【実施例】
【0014】
図1に示すように、実施例に係る熱交換器10は、複数条(実施例では2条)の熱交換管12,14が互いに並行するように縦向きに埋設される垂直埋設型である。熱交換器10は、土中に縦方向に直線的に延在するように埋設される往路用熱交換管(以下、単に往路管という)12と、往路管12と並行するように配置され、土中に縦方向に延在するように埋設される還路用熱交換管(以下、単に還路管という)14とを備えている。また、熱交換器10は、往路管12の下端と還路管14の下端とを繋ぐ連結部16を備えている。熱交換器10は、往路管12の上端(上流)および還路管14の上端(下流)が、ヒートポンプや冷暖房装置や融雪装置などの図示しない負荷装置に接続されている。熱交換器10は、水や不凍液などの熱媒体が、負荷装置から往路管12に流れて、往路管12の下端から連結部16を介して還路管14の下端に流れ、還路管14から負荷装置に戻るようになっている。そして、熱交換器10は、負荷装置との間で流通する熱媒体が、例えば気温が低い冬期に地中から採熱したり、気温が高い夏期に地中に放熱するように構成される。
【0015】
前記熱交換管12,14は、熱媒体が流通可能で、かつ内部を流通する熱媒体と外側の土壌との間で熱交換可能な管材で構成され、例えば、ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、または樹脂と金属の複合管など、可撓性を有する管材を用いることができる。この中でも、柔軟性、耐腐食性、強度、熱融着性、地中熱の温度範囲および経済性などの観点からポリエチレン管を用いるとよい。
図2および
図3に示すように、熱交換管12,14は、長さ方向(埋設時の縦向き)と直交する径方向に切断した断面形状が扁平に形成され、実施例では直線的に延在する長手辺と円弧状に延在する短手辺とからなる略「小判」形の断面形状である。熱交換器10は、往路管12と還路管14とが、互いに長手辺を向かい合わせた状態で並行するように配置されている。熱交換器10は、往路管12と還路管14との中央を通る縦軸を中心とする仮想円(
図3の一点鎖線)のうちの最小限のものに、熱媒体の流通に要する流通断面とした往路管12と還路管14との両方が収まるように設定される。これに併せて、熱交換器10は、前記仮想円の中で、往路管12と還路管14との間隔が最大限に開くように設定してある。
【0016】
図1〜
図3に示すように、熱交換器10は、並行するように配置された複数条の熱交換管のうちの往路管12と還路管14との間に配置して、往路管12と還路管14との間隔を規定するスペーサ18を備えている。スペーサ18は、気体が封入された状態で閉じた中空空間18aを有する筒状体であり、中空空間18aが往路管12と還路管14との間に介在するように配置される。スペーサ18としては、ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、または樹脂と金属の複合管などの円筒形の管材を用いることができ、この中でも、コストを抑えるという観点からポリエチレン管を用いるとよい。また、スペーサ18は、熱交換管12,14の長さ方向(延在方向)と交差する径方向へ曲げ可能な可撓性を有しているとよい。実施例のスペーサ18は、可撓性を有するポリエチレン管であり、両端の開口をキャップやテープなどの封止物で塞いで、円筒体の内側を閉じた中空空間18aとしている。スペーサ18に封入する気体としては、空気、窒素ガス、二酸化炭素ガス、希ガス等を使用することができる。特に、作業性、入手の容易性およびコスト等の観点から、気体としては空気が好ましい。なお、空気よりも熱伝導率の低い気体(例えば、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス等)をスペーサ18に封入すれば、断熱性をより高めることができる。
【0017】
図1および
図2に示すように、スペーサ18は、並行するように配置された往路管12と還路管14の間に配置される。実施例のスペーサ18は、往路管12と還路管14の間において、往路管12および還路管14に沿って縦方向へ延在するように連続的に配置されている。熱交換器10は、往路管12および還路管14の長さ方向とスペーサ18の長さ方向とが並び、スペーサ18の円弧状に曲がる外周面が、往路管12および還路管14の直線的な長手辺と長さ方向へ線接触する。スペーサ18は、テープなどの貼着物、結束線や結束バンドなどの結束具等による接合などによって、往路管12および還路管14に対して取り付けられる。実施例の熱交換器10は、長さ方向の適宜箇所に設けたテープや結束バンド等(図示せず)によって、スペーサ18と往路管12および還路管14とが互いに固定されている。
【0018】
図1に示すように、熱交換器10は、並行するように配置された往路管12と還路管14との間における地表に近い上部に、スペーサ18を少なくとも配置するとよい。実施例の熱交換器10は、埋設した際に、地表に近い上部から、熱交換器10の下端を構成する連結部16までに亘ってスペーサ18が配置されており、熱交換管12,14の埋設部分全長に亘ってスペーサ18によって間隔が規定されている。熱交換器10は、往路管12に流通する熱媒体と還路管14に流通する熱媒体との温度差が大きい部分に対応してスペーサ18を配置すればよく、熱媒体の温度差が小さい連結部16に近い下部でスペーサ18を省略してもよい。熱交換器10は、熱交換管12,14の埋設部分の上部から熱交換管12,14の埋設深さの半分以上に配置することが望ましく、熱交換管12,14の埋設部分の上部から熱交換管12,14の埋設深さの2/3以上に配置することがより望ましい。
【0019】
前記熱交換器10の設置は、例えば以下のように行えばよい。まず、ボーリング等によって地盤に掘削孔20を鉛直方向に形成する(
図4(a))。長尺の熱交換管12,14が巻き回された2つのボビン22,22から熱交換管12,14をそれぞれ繰り出す。なお、熱交換管12,14の先端は、連結部16で接続されている(
図4(a))。同様に、下端の開口がキャップされた長尺のスペーサ18が巻き掛けられたボビン24から繰り出したスペーサ18を、連結部16により並行配置された熱交換管12,14の間に設置し、テープや結束バンド等でスペーサ18を熱交換管12,14に固定する。そして、ボビン22,22,24から熱交換管12,14およびスペーサ18を繰り出して、掘削孔20に熱交換管12,14およびスペーサ18を所定深さまで挿入する(
図4(b))。この際、テープや結束バンド等でスペーサ18を適宜箇所で熱交換管12,14に固定し、スペーサ18の末端をキャップやテープなどで封止することで、スペーサ18に気体としての空気を封じる。そして、熱交換管12,14を所定深さまで挿入した後、掘削孔20を埋め戻すことで、熱交換器10が地中に設置される(
図4(c))。
【0020】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る熱交換器10の作用について説明する。熱交換器10は、並行配置された往路管12と還路管14との間に挟んだスペーサ18によって、往路管12と還路管14との間が所定間隔になるように規定することができる。往路管12と還路管14との間に配置するスペーサ18は、中空空間18aを有する筒状体であり、中空空間18aに封じられた気体が土やスペーサ18を構成する樹脂材料よりも熱伝導率が低いから、スペーサ18を伝って往路管12と還路管14との間で熱が移動することを防止できる。このように、熱交換器10は、往路管12と還路管14との間隔が適切に確保されていると共に、土壌よりも熱伝導率が低いスペーサ18によって、往路管12と還路管14との間の熱伝導を防止しているので、採熱および放熱の効率が向上する。
【0021】
前記熱交換器10は、往路管12を流通する熱媒体と還路管14を流通する熱媒体とが、熱交換器10の上部ほど、温度差が大きくなる。従って、熱交換器10は、地表に近い上部にスペーサ18を少なくとも配置すれば、温度差が大きい往路管12と還路管14との間の熱伝導を適切に防止できる。また、スペーサ18を熱交換管12,14に沿って延在するように配置することで、スペーサ18が有する高い断熱性によって、往路管12と還路管14との間の熱伝導を該熱交換管12,14の延在方向に亘って適切に防止できる。ここで、実施例の熱交換器10のように、スペーサ18を上部から連結部16の上側までに亘って配置することで、埋設された往路管12および還路管14の全長に亘ってスペーサ18によって熱伝導を防止することができ、熱交換器10の効率をより高めることができる。また、スペーサ18を往路管12および還路管14との間に連続的に配置することで、埋め戻した土などの圧力により、往路管12と還路管14とが近づいたり、接触することを防ぐことができる。このように、スペーサ18によって往路管12と還路管14との間隔を適切に確保することで、熱交換器10の効率をより高めることができる。
【0022】
前記スペーサ18は、円筒形に形成し、円弧状の外周面が熱交換管12,14に接するように配置している。従って、熱交換器10は、熱交換管12,14とスペーサ18との接触面を減らすことができ、熱交換管12,14とスペーサ18との間の熱伝導を一層防止できる。また、熱交換器10は、スペーサ18の円弧状の外周面と熱交換管12,14との間にできる隙間が、土で埋められることになるから、熱交換管12,14と土とが接する面積をスペーサ18で塞ぐことを最小限に抑えることができる。従って、熱交換器10は、スペーサ18を熱交換管12,14に接するように配置しても、熱交換管12,14と土との熱交換がスペーサ18によって妨げられず、土と効率よく熱交換し得る。
【0023】
前記スペーサ18として、径方向へ曲げ可能な可撓性を有しているものを用いることで、スペーサ18の可撓性によって、スペーサ18を熱交換管12,14に沿わせて配置することが容易にできる。前述したように、熱交換管12,14は、ボビン22に巻き掛けた状態で荷造りされており、ボビン22から引き出した熱交換管12,14に巻き癖がある程度残ってしまうので、スペーサ18を熱交換管12,14の間に適切に配置するためには、スペーサ18を曲げる必要がでてくる。また、スペーサ18を熱交換管12,14と同様に、巻いた荷姿で用意することができ、取り扱いが楽になるという利点もある。なお、熱交換管12,14よりも曲がり難いスペーサ18を用いて、熱交換管12,14の巻き癖を矯正してもよい。
【0024】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
【0025】
(1)実施例では、2条の熱交換管からなる熱交換器を挙げたが、これに限らず、往路用熱交換管と還路用熱交換管との組を複数組有する熱交換器であってもよい。例えば、
図5および
図6に示す変更例の熱交換器30のように、往路管(往路用熱交換管)12と還路管(還路用熱交換管)14との組を2組有するものに、本発明を適用することができる。変更例の熱交換器30は、下端が連結部16で連結された往路管12と還路管14とからなる第1の組と、下端が連結部16で連結された往路管12と還路管14とからなる第2の組を備えている。熱交換器30は、第1の組の熱交換管12,14と第2の組の熱交換管12,14とが、角度を90°変えた状態で配置され、4条の熱交換管12,14,12,14が90°間隔の円形状配列で並んでいる。熱交換器30は、一方の組の往路管12および還路管14の間に、他方の組の連結部16が挟まれて、一方の組と他方の組とが連結部16の位置を縦方向にずらした状態で組み合わせられている。変更例の熱交換器30では、スペーサ18が4条の熱交換管12,14,12,14に挟まれるように配置されて、対向する熱交換管12,14の間隔を規定している。なお、
図5および
図6に示す変更例の熱交換器30において、実施例と同様の構成には、実施例と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。また、変更例の熱交換器30によっても、前述した実施例と同様の作用効果を奏する。
【0026】
(2)実施例では熱交換管の断面形状を扁平状に形成したが、これに限らず、円形や四角形、その他の形状であってもよい。なお、実施例のように熱交換管を扁平形状とすることで、並行する熱交換管の間隔および熱媒体の流通面積を確保しつつ、熱交換器全体の外形を最小限にできる利点がある。
(3)実施例ではスペーサを円筒状に形成したが、これに限らず、角筒状や多角形筒状など、その他の形状であってもよい。
(4)実施例では、1本のスペーサを連続的に配置するよう構成したが、これに限らず、複数のスペーサを縦方向に直列に並べて配置してもよい。この際、直列に並ぶスペーサ同士の間隔はあけても、スペーサ同士を接するように配置してもよい。
(5)並列する熱交換管の間に配置するスペーサは、1本に限らず、並列する熱交換管の間に2本以上のスペーサを配置してもよい。この場合、同じ形状のスペーサを使用してもよいし、異なる形状のスペーサを組み合わせて使用してもよい。
(6)往路用熱交換管と還路用熱交換管との組を複数組有する場合に、2以上の組の熱交換管を1つの連結部で連結する構成であってもよい。
(7)往路用熱交換管、還路用熱交換管またはスペーサの少なくとも1つの一箇所あるいは複数箇所に、スペーサの位置ずれを防止する突起や窪み等の位置ずれ防止機構を設けてもよい。
(8)実施例では往路用熱交換管と還路用熱交換管の断面形状を同じ扁平状としたが、これに限らず、一方を扁平形状として、他方を円形とするなど、両者が異なる形状であってもよい。
(9)往路用熱交換管と還路用熱交換管との組を複数組有する場合に、仮想円の中で最も効率よく熱交換管を配置できれば、熱交換管の断面形状は特に限定されない。例えば、熱交換管の断面形状を全て扁平状としてもよいし、1箇所のみまたは2箇所を扁平状とし、残りを円形としてもよい。また、2箇所を扁平状とする場合、組となる往路用熱交換管と還路用熱交換管を扁平状としてもよいし、2組の往路用熱交換管を扁平状とし、2組の還路用熱交換管を円形としてもよい。
(10)往路用熱交換管と還路用熱交換管の間は、
図3を参照して説明する仮想円の中に収まれば、往路用熱交換管と還路用熱交換管の間に配置する1又は複数本のスペーサによって、径方向に切断した断面における熱交換管の径又は長手辺よりも長くなってもよい。
(11)スペーサと熱交換管との固定は、テープや結束バンド以外の方法で行われてもよい。