特許第6938314号(P6938314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938314
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】除湿型放射空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20210909BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20210909BHJP
   F24F 1/0007 20190101ALI20210909BHJP
   F24F 13/30 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   F24F5/00 101B
   F24F1/0007 361B
   F24F1/0007 331
   F24F13/22 222
   F24F13/30
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-187899(P2017-187899)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-60586(P2019-60586A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】西尾 新一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】池原 基博
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−106513(JP,U)
【文献】 特開2003−227632(JP,A)
【文献】 米国特許第05363908(US,A)
【文献】 特開2009−300051(JP,A)
【文献】 特開2016−003808(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3064836(JP,U)
【文献】 特開2011−002106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 1/0007
F24F 13/22
F24F 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
前記冷却除湿面は、前記結露水を保持しながら水下へ誘導する第1の部分と、前記冷却除湿面の水下に設けられ、前記第1の部分より親水性が低い第2の部分と、を有し、
前記結露水回収手段は、前記第2の部分から間隔をおいて前記第2の部分の下方に位置する受け皿を有し、前記受け皿は前記第2の部分から落下する前記結露水を回収する、除湿型放射空調システム。
【請求項2】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
前記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
前記結露水回収手段は、
前記冷却除湿面の水下に設けられた第1の結露水溜め部と、
前記パネルの前記冷却除湿面の裏面に設けられ、前記排水配管に接続された第2の結露水溜め部と、
前記第1の結露水溜め部を前記第2の結露水溜め部と結び、前記第1の結露水溜め部に保持された結露水を前記第2の結露水溜め部に毛細管力によって移送する細管と、を有する、除湿型放射空調システム。
【請求項3】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
前記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
水上と水下を結ぶ方向に沿って直列に配列された複数の前記パネルと、各前記パネルと組み合わされた複数の前記結露水回収手段とが設けられ、互いに隣接する一方の前記パネルの水下が他方の前記パネルの水上の下方にある、除湿型放射空調システム。
【請求項4】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
前記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
方向に沿って直列に、かつ互いに部分的に重なり合うように配列された複数の前記パネルが設けられ、互いに隣接する一方の前記パネルの水下が他方の前記パネルの水上の上方にあり、前記結露水回収手段は最も水下となる前記パネルと組み合わされている、除湿型放射空調システム。
【請求項5】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
前記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
水上と水下を結ぶ方向に沿って直列に配列された一対の前記パネルが設けられ、一方の前記パネルの水上と他方の前記パネルの水上が互いに対向しており、前記一対のパネルの水下の下方のそれぞれに前記結露水回収手段が設けられている、除湿型放射空調システム。
【請求項6】
前記冷却手段は、前記パネルの前記冷却除湿面の裏面と前記パネルの上方にある天井と、壁と、によって形成される空間に冷風を導入する冷風供給設備である、請求項1からのいずれか1項に記載の除湿型放射空調システム。
【請求項7】
天井に設けられた少なくとも1枚のパネルであって、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、前記冷却除湿面は前記空間を冷却するとともに、前記冷却除湿面に結露水を生じさせることによって前記空間を除湿し、前記冷却除湿面は前記結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している、少なくとも1枚のパネルと、
前記パネルを冷却する冷却手段と、
前記パネルの水下に設けられ、前記結露水を回収する結露水回収手段と、
前記結露水回収手段に接続された排水配管と、を有し、
前記冷却手段は、前記パネルの前記冷却除湿面の裏面に配置され、冷媒が流通する冷却管であり、
前記冷却管は前記パネルの裏面を蛇行する1本の管からなり、前記冷却管の上流部が前記パネルの水下側に、下流部が前記パネルの水上側に位置している、除湿型放射空調システム。
【請求項8】
前記パネルの前記冷却除湿面に光触媒膜が形成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の除湿型放射空調システム。
【請求項9】
自然光を拡散させ、拡散された自然光を前記光触媒膜が形成された前記冷却除湿面に照射する自然光拡散照射手段を有する、請求項に記載の除湿型放射空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井に用いられる除湿型放射空調システムに関し、特に天井パネルの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から熱放射を用いた放射空調システムが知られている。放射空調システムにおいて冷房を行う際には、人間の周囲のパネルの温度が人間の体温より低く設定される。これによって、人間が放射によって失うエネルギーが吸収するエネルギーよりも高くされ、所望の冷房効果が得られる。暖房時には、人間の周囲のパネルの温度が、人間の体温より低いが人間の体温に近い温度に設定される。これによって、人間が吸収するエネルギーが放射によって失うエネルギーに近づき、所望の暖房効果が得られる。パネルは、床、天井または壁に設置することが可能であるが、天井は床とともに面積が大きく、空調の効果が広範囲かつ均一に得られるので、パネルを設置する好ましい部位である。特許文献1,2には冷房機能に加えて除湿機能が付加された除湿型放射空調システムが開示されている。具体的には天井に設けられた複数の管路に冷水を通水することで、放射による冷房効果が得られるともに、管路の表面で結露を発生させることで室内の湿分が除去され、除湿効果が得られる。管路の表面で発生した結露水の落下を防止するため、管路の下方にドレン部材が設置されている。
【0003】
特許文献3には、壁に設置される除湿型放射空調システムが開示されている。結露が発生する輻射パネルの表面には結露水の排水を促進するために、親水性の薄膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−300051号公報
【特許文献2】特開2012−72977号公報
【特許文献3】登録実用新案第3064836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載された除湿型放射空調システムは管路の下方にドレン部材が設置されているが、このドレン部材は管路を遮蔽するため、所望の冷房効果が得られない可能性がある。しかしながら、所望の冷房効果を得るためにドレン部材を省略すると結露水の落下を防止することができない。特許文献3に記載されている輻射パネルと同様に管路の表面に親水性の薄膜を形成しても、壁に設置された除湿型放射空調システムと異なり、重力で結露水を排水することができないため、管路が保持可能な結露水の量を超えると、結露水は最終的に落下してしまう。
【0006】
本発明は、天井に設置され、良好な除湿冷房効果が得られ、かつ結露水の排水が可能な除湿型放射空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の除湿型放射空調システムは、天井に設けられた少なくとも1枚のパネルを有している。パネルは、冷却され除湿される空間と対向する冷却除湿面を備え、冷却除湿面は当該空間を冷却するとともに、冷却除湿面に結露水を生じさせることによって当該空間を除湿する。冷却除湿面は結露水を保持しながら水下へ誘導するように、水平方向に対して傾斜している、除湿型放射空調システムはさらに、パネルを冷却する冷却手段と、パネルの水下に設けられ、結露水を回収する結露水回収手段と、結露水回収手段に接続された排水配管と、を有している。冷却除湿面は、結露水を保持しながら水下へ誘導する第1の部分と、冷却除湿面の水下に設けられ、第1の部分より親水性が低い第2の部分と、を有している。結露水回収手段は、第2の部分から間隔をおいて第2の部分の下方に位置する受け皿を有し、受け皿は第2の部分から落下する結露水を回収する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パネルの冷却除湿面は水平方向に対して傾斜しているため、冷却除湿面に発生した結露水は冷却除湿面上を水下に誘導され、水下に形成された結露水回収手段で回収される。冷却除湿面の水下を除き、冷却除湿面の下方に結露水回収手段を設ける必要がないため、冷却除湿面と下方空間にいる人間との間に他の構造物が介在することがない。従って、本発明によれば、天井に設置され、良好な除湿冷房効果が得られ、かつ結露水の排水が可能な除湿型放射空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図2図1に示す除湿型放射空調システムの断面図である。
図3】第1の実施形態に係る除湿型放射空調システムの変形例の概要図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図6】第3の実施形態の変形例に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図8】本発明の第5の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図9】本発明の第6の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図10】本発明の第7の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
図11】本発明の第8の実施形態に係る除湿型放射空調システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態を説明する。本発明は主として壁と床と天井とで画定される密閉された室内空間の除湿型放射空調に適用されるが、天井を備え密閉されていない空間の除湿型放射空調に適用することもできる。以下の説明及び図面において、第1の方向xは水上と水下を結ぶ水平方向、第2の方向yは第1の方向xと直交する水平方向、第3の方向zは第1の方向x及び第2の方向yと直交する方向(鉛直方向)とする。図中の破線は結露水Wの流動経路を示す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る除湿型放射空調システム101の正面図である。除湿型放射空調システム101は、下方空間Rと対向する冷却除湿面21を備えたパネル102と、パネル102を冷却する冷却手段3とを有している。本実施形態のパネル102は、天井11に設けられた天井パネルを構成する。「天井11に設けられる」とは、天井11の近傍に、または天井11に接して設けられることを意味し、パネル102が天井11に支持されるか、天井11以外のものに支持されるかを問わない。下方空間Rは、建物の躯体の一部である壁12及び床13と、パネル102とによって画定される、パネル102の下方の除湿冷却対象空間である。パネル102は建物の躯体の一部である天井11(床板)の下方に設けられている。本実施形態ではパネル102は天井11から離れて設けられているが、パネル102の一部が天井11と密着していてもよい。冷却手段3はパネル102の冷却除湿面21の裏面22、すなわち天井11と対向する面に設けられている。図1(b)はパネル102の冷却除湿面21の裏面22の平面図(図1(a)のA方向から見た図)、図2(a)は図1(a)と同じ方向から見たパネル102と冷却手段3の部分詳細図、図2(b)は図1(b)のB−B線に沿った断面図である。本実施形態では、冷却手段3は、パネル102の冷却除湿面21の裏面22に配置され、冷媒が流通する冷却管31である。冷却管31はパネル102の裏面22を蛇行する1本の管からなっている。冷却管31は熱伝導率の高い金属で形成された支持部32によってパネル102に支持されている。支持部32は冷却除湿面21に向かって断面が増加する断面形状を有している。パネル102の裏面22の支持部32との接触面積を確保することが容易であるため、パネル102の冷却効率が向上し、冷却除湿面21のより広い範囲を効率的に冷却することができる。
【0012】
パネル102の冷却除湿面21は、下方空間Rを冷却する。下方空間Rにいる人間と冷却除湿面21との間には熱放射(輻射熱)による熱移動が生じる。移動する熱量は下方空間Rにいる人間の表面体温(絶対温度)をTh、冷却除湿面21の表面温度(絶対温度)をTsとすると、(Th−Ts)に比例する。TsはThより低く設定されるため、人間の輻射放熱量が輻射受熱量を上回り所望の冷却効果が得られる。また、冷媒の温度は下方空間Rの空気の露点温度より低く設定されるため、パネル102の冷却除湿面21の温度も下方空間Rの空気の露点温度より低くなる。このため、下方空間Rの湿分は冷却除湿面21で結露(凝縮)し、結露水に取り込まれる。これによって、下方空間Rが除湿される。
【0013】
パネル102は結露水を保持しながら水下へ誘導するように水平方向に対して傾斜している。結露水は表面張力によって冷却除湿面21に保持されながら、傾斜面を伝って水下側に膜状に流れる。冷却管31の上流部はパネル102の水下側に、下流部はパネル102の水上側に位置している。このため、パネル102の水下側は水上側より低温となり、より多くの結露水が発生する。後述するようにパネル102の水下側には結露水回収手段4が設けられているため、このように冷却管31を引き回すことにより、冷却除湿面21に沿って移動する結露水の移動距離を少なくすることができる。また、万が一結露水が冷却除湿面21から落下する場合でも、落下する結露水の量を抑制することができる。パネル102の冷却除湿面21の第2の方向yの両側端部に下方に突き出す案内部材23を設けてもよい。案内部材23は第1の方向xに沿って水上から水下に延びており、冷却除湿面21とともにコーナー部を形成している。結露水はコーナー部で表面張力によって保持されるため、冷却除湿面21の第2の方向yの両側端部から落下しにくくなる。
【0014】
図2(a)に示すように、冷却除湿面21は、結露水を保持しながら水下へ誘導する第1の部分21aと、冷却除湿面21の水下に位置し、第1の部分21aより親水性の低い(疎水性ないし撥水性の高い)第2の部分21bとを有している。結露水は、第1の部分21aでは表面張力によって保持されながら水下側に向かって移動し、第2の部分21bでは表面張力で保持されることなく落下する。親水性は一般に、液滴の輪郭曲線と固体表面との交点における輪郭曲線の接線が固体表面との間でなす接触角θで定義される。接触角θが小さいほど濡れ性が大きく、親水性も高い。接触角θが大きいほど濡れ性が小さく、疎水性が高くなる。接触角θは、第1の部分21aと第2の部分21bの表面コーティングの種類を変えることによって容易に調整することができる。接触角θは第1の部分21aでは10°程度以下であることが望ましく、第2の部分21bでは90°程度以上であることが望ましい。また、表面粗さが増加するにつれて、親水性表面では接触角θが小さくなり、疎水性表面では接触角θが増大するので、表面粗さを調整して親水性及び疎水性の程度を調整することも可能である。結露水の落下を促進するため、第2の部分21bに下向きに突き出す突起21cを設けてもよい。突起21cを設ける場合、第2の部分21bの撥水処理は省略することができる。
【0015】
除湿型放射空調システム1は、結露水を回収する結露水回収手段4を有している。本実施形態の結露水回収手段4は、第2の部分21bから間隔をおいて第2の部分21bの下方に位置する結露水の受け皿である。結露水は第2の部分21bから結露水回収手段4に落下する。図1(b)に示すように、結露水回収手段4の第2の方向yにおける両側端部は冷却除湿面21の第2の方向yにおける両側端部より外側にあるため、冷却除湿面21から落下する結露水のほぼ全量を回収することができる。結露水回収手段4に接続された排水配管5は、下方空間Rの壁12に沿って下方に延び、壁12を貫通して下方空間Rの外部に達している。図示は省略するが、排水配管5は壁12の内部を延びていてもよい。本実施形態では、冷却除湿面21と下方空間Rとの間には結露水回収手段4と排水配管5を除いて構造物が介在していない。つまり、特許文献1,2に開示されたドレン部材のような、冷却除湿面21より表面温度が高い構造物が冷却除湿面21と下方空間R(にいる人間)との間に介在しないため、冷却効果の低下が防止される。
【0016】
図3は第1の実施形態の変形例101’を示す図1(a)と同様の図である。冷却手段は、パネル102’の冷却除湿面21の裏面22と、パネル102’の上方にある天井11と、壁12とによって形成される屋根裏空間R1に冷風を導入する冷風供給設備33である。冷風供給設備33は冷却空気を生成する空調機34と、空調機34を屋根裏空間R1に接続するダクト35とを有している。ダクト35は屋根裏空間R1に冷風を導入するともに、冷風を屋根裏空間R1から吸い込み、空調機34に還流する。本変形例では、パネル102’の冷却除湿面21の裏面22が冷風で均一に冷却される結果、冷却除湿面21も均一に冷却され、下方空間Rに対する冷却効果がさらに均一化される。冷風が直接下方空間Rに流入しないように、パネル102’と壁12との間にシール材6を設けてもよい。本変形例のパネル102’は冷却管31を備えていないが、空調機34のバックアップとして図1,2に示す冷却管31を備えていてもよい。
【0017】
以下、さらに他の実施形態について述べる。以下の実施形態において特に説明されていない構成及び効果は第1の実施形態と同様である。
【0018】
(第2の実施形態)
図4(a)は本発明の第2の実施形態に係る除湿型放射空調システム201の正面図、図4(b)は図4(a)のA部拡大図である。本実施形態は結露水回収手段4’の構成を除き、第1の実施形態と同様の構成を有している。結露水回収手段4’は、冷却除湿面21の水下に設けられた第1の結露水溜め部41と、パネル202の冷却除湿面21の裏面22に設けられた第2の結露水溜め部42と、第1の結露水溜め部41を第2の結露水溜め部42と連結し、第1の結露水溜め部41に保持される結露水を第2の結露水溜め部42に毛細管力によって移送する複数の細管43と、冷却除湿面21の最下点から下方に延びる第1の縦板44と、裏面22の最下点から上方に延びる第2の縦板45と、を有する。第2の結露水溜め部42は排水配管5に接続されている。冷却除湿面21を水下に向かって膜状に流れる結露水は第1の結露水溜め部41に達する。第1の結露水溜め部41は、冷却除湿面21と第1の縦板44とから構成される第1のコーナー部41である。結露水は冷却除湿面21及び第1の縦板44との間に働く表面張力によって第1のコーナー部41に保持される。結露水は細管43を通って第2の結露水溜め部42に移送される。第2の結露水溜め部42は、パネル202の冷却除湿面21の裏面22と第2の縦板45とから構成される第2のコーナー部42である。第2のコーナー部42に保持される結露水は第2の縦板45を貫通する排水配管5によって第1の実施形態と同様にして排出される。第1のコーナー部41は結露水の保持性能が要求されるため、第1の実施形態と異なり、冷却除湿面21の水下とその近傍は親水性となっている。同様に、第1の縦板44の冷却除湿面21に面する面も親水性となっている。本実施形態は結露水の結露水回収手段4が不要であるため、下方空間Rから見た美観が向上するとともに、結露水が結露水回収手段4に落下する際の音が発生することもない。
【0019】
(第3の実施形態)
図5(a)は本発明の第3の実施形態に係る除湿型放射空調システム301の正面図、図5(b)は図5のA方向から見た除湿型放射空調システム301の上面図、図5(c)は図5(b)のB―B線に沿った断面図である。本実施形態は複数のパネル302a,302b,302cがルーバー状に配置されている点を除き、第1の実施形態と同様の構成を有している。複数のパネル302a,302b,302cは第1の方向xに互いに平行に延び、かつ第2の方向yに配列されている。また、複数のパネル302a,302b,302cは第3の方向z(鉛直方向)に見たときに互いに部分的に重なり合うルーバーをなしている。すなわち、各パネル2は図5(c)に示すように、第1の方向xから見たときも水平面に対して傾斜している。この結果、結露水は第1の方向xだけでなく第2の方向yにも移動し、図5(b)に示すように、第1の方向xに対し斜めの方向に移動する(矢印F)。結露水が第2の方向yにおける水下側に集中するため、図5(c)に示すように、パネル302a,302b,302cの第2の方向yにおける水下側の端部に結露水のガイド部7を設けてもよい。各パネル302a,302b,302cはそれぞれの冷却管31を備えている。結露水回収手段4は各パネル302a,302b,302cに共通に設けられているが、それぞれのパネル302a,302b,302c毎に個別の結露水回収手段4を設けることもできる。本実施形態は天井面がルーバー状の外観を備えるため、意匠性が向上する。
【0020】
図6は第3の実施形態の変形例に係る除湿型放射空調システム301’を示しており、図6(a)〜(c)はそれぞれ図5(a)〜(c)と対応している。本実施形態は複数のパネル302a’,302b’,302c’が鉛直方向に見たときに互いに離隔している(すなわち、ルーバーをなすように重なりあっていない)点を除き、図5に示す実施形態と同様の構成を有している。具体的には、パネル302a’,302b’,302c’の水平面に対する傾斜角θが、図5に示す実施形態と比べて大きくされている。傾斜角θは特に限定されないが、θ=90°であってもよい。すなわちパネル302a’,302b’,302c’は鉛直に設置されてもよい。本実施形態では傾斜角θを大きくとることができるため、結露水を重力によって冷却除湿面21に沿って迅速に下方に流動させ、結露水をより効率的に回収することができる。また、パネルの設置枚数の制約が小さいため、より多くのパネルを設置することにより冷却除湿効果を高めることができる。
【0021】
(第4の実施形態)
図7は本発明の第4の実施形態に係る除湿型放射空調システム401の正面図である。本実施形態では、複数のパネル、すなわち第1〜第3のパネル402a,402b,402cが第1の方向xに沿って直列に、かつ互いに部分的に重なり合うように配列されている。各パネル402a,402b,402cの水下は第1の実施形態と同様、親水性が低くされ、結露水が落下されやすくされている。各パネル402a,402b,402cの水下にはそれぞれ結露水の結露水回収手段4a,4b,4cが設けられ、結露水回収手段4a,4b,4cにはそれぞれ排水配管5a,5b,5cが接続されている。排水配管5a,5b,5cは下方空間Rを出る位置で1本の排水配管5dに合流している。互いに隣接する一方のパネル(例えば402a)の水下は他方のパネル(例えば402b)の水上の下方にある。従って、各パネル402a,402b,402cの重心は第3の方向z(鉛直方向)においてほぼ同じ高さにある。本実施形態は第1の実施形態と比較して、1枚のパネルを第1の方向xに分割したものであり、各パネル402a,402b,402cの水上と水下の高低差を抑えられるため、下方空間Rの室内高さを確保することが容易である。なお、本実施形態では3枚のパネル402a,402b,402cが第1の方向xに沿って直列に配列されているが、パネルの枚数(分割数)はこれに限定されず、任意の枚数のパネルを第1の方向xに沿って配列することができる。
【0022】
(第5の実施形態)
図8は本発明の第5の実施形態に係る除湿型放射空調システム501の正面図である。本実施形態においても第4の実施形態と同様、複数のパネル、すなわち第1〜第3のパネル502a,502b,502cが第1の方向xに沿って直列に、かつ互いに部分的に重なり合うように配列されている。第1のパネル502aは最も水上側にあり、結露水回収手段4及び排水配管5から最も離れている。第3のパネル502cは最も水下側にあり、結露水回収手段4及び排水配管5に最も近接している。本実施形態では第4の実施形態と異なり、互いに隣接する一方のパネル(例えば502a)の水下が他方のパネル(例えば502b)の水上の上方にある。このため、第1のパネル502aの冷却除湿面21に発生した結露水は第1のパネル502aの冷却除湿面21を水下に流れ、親水性の小さい第2の部分21b(図示せず)から隣接する第2のパネル502bの裏面22に落下し、第2のパネル502bの裏面22を水下に流れる。第2のパネル502bの裏面22を流れる結露水はさらに隣接する第3のパネル502cの裏面22に落下し、第3のパネル502cの裏面22を水下に流れ、水下で下側(冷却除湿面21)に回りこんで結露水回収手段4に回収される。本実施形態によれば、第1及び第2のパネル502a,502bで発生した結露水は隣接するパネルル502b,502cの裏面22に落下するため、結露水が下方空間Rに落下する可能性を抑制することができる。なお、隣接するパネル間の第3の方向zにおける間隔は結露水が通ることができる最小限の隙間でよい。
【0023】
(第6の実施形態)
図9(a)は本発明の第6の実施形態に係る除湿型放射空調システム601の正面図である。本実施形態では第1の方向xに沿って直列に配列された一対のパネル602a,602bが設けられている。第4及び第5の実施形態と同様、1枚のパネル602a,602bあたりの高低差を抑えられるため、下方空間Rの室内高さを確保することが容易である。また、本実施形態では一方のパネル602aの水下と他方のパネル602bの水下が互いに対向しており、一対のパネル602a,602bの水下の下方に一つの共通の結露水回収手段4が設けられている。従って、結露水回収手段4の数を削減することが可能である。なお、図9(b)に示す除湿型放射空調システムの変形例601’のように、第1の方向xに沿って直列に配列されたパネルの対602a(602a’),602b(602b’)を複数個直列に配列してもよい。この場合、1枚のパネル602a,602a’,602b,602b’あたりの高低差をさらに抑えられるため、下方空間Rの室内高さを確保することが一層容易である。
【0024】
(第7の実施形態)
図10(a)は本発明の第7の実施形態に係る除湿型放射空調システム701の正面図である。本実施形態では、第6の実施形態と同様、第1の方向xに沿って直列に配列された一対のパネル702a,702bが設けられている。第4〜第6の実施形態と同様、1枚のパネル702a,702bあたりの高低差を抑えられるため、下方空間Rの室内高さを確保することが容易である。また、本実施形態では一方のパネル702aの水上と他方のパネル702bの水上が互いに対向しており、一対のパネル702a,702bの水下の下方のそれぞれに結露水回収手段4が設けられている。なお、図10(b)に示す除湿型放射空調システムの変形例701’のように、第1の方向xに沿って直列に配列されたパネル702a(702a’),702b(702b’)の対を複数個直列に配列してもよい。この場合、1枚のパネル702a,702a’,702b,702b’あたりの高低差をさらに抑えられるため、下方空間Rの室内高さを確保することが一層容易である。第1の方向xに関し中央にあるパネル702a’,702bで発生した結露水は共通の結露水回収手段4で回収することができ、共通の結露水回収手段4は第1の方向xに関し両端にあるいずれかの排水配管5に排水配管5’を介して接続される。
【0025】
(第8の実施形態)
図11は本発明の第8の実施形態に係る除湿型放射空調システム801の正面図である。パネル2の冷却除湿面21には光触媒膜8が形成されている。光触媒膜8は例えば酸化チタン、酸化タングステンから形成される。光触媒膜8は冷却除湿面21への埃の吸着を防ぐ。窓開口14の近傍には自然光拡散照射手段9が設置されている。自然光拡散照射手段9の表面は光拡散効果の高い材質、例えばフッ素樹脂、アクリル樹脂からなる。自然光拡散照射手段9の表面に照射された自然光は反射拡散され、光触媒膜8が形成された冷却除湿面21に照射される。自然光の照射により冷却除湿面21の親水性が維持される。自然光が冷却除湿面21に均一に照射されるように、自然光拡散照射手段9は可動式であってもよい。例えば、自然光拡散照射手段9は太陽光の入射角度に応じて太陽光が冷却除湿面21に効率的に照射されるように、回動軸9aの周りを回動することができる。
【0026】
以上、本発明を様々な実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以上説明した実施形態は可能な範囲で様々に組み合わせることができる。例えば、第3の実施形態はパネルを第2の方向yに分割したものであり、第4〜第7の実施形態はパネルを第1の方向xに分割したものであるが、これらは組み合わせることが可能である。第3〜第7の実施形態のいずれにおいても、パネルをユニット化し、下方空間Rの大きさに合わせて必要な数のパネルを組み合わせることが可能である。しかし、第3の実施形態と第4〜第7の実施形態を組み合わせることで、小型化、モジュール化されたパネルを、下方空間Rの第1の方向xと第2の方向yの大きさに合わせて、第1の方向xと第2の方向yに必要な数だけ組み合わせて使うことができる。このようなモジュール化の手法は長方形以外の任意の平面形状の下方空間Rに有効である。
【符号の説明】
【0027】
101,101’,201,301,301’,401,501,601,601’,701,701’,801 除湿型放射空調システム
102 202,302a,302b,302c,302a’,302b’,302c’,402a,402b,402c,502a,502b,502c,602a,602a’,602b,602b’,702a,702a’,702b,702b’ パネル
11 天井
12 壁
13 床
14 窓開口
21 冷却除湿面
21a 第1の部分
21b 第2の部分
22 冷却除湿面の裏面
3 冷却手段
31 冷却管
33 冷風供給設備
4,4’,4a,4b,4c 結露水回収手段
5,5a,5b,5c,5d 排水配管
8 光触媒膜
9 自然光拡散照射手段
R 下方空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11