(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る高さ調整機構およびこの高さ調整機構を備えた什器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る高さ調整機構100を備えた机101を斜め方向から見た外観構成の概略を示す斜視図である。また、
図2は、
図1に示した机101の主要部品の外観構成の概略を示した分解斜視図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表していることがあるため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この高さ調整機構100は、小学校や中学校などの教育施設などにおいて児童や生徒が教室で図示しない椅子とともに使用する学習机からなる机101における天板120の高さを調整するものである。
【0023】
(高さ調整機構100および机101の構成)
机101は、主として、ベース脚110、天板120および高さ調整具130をそれぞれ備えている。ベース脚110は、天板120を床面から所定の高さ位置に水平状態で支持するための部品であり、鋼製のパイプ材を連結して構成されている。具体的には、ベース脚110は、机101の前後方向に互いに平行に延びる2つのパイプ材からなる足体111上にそれぞれ下側支持脚112が垂直方向に起立した状態で設けられるとともに、これらの2つの下側支持脚112同士が連結棒113で互いに連結されて構成されている。なお、足体111の両端部には、樹脂製のキャップがそれぞれ嵌め込まれている。
【0024】
2つの下側支持脚112は、それぞれ後述する上側支持脚122を高さ方向の複数の位置で支持するための部品であり、鋼製のパイプ材で構成されている。これらの各下側支持脚112における上端部分には、ストッパ貫通孔114、切欠き部115および止め孔116がそれぞれ形成されている。
【0025】
ストッパ貫通孔114は、後述するストッパプレート131に形成された係合突起131aを貫通させるための部分であり、下側支持脚112の内部に貫通する正面で方形の孔で構成されている。本実施形態においては、ストッパ貫通孔114は、下側支持脚112の上端部付近に1つ形成されるとともに、その下方に所定の間隔を介してもう1つ形成されている。すなわち、ストッパ貫通孔114は、上下方向に沿って2つ形成されている。
【0026】
この場合、2つのストッパ貫通孔114の間隔は、ストッパプレート131に形成された2つの係合突起131aの間隔と同じである。そして、これらの2つのストッパ貫通孔114は、互いに平行に延びる2つの下側支持脚112の各外周面における互いに対向する面、すなわち下側支持脚112の内側の外周面上にそれぞれ形成されている。なお、これらの2つのストッパ貫通孔114は、下側支持脚112の外側の外周面上に形成してもよく、周方向上における形成位置は本実施形態に限定されるものではない。
【0027】
切欠き部115は、後述する中間筒132に形成されるロック突起係合部132cが嵌合する部分であり、下側支持脚112の上端部から凹状に切り欠かれて形成されている。この切欠き115部は、下側支持脚112の上端部に周方向に沿って所定の間隔を介して3つ形成されている。この場合、3つの切欠き部115は、高さ調整具130における3つの状態である支持状態、仮止め状態およびフリー状態にそれぞれ対応している。止め孔116は、前記中間筒132を下側支持脚112に固定するための貫通孔であり、下側支持脚112の周方向における互いに反対側の位置にそれぞれ形成されている。
【0028】
天板120は、机101の上面を構成する上面視で方形の部品であり、板状の木材を積層して構成されている。この天板120には、1つの底板121および2つの上側支持脚122がそれぞれ設けられている。底板121は、天板120の下方に設けられて机101の使用者の私物を収容する収容部を構成する部品であり、方形状の鋼板の3辺をそれぞれ上方に起立させた形状に形成されている。この底板121は、前記起立させた3辺を天板120の下面にボルト(図示せず)によって固定されている。
【0029】
2つの上側支持脚122は、2つの下側支持脚112にそれぞれ挿し込まれた状態で支持されて天板120を支持する部品であり、垂直方向に延びる鋼製のパイプ材で構成されている。この場合、各上側支持脚122は、鋼製のパイプ材を水平方向に平面視で略U字状に曲げたU字部材126を介して互いに連結された状態で天板120に取り付けられて天板120を支持している。これらの各上側支持脚122には、ストッパ係合部123および止め孔124がそれぞれ形成されている。
【0030】
ストッパ係合部123は、ストッパプレート131の係合突起131aが引っ掛けられる部分であり、上側支持脚122の外表面から凹状に窪んで形成されている。本実施形態においては、ストッパ係合部123は、上側支持脚122の下方から上方に向かって徐々に深さが深くなる正面視で略逆三角形状に形成されている。このストッパ係合部123は、互いに平行に延びる2つの上側支持脚122における互いに対向する外周面上に上下方向に沿って一直線上に複数形成されている。
【0031】
この場合、上下方向に互いに隣接するストッパ係合部123の間隔は、ストッパプレート131に形成された2つの係合突起131aの間隔と同じである。そして、これらの複数のストッパ係合部123は、互いに平行に延びる2つの上側支持脚122の各外周面における互いに対向する面、すなわち上側支持脚122の内側の外周面上にそれぞれ形成されている。本実施形態においては、ストッパ係合部123は、上側支持脚122の下端部付近から上端部付近まで形成されている。なお、これらのストッパ係合部123は、上側支持脚122の外側の外周面上に形成してもよく、周方向上における形成位置は本実施形態に限定されるものではない。
【0032】
止め孔124は、先端部材125を上側支持脚122の先端部に固定するための貫通孔であり、上側支持脚122の周方向における互いに反対側の位置にそれぞれ形成されている。この場合、各止め孔124は、上側支持脚122の軸方向に延びる長孔状に形成されている。
【0033】
先端部材125は、
図3(A),(B)にそれぞれ示すように、下側支持脚112内に挿し込んだ上側支持脚122の抜けを防止するための部品であり、樹脂製からなる円筒体に上側引掛け部125a、下側引掛け部125bおよび規制部125cがそれぞれ形成されている。上側引掛け部125aは、上側支持脚122に形成された止め孔124に弾性的に引っ掛けられる部分であり、上側に延びる板状体の先端部に鉤爪が形成されて構成されている。この上側引掛け部125aは、止め孔124に対応して先端部材125の周方向における互いに反対側の2つの位置にそれぞれ形成されている。
【0034】
下側引掛け部125bは、中間筒132の下端部に弾性的に引っ掛けられる部分であり、先端部材125の周方向に沿って下側に片持ち梁状に延びる複数の板状体の各先端部に鉤爪がそれぞれ形成されて構成されている。本実施形態においては、下側引掛け部125bは、先端部材125の周方向に沿って等間隔に6つ形成されている。
【0035】
この場合、下側引掛け部125bの上端部に形成された段部は、上側支持脚122の下端部が突き当たる部分であり、径方向外側に張り出して形成されている。また、下側引掛け部125bにおける鉤爪部分より上方の板状の部分は、中間筒132の内周面を弾性的に押圧する部分であり同内周面の内径よりも若干太い外径で形成されている。また、下側引掛け部125bにおける鉤爪部分は、下側支持脚112の内周面を弾性的に押圧する部分であり同内周面の内径よりも若干太い外径で形成されている。これらにより、下側引掛け部125bは、天板120の板面方向のガタツキを抑えている。
【0036】
規制部125cは、上側支持脚122が上下方向のストロークの最下限位置まで下降した際に上側支持脚122の下端部に先立って足体111に衝突して上側支持脚122の下端部の損傷を防止するための部分であり、先端部材125の軸芯から径方向に放射状に延びる板状体で構成されている。この場合、規制部125cは、前記下側引掛け部125bの内周面との間に下側引掛け部125bの径方向内側への弾性変形を許容するための隙間が設けられているとともに、軸線方向の長さが下側引掛け部125bよりも下方に張り出す長さに形成されている。
【0037】
高さ調整具130は、下側支持脚112に対して挿入される上側支持脚122の高さ方向の位置を固定または解除するための部品であり、主として、ストッパプレート131、中間筒132、内筒体133および外筒体140を備えて構成されている。
【0038】
ストッパプレート131は、
図4に示すように、下側支持脚112内に挿入された上側支持脚122の上下方向の変位を阻止するための金属製の部品であり、鋼板を長方形状に延ばした板状体で構成されている。この場合、ストッパプレート131は、後述する内筒体133および外筒体140に密着するように幅方向に円弧状に湾曲して形成されている。このストッパプレート131は、内筒体133に対向する内側面に係合突起131aが形成されている。
【0039】
係合突起131aは、上側支持脚122のストッパ係合部123内に嵌合する部分であり、ストッパプレート131を構成する板状部分から方形に突出して形成されている。この係合突起131aは、ストッパプレート131の長手方向の両端側にそれぞれ形成されている。この場合、2つの係合突起131aの間隔は、ストッパ係合部123の形成間隔に対応している。
【0040】
中間筒132は、
図5(A),(B)にそれぞれ示すように、下側支持脚112の上端部分内に挿入された状態で上側支持脚122が挿入される部品であり、樹脂材を円筒状に形成して構成されている。この中間筒132には、ストッパ貫通孔132a、引掛け部132b、ロック突起係合部132cおよびフランジ部132dがそれぞれ形成されている。ストッパ貫通孔132aは、ストッパプレート131に形成された係合突起131aを貫通させるための部分であり、中間筒132の内部に貫通する正面で方形の孔で構成されている。すなわち、ストッパ貫通孔132aは、中間筒132が下側支持脚112に取り付けられた状態においてストッパ貫通孔114に重なる2つの位置にそれぞれ形成されている。
【0041】
引掛け部132bは、下側支持脚112に形成された止め孔116に弾性的に引っ掛ける部分であり、下側に延びる板状体の先端部に鉤爪が形成されて構成されている。この引掛け部132bは、中間筒132の下端部の外周面の周方向における互いに反対側の位置にそれぞれ形成されている。ロック突起係合部132cは、内筒体133に形成されているロック突起136が嵌合する部分であり、中間筒132の軸方向に互いに平行に延びる2つの突起で構成されている。このロック突起係合部132cは、中間筒132の外周面の上端部分における前記切欠き部115に対応する位置にそれぞれ形成されている。フランジ部132dは、下側支持脚112の上端部に引っ掛かるとともに内筒体133の上端部に引っ掛けられて内筒体133の回動を円滑させる部分であり、中間筒132の上端部にフランジ状に張り出して形成されている。
【0042】
内筒体133は、
図6(A),(B)および
図7にそれぞれ示すように、ストッパプレート131を下側支持脚112および上側支持脚122の各径方向外側に押圧するための部品であり、樹脂製の円筒体で構成されている。この場合、内筒体133は、下側支持脚112の外周面上を摺動可能な内径に形成されている。この内筒体133には、内側押圧部134、逃げ孔135、ロック突起136、外筒当て部137および引掛け部138がそれぞれ形成されている。
【0043】
内側押圧部134は、ストッパプレート131を下側支持脚112および上側支持脚122の各径方向外側に押圧する部分であり、内筒体133の周方向に沿って外周面の張り出し量が連続的に増加する傾斜面で構成されている。より具体的には、内側押圧部134は、最小部134a、最大部134bおよび最大前部134cが形成されている。
【0044】
最小部134aは、最小部134aにストッパプレート131の内側面が密着した状態で係合突起131aが上側支持脚122のストッパ係合部123に嵌合することができる最小の張り出し量で形成された部分である。この最小部134aは、張り出しがない張り出し量が「0」から最大前部134cに向かって徐々に張り出し量が増加する勾配の傾斜面で構成されている。
【0045】
最大部134bは、最大部134bにストッパプレート131の内側面が密着した状態で係合突起131aがストッパ係合部123から完全に外れる最大の張り出し量で形成された部分である。この最大部134bは、一定の張り出し量でかつストッパプレート131の幅方向と長さと略同じ長さに形成されている。
【0046】
最大前部134cは、最大部134bに向かって張り出し量が徐々に増加する最小部134aが最大部134bの直前部分で張り出し量の増加割合がより増加する部分である。すなわち、最大前部134cは、最大部134bの直前で最小部134aの勾配よりも大きな急勾配に形成された部分である。この最大前部134cは、ストッパプレート131の幅方向と半分の長さと略同じ長さに形成されている。
【0047】
この内側押圧部134は、内筒体133の軸方向における両端部側部分および中央部の3つの位置にそれぞれ平行に形成されている。すなわち、内側押圧部134は、ストッパプレート131の2つの係合突起131aに対して同2つの係合突起131aの各外側および同2つの係合突起131aの間にそれぞれ位置するように形成されている。
【0048】
逃げ孔135は、ストッパプレート131に対して相対的に回動する内筒体133の係合突起131aへの物理的干渉を避けるための部分であり、係合突起131aが貫通する貫通孔が内側押圧部134に沿った長孔状に形成されている。この逃げ孔135は、下側支持脚112に取り付けられた際にストッパプレート131の2つの係合突起131aに対向する2か所の部分にそれぞれ形成されている。
【0049】
ロック突起136は、前記中間筒132のロック突起係合部132cに弾性的に嵌合して内筒体133の回動を阻止するための部分であり、上側に延びる板状体の先端部に径方向内側に凸状に張り出した突起を備えて構成されている。外筒当て部137は、外筒体140から周方向の回転力が加えられる部分であり、内筒体133の外周面から凸状に突出して形成されている。本実施形態においては、外筒当て部137は、帯状に延びて形成された前記3つの内側押圧部134における各最小部134aに対して離隔した位置、および各最大部134bの端面にそれぞれ形成されている。
【0050】
引掛け部138は、外筒体140に形成された止め孔143に弾性的に引っ掛ける部分であり、径方向外側に張り出して下垂する板状体の先端部に鉤爪が形成されて構成されている。この引掛け部138は、内筒体133の下端部の外周面の周方向における互いに反対側の位置にそれぞれ形成されている。
【0051】
外筒体140は、
図8(A),(B)および
図9にそれぞれ示すように、内筒体133を周方向に回動させるとともにストッパプレート131を下側支持脚112および上側支持脚122の各径方向内側に押圧するための部品であり、樹脂製の円筒体で構成されている。この場合、外筒体140は、内筒体133の外周面上にストッパプレート131を挟んだ状態で嵌合する内径に形成されている。この外筒体140には、外側押圧部141、内筒押し部142および止め孔143がそれぞれ形成されているとともにロック片144を備えている。
【0052】
外側押圧部141は、ストッパプレート131を内側押圧部134と挟んで下側支持脚112および上側支持脚122の各径方向内側に押圧する部分であり、外筒体140の周方向に沿って内周部の内径が連続的に減少する傾斜面で構成されている。より具体的には、外側押圧部141は、最小部141a、最大部141bおよび弾性押圧部141cが形成されている。
【0053】
最小部141aは、最小部134aにストッパプレート131の外側面が密着した状態で係合突起131aが上側支持脚122のストッパ係合部123に嵌合することができる最小の内径に形成された部分であり、内側押圧部134における最小部134aに対向する位置に形成されている。この最小部141aは、弾性押圧部141cに向かって徐々に内径が増加する勾配の傾斜面で構成されている。
【0054】
最大部141bは、ストッパプレート131の係合突起131aがストッパ係合部123から完全に外れる位置まで内側押圧部134の最大部134bによるストッパプレート131の径方向外側への変位を許容する内径に形成された部分であり、最大部134bに対向する位置に形成されている。この最大部141bは、ストッパプレート131の幅方向と長さよりも長い長さに形成されている。
【0055】
弾性押圧部141cは、内側押圧部134の最大前部134cに位置したストッパプレート131の外側面を弾性的に押圧する部分であり、周方向に互いに対向する2つの片持ち梁状の板状片で構成されている。具体的には、弾性押圧部141cは、最小部141aの最大部141b側の先端部および最大部141bの最小部141a側の先端部がそれぞれ片持ち梁状の板状片に切り抜かれて径方向内側に張り出して形成されている。
【0056】
この弾性押圧部141cは、内筒体133に形成された2つの逃げ孔135に対向する位置にそれぞれ形成されている。なお、この弾性押圧部141cは、ストッパプレート131を径方向内側に弾性的に押圧できればよいため、形成する位置や数は本実施形態に限定されるものではない。
【0057】
内筒押し部142は、内筒体133を周方向のうちの一方の方向または他方の方向にそれぞれ押して内筒体133を回動させるための部分であり、外筒体140の内周面の周方向における外側押圧部141以外の部分の内径が外側押圧部141以下の内径に形成されて構成されている。より具体的には、内筒押し部142は、外側押圧部141の最小部141aおよび最大部141bの各後端部分がそれぞれ径方向内側に張り出して内筒体133の外筒当て部137に接触するように形成されている。
【0058】
止め孔143は、内筒体133の引掛け部138が嵌合することで外筒体140と内筒体133とを一体的に連結するための貫通孔である。この止め孔143は、外筒体140の周方向における互いに反対側の位置にそれぞれ形成されている。
【0059】
ロック片144は、内筒体133のロック突起136を径方向内側に押圧して中間筒132のロック突起係合部132cに嵌合させて内筒体133および外筒体140の回動変位を規制する部品である。より具体的には、ロック片144は、外筒体140の上端部にスライド変位可能な状態で嵌合する板状体の内側面の一部に内筒体133のロック突起136を径方向内側に押圧するロック突起押圧部144aを備えて構成されている。そして、これらの下側支持脚112、上側支持脚122および高さ調整具130によって本発明に係る高さ調整機構100が構成されている。
【0060】
(机101の組み立て)
ここで、このように構成された机101の組み立て作業について説明する。作業者は、まず、1つのベース脚110、1つの天板120および2つの高さ調整具130をそれぞれ用意する。この場合、作業者は、鋼製のパイプ材にプレスカットやピアス抜きなどのプレス加工を用いてストッパ貫通孔114、切欠き部115および止め孔116を成形して下側支持脚112を製作した後、この下側支持脚112に別工程で製作した足体111および連結棒113を溶接加工により連結してベース脚110を得る。
【0061】
また、作業者は、鋼製のパイプ材にプレス加工を用いてストッパ係合部123および止め孔124を成形して上側支持脚122を製作した後、この上側支持脚122を板金加工により成形した底板121およびU字部材126とともに木製の天板120の裏面に取り付けて天板120を得る。また、作業者は、射出成形加工を用いて先端部材125、中間筒132、内筒体133および外筒体140を成形する。この場合、先端部材125、中間筒132、内筒体133および外筒体140は、左右の下側支持脚112および上側支持脚122にそれぞれ対応して左右対称な形状に形成される。また、作業者は、鋼板に対して鍛造加工を行うことにより係合突起131aを成形してストッパプレート131を得る。なお、本実施形態においては、机101の左右の下側支持脚112と上側支持脚122とで高さ調整具130を左右対称としたが、左右で同じ形状で構成してもよいことは当然である。
【0062】
次に、作業者は、ベース脚110、天板120および高さ調整具130を互いに組み付ける。具体的には、作業者は、机101の設置面となる床面上に載置した左右の下側支持脚112の上端部からそれぞれ中間筒132を挿入して中間筒132を下側支持脚112に取り付けた後、これらの各下側支持脚112の外側にそれぞれ内筒体133を通す。この場合、作業者は、各内筒体133の内側押圧部134における最大部134bが下側支持脚112のストッパ貫通孔114に軸方向に隣接する向きで配置する。これにより、各内筒体133の各ロック突起136が中間筒132の3つのロック突起係合部132cの一つに弾性的に嵌合するため、内筒体133の周方向および上下方向の各変位が軽く規制された状態となる。
【0063】
次に、作業者は、ストッパプレート131を左右の内筒体133の内側押圧部134にそれぞれ宛がった状態で左右の外筒体140を内筒体133にそれぞれ被せる。この場合、作業者は、各外筒体140からロック片144をそれぞれ取り外しておく。また、作業者は、
図10に示すように、各外筒体140の外側押圧部141における最大部141bがストッパプレート131に面する向きで外筒体140を内筒体133に被せる。これにより、ストッパプレート131は、係合突起131aが上側支持脚122のストッパ係合部123に嵌合しない状態となる。
【0064】
次に、作業者は、左右の各上側支持脚122の下端部に先端部材125をそれぞれ嵌め込んだ後、これらの左右の上側支持脚122を各下側支持脚112内にそれぞれ挿し込む。これにより、机101は、天板120が上下動自在なフリー状態で組み付けられる。そして、作業者は、天板120を上下方向のストロークにおける下限位置まで下げる。
【0065】
次に、作業者は、
図11に示すように、左右の各外筒体140を手動により回動(
図10における矢印A方向)させて外側押圧部141の弾性押圧部141cをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めする。この場合、内筒体133は、外筒体140の内筒押し部142が内筒体133の外筒当て部137を押すことで外筒体140と一体的に回動する。また、ストッパプレート131は、外筒体140および内筒体133が回動することで、外側押圧部141の内径および内側押圧部134の張り出し量がそれぞれ減少するため径方向内側に変位する。また、作業者は、外筒体140を回動操作時にストッパプレート131が内側押圧部134の最大前部134cを通過することで操作感が急に軽くなるためストッパプレート131が弾性押圧部141cに位置したことを認識することができる。
【0066】
また、この場合、高さ調整具130は、外筒体140の回動によって内筒体133が回動することで支持状態に対応するロック突起係合部132cからロック突起136が弾性的に外れるとともに、その後、仮止め状態に対応するロック突起係合部132cに弾性的に嵌合するため、その都度「カチッ」という音が生じるとともに作業者に手ごたえを与える。これにより、作業者は、外筒体140が仮止め状態の位置まで回動したことを容易に認識することができる。これらにより、左右の各ストッパプレート131は、弾性押圧部141cによって径方向内側に弾性的に押圧されて係合突起131aの先端部分が中間筒132の内側に弾性的に露出した仮止め状態となる。
【0067】
次に、作業者は、天板120を上昇させて左右の各ストッパ係合部123に係合突起131aを軽く嵌合させる。この場合、係合突起131aは、弾性押圧部141cによって弾性的に押圧されているため、上側支持脚122が上昇することでストッパ係合部123が上方に変位した場合であっても径方向外側に変位した後に径方向内側に変位してストッパ係合部123を含む上側支持脚122の外周面の凹凸に追従する。一方、係合突起131aは、ストッパ係合部123の上端の水平面に引っ掛かっているため、下方に対する力では径方向外側には変位しない。すなわち、天板120は、各係合突起131aが逆三角形状のストッパ係合部123に弾性的に嵌合しているため、上昇可能な状態であっても手を放すことで直ちに落下することはない。
【0068】
そして、作業者は、
図12に示すように、係合突起131aがストッパ係合部123に軽く嵌合する位置で各外筒体140を更に回動操作(
図11における矢印B方向)して外側押圧部141の最小部141aをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めする。この場合、ストッパプレート131は、外筒体140および内筒体133が回動することで、外側押圧部141の内径および内側押圧部134の張り出し量がそれぞれ更に減少するため径方向内側に更に変位する。これにより、左右の各ストッパプレート131は、最小部141aによって径方向内側に強制的に押圧されて係合突起131aがストッパ係合部123に完全に嵌合する。
【0069】
また、この場合においても、高さ調整具130は、外筒体140の回動によって内筒体133が回動することで仮止め状態に対応するロック突起係合部132cからロック突起136が弾性的に外れるとともに、その後、支持状態に対応するロック突起係合部132cに弾性的に嵌合するため、その都度「カチッ」という音が生じるとともに作業者に手ごたえを与える。これにより、作業者は、外筒体140が支持状態の位置まで回動したことを容易に認識することができる。これらにより、上側支持脚122は、上下方向の変位が係合突起131aの嵌合によって規制されるため、天板120の高さが固定される支持状態となる。
【0070】
そして、作業者は、2つのロック片144を各外筒体140に挿し込む。これにより、高さ調整具130は、ロック突起押圧部144aが内筒体133のロック突起136を径方向内側に強く押圧して中間筒132のロック突起係合部132cに嵌合させるため、外筒体140および内筒体133の周方向への回動が規制された状態となる。これにより、作業者は、机101を組み立てることができる。
【0071】
(高さ調整機構100の作動)
次に、このように構成した机101の作動について説明する。具体的には、机101における天板120の高さ調整作業について説明する。この高さ調整作業においては、前記組み立て作業説明における天板120の高さが固定された支持状態(
図12参照)から天板120の高さを調整する作業について説明する。
【0072】
天板120の高さ調整を行う作業者は、まず、左右の外筒体140の各ロック片144を上方にスライドさせてロック突起押圧部144aによるロック突起136の押圧状態を解除する。これにより、高さ調整具130は、ロック突起136が中間筒132のロック突起係合部132cに弾性的に嵌合した状態で回動可能な状態となる。
【0073】
次に、作業者は、天板120の高さを上昇させたい場合には、
図11に示すように、左右の外筒体140を回動操作(
図12における矢印C方向)して外側押圧部141の弾性押圧部141cをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めする。この場合、ストッパプレート131は、外筒体140および内筒体133が回動するため外側押圧部141の内径および内側押圧部134の張り出し量がそれぞれ増加することで径方向外側に変位する。また、作業者は、外筒体140を回動操作時にストッパプレート131が内側押圧部134の最大前部134cに当たることでストッパプレート131が弾性押圧部141cに位置したことを認識することもできる。
【0074】
また、高さ調整具130は、外筒体140の回動によって内筒体133が回動することで支持状態に対応するロック突起係合部132cからロック突起136が弾性的に外れるとともに、その後、仮止め状態に対応するロック突起係合部132cに弾性的に嵌合するため、その都度「カチッ」という音が生じるとともに作業者に手ごたえを与える。これらにより、作業者は、外筒体140が仮止め状態の位置まで回動したことを容易に認識することができる。すなわち、高さ調整具130は、左右の各ストッパ係合部123に係合突起131aを弾性的に軽く嵌合した仮止め状態となる。
【0075】
したがって、作業者は、天板120を上昇させることにより左右の係合突起131aが嵌合するストッパ係合部123の位置を変化させて天板120の高さ位置を上昇方向において自由に選択することができる。すなわち、この天板120が、本発明における被支持体に相当する。この仮止め状態においては、前記したように、天板120は、各係合突起131aが逆三角形状のストッパ係合部123に弾性的に嵌合しているため、上昇可能な状態であっても手を放すことで直ちに落下することはない。
【0076】
そして、作業者は、
図12に示すように、天板120の高さ位置を希望の高さ位置とする係合突起131aのストッパ係合部123への嵌合位置を特定した場合には、左右の外筒体140を先程とは反対方向に回動操作(
図11における矢印B方向)して外側押圧部141の最小部141aをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めする。この場合においても、ストッパプレート131は、外筒体140および内筒体133が回動することで、外側押圧部141の内径および内側押圧部134の張り出し量がそれぞれ減少することで径方向内側に案内される。これにより、左右の各ストッパプレート131は、最小部141aによって径方向内側に強制的に押圧されて係合突起131aがストッパ係合部123に完全に嵌合する。
【0077】
また、この場合においても、高さ調整具130は、外筒体140の回動によって内筒体133が回動することで仮止め状態に対応するロック突起係合部132cからロック突起136が弾性的に外れるとともに、その後、支持状態に対応するロック突起係合部132cに弾性的に嵌合するため、その都度「カチッ」という音が生じるとともに作業者に手ごたえを与える。これにより、作業者は、外筒体140が支持状態の位置まで回動したことを容易に認識することができる。これらにより、上側支持脚122は、上下方向の変位が係合突起131aの嵌合によって規制されるため、天板120の高さが固定される支持状態となる。
【0078】
そして、作業者は、左右のロック片144を各外筒体140内に再び深く挿し込む。これにより、高さ調整具130は、ロック突起押圧部144aが内筒体133のロック突起136を径方向内側に強く押圧して中間筒132のロック突起係合部132cに嵌合させるため、外筒体140および内筒体133の周方向への回動が規制された状態となる。この状態で机101は、机としての使用に供される。
【0079】
一方、作業者は、天板120の高さを下げたい場合には、天板120の高さを一旦現在の高さ以下の高さに位置決めする。具体的には、作業者は、
図10に示すように、外筒体140を仮止め状態の位置から更に回動操作(
図11における矢印D方向)することにより外側押圧部141の最大部141bをストッパプレート131に面する位置、すなわち、内側押圧部134の最大部134bをストッパプレート131に面する位置に位置決めする。この場合、ストッパプレート131は、外筒体140および内筒体133が回動することで、外側押圧部141の内径および内側押圧部134の張り出し量がそれぞれ増加するため径方向外側に案内される。
【0080】
この場合、高さ調整具130は、外筒体140の回動によって内筒体133が回動することで仮止め状態に対応するロック突起係合部132cからロック突起136が弾性的に外れるとともに、その後、フリー状態に対応するロック突起係合部132cに弾性的に嵌合するため、その都度「カチッ」という音が生じるとともに作業者に手ごたえを与える。これらにより、作業者は、外筒体140がフリー状態の位置まで回動したことを容易に認識することができる。すなわち、高さ調整具130は、左右の各ストッパ係合部123から係合突起131aが完全に離隔したフリー状態となる。
【0081】
したがって、作業者は、天板120を現在の高さ以下の高さ(例えば、下限位置)まで下げた後、再び左右の外筒体140を反対方向に回動操作(
図10における矢印A方向)して外側押圧部141の弾性押圧部141cをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めして仮止め状態とする。次いで、作業者は、前記と同様にして、天板120を上昇させることにより左右の係合突起131aが嵌合するストッパ係合部123の位置を変化させて天板120の高さ位置を上昇方向において自由に選択することができる。
【0082】
そして、作業者は、天板120の高さ位置を希望の高さ位置とする係合突起131aのストッパ係合部123への嵌合位置を特定した場合には、前記したように、左右の外筒体140を反対方向に回動操作(
図11における矢印D方向)して外側押圧部141の最小部141aをストッパプレート131に面する位置にそれぞれ位置決めすることで天板120を再び支持状態とすることができる(
図12参照)。
【0083】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、机101は、外筒体140を手動で回動操作することで内筒体133を回動させてストッパプレート131の係合突起131aをストッパ係合部123から離隔させて上側支持脚122を下側支持脚112に対して上下動可能な状態にすることができるとともに、外筒体140を手動で回動操作することで係合突起131aをストッパ係合部123に嵌合させて上側支持脚122を下側支持脚112に対して上下動が不能な固定状態とすることができる。すなわち、本発明に係る机101によれば、高さ調整具130を手動操作することで天板120の高さ調整が可能な状態と不能な状態を容易に切り替えることができるため、工具を使用することなく簡単な作業で天板120の高さを調整することができる。
【0084】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、上記実施形態においては、ストッパプレート131は、2つの係合突起131aを備えて構成した。しかし、ストッパプレート131は、少なくとも1つの係合突起131aを備えて構成されていればよい。したがって、ストッパプレート131は、3つまたは3つ以上の係合突起131aを備えて構成することができる。この場合、ストッパ貫通孔114および逃げ孔135は、係合突起131aの数に対応した数だけ形成すればよい。
【0086】
また、上記実施形態においては、ストッパ係合部123は、上側支持脚122の下端部から上端部までの範囲に亘って複数のストッパ係合部123を一列に並べて形成した。しかし、ストッパ係合部123は、上側支持脚122の外周面上に少なくとも1つ形成されていればよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、内側押圧部134は、最小部134aと最大部134bとの間の中間部分に最小部134aおよび最大部134bにおける勾配とは異なる勾配の最大前部134cを形成した。これにより、作業者は、外筒体140および内筒体133の回動方向の位置の目安を得ることができる。しかし、内側押圧部134は、最大前部134cを省略して構成することもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、外側押圧部141は、最小部141aと最大部141bとの間の中間部分に弾性押圧部141cを形成した。これにより、高さ調整具130は、上側支持脚122を下側支持脚112に対して仮止め状態とすることができる。しかし、外側押圧部141は、弾性押圧部141cを省略して構成することができる。
【0089】
また、上記実施形態においては、机101は、下側支持脚112と上側支持脚122との間に中間筒132を設けた。しかし、机101は、中間筒132を省略して形成するこができる。
【0090】
また、上記実施形態においては、高さ調整具130は、ロック片144を備えて構成した。これにより、高さ調整具130の自由な操作を規制することができるため、子供による不用意な操作を防ぐことができる。しかし、高さ調整具130は、ロック片144を省略して構成することもできる。
【0091】
また、上記実施形態においては、机101は、先端部材125を備えて構成した。しかし、机101は、先端部材125を省略して構成することもできる。
【0092】
また、上記実施形態においては、机101は、ストッパ係合部123を逆三角形に形成することにより仮止め状態においては天板120は上昇のみ可能とした。しかし、机101は、仮止め状態においても天板120が下降可能に構成することもできる。例えば、机101は、ストッパプレート131における係合突起131aの上辺の角部分の形状を丸みを持った形状や傾斜面の形状にすることにより下方への押圧力によってストッパプレート131を径方向外側に変位するように構成することもできる。
【0093】
また、上記実施形態においては、机101は、小学校や中学校などの教育施設などにおいて使用する学習机をとしたが、学習机以外の机、例えば、教卓、家庭用学習机、事務机または食卓としても実施可能である。
【0094】
また、上記実施形態においては、高さ調整機構100を机101に適用した。すなわち、天板120が本発明における被支持体に相当し、机101が本発明における什器に相当する。しかしながら、高さ調整機構100は、机101以外の家具や道具などからなる什器に広く適用することができる。ここで、什器としては、例えば、椅子、ホワイトボード、三脚(3つの脚を持つ台)またはマイクスタンドがある。この場合、什器を椅子とした場合には被支持体は椅子の座面を構成する座板であり、什器をホワイトボードとした場合には被支持体は白板であり、什器を三脚とした場合には被支持体は3つの脚に支持される台であり、什器をマイクスタンドとした場合には被支持体はマイクを着脱自在に保持する保持具である。すなわち、高さ調整機構100は、2つのパイプ材が垂直方向に互いに摺動自在に嵌合し合って任意の高さ位置で固定できる什器に広く適用できる。この場合、2つの一対のパイプ材、すなわち、下側支持脚112および上側支持脚122は、上記実施形態のように2組であってもよいが、マイクスタンドのように1組でもよい。