(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該回転体の回転軸が水平方向又は略水平方向に延びており、該海水パージ用キャリア物質は、海水の比重より小さい比重であり、該第1連結口は、該第2連結口より上方に位置し、該第4連結口は、該第3連結口より上方に位置することを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の海底鉱物取り込み装置。
該回転体の回転軸が水平方向又は略水平方向に延びており、該海水パージ用キャリア物質は、海水の比重より大きい比重であり、該第2連結口は、該第1連結口より上方に位置し、該第3連結口は、該第4連結口より上方に位置することを特徴とすることを特徴とする請求項2記載の海底鉱物取り込み装置。
該密封室6室を有し、該密封室Bと該密封室Aの間に密封室B1を、該密封室Cの回転方向側にそれぞれ、密封室C1、C2を有し、該密封室B1は、主に海底鉱物を含むキャリア物質で満たされ、該密封室C1、C2は、主に海水で満たされることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の海底鉱物取り込み装置。
該ケーシングは、円筒部と、円筒部の両端をそれぞれ塞ぐ側板部を有し、該開口は該円筒部又は側板部に形成され、該上昇管連結口及び該下降管連結口は、該側板部に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の海底鉱物取り込み装置。
循環用キャリア物質と海水パージ用キャリア物質は、同一物質であり、且つ粘性流動物質であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の海底鉱物取り込み装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の第1の実施の形態における海底鉱物取り込み装置(以下、単に「取り込み装置」とも言う。)、揚鉱装置及び揚鉱方法について、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1に示すように、取り込み装置10は、海上より海底に達する下降管21と、海底から海上に達する上昇管22を海底側と海上側でそれぞれ連結した環状の管路途中であって海底側において設置される。なお、環状の管路は、環状に限定されず、例えば、海上より海底に達する下降管と、海底から海上に達する上昇管を海底側で連結したU字状の管路であってもよい。環状の管路内又はU字状の管路内には、海水とは異なるキャリア物質が充填されている。管路としては、可撓性を有していてもよい管であり、例えば、一般的な配管が挙げられる。
【0013】
取り込み装置10は、ケーシング1と、突起壁付き回転体2と、循環用キャリア物質を送る下降管21と連結する下降管連結口15aと、海底鉱物含有キャリア物質を上昇運搬する上昇管22と連結する上昇管連結口15bを備える。
【0014】
取り込み装置10において、ケーシング1は、海底鉱物を取り込む開口11を有するもので、突起壁付き回転体2の回転軸を除く全体を覆うものである。ケーシング1は、本例では、円筒部12と両側板部13a、13bを有する円筒形状であり、円筒の軸中心は、回転軸が挿通する孔14が形成されている。なお、両側板部13a、13bの外周端には、設置用のフランジ131が形成されている。また、ケーシング1の一方の側板部13aには、下降管連結口15aが形成され、他方の側板部13bには、上昇管連結口15bが形成されている。
【0015】
突起壁付き回転体2は、回転軸が嵌る軸孔29を有する回転体中心部24と回転体中心部24から放射状に延びる4つの突起壁22a〜22dが円周方向に当間隔で形成されており、
図4に示すように、ケーシング1内においては、3つの密封室を形成し、その内のひとつが、下降管連結口15aと上昇管連結口15bと連通する密封室Aとなる。この場合、開口11に位置する室が1つ存在するため、突起壁付き回転体2で見ると、回転体2は、4室231〜234を有することになる。なお、突起壁の形状としては、板状体、円弧状断面及び密封室の断面形状がU字形状となるものなどが挙げられる。本発明において、開口11を除くケーシング内において、隣接する2つの突起壁とケーシング1の円筒部12と両側板部13a、13bで形成される密封室は、少なくとも1室、好ましくは3〜12室である。
【0016】
取り込み装置10において、下降管連結口15aと上昇管連結口15bは、ひとつの密封室Aに対応するケーシング位置に形成されている。密封室Aは、海底鉱物を循環キャリア物質中に取り込む室であり、連通状態において環状の管路又はU字管路の途中に位置するものである。取り込み装置10において、ケーシング1と突起付き回転体2間は、ゴム系シール材でシールすることが好ましい。シール材は、例えば、
図16に示すように、門形状のゴム系シール材を回転体2の突起22a〜22dに形成された嵌合溝に、頭出しとなるように嵌め込めばよい。
【0017】
海底鉱物としては、深さ数百から数千メートルの海底9に存在するマンガンクラスト、マンガンノジュール、コバルト鉱床、硫化物鉱床(熱水鉱床)、レアアース泥又はメタンハイドレードYから採取される粒状又は粉状の鉱石Xが挙げられる。粒状又は粉状の鉱石Xは0.75mm以上、50mm以下の粗粒であってもよく、粒子密度が3g/cm
3以上の高密度なものであってもよい。
【0018】
本発明の第1の実施の形態における海底鉱物の揚鉱装置としては、前記海底鉱物取り込み装置10を備えるものであればよく、好適な例としては、例えば、
図1に示すように、海上より海底に達する下降管21と、海底から海上に達する上昇管22を海底側と海上側でそれぞれ連結した環状の管路、又は海上より海底に達する下降管と、海底から海上に達する上昇管を海底側で連結したU字状の管路と、該環状の管路内、又はU字状の管路内に充填される循環用キャリア物質201と、キャリア物質201を循環させる圧送ポンプと、海底鉱物取り込み装置10と、管路の海上側に設けられた海底鉱物を回収する回収装置群23を有するものが挙げられる。
【0019】
回収装置群23としては、海上に運搬された鉱石含有キャリア物質を、鉱石とキャリア物質に分離する分離槽、鉱石を不要鉱物と有用鉱物に分離する選鉱装置、キャリア物質の組成を調整する調整装置などが挙げられる。また、海底鉱物は、海底に設置された集鉱ショベル30で海水と共に集鉱され、取り込み装置10の開口に投入される。この場合、集鉱ショベル30は、海水が抜ける穴明きショベルや海水抜き装置を使用することが、海水の取り込み量を少なくすることができる点で好ましい。
【0020】
また、環状の管路又はU字状の管路には、キャリア物質を循環させるポンプ(不図示)を有する。ポンプは圧送ポンプであり、管路系内であれば、設置場所は特に制限されない。また、ポンプは、環状の管路又はU字状の管路系内に設置されるため、海底鉱物取り込み装置と、海上の回収口とに大きな高低差があったとしても、ポンプには管内壁の摩擦損失以外の負荷が生じないため、キャリア物質又は海底鉱物含有のキャリア物質を、効率的に長距離圧送することが可能となる。
【0021】
次に、本発明の第1の実施の形態の海底鉱物取り込み装置を使用した揚鉱方法について説明する。本例の揚鉱方法は、
図1の揚鉱装置20を使用して、海底鉱物xを揚鉱する方法であって、突起壁付き回転体2を回転させ、開口11から海底鉱物xを投入する工程と、循環用キャリア物質201を循環させ、密封室Aにおいて海底鉱物xを循環用キャリア物質201に混合し、同伴させ上昇管22により揚鉱する工程と、を有する。先ず、
図1の揚鉱装置20において、圧送ポンプ及び取り込み装置10を稼働させる。これにより、環状の管路21、22内をキャリア物質201が循環し、ケーシング1内において突起壁付き回転体2が回転する。海底では、例えば、千mの海底のマンガンクラストyから粒状の鉱石xを採取し、これを取り込み装置10の開口11に投入する。取り込み装置10において、回転体2はケーシング1内で回転しており、鉱物xを受け取った回転体の隣接する2つの突起間の室は、開口11の位置から回転して密封室Aにくる。密封室Aは、下降管21と上昇管22と連通しており、採取された鉱物xは、循環用キャリア物質内に取り込まれ、上昇管22内を上昇運搬される。採取された粒状の鉱石xは、キャリア物質201が粘性流動物質であるため、粗粒物であっても、また高密度粒子であっても、粉状の鉱石xの相対的な位置を保持した状態で上昇管22内を流動すると共に、キャリア物質201から沈降することなく、輸送・運搬される。
【0022】
海上に運搬された鉱石xは、キャリア物質201と共に、例えば分離槽に導入され、分離槽で分離されて、鉱石xを含むキャリア物質201と、鉱石xを含まないキャリア物質201に分離される。一方、分離槽で分離された鉱石xを含まないキャリア物質201は、調整装置に送られ、組成調整されて下降管21に送られる。組成調整されたキャリア物質は、再び下降管21を通り循環する。なお、キャリア物質201中に海水を含む場合、キャリア物質201と海水を分離することが好ましい。
【0023】
本第1の実施の形態における揚鉱方法によれば、海底から採取された海底鉱物を連続的に循環系内に取り込み、海上で採取できる。また、環状の管路内をキャリア物質である粘性流動物質が循環するため、鉛直方向及び水平方向にも輸送、運搬でき、有価物質である粗粒な粒状体や高密度な粒状体の揚鉱ができ、千m程度の長距離輸送が可能である。特に、揚鉱装置は何らかの理由により、循環を停止する場合がある。この場合、キャリア物質は粘性流動物質であるため、キャリア物質中の海底鉱物の沈降は抑制され、ほとんどの海底鉱物は、キャリア物質中に
保持されたままである。従って、揚鉱装置の数時間程度の停止状態であれば、水平配管内において、海底鉱物が配管の管底に着くことはなく、水平配管においても、復帰後、循環流に同伴させることができる。
【0024】
キャリア物質としては、粘性流動物質が好ましい。粘性流動物質(キャリア物質)は、5℃の粘度(JIS Z8803)が、1,300Pa・s以上が好ましく、特に好ましくは2,000mPa・s以上、更に好ましくは3,000mPa・s以上である。粘性流動物質の5℃の粘度が上記範囲内であれば、揚鉱装置10が一時停止した場合、キャリア物質3内の有価物質の沈降を抑制でき、再稼働の際、圧送ポンプにかかる負荷を許容範囲とすることができる。5℃の粘度としたのは、海水温度が海水表面から数十m以下の深度においては、概ね5℃と安定しており、下降管及び上昇管のほとんどは、5℃の環境下に晒されるためである。すなわち、本発明における沈降抑制能は、5℃のキャリア物質中における静置状態における海底有価物質の沈降を抑制する能力を言う。
【0025】
キャリア物質が、増粘剤と称される高分子水溶液の場合、5℃の粘度が1,000mPa・sのものは、25℃の粘度が1,000mPa・sであり、キャリア物質の5℃の粘度が2,000mPa・sのものは、25℃の粘度が2,000mPa・sであり、キャリア物質の5℃の粘度が2,500mPa・sのものは、25℃の粘度が2,500mPa・sである。このような高分子水溶液における粘度は、5℃と25℃において、ほとんど変わらないものであった。粘度5℃の粘度及び25℃の粘度は、5℃又は25℃の雰囲気下、振動式音叉型粘度計(JIS Z8803)で測定することができる。
【0026】
キャリア物質である粘性流動物質は、水系、油系及びエマルジョン系であってもよいが、水系及びエマルジョン系が好ましく、特に高分子溶液等の水系が、安価で済み、取り扱いにおいて都合がよい点で好ましい。高分子溶液は、懸濁液を含む。高分子溶液における高分子は、天然物又は合成物いずれも使用できるが、合成物とすることが、少ない配合量で流動化物を得ることができる点で好ましい。また、エマルジョン系としては、油又は水と乳化剤の混合物であるマヨネーズが挙げられる。
【0027】
高分子溶液における高分子としては、一般に増粘剤、吸水剤と称されるものが使用でき、例えば、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプン、ガム類、ペクチン、アルギン酸金属塩、アルギン酸エステル等が挙げられる。ガム類としては、グアーガム、キンサンタンガム、ジェランガム、ダイユータンガム等が挙げられる。また、アルギン酸金属塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム等が挙げられる。これらの化合物は、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
高分子溶液は、水と高分子の混合物であるが、高分子濃度は、5℃の粘度が好ましくは1,300mPa・s以上となる配合量であり、例えば、0.05重量%〜5重量%、好ましくは、0.1重量%〜3重量%である。高分子溶液には、安定剤、防腐剤等が含まれていてもよい。
【0029】
このような、キャリア物質201は、粘性流動物であるため、輸送・運搬したい粉状の海底鉱物の相対的な位置を保持した状態で管内を流動する性質を有する。すなわち、循環状態及び静置状態において、キャリア物質201は、粉状の海底鉱物(沈降物質)の沈降抑制能に優れ、且つ流動性を有する。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態における取り込み装置、揚鉱装置及び揚鉱方法について、
図6〜
図12を参照して説明する。
図6〜
図12において、
図1〜
図5と同一構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、
図6〜
図12の取り込み装置及び揚鉱装置において、
図1〜
図5の取り込み装置及び揚鉱装置と主に異なる点は、回転体の突起を多くした点、海水パージ用の配管など及びキャリア物質パージ用の配管などを設置した点などである。
【0031】
すなわち、取り込み装置10aは、循環用キャリア物質を送る下降管21と連結する下降管連結口15aと、海底鉱物含有キャリア物質を上昇運搬する上昇管22と連結する上昇管連結口15bと、海水パージ用キャリア物質を送る第1配管241と連結する第1連結口16と、パージされた海水を排出する第2配管252と連結する第2連結口17と、キャリア物質パージ用海水を送る第3配管251と連結する第3連結口18と、パージされたキャリア物質を排出する第4配管242と連結する第4連結口19と、を更に備える。すなわち、取り込み装置10aにおいて、ケーシング1の一方の側板部には、第1連結口16、第3連結口18及び下降管連結口15aが形成され、他方の側板部には、第2連結口17、第4連結口19及び上昇管連結口15bが形成されている。
【0032】
突起壁付き回転体2は、回転軸が嵌る軸孔を有する回転体中心部24と回転体中心部24から放射状に延びる8つの突起壁22a〜22hが形成されている。また、取り込み装置10aにおいて、密封室6室(開口11位置には、2室の開放室)を有し、密封室Aと密封室Bの間に密封室B1を、密封室Cの回転方向側にそれぞれ、密封室C1、C2を有している。
【0033】
取り込み装置10aにおいて、第1連結口16と第2連結口17は、開口11より回転方向側、且つ密封室Aの手前であって、ひとつの密封室Bに対応するケーシング位置に形成され、且つ第1連結口16は、第2連結口17より上方又は下方に位置する。密封室Bでは、密封室B内の鉱物と海水の混合体の中、海水を海水と比重の異なるパージ用キャリア物質を室内に圧入し、海水とパージ用キャリア物質を室内で分離させ、海水を排出してパージ用キャリア物質を残置させるものである。従って、回転体2の回転軸が水平方向又は略水平方向に延びており、海水の比重より小さな比重のパージ用キャリア物質を使用する場合、第1連結口16は、第2連結口17より上方に位置することになり、海水の比重より大きな比重のパージ用キャリア物質を使用する場合、第1連結口16は、第2連結口17より下に位置することになる(
図13参照)。
図9は、海水の比重より小さな比重のパージ用キャリア物質を使用する場合であって、密封室Bにおいて、第1連結口16は、第2連結口17より上方に位置している。なお、本例では、第1連結口16と第2連結口17は、互いに対峙する側板部のそれぞれに1つ形成されているが、同じ側板部に形成してもよい。密封室Bより回転方向側の密封室B1は、主にキャリア物質(海底鉱物を含む)で満たされることになる。
【0034】
取り込み装置10aにおいて、下降管連結口15aと上昇管連結口15bは、密封室Bより回転方向側であって、ひとつの密封室Aに対応するケーシング位置に形成されている。密封室Aは、海底鉱物を循環キャリア物質中に取り込む室であり、環状の管路又はU字管路の途中に位置するものである。すなわち、下降管連結口15aは一方の側板部に形成され、上昇管連結口15bは他方の側板部に形成される。
【0035】
取り込み装置10aにおいて、第3連結口18と第4連結口19は、密封室Aより回転方向側であって、ひとつの密封室Cに対応するケーシング位置に形成され、且つ第4連結口19は、第3連結口18より上方又は下方に位置する。密封室Cは、主に循環キャリア物質で満たされている。このため、循環キャリア物質と比重の異なるパージ用海水を室内に圧入し、循環用キャリア物質とパージ用海水を室内で分離させ、循環用キャリア物質を排出してパージ用海水を残置させるものである。従って、回転体2の回転軸が水平方向又は略水平方向に延びており、海水の比重より小さな比重の循環用キャリア物質を使用する場合、第3連結口18は、第4連結口19より下方に位置することになり、海水の比重より大きな比重の循環用キャリア物質を使用する場合、第3連結口18は、第4連結口19より上方に位置することになる(
図13参照)。
図9は、海水の比重より小さな比重の循環用キャリア物質を使用する場合であって、密封室Cにおいて、第3連結口18は、第4連結口19より下方に位置している。なお、本例では、第3連結口18と第4連結口19は、互いに対峙する側板部のそれぞれに1つ形成されているが、同じ側板部に形成してもよい。取り込み装置10aにおいて、密封室Cより回転方向側の密封室C1、C2は、主に海水で満たされることになる。
【0036】
本発明の第2の実施の形態における揚鉱装置20aを
図6及び
図10を参照して説明する。
図6の揚鉱装置20aにおいて、
図1の揚鉱装置20と同一構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について、主に説明する。すなわち、
図6の揚鉱装置20aは、
図1の揚鉱装置20に対して、更にパージ用キャリア物質圧送ポンプ24、海水注入ポンプ25、第1配管241、第2配管252、第3配管251及び第4配管242を設置したものである。第1配管241は、圧送ポンプ24と第1連結口16を連結し、第4配管242は、第2連結口17と回収タンクを連結し、第3配管251は、海水注入ポンプ25と第3連結口18を連結し、第2配管252は第4連結口19に連結するものである。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態の海底鉱物取り込み装置を使用した揚鉱方法について説明する。本例の揚鉱方法は、
図6の揚鉱装置20aを使用して、海底鉱物xを揚鉱する方法であって、該突起壁付き回転体を回転させ、該開口から海底鉱物を投入する工程と、海水パージ用キャリア物質を圧送し、該密封室Bにおいて海水をキャリア物質に置換する海水パージ工程と、循環用キャリア物質を循環させ、該密封室Aにおいて海底鉱物を循環用キャリア物質に混合し、同伴させ上昇管により揚鉱する工程と、キャリア物質パージ用海水を圧送し、該密封室Cにおいてキャリア物質を海水に置換するキャリア物質パージ工程と、を有する。
【0038】
先ず、
図6の揚鉱装置20aにおいて、圧送ポンプ及び取り込み装置10aを稼働させる。これにより、環状の管路21、22内でキャリア物質201を循環させ、ケーシング1内において突起壁付き回転体2を回転させる。海底では、例えば、千mの海底のマンガンクラストyから粒状の鉱石xを採取し、これを海水と共に、取り込み装置10aの開口11に投入する。次いで、海水パージ用キャリア物質を圧送し、密封室Bにおいて海水をキャリア物質に置換する海水パージ工程を行う。密封室Bにおいて、キャリア物質の比重は、海水の比重より小さいため、海水が下層、キャリア物質が上層と2層に分離する。キャリア物質は圧送されるため、密封室Bから海水を第2配管252へと押し出す(パージ)。これにより、密封室Bは海水パージ用キャリア物質で置換され、鉱石xを含んだ状態で、回転移動する。密封室Bの回転方向側に位置する密封室B1は、主に鉱石xを含んだキャリア物質で満たされており、この状態で回転移動する。
【0039】
第1の実施の形態例と同様に、密封室Aにおいて、海底鉱物を循環用キャリア物質に混合し、同伴させ上昇管により揚鉱する工程を行う。すなわち、密封室Aは、下降管21と上昇管22と連通しており、採取された鉱物xは、循環用キャリア物質内に取り込まれ、上昇管22内を上昇運搬される。
【0040】
次いで、キャリア物質パージ用海水を圧送し、密封室Cにおいてキャリア物質201を海水に置換するキャリア物質パージ工程を行う。密封室Cにおいて、キャリア物質の比重は、海水の比重より小さいため、海水が下層、循環用キャリア物質が上層と2層に分離する。海水は圧送されるため、密封室Cから循環用キャリア物質を第4配管242へと押し出す(パージ)。これにより、密封室Cは海水で置換され、実質的に海水で満たされた状態で回転移動する。密封室Cより回転方向側の密封室C1、C2は、実質的に海水で満たされた状態で回転移動する。次いで、海水で満たされた室は、開口11に来て、海水を含む海底鉱物の投入を受ける。
【0041】
本第2の実施の形態における揚鉱方法によれば、第1の実施の形態における揚鉱方法と同様の効果を奏する他、開口から海底鉱物の他、海水が投入されても、海底鉱物を揚鉱する密封室Aにおいて、キャリア物質を汚すことがなく、海上での性状調整が不要又は容易となる。また、海水中にキャリア物質が漏れることがなく、キャリア物質の補充工程が無くなるか、少なくなる。
【0042】
取り込み装置10aにおいて、循環用キャリア物質と海水パージ用キャリア物質は、同一物質であり、且つ粘性流動物質である。粘性流動物質は、前記第1の実施の形態例に挙げたものと同様のものが使用できる。
【0043】
循環用キャリア物質及びパージ用キャリア物質は、同一物質であってもよく、異なる物質であってもよいが、同一物質とすることが、コスト及び性状安定維持の点からも好ましい。キャリア物質の比重は、海水の比重より小又は大である。海水をキャリア物質に置換する室B、キャリア物質を海水に置換する密封室Cは、いずれも比重差による分離を利用するからである。循環用キャリア物質とは、海底有価物質を運搬・輸送する輸送媒体のことである。パージ用キャリア物質とは、密封室内の海水を押し出し、当該密封室内をキャリア物質を満たすためのものである。
【0044】
次に、本発明の取り込み装置の変形例を
図14に示す。
図14において、
図3と同一構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について、主に説明する。すなわち、
図14の取り込み装置10bにおいて、
図3の取り込み装置10と異なる点は、取り込み装置10bの設置姿勢及び開口の位置である。すなわち、取り込み装置10bは、回転軸の軸芯が横方向に延びるように設置し、また、開口11aを側板部13aに形成したものである。この取り込み装置10bにおいても、取り込み装置10と同様の効果を奏する。なお、本発明の取り込み装置において、下降管連結口15a、15bは、円筒部12に形成されていてもよい。また、第1連結口〜第4連結口を設ける場合、形成位置は、側板部13a、13bに限定されず、円筒部12の該当する位置に形成してもよい。
【0045】
次に、本発明の取り込み装置10aの変形例を
図15に示す。
図15において、
図8と同一構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について、主に説明する。
図15は、取り込み装置10cを側板部から見た図である。すなわち、
図15の取り込み装置10cにおいて、
図8の取り込み装置10aと異なる点は、下降管連結口、上昇管連結口、第1連結口〜第4連結口をそれぞれ2個(ダブル)で設置した点にある。このため、密封室は、少なくとも6個以上である(
図15では密封室6個)。すなわち、取り込み装置10cにおいて、密封室Aを2つ、密封室Bを2つ、密封室Cを2つ形成することになる。取り込み装置10cにおいて、取り込み装置10aと同様の効果を奏する他、密封室Bにおける海水パージ効果及び密封室Cにおけるキャリア物質パージ効果をより高めることができる。
【0046】
本発明の取り込み装置、揚鉱装置及び揚鉱方法において、上記実施の形態例に限定されず、本発明の効果を奏する限り、種々の変形を採ることができる。例えば、取り込み装置10aにおいて、海水を排水する第2配管252の先端は、海上の回収槽に接続させてもよい。また、取り込み装置において、突起付き回転体2の突起の数が6つの場合の作動を、
図17を参照して説明する。本例では、開口11は、2つの突起で形成される室の2室分に形成され、密封室は4つである。すなわち、開口11からすぐの密封室は、密封室Bとなり、密封室Bのすぐ回転方向側の密封室は、密封室Aとなり、密封室Aのすぐ回転方向側の密封室は、密封室Cとなり、密封室Cのすぐ回転方向側の密封室は、密封室C1、C2となる。