(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコールと、p−フェニレンジイソシアネートと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと、アセチルアセトンとを含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、
前記ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール100重量部に対して、前記p−フェニレンジイソシアネート15〜30重量部と、前記1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン5〜28重量部と、前記アセチルアセトン0.001〜0.5重量部とを含むことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール及びp−フェニレンジイソシアネートを重合して得られるプレポリマーと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと、アセチルアセトンとを含む熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物であって、
前記ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール100重量に対して前記p−フェニレンジイソシアネート15〜30重量部を重合して得られるプレポリマーと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン5〜28重量部と、アセチルアセトン0.001〜0.5重量部とを含むことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーを例えばパッキン等の用途に用いる場合、耐久性(耐低温性等)や耐へたり性が要求される。特に、ブレーカパッキンは高圧、高振動環境下で使用されるため、高い耐へたり性が要求される。
【0007】
熱可塑性ポリウレタンは、原料の種類や、一次及び二次構造により特性が大きく変化するポリマーである。
【0008】
熱可塑性ポリウレタンのポリオールとしてポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(略称PHC)を用い、イソシアネートしてp−フェニレンジイソシアネート(略称PPDI)を用い、鎖延長剤として1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(略称BHEB)を用いたPHC/PPDI/BHEB材は、耐久性や耐へたり性に優れることが見出された。
【0009】
しかし、PHC/PPDI/BHEB材は、鎖延長反応時のポットライフが非常に短く、十分な撹拌を行うことが困難であり、品質面で更なる改善の余地がある。また、ポットライフが非常に短いことにより、成形性にも難があった。
【0010】
そこで本発明の課題は、耐久性や耐へたり性に優れ、且つポットライフを延長して品質及び成形性を改善できる熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、パッキン及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
1.
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコールと、p−フェニレンジイソシアネートと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと、アセチルアセトンとを含むことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
2.
前記ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール100重量部に対して、前記p−フェニレンジイソシアネート15〜30重量部と、前記1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン5〜28重量部と、前記アセチルアセトン0.001〜0.5重量部とを含むことを特徴とする前記1記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
3.
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール及びp−フェニレンジイソシアネートを重合して得られるプレポリマーと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと、アセチルアセトンとを含むことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
4.
前記ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール100重量に対して前記p−フェニレンジイソシアネート15〜30重量部を重合して得られるプレポリマーと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン5〜28重量部と、アセチルアセトン0.001〜0.5重量部とを含むことを特徴とする前記3記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物。
5.
前記1〜4の何れかに記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を重合してなることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
6.
前記5記載の熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなることを特徴とするパッキン。
7.
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコールと、p−フェニレンジイソシアネートと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとを含む組成物を、加熱下で撹拌して熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造する際に、前記組成物に更にアセチルアセトンを配合することを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
8.
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール及びp−フェニレンジイソシアネートを重合して得られるプレポリマーと、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとを含む組成物を、加熱下で撹拌して熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造する際に、前記組成物に更にアセチルアセトンを配合することを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性や耐へたり性に優れ、且つポットライフを延長して品質及び成形性を改善できる熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、パッキン及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
【0017】
以下の説明において、第1態様に係る熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物(以下、単に組成物ともいう)は、ワンショット法による熱可塑性ポリウレタンエラストマー(以下、単にポリウレタンエラストマーともいう)の製造方法に好ましく用いられる。第2態様に係る組成物は、プレポリマー法によるポリウレタンエラストマーの製造方法に好ましく用いられる。
【0018】
1.第1態様
第1態様に係る組成物は、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(略称PHC)と、p−フェニレンジイソシアネート(略称PPDI)と、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(略称BHEB)と、アセチルアセトンとを含む。
【0019】
(1)PHC
PHCは、ポリウレタンエラストマーのポリオール(ジオール)成分である。PHCは、ポリウレタンエラストマーの耐久性を向上する効果を奏する。
【0020】
PHCの数平均分子量Mnは格別限定されないが、例えば700〜5000、好ましくは1000〜3000とすることができる。
【0021】
組成物中におけるPHCの濃度は格別限定されず、例えば63重量%〜83重量%の範囲とすることができる。
【0022】
(2)PPDI
PPDIは、ポリウレタンエラストマーのイソシアネート(ジイソシアネート)成分である。PPDIは、分子構造の対称性が良好であり、ポリウレタンエラストマーの凝集構造を相分離構造へ近付けることによって、耐へたり性を向上する効果を奏する。
【0023】
PPDIは、PHC100重量部に対して15〜30重量部の割合で配合されることが好ましい。
【0024】
(3)BHEB
BHEBは、ポリウレタンエラストマーの分子鎖を延長する鎖延長剤である。BHEBもまた、分子構造の対称性が良好であり、ポリウレタンエラストマーの耐へたり性を向上する効果を奏する。
【0025】
BHEBは、PHC100重量部に対して5〜28重量部の割合で配合されることが好ましく、5.6〜27.3重量部の割合で配合されることが更に好ましい。
【0026】
(4)アセチルアセトン
PHC/PPDI/BHEBからなる組成物は、ポリウレタンエラストマーの耐久性(耐低温性等)及び耐へたり性を向上するが、通常ではポットライフが非常に短いため、該組成物を十分に撹拌することが困難であった。そのため、各成分の分布が不均一になり、品質を向上することが困難であり、成形性にも難があった。
【0027】
ポットライフは、組成物が鎖延長反応によって硬化するまでの時間に対応する。ポットライフが短くなる原因としては、PPDIの反応性が高く、鎖延長反応が急速に進行することが推定される。
【0028】
PPDIの反応性を低くするために組成物の温度を低くした場合、液粘度が高くなり、通常の撹拌装置では対応できず加圧ニーダー等のような特別な設備が必要となるため現実性に欠ける。また、鎖延長剤であるBHEBは芳香環骨格を有し、融点(103℃)と結晶化温度(約95℃)が高い。BHEBの分散不良や固化を防ぐため、混合の際は組成物の温度をそれ以上にすることが望まれる。そのため、組成物の温度を低くする対応には限界がある。
【0029】
これに対して、本発明者は、PHC/PPDI/BHEBからなる組成物に、アセチルアセトンを配合することによって、反応速度遅延効果が付与されることを見出した。これにより、鎖延長反応の遅延効果が発揮され、ポットライフが延長される。そのため、組成物を十分に撹拌して各成分の分布を均一にでき、品質向上及び成形性向上の効果が得られる。更に、組成物を十分に撹拌できることによって、得られるポリウレタンエラストマーの圧縮永久ひずみを改善できる効果も得られる。
【0030】
アセチルアセトンはPPDIに作用して、PPDIの反応性を抑制し、これによりポットライフ改善効果が発揮されていることが考えられる。特にアセチルアセトンはPPDIに対して親和性が高く、PPDIに対する熱解離温度は約130℃〜140℃と推定され、組成物を高温下において流動性を向上させた状態で撹拌できる。また、アセチルアセトンは液体であり、PHC/PPDI/BHEB中に混合され易いため、速やかにPPDIに作用して、ポットライフ改善に寄与する。
【0031】
アセチルアセトンの配合量とポットライフとの間には、高い相関関係が見出された。
図1に実際に観測された相関関係の一例を示す。
【0032】
図1において、横軸は組成物中におけるアセチルアセトンの濃度[ppm]であり、縦軸はポットライフ[秒]である。
図1に示されるように、アセチルアセトンの濃度とポットライフとの間には、高い相関関係(比例関係)が観察される。
図1では、アセチルアセトンの配合量(横軸)を、組成物中における濃度で示しているが、PHCに対するアセチルアセトンの配合量で置き換えても同様の傾向が観察される。
【0033】
このような相関関係を利用して、アセチルアセトンの配合量によってポットライフを調整することができる。これにより、例えば、要求されるポットライフを達成する範囲で最小量のアセチルアセトンを配合することができ、アセチルアセトンがポリウレタンエラストマーの物性に及ぼす影響を最小化できる。
【0034】
アセチルアセトンは、少量であってもポットライフ改善効果を発揮する。撹拌時間を好適に確保する観点で、アセチルアセトンは、PHC100重量部に対して、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.5重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部の割合で配合される。組成物中におけるアセチルアセトンの濃度としては、例えば5ppm〜7000ppmとすることができる。また、ポットライフは30秒〜600秒の範囲であることが好ましく、30秒〜300秒の範囲であることが更に好ましく、このような範囲になるように、上述した相関関係を利用してアセチルアセトンの配合量を調整することができる。
【0035】
(5)ワンショット法
第1態様に係る組成物は、ワンショット法によるポリウレタンエラストマーの製造方法に好ましく用いられる。
【0036】
ワンショット法では、PHC、PPDI、BHEB及びアセチルアセトンを含む組成物を加熱下で撹拌し、重合させて、ポリウレタンエラストマーを製造する。加熱温度は格別限定されないが、撹拌時の液粘度を低下させ、且つBHEBの分散性を向上させる観点で、比較的高温であることが好ましく、具体的には例えば105℃〜140℃、好ましくは120℃〜130℃とすることができる。本発明によれば、このような高温下においても、ポットライフを延長することができる。
【0037】
2.第2態様
第2態様に係る組成物は、PHC及びPPDIを重合してなるプレポリマーと、BHEBと、アセチルアセトンとを含む。
【0038】
PHC、PPDI、BHEB及びアセチルアセトンの構成及び配合量等については、第1態様でした説明が援用され、特にPHC及びPPDIの配合量については、重合前の出発物質の配合量として援用される。
【0039】
第2態様に係る組成物は、プレポリマー法によるポリウレタンエラストマーの製造方法に好ましく用いられる。プレポリマー法を用いることによって、ポリウレタンエラストマーの1次構造(鎖長分布)を好適に制御できる。
【0040】
プレポリマー法では、プレポリマー、BHEB及びアセチルアセトンを含む組成物を加熱下で撹拌し、重合させて、ポリウレタンエラストマーを製造する。プレポリマー法においても、加熱温度は格別限定されないが、撹拌時の液粘度を低下させ、且つBHEBの分散性を向上させる観点で、比較的高温であることが好ましく、具体的には例えば105℃〜140℃、好ましくは120℃〜130℃とすることができる。本発明によれば、このような高温下においても、ポットライフを延長することができる。
【0041】
第2態様においても、PPDIの配合によって耐久性(耐低温性等)や耐へたり性に優れる効果が発揮される。鎖延長反応時において、プレポリマーの末端は反応性の高いPPDIによって構成されるため、通常ではポットライフが非常に短くなるが、アセチルアセトンを配合することによって、ポットライフを延長できる効果が得られる。更に、アセチルアセトンを用いることによって、組成物を高温下において流動性を向上させた状態で撹拌できるため、予め重合を進行させたプレポリマー(液粘度の上昇を招きやすい)を含む組成物を撹拌する場合であっても、液粘度の上昇を防止して、十分な撹拌を実現できる。その結果、ポリウレタンエラストマーの1次構造(鎖長分布)を好適に制御できる効果と、品質向上及び成形性向上の効果とを両立できる。
【0042】
3.その他
本発明の組成物は、ポットライフを延長できるため、ポットライフ期間中に成形して、所定形状のポリウレタンエラストマー成形物を製造することができる。また、得られるポリウレタンエラストマーは熱可塑性であるため、ポットライフ後に、加熱下で軟化させた状態で成形して、所定形状のポリウレタンエラストマー成形物を製造することもできる。また、ポリウレタンエラストマーには必要に応じて例えば105℃〜140℃で更に熱処理を施すことができる。
【0043】
本発明によって得られるポリウレタンエラストマーの用途は格別限定されず、種々の用途に適用できる。かかる本発明のポリウレタンエラストマーは、耐久性及び耐へたり性に優れ、更に成形性にも優れるため、パッキンとして用いることが好ましい。特に高圧、高振動環境下で使用されるブレーカパッキンには高い耐へたり性が要求されるが、本発明のポリウレタンエラストマーによれば、このような要求も好適に満足できる。ブレーカパッキンは、例えば油圧ブレーカにおいて振動するロッド(ピストン)をシールする等の目的で使用されるパッキンである。ブレーカパッキン以外の種々のパッキンにおいても、本発明のポリウレタンエラストマーを用いることによって、優れたシール性を付与できる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0045】
(実施例1)
ポリオールであるポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(略称PHC)(東ソー社製「ME−2010」)100重量部と、イソシアネートであるp−フェニレンジイソシアネート(略称PPDI)(JIANGSU SUHUA GROUP社製)19.0重量部とを125℃で反応させてプレポリマーを得た。
【0046】
次いで、得られたプレポリマーに、鎖伸長剤である1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン(略称BHEB)(三井化学社製)11.4重量部と、アセチルアセトン(東京化成工業社製)0.003重量部とを配合して、ポリウレタンエラストマー組成物を得た。ポリウレタンエラストマー組成物中のアセチルアセトン濃度は23ppmである。
【0047】
次いで、得られたポリウレタンエラストマー組成物を、125℃で撹拌混合して鎖伸長反応を進行させ、更に熱処理を施して、ポリウレタン材を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1において、アセチルアセトンの配合量を0.05重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。ポリウレタンエラストマー組成物中のアセチルアセトン濃度は382ppmである。
【0049】
(実施例3)
実施例1において、アセチルアセトンの配合量を0.5重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。ポリウレタンエラストマー組成物中のアセチルアセトン濃度は3834ppmである。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、アセチルアセトンの配合量を1重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。ポリウレタンエラストマー組成物中のアセチルアセトン濃度は7669ppmである。
【0051】
(比較例1)
実施例1において、アセチルアセトンの配合を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。
【0052】
(比較例2)
比較例1において、鎖伸長剤としてBHEBに代えて1,4−ブタンジオール(略称BD)(三菱化学社製)5.20重量部を配合したこと以外は、比較例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。
【0053】
(比較例3)
比較例1において、イソシアネートとしてPPDIに代えて4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(略称MDI)(東ソー社製)60.0重量部を配合し、BDの配合量を15.1重量部に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。
【0054】
(比較例4)
比較例1において、イソシアネートとしてPPDIに代えて4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル(略称TODI)(日本曹達社製)50.0重量部を配合し、鎖伸長剤としてBD 10.4重量部と、1,1,1−トリメチロールプロパン(略称TMP)(広栄化学工業社製)0.5重量部とを併用し、更に触媒としてトリエチレンジアミン(略称TEDA)(東ソー社製)0.01重量部を配合したこと以外は、比較例1と同様にして、ポリウレタン材を得た。
【0055】
以上の実施例及び比較例では、各例を同条件で比較する観点で、NCO Index[−]が同値(1.10)になるように、ポリオール、イソシアネート及び鎖伸長剤の配合を調整した。NCO Indexは、ポリオールの水酸基(−OH基)に対するイソシアネートのイソシアネート基(−NCO基)の当量比([NCO]/([OH])である。
【0056】
<評価方法>
以上の実施例及び比較例を下記評価項目について評価した。
【0057】
(1)鎖伸長反応(ポットライフ)
鎖伸長反応時のポットライフについて、下記評価基準で評価した。ポットライフ[秒]は、JIS K 6870:2008に準拠して測定した。
〔評価基準〕
○:ポットライフが30秒〜300秒である
△:ポットライフが300秒を超える
×:ポットライフが30秒未満である
【0058】
(2)常態物性
得られたポリウレタン材の試験片につき、以下の方法で、硬さ、引張り強さ及び伸びを評価した。
硬さ(ゴム硬度Hs)[−];JIS K 6253:1997に準拠し、DuroA(瞬時)を測定した。
引張り強さ[MPa];JIS K 6251:2010に準拠して測定した。
伸び(切断時伸び)[%];JIS K 6251:2010に準拠して測定した。
【0059】
(3)耐へたり性
得られたポリウレタン材について測定された圧縮永久ひずみCSに基づいて、下記評価基準で耐へたり性を評価した。圧縮永久ひずみCSは、JIS K6262:2013に準拠して、厚さ2mmのシートを3枚積層した試験片について測定された圧縮永久ひずみCS[%](120℃×70h)である。
〔評価基準〕
○:圧縮永久歪CSが70%未満である
△:圧縮永久歪CSが70%〜79%である
×:圧縮永久歪CSが80%以上である
【0060】
(4)耐低温性
得られたポリウレタン材について測定されたTR10に基づいて、下記評価基準で耐低温性を評価した。TR10[℃]は、JIS K 6261:2006に準拠して、試験片を50%伸長し、ガラス転移点Tg以下でガラス化させた後、徐々に温度を上げて歪みを緩和させ、初期伸長に対して10%回復したときの温度である。
〔評価基準〕
○:TR10が−25℃以下である
△:TR10が−25℃を超え、−20℃以下である
×:TR10が−20℃を超える
【0061】
以上の結果を表1に示す。また、アセチルアセトンの配合量(組成物中のアセチルアセトンの濃度)とポットライフとの相関関係を
図1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
<評価>
表1より、実施例1〜3では、耐久性や耐へたり性に優れ、且つポットライフを延長する効果が発揮されることがわかる。また、実施例4においても、ポットライフが600秒であり、物性等に関しても本発明の目的を達成できる程度の効果が発揮された。
【0064】
更に考察すると、PPDIを用いない比較例3、4との対比で、PPDIを用いた比較例1、2は、耐久性(耐低温性)や耐へたり性が向上する。しかし、比較例1、2では、PPDIを用いたことによって、ポットライフが非常に短くなる。これに対して、実施例1〜4に示されるように、アセチルアセトンを配合することによって、耐久性や耐へたり性を保持したまま、ポットライフを延長できる。
【0065】
また、
図1より、アセチルアセトンの配合量とポットライフとの間に高い相関関係が見出された。従って、アセチルアセトンの配合量によってポットライフを調整できることがわかる。特に実施例1〜3では、アセチルアセトンの配合量を0.001〜0.5重量部の範囲にすることで、ポットライフを30秒〜300秒の範囲に調整した。