(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937986
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成するための方法及び機器
(51)【国際特許分類】
B01D 67/00 20060101AFI20210909BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20210909BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20210909BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20210909BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20210909BHJP
【FI】
B01D67/00
B01D69/12
B81C1/00
B82Y30/00
B82Y40/00
【請求項の数】64
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-512832(P2018-512832)
(86)(22)【出願日】2016年5月20日
(65)【公表番号】特表2018-527176(P2018-527176A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】US2016033487
(87)【国際公開番号】WO2016187519
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月16日
(31)【優先権主張番号】1508669.7
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】シー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ミリス,ジャスティン
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0108008(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0262820(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0309776(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0000520(KR,A)
【文献】
YANAGI Itaru et al.,Fabricating nanopores with diameters of sub-1 nm to 3 nm using multilevel pulse-voltage injection,SCIENTIFIC REPORTS,2014年 5月21日,vol.4,p.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
G01N 27/00
C12M 1/00− 1/70
B81C 1/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する方法であって、前記膜が、前記膜の一方の側の第1の表面エリアと、前記膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、複数の標的領域の各々が、前記膜において、前記第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、前記方法が、
前記膜の前記第1の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、前記第2の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、
イオン溶液を備える前記第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、前記膜全体に電圧を印加して、前記膜における複数の前記標的領域の各々に開孔を形成することと、を含み、
前記第1及び第2の電極が、電位差が標的領域の全体にわたって同時に印加されることを可能にする、方法。
【請求項2】
前記標的領域の各々に、1つの開孔が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開孔の直径が、前記第1の槽を前記第2の槽から分離する、前記標的領域内の膜材料の最小厚さ以上になるまで、各標的領域内の前記開孔が成長される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記膜が、複数の層を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々の境界部が、前記層のうちの2つの間の界面に位置する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々が、前記第2の層の表面によって境界部が形成されるように、前記第1の層の一部を、前記第1の層と前記第2の層との間の前記界面に至るまで除去することによって形成され、
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記複数の標的領域の各々での開孔の前記形成が、前記第2の層の少なくとも一部を貫通する誘電破壊によって生じる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の層が、複数の副層を備え、各副層が、原子層堆積によって形成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2の層が、前記繰り返す連続する副層の一方の側または両方の側の保護層とともに、形成され、
前記保護層が、各標的領域内に前記繰り返す連続する副層を備える自立膜を形成するために、各標的領域内の前記開孔の前記形成の前に除去され、
各標的領域内の前記開孔が、前記自立膜を貫通する誘電破壊によって形成される、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記保護層が、前記第2の層に隣接した前記第1の層の一部を除去するために用いられるエッチングプロセスに耐性がある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記保護層が、Al2O3を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記開孔を形成する前に、前記第2の層をアニーリングすることをさらに含む、請求項8〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記標的領域のうちの1つ以上が、前記くぼみ内のあらゆる開孔の形成の前に、ある深さプロファイルを有するくぼみまたは流体流路を備え、前記深さプロファイルにおいて、前記深さが、前記くぼみまたは流体流路の開口の端から、前記くぼみまたは流体流路の中央領域に向かって次第に増大する、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上が、1よりも大きいアスペクト比を有し、前記アスペクト比が、前記流体流路の長さと前記流体流路の平均幅との比として定義される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上の各々において、前記流体流路の流体電気抵抗の10倍よりも小さい流体電気抵抗を有する開孔が形成される、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
異なる流体電気抵抗を有する流体流路が、異なる標的領域内に設けられ、異なるサイズにされた対応する複数の開孔が、前記第1及び第2の電極を介して印加された前記電圧を介して、並行して成長される、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記標的領域のうちの1つ以上が、平均深さの5倍よりも小さい平均幅を有するくぼみを備える、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成する方法であって、前記方法が、
前記膜全体に電圧を印加し、誘電破壊を用いて前記開孔を形成することを含み、
前記膜が、複数の副層を備え、
前記副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、
前記副層の各々が、原子層堆積によって形成される、方法。
【請求項24】
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、請求項24〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記繰り返す連続する副層が、前記繰り返す連続する副層の一方の側または両方の側の保護層とともに形成され、
前記保護層が、前記繰り返す連続する副層を備える自立膜を形成するために、前記開孔の前記形成の前に除去され、
前記開孔が、前記自立膜を貫通する誘電破壊によって形成される、請求項24〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記保護層が、前記第2の層に隣接した前記第1の層の一部を除去するために用いられるエッチングプロセスに耐性がある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記保護層が、Al2O3を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記開孔を形成する前に、前記複数の副層をアニーリングすることをさらに含む、請求項23〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記電圧の前記印加が、前記電圧によって前記開孔が成長されている時間中の大半の間、略一定の途切れのない電圧を印加することを含む、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記電圧の前記印加が、
開孔形成を開始する第1の電圧を印加することと、
前記第1の電圧より低い第2の電圧を用いて、各形成された開孔を成長させることと、
を含む、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記第2の電圧が、開孔形成を開始するために要するよりも低い、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記電圧の前記印加が、前記第2の電圧を用いて各形成された開孔を成長させる前記ステップの後に、前記第1の電圧以上である第3の電圧を用いて、各形成された開孔を成長させることをさらに含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成する方法であって、前記膜が、前記膜の一方の側の第1の表面エリアと、前記膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、
前記膜の前記第1の表面エリアを、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、前記第2の表面エリアを、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、
イオン溶液を備える前記第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、前記膜全体に電圧を印加して、前記膜に開孔を形成することとを備え、
前記膜と前記第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、前記電流制限抵抗器が、前記開孔の形成後の任意の時点において、前記開孔の電気抵抗の少なくとも10%に達する電気抵抗を有する、方法。
【請求項37】
前記電流制限抵抗器が、前記第1もしくは第2の槽内に設けられた流体抵抗器、前記第1及び第2の槽の外部に少なくとも部分的に設けられた外部抵抗器、またはこれらの両方を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
分子実体と開孔との間の相互作用に依存する測定を行うことによって前記分子実体を検知する方法であって、前記開孔が、請求項1〜37のいずれかに記載の方法によって形成され、前記分子実体がアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチドを含む、方法。
【請求項39】
複数の開孔が、請求項1〜22のいずれかに記載の方法を用いて形成されているか、または1つ以上の開孔が、請求項23〜37のいずれかに記載の方法を用いて形成されている膜を備える、機器。
【請求項40】
分子実体と前記開孔との間の相互作用に依存する測定を行うことによって、前記開孔の各々における前記分子実体を検知するように構成された測定システムをさらに含み、前記分子実体がアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチドを含む、請求項39に記載の機器。
【請求項41】
第1の槽から第2の槽に物質を送出する方法であって、前記第1及び第2の槽が、最初は固体膜によって互いから分離され、前記方法が、請求項1〜22のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成するか、または請求項23〜37のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成し、それによって、前記第1の槽から前記第2の槽への前記物質の通過を可能にすることを含む、方法。
【請求項42】
固体膜を備えるフィルタのろ過特性を修正する方法であって、請求項1〜22のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成することか、または請求項23〜37のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成することを含む、方法。
【請求項43】
反応を生じさせるために、第1の反応種を第2の反応種と接触させる方法であって、第1の槽内に前記第1の反応種を設け、第2の槽内に前記第2の反応種を設けることであって、前記第1及び第2の槽が、固体膜によって互いから分離される、設けることと、請求項1〜22のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成することか、または請求項23〜37のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成することと、を含む、方法。
【請求項44】
誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する機器であって、
固体膜の一方の側の第1の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第1の槽と、
前記膜の他方の側の前記膜の第2の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第2の槽と、
前記第1の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、前記第2の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、
前記膜が、複数の標的領域を備え、各標的領域が、前記膜において、前記第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、
前記標的領域が、前記第1及び第2の電極を介して印加された電圧が、前記標的領域の各々の中に1つの開孔の形成を生じさせることができるように構成され、
前記第1及び第2の電極が、電位差が標的領域の全体にわたって同時に印加されることを可能にするように構成される、機器。
【請求項45】
前記膜が、複数の層を備える、請求項44に記載の機器。
【請求項46】
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々の境界部が、前記層のうちの2つの間の界面に位置する、請求項45に記載の機器。
【請求項47】
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々が、前記第2の層の表面によって前記境界部が形成されるように、前記第1の層の一部を、前記第1の層と前記第2の層との間の前記界面に至るまで除去することによって形成され、
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、請求項46に記載の機器。
【請求項48】
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記複数の標的領域の各々での開孔の前記形成が、前記第2の層の少なくとも一部を貫通する誘電破壊によって生じる、請求項44〜47のいずれかに記載の機器。
【請求項49】
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、請求項48に記載の機器。
【請求項50】
前記第2の層が、複数の副層を備え、各副層が、原子層堆積によって形成される、請求項49に記載の機器。
【請求項51】
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、請求項50に記載の機器。
【請求項52】
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、請求項51に記載の機器。
【請求項53】
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、請求項52に記載の機器。
【請求項54】
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、請求項51〜53のいずれかに記載の機器。
【請求項55】
前記標的領域のうちの1つ以上が、前記くぼみ内での任意の開孔の形成の前に、前記くぼみまたは流体流路の開口の縁から、前記くぼみまたは流体流路の中央領域に向かって深さが次第に増大する深さプロファイルを有するくぼみまたは流体流路を備える、請求項44〜54のいずれかに記載の機器。
【請求項56】
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上が、1よりも大きいアスペクト比を有し、前記アスペクト比が、前記流体流路の長さと前記流体流路の平均幅との比として定義される、請求項44〜55のいずれかに記載の機器。
【請求項57】
前記標的領域のうちの1つ以上が、平均深さの5倍よりも小さい平均幅を有するくぼみを備える、請求項44〜56のいずれかに記載の機器。
【請求項58】
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成するための機器であって、
前記固体膜の各側と接触しているイオン溶液を保持するための槽システムと、
誘電破壊を用いて前記膜に前記開孔を形成するために、前記イオン溶液を介して前記膜全体に電圧を印加するための電圧印加部と、を含み、
前記膜が、複数の副層を備え、
前記副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、
前記副層の各々が、原子層堆積によって形成される、機器。
【請求項59】
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、請求項58に記載の機器。
【請求項60】
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、請求項59に記載の機器。
【請求項61】
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、請求項60に記載の機器。
【請求項62】
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、請求項58〜61のいずれかに記載の機器。
【請求項63】
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成するための機器であって、
固体膜の一方の側の第1の表面エリアと接触しているイオン溶液を保持する第1の槽と、
前記膜の他方の側の第2の表面エリアと接触しているイオン溶液を保持する第2の槽と、
前記第1の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、前記第2の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、
前記膜と前記第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、前記電流制限抵抗器が、前記開孔の形成後の任意の時点において、前記開孔の電気抵抗の少なくとも10%に達する電気抵抗を有する、機器。
【請求項64】
前記電流制限抵抗器が、前記第1または第2の槽内に設けられた流体抵抗器と、前記第1及び第2の槽、または両方の外部に少なくとも部分的に設けられた外部抵抗器とを含む、請求項63に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電破壊を用いて固体膜に1つまたは多数の開孔を形成するための方法及び機器に関する。開孔は、ナノスケールの開孔であってもよく、これらはナノポアと称される場合があり、各々がナノメートルスケールでの寸法、例えば約100nmよりも小さい長さ及び/または直径を有する。結果として得られた多孔膜は、大幅な数の用途で用いられ得る。
【0002】
ナノポアは、ナノスケールでの動作が必要とされるさまざまな装置で用いられ得る。1つの重要な用途は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド等の分子を局在化し、検出し、及び/または特性を明らかにすることにある。ナノポアフィルタ及びナノスケールの多孔膜は、多くの肝要な生物学的分離及び特性化手順に加えて、ろ過プロセスにも同様に重要である。多くの他のマイクロ流体及びナノ流体処理及び制御用途は、ナノメートル材料におけるナノスケールの特徴に同様に依拠する。
【0003】
ナノスケールの構造体、例えばナノポアをナノメートルの薄さの材料で作製するために、一般的には、1原子の精度で取り扱うことが必要とされる。これは、ほとんどの従来のマイクロエレクトロニック製作プロセスとは対照的であり、それらは性質上、数十ナノメートルまで下がる精度のみを必要とする。原子レベルでの特徴分解能及び製作精度なしに、ナノメートルの薄さの材料を、ナノスケールで出現する特定の特性を活用するような方法で取り扱うことは難しい。例えばWO03003446 A3に開示された方法のように、固体膜にナノポアを調製するための非常に多くの方法が提案されてきた。
【0004】
高精度のナノスケール処理は、歴史的には、1回1つの製作パラダイムが必要とされており、これは多くの場合コストがかかり、非効率である。一般的に、従来のマイクロエレクトロニック生産の大容量のバッチ生産技術は、ナノスケールの特徴製作及び材料の取り扱いに適合していない。これは、多くの重要なナノスケールの用途の商業的実施を妨げている。
【0005】
誘電破壊は、ナノスケールの開孔を形成するための代替の手法として研究されてきた。しかしながら、誘電プロセスを制御することは、困難であることがわかっている。開孔ごとの破壊プロセスの個々の電子的制御は、開孔が形成された膜に対する損傷を回避するために、及び/または所望の開孔サイズを達成するために必要であることがわかった。より厚い膜に開孔を形成することは、より大きな電圧が必要であったために困難であった。より大きな電圧は、膜に対する損傷または不揃いな開孔の形成のリスクを増大させる。所与の溶液チャンバ間の精密な所望のサイズの開孔は、複数の互いに隔離した流体チャンバを異なる位置に形成するために、複雑なマイクロ流体構成が設けられない限り、1度に1つしか作製できず、商業的用途の可能性を制限していた。
【0006】
本発明の目的は、1つのまたは多数の開孔を固体膜に、特にナノスケールですばやくかつ安価に形成することを可能にする方法及び機器を提供することである。
【0007】
本発明の態様によれば、誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する方法が提供され、膜が、膜の一方の側の第1の表面エリアと、膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、複数の標的領域の各々が、膜において、第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、方法は、膜の第1の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、第2の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、イオン溶液を備える第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、膜全体に電圧を印加して、膜における複数の標的領域の各々に開孔を形成することと、を含む。第1及び第2の槽はお互いに異なるイオンを備え得る。2つの槽のイオン強度は異なる場合がある。イオン溶液提供の立替として、第1及び/または第2の槽はイオン溶液を含んでいてもよい。
【0008】
このように、誘電破壊を用いて多数の開孔を並行して形成することができる方法が提供される。一実施形態では、少なくとも10個の、任意には少なくとも50個の、任意には少なくとも100個の、任意には少なくとも1000個の、任意には少なくとも10000個の、任意には少なくとも100000個の、任意には少なくとも1000000個の開孔が並行して形成される。イオン溶液の連続体を、複数の標的領域と同時に接触させる。電極は、電位差が標的領域の全体にわたって同時に印加されることを可能にする。誘電破壊及び開孔の形成は、並行して生じ、それによって、多数の開孔が、1つの開孔に必要とされるのと同じ時間で形成されることを可能にする。したがって、多数の開孔を効率的に製作することができる。
【0009】
一実施形態では、本方法は、標的領域の各々に、1つの開孔が形成されるように適用される。これは、例えば好適な形状にされ、及び/または寸法にされ、及び/または空間的に分布されたくぼみまたは流体流路を用いて達成され得る。例えば、本機器は、誘電破壊が標的領域のうちの1つで生じると、標的領域内の膜を通して結果として得られた電気抵抗の低減(開孔によってもたらされた新しい電気的通路に起因する)が、隣接する標的領域内で生じる誘電破壊(例えば、隣接する標的領域を十分遠くに離れて位置付けることによって)を妨げないように構成され得る。
【0010】
標的領域の各々は、第1の槽を第2の槽から分離する膜材料の厚さが、他の場所よりも薄くなる(他の領域に比べて、その特定の領域内での誘電破壊を促進するため)領域を備える。この薄膜化がくぼみまたは流体流路によって提供される場合、くぼみまたは流体流路の平均深さは、くぼみまたは流体流路が存在しない領域内の膜の平均厚さよりも、通常は少なくとも10%小さく、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%小さくてもよい。1つの特定の実施形態では、くぼみまたは流体流路の厚さは、約5〜6nmであり、くぼみまたは流体流路の外側領域の厚さは、約50〜60nmである。他の実施形態では、くぼみまたは流体流路内の厚さは、約2〜3nm程度の薄さであってもよい。一実施形態では、流体流路は、300nmを上回る厚さを有する膜に形成される。そのような実施形態では、くぼみまたは流体流路内の厚さを約2〜3nmに構成することは、結果として、くぼみまたは流体流路内の平均深さが、くぼみまたは流体流路が存在しない領域内の膜の平均厚さよりも、少なくとも99%小さくなる。
【0011】
一実施形態では、各標的領域内の開孔は、開孔の直径が、第1の槽を第2の槽から分離する、標的領域内の膜材料の最小厚さ以上になるまで成長される。最小厚さは、くぼみの底部または流体流路の端における厚さであってもよい。発明者らは、開孔の直径が、開孔が形成されている膜材料の厚さと等しいかまたはわずかに大きい(通常は、膜材料の厚さの約1〜1.5倍の間)とき、開孔の成長率が突然低減することを認識している。これは、開孔直径が開孔厚さと同等であるときアクセス抵抗が著しくなるためであり、このことは、結果として開孔全体にわたる電圧降下を低減させる。言い換えると、アクセス抵抗は、制限抵抗器として作用する。開孔をこのポイントに到達するまでゆっくりと成長させることによって、高性能な電子機器なしに、開孔の直径を正確に制御することが可能である。特に、これらの開孔が、わずかに異なる時間で成長を開始し、及び/またはわずかに異なる成長率を経るかもしれない場合であっても(誘電破壊プロセスの確率的な性質に起因する)同じサイズの多数の開孔を同時に形成することが可能である。いくつかの開孔の直径が、それらが形成された膜材料の厚さ以上になると、他の開孔がすばやく追いつき、それによって、高度に均一なサイズの分布につながる(例えば、異なる孔間の直径のばらつきが、約10〜20%の範囲内かまたはそれより良好になる)。この手法は、開孔サイズを制御するために膜材料の厚さを用いることに基づき、開孔サイズの正確な制御を可能にするが、これは、最新の製作プロセスが、膜材料の厚さを(すなわち、くぼみまたは流体流路の形成中に)高精度で制御することができるためである。例えば、1nmあるいはサブナノメートルに至る厚さ精度は現実的であるが、一方で、標準的なリソグラフィプロセスを用いて、特徴が深さに対して垂直な方向に形成されることができる精度は、通常は数十nm程度である。
【0012】
本発明の方法を用いて作製され得る開孔の直径は、0.1nm〜100nmに及んでもよく、例えば1.0nm〜10nmに及んでもよい。0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.5nm、2nm、3nm、4nmまたは5nmの開孔が製作され得る。開孔間の距離(ピッチ)は、用途に依存して、10nm以上、任意には50nm以上、任意には100nm以上、任意には1ミクロン以上、任意には50ミクロン以上であってもよい。開孔は、規則的なアレイで、例えば正方形または六角形に充填されたアレイで、または不規則なアレイで設けられてもよい。例えば、直径2nm及び開孔間の離隔距離20nmを有する開孔による正方形に充填されたアレイでは、アレイ内の開孔の密度は、1/121nm
2である。
【0013】
一実施形態では、くぼみの底部または流体流路の端の膜材料の厚さは、複数の異なる層(例えば、2層)から膜を形成し、層のうちの2つの間の界面を用いて、例えば、エッチングプロセスを界面で、またはその付近(例えば、ちょうど超えたところ)で遅くするかまたは停止させるように構成することによって、くぼみまたは流体流路の境界部(例えば、それぞれ底部または端)を画定することによって制御可能である。エッチングプロセスを界面で、またはその付近で遅くするかまたは停止させるように構成することは、層の組成及びエッチングプロセスの性質(例えば、エッチング液の組成)を、エッチングプロセスが層のうちの1つについてはすばやく進行し、他の層についてはゆっくりと進行するかまたは全く進行しないように選択することによって、達成されることができる。
【0014】
一実施形態では、標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、流体流路のうちの1つ以上が、1よりも大きい、任意には5よりも大きい、任意には10よりも大きい、任意には20よりも大きい、任意には30よりも大きい、任意には40よりも大きい、任意には50よりも大きい、任意には75よりも大きい、任意には100よりも大きいアスペクト比を有する。アスペクト比は、流体流路の長さと流体流路の平均幅との比として定義される。高いアスペクト比を有する流体流路は、通常は、より低いアスペクト比を有する流体流路よりも高い流体電気抵抗を有する。そのような流体流路は、電流制限抵抗器として作用することができ、開孔が形成されたときに膜全体にわたる電圧を著しく低減させる。電圧は、およそR
2/(R
1+R
2)まで低減され、ここでR
2は、流体流路の抵抗であり、R
1は、開孔の抵抗である。この式は、アクセス抵抗の影響、または電界線が方向を変えた場合の領域に対する十分な重要性を考慮していない。アクセス抵抗が含まれた、電圧低減のより正確な記述は、以下の式によって与えられる。
(R
2+R
a(2))/(2R
a(1)+R
1+R
2+R
a(2))
ここで、R
a(n)=ρ
n/2d
nは、アクセス抵抗(n=1のときの開孔及びn=2のときの流体流路に対する)であり、ρ
nは、膜の両側のイオン溶液の抵抗率であり、d
1、d
2は、それぞれ開孔及び流体流路の直系である。この計算は、d
2>>d
1を前提とする。さもなければ、開孔と流体流路との間の界面の周囲の領域の抵抗は、より詳細にモデル化される必要がある。有限要素シミュレーションを用いて、電界線方向の変化を明らかにすることが可能である。
【0015】
一実施形態では、標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、流体流路のうちの1つ以上の各々において、流体流路の流体電気抵抗の10倍よりも小さい、任意には5倍よりも小さい、任意には2倍よりも小さい流体電気抵抗を有する開孔が形成される。一実施形態では、標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、流体流路のうちの1つ以上の各々において、流体流路の流体電気抵抗よりも小さい流体電気抵抗を有する開孔が形成される。このようにして、流体流路の流体電気抵抗を、少なくとも開孔の流体電気抵抗の有意な部分(例えば、約0.3〜0.5の間)とするように構成することによって、開孔形成後、流体抵抗器の長さに沿って著しい電圧降下があり、開孔の領域内の膜材料全体にわたる電圧降下を低減させることを保証する。さらに、著しい流体電気抵抗を有する流体流路を提供することによって、1つの流体流路内の開孔の形成の、任意の隣接する流体流路内の電界への影響を低減する。誤って大きな開孔が1つの流体流路内に形成された場合であっても、流体流路自体の流体電気抵抗が、隣接する流体流路内の電界におけるあらゆる過剰な低減を防止し、それによって、開孔は依然としてそれらの流路内に正しく形成されることができる。
【0016】
一実施形態では、異なる標的領域内に、異なる流体電気抵抗を有する流体流路が設けられ、異なるサイズにされた対応する複数の開孔が、第1及び第2の電極を介して印加された電圧を介して、並行して成長される。これは、異なるサイズの多数の開孔の、制御された方法での効率的な形成を可能にする。本実施例では、開孔が形成された後の開孔全体にわたる電圧の低減は、異なる流体電気抵抗を有する流体流路ごとに異なる。このように、開孔に続く成長率は異なる。これを活用して、流体流路の端における膜材料の厚さが同じであっても、異なるサイズの開孔の同時形成を可能にする。成長率が際立って遅くなる開孔のサイズは、異なる流体電気抵抗を有する流体流路ごとに異なる。
【0017】
本発明の代替の態様では、誘電破壊を用いて固体膜
に開孔を形成する方法が提供され、膜が、膜の一方の側の第1の表面エリアと、膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、膜の第1の表面エリアを、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、第2の表面エリアを、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、イオン溶液を備える第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、膜全体に電圧を印加して、膜に開孔を形成することとを備え、膜と第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、電流制限抵抗器が、開孔の形成後の任意の時点において、開孔の電気抵抗の少なくとも10%、任意には少なくとも20%、任意には少なくとも50%、任意には少なくとも100%に達する電気抵抗を有する。
【0018】
電流制限抵抗器は、電流制限抵抗器がない場合に、第1及び第2の槽内のイオン溶液に関連するアクセス抵抗に加えて、抵抗をもたらす。電流制限抵抗器は、開孔が形成されたときに、電流制限抵抗器が存在しない場合と比較して開孔全体にわたる電圧の低減量を増大させる。電流制限抵抗器は、第1または第2の槽内に設けられた流体抵抗器、及び第1及び第2の槽の外部に少なくとも部分的に設けられた外部抵抗器のいずれかまたは両方を備え得る。外部抵抗器は、流体を伴わない電気回路で慣行的に用いられる従来の受動固体状態のタイプの抵抗器であってもよい。
【0019】
本電流制限抵抗器は、高性能かつ高価な電子機器なしに、開孔直径成長プロセスの速度を制御する簡易な方法を提供する。電流制限抵抗器は、所与の印加電圧で得られ得る開孔直径を決定する。本手法は、例えば、誘電破壊が始まると電子フィードバックが電圧を遮断するために用いられるか、または電圧を十分にすばやく停止させることを可能にするために非常に短い電圧パルスが用いられる従来技術の代案よりも簡易である。それにもかかわらず、本方法は、例えば電極間で開孔を通して流れるイオン流の変化の測定によって、開孔の形成を示すために、電子フィードバックの使用を含んでもよい。例えば、フィードバックは、例えばイオン電流の特定の値を超過した後、電破壊プロセスを切り替えることによって、形成される開孔の数を制限し得る。
【0020】
代替の態様では、誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する方法が提供され、本方法は、膜全体に電圧を印加し、誘電破壊を用いて開孔を形成することを含み、膜は、複数の副層を備え、副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、副層の各々が、原子層堆積によって形成される。
【0021】
発明者らは、原子層堆積を用いて異なる組成の多数の副層から膜を形成することは、膜がきわめて薄い場合であっても、開孔の形状寸法を高精度に制御することが可能であることを発見した。原子層堆積は、〜1Å程度の分解能で、非常に均質かつ精密な厚さ制御を可能にする。多くの反応性イオンエッチング(RIE)プロセスに対して不活性である材料を、原子層堆積を用いて適用することができる。原子層堆積によって提供される制御のレベルは、代替のフィルム成長技術を用いて通常達成されることができるよりも高い。開孔の長さは、開孔が形成される層の厚さによって決定され、高精度で制御されることができる。
【0022】
開孔を通過する分子実体(例えば、DNA材料)の検知のために開孔を用いた場合、開孔の直径及び長さに臨界的に依存する性能(例えば、異なるDNA塩基間で区別する能力)が見いだされた。直径及び/または長さを制御することができる制度を改善することによって、性能が改善される。
【0023】
発明者らは、原子層堆積を用いて異なる組成の多数の副層から膜を形成することによって、使用中高度に安定した開孔が提供されることをさらに発見した。例えば、そのようにして形成された開孔の直径及び長さは、使用中、長期間にわたって(例えば、数週間または1カ月以上)安定したままであることがわかった。一実施形態では、複数の副層は、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層は、少なくとも第1の副層と、第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備え、好ましくは、第1の副層は、第2の副層に対して非エピタキシャルである。そのような繰り返す配列の非エピタキシャル副層の使用は、副層内部での結晶成長に起因する欠陥の形成を低減し、非晶質フィルムを保全する。これによって、副層の質、ならびに膜全体の質及び完全性は、均質性を改善し、及び/または欠陥のある濃度を低減させることによって改善される。
【0024】
一実施形態では、複数の副層は、開孔の形成前にアニーリングされる。アニーリングは、副層において著しい結晶化が生じ得る温度を下回る温度で行われ得る。代替的に、アニーリングは、より高い温度で行われてもよい。アニーリングは、副層の質を改善する(例えば、均質性を改善し、及び/または欠陥のある濃度を低減させる)。
【0025】
副層の質を改善することによって、さもなければ誘電破壊を用いた開孔の最良な形成を乱す可能性がある、副層を通る電気の漏れが低減される。
【0026】
代替の態様では、誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成するための機器が提供され、固体膜の一方の側の第1の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第1の槽と、膜の他方の側の膜の第2の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第2の槽と、第1の槽内のイオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、第2の槽内のイオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、膜が、複数の標的領域を備え、各標的領域が、膜において、第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、標的領域が、第1及び第2の電極を介して印加された電圧が、標的領域の各々の中に1つの開孔の形成を生じさせることができるように構成される。
【0027】
代替の態様では、誘電破壊を用いて固体膜
に開孔を形成する機器が提供され、固体膜の一方の側の第1の表面エリ
アと接触しているイオン溶液を保持す
る第1の槽と、膜の他方の
側の第2の表面エリ
アと接触しているイオン溶液を保持す
る第2の槽と、第1の槽内のイオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、第2の槽内のイオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、膜と第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、電流制限抵抗器が、開孔の形成後の任意の時点において、開孔の電気抵抗の少なくとも10%に達する電気抵抗を有する。
【0028】
代替の態様では、誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する機器が提供され、固体膜の各側と接触しているイオン溶液を保持するための槽システムと、誘電破壊を用いて膜に開孔を形成するために、イオン溶液を介して膜全体に電圧を印加するための電圧印加部と、を含み、膜が、複数の副層を備え、副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、副層の各々が、原子層堆積によって形成される。
【0029】
代替の態様では、複数の開孔を備える固体膜が提供され、各開孔が、第1の槽を、開孔が形成された第2の槽から分離する膜材料の最小厚さ以上の直径を有する。
【0030】
代替の態様では、固体膜が提供され、複数の標的領域であって、各標的領域が、膜にくぼみまたは流体流路を備える、標的領域と、複数のナノスケールの開孔であって、各開孔が、標的領域のうちの異なる1つの中に位置し、標的領域の最小厚さ以上である直径を有する、開孔と、を備える。
【0031】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の実施形態が例示のみを目的として記載され、図面において、対応する参照符号は対応するパーツを示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】対応する標的領域内に複数のくぼみを備える膜を備える膜アセンブリの一部の概略的な側面断面図である。
【
図2】矩形の深さプロファイルを有する、
図1の膜内のくぼみのうちの1つの拡大側面断面図である。
【
図3】湾曲した深さプロファイルを有する代替のくぼみの拡大側面断面図である。
【
図4】膜が、矩形の深さプロファイルを有する複数のくぼみを備える一実施形態の拡大側面断面図である。
【
図5】膜が、湾曲した深さプロファイルを有する複数のくぼみを備える一実施形態の拡大側面断面図である。
【
図6】膜が、1よりも大きいアスペクト比を有する複数の流体流路を備える一実施形態の拡大側面断面図である。
【
図7】イオン溶液によって接触される第1の表面エリア内に形成された複数の標的領域を示す、膜の一例の一部の平面図である。
【
図8】
図7の膜の一部の底面図であり、イオン溶液によって接触される第2の表面エリアを示し、第2の表面エリアの各隔離領域が、1つの標的領域を包含する。
【
図9】イオン溶液によって接触される第1の表面エリア内に形成された複数の標的領域を示す膜の代替的な例の一部の平面図である。
【
図10】
図9の膜の一部の底面図であり、イオン溶液によって接触される第2の表面エリアを示し、第2の表面エリアの各隔離領域が、複数の標的領域を包含する。
【
図11】複数のナノスケールの開孔を形成するための機器の例を描画する。
【
図12】ナノスケールの開孔を形成するための機器の代替の例を描画し、外部抵抗器が電流制限抵抗器として設けられている。
【
図14】異なる流体抵抗を有する流体流路を備える膜を示す。
【
図15】流体流路の正確な形成を促進するための層状構造を有する膜を示す。
【
図16】
図18及び19にそれぞれ描画された2つの例の膜アセンブリを製造する方法における段階を描画する概略的な側面断面図である。
【
図17】
図18及び19にそれぞれ描画された2つの例の膜アセンブリを製造する方法における段階を描画する概略的な側面断面図である。
【
図18】
図18及び19にそれぞれ描画された2つの例の膜アセンブリを製造する方法における段階を描画する概略的な側面断面図である。
【
図19】
図18及び19にそれぞれ描画された2つの例の膜アセンブリを製造する方法における段階を描画する概略的な側面断面図である。
【
図20】繰り返す連続する副層と、保護層とを備える膜の一部の概略的な側面断面図である。
【
図21】繰り返す連続する副層を備える膜の一部の概略的な側面断面図である。
【0033】
一実施形態では、その一例が
図11に示され、膜内に複数の開孔を形成するための機器1が設けられる。開孔は、膜の誘電破壊によって形成される。一実施形態では、膜は固体膜である。一実施形態では、開孔は、ナノスケールの開孔、例えば100nm以下程度の、任意には50nm以下の、任意には20nm以下の、任意には10nm以下の、任意には5nm以下の、任意には2nm以下の、任意には1nm以下の特徴的な寸法(例えば、直径または深さ、もしくは両方)を有する開孔である。各開孔は、膜の一方の側から膜の他方の側に延び、それによって膜を完全に横断する導管を提供する。
【0034】
図1は、膜2の構成の一例を描画する。本実施例では、膜2は、支持構造体8、10に取り付けられる。膜2及び支持構造体8、10の組み合わせは、膜アセンブリ36と称され得る。膜アセンブリ36は、1つの一体膜2(例えば、ウェーハ)を用いて複数の膜アセンブリを製造し、複数の膜アセンブリから膜アセンブリ36を切り取ることによって形成され得る。代替的に、複数の膜アセンブリは、膜アセンブリのうちのただ1つと相互作用するように構成されている機器1とともに接続されたままにしてもよい。そのような一実施形態では、機器1の他のケースは、膜アセンブリの他の1つと相互作用するように設けられ得る。代替的に、膜アセンブリ36は、膜2を形成するウェーハの全体を含み得る。
【0035】
膜2は、さまざまな材料及び材料の組み合わせで構成され得る。膜2の抵抗率は、誘電破壊が生じることを可能にするために十分に高くあるべきである。抵抗率は、異方性である場合、誘電破壊が生じることを可能にするために、膜面6、7に対して垂直な方向に向かって十分に高くあるべきである。膜2は、単層または複数の異なる層を備え得る。複数の層を有する膜の特定の例、及びそれらに関連する利点が、
図16〜19を参照して以下に述べられる。
【0036】
例えば
図1及び11に示されるように、機器1は、イオン溶液32を保持するように構成された第1の槽38を備える。第1の槽38内のイオン溶液32は、膜2の一方の側(図中に示された方位における膜2の上側)の第1の表面エリア6の全体に接触する。機器1は、イオン溶液34を保持するように構成された第2の槽40をさらに備える。第2の槽40内のイオン溶液34の組成は、第1の槽38内のイオン溶液32の組成と同じかまたは異なり得る。第2の槽40内のイオン溶液34は、膜2の他方の側(膜2図中に示された方位における膜2の下側)の第2の表面エリア7の全体に接触する。第1の槽38及び第2の槽40の組み合わせは、槽システムと称され得る。第1及び第2の表面エリア6、7のいずれかまたは両方が、互いから隔離された多数の領域または島状部から形成されてもよく、またはされなくてもよい。第1及び第2の表面エリア6、7の全体の各々がイオン溶液によって接触されることは、第1及び第2の表面エリア6、7の各々のすべての部分が、イオン溶液の連続体によってともに接続される。したがって、第1の表面エリア6と接触しているイオン溶液に印加される電圧が、第1の表面エリア6の全体に印加される。第2の表面エリア7と接触しているイオン溶液に印加される電圧は、第2の表面エリア7の全体に印加される。
【0037】
電圧印加部は、標的領域5内を含む膜2全体に電圧を印加するために設けられる。電圧は、イオン溶液32、34と、膜2の第1及び第2の表面エリア6、7とを介して印加される。電圧印加部は、第1の電極28と第2の電極30とを備える。第1の電極28は、第1の槽38内のイオン溶液32に接触するように構成される。第2の電極30は、第2の槽40内のイオン溶液34に接触するように構成される。一実施形態では、電圧印加部は、電圧印加部によって印加された電圧を制御するための制御部26を備える。
【0038】
膜2は、複数の標的領域5を備える。標的領域5の各々は、くぼみ4または流体流路24を備える。くぼみ4または流体流路24は、第1または第2の表面エリア6、7内へと開口する。くぼみ4または流体流路24は、第1及び第2の槽間に厚さが低減された通路を提供し、それによって、標的領域5内での開孔の形成を促す。例えば、くぼみ4の基部の、または流体流路24の端の膜2の領域は、標的領域5の外側の領域よりも細くてもよい。
【0039】
機器1は、第1及び第2の電極28、30を介して印加された電圧が、標的領域5の各々の中で、1つの開孔20の形成を引き起こすことができるように構成される。このように、例えば、標的領域5は、各々から十分に間隔を置かれ、誘電破壊が1つの標的領域5内で開始されたときに生じる抵抗の低減が、隣接する標的領域5内で誘電破壊が開始されることを妨げない。このことは重要であるが、それは、電圧が標的領域5の全体に同時に印加されるのではあるが、誘電破壊が始まる正確な瞬間が、異なる標的領域間で著しく異なる場合があるためである。抵抗の低減は、標的領域5の領域内の電界の規模を低減させる傾向がある。
【0040】
図1に示された構成の例では、膜2は、SiNxの層を備える。膜2は、Siの層8と、さらなるSiNxの層10とによって支持される(それによって、Si層8が、膜2のSiNxと層10のSiNxとの間に挟まれるようにされる)。示された例では、Si層8は、約300ミクロンの厚さを有する。SiNx膜2及び層10は、約40nmの厚さD3を各々有する。膜アセンブリ36は、以下のように形成され得る。従来のリソグラフィ及びKOHエッチングを用いて、膜2と、層8及び10とを形成することができる。この特定の実施形態では、目標領域5の各々が、膜2の上面内へと開口するくぼみ4を備える。電子ビームリソグラフィ及び反応性イオンエッチングを用いて、これらのくぼみ4を画定する(任意の形状、例えば円形の)領域を画定し、これらの領域内の膜2を薄くして、くぼみ4の所要深さを提供し得る。
図2は、
図1のくぼみ4の一方の拡大図を提供する。本例では、くぼみ4内の膜2の厚さD4は、約10nmである(くぼみ4の深さが約30nmであることを意味する)。
【0041】
図7及び8はそれぞれ、
図1の膜2の一部の上面図及び底面図である。図に示すように、第1の表面エリア6(
図7)は、いかなる孔もない1つの領域からなる。第2の表面エリア7は、支持構造の層8によって互いから分離された複数の隔離領域を備える。白で示された領域は、支持構造の層10の底面22に対応する。本例では、第2の表面エリア7の隔離領域は、寸法が15×15ミクロンの正方形である。隔離領域の形状は、製作のために選択された特定のプロセスによって決定される。KOHエッチングは、正方形形状のエッチピットを作製するが、反応性イオンエッチングは、任意の他の形状、例えば、円形形状(例えば、直径が15ミクロンである)を呈する可能性がある。
【0042】
図1、7及び8の例では、第2の表面エリア7内の隔離領域の各々が、1つの標的領域5(膜2の上側に形成されたくぼみ4を備える)を包含する。したがって、本例では、標的領域5は、互いから比較的遠くに離れて(約15ミクロンよりも大きく)間隔を置かれる。しかしながら、このことは必須ではない。他の実施形態では、例えば
図9及び10に示されるように、第2の表面エリア7内の隔離領域の各々は、多数の標的領域5を包含し、及び/または標的領域5は、さもなければ、
図1、7及び8のケースよりも互いにより近接して位置付けられる。複数のさらに近接して間隔を置かれた標的領域5を有する膜2の一部の例が、
図4〜6に概略的に示される。そのような例では、標的領域5は、例えば約50nmの直径D1と、約1ミクロンの離隔距離D2とを有し得る。必要に応じて、さまざまな他の寸法及び間隔が選択されてもよい。一実施形態では、1つの隔離領域が設けられ、1つの隔離領域が、多数の標的領域を備える。
【0043】
くぼみ4または流体流路24の平面視での形状は、任意の形、例えば円形を取り得る。
図1、2及び4を参照して記載された実施形態では、くぼみ4は、平面視で円形形状と、矩形の深さプロファイルとを有する(それによって、円筒を形成する)。他の実施形態では、くぼみ4または流体流路24は、異なるプロファイルを有し得る。1つの実施形態では、くぼみ4について
図3及び5に示されるように、くぼみ4または流体流路24は、くぼみ4または流体流路24内での任意の開孔20の形成の前に、くぼみ4または流体流路24の開口の縁44から、くぼみ4または流体流路24の中央領域(例えば、流体流路44のケースでは、軸方向中央)に向かって深さが次第に増大する深さプロファイルを有する。深さプロファイルは、
図3及び5に示されるように、滑らかな深さプロファイル、例えば丸みを帯びた深さプロファイルであってもよい。これは、例えば反応性イオンエッチングの好適な制御によって、またはウェットエッチングプロセスを用いることによって、形成され得る。代替的に、深さプロファイルは、角度のある、例えば円錐形であってもよい。このタイプのくぼみ4または流体流路24内の膜2の、平面視におけるもっとも狭い部分の領域は、縁44によって画定されたくぼみ4または流体流路24全体の平面視における領域よりも著しく小さく、任意には少なくとも75%小さく、任意には少なくとも90%小さく、任意には少なくとも95%小さい。したがって、誘電破壊がもっとも好都合である領域(すなわち、もっとも狭い領域)は、そのようなくぼみ4または流体流路24におけるほうが、他の実施形態、例えば
図1、2及び4に示されるくぼみ4におけるよりも小さい場合がある。したがって、2つ以上の別個の開孔が同じくぼみ4または流体流路24内に形成される可能性が低減されるが、これは、そのようなプロセスを行うために使用可能なスペースが少ないためである。したがって、各くぼみ4または流体流路24内の開孔の形成は、簡略化され、及び/またはより高信頼にされることができる。例えば、先に詳細に記載されたように、開孔を確実に形成するために、第1及び第2の電圧を繰り返し印加することは必要ではない。開孔全体は、例えば、選択されたパーセンタイルまたは開孔20を開始するために必要とされる最小電圧の統計分布の上限よりも高いレベルの電圧(例えば、10V)を、絶えず印加することによって形成されることができる。
【0044】
流体流路24は、膜2の平面に対して垂直に、及び/または直線状に延び、例えば円筒形状を形成し得る。しかしながら、このことは必須ではない。流体流路24は、例えば少なくとも直線状に延びない、及び/または膜2の平面に対して垂直な方向に延びない部分を有するさまざまな他の形を取ってもよい。例えば、流体流路24が膜2の平面に対して並行に延びる部分を有する蛇行形状が、提供されることができる。そのような形状は、高い流体電気抵抗を提供するために、高いアスペクト比を備える流体流路24を設けることが望ましい場合に有用であり得る。
【0045】
一実施形態では、1よりも大きい、任意には1よりもはるかに大きいアスペクト比を有する流体流路24が設けられる。アスペクト比は、流体流路の長さと流体流路の平均幅との比として定義される。
図6は、較的浅いくぼみ4に代えて、1よりも大きいアスペクト比を有する複数の流体流路24が設けられることを除き、
図4及び5のものに対応する膜2の一部の例を示す。電流制限抵抗器としての流体流路24の役割が、以下にさらに詳細に述べられる。
【0046】
一実施形態では、互いから空間的に分離された複数の開孔20が形成されるまで、膜2全体に電圧が印加される。一実施形態では、標的領域5の一つ一つに1つの開孔20が形成される。各開孔20は、くぼみ4または流体流路24に形成される。
【0047】
一実施形態では、各標的領域内5内の開孔20は、開孔20の直径が、標的領域5内で第1の槽を第2の槽から分離する膜材料の最小厚さ以上になるまで、(電圧を印加し続けることによって)成長される。流体流路24が設けられる場合、最小厚さは、流体流路24の端においては、膜材料の厚さであってもよい。これは、いくつかの形状寸法、例えば流体流路24が膜2の平面に対して垂直な方向に限って延びない形状寸法に対する膜の総厚さ2に等しくなくてもよい。くぼみ4が設けられる場合、最小厚さは、通常はくぼみ4の基部における厚さである。
【0048】
発明者らは、膜2内での開孔20の成長率は、開孔20の直径が増大するにしたがって低減することを認識した。成長率は、開孔20の直径が、開孔20が形成されている材料の厚さ以上であるときに、略ゼロまで低下する。また、発明者らは、この効果が、誘電破壊によって形成される開孔20サイズを、簡易かつ高信頼な方法で制御することを可能にすることを認識した。成長プロセスを監視するための複雑な電子機器を用いて、開孔20を個々に直列に形成することを必要とすることに代えて、成長プロセスリアルタイムでほとんど監視しないかまたは監視しないで、多数の開孔20を同時に形成することができる。1つの電圧を、多数の標的領域5に同時に印加することができる。誘電破壊は、異なる標的領域5にわたってわずかに異なる速さで開始されてもよく、それによって、成長プロセス中に、さまざまな異なサイズの開孔20が共存し得るようにされる。しかしながら、成長プロセスが、より大きな一個の開孔20の直径が、開孔20の周りの材料の厚さ以上になるポイントに達すると、それらの開孔20の成長は、著しく遅くなり、より小さな開孔20が追いつくことを可能にする。本プロセスが、開孔20の全体の直径が開孔20の周りの材料の厚さ以上になるまで継続されると、より大きな開孔20についての成長プロセスが遅くなることは、開孔20の全体が実質的に同じサイズを有することを意味することがわかる。
【0049】
一実施形態では、略一定の途切れのない電圧は、開孔20が電圧によって成長される時間の間のほとんどにわたって印加される。一実施形態では、標的領域5が矩形の深さプロファイル(例えば、円筒形)を有するくぼみ4または流体流路24を備える場合に特に適用可能であり、標的領域5内の開孔形成を開始する第1の電圧が印加される。第1の電圧は、比較的短い時間(例えば、
図1に示されるような、10〜20nmの開孔を形成するための構成については、100ms)にわたって印加され得る。第2の電圧は、第1の電圧よりも低く、第1の電圧の後、より長い時間(例えば、
図1に示されるような、10〜20nmの開孔を形成するための構成については、1分)にわたって印加される。一実施形態では、第2の電圧は、同じ標的領域内での開孔の形成を開始するために必要であるよりも低い。第2の電圧は、あらゆる新しい開孔を生成することなく、既存の開孔20を成長させるために印加される。1つの実施の例では、誘電破壊を開始させるために、約10Vの第1の電圧を用いた。そして、約9Vの第2の電圧を用いて、開孔20を成長させた。本プロセスは、電流が安定して、開孔20の直径が開孔20を取り囲む材料の厚さに達し、それらの成長が遅くなることを示すまで継続された。
【0050】
一実施形態では、連続する第1及び第2の電圧が、複数回印加される。これは、開孔20が標的領域5の全体で開始されることを保証するために必要である場合がある。連続する第1及び第2の電圧は、膜2全体にわたる電流が安定していることが検出されるまで、繰り返し印加され得る。発明者らは、この手法を、例えば
図1に示される構成に適用することを確実に用いて、15nmの均等な直径を有する複数の開孔20を作製することができることを発見した。
【0051】
一実施形態では、第3の電圧は、第1及び第2の電圧の後に印加される。第3の電圧は、第1の電圧以上(例えば、10V)である。第3の電圧は、第1及び第2の電圧のいずれかまたは両方よりも長い時間にわたって(例えば、3分)にわたって印加される。第3の電圧は、開孔直径を均一化する(より均等にする)ように作用する。
【0052】
第1及び第2の電圧を繰り返し印加することは、2つ以上の開孔が標的領域5のうちの任意の1つで、例えば、標的領域5のうちの1つの中の1つのくぼみ4または流体抵抗器24で形成される可能性がある場合、特に望ましい。このことは、例えば標的領域5のもっとも狭い部分が、比較的大きな領域にわたって、例えば(例えば、
図1、2及び4のような)矩形の深さプロファイルを有するくぼみ4の中に延びる場合に、より可能性があり得る。標的領域5のより小さな割合を表すもっとも狭い部分を有するくぼみ4については(例えば、
図3及び5のように)、第1及び第2の電圧を繰り返し印加することは、必要ではない場合がある。この状況では、開孔20の全体が、開孔20を開始するために必要とされる最小値よりも高いレベルで(例えば、10V)で、電圧を継続的に印加することによって形成され得る。
【0053】
一実施形態では、各標的領域5内の開孔20は、開孔20の直径が5nm〜40nmの範囲内になるまで成長される。しかしながら、この範囲よりも小さいかまたはこの範囲よりも大きい開孔が、要件に従ってさらに形成されてもよい。
【0054】
一実施形態では、設けられたくぼみ4または流体抵抗器24の全体が、同じ形状寸法(例えば、深さ、厚さプロファイル、長さ、アスペクト比、厚さ等)を有する。このことは、標的領域5の各々の中に同一の開孔が同時に形成されることが望ましい場合に、好適であり得る。
【0055】
一実施形態では、標的領域5のうちの1つ以上は、平均深さの5倍よりも小さい平均幅を有するくぼみ4を備える。発明者らは、くぼみ4をこの制約内に維持することは、2つ以上の開孔20が同じくぼみ4内で開始されるリスクを大幅に低減することを発見した。
【0056】
上記の実施形態及び他の実施形態は、複数の開孔20を備える膜2が形成されることを可能にする。開孔直径は、例えば各開孔を、その直径が、開孔が形成される領域内で2つの槽を分離する膜材料の厚さ以上になるまで成長させることによって、開孔が形成される材料厚さによって制御されることができる。最新の製作プロセスは、膜厚さが、非常に高精度で(例えば、1nm以下に至るまで)制御されることを可能にし、それによって、開孔直径の正確な制御が可能になる。各開孔を、その直径が、開孔が形成される領域内での膜2の厚さ以上になるまで成長させることは必須ではない。他の実施形態では、開孔は、これよりも小さく形成される。
【0057】
誘電破壊プロセスを開始するために、比較的高い電圧が必要とされることができる。これは特に、比較的大きな(例えば、約30nmよりも大きい)開孔が形成されることが必要である場合であるが、これは、このことが、標的領域内でより薄い膜と、結果として、破壊のためのより高い電圧とを必要とするためである。最初に誘電破壊を生じさせる抵抗の急激な低下は、槽32及び34を通って大電流が流れ、新たに開孔20が形成されることにつながる可能性がある。大電流は、基本的には、槽内のイオン溶液内に存在する種を参加させるかまたは低減させ、及び/または開孔20自体の破壊または予測できない挙動につながる可能性がある。例えば、直径100nm、厚さ30nmのくぼみを備える厚さ46nmのSiNx膜では、誘電破壊を開始するために、20〜30Vの印加電圧が必要とされる。誘電破壊後にシステムを通して駆動される電流は、開孔20を完全に破壊する可能性がある。
【0058】
図12に示された例の実施形態では、電流制限抵抗器46が設けられる。電流制限抵抗器は、電流制限抵抗器46がない場合にイオン溶液を通して提供されるアクセス抵抗に加えて、抵抗をもたらす。電流制限抵抗器46は、膜2と第1または第2の電極28、30との間に直列に設けられる。開孔20が膜2に形成されたときに、膜2全体にわたる抵抗が急激に降下すると、電流制限抵抗器46は、結果として得られた、開孔20を通した電流の増大を制限する。電流制限抵抗器46は、電極28、30間で作用する電圧を、それらの間を流れる電流に比例して低減させるように作用する。電流制限抵抗器46がない場合、制御部26は、電極28、30間で定電圧を維持しようとし、新たに形成された開孔20全体にわたる電圧は、電極28、30と開孔20との間のイオン溶液全体にわたる電位低下に起因して、または制御部26によって用いられている電源の過負荷のために、電流の増加とともに降下するのみである。したがって、電流制限抵抗器46は、電流制限抵抗器46が設けられていない場合に比べて、開孔20が形成されたときの各開孔20間の電圧の低減量を増大させる。上述の例では(直径100nm、厚さ30nmのくぼみを備える厚さ46nmのSiNx膜)、約2MΩの電流制限抵抗器46が好適であることがわかった。より一般的には、電流制限抵抗器は、開孔20の形成後の任意のとき(すなわち、誘電破壊が最初に行われた直後の中間遷移相の間ではなく、開孔20が完全に形成された後)の、開孔の電気抵抗(すなわち、開孔の流体電気抵抗)の少なくとも10%と同じ程度の高さである電気抵抗を有する。通常は、電流制限抵抗器は、開孔20の流体電気抵抗と同程度の大きさである電気抵抗を有するように選択され、それによって、開孔20が形成されたときに、開孔20において、膜全体にわたる電位差の著しい降下が生じるようにされる。
【0059】
電流制限抵抗器46は、印加電圧に対する開孔20の成長率も低減させる。成長率は、高レベルな直径の制御が、測定された電流の流れを、電流と開孔サイズとに関する較正データと単に比較することによって達成されることができるために十分に遅くされることができる。例えば、較正データが、開孔が所望のサイズに達したことを示したときに、印加電圧を遮断するための構成を作ることができる。図示された例では、上述の厚さ30nmのくぼみについては、約8分間にわたるゆっくりとした拡張が、開孔形成直後の約12nmの開始直径(約23Vの電圧を用いる)から、43nmの最終的な直径まで開孔20を成長させるために効果的であることがわかった。最終的な開孔20の画像は、
図13に示される。見てわかるように、開孔20は、正確には円滑な縁を備える円形である。
【0060】
一実施形態では、電流制限抵抗器46は、槽38、40の外側に位置付けられた外部抵抗器(例えば、固体抵抗器)である。他の実施形態では、電流制限抵抗器46は、流体抵抗器と外部抵抗器とを備え得る。
【0061】
開孔が形成されたときに膜2全体にわたる電圧の著しい低減を提供する電流制限抵抗器が設けられる場合、普通は、電流制限抵抗器ごとにただ1つの開孔が形成されることができる。このように、普通は、
図12に示されたタイプの構成を用いて、1つの開孔20を形成する。しかしながら、流体抵抗器が電流制限抵抗器として用いられる場合、2つ以上のそのような電流制限抵抗器が、イオン溶液を備える所与の槽の内部に設けられることができる。これにより、多数の開孔を並行して形成し、また同時に電流制限抵抗器を用いてプロセスの制御を向上させることが可能になる。
【0062】
例えば、複数の流体流路24は、電流制限抵抗器として動作するように構成され得る。この場合、流体流路24の各々のうちの1つ以上が、開孔20が流体流路24内に形成されるときに、開孔20の流体電気抵抗が、流体流路の流体電気抵抗の10倍よりも小さくなるように、任意には流体流路24の流体電気抵抗と略等しくなるように構成される。流体流路24は、例えば比較的伸長されてもよい。流体流路の伸長の度合は、アスペクト比を参照することによってパラメータ化されてもよい。アスペクト比は、流体流路24の長さと流体流路24の平均幅との比として定義され得る。円筒形の流体流路の場合、アスペクト比は、単に円筒の軸方向長さと円筒の直径との比である。流体流路24が、例えば非円形の断面及び/または流体流路24の長さに沿って変動する断面を備えるより複雑な形を有する場合、幅についての平均値を用いることができる。十分に高い流体電気抵抗を提供するために、流体流路24のアスペクト比は、1よりも大きくてもよく、任意にはより著しく高くてもよい。
【0063】
電流制限抵抗器として作用する流体抵抗器(例えば、流体流路24)の適切な流体抵抗は、流体抵抗器の形状寸法の適切な設計と、流体抵抗器内部に存在するイオン溶液の抵抗率の選択とによって達成されることができる。例えば、単純な円筒形の流体抵抗器の形状寸法を取ると、流体抵抗Rは、以下の式によって表されることができる。
R=4ρL/πD
2
ここで、ρは、溶液の抵抗率であり、Lは、流体抵抗器を画定する流体流路の長さ(例えば、くぼみの深さ)であり、Dは、円筒の直径(例えば、くぼみの幅)である。
【0064】
上記の例を取ると、厚さ30nmの窒化シリコンの膜2に形成された開孔20と、膜2の上部の厚さ2μmの誘電体皮膜(酸化シリコン)を通した円筒形の流体流路によって完全に画定された〜2MΩの制限抵抗器とに対する要件を推定することができる。同様の抵抗率〜9.1Ωcmの溶液が両側にある場合、流体抵抗器の所要直径は、およそ340nmである。この直径及びアスペクト比は、従来のリソグラフィによって容易に達成されることができる。
【0065】
いくつかのケースでは、所要開孔20が非常に小さく、流体抵抗器の直径が、リソグラフィによって制限されているとき、流体抵抗器の所要アスペクト比は、非常に大きい可能性がある。例えば、厚さ10nmの膜2の直径〜2nmの開孔20は、直径が100nmに制限されている場合、長さ20〜30μmの流体チャネルを必要とする。流体抵抗器内の溶液の抵抗率の増大(例えば、溶液を希釈するか、またはゲルまたは多孔質材料で充填することによる)は、アスペクト比の要件を低減することを助けることができる。拡散が定常状態に達する前に、電圧の印加が破壊後にすばやく停止された場合、誘電破壊前に膜2全体にわたる拡散がないため、溶液を希釈して抵抗率を増大させることは、流体抵抗器の所要アスペクト比を比例的に低減させることができる。例えば、流体抵抗器内の溶液の抵抗率を100倍に増大することは、リソグラフィに適した直径200nm及び長さ1μmの流体抵抗器につながることができる。電圧が、拡散が定常状態に達さないために十分にすばやく停止されなかった場合であっても、流体抵抗器がナノポアのアスペクト比よりもはるかに大きいアスペクト比を有する限り、流体抵抗は、以下の数式におおよそ従う。
【数1】
ここで、ρ
cis及びρ
transは、それぞれシス及びトランスチャンバ内の溶液のバルク抵抗率である。この数式によれば、流体抵抗器を1000倍さらに抵抗性の溶液で充填した場合、同じ直径2nm及び厚さ10nm孔のみが、直径〜115nm及び長さ1μmの流体抵抗器を必要とする。
【0066】
上述された実施形態では、ただ1つの電流制限抵抗器が設けられるか、または複数の同一の電流制限抵抗器が設けられる(例えば、
図6のとおり)。このことは必須ではない。他の実施形態では、異なる流体電気抵抗を有する複数の流体流路24が設けられる。流体抵抗が、それぞれの流体流路24内に形成された開孔20の成長率に著しい影響を与えるために十分に大きい場合、この手法は、異なるサイズにされた開孔20が、第1及び第2の電極を介して印加された電圧を介して並行して(すなわち、標的領域5の全体にわたって同時に)成長されることを可能にする。比較的高い流体電気抵抗を有する流体流路24内の開孔20は、より低い流体電気抵抗を有する流体流路24内の開孔20よりもゆっくりと成長される傾向がある。このように、互いに異なるサイズを有する開孔20の制御された同時形成が可能にされる。
【0067】
一実施形態では、開孔20の成長率は、第1または第2の槽38、40内のイオン溶液のイオン強度を制御することによって制御され、このことは、開孔20に関連する流体流路24内の流体抵抗を決定する。例えば、流体抵抗が増大するようにイオン溶液を変化させることによって、開孔の成長率を遅くすることができ、その反対も同様である。
【0068】
図14及び15は、異なるアスペクト比を有する流体流路24が形成され、それによって、これらの流体流路24の各々が互いに対して異なる流体抵抗を有する、膜2の一部を概略的に示す。この特定の例における左の流体流路24は、直径50nmを有し、右は直径100nmであった。流体流路24は、厚さ300nmのSiNx膜2に形成された。流体流路24の端における膜2の厚さは、10nmであった。膜2全体にわたって10Vを印加することによって、2つの流体流路24の各々に1つの開孔20の形成を生じさせることがわかった。より狭い流体流路24の電流制限効果は、より広い流体流路24内の開孔20が10nmと等しい直径(流体流路24の端における膜材料の厚さ)に達すると、より狭い流体流路24内の開孔20は、わずか5nmの直径を有していたことを意味していた。
【0069】
機能的に著しい流体電気抵抗を提供するために十分に大きいアスペクト比を有する流体流路24を設けることは、より浅いくぼみ4を備える(例えば、
図4及び5のような)実施形態で必要とされるよりも厚い膜2を必要とする場合がある。
図14及び15aの例では、リソグラフィによって形成された流体流路24を備える、SiNxで形成された300nmの膜2が用いられた。エッチングプロセスを適切なポイントで停止させて、流体流路24の端における膜2の厚さが、必要とされるとおりであることを保証することが必要である。小さい厚さ(例えば、10nm)については、エッチングプロセスを十分に正確に停止させることは、例えば製作設備が安定性の問題を有している場合には、難しい可能性がある。好適なエッチング液を用いて、異なる個別のエッチングレートをもたらす異なる組成を有する複数の層から膜2を形成することによって、製作を促進することができる。そのような構成の一例が、
図15に示される。ここで、膜2は、異なる組成の2つの層2A及び2Bから形成される。下層2Bは、流体流路24の端における膜2の所望の厚さと等しい厚さを有するように配置される。下層2Bがエッチングされないかまたはエッチングレートが上層2Aよりも遅いエッチングプロセスを用いることによって、エッチングプロセスを適切なポイントで停止させることを容易にする。一実施形態では、
図15に示された多層膜2に標的領域5を作る材料及びプロセスを注意深く選択することによって、分子サイズの開孔を形成することができる。例示の構成では、膜2Aは、厚さ300nmのSiNxであり、2Bは、厚さ2nmのALD HfO
2である。直径50nmを有する少なくとも1つの流体流路24が、リソグラフィ及び反応性イオンエッチングによって膜2Aに形成される。HfO
2フィルムの不活性性質に起因して、流体流路24は、SiNx 2A層全体を通してエッチングされ、均一な2nmのHfO
2のみの標的領域5を形成するHfO
2において自然に停止することができる。適切な流体伝導率及び破壊電圧を選択することによって、直径1nm及び長さ2nmのHfO
2開孔を、標的領域内に並行して形成することができる。
【0070】
ここでは伸長された流体流路24を形成するという文脈で述べられているが、異なる組成の多数の層から形成された膜2の使用をより一般的に用いて、個々の層の異なるエッチングレートに起因して、任意の形の標的領域5、くぼみ4及び/または流体流路24の正確な厚さを達成することができる。界面に達したときのエッチングプロセスの急激な変化または停止に対応する異なる組成の層間の界面を用いて、膜2に形成された構造の任意の境界部を画定することができる(例えば、くぼみ4の底部または流体流路24の端)。一実施形態では、膜2は、第1の層(例えば、
図15の上層2A)と第2の層(例えば、
図15の下層2B)とを備え、1つ以上のくぼみ4または流体流路24の各々は、第1の層の一部を、第1の層と第2の層との間の界面に(少なくとも)至るまで(例えば、
図15における上層2Aと下層2Bとの間の界面の、またはわずかに超えたレベ■の深さまで)除去することによって形成され、それによって、境界部が第2の層の表面(例えば、
図15における下層2Bの曝露された部分の上面)によって形成され、第2の層(例えば、
図15における下層2B)が、原子層堆積によって形成されるようにされる。実施形態では、開孔は、第2の層(例えば、
図15における下層2B)の少なくとも一部を通した誘電破壊によって形成される。本明細書の冒頭部分で説明されたように、原子層積は、〜1Å程度の分解能での非常に均一かつ精密な厚さ制御を可能にする。多くの反応性イオンエッチング(RIE)プロセスに対して不活性である材料を、原子層堆積を用いて適用することができる。原子層堆積によって提供される制御のレベルは、代替のフィルム成長技術を用いて通常達成されることができるよりも高い。開孔の長さは、開孔が形成される層(例えば、
図15における下層2B)の厚さによって決定され、高精度で制御されることができる。第2の層についての例示の構成に関するさらなる詳細(例えば、材料及び副層)が、以下に与えられる。
【0071】
さまざまな方法を用いて、膜2内にくぼみ4または流体流路24を形成することができる。これらは、リソグラフィ(例えば、マスクベースかまたはマスクレスシステムを用いる)及び上述のようなエッチングを含み得る。電子ビームリソグラフィを用いてもよい。反応性イオンエッチングを用いてもよい。イオンビーム彫刻を用いてもよい。
【0072】
一実施形態では、流体流路24は、イオン溶液が多孔層の一方の側から多孔層の他方の側へ通過することを可能にする細孔を備える多孔層を用いて設けられる。このケースでは、細孔は流体流路である。この手法は、多くの多孔材料の穴に適合されるもとから狭い形に起因して、高いアスペクト比の流体流路24を設ける好都合な方法である。多孔層が、流体流路24のみを提供する場合、開孔20は、イオン溶液によって横断される多孔層のあらゆる細孔の端に形成され得る。これは、細孔の空間的分布が好適である場合に望ましい場合がある。しかしながら、多くの場合、異なるように離れて(例えば、さらに離れて)間隔を置かれ、及び/または多孔層の細孔とは異なる数で(例えば、より少なく)設けられた開孔20を形成することが望ましいかもしれない。この場合、多孔層は、開孔20が形成される場所を画定する他の流体流路24を備える層と組み合わせて設けられてもよい。この場合、多孔層は、流体的には互いに並列であるが、開孔20が形成される場所を画定する別個の層に設けられたさらなる流体流路24と直列である複数の流体流路24を提供し得る。したがって、別個の層内の流体流路24は、多孔層によって提供された複数の流体流路24へのアクセスを提供する開口を有する。一実施形態では、多孔層は、陽極酸化アルミニウム(AAO)の層を含み得る。AAOは、非常に高い(例えば、1000:1よりも大きい)アスペクト比で、数百ナノメートルの格子定数を備える格子で離れて間隔を置かれた細孔で形成されることができる。細孔直径及び格子定数は、予め好適にパターニングされた面上にAAOを形成することによって調整されることができる。
【0073】
別の実施形態では、電流制限抵抗器として作用する流体流路24は、PDMS、酸化物、及び/または窒化物の層の内部のチャネルとして形成され得る。
【0074】
各々に開孔20が形成される複数の標的領域5を備える膜2が形成されることを可能にする実施形態が説明されてきた。各標的領域5は、開孔20が形成される場所を画定するくぼみ4または流体流路24を備える。各開孔20は、標的領域5の異なる1つの内部に位置し、任意の制限抵抗器の抵抗、印加された電圧レジーム、及び/または標的領域5の厚さによって決定される直径を有する。直径は、第1及び第2の槽を分離する膜材料の最小厚さ以上であってもよく、厚さは、直径を制御するための一次手段として用いられる。代替的に、直径は、膜材料の厚さよりも小さくされることができる。
【0075】
図16〜19は、原子層堆積を用いて膜2を形成する膜アセンブリ36を製造する例示の方法におけるステップを描画する。膜2は、本明細書に記載された実施形態のいずれかによる誘電破壊を用いて、1つ以上の開孔の形成を可能にするために好適である。
図16は、
図1を参照して上記された膜アセンブリ36と同じ方法で形成され得る構成を示すが、
図16の構成は、膜に形成されたいかなるくぼみ4もまだ有していないことを除く。
図16の上側被覆層51は、
図1の膜2と同じ方法で(例えば、SiNxから)形成され得る。
図16の下側被覆層52は、
図1の層10と同じ方法で(例えば、SiNxから)形成され得る。
【0076】
それに続く処理ステップでは、原子層堆積を用いてALD層54を蒸着し、
図17に示された構成を提供する。原子層堆積は、ALDと称される場合もあり、材料の薄膜を蒸着するための周知の技術である。以下は、この主題に関するレビュー論文の一例である。Steven M.George,「Atomic Layer Deposition:An Overview」,Chem.Rev.2010、110、111〜131。
【0077】
それに続く処理ステップでは、流体流路24は、上側被覆層51に、例えばリソグラフィの後に続く反応性イオンエッチングによって形成される。流体流路24は、例えば、上側被覆層51を通して上側被覆層51とALD層54との間の界面までエッチングすることによって形成され得る。それによって、
図18に示された膜アセンブリ36が設けられる。
【0078】
代替のそれに続く処理ステップでは、
図17の構成から始まり、くぼみ4は、上側被覆層51に、例えばリソグラフィの後に続く反応性イオンエッチングによって形成される。くぼみ4は、例えば、上側被覆層51を通して上側被覆層51とALD層54との間の界面までエッチングすることによって形成され得る。それによって、
図19に示された膜アセンブリ36が設けられる。
【0079】
上記の処理の変形が可能である。例えば、ALD層54は、より早期の段階で、例えば層8を形成するためのウェーハの処理(例えば、KOHエッチングによってウェーハの一部を選択的に除去して層8を形成し、このことが構造物をより脆弱にする)の前に、及び/または上側被覆層51(例えば、SiNx)の成長の前に、蒸着させることができる。ALD層54は、上側被覆層51のすべてまたは一部を形成する2つの層の間(例えば、2つのSiNx層の間)に挟まれてもよい。ALD層54をより早期に形成することは、望ましくは、膜アセンブリが比較的脆弱な状態にある間に(例えば、薄膜が存在する間に、及び/または層8を形成するためにウェーハが処理された後に)実行される必要がある処理ステップ数を低減し得る。
【0080】
図18及び19に示された膜アセンブリ36は、膜2が第1の層(
図18及び19の上側被覆層51)と第2の層(
図18及び19のALD層54)とを備え、第2の層が原子層堆積によって形成される例である。
【0081】
図20及び21に描画された例の実施形態では、第2の層(ALD層54)は、複数の副層61、62を備える。副層61、62の各々は、原子層堆積によって形成される。一実施形態では、副層61、62のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有する。副層61、62のうちの少なくとも2つが互いに対して異なる組成を有するように構成することは、使用中に副層61、62の安定性を改善することがわかった。
【0082】
一実施形態では、複数の副層61、62は、複数回繰り返す連続する副層61、62を備え、各繰り返す配列は、少なくとも第1の副層61と、第1の副層61に直接隣接した第2の副層62とを備える。第1の副層61は、第2の副層62とは異なる組成を有する。示された実施形態では、繰り返す配列の各ユニットは、1つの第1の副層61と1つの第2の副層62とからなるが、このことは必須ではない。他の実施形態では、各繰り返すユニットは、2つより多い副層(例えば、3つの副層、4つの副層、またはそれ以上)を備え得る。一実施形態では、第1の副層61の全体が、互いに同じ組成を有し、第2の副層の全体62が、互いに同じ組成を有する。
図20及び21では、描画を容易にするために、各々が第1の副層61と第2の副層62とからなる4つのユニットを備える繰り返す配列が示される(さらなる第1の副層61が設けられ、それによって、複数の副層の2つの最外側面が同じ組成を有するようにされる)。実際、多数の副層が普通に設けられる。一実施形態では、第1及び第2の副層61、62の各々は、4サイクル以下、例えば1サイクルサイクル、2サイクル、3サイクル、または4サイクルの原子層堆積を用いて形成される。また、第1及び第2の副層61、62の一方または両方の各々が、4サイクルを超える原子層堆積を用いて形成されることも可能である。通常は、第1及び第2の副層61、62の各々が、それらを作成するために用いられる原子層堆積のサイクルごとに〜1Å程度の厚さを有する。第1及び第2の副層61、62(及び、設けられた任意の他の副層)の数は、複数の副層についての所望の総厚さを提供するように選択される。複数の副層61、62の厚さは、複数の副層61、62を通して形成された任意の開孔の長さを画定する。一実施形態では、複数の副層61、62の厚さは、2〜6nmの、任意には2〜4nmの、任意には2〜3nmの範囲内である。一実施形態では、約20〜60サイクルの原子層堆積を用いて、複数の副層61、62を形成する。
【0083】
一実施形態では、第1の副層61は、第2の副層62に対して非エピタキシャルである。第1の副層61を第2の副層62に対して非エピタキシャルにするための構成は、副層61、62内部での結晶成長に起因する欠陥の形成を低減し、非晶質フィルムを保全する。複数の副層が他の副層を備える場合、好ましくは、すべての副層があらゆる直接隣接する副層に対して非エピタキシャルであるように配置される。
【0084】
第1の副層61及び第2の副層62は、幅広く異なる材料から形成されることができる。一実施形態では、第1の副層61は、HfO
2を備え、第2の副層62は、Al
2O
3を備える。HfO
2は、良好な誘電特性を有する。これら2つの材料は、原子層堆積と適合性があり、互いに対して非エピタキシャルである。
【0085】
一実施形態では、例えば
図20に示されるように、第2の層(ALD層54)は、繰り返す連続する副層61、62の一方の側または両方の側の保護層63とともに形成される。保護層63は、繰り返す連続する副層61、62を、第1の層の一部(
図18及び19の上側被覆層51)の除去等の、膜アセンブリ36の他の特徴を形成するために用いられる処理ステップ(例えば、反応性イオンエッチングステップ)、例えば流体流路(
図18のとおり)を形成するための処理ステップ(例えば、反応性イオンエッチングステップ)またはくぼみ4(
図19のとおり)を形成するための処理ステップ(例えば、反応性イオンエッチングステップ)から保護する。一実施形態では、保護層63は、Al
2O
3を備える。Al
2O
3は、反応性イオンエッチングに耐性があるが、ウェットエッチングによって除去することが容易である。一実施形態では、保護層63は、約5〜10nmの厚さを有する。一実施形態では、保護層63は、を用いて形成される。約50〜100サイクルの原子層堆積を用いて形成される。一実施形態では、開孔の形成の前に保護層63を除去して、繰り返す連続する副層61、62を備える自立膜を形成する。第1の副層61がHfO
2を備え、第2の副層62がAl
2O
3を備えるケースでは、保護層63の除去は、結果として繰り返す連続する副層61、62と、付加的な層とをもたらし、それによって、2つのもっと外側の副層が、(
図20及び21に示されるように)両方とも第1の副層61になるようにされる。その後、自立膜を通した誘電破壊によって、開孔が形成される。
【0086】
一実施形態では、第2の層(ALD層54)は、誘電破壊によって開孔を形成する前に、アニーリングされる。アニーリングは、原子層堆積プロセス後、第2の層に溜まったあらゆる水を除去するように構成される。それによって、アニーリングは、第2の層の質を(例えば、均質性を向上させるかまたは欠陥密度を低減させることによって)改善する。アニーリングは、副層における著しい結晶化が生じ得る温度を下回る温度で行われ得る。代替的に、アニーリングは、より高い温度で行われてもよい。
【0087】
一実施形態では、上述の、または他の実施形態による方法及び機器を用いて形成された開孔20のうちの1つ以上を用いて、分子実体と開孔との間の相互作用に依存する測定(例えば、電気的測定または光学的測定)を行うことによって、分子実体を検知する。一実施形態では検知機器は、そのように形成された複数の開孔20と、分子実体と開孔20との間の相互作用に依存する測定を行うことによって、開孔20の各々の中の分子実体を検知するように構成された測定システムとを有して設けられる。分子実体の検知は、1つの分子及び分子実体を特定するための基準を提供することができる。DNAまたは他の核酸の配列、安全及び防衛のための化学または生体分子検知、診断のための生物学的マーカの検知、薬剤開発のためのイオンチャネルスクリーニング、及び生体分子間の相互作用のラベルフリー解析等の幅広い可能な用途がある。
【0088】
分子実体は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質またはポリヌクレオチド等のポリマーであってもよい。ポリヌクレオチドは、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、自然に存在するかまたは人工のものであることができる。ポリヌクレオチド内の1つ以上のヌクレオチドは、酸化されるまたはメチル化されることができる。ポリヌクレオチド内の1つ以上のヌクレオチドは、損傷してもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含んでもよい。そのようなダイマーは、通常は紫外線による損傷に関連し、皮膚黒色腫の主因である。ポリヌクレオチド内の1つ以上のヌクレオチドは、例えば標識またはタグで修飾してもよい。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等の核酸であることができる。ポリヌクレオチドは、一本鎖DNAにハイブリッド化された一本鎖RNAを含むことができる。分子実体は、一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドは、部分的に二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、蛍光標識、光学標識、磁性種または化学種のうちの1つ以上で標識付けされてもよく、種または標識の検出は、ポリヌクレオチドを示す。核酸プローブは、ポリヌクレオチドと、開孔のアレイを通した移行によって検出された結果として得られる構造とにハイブリッド化されてもよく、例えば、出願公開WO2007/041621に開示されている。ポリヌクレオチドは、1つ以上の受容体標識で標識付けされてもよく、これは、開孔のアレイに取り付けられた1つ以上のドナー標識と相互作用し、例えば出願公開WO2011/040996によって開示されている。ポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の任意の合成核酸であってもよい。分子実体は、アプタマーであってもよい。分子実体は、開口を移行させ、分子実体と測定された開口との間の相互作用の位置を変えるようにされる。
【0089】
開孔を通した分子実体の移行は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素等のモータタンパク質、または出願公開第WO2013/123379号に開示されたようなポリペプチドハンドリング酵素によって支援され得る。好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ及びトポイソメラーゼ、例えばギラーゼである。任意のヘリカーゼを、本発明において用いてもよい。ヘリカーゼは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えばTraIヘリカーゼ、またはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼであってもよく、またはそれらから派生してもよい。ヘリカーゼは、ヘリカーゼ、修飾されたヘリカーゼ、または国際出願第PCT/GB2012/052579号(WO2013/057495として公開);第PCT/GB2012/053274号(WO2013/098562として公開);第PCT/GB2012/053273号(WO2013098561として公開)に開示されたヘリカーゼ構造のいずれかであってもよい。代替的に、細孔を通した分子実体の移行は、例えば国際特許出願第PCT/US2008/004467号によって開示された電圧制御によってさらに支援されてもよい。
【0090】
決定される特性は、ポリマーの配列特性であってもよい。
【0091】
固体膜は、有機及び無機材料のいずれかまたは両方を備えてもよく、II−IV及びIII−V材料等を含む材料を含む、導電性、半導電性、または電気絶縁性にかかわらずにマイクロエレクトロニック材料、窒化シリコン、Al
2O
3、及びSiO
2、Si、MoS
2等の酸化物及び窒化物、ポリアミド等のソリッドステート有機及び無機ポリマー、テフロン(登録商標)等のプラスチック、または二成分付加硬化型シリコーンゴム等のエラストマ、及びガラスを含むが、これらに限定されない。膜は、例えばグラフェン等の単原子層か、または米国特許第8、698、481号及び米国特許出願公開第2014/174927号に開示され、両方が参照により本明細書に組み入れられる、わずか数原子厚さの層から形成されてもよい。2つ以上の材料層、例えば米国特許出願公開第2013/309776号に開示され、参照により本明細書に組み入れられる、2つ以上のグラフェン層を含むことができる。好適な窒化シリコン膜は、米国特許第6,627,067号に開示され、膜は、米国特許出願公開第2011/053284号に開示されたように、化学的に感応化されてもよく、これら2件は、参照により本明細書に組み入れられる。開孔の内壁は、出願公開第WO2009/020682号に開示されたような、感応化被覆で被覆されてもよい。
【0092】
さらなる実施形態では、生物学的ナノポアは、固体状態開孔内部に設けられてもよい。そのような構造体は、例えば米国特許第8,828,211号に開示され、参照により本明細書に組み入れられる。
【0093】
生物学的細孔は、膜貫通タンパク質細孔であってもよい。本発明に従って用いるための膜貫通タンパク質細孔は、βバレル細孔またはαヘリックスバンドル細孔に由来することができる。βバレル細孔は、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβバレル細孔は、α−ヘモリシン、炭疽菌毒素、及びロイコシジン等のα毒素、マイコバクテリウムスメグマチス(Msp)、例えばMspA、MspB、MspCまたはMspD、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、及びナイセリアオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)等の細菌の外膜タンパク質/ポリンを含むが、これらに限定されない。αへリックスバンドル細孔は、αへリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なαへリックスバンドル細孔は、内膜タンパク質と、WZA及びClyA毒素等の外膜タンパク質とを含むが、これらに限定されない。膜貫通細孔は、Mspに、またはα−ヘモリシン(α−HL)に由来し得る。膜貫通細孔は、ライセニンに由来してもよい。ライセニンに由来する好適な孔は、WO2013/153359に開示されている。ナノポアは、WO2016/034591に開示されたようなCsgGであってもよい。
【0094】
測定は、例えば電気的、光学的、または両方であってもよい。電気測定は、電位差または濃度勾配下で開孔を通って流れるイオン流の測定を含む。電気的測定は、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702−7、Lieberman KR etal,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961−72に記載され、また国際出願第WO−2000/28312号に開示されたような、標準的な1つのチャネル記録機材を用いてなされ得る。代替的に、電気的測定は、例えば国際出願第WO−2009/077734号及び国際出願第WO−2011/067559号に記載されたようなマルチチャネルシステムを用いてなされてもよい。光学測定は、電気的測定(Soni GV et al.,Rev Sci Instrum.2010 Jan;81(1):014301)と組み合わされてもよい。
【0095】
検知機器は、WO2008/102210、WO2009/07734、WO2010/122293、WO2011/067559またはWO2014/04443のいずれかに開示されたように配置された測定システムを含み得る。検知機器は、電位差下で開孔を通したイオン電流を測定するために、膜の各側に配置された電極を備え得る。電極は、電極及び測定回路に電圧を供給するように配置された制御回路を含む電気回路に接続され得る。共通電極は、共通電極と、膜の反対側に設けられた電極との間の開孔を通したイオン流を測定するために設けられ得る。
【0096】
ナノポアアレイのいずれかの側に設けられた流体チャンバは、シス及びトランスチャンバと称される場合がある。ナノポアのアレイによって判定され得る分子実体は、通常は、共通電極を備えるシスチャンバに加えられる。別個のトランスチャンバが、アレイの反対側に設けられてもよく、各トランスチャンバは、電極を備え、各開孔を通したイオン流が、トランスチャンバの電極と共通電極との間で測定される。
【0097】
開孔長さ(膜の二側間の距離)に依存して、1つ以上のポリマーユニットが、任意の特定の時間で細孔内に存在してもよく、実行された測定は、k個のポリマーユニットの群に依存し得、ここで、kは整数である。k個のポリマーユニットの群は、kが1よりも大きい場合、kマーと称される場合がある。概念上、これは、測定されているポリマーユニットよりも大きい「ブラントリーダヘッド」を有する測定システムとして考えられ得る。kマーの測定を伴うk個のポリマーユニットの配列特性の判定は、国際特許出願第PCT/GB2012/052343号及び第PCT/GB2013/050381号によって開示された方法によって実行され得る。代替的に、形成における配列の判定または分子配列の分類は、人工神経ネットワーク(ANN)を用いて実行され得る。
【0098】
用いられる任意の測定システムが、例えばASIC、FPGA等のプロセッサ、またはコンピュータにリンクされるかまたはそれらを備えてもよい。測定の解析は、検知機器で実行されてもよく、代替的に、例えばクラウドベースのシステムによって、遠隔的になされてもよい。
【0099】
開孔細孔を通るイオン電流を測定するための好適な条件は、当技術分野で周知である。当該方法は、通常は膜及び開孔全体に印加された電圧によって実行される。用いられる電圧は、通常は+5V〜−5V、例えば+4V〜−4V、+3V〜−3Vまたは+2V〜−2Vである。用いられる電圧は、通常は−600mV〜+600mVまたは−400mV〜+400mVである。用いられる電圧は、好ましくは−400mV、−300mV、−200mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mV及び0mVから選択された下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV及び+400mVから独立して選択された上限とを有する範囲内である。用いられる電圧は、より好ましくは100mV〜2Vの範囲内である。増大された印加電位を用いることによる開孔によって異なるヌクレオチド間の識別力を増大させることが可能である。イオン電流の測定の代替として、コンダクタンスまたは抵抗の測定を行ってもよい。
【0100】
例えば、開孔を通したトンネル電流の測定(Ivanov AP et al.,Nano Lett.2011 Jan12;11(1):279−85)、または、例えばWO2005/124888、US8828138、WO2009/035647、またはXie et al,Nat Nanotechnol.2011 Dec11;7(2):119−125によって開示された電界効果トランジスタ(FET)装置等の、開孔に対する分子実体の移動に関連する代替または付加的な測定が行われてもよい。測定装置は、開孔内における分子実体の存在または通過を判定するためのソース及びドレイン電極を備えるFETナノポア装置であってもよい。FETナノポア装置の使用、すなわち開孔全体にわたるFET測定の使用、または開孔全体にわたるトンネル電流の測定の使用の利点は、測定信号が特定の開孔に対して非常に局所的であるため、共有トランスチャンバを備える装置を使用し得ることである。これは、上記のように、開孔ごとに別個のトランスチャンバ、例えば開孔を通るイオン流の測定のためのものを設ける必要なく、装置の構造を大きく簡略化する。結果として、非常に高密度の開孔のアレイ、例えば10μmよりも小さいピッチ及び10
6開孔/cm
2の密度を有する開孔を備えるアレイを、好都合に設け得る。
【0101】
検知方法、特にイオン電流の測定を伴うものは、例えば金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩等の塩化物塩を含む、さまざまな異なる電荷キャリアを含む検知溶液内で行われてもよい。電荷キャリアは、イオン液体または有機塩、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドを含んでもよい。通常は、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの組み合わせが用いられる。KCl、NaCl、及びフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの組み合わせが好ましい。電荷キャリアは、膜全体にわたって非対称であってもよい。例えば、電荷キャリアのタイプ及び/または濃度は、膜の各側で異なってもよい。
【0102】
塩濃度は、飽和状態であってもよい。塩濃度は、3M以下であってもよく、通常は0.1〜2.5Mである。高い塩濃度は、高い信号対雑音比を提供し、標準的な電流変動を背景として特定されるべきヌクレオチドの存在を示す電流を考慮している。
【0103】
検知溶液は、緩衝剤を含んでもよい。任意の緩衝剤を用いてもよい。通常、緩衝剤は、燐酸緩衝剤である。検知溶液は、pHを調節するための緩衝剤を含んでもよい。所望のpHのために好適な任意の緩衝剤を用いてもよい。特定のpHを維持することは、多様な理由で望ましい場合があり、安定したモータタンパク質及び生物学的ナノポア性能を維持すること、固体状態膜上で安定した表面電荷を維持すること、及びDNA等の目標検体上で安定した電荷(ひいては、安定した駆動力及び捕捉率)を維持することを含む。
【0104】
開孔を形成するために用いられる第1及び第2のイオン溶液のいずれかまたは両方を、検知溶液としてさらに用いてもよい。第1及び第2のイオン溶液のいずれかまたは両方が、(例えば、塩からの)イオンを包含する生物学的流体、例えば血液または血漿を含んでもよい。
【0105】
開孔のアレイを備える多孔構造体を形成することが可能である能力は、広範囲の可能な用途、例えば最初は非多孔状態で存在するが、誘電破壊によって原位置で活性化されて、それらを多孔質にし得る構造体の提供を可能にする。ナノポアは、脆弱であり、及び/または限られた寿命を有し得るため、誘電破壊によって原位置で細孔を生成することは、構造体が非多孔状態で保存され分布されたときに、はるかに長い貯蔵寿命を可能にする。非多孔構造体を用いて、例えば最初に種を収容してもよく、これは続いては誘電破壊によって作り出された多孔構造体を通して放出される。例示の使用は、フィルタ膜、薬剤分配及び印刷用途である。分配される種は、イオンまたは分子を含み得る。分子は、薬剤等の任意のものであってもよい。多孔膜は、電気化学フリットとして作用し得、開孔の形成は、槽間のイオン結合を提供する。多孔膜を原位置で形成するための能力は、種が必要とされるまで第1または第2の槽のいずれかの中に収容されることを可能にするか、または1つの槽内に設けられた種の、第2の槽内に存在する種と相互作用する能力を制限することが可能である。例えば、第1の槽は、Ag/AgCl等の参照電極を収容し得、銀イオンの、第2の槽内に存在する生化学的試薬との相互作用を制限することが望ましい。
【0106】
例えば、一実施形態では、物質が第1の槽38から第2の槽40に、及び/またはその反対に送達される方法及び機器が提供される。第1及び第2の槽38、40は、
図11または12を参照して記載されたように、または他の方法で構成され得る。第1及び第2の槽38、40は、固体膜2によって互いから分離される。送達は、上述の実施形態のいずれか、または他の実施形態による方法または機器を用いて、固体膜2内に1つまたは複数の開孔を形成することによって、高度に制御可能に変更される。
【0107】
例えば、一実施形態では、固体膜2を備えるフィルタのろ過特性が変更される方法及び機器が提供される。ろ過特性は、上述の実施形態のいずれか、または他の実施形態による方法または機器を用いて、固体膜2内に1つまたは複数の開孔を形成することによって、高度に制御可能に変更される。
【0108】
例えば、一実施形態では、第1の反応種を第2の反応種と接触させる方法及び機器が提供される。これらの種をまとめることによって、該種の間で所望の反応を生じさせ得る。第1の反応種は、第1の槽38内に設けられる。第2の反応種は、第2の槽40内に設けられる。第1及び第2の槽38、40は、例えば
図11または12を参照して記載されたように、または他の方法で構成され得る。第1及び第2の槽38、40は、固体膜2によって互いから分離される。反応種は、上述の実施形態のいずれか、または他の実施形態による方法または機器を用いて、固体膜2内に1つまたは複数の開孔を形成することによって、高度に制御可能にまとめられる。
【0109】
請求項で定義された特徴は、ともに任意の組み合わせて用いられてもよい。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]
誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する方法であって、前記膜が、前記膜の一方の側の第1の表面エリアと、前記膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、複数の標的領域の各々が、前記膜において、前記第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、前記方法が、
前記膜の前記第1の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、前記第2の表面エリアの全体を、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、
イオン溶液を備える前記第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、前記膜全体に電圧を印加して、前記膜における複数の前記標的領域の各々に開孔を形成することと、を含む、方法。
[2]
前記標的領域の各々に、1つの開孔が形成される、[1]に記載の方法。
[3]
前記開孔の直径が、前記第1の槽を前記第2の槽から分離する、前記標的領域内の膜材料の最小厚さ以上になるまで、各標的領域内の前記開孔が成長される、[2]に記載の方法。
[4]
前記膜が、複数の層を備える、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々の境界部が、前記層のうちの2つの間の界面に位置する、[4]に記載の方法。
[6]
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々が、前記第2の層の表面によって境界部が形成されるように、前記第1の層の一部を、前記第1の層と前記第2の層との間の前記界面に至るまで除去することによって形成され、
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、[5]に記載の方法。
[7]
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記複数の標的領域の各々での開孔の前記形成が、前記第2の層の少なくとも一部を貫通する誘電破壊によって生じる、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、[7]に記載の方法。
[9]
前記第2の層が、複数の副層を備え、各副層が、原子層堆積によって形成される、[8]に記載の方法。
[10]
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、[9]に記載の方法。
[11]
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、[10]に記載の方法。
[12]
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、[11]に記載の方法。
[13]
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
前記第2の層が、前記繰り返す連続する副層の一方の側または両方の側の保護層とともに、形成され、
前記保護層が、各標的領域内に前記繰り返す連続する副層を備える自立膜を形成するために、各標的領域内の前記開孔の前記形成の前に除去され、
各標的領域内の前記開孔が、前記自立膜を貫通する誘電破壊によって形成される、[10]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
前記保護層が、前記第2の層に隣接した前記第1の層の一部を除去するために用いられるエッチングプロセスに耐性がある、[14]に記載の方法。
[16]
前記保護層が、Al2O3を含む、[14]または[15]に記載の方法。
[17]
前記開孔を形成する前に、前記第2の層をアニーリングすることをさらに含む、[8]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
前記標的領域のうちの1つ以上が、前記くぼみ内のあらゆる開孔の形成の前に、ある深さプロファイルを有するくぼみまたは流体流路を備え、前記深さプロファイルにおいて、前記深さが、前記くぼみまたは流体流路の開口の端から、前記くぼみまたは流体流路の中央領域に向かって次第に増大する、[1]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上が、1よりも大きいアスペクト比を有し、前記アスペクト比が、前記流体流路の長さと前記流体流路の平均幅との比として定義される、[1]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20]
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上の各々において、前記流体流路の流体電気抵抗の10倍よりも小さい流体電気抵抗を有する開孔が形成される、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法。
[21]
異なる流体電気抵抗を有する流体流路が、異なる標的領域内に設けられ、異なるサイズにされた対応する複数の開孔が、前記第1及び第2の電極を介して印加された前記電圧を介して、並行して成長される、[1]〜[20]のいずれかに記載の方法。
[22]
前記標的領域のうちの1つ以上が、平均深さの5倍よりも小さい平均幅を有するくぼみを備える、[1]〜[21]のいずれかに記載の方法。
[23]
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成する方法であって、前記方法が、
前記膜全体に電圧を印加し、誘電破壊を用いて前記開孔を形成することを含み、
前記膜が、複数の副層を備え、
前記副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、
前記副層の各々が、原子層堆積によって形成される、方法。
[24]
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、[23]に記載の方法。
[25]
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、[24]に記載の方法。
[26]
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、[25]に記載の方法。
[27]
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、[24]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
前記繰り返す連続する副層が、前記繰り返す連続する副層の一方の側または両方の側の保護層とともに形成され、
前記保護層が、前記繰り返す連続する副層を備える自立膜を形成するために、前記開孔の前記形成の前に除去され、
前記開孔が、前記自立膜を貫通する誘電破壊によって形成される、[24]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]
前記保護層が、前記第2の層に隣接した前記第1の層の一部を除去するために用いられるエッチングプロセスに耐性がある、[28]に記載の方法。
[30]
前記保護層が、Al2O3を含む、[29]に記載の方法。
[31]
前記開孔を形成する前に、前記複数の副層をアニーリングすることをさらに含む、[23]〜[30]のいずれかに記載の方法。
[32]
前記電圧の前記印加が、前記電圧によって前記開孔が成長されている時間中の大半の間、略一定の途切れのない電圧を印加することを含む、[1]〜[31]のいずれかに記載の方法。
[33]
前記電圧の前記印加が、
開孔形成を開始する第1の電圧を印加することと、
前記第1の電圧より低い第2の電圧を用いて、各形成された開孔を成長させることと、を含む、[1]〜[32]のいずれかに記載の方法。
[34]
前記第2の電圧が、開孔形成を開始するために要するよりも低い、[33]に記載の方法。
[35]
前記電圧の前記印加が、前記第2の電圧を用いて各形成された開孔を成長させる前記ステップの後に、前記第1の電圧以上である第3の電圧を用いて、各形成された開孔を成長させることをさらに含む、[33]または[34]に記載の方法。
[36]
誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する方法であって、前記膜が、前記膜の一方の側の第1の表面エリアと、前記膜の他方の側の第2の表面エリアとを備え、
前記膜の前記第1の表面エリアを、イオン溶液を備える第1の槽と接触させ、前記第2の表面エリアを、イオン溶液を備える第2の槽と接触させることと、
イオン溶液を備える前記第1及び第2の槽とそれぞれ接触している第1及び第2の電極を介して、前記膜全体に電圧を印加して、前記膜に開孔を形成することとを備え、
前記膜と前記第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、前記電流制限抵抗器が、前記開孔の形成後いつでも、前記開孔の電気抵抗の少なくとも10%の高さの電気抵抗を有する、方法。
[37]
前記電流制限抵抗器が、前記第1もしくは第2の槽内に設けられた流体抵抗器、前記第1及び第2の槽の外部に少なくとも部分的に設けられた外部抵抗器、またはこれらの両方を含む、[36]に記載の方法。
[38]
分子実体と開孔との間の相互作用に依存する測定を行うことによって前記分子実体を検知する方法であって、前記開孔が、[1]〜[37]のいずれかに記載の方法によって形成される、方法。
[39]
複数の開孔が、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法を用いて形成されているか、または1つ以上の開孔が、[23]〜[37]のいずれかに記載の方法を用いて形成されている膜を備える、機器。
[40]
分子実体と前記開孔との間の相互作用に依存する測定を行うことによって、前記開孔の各々における前記分子実体を検知するように構成された測定システムをさらに含む、[39]に記載の機器。
[41]
第1の槽から第2の槽に物質を送出する方法であって、前記第1及び第2の槽が、最初は固体膜によって互いから分離され、前記方法が、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成するか、または[23]〜[37]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成し、それによって、前記第1の槽から前記第2の槽への前記物質の通過を可能にすることを含む、方法。
[42]
固体膜を備えるフィルタのろ過特性を修正する方法であって、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成することか、または[23]〜[37]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成することを含む、方法。
[43]
反応を生じさせるために、第1の反応種を第2の反応種と接触させる方法であって、第1の槽内に前記第1の反応種を設け、第2の槽内に前記第2の反応種を設けることであって、前記第1及び第2の槽が、固体膜によって互いから分離される、設けることと、[1]〜[22]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に複数の開孔を形成することか、または[23]〜[37]のいずれかに記載の方法を用いて、前記固体膜に1つ以上の開孔を形成することと、を含む、方法。
[44]
誘電破壊を用いて固体膜に複数の開孔を形成する機器であって、
固体膜の一方の側の第1の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第1の槽と、
前記膜の他方の側の前記膜の第2の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第2の槽と、
前記第1の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、前記第2の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、
前記膜が、複数の標的領域を備え、各標的領域が、前記膜において、前記第1または第2の表面エリア内へと開口するくぼみまたは流体流路を備え、
前記標的領域が、前記第1及び第2の電極を介して印加された電圧が、前記標的領域の各々の中に1つの開孔の形成を生じさせることができるように構成される、機器。
[45]
前記膜が、複数の層を備える、[44]に記載の機器。
[46]
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々の境界部が、前記層のうちの2つの間の界面に位置する、[45]に記載の機器。
[47]
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々が、前記第2の層の表面によって前記境界部が形成されるように、前記第1の層の一部を、前記第1の層と前記第2の層との間の前記界面に至るまで除去することによって形成され、
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、[46]に記載の機器。
[48]
前記膜が、第1の層と第2の層とを備え、
前記複数の標的領域の各々での開孔の前記形成が、前記第2の層の少なくとも一部を貫通する誘電破壊によって生じる、[44]〜[47]のいずれかに記載の機器。
[49]
前記第2の層が、原子層堆積によって形成される、[48]に記載の機器。
[50]
前記第2の層が、複数の副層を備え、各副層が、原子層堆積によって形成される、[49]に記載の機器。
[51]
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、[50]に記載の機器。
[52]
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、[51]に記載の機器。
[53]
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、[52]に記載の機器。
[54]
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、[51]〜[53]のいずれかに記載の機器。
[55]
前記標的領域のうちの1つ以上が、前記くぼみ内での任意の開孔の形成の前に、前記くぼみまたは流体流路の開口の縁から、前記くぼみまたは流体流路の中央領域に向かって深さが次第に増大する深さプロファイルを有するくぼみまたは流体流路を備える、[44]〜[54]のいずれかに記載の機器。
[56]
前記標的領域のうちの1つ以上が、流体流路を備え、前記流体流路のうちの1つ以上が、1よりも大きいアスペクト比を有し、前記アスペクト比が、前記流体流路の長さと前記流体流路の平均幅との比として定義される、[44]〜[55]のいずれかに記載の機器。
[57]
前記標的領域のうちの1つ以上が、平均深さの5倍よりも小さい平均幅を有するくぼみを備える、[44]〜[56]のいずれかに記載の機器。
[58]
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成するための機器であって、
前記固体膜の各側と接触しているイオン溶液を保持するための槽システムと、
誘電破壊を用いて前記膜に前記開孔を形成するために、前記イオン溶液を介して前記膜全体に電圧を印加するための電圧印加部と、を含み、
前記膜が、複数の副層を備え、
前記副層のうちの少なくとも2つが、互いに対して異なる組成を有し、
前記副層の各々が、原子層堆積によって形成される、機器。
[59]
前記複数の副層が、複数回繰り返す連続する副層を備え、各繰り返す連続する副層が、少なくとも第1の副層と、前記第1の副層に直接隣接する第2の副層とを備える、[58]に記載の機器。
[60]
前記第1の副層が、前記第2の副層に対して非エピタキシャルである、[59]に記載の機器。
[61]
前記第1の副層が、HfO2を含み、前記第2の副層が、Al2O3を含む、[60]に記載の機器。
[62]
前記繰り返す連続する副層の各副層が、4サイクル以下の原子層堆積を用いて形成される、[58]〜[61]のいずれかに記載の機器。
[63]
誘電破壊を用いて固体膜に開孔を形成するための機器であって、
固体膜の一方の側の第1の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第1の槽と、
前記膜の他方の側の前記膜の第2の表面エリアの全体と接触しているイオン溶液を保持するように構成された第2の槽と、
前記第1の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第1の電極と、前記第2の槽内の前記イオン溶液に接触するように構成された第2の電極とを備える電圧印加部と、を含み、
前記膜と前記第1または第2の電極との間に、電流制限抵抗器が直列に設けられ、前記電流制限抵抗器が、前記開孔の形成後の任意の時点において、前記開孔の電気抵抗の少なくとも10%に達する電気抵抗を有する、機器。
[64]
前記電流制限抵抗器が、前記第1または第2の槽内に設けられた流体抵抗器と、前記第1及び第2の槽、または両方の外部に少なくとも部分的に設けられた外部抵抗器とを含む、[63]に記載の機器。
[65]
複数の開孔を備える固体膜であって、各開孔が、前記第1の槽を、前記開孔が形成された前記第2の槽から分離する膜材料の最小厚さ以上の直径を有する、固体膜。
[66]
固体膜であって、
複数の標的領域であって、各標的領域が、前記膜にくぼみまたは流体流路を備える、標的領域と、
複数のナノスケールの開孔であって、各開孔が、前記標的領域のうちの異なる1つの中に位置し、前記標的領域の最小厚さ以上である直径を有する、開孔と、を備える、固体膜。
[67]
異なる組成の複数の層を備え、前記くぼみまたは流体流路のうちの1つ以上の各々の境界部が、前記層のうちの2つの間の界面に位置する、[66]に記載の固体膜。
[68]
実質的に添付の図面を参照して先に記載されたように、及び/またはそれらに図示されるように、固体膜に複数の開孔を形成する方法、または固体膜に開孔を形成する方法。
[69]
実質的に添付の図面を参照して先に記載されたように、及び/またはそれらに図示されるように動作するように構成され配置された、固体膜に複数の開孔を形成するための機器、固体膜に開孔を形成するための機器、または固体膜。