特許第6938118号(P6938118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938118
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】表面実装形薄膜抵抗ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20210909BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210909BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H01L23/30 B
   H01L23/50 Q
   H01L23/50 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-126651(P2016-126651)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-6376(P2018-6376A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 敏志
(72)【発明者】
【氏名】小口 友規
(72)【発明者】
【氏名】柏木 昇
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−208257(JP,A)
【文献】 特開昭61−064143(JP,A)
【文献】 特開昭59−063736(JP,A)
【文献】 特開平07−193179(JP,A)
【文献】 特開平10−308479(JP,A)
【文献】 特開平10−335561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/28−23/31
23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜抵抗集積アレイを形成したチップと、
該チップを固定したアイランドと、
該アイランド周辺を囲み外方に伸びる複数のリード端子と、
前記チップに形成した抵抗の電極と前記リード端子を接続したワイヤと、
該ワイヤを含む部分を封止したモールド樹脂と、を備え、
前記アイランドから延伸する吊りリードは二股に分かれており、前記モールド樹脂で封止したパッケージ端面において、前記二股に分かれている部分が切断されていて、前記パッケージ端面から露出した前記吊りリードの切断部に電気的絶縁が施されており、
前記切断部は、前記パッケージ端面の中央よりも外側に位置していることを特徴とする表面実装形薄膜抵抗ネットワーク。
【請求項2】
前記切断部は、絶縁性の樹脂によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の表面実装形薄膜抵抗ネットワーク。
【請求項3】
前記切断部は、無機質の膜によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載の表面実装形薄膜抵抗ネットワーク。
【請求項4】
アイランドと、該アイランド周辺を囲み外方に伸びる複数のリード端子と、該リード端子を連結する外枠部と、前記アイランドを外枠部に連結し、二股に分かれている吊りリードと、前記リード端子に交差して複数の該リード端子を連結するタイバーとを含むリードフレームを準備し、
薄膜抵抗集積アレイを形成したチップを前記アイランドに固定し、
前記チップの抵抗の電極と前記リード端子をワイヤにより接続し、
該ワイヤにより接続した部分を含めてモールド樹脂で封止し、
前記外枠部と前記タイバーの連結部とを含む前記リード端子に連結した不要部を切断し、前記吊りリードの前記二股に分かれている部分を前記モールド樹脂で封止した端面において切断し、
前記モールド樹脂で封止した前記端面から露出し、前記端面の中央よりも外側に位置する前記吊りリードの切断部に電気的絶縁を施すことを特徴とする表面実装形薄膜抵抗ネットワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に係り、特に金属皮膜からなる薄膜抵抗集積アレイを形成したチップを、モールド樹脂で封止した表面実装形薄膜抵抗ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アイランドと、該アイランドを外枠部に連結する吊りリードと、該外枠部に連結した複数のリード端子を備えたリードフレームのアイランドに、チップを固定し、チップとリード端子をワイヤボンドで接続し、モールド樹脂で封止し、リードフレームの外枠部等を切断して形成した、モールド樹脂封止の半導体装置が記載されている。
【0003】
このような半導体装置においては、アイランドを外枠部に連結する吊りリードは、モールド樹脂で封止した後で、モールド樹脂の端面に沿って切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−60105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の表面実装形(ガルウィングタイプ)の半導体装置のチップ上に金属皮膜からなる薄膜抵抗集積アレイを形成し、高電圧印加試験を行うと、モールド樹脂の表面で微小放電が繰り返されることにより、モールド樹脂の表面に導電性の経路(炭化導電路)が形成され、絶縁破壊に至るトラッキング現象が発生してしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、高電圧印加試験において、広い電圧範囲でトラッキング現象が発生しないようにした表面実装形薄膜抵抗ネットワークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面実装形薄膜抵抗ネットワークは、薄膜抵抗集積アレイを形成したチップと、該チップを固定したアイランドと、該アイランド周辺を囲み外方に伸びる複数のリード端子と、前記チップに形成した抵抗の電極と前記リード端子を接続したワイヤと、該ワイヤを含む部分を封止したモールド樹脂と、を備え、前記アイランドから延伸する吊りリードは二股に分かれており、前記モールド樹脂で封止したパッケージ端面において、前記二股に分かれている部分が切断されていて、前記パッケージ端面から露出した前記吊りリードの切断部に電気的絶縁が施されており、前記切断部は、前記パッケージ端面の中央よりも外側に位置していることを特徴とする。
【0008】
高電圧印加試験においては、モールド樹脂の表面に導電性の経路(炭化導電路)が形成され、絶縁破壊に至るトラッキング現象が生じると考えられる。本発明によれば、高電圧印加試験において、高電圧が印加される対角のピンの近くに配置された吊り端子の切断部に電気的絶縁が施されているので、トラッキング現象が生じないような沿面距離を確保することができる。これにより、高電圧印加試験において、広い電圧範囲でトラッキング現象の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の一実施例の一区画分のリードフレームの平面図である。
図1B】上記リードフレームから、外枠部、タイバーの連結部等を切断して除去した段階の平面図である。
図2A】本発明の一実施例のパッケージの側面図であり、吊りリードの切断部が露出した状態を示す。
図2B】本発明の一実施例のパッケージの側面図であり、吊りリードの切断部に電気的絶縁が施された状態を示す。
図3A】本発明の一実施例のパッケージの平面図である。
図3B】本発明の一実施例のパッケージの正面図である。
図4】高電圧印加試験結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1A乃至図4を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。
【0011】
図1Aは、リードフレームの一区画11のアイランド12にチップ13を固定し、該アイランド周辺を囲み外方に伸びる多数のリード端子14とチップ上の対応する抵抗の電極をワイヤ15により接続し、モールド樹脂20で封止した段階を示す。リードフレームは銅または銅合金の薄板からなり、多数の区画が連続的に設けられている。
【0012】
チップ13には、薄膜(金属皮膜)抵抗の集積アレイが形成されている。チップとして、半導体シリコンのチップが用いられている。この実施例では、12個の抵抗体が形成され、それぞれの抵抗体の両端が合計24個のリード端子14に接続されている。なお、チップ13は半導体チップに限らず、セラミックス等のチップでもよい。
【0013】
片側12個のリード端子14はタイバー16により交差して連結され、且つ外枠部17に連結されている。チップ13を搭載するアイランド12は吊りリード18を介して外枠部17に連結されている。そして、図中の破線で囲まれた部分がモールド樹脂20で封止した部分である。この部分には、アイランド12、チップ13、ワイヤ15が完全に、リード端子14および吊りリード18が部分的に封止される。
【0014】
図1Bは、リード端子を交差して連結するタイバー16の連結部分とリード端子の外枠部17への連結部分と吊りリード18の外枠部17への連結部分等の不要部を切断して除去した段階を示すものである。この段階で、モールド樹脂20から多数のリード端子14が突出する。そして、リード端子14を折り曲げ加工することで、図2A−2Bおよび図3A−3Bに示す表面実装形の薄膜抵抗ネットワーク(電子部品)が得られる。
【0015】
一例としてこの電子部品のサイズは、モールド樹脂20の長さが約9mm、幅が約4mm、高さが約2mmである。リード端子14はピッチが0.635mm、端子幅が0.25mmである。なお、24ピンタイプの他に、20ピンタイプ、16ピンタイプ等があり、これらも同様の形状・寸法を備えている。
【0016】
吊りリード18はモールド樹脂20の長手方向端面20aで切断される。従って、吊りリード18の切断部18aがモールド樹脂20の端面20aに露出する(図2A参照)。そして、吊りリード18の切断部18aに絶縁性の樹脂または無機質の膜等からなる電気的絶縁21が施される(図2B参照)。
【0017】
ここで、無機質の膜の材質としては、窒化シリコン、酸化シリコン、アルミナなどを使うのが良く、絶縁性の樹脂の材質としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂などを使うのが良い。また、電気的絶縁を施す方法としては、絶縁性の樹脂の形成にあたっては、ディスペンサーによる塗布やディップによる塗布後に乾燥させて形成し、無機質の膜の形成にあたっては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などにより形成される。
【0018】
すなわち、切断部18aは絶縁性の樹脂または無機質の膜によって覆われている。パッケージ両端もしくは片端における吊リード18の切断部18aを覆う電気的絶縁21は、絶縁材であれば良い。これにより、放電経路の沿面距離を延ばすことができ、高電圧印加試験において、高い耐圧が得られる。
【0019】
高電圧印加試験は対角のリード端子(例えばP1とP24)間に電圧を印加し、電圧を徐々に上げていき、放電電圧を計測する(図3A参照)。図4は高電圧印加試験結果の一例を示すグラフである。図中●は絶縁21が無く、吊りリード18の切断部18aが露出している場合(図2A参照)を示す。図中□は絶縁21があり、吊りリード18の切断部18aが絶縁21で覆われている場合(図2B参照)を示す。
【0020】
図4は、吊リード18の端部18aを絶縁21によって覆った場合と覆わなかった場合とを、印加電圧を上昇させていった際の放電電圧を比較したものである。放電が始まるまで印加電圧を高めていったところ、グラフから明らかなように吊リード18の露出部分が絶縁被覆無しでは、A(kV)で放電が開始するのに対して、絶縁被覆有りでは、B(kV)から放電が発生するようになっている。
【0021】
以上の試験結果から、樹脂または無機質の膜等の絶縁材によって吊リードの切断面を覆うことにより、放電の沿面距離が延長され、同一製品(同型同サイズ)のパッケージ構成でありながら、耐電圧特性が向上したことがわかる。
【0022】
すなわち、図中●の吊りリード18の切断部18aが露出している場合(図2A参照)には、放電経路は、端子P1→吊リード18→アイランド12→吊リード18→端子P24と考えられる(図1B参照)。図中□の吊りリード18の切断部18aが絶縁21で覆われている場合(図2B参照)には、放電経路は、端子P1→パッケージ上面を斜め経由→端子P13−P24のいずれかを経て→P24になると考えられる(図3A参照)。これにより、放電の沿面距離を確保することができるようになり、沿面距離が延びた分に応じて高電圧の印加が可能となると考えられる。
【0023】
このように吊リードの切断面18aを絶縁21で覆うことによる効果は、沿面距離を延長させることばかりではなく、パッケージ内部への水分等の侵入を抑えることも可能となる。すなわち、侵入する水分やパッケージ表面の樹脂中の不純物が原因で、チップ表面での配線金属との電池反応による配線の腐食が起こることについても、防止することができる。
【0024】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、薄膜抵抗ネットワーク等のリードフレームに搭載したチップをモールド樹脂で封止した電子部品に好適に利用可能である。


図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4