEG成分を有するのが概して好ましく、そのようなPEG成分は20〜40Kdの分子量を有するのがなお一層好ましい。あるいは、好適なPEG成分はまた樹状PEG構造を含んでもよく、またPEG成分は二本より多い直鎖を有していてもよい。PEG成分が一本より多い直線状PEG鎖を有する場合、その鎖は実質的に同じ平均分子量を有するのが概して好ましい(平均分子量の差は15%未満)。
【0029】
さらに好ましい態様において、PEG成分は、IL−11のN末端アミノ基を介してIL−11に、および/または(任意選択的に)内部リシンのε−アミノ基またはヒスチジンの環窒素に共有結合している。N末端共有結合のために、IL−11のPEG成分に対するモル比が、約1:1(例えば、0.9:1〜1:0.9、または0.8:1〜1:0.8など)であることが好ましい。加えて、中程度レベルのPEG化が内部アミノ酸残基で存在し得る(例えば、全IL−11の10%〜20%、または1%〜10%はさらなるペグ化内部アミノ酸を有し得る)ことは理解されるべきである。例えば、第二PEG成分が内部リシンまたはヒスチジンのε−アミノ基と結合していてもよい。以下でより詳細にさらに示すように、ペグ化IL−11の特に好ましい形態はI40NYであり、ヒトIL−11(N末端プロリンが欠如)を含み、40Kdの平均分子量を有するY字型状PEG成分がN末端上で結合している。
【0030】
さらに別の態様において、PEG化は、PEG成分の結合位置および/または結合の種類について混ぜることができると理解すべきである。したがって、IL−11をランダムな非共有PEG化およびN末端アミノ酸で部位特異的PEG化に供することができる、またはN末端アミノ酸および内部アミノ酸で異なる部位特異的PEG化に供することができる。例えば、そして最も好ましくは、IL−11(またはその任意の改変形態)をN末端アミノ酸でペグ化することができ、そして任意選択的にN末端改変に加えて窒素原子(例えば、リシンまたはヒスチジン由来)を介して内部アミノ酸でペグ化することができる。
【0031】
例えば、そして
図1に示すようなトランケートされたIL−11を用いて、製造業者によって提供される実験プロトコルに従い、また以下でさらに詳細に記載するように、本発明者らは、表1(表中、nおよびmは、化合物の分子量に応じて、独立して80〜1000の整数である)に示すようなPEG試薬を使用してPEG化を実施した。
【0033】
トランケートされたIL−11のPEG化後に、そのようにして得られた化合物を以下でもさらに詳細に扱うようにして精製し、様々なペグ化IL−11分子には表2で示すような以下の指定があった。
【0035】
最も注目すべきことに、本発明者らは、PEG成分の種類および結合部位(およびある程度までIL−11の配列)が生物学的活性およびインビボ安定性に対して予想外で実質的な影響を及ぼすことを見出した。下記実験データからより明らかなように、特に好ましいPEG化は、単一のY字型状PEG成分を用いるN末端アミノ酸でのものであり、特にIL−11がトランケートされている場合である。
【0036】
想定される組成物
想定される化合物の拡張された生物学的活性についての本発明者らの発見に基づいて、本発明の主題の化合物は、IL−11の欠失に関連するかまたはIL−11での治療に対する治療反応によって特徴づけられる様々な疾患の治療のために処方することができることが、概して想定される。したがって、そして想定される他の使用のうち、本発明者らは特に、想定される化合物を含む医薬組成物が、(a)化学療法誘発性血小板減少症、(b)原発事故/放射線誘発性骨および胃腸管(GI)障害、(c)化学療法誘発性骨およびGI障害、(d)熱傷誘発性血小板減少症およびGI障害、(e)血小板減少症の他の原因、(f)クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、ならびに偽膜性大腸炎をはじめとするGI障害の他の原因、(g)フリーラジカル誘発性肺障害、および/または(h)心血管疾患の治療または予防のために有効であり得ると考え、この場合、想定される医薬組成物は、治療有効量の想定される化合物(またはその薬剤的に許容される塩、水和物、またはプロドラッグ)、および薬剤的に許容される担体を含む。例えば、発明の主題の一態様において、想定される組成物は、化学療法誘発性血小板減少症もしくはGI障害または放射線誘発性骨および胃腸管(GI)障害の治療のために処方される。あるいは、またはさらに、急性期タンパク質を誘導するため、および/また抗原抗体反応を調節するために、想定される組成物を処方することができることも理解すべきである。
【0037】
想定される化合物は、1つ以上の非毒性の薬剤的に許容される担体と配合される組成物中に含まれることが特に好ましい。好適な医薬組成物は、注射もしくは点滴用に処方されるか、または固体もしくは液体形態で経口投与用に処方されるのが好ましい。したがって、本発明の主題の医薬組成物をヒトおよび他の(通常は哺乳類)動物に対して、非経口、経口、腹腔内、および局所をはじめとする様々な経路を用いて投与することができると理解すべきである。
【0038】
例えば、注射に好適な医薬組成物は、好ましくは薬剤的に許容される滅菌水性もしくは非水性溶液、分散液、エマルジョン、または懸濁液、ならびに使用前に滅菌注射液または分散液に再構成される滅菌粉末を含む。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、または媒体(vehicle)の例としては、水、リンゲル液、および等張化塩化ナトリウム溶液、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、油、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。想定される組成物はさらに、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および/または分散剤をはじめとする様々な不活性成分も含み得る。滅菌性は、抗菌剤および/または抗真菌剤(例えば、パラベン、フェノールソルビン酸、クロロブタノールなど)を含めることにより、またサブミクロンの膜(例えば、0.45μΜまたは0.22μΜの細孔径)を通した濾過、オートクレーブ処理または低温殺菌、および放射線(例えば、ガンマまたはE−ビーム)によって確実にすることができる。適切な場合には、浸透活性剤を含めることができる(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)。本発明の主題に限定されないが、想定される注射用処方は、一般的には、3〜9、さらに一般的には6〜8、最も一般的には7.4+/−0.3のpH範囲内である。もちろん、全ての液体処方を様々な方法で保存して、長期貯蔵/備蓄を促進できることも理解されるべきである。例えば、想定される安定化法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥、結晶化、(好ましくは生体適合性または薬剤的に許容される)固体相上の吸着などを用いた水/溶媒の除去が挙げられる。
【0039】
本発明の主題による組成物は、経口、非経口、吸入による、局所、直腸、経鼻、または移植されたレザバーを介するなど、様々な経路を使用して投与することができ、ここで、本明細書中で使用する「非経口」という語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、髄腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内投与(一般的には注射または点滴)を含む。好ましくは、組成物を注射により、典型的には静脈内、さらに好ましくは皮下投与する。想定される医薬組成物は、また、特に、治療の標的が、眼、皮膚、下部腸管、または外科的介入の間露出する部分の疾患を含む、局所適用により容易にアクセス可能な部分または臓器を含む場合にも局所適用することができる。当該技術分野で公知の局所処方が多くあり、そのような処方の全ては本明細書における使用に好適であると考えられる。
【0040】
組成物中の想定される化合物の量に関して、特定の量は、典型的には特定の処方および所望の目的に依存すると認識されるべきである。したがって、想定される化合物の量は有意に変わると理解されるべきである。しかしながら、化合物はインビトロおよび/またはインビボで治療効果を送達するために有効な最小量で存在することが概して好ましい。
【0041】
したがって、最も好ましい実施形態において、想定される化合物は、約0.1μg/ml〜約100mg/mlの量で、さらに一般的には約10μg/ml〜約10mg/mlの量で、そして最も一般的には約5μg/ml〜約100μg/mlで存在する。投与単位に関して、想定される化合物は、所望の治療効果を達成するために有効な投与量、一般的には10〜100μg/kg、さらに好ましくは30〜70μg/kgで投与されると概して考えられる。しかしながら、隔日投与単位は、0.1〜10μg/kg、または50〜80μg/kg、または80〜120μg/kg、または120〜200μg/kg、またはさらにはそれ以上であり得る。異なる視点からみると、想定される処方の単回使用単位は、約0.3mg〜3.0mgのペグ化IL−11、または約3mg〜7mgのペグ化IL−11、または約7mg〜10mgのペグ化IL−11(最も一般的には7〜9×l0
6U/mgの比活性を有する)を含み得ると理解されるべきである。文脈で別段の記載がない限り、本明細書中で記載する全ての範囲はそれらの終点を含むと解釈されるべきであり、オープンエンドの範囲は商業的に実施可能な値を含むと解釈されるべきである。同様に、値の全てのリストは、文脈で別段の記載がない限り、中間の値を含むとみなすべきである。
【0042】
加えて、想定される処方は一種以上のさらなる薬剤的活性剤を含み得、これは同じ処方中で存在してもよいし、または別々に(異なる種類または同じ種類の処方中で)利用可能にすることもできるか、またはキットとして販売できることに留意されたい。例えば、好適なさらなる薬剤的活性剤としては、様々なステロイド(例えば、コルチコステロイド)、骨髄における血小板産生を刺激する薬剤(例えば、Li
2CO
3、葉酸など)、抗体、鎮痛剤、および抗炎症剤が挙げられる。
【0043】
想定される使用
想定される化合物は、(a)原発事故/放射線誘発性骨および胃腸管(GI)障害、(b)化学療法誘発性骨およびGI障害、(c)熱傷誘発性血小板減少症およびGI障害、(d)血小板減少症の他の原因、(e)クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、ならびに偽膜性大腸炎をはじめとするGI障害の他の原因、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、および(g)心血管疾患の治療で単独使用または併用するための治療薬として特に有用であり得る。
【0044】
結果として、本発明者らは、(a)原発事故/放射線誘発性骨およびGI障害、(b)化学療法誘発性骨およびGI障害、(c)熱傷誘発性血小板減少症およびGI障害、(d)血小板減少症の他の原因、(e)クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、ならびに偽膜性大腸炎をはじめとするGI障害の他の原因、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、および(g)心血管疾患の治療用薬物の製造のための本明細書中で提示した化合物の使用も想定する。
【0045】
別の視点から見ると、本発明者らはまた、それを必要とするヒトにおける(a)原発事故/放射線誘発性骨およびGI障害、(b)化学療法誘発性骨およびGI障害、(c)熱傷誘発性血小板減少症およびGI障害、(d)血小板減少症の他の原因、(e)クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、ならびに偽膜性大腸炎をはじめとするGI障害の他の原因、(f)フリーラジカル誘発性肺障害、および(g)心血管疾患の治療法であって、想定される化合物を治療上有効量で投与する治療法を想定する。
【0046】
実験および実験データ
材料:酵母由来の組換えヒトIL−11の精製バルクはHangzhou Jiuyuan Gene Engineering Companyから提供された(Lot# 20121005/1006/1007/1008)。7TD1マウスハイブリドーマ細胞株はDSMZ(No.ACC23)から取得した。Paraplatin(登録商標)注射(一般名:カルボプラチン)10mg/mL(ロット:5A03935)はBristol−Myers Squibb Company製であった。ウシ膵臓から改変した、シーケンシング等級のトリプシン(カタログ番号11418025001)はRoche diagnosticsから購入した。マウスIL−11受容体アルファはMyBioSource,Inc.(カタログ番号MBS553276)から取得した。CellTiter 96(登録商標)Aqueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay(MTS)(カタログ番号G5430)は7TD1細胞アッセイのためにPromegaから購入した。ヒトIL−11用のDuoSet ELISA developmentキットはR&D Systems Inc.から購入した(カタログ番号DY218)。精製樹脂MacroCap SP(製品コード17−5440−01)はGE Healthcare Life Sciencesから取得した。Precise Tris−Glycine 8〜16%ポリアクリルアミドゲルをThermo Scientificから購入した。HPLC用トリフルオロ酢酸(カタログ番号302031)およびアセトニトリル(カタログ番号34967)はSigma−Aldrichから購入した。
【0047】
カタログ番号SUNBRIGHT(登録商標)ME−120TS、ME−200AL、GL2−400TS、ME−050TS、GL4−400AL3、GL2−200AL3の様々な形態の一官能性PEGをNOF Corporationから購入し、そしてY−PALD−40KはJenkem Technology USAから購入した。PEG試薬の分子構造は表1中で上記に示した。
【0048】
I12KL/I40KY/I05KL4の調製:5mg/mLのタンパク質を1〜2倍のモル比の各PEG試薬の混合物(I12KLについてはNOF/SUNBRIGHT ME−120TS、I40KYについてはSUNBRIGHT GL2−400TS)および50mMのNaHCO
3とともにpH約8で導入した。I05KL4(PEG試薬:NOF/SUNBRIGHT ME−120TS)を、PEGのタンパク質に対するモル比を12倍で添加する以外は、同じ方法で調製した。反応混合物を室温で2時間インキュベートし、続いて2mMグリシンでクエンチした。ペグ化生成物を、以下のようなクロマトグラフィー精製手順を用いて単離した。PEG分子をアミド結合によりタンパク質に結合させた。
【0049】
I20NL/I40NY/I20NY/I20NL2/I20NY2/I40NXの調製:5mg/mLのタンパク質を、1〜2倍のモル比の各PEG試薬の混合物(I20NLおよびI20NL2についてはNOF/SUNBRIGHT ME−200AL、I40NYについてはJenkem/Y−PLAD−40、I20NYおよびI20NY2についてはNOF/SUNBRIGHT GL2−200AL3、I40NXについてはNOF/SUNBRIGHT GL4−400AL3)、10mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムおよび50mMのNaH
2PO
4とともに導入した。2つの部位上へコンジュゲートするために、PEGのモル比を3.5〜5.5倍で添加した。pHを約4.5〜5.0に調節した。反応混合物を室温で24時間インキュベートし、続いて2mMのグリシンでクエンチした。PEG分子をより安定なアミン結合によってタンパク質に結合させた。ペグ化生成物を以下のようにクロマトグラフィー精製を使用して単離した。
【0050】
クロマトグラフィー精製:タンパク質溶液のpHを1M酢酸で4〜5に調節し、続いて遠心分離またはろ過を行って粒状物質を除去した。4体積の水を導入した。20KDaを越えるPEGを含むコンジュゲートについて、タンパク質溶液を、20mM酢酸ナトリウムpH5を含む緩衝液Aで平衡化したMacroCap SPカラム(1×6cm)上にロードした。20mM酢酸ナトリウムpH5および1M NaClを含む緩衝液Bのグラジエント溶出またはステップ溶出でタンパク質を溶出させた。20KDaより低いPEGを含むコンジュゲートについて、20mMリン酸ナトリウムpH7を含む緩衝液Aで平衡化したMacroCap SPカラム(1×6cm)上にタンパク質溶液をロードした。20mMリン酸ナトリウムpH7および1M NaClを含む緩衝液Bのグラジエント溶出またはステップ溶出でタンパク質を溶出させた。SDS PAGEゲルで分析した典型的な最終生成物は
図2で見ることができる。ここで、左のレーンには分子量マーカーをロードし、IL−11の様々なペグ化形態を残りのレーンにロードした。I40NYは、おそらくそのPEG成分のY字型状のために60Kdの推定されるものよりも大きな100Kdを越える見かけの分子量で流出したことに留意されたい。さらなる特に好ましい態様において、想定される化合物の精製はワンステップ精製プロセスとして実施し、これによって下流スケールアップにおける利点が追加される。
【0051】
RP−HPLCによる純度チェック:各PEGamerの含有量を、ダイオードアレイ検出器と連結したUPLCを用いる逆相(RP)クロマトグラフィー−Thermo Scientific製のUltiMate 3000 Rapid Separation LC Systemsを用いることによって分析した。クロマトグラフィー手順は以下のものを使用して実施した。カラム:Acquity C18、1.7μm、2.1×150mm、300Å細孔径、ガードカートリッジを備える、移動相A:50%(v/v)アセトニトリル中0.1%(v/v)TFA、移動相B:95%(v/v)アセトニトリル中0.1%(v/v)TFA、流速:0.4ml/分、カラム温度:65℃、検出:214nm、20μgを注入し、下記表3中のようなグラジエントで流す。
【0053】
タンパク質含有量の測定:タンパク質含有量は、UV/Visマイクロプレートおよびキュベット分光光度計−Thermo Scientific製のMultiskan GOによって測定した。水中で測定した280nmでの単位M
−1cm
−1の吸光係数は17,990である。あるいは、タンパク質濃度は、0.1%(1mg/ml)溶液について0.944の吸光度値を使用して、波長280nmでの紫外分光法によって直接測定する。280nmでの吸光度を使用したタンパク質定量によって、トリプトファンおよびチロシンなどの芳香族アミノ酸の吸光度を測定し、PEG成分は検出されないままである。その結果、本明細書中で記載する重量基準のタンパク質濃度はPEG分子を含まない。
【0054】
健常ラットにおける薬物動態(PK)研究:3匹のオスSprague−Dawleyラットで、100〜150μg/kgの投与レベルで静脈内または皮下経路によって想定される化合物を単回投与した後に、インビボ操作を実施した。血液サンプルを複数の時点でヘパリン管中に集め、続いて血漿を分離し、−20℃で保管した。血漿サンプル中の免疫反応性IL−11の濃度をヒトIL−11用のDuoSet ELISAキット(R&D Systems Inc.カタログ番号DY218)によって測定した。ノンコンパートメントモデルを用いてWinNonlin 5.3ソフトウェアで薬物動態のパラメータを得た。
【0055】
健常ラットにおける薬力学(PD)研究:想定される化合物の各々を100〜150μg/kgの投薬強度で静脈内または皮下投与を使用して4匹のオスSprague−Dawleyラットで薬力学評価を実施した。血液サンプルを複数の時点でヘパリン管中に集め、続いて血漿を分離し、−20℃で保管した。血球計数をCell−DYN 3500血液分析器で実施した。
【0056】
骨髄抑制ラットにおける薬力学(PD)研究:4匹のオスSprague−Dawleyラットにおいて、0日で40mg/kgのカルボプラチンの静脈内投与を使用して骨髄抑制を誘発することによって薬力学評価を実施した。想定される化合物を第一日に150μg/kgで皮下注射した。血液サンプルを複数の時点でヘパリン管中に集め、続いて血漿を分離し、−20℃で保存した。血球計数をCell−DYN3500血液分析器で実施した。
【0057】
トリプシンマッピング:2mg/mLのタンパク質および1/50(W/W)のトリプシンを含む50mMのTris pH8.3緩衝液中で反応溶液を調製した。室温で6時間インキュベートし、続いて等体積の0.2%TFA(トリフルオロ酢酸)溶液を添加した。粒状物質を遠心分離によって除去した後、HPLCに注入した。クロマトグラフィー操作は以下を用いて実施した。カラム:Zorbax 300SB−C8、2.1×150mm、5μm、300Å細孔径、移動相A:0.1%(v/v)TFA、移動相B:95%(v/v)アセトニトリル中の0.1%(v/v)TFA、流速:0.2ml/分、検出:214nm、10μgを注入し、下記表4中のようなグラジエントで実施する。
【0059】
タンパク質分解ペプチドの同定は、MS分光分析(Thermo LCQ Advantage)と連結したHPLCで実施した。
【0060】
いくつかの実施形態において、発明のある実施形態を記載し主張するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数は、いくつかの例では「約」という語により改変されると理解すべきである。したがって、いくつかの実施形態において、明細書および添付の特許請求の範囲で記載する数値パラメータは、特定の実施形態によって目標とする望ましい特性に応じて変わり得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効数字の数値の観点から、そして通常の丸める技術を適用することによって解析すべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態で記載される数値は実施可能な程度に正確であるとして報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示されている数値は、それらの各々の試験測定で見いだされた標準偏差から必然的に生じるある誤差を含み得る。
【0061】
PEGはそのコンジュゲートの血漿安定性を付与できることが一般的に知られているが、どのような結合の種類、鎖長、および分子構造が治療効果および/または薬理学的パラメータに関して特異的な結果をもたらすかを予想することはできない。第一の実施例において、様々なPEGサイズのトランケートされたIL−11コンジュゲートを正常なラットにおいて血漿安定性に関して調査した。静脈内投与後、非ペグ化IL−11の観察された血漿半減期は、そのペグ化対応物の血漿半減期(3.5〜13.7時間)と比較して非常に短く、10分未満であることが判明した。後者のうち、高分子量PEGほど以下の順で高い血漿安定性を付与した。I40KY(13.7hr)〜I40NY(8.5時間)>I20NL(3.8時間)〜I12KL(3.5時間)。
図3は、単回静脈内投与後の様々な形態のペグ化IL−11の血漿濃度を示す。各サンプルをラットにおいて100μg/kgで投与した。この実施例では、PEG鎖が大きいほど、または長いほど、血清半減期が長くなると結論づけられた。
【0062】
第二の実施例において、100μg/kgで単回静脈内投与した後、静脈内経路にしたがって健常Sprague−Dawleyラットで薬力学評価を実施して、血小板増加を測定した。図示するように、
図4から、40−KDコンジュゲート(I40NYおよびI40KY)はI20NL(50%)よりも多い血小板増加(60〜75%)を誘導し、ここで、YはY字型状PEGを表し、Lは直線状PEGを表す。結果はまた、短いPEGコンジュゲートでのマルチプルが約25%の血小板増加でごく限られた有効性しか有しないので、マルチプルコンジュゲーション(I05KL4、4部位でコンジュゲートした5−KD PEG)がN末端上で長いPEG単一鎖よりも有効でないことも示唆する。この実施例では、1つの部位上のPEG鎖が長いほど、血小板誘導の点で有効性が高くなると結論づけられた。これは、組換えヒト成長ホルモンに対するPEG化の効果の反対であるように見える。
【0063】
第三の実施例において、タンパク質分解ペプチドのLC/MS同定と併用して、トリプシンマッピングによってコンジュゲーション部位を調べた。
図5は、IL−11(非コンジュゲート)、I40NY、およびI40KYのトリプシンマップを表し、下記表5はトリプシンペプチドを提供する。
【0065】
ここで、Tlペプチドに相当するピークはI40NYおよびI40KYのトリプシンマップで著しく減少したことがわかる。このことは、N末端アミンが化学コンジュゲーションのための唯一の部位であるT1ペプチド上に、PEGでの両コンジュゲートが結合していたことを示す。その結果、I40NYおよびI40KYは両N末端に結合していたが、I40NYについてはアミン結合、そしてI40KYについてはアミド結合での化学結合である点のみが異なっていた。特に、I40NYおよびI40KYはどちらも静脈内投与により血清半減期および血小板誘導において同様の効果を示した。
【0066】
アミン結合はアミド結合よりも安定であり、モノペグ化生成物の収率は、還元的アミノ化を用いた選択的PEG化についてより均一であり、次の研究では、様々なN末端コンジュゲートを血小板産生における有効性に関して調査し、健常なラットにおいて皮下投与によるそれら各々の関連する副作用によって評価した。
図6は、150μg/kgで皮下投与したラットにおける6種のペグ化IL−11コンジュゲートの薬力学研究の結果を示す。IL−11を連続14日間毎日投与し、その一方で、ペグ化IL−11を毎週1回注射した。PEG形状はコンジュゲートの機能に影響を及ぼし得る。特に、非直線状PEG分子はその直線状対応物よりも良好な血漿安定性およびより高い有効性を付与する。
図6で示されるように、I20NYはI20NL(46〜55%)よりも大きな血小板増加(58〜70%)を誘導し、ここで、YはY字型状PEGを表し、Lは直線状PEGを表す。これらの結果は、Y字型状PEGが同じ分子量の直線状形態よりも高い有効性を有することを示唆した。しかしながら、I40NY(Y字型状)およびI40NX(4本の櫛状)は、どちらも約65〜70%まで増加したので血小板産生において同等であり、PEG形状の影響は、PEGサイズが約40KD以上である場合に飽和状態になったことを示唆した。I20NL2(2つの部位上の直線状PEG)およびI20NY2(2つの部位上のY字型状PEG)はそれらの単一ペグ化対応物よりも低い血小板産生を有していたので、特に、同じPEG長の二重PEG化はインビボ有効性を低下させた。したがって、I40NY、I40NXおよびI20NYは様々なN末端コンジュゲート化IL−1Iのなかでもより高い有効性を発揮したと結論づけられた。さらに、2回目の投与の影響は、コンジュゲーション部位の数に関係なく、20−KDのPEGなどのより小さなPEGコンジュゲートについて幾分下方調節されたことに留意する。その結果、I40NYおよびI40NXは所望の生物学的特性を有し、悪影響(特に血漿増量)が比較的少ない、予想外に有効な化合物であった。さらに、生物学的データはさらに、そのような改変IL−11化合物を低頻度で、最も好ましくは1週間に2回、1週間に1回、またはそれ以下で投与できることを示唆する。そのようなスケジュールは、想定される化合物がより大きな集団(例えば放射線被曝にさらされた)における血小板減少症の治療において用いられる場合に特に関連する。
【0067】
本発明者らはまた、健常なラットにおけるIL−11コンジュゲートに関連した副作用も研究した。患者は血漿増量のために希釈性貧血を経験する可能性があるので、IL−11の臨床用途における副作用の評価のためにヘマトクリット状態を通常マーカーとして使用する。動物試験において、IL−11を連続14日間150μg/kgで皮下投与し、その一方で、ペグ化IL−11を同じ用量で1週間に1回注射した。
図7に示すように、全ての薬物はヘマトクリットの減少をもたらしたが、I40NYは、ペグ化コンジュゲートの残りよりも高い活性を維持しつつ、低下が少ないことが判明した。I40NYの投与で緩和された希釈性貧血はコンジュゲート化および非コンジュゲート化IL−11を使用した他の個々の動物実験と同じチャートで比較した場合、より顕著である。ヘマトクリットの減少によって示されるように、血小板産生と副作用との間の相関関係は、
図8で実証され、様々な改変および未改変IL−11をチャートでプロットした場合に増加する用量依存性有効性とともに副作用を増強する傾向が示唆される。様々な用量でのI40NYは明らかに右上側に位置し、このことは、同等の有効性の基準に基づいてある他の化合物および未改変IL−11よりも少ない血漿増量を意味する。生成物特性解析の点で、本発明者らは、好ましい化合物であるI40NYの物理化学的および薬理学的特性を特性解析した。
【0068】
IL−11コンジュゲートの細胞系アッセイ:コンジュゲート化IL−11の生物学的活性を、細胞増殖アッセイにおいて7TD1細胞株(DSMZ,Germany)を使用して試験した。簡単に説明すると、1ウェルあたり4,000個の7TD1細胞を、2μg/mLマウスIL−11受容体(MyBioSource,USA,MBS553276)の存在下で2日間様々なIL−11濃度に対して5%CO
2の加湿雰囲気中37℃にて増殖させた(Biochem.J., 318:489−495)。MTSを添加した後、y軸上の490nmの吸光度をy軸上のIL−11濃度に対してプロットし、グラフPadソフトウェアPrism 6でS字状用量応答曲線を適合させることによって、用量反応曲線のEC50を決定した。動物試験の前に、新たに合成したコンジュゲートの生物学的活性を、7TD1細胞株を使用して細胞増殖アッセイで試験した。全てのPEG化調製が同様の生成物をもたらすとは限らず、実際の生成物形成は、コンジュゲートされるIL−11のアミノ酸残基、および使用されるPEG分子のサイズおよび形状に依存する。7TD1細胞は、異なるコンジュゲート濃度に反応して増殖した。その化学シグナルが細胞数と線形関係を有する展開剤を添加した後、490nmでの吸光度をELISAプレートリーダーで読み取った。結果を
図9に示した。
【0069】
PEG部分の立体障害のために、コンジュゲートは全て、以下の有効性の順序で非ペグ化IL−11のものと比較して、細胞系アッセイにおいて予想どおり生物活性の低下を示した。IL−11(100%)>I20NL、I20NY(どちらも約16%)>I40NY、I40NX(どちらも11%)>I40KY(6%)>I20NY2(3%)。特に、立体障害はペグ化コンジュゲートの生物学的活性を測定する際の支配的因子であり、それらの全体的なPEG成分が20KDaより大きいコンジュゲートの生物活性における大幅な減少としてとらえることができる。一部の細胞系研究から、N末端配列などのIL−11分子の非コア領域での小さな炭化水素結合が、他の結合部位でのそれらのコンジュゲートと比較した場合、生物学的活性を増強させたことを示す報告があり(J.Biol.Chem.Vol286,No.10,pp8085−8093)、これはIL−11のN末端配列でのPEG分子による生物活性の減少が少ないことと一致した。I40NYのインビトロ生物活性は天然のIL−IIのわずか約11%しか保持しないが、インビボ有効性は好影響を受け、インビトロ生物活性データから予想できなかった。下記表6は、未改変IL−11に対して様々な化合物の生物活性比を概略的に示す。
【0071】
PEGでのタンパク質の化学改変は確立された技術であり、タンパク質の溶解性および物理化学的安定性を増強するためにバイオ医薬品業界で応用されてきた。この化学反応は実施が容易である一方で、PEGamerおよび位置異性体を含む異なるペグ化形態の複雑な混合物をもたらすことが多い。高い回収率で生成物を単離するために多数のクロマトグラフィー精製ステップが用いられる。費用および収率の点で商業的に実行可能なプロセスを開発するために、タンパク質濃度、PEGの質、タンパク質/PEG比、反応温度、および緩衝液pHなどの多くの因子、ならびに精製プロセスを最適化することが要求される。
【0072】
コンジュゲーション化学(PEG成分中のアルデヒドカップリング基の還元的アミノ化)によって駆動されるN末端アミンに対して比較的高い選択性で安定なアミン結合を形成するアミン上のY字型状ポリエチレングリコール鎖とのコンジュゲーションによってI40NYを構築した。I40KYは、その一方で、対応するアミド結合を形成するアクセス可能なアミン上でpH8にて官能化されたNHS試薬を用いてコンジュゲートさせた。さらに詳細には、官能化されたアルデヒドはそのpKaが他の求核性物質よりも低いN末端α−アミンに対して非常に選択的であるので、I40NYは酸性条件下での部位特異性反応で産生されるモノペグ化IL−11である。PEGのタンパク質に対する比、反応濃度、pHおよびカイネティクスをコンジュゲーション反応で調査した。反応は、10mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で体積約0.05〜0.5mLの小規模で室温(22〜27℃)にて24時間行った。調査している各反応の収率をRP−UPLCによって測定した。選択された反応について異なるpHを使用して、最適コンジュゲーション収率はpH4.5〜5.5でのものであった。加えて、本発明者らは、反応物質の濃度が生成物収率において重要な役割を果たすことに気づき、5mg/mLより高い濃度でのIL−11とのコンジュゲーションが最適であることを見出した。同様に、PEGとタンパク質の比および還元剤の存在下で室温での5mg/mLタンパク質との反応のコンジュゲーションカイネティクスを調査し、PEGのタンパク質に対する最適モル比が2で、モノPEG化に十分な16時間まで反応を延長することが示唆された。
【0073】
ペグ化タンパク質の精製は、通常、大規模調製においてイオン交換クロマトグラフィーを用いる。しかしながら、モノペグ化物をオリゴペグ化物から分離するための満足できる分解能は、従来型イオン交換体に樹脂1mLあたり1mgもの少ないローディング容量で反応生成物をロードする場合には達成されない。この樹脂の低い容量は、多くの場合、より大規模の製造のための用途を制限する。N末端モノペグ化IL−11を高純度で単離するために、様々なカチオン交換樹脂を試験した。特に、高空隙率樹脂(例えば、GE Healthcare Life Sciences製のMacroCap SP)は、分解能を保持しつつ高い容量を提供し、高いロード条件でモノペグ化標的の高い純度および収率を提供した。精製プロセスは、10mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で2モル比のアルデヒドで活性化された40−KDのY字型状PEG試薬を含むリン酸ナトリウムpH4.5〜5緩衝液中で5mg/mLで調製された400mgのIL−11のバッチサイズで証明された。2Mのグリシンを添加し、続いて4×体積の脱イオン水で希釈することによって、反応溶液をクエンチした。0.2μm膜でろ過した後、結果として得られた粗物質をMacroCap SPカラム(2.6(直径)×10(高さ)cm上に約7.5mg/mL樹脂のローディング容量で)上にロードした。装填後、10カラム体積を越える20mMの酢酸ナトリウムpH5緩衝液でカラムを洗浄し、続いて20カラム体積を越える0.1MのNaClを含む20mMの酢酸ナトリウムpH5緩衝液でさらに洗浄した。生成物を、次いで0.3MのNaClを含む20mMの酢酸ナトリウムpH5緩衝液で溶出させた。I40NYを単離する全体的な収率は26.6%であった。I40NYの生成物純度をSDS−PAGEおよび逆相HPLCによって調べ、そして
図10は、レーン上に示すようなI40NYの量の銀染色したSDS−PAGEゲル上でのI40NYの純度を示す。モノペグ化IL−11の純度は、
図11で表示するクロマトグラムとしてC18−HPLCによって測定すると93%よりも高かった。
【0074】
皮下経路によりI40NYの薬物動態パラメータを測定するために、3匹のオスSprague−Dawleyラットに0.15mg/kgのペグ化IL−11を単回皮下投与により注射した。
図12は、単回皮下投与後にラットにおける免疫反応性IL−11の血漿濃度を示した。コンジュゲート化IL−11の血漿濃度は約12時間で最大レベルに達し、そして投与後50時間にわたって有効なままであった。それに対して、組換えヒトIL−11は約2時間で最大濃度に達し、血漿中の排出半減期は約1.3時間であるので、循環血流から急速に除去された。皮下経路によるI40NYの薬物動態パラメータを下記表7にまとめた。
【0076】
円二色性を用いてI40NYの二次構造を調査した。遠紫外領域で分析した円二色性のクロマトグラムにおいて、本発明者らは、
図13で重ね合わせた両スペクトルからわかるように、I40NYがその未結合対応物と同じ二次構造を維持することを証明した。さらに、I40NYの熱安定性は、熱応力に反応したそれらの二次構造(平均残基楕円率)の変化を測定することによって円二色性により証明した。
図14は、温度増加に反応してI40NYについてより少ない構造変化を示した。
【0077】
骨髄抑制ラットにおけるI40NYの有効性を、カルボプラチンで治療したラットにおいても証明した。オスSprague−Dawleyラットに静脈内投与により40mg/kgのカルボプラチンを注射して、骨髄の機能障害を誘発して血小板減少症に至らしめた。IL−11の毎日注射(連続7日)または同じ0.15mg/kg投与量でI40NYの単回投与を使用した医学的介入を、24時間のカルボプラチン治療の直後に皮下により施した。血小板レベルを
図15に示した。治療をしなければ、対象は約2日の重度の血小板減少症(正常な血小板数の1/3未満)を経験し、未治療の場合は命を脅かす内出血の危険が高いことを意味する。毎日投与の最悪状態は重度の血小板減少症の閾値に非常に近いので、IL−11治療の有効性は低い。それに対して、I40NYの単回投与は、重度の血小板減少症の発生を予防するだけでなく、血小板数が最初の数に戻るのが他の2群よりも1.3日早かったので、血小板レベルの回復も加速した。
【0078】
一方、ヘマトクリットの減少に対して示される副作用も骨髄抑制モデルにおいて調査した。
図16において、IL−11での治療によって、未治療群と比較して、急速にヘマトクリットが減少した。しかしながら、I40NYの単回投与は最悪の状態を軽減し、このことは、IL−11を毎日投与するよりも副作用が弱いことを示唆する。したがって、I40NYは、化学療法により誘発された重度の血小板減少症の予防において有効であることが証明された一方で、血漿増量の症候群を軽減することを理解すべきである。
【0079】
I40NYとペグ化IL−11の別の形態(US8133480に記載するとおり、データは示さない)とのさらなる比較データにより、想定される化合物、特にI20NYおよびI40NYは、‘480特許で記載するペグ化IL−11の他の形態と比較して、インビボ有効性を有意に向上し、および副作用の症候群を軽減していたことが明らかになる。
【0080】
本明細書における発明の概念から逸脱することなく、すでに記載したものに加えて多くのさらなる改変が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、発明の主題は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるものではない。さらに、明細書および特許請求の範囲の両方を解釈する際に、全ての語は、文脈と一致して可能な限り最も広義で解釈されるべきである。特に、「含む(comprisesおよびcomprising)」という語は、要素、成分、またはステップに非排他的に言及し、言及される要素、成分、またはステップが存在し得る、または利用し得る、または明らかに言及されていない他の要素、成分、もしくはステップと組み合わせ得ることを示すと解釈されるべきである。明細書の特許請求の範囲が、A、B、C....およびNからなる群から選択されるもののうちの少なくとも1つについて言及する場合、本文は、A+N、またはB+Nなどではなく、群から1つだけの要素を要求すると解釈されるべきである。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]