特許第6938269号(P6938269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938269光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938269
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 41/00 20060101AFI20210909BHJP
   C12P 7/52 20060101ALI20210909BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
   C12P41/00 C
   C12P7/52
   !C12N1/20 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-153118(P2017-153118)
(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公開番号】特開2019-30249(P2019-30249A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊和
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】菊川 寛史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】八十原 良彦
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−076591(JP,A)
【文献】 特開昭64−074999(JP,A)
【文献】 特開平02−257874(JP,A)
【文献】 Mitsukura, K. et al,Microbial asymmetric oxidation of 2-butyl-1,3-propanediol,Appl. Microbiol. Biotechnol.,2007年,vol.76,pp61-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00−1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を製造するための方法であって、
前記光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸が下記一般式(I)で表されるものであり:
【化1】
[式中、R1とR2は、独立して、置換されていてもよいC1-7アルキル基を示す。但し、R1とR2は互いに異なる。]
2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの存在下で、ロドコッカス(Rhodococcus)属およびアグロマイセス(Agromyces)属からなる群より選ばれる1種または2種以上の微生物を培養する工程、および、
下記一般式(II)で表される2,2−二置換−1,3−プロパンジオールに、前記微生物を作用させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化2】
[式中、R1とR2は前記と同義を示す。]
【請求項2】
光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を製造するための方法であって、
前記光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸が下記一般式(I)で表されるものであり:
【化3】
[式中、R1とR2は、独立して、置換されていてもよいC1-7アルキル基を示す。但し、R1とR2は互いに異なる。]
下記一般式(II)で表される2,2−二置換−1,3−プロパンジオールに、アグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)を作用させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化4】
[式中、R1とR2は前記と同義を示す。]
【請求項3】
前記一般式(I)で表される2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸のエナンチオマー過剰率が50%ee以上である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物が、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、アグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記R1がエチルである請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記R2がメチルである請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品などの合成原料や合成中間体として有用な光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を効率的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸は、医薬品の合成原料や合成中間体として重要な化合物である。特に、一般的に光学活性な化合物の合成には手間やコストがかかるため、2位の炭素が不斉炭素である2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸の光学活性体を効率的に製造する技術は有用性が高い。
【0003】
非特許文献1には、塩化銅錯体を用いて2,2−二置換−1,3−プロパンジオールを光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸に変換する方法が記載されている。しかし、かかる方法は多段階を要する上に、ラセミ体を光学分割しているため無駄が多く、また、金属触媒を含む廃液の処理に高コストを要する。
【0004】
一方、立体選択的な酸化反応については微生物や酵素といった酵素源を用いることが有利である(非特許文献2)。例えば、非特許文献3には2−メチル−1,3−プロパンジオールをアセトバクター属細菌により酸化する方法が記載されており、非特許文献4には2−ブチル−1,3−プロパンジオールをアセトバクター属細菌やシュードモナス属細菌で酸化する方法が記載されており、非特許文献5には2−エチル−1,3−プロパンジオールや2−イソプロピル−1,3−プロパンジオールをアセトバクター属細菌やグルコノバクター属細菌で酸化する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lee Ji−Youngら,Journal of American Chemical Society,133,1772(2011)
【非特許文献2】Andreas Schmid著,Karlheinz Drauzら編,“Oxidation of alcohols”,Wiley−VCH社,p.1108−1170(2002).
【非特許文献3】Elisabetta Brennaら,ChemCatChem,8,3796(2016)
【非特許文献4】Kohichi Mitsukuraら,Applied Microbiolog and Biotechnology,76,61(2007)
【非特許文献5】Hiromichi Ohtaら,Chemistry Letters,8,1379(1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、2−置換−1,3−プロパンジオールを微生物により酸化して光学活性2−置換−3−ヒドロキシプロピオン酸を得る方法は開発されていた。しかし、光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸のように不斉四級炭素を有する化合物の合成は一般的にとりわけ難しいことが知られている。
以上の状況下、本発明は、医薬品などの合成原料や合成中間体として有用な光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、安価な2,2−二置換−1,3−プロパンジオールを酸化酵素で酸化すれば、2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0008】
[1] 光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を製造するための方法であって、
前記光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸が下記一般式(I)で表されるものであり:
【0009】
【化1】
【0010】
[式中、R1とR2は、独立して、置換されていてもよいC1-7アルキル基を示す。但し、R1とR2は互いに異なる。]
下記一般式(II)で表される2,2−二置換−1,3−プロパンジオールに、酸化酵素源を作用させる工程を含むことを特徴とする方法。
【0011】
【化2】
[式中、R1とR2は前記と同義を示す。]
【0012】
[2] 前記酵素源が、ロドコッカス(Rhodococcus)属およびアグロマイセス(Agromyces)属からなる群より選ばれる1種または2種以上の微生物である上記[1]に記載の方法。
【0013】
[3] 更に、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの存在下で前記微生物を培養する工程を含み、得られた培養微生物を前記酸化酵素源として用いる上記[2]に記載の方法。
【0014】
[4] 前記一般式(I)で表される2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸のエナンチオマー過剰率が50%ee以上である上記[3]に記載の方法。
【0015】
[5] 前記酸化酵素源が、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
【0016】
[6] 前記酸化酵素源が、アグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
【0017】
[7] 前記R1がエチルである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
【0018】
[8] 前記R2がメチルである上記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
【0019】
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法により得られた光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩。
[10] 上記[9]に記載の光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を原料とする医薬品。
【発明の効果】
【0020】
本発明方法によれば、安価なプロキラル体の2,2−二置換−1,3−プロパンジオールを原料化合物として用いることができ、酸化酵素を用いて光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を簡便に製造することができる。よって本発明は、医薬品などの合成原料や合成中間体として有用な光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩の製造方法として、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩の製造方法は、一般式(II)で表される2,2−二置換−1,3−プロパンジオールに、酸化酵素源を作用させることにより、一般式(I)で表される光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸またはその塩を製造する。以下、実施形態に基づいて本発明を詳述する。
【0022】
本開示において「C1-7アルキル基」は、炭素数1以上、7以下の直鎖状、分岐鎖状、環状の一価脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルである直鎖状C1-7アルキル基;イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチルなどの分岐鎖状C1-7アルキル基;シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの環状C1-7アルキル基を挙げることができる。好ましくはC1-6アルキル基であり、より好ましくはC1-4アルキル基であり、よりさらに好ましくはC1-2アルキル基である。また、R1およびR2としては、独立して、メチル、エチル、n−プロピルまたはn−ブチルが好ましく、メチル、エチルまたはn−ブチルがより好ましく、メチルまたはエチルがよりさらに好ましく、エチルが特に好ましい。R2としては、メチルが特に好ましい。
【0023】
上記C1-7アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲノ基、イミノ基(−NH−)、エーテル基(−O−)、スルフィド基(−S−)、アミノ基(−NH2)、水酸基、チオール基、ニトロ基、シアノ基およびカルボキシ基からなる群より選択される1種または2種以上の置換基を挙げることができる。「ハロゲノ基」としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、およびヨード基を例示することができる。置換基の数としては、置換可能であれば特に制限されないが、例えば1以上、5以下とすることができ、1以上、3以下が好ましく、1または2がより好ましく、1がよりさらに好ましい。C1-7アルキル基が2以上の置換基を有する場合、置換基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0024】
原料化合物である一般式(II)で表される2,2−二置換−1,3−プロパンジオール(以下、「プロパンジオール(II)」と略記する)は入手容易な化合物であり、市販のものがあれば購入して用いてもよいし、或いは、当業者であれば容易に合成することができる。例えば、ナトリウムエトキシドや水素化ナトリウムなどの塩基を使えばマロン酸ジエステルの第2位からプロトンを容易に引き抜くことができ、更にハロゲン化C1-7アルカンを作用させることにより第2位をアルキル化できる。かかる反応を繰り返して得られる2,2−二置換マロン酸ジエステルを水素化ホウ素リチウム(LiBH4)や水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)などの還元剤を用いて還元することにより、所望のプロパンジオール(II)を得ることができる。
【0025】
本発明で使用される酸化酵素源は、プロパンジオール(II)を一般式(I)で表される光学活性2,2−二置換−3−ヒドロキシプロピオン酸(以下、「ヒドロキシプロピオン酸(I)と略記する)に変換する能力を有するものであれば特に制限されない。例えば、前記能力を有するものである限り、酸化酵素自体であってもよいし、酸化酵素の生産能を有する微生物の菌体、当該微生物の培養液、当該微生物菌体の処理物、更には当該酸化酵素をコードするDNAが導入された形質転換体であってもよい。酸化酵素源は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸化酵素源は、繰り返し使用できるように周知の方法で固定化してもよい。
【0026】
微生物の菌体処理物としては上記能力を有するものであれば特に限定されず、例えば、アセトンや五酸化二リンによる脱水処理またはデシケーターや扇風機を利用した乾燥によって得られる乾燥菌体、界面活性剤処理物、溶菌酵素処理物、固定化菌体または菌体を破砕した無細胞抽出標品などを挙げることができる。なお、固定化は、架橋法、物理的吸着法、包括法など、当業者に周知の方法で行なうことができる。
【0027】
酸化酵素をコードするDNAを含む形質転換体は、形質転換体の菌体自体はいうまでもなく、その処理物としてもヒドロキシプロピオン酸(I)の製造に使用することができる。ここでいう形質転換体の処理物とは、例えば、界面活性剤や有機溶媒で処理した細胞、乾燥細胞、破砕処理した細胞、細胞の粗抽出液などのほか、公知の手段でそれらを固定化したものを意味する。
【0028】
プロパンジオール(II)をヒドロキシプロピオン酸(I)に変換する能力を有する微生物は、例えば、以下に説明する方法によって見出だすことができる。1L当たり、グルコース40g、酵母エキス3g、リン酸水素二アンモニウム6.5g、リン酸二水素カリウム1g、硫酸マグネシウム7水和物0.8g、硫酸亜鉛7水和物60mg、硫酸鉄7水和物90mg、硫酸銅5水和物5mg、硫酸マンガン4水和物10mg、および塩化ナトリウム100mgを含む液体培地(pH7)5mLを試験管に入れて殺菌後、無菌的に被試験微生物を接種し、30℃で2〜3日間振とう培養する。その後、菌体を遠心分離により集め、リン酸緩衝液0.5〜5mLに懸濁し、予めプロパンジオール(II)を0.5〜25mg入れた試験管に加えて、2〜3日間30℃で振とうする。この際、遠心分離により得た菌体をデシケーター中またはアセトンにより乾燥したものを用いることもできる。更に、これら微生物もしくはその処理物とプロパンジオール(II)を反応させる際に有機溶媒を共存させてもかまわない。変換反応ののち適当な有機溶媒で抽出を行ない、抽出液を高速液体クロマトグラフィーなどにより分析し、ヒドロキシプロピオン酸(I)が検出できた場合、被試験微生物を上記能力を有する微生物として判断する。
【0029】
本発明に使用し得る微生物としては、プロパンジオール(II)をヒドロキシプロピオン酸(I)に変換する能力を有する微生物であればいずれも使用し得るが、好ましくは、ロドコッカス(Rhodococcus)属、および/または、アグロマイセス(Agromyces)属に属する微生物が挙げられる。より好ましくは、Rhodococcus sp.、Rhodococcus erythropolis、Rhodococcus rhodochrous、Agromyces sp.が挙げられ、さらに好ましくは、Rhodococcus sp.NCIMB11215株、Rhodococcus sp.NCIMB11216株、Rhodococcus erythropolis NCIMB11148株、Rhodococcus rhodochrous J1株、Rhodococcus sp.2N株、Agromyces sp.E2株が挙げられる。
【0030】
これら微生物は一般に、入手または購入が容易な保存株から得ることができるが、自然界から分離することもできる。なお、これらの微生物に変異を生じさせて、より本反応に有利な性質を有する菌株を得ることもできる。微生物の入手先としては、NCIMB Ltd(Aberdeen,英国)、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 生物資源利用促進課(千葉県木更津市)などが挙げられる。
【0031】
上記微生物を誘導物質の存在下で培養し、得られた培養微生物やその処理物などを酸化酵素源として用いてもよい。かかる培養微生物は、酸化酵素が誘導されて上記能力が高められている可能性があることから好ましい。
【0032】
微生物の培養には、通常これらの微生物が資化しうる栄養源を含む培地であれば制限無く使用し得る。例えば、炭素源、窒素源、栄養源などを適宜配合した培地を用いることができる。炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロース、マルトース等の糖類;乳酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸などの有機酸類;エタノール、グリセリン等のアルコール類;パラフィン等の炭化水素類;大豆油、菜種油などの油脂類;またはこれらの混合物を挙げることができる。窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、尿素、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、コーンスチープリカー等を挙げることができる。栄養源としては、無機塩やビタミン類などを挙げることができる。
【0033】
プロパンジオール(II)をヒドロキシプロピオン酸(I)に変換する酸化酵素は、培養時に誘導物質を添加することで誘導することができる。誘導物質としては、上記作用を示す物質であればいずれも用いることができるが、例えば、好ましい誘導物質としては、プロパンジオール(II)に加え、一般式(II)においてR1=R2のプロパンジオール(II’)を挙げることができる。より具体的には、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール、2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパノール、2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール、2−ブチル−3−ヒドロキシプロパノール、3−ヒドロキシプロパノール、2−アミノ−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール 、グリセロールが挙げられる。より好ましくは、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール、2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールが挙げられ、さらに好ましくは、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールが挙げられる。本発明者らによる実験的知見によれば、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールは酸化酵素の誘導物質として特に優れており、アキラルな2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールにより誘導された酸化酵素であっても、プロパンジオール(II)をエナンチオ選択的に酸化することができる。
【0034】
培養液に誘導物質を添加する場合、誘導物質の濃度は適宜調整すればよいが、例えば、0.01質量%以上、10質量%以下とすることができる。当該濃度としては、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がよりさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0035】
微生物の培養は通常一般の条件により行なうことができ、例えば、pH4.0〜9.5、温度範囲20℃〜45℃の範囲で、好気的に10〜96時間培養するのが好ましい。
【0036】
酸化酵素源として酸化酵素自体を用いる場合は、酸化酵素を生産する微生物の培養液から常法により精製すればよい。勿論、かかる培養液には上述したように誘導物質を添加してもよい。酸化酵素は、遺伝子工学的手法により酸化酵素を製造してもよい。また、酸化酵素が微生物の菌体内に蓄積する場合、微生物の菌体、乾燥菌体などの菌体処理物などを酸化酵素源として用いることができる。培養液中の成分が反応に悪影響を与える場合には、培養液を遠心分離や濾過などにより分離して得られる菌体または菌体処理物を使用することもできる。微生物が酸化酵素を菌体外へ放出する場合、微生物の培養液、培養液の濃縮物や乾燥物などを酸化酵素源として用いることができる。或いは、微生物を含む培養液自体を酸化酵素源として用いてもよい。
【0037】
本発明では、プロパンジオール(II)に酸化酵素源を作用させることによりプロパンジオール(II)の一方のヒドロキシメチル基を酸化し、ヒドロキシプロピオン酸(I)を得る。
【0038】
上記酸化反応のための溶媒としては、酸化酵素が働くものであればいずれも使用できるが、一般的には水や水系の緩衝液を用いる。但し、プロパンジオール(II)が水や水系の緩衝液のみに溶解し難い場合には、酸化酵素の活性が維持される範囲で、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの水混和性有機溶媒を少量添加してもよい。
【0039】
上記酸化反応の反応液におけるプロパンジオール(II)の濃度は、適宜調整すればよいが、例えば、0.01w/v%以上、50w/v%以下とすることができ、好ましくは0.1w/v%以上、30w/v%以下である。プロパンジオール(II)は、反応の初期に一括して添加してもよく、反応の進行にあわせて分割して添加してもよい。酸化酵素源については、酸化酵素源の形態により適切な使用量が異なるため、予備実験などにより適宜決定すればよい。
【0040】
具体的な反応条件は、適宜決定および調整すればよい。例えば反応温度は、通常10℃以上、60℃以下とすることができ、好ましくは20℃以上、40℃以下である。反応液pHは、使用する酸化酵素源が酸化活性を発揮できる範囲で適宜決定すればよいが、例えば、2.5以上、9以下とすることができ、好ましくは5以上、9以下である。反応は通常、振とうまたは通気攪拌しながら行う。反応時間は、基質濃度、酸化酵素源の量、その他の反応条件により適宜決定される。通常、2時間以上、168時間以下で反応が終了するように各条件を設定することが好ましい。
【0041】
本発明に係るプロパンジオール(II)からヒドロキシプロピオン酸(I)への酸化反応では、一般的にアルコールから一旦アルデヒドが生成され、更に酸化されることによりカルボン酸が生成する。本発明によりプロパンジオール(II)からヒドロキシプロピオン酸(I)を得ることができるが、反応条件を適宜調整することにより、反応中間体であるアルデヒドを取得することができる可能性がある。
【0042】
反応終了後、目的化合物であるヒドロキシプロピオン酸(I)またはその塩は、常法により反応液から精製すればよい。例えば、反応液から直接、或いは菌体などの固形分を分離後、酢酸エチル、トルエン、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサンなどの溶媒で抽出し、脱水後、蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製すれば高純度のヒドロキシプロピオン酸(I)またはその塩を容易に得ることができる。
【0043】
なお、得られる化合物がヒドロキシプロピオン酸(I)であるか或いはその塩であるかは、反応液に存在するカチオンの種類や精製条件などにより依存する。ヒドロキシプロピオン酸(I)の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などを挙げることができる。
【0044】
本発明では酸化酵素を用いるため、プロキラル体であるプロパンジオール(II)から光学純度の高いヒドロキシプロピオン酸(I)が得られる可能性がある。ヒドロキシプロピオン酸(I)の何れのエナンチオマーが得られるかや、その光学純度は、使用する酸化酵素源により調整することが可能である。なお、本開示において「光学活性」とは、一方のエナンチオマーのみが選択的に得られ、エナンチオマー過剰率が100%eeである場合のみをいうのではなく、一方のエナンチオマーが他方に対して過剰であればよいことを意味する。得られるヒドロキシプロピオン酸(I)の光学純度としては、エナンチオマー過剰率で30%ee以上、50%ee以上または70%ee以上が好ましく、80%ee以上、90%ee以上または95%ee以上がより好ましく、98%ee以上、99%ee以上または99.5%ee以上がより更に好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0046】
実施例1: ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌による反応
(1)2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの酸化反応
蒸留水1.0Lに、ポリペプトン5.0g,肉エキス5.0g,塩化ナトリウム2.0g,酵母抽出物3.0g,2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール3.0gを混合し、培地(pH7.0)を調整した。ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)2N株を、上記培地40mLが入った振とうフラスコを用い、28℃、120rpmで2.5日間培養した。遠心分離した菌体を0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち、4mLに懸濁したものを菌体懸濁液とした。
終濃度で60mMの2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、25v/v%菌体懸濁液を含む反応液4mLを調製し、50mL容サンプル瓶中、30℃、120rpmで72時間反応させた。反応液を下記条件のHPLCで分析したところ、93.3%の変換率で2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロピオン酸が生成していることが確認された。
カラム: YMC−Triart C18
溶媒: 50mM NaH2PO4/H3PO4(pH2.8):アセトニトリル=4:1
流速: 1.0mL/min
検出波長: 210nm
【0047】
(2)2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールの酸化反応
2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの代わりに2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールを用いた以外は上記(1)と同様に反応を行った。その結果、47.0%の変換率で64.7%eeの(R)−2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸が生成していることが確認された。
【0048】
(3)2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールの酸化反応
ロドコッカス エスピー2N株の代わりに、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 11215株、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 11216株、またはロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)NCIMB 11148株を用いて上記(2)と同様に試験したところ、上記のジオールに対して2N株と同様の立体選択的な酸化活性が認められた。
【0049】
実施例2: アグロマイセス(Agromyces)属細菌による反応
蒸留水1.0Lに、グルコース10.0g,ペプトン10.0g,塩化ナトリウム6.0g,カゼインペプトン2.0g,酵母抽出物2.0g,2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール2.0gを混合し、培地(pH7.5)を調製した。アグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)E2株を、上記培地40mLが入った振とうフラスコを用い、28℃、120rpmで2日間培養した。遠心分離した菌体を0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄したのち4mLに懸濁したものを菌体懸濁液とした。
終濃度で10mMの2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、25v/v%菌体懸濁液を含む反応液4mLを調製し、30mL容サンプル瓶中、35℃、120rpmで72時間反応させた。反応液を上記実施例1(1)と同様の条件で分析したところ、62.5%の変換率で32.5%eeの(S)−2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸が生成していることが確認された。
【0050】
実施例3: ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌およびアグロマイセス(Agromyces)属細菌の誘導物質による反応性向上
上記実施例1(1)および実施例2において、培地に2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールを添加しなかった以外は同様にして菌体懸濁液を調製し、得られた菌体懸濁液を用いて反応を行ったが、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールおよび2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールは酸化されなかった。よって、上記実施例1および実施例2において2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールおよび2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールを酸化した酵素は、何れも誘導酵素であると考えられた。
【0051】
実施例4: ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌の誘導物質による反応性向上
上記実施例1(1)において、ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)2N株を培養する培地に、3.0gの2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの代わりに種々のジオールを終濃度が0.3w/v%になるように加えて培養すること以外は同様にして菌体懸濁液を調製した。つぎに、終濃度0.13w/vの2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、25v/v%菌体懸濁液を含む反応液4mLを調製し、50mL容サンプル瓶を用いて30℃、120rpmで24時間反応させた。反応後、生成した2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロピオン酸を定量して酸化活性を調べた。酸化酵素の誘導物質として2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールを用いたときの活性を100%とし、誘導物質として他のジオールを用いた場合の相対活性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す結果の通り、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールが最も効果的な酸化酵素誘導物質として作用した。
【0054】
実施例5: アグロマイセス(Agromyces)属細菌の誘導物質による反応性向上
上記実施例2において、アグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)E2株を培養する培地に、2.0gの2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールの代わりに種々のジオールを終濃度が0.2w/v%になるように加えて培養すること以外は同様にして菌体懸濁液を調製した。つぎに、終濃度0.13w/vの2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、25v/v%菌体懸濁液を含む反応液4mLを調製し、50mL容サンプル瓶を用いて35℃、120rpmで65時間反応させた。反応後、生成した2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロピオン酸を定量して酸化活性を調べた。酸化酵素の誘導物質として2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールを用いたときの活性を100%とし、誘導物質として他のジオールを用いた場合の相対活性を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示す結果の通り、ロドコッカス属細菌の場合にも、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールが最も効果的な誘導物質として作用した。
【0057】
実施例6: ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌の基質特異性
上記実施例1(1)において、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールに変えて濃度10mMの種々のジオールを用いて菌体反応を行った。2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールを用いたときの活性を100%とした相対活性を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示す結果の通り、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールにより誘導された酸化酵素であっても、他の1,3−ジオール化合物に対して酸化活性を示すことが証明された。
【0060】
実施例7: アグロマイセス(Agromyces)属細菌の基質特異性
上記実施例1(1)において、2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールに変えて濃度10mMの種々のジオールを用いて菌体反応を行った。2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールを用いたときの活性を100%とした相対活性を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示す結果の通り、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールにより誘導された酸化酵素であっても、他の1,3−ジオール化合物に対して酸化活性を示すことが証明された。
【0063】
実施例8: ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌の酵素活性
上記実施例1(1)と同様にロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)2N株を培養して得られた菌体を、終濃度で1mMジチオスレイトールを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、超音波破砕機を用いて破砕した。破砕液を12000rpm、4℃で30分間遠心分離し、上清を無細胞抽出液として得た。10mM 2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、無細胞抽出液25v/v%(v/v)、1mM NAD+を含む反応液で、8mL容ガラス試験管を用いて30℃、120rpmで24時間酵素反応を行った。反応後の反応液を上記実施例1と同様にHPLCで分析し、2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸の生成を確認した。
【0064】
実施例9: アグロマイセス(Agromyces)属細菌の基質特異性
上記実施例2と同様にアグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)E2株を培養して得られた菌体を、終濃度で1mMジチオスレイトールを含む50mMリン酸カリウム緩衝液に懸濁し、超音波破砕機を用いて破砕した。破砕液を12000rpm、4℃で30分間遠心分離し、上清を無細胞抽出液として得た。10mM 2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノール、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、無細胞抽出液25v/v%、1mM NAD+を含む反応液で、8mL容ガラス試験管を用いて30℃、120rpmで24時間反応を行った。反応液を実施例1と同様にHPLCで分析し、2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸の生成を確認した。
【0065】
実施例10: 反応生成物の単離と構造確認
上記実施例1(1)および実施例2と同様に培養して得られた菌体を用いて、100mM 2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロパノールを含む反応液50mLで30℃、96時間振とうして菌体反応を行ったのち、反応液上清に2N塩酸を添加してpHを3.0に調整した。ジエチルエーテルで生成物を抽出したのち、有機層を濃縮し、濃縮物に1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて溶解して中性の水溶液を得た。その水溶液を減圧乾燥し、ジエチルエーテルで洗浄して白色固体を得た。得られた白色固体をNMRで分析し、2,2−ジエチル−3−ヒドロキシプロピオン酸のナトリウム塩と同定した。
1H NMR(600MHz,D2O):δ(ppm) 0.59(3H×2,t,J=7.2Hz),1.29(3H×2,q,J=7.7Hz),3.47(2H,s)
13C NMR(150MHz,D2O):δ(ppm) 8.23,26.24,52.56,61.44,184.34
【0066】
実施例11: 反応生成物の単離と構造確認
上記実施例1(1)および実施例2と同様に培養して得られた菌体を用いて、20mM 2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロパノールを含む反応液40mLで30℃、20時間振とうして菌体反応を行ったのち、反応液上清に6N塩酸を添加してpHを3.0に調整した。ジエチルエーテルで生成物を抽出したのち、有機層を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、TLC分析でカルボン酸を検出した画分を集めて濃縮した。NMRを用いて構造解析した結果、反応生成物を2−エチル−2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸と同定した。
1H NMR(600MHz,CDCl3):δ(ppm) 0.92(3H,t,J=14.1Hz),1.25(3H,s),1.68(2H,dq,J=12.0Hz),3.55(1H,d,J=18.0Hz),3.73(1H,d,J=18.0Hz)
13C NMR(150MHz,CDCl3):δ(ppm) 8.53,18.90,28.35,47.76,67.65,181.17
【0067】
実施例12: アルデヒド中間体の検出
ロドコッカス エスピー(Rhodococcus sp.)2N株およびアグロマイセス エスピー(Agromyces sp.)E2株を用いた菌体反応後の反応液を酢酸エチルで抽出し、酸性条件下で2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを加えて反応させた。反応液を分取用TLCに付し、単離された化合物をNMRで分析することによりヒドラゾンと同定した。よって、反応中間体としてアルデヒド体ができていることを確認した。