特許第6938458号(P6938458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938458
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20210909BHJP
【FI】
   A23L15/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-232289(P2018-232289)
(22)【出願日】2018年12月12日
(65)【公開番号】特開2020-92638(P2020-92638A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】502005512
【氏名又は名称】株式会社理想実業
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 正人
【審査官】 佐藤 巌
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04311089(US,A)
【文献】 特開昭52−079069(JP,A)
【文献】 特開昭58−047469(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00020011(EP,A3)
【文献】 特開昭47−001335(JP,A)
【文献】 実開昭51−008364(JP,U)
【文献】 特開昭55−009769(JP,A)
【文献】 特開2002−051738(JP,A)
【文献】 広辞苑,第5版,1998年 月 日,第1538、1868、1945、1965及び2629頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/00
A23L 17/10−17/50
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間内でゆで卵をその自重により一方向に転落させつつ該ゆで卵をその転落方向と交差する方向に掻き上げる回転ドラムと、
この回転ドラムを、その軸芯周りに回転させる回転駆動手段と、
前記回転ドラムの前記内部空間内に前記回転ドラムの始端部から終端部に亘って浮上した状態で設けられ、転落しつつ前記回転ドラムにより掻き上げられたゆで卵と衝突して当該ゆで卵の卵殻に罅裂を生じさせるための衝突部と、
前記回転ドラム内に水を供給する給水手段と、
を備えたことを特徴とするゆで卵用卵殻罅裂生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゆで卵用卵殻罅裂生成装置であって、
前記回転ドラムには、その内周面に、前記ゆで卵と干渉する干渉部が設けられたことを特徴とするゆで卵用卵殻罅裂生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置に係り、特に、卵白部が極めて柔らかい半熟のゆで卵の卵殻に罅裂を生成するのに適したゆで卵用卵殻罅裂生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゆで卵の殻を剥くにはまず卵殻に衝撃を与えて罅裂を生じさせなければならないが、そのための作業は、少量のゆで卵の場合手作業で対応できるものの大量の場合には機械に頼らざるを得ない。そこで、従来、例えば特許文献1〜3にみられるようなゆで卵の罅裂生成装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、2枚のリング板の外周部を円周方向に配置した多数本の棒材で連結することにより内側及び外側の各棒材ドラムA,Bを形成して、内側棒材ドラムAの外側に外側棒材ドラムBを同心であって、しかもその軸心を水平にして、互いに逆回転するように支承するとともに、内側及び外側の各棒材ドラムA,Bを構成している各棒材と、外側棒材ドラムBに設けられた一対の区画リングとによって、外側棒材ドラムBの外周部に多数のゆで卵収容室をその円周方向に沿って形成したゆで卵の自動から割装置が開示されている。この装置では、各卵収容室にゆで卵を投入収容し、各棒材ドラムA,Bの直上に配置したシャワー装置から水シャワーを噴射させながら、ゆで卵を円周方向に移動させる間に、このゆで卵を前記各棒材に衝突させて、から割りを行うようにしている。
【0004】
特許文献2には、特許文献1に開示された装置の改良型であって、内側棒材ドラムAの棒材を、ストレート丸棒と、凹部と凸部が交互に設けられた変形丸棒とで構成し、ゆで卵収容室に収容されたゆで卵を回転させながら、前記ストレート丸棒と衝突させてから割りを行うとともに、前記変形丸棒に接触させることにより、該ゆで卵の収容位置や回転姿勢を不規則に変化させるようにしたゆで卵の自動から割装置が開示されている。この装置によれば、ゆで卵収容室に収容されているゆで卵を、内側棒材ドラムの棒材に設けられた凹部又は凸部に接触させることにより、その回転姿勢を不規則に変化させることができるため、ゆで卵の卵白部を損傷させることなく、ゆで卵の全体に亘ってから割りを行うことができる。この結果、次工程におけるから剥きが容易になり、全体の工数が低減される、とされている。
【0005】
特許文献3には、容体部を金網で囲ぎょうし、長手方向に傾斜させて設けた多角筒状の回転容体からなり、その容体の始端部に供給口を終端部に取り出し口を設けたゆで卵のヒビ入れ装置が開示されている。この装置によれば、容体部を囲ぎょうした金網にゆで卵が転動しながら衝突し、衝突の都度ゆで卵は衝撃を受けることにより行われるが、金網はクッション作用があるため、その衝撃を和らげることができることから、ヒビ入れ作業中に無理な衝撃によりゆで卵の卵白部や卵黄部が崩れるおそれがなく、歩留まりよく作業をおこなうことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−108208号公報
【特許文献2】特許第3683874号公報公報
【特許文献3】実公昭57−26639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記各従来の装置にあっては、それぞれ次のような問題があった。
【0008】
特許文献1及び2に開示された装置にあっては、多数本の棒材を用いた二重構造のドラムを採用していることから、装置を構成する部品点数が極めて多く、また、構造が複雑であるため、装置の製造コストが嵩むとともに、飛び散った卵殻の破片の清掃がし辛くメンテナンスが煩瑣であるうえ、小型化が困難であるといった問題があった。
【0009】
一方、特許文献3に開示された装置にあっては、金網を多角筒状にした容体部をその軸芯周りに回転させるだけのものであるため、構造がいたってシンプルであり、特許文献1及び2における上記したような問題は認められない。しかし、ゆで卵をただ単に容体部内で転動させるだけのものであることから、ゆで卵はそれ自体の形状に起因して容体部内を主に長軸周りに転動しがち、つまりゆで卵の回転姿勢に不規則性が生じないこととなり、この結果ゆで卵の鋭端部及び鈍端部に罅裂が生成されにくいうえ、卵殻に罅裂が生成される際に卵殻とその内側の卵殻膜との間に水分を浸潤させると後の殻剥き作業が極めて容易になるところ、卵殻の罅裂の生成が乾燥状態で行われるため、殻剥き作業がし辛いといった問題があった。このことは、殻剥きの際に卵白部を傷付ける原因となっていた。さらに、容体部が金網で構成されているため、特許文献1及び特許文献2と同様、飛び散った卵殻の破片の清掃がし辛くメンテナンスが煩瑣であるといった問題もあった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、卵白部がしっかりしている固茹で卵は勿論のこと、固茹で卵に比べて卵白部が非常に柔らかく傷付き易い半熟卵に対しても、卵白部を傷付けることなく卵殻の全周面に亘って満遍に罅裂を生成することができるとともに、後の殻剥き作業も極めて容易に行えるうえ、構造がシンプルで、製造コストの低減化、メンテナンスの容易化及び小型化をも図ることのできるゆで卵用卵殻罅裂生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のゆで卵用卵殻罅裂生成装置は、内部空間内でゆで卵をその自重により一方向に転落させつつ該ゆで卵をその転落方向と交差する方向に掻き上げる回転ドラムと、この回転ドラムを、その軸芯周りに回転させる回転駆動手段と、前記回転ドラムの前記内部空間内に前記回転ドラムの始端部から終端部に亘って浮上した状態で設けられ、転落しつつ前記回転ドラムにより掻き上げられたゆで卵と衝突して当該ゆで卵の卵殻に罅裂を生じさせるための衝突部と、前記回転ドラム内に水を供給する給水手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
この特定事項により、卵白部がしっかりしている固茹で卵は勿論のこと、固茹で卵に比べて卵白部が非常に柔らかく傷付き易い半熟卵でも、卵白部が傷付くことなく卵殻の全周面に亘って満遍に罅裂が生成される。また、回転ドラム内に供給された水が、回転ドラム内で転動する途中で何度も回転ドラムの内周面に向かって落下するゆで卵に対して必要以上の衝撃が卵殻に加わらないようクッションの役目を果たすことになるため、卵白部に傷が付くのが防止される。それと同時に、その水は、卵殻に罅裂が生成される際に卵殻とその内側の卵殻膜との間に浸潤するため、後の殻剥き作業が極めて容易になる。さらに、前記従来の装置(特許文献1及び特許文献2に開示された装置)に比べて、構成要素が圧倒的に少ないため、製造コストの低減化、メンテナンスの容易化及び小型化が図れる。また、飛び散った卵殻の破片は回転ドラムと衝突部の各表面に付着するだけであるため、それらに洗浄水を噴射するだけで卵殻の破片を除去することができる。
【0013】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記回転ドラムの内周面に、前記ゆで卵と干渉する干渉部が設けられていてもよい。
【0014】
この特定事項により、回転ドラム内においてゆで卵が確実に掻き上げられる。
【0015】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記干渉部は、前記ゆで卵の転落方向に沿う複数本の突条で構成されていてもよい。
【0016】
この特定事項により、掻き上げられたゆで卵が回転ドラム内を自重で転落していく間中突条の頂部と衝突するので、ゆで卵の卵殻に罅裂を確実に生成することができる。
【0017】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記突条は、その前端部が後端部より前記回転ドラムの回転方向側へ偏位されることにより前記ゆで卵の転落方向に対し斜設されていてもよい。
【0018】
この特定事項により、ゆで卵は掻き上げられる際に複雑に動かされるため、ゆで卵の卵殻の全周面に亘って罅裂が生成される。
【0019】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記突条は、前記回転ドラムの始端部から終端部に亘る長尺突条と、この長尺突条よりも短い短尺突条とから構成され、これら長尺突条と短尺突条とが交互に前記回転ドラムの始端部側に配設されていてもよい。
【0020】
この特定事項により、回転ドラム内の突条の本数が回転ドラムの始端部側で多く、終端部側で少ない構成となることから、ゆで卵が突条と衝突する単位時間当たりの回数が回転ドラムの始端部側で多く、終端部側で少なくなるため、回転ドラムの始端部側で短時間のうちにゆで卵の卵殻に罅裂を生成することができ、一方、回転ドラムの終端部側では突条との衝突が始端部側に比べて減少するので、始端部側で既に多くの罅裂が生成されたゆで卵の掻き上げ度合いが弱まるとともにゆで卵に対する衝撃が和らげられる。この結果、より一層卵白部に傷が付くのが防止される。
【0021】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記衝突部は、その表面が凹凸面とされていてもよい。
【0022】
この特定事項により、ゆで卵は衝突部ともその凸部分で衝突することになるので、卵殻に罅裂が早く生成される。
【0023】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記凹凸面は、前記衝突部の長手方向に沿う複数本の突条から構成されていてもよい。
【0024】
この特定事項により、掻き上げられたゆで卵が回転ドラム内を自重で転落していく間中突条の頂部と衝突するので、ゆで卵の卵殻に罅裂を確実に生成することができる。
【0025】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記衝突部は、その後端部が前端部より前記回転ドラムの回転方向側へ偏位され、以て、該衝突部と前記回転ドラムの内周面との間に画成された前記ゆで卵の転落通路が前記回転ドラムの終端部に向かうにしたがって漸次幅狭とされていてもよい。
【0026】
この特定事項により、ゆで卵は回転ドラムの始端部側では卵の短軸周りに転動しがちとなることから、卵の鋭端部と鈍端部とが胴部よりもそれぞれ回転ドラムと衝突部とに衝突する機会が増えるため、卵の胴部周面だけでなく鋭端部と鈍端部にも罅裂が生成される。また、回転ドラムの終端部側に向かうにしたがって転落通路が漸次狭くなることから、ゆで卵は卵の長軸周りに転動しがちとなるため、ここに達するまでに略全周面に亘って罅裂が生成されるとともに卵殻と卵膜との間に水が浸潤して卵殻が剥がれ易くなったゆで卵は、長軸周りに転動することにより回転ドラムと衝突部とによって卵殻がすべて剥がされる場合が生じることになる。この結果、後工程である殻剥き作業における作業量を軽減することが可能となる。
【0027】
また、上記ゆで卵用卵殻罅裂生成装置にあっては、前記衝突部の上縁部に、前記ゆで卵が転落中に該衝突部の背後に跳び出すのを防止する跳出防止部が設けられていてもよい。
【0028】
この特定事項により、ゆで卵が回転ドラム内を転落中に大きく飛び跳ねたとしても、跳出防止部によりゆで卵が衝突部の背後に飛び込むのが防止される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、卵白部がしっかりしている固茹で卵は勿論のこと、固茹で卵に比べて卵白部が非常に柔らかく傷付き易い半熟卵に対しても、卵白部を傷付けることなく卵殻の全周面に亘って満遍に罅裂を生成することができるとともに、後の殻剥き作業も極めて容易に行えるうえ、構造がシンプルで、製造コストの低減化、メンテナンスの容易化及び小型化をも図ることのできるゆで卵用卵殻罅裂生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態にかかるゆで卵用卵殻罅裂生成装置を概略的に示す回転ドラムを破断した状態の平面図である。
図2】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の概略側面図である。
図3】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置を回転ドラムの始端部側から視た概略部分斜視図である。
図4】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の回転ドラムの突条(干渉部)を説明するための概念図。
図5】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置を回転ドラムの始端部側から視た概略正面図である。なお、突条の偏位形態の図示は省略している。
図6】ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の変形例を示し、回転ドラムの始端部側から視た概略正面図である。なお、突条の偏位形態の図示は省略している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態にかかるゆで卵用卵殻罅裂生成装置を概略的に示す回転ドラムを破断した状態の平面図、図2は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の概略側面図、図3は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置を回転ドラムの始端部側から視た概略部分斜視図、図4は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の回転ドラムの突条(干渉部)を説明するための概念図、図5は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置を回転ドラムの始端部側から視た概略正面図である。
【0033】
<装置の全体構成>
本発明に係るゆで卵用卵殻罅裂生成装置1は、図1乃至図3に示すように、内部空間内でゆで卵Eをその自重により一方向に転落させつつゆで卵Eをその転落方向と交差する方向に掻き上げる回転ドラム10と、この回転ドラム10を、その軸芯周りに回転させる回転駆動手段20と、回転ドラム10の内部空間内にゆで卵Eの転落方向に沿って設けられ、転落しつつ回転ドラム10により掻き上げられたゆで卵と衝突する衝突部30と、回転ドラム10内に水Wを供給する給水手段40と、を備えている。また、本実施形態では、回転ドラム10の内周面に、図1乃至図3に示すように、ゆで卵Eと干渉する干渉部50が設けられている。さらに、図1及び図2に示すように、回転ドラム10の始端部11の外側に、該始端部11から回転ドラム10の内部空間内にゆで卵Eを誘導するための、例えば樋状の誘導路60が、図示しない支持台上に設けられている。また、回転ドラム10の終端部12の外側下方には、該終端部12から次々と転落してくるゆで卵Eを受けるための受トレイ70が、図示しない支持台上に設けられている。ここで受トレイ70には予め水が張られており、回転ドラム10の終端部12から転落してくるゆで卵Eが直接受トレイ70の底面に衝突して卵白部が割れたりするのを防止している。
【0034】
<各部の構成>
以下、上記の各構成要素について詳述する。
【0035】
―回転ドラム―
回転ドラム10は、耐食性に優れた金属製、又は、例えば塩化ビニル樹脂などの合成樹脂製の円筒体から構成されている。本実施形態では、回転ドラム10の全長は約1mとされ、その内径は、回転ドラム10の回転速度及びゆで卵のサイズにもよるが、回転時にゆで卵Eが回転ドラム10の内周面と連れ周りしない程度の寸法とされ、具体的には約15cm〜20cmが好ましい。なお、回転ドラム10の全長及び内径は、上記した例に限定されない。
【0036】
上記回転ドラム10は、図2に示すように、基台80上に横臥状態で、且つ、始端部11側が終端部12側よりも若干高いレベルに位置するように載設されている。具体的には、回転ドラム10の全長が1mの場合で、始端部11と終端部12とのレベル差が約15mmとされている。つまり、回転ドラム10は基台80上に、終端部12側に向かって下り勾配となるように横臥状態で載設されている。これにより、ゆで卵Eの自重による転落速度は、回転ドラム10の斜度に左右されることとなる。この回転ドラム10の斜度は、実際には、回転ドラム10の全長、内径、回転速度、及び回転ドラム10の内周面に設けられた後述する干渉部50の態様、並びに、衝突部30の態様などを考慮して、ゆで卵Eの全周面に罅裂が生成され且つ卵白部に傷が付かないような転落速度となるように設定される。
【0037】
また、回転ドラム10は、基台80上において軸芯周りに回転可能に載設されている。本実施形態では、図1図2及び図5に示すように、回転ドラム10は、その終端部12寄りの外周面と接する一対の支持ローラ29(図2では一方の支持ローラ29のみ図示)と、回転ドラム10の始端部11の外周面と接する駆動ローラ27と、回転ドラム10の始端部11の外周縁に設けられたフランジ部13を挟持する従動ローラ対28とを介して基台80上に載設されている。ここで、回転ドラム10は、従動ローラ対28でフランジ部13が挟持されていることにより、終端部12側へずれないように図られている。
【0038】
―回転駆動手段―
回転駆動手段20は、回転ドラム10によりゆで卵Eを掻き上げて衝突部30に衝突させるべく回転ドラム10を一方向、具体的には、回転ドラム10をその始端部11からその軸芯方向に視て衝突部30が3時の方向に向いている場合反時計回り(図3及び図5の矢符R参照)に回転させるものである。図1図2及び図5に示すように、本実施形態では、基台80上において回転ドラム10の始端部11寄りに設置された駆動モータ21と、この駆動モータ21の駆動軸22に取り付けられた駆動プーリ23と、基台80上に駆動プーリ23と対設された従動プーリ24と、これら駆動プーリ23と従動プーリ24との間に架設された伝達ベルト25と、従動プーリ24と同軸上に回動軸26を介して基台80上に設けられるとともに回転ドラム10の始端部11寄りの外周面に圧接された駆動ローラ27と、前記従動ローラ対28と、前記支持ローラ29と、から構成されている。駆動モータ21は、図示しない制御手段により起動及び停止、並びに、その回転速度が調節できるようになっている。なお、回転駆動手段20の構成は、回転ドラム10を少なくとも一方向に安定して所定の速度で回転させることができればよく、上記したものに限定されない。本実施形態では、回転速度を約1200回/分としているが、ゆで卵Eの卵白部に傷を付けることなく卵殻の全周面に罅裂を生成することができれば、特に回転速度はこれに限定されない。
【0039】
―衝突部―
衝突部30は、図1乃至図3及び図5に示すように、回転ドラム10の内部空間内を転落しつつ回転ドラム10により掻き上げられたゆで卵Eと衝突してゆで卵Eの卵殻に罅裂を生じさせるものである。この衝突部30は、回転ドラム10の内部空間内に挿設された支持杆33により回転ドラム10とは接触しないように支持されている。すなわち、衝突部30は、回転ドラム10の外方において図示しない架台に両端部がそれぞれ取り付けられた支持杆33により回転ドラム10の内部空間内に浮上した状態で設置されている。
【0040】
このようになる衝突部30は、本実施形態では、円弧状の長尺パネルで構成されており、凸面34側がゆで卵Eの転落通路P側に向くように支持杆33に取り付けられている。また、この衝突部30は、図1に示すように、その後端部32が前端部31よりも回転ドラム10の回転方向側へ偏位されている。これにより、衝突部30と回転ドラム10の内周面との間に画成されたゆで卵Eの転落通路Pが回転ドラム10の終端部12に向かうにしたがって漸次幅狭とされている。このように転落通路Pの幅を回転ドラム10の終端部12に向かうにしたがって漸次狭くした場合、ゆで卵Eは転落通路Pの幅が広い回転ドラム10の始端部11側では卵の短軸周りに転動しがちとなることから、卵の鋭端部と鈍端部とが胴部よりもそれぞれ回転ドラム10と衝突部30とに衝突する機会が増えるため、卵の胴部周面だけでなく鋭端部と鈍端部にも罅裂が生成される。また、回転ドラム10の終端部12側に向かうにしたがって転落通路Pが漸次狭くなることから、ゆで卵Eは卵の長軸周りに転動しがちとなるため、ここに達するまでに略全周面に亘って罅裂が生成されるとともに卵殻と卵膜との間に水が浸潤して卵殻が剥がれ易くなったゆで卵Eは、長軸周りに転動することにより回転ドラム10と衝突部30とによって卵殻がすべて剥がされる場合が生じることになる。この結果、後工程である殻剥き作業における作業量を軽減することが可能となる。
【0041】
また、衝突部30は、その表面が凹凸面とされていてもよく、その場合、ゆで卵Eは衝突部30の凸部分で衝突することになるので、卵殻に罅裂が早く生成される。本実施形態では、その凹凸面は、図3及び図5に示すように、衝突部30の長手方向に沿う複数本の突条35から構成している。なお、図示例では突条35の本数は4本とされているが、これに限るものではない。このように、衝突部30の表面を複数本の突条35により凹凸面とした場合、回転ドラム10により掻き上げられたゆで卵Eが転落通路Pを自重で転落していく間中突条35の頂部と衝突するので、ゆで卵Eの卵殻に罅裂を確実に生成することができる。
【0042】
このようになる衝突部30及び突条35は、耐食性に優れた金属製、又は、合成樹脂製のいずれであってもよい。なお、衝突部30の凹凸面は、上記したような突条35以外にも、例えば、表面が曲面とされた多数個の凸部で構成されていてもよい。
【0043】
―給水手段―
給水手段40は、回転ドラム10内で転動する途中で何度も転落通路Pに落下するゆで卵Eに対して必要以上の衝撃が卵殻に加わらないようクッションの役目を果たす水Wを供給するとともに、回転ドラム10の内部空間内において罅裂が生成されたゆで卵Eの卵殻と卵膜との間に水を浸潤させ、これにより卵殻が剥がれ易くなるようにするためのものである。この給水手段40は、本実施形態では、図示しないポンプと、このポンプから図示しないパイプを介して送水された水を回転ドラム10の始端部11の内部空間に吐出する吐出管41とから構成されている。吐出管41は、その吐出口42が回転ドラム10の始端部11の内部空間に臨むように、ゆで卵Eの誘導路60の上方に配設されている。なお、本実施形態では、吐出管41により水Wを回転ドラム10の始端部11から回転ドラム10内に供給しているが、給水手段はこれに限らず、例えば、衝突部30又は転落通路Pの上方に位置するように回転ドラム10内にその全長に亘ってシャワーパイプを挿設し、このシャワーパイプからゆで卵Eの転落通路Pに向けてシャワー状の水を噴射するようにしてもよい。この場合、噴射の強度をうまく調整することにより、卵殻と卵膜の間に水を浸潤させるだけでなく、該水の噴射によって殻を剥くことも望める。
【0044】
―干渉部―
干渉部50は、回転ドラム10の回転によるゆで卵Eの掻き上げが確実に行われるようにするものである。本実施形態では、干渉部50は、図1乃至図5に示すように、回転ドラム10の内周面にゆで卵Eの転落方向に沿って設けられた複数本の突条51で構成されている。そして、これら突条51は、その前端部52が後端部53より回転ドラム10の回転方向側へ偏位されることによりゆで卵Eの転落方向に対し斜設されている。このように突条51が斜設されていると、ゆで卵Eは掻き上げられる際に複雑に動かされる(卵の長軸周りの回転と短軸周りの回転とがランダムに生じる)ため、ゆで卵Eの卵殻の全周面に亘って罅裂が生成される。
【0045】
さらに、これら突条51は、図4に示すように、回転ドラム10の始端部11から終端部12に亘る長尺突条51Lと、この長尺突条51Lよりも短い短尺突条51Sとから構成されており、これら長尺突条51Lと短尺突条51Sとが交互に回転ドラム10の始端部11側に配設されている。このように、回転ドラム10内の突条51の本数が回転ドラム10の始端部11側で多く、終端部12側で少ない構成とした場合、ゆで卵Eが突条51と衝突する単位時間当たりの回数が回転ドラム10の始端部11側で多く、終端部12側で少なくなるため、回転ドラム10の始端部11側で短時間のうちにゆで卵Eの卵殻に罅裂を生成することができ、一方、回転ドラム10の終端部12側では突条51との衝突が始端部11側に比べて減少するので、始端部11側で既に多くの罅裂が生成されたゆで卵Eに対する衝撃が和らげられ、この結果、より一層卵白部に傷が付くのが防止される。
【0046】
なお、上記突条51の本数や斜設の具合などは、回転ドラム10の長さや内径、回転速度などに応じて卵白部を傷付けることなく最もよく卵殻に罅裂を生成することができるように調整すればよい。また、干渉部50は、上記したような突条51に限らず、例えば、表面が曲面とされた多数個の凸部で構成されていてもよい。さらに、回転ドラム10だけでゆで卵Eを充分に掻き上げることができ且つ卵殻に衝撃を与えることができる場合は、干渉部50を設けなくともよい。
【0047】
<装置の変形例>
図6は、ゆで卵用卵殻罅裂生成装置の変形例を示す概略正面図である。ここでは、衝突部30の上縁部に、ゆで卵Eが転落中に衝突部30の背後に跳び出すのを防止する跳出防止部90が設けられている。この跳出防止部90を設けることにより、ゆで卵Eが回転ドラム10内を転落中に大きく飛び跳ねたとしても、跳出防止部90によりゆで卵Eが衝突部30の背後に飛び込むのが防止され、歩留まりの低下を防止することができる。この図示例では、衝突部30を構成する円弧状の長尺パネルと同様の長尺パネルを、その凸面の向かう方向を衝突部30のそれと反対方向として、凹面91が転落通路P側にくるように配している。なお、この跳出防止部90の構成は、ゆで卵Eが転落通路Pから衝突部30の背後に飛び出すのを防止できれば、上記した構成に限るものではない。
【0048】
<装置の動作>
まず、駆動モータ21を起動し、回転ドラム10を回転させるとともに、給水手段40により回転ドラム内に水を供給する。
【0049】
次に、処理すべき多数個のゆで卵Eを誘導路60上に一列に並べつつ、順次回転ドラム10の内部空間内に転がし入れていく。
【0050】
すると、ゆで卵Eは、回転する回転ドラム10の干渉部50によって掻き上げられ、衝突部30に衝突し、卵殻に罅裂が生じる。衝突部30に衝突したゆで卵Eはその反動で回転ドラム10の内周面及び干渉部50に衝突し、このような動きが繰り返されることによって卵殻の罅裂が成長していく、また、給水手段40から供給された水が回転ドラム10内においてゆで卵Eに対しクッションの役目を果たすので、ゆで卵Eの卵殻には必要以上の衝撃は加わらず、この結果卵白部に傷が付く虞がない。
【0051】
ここで、衝突部30が、その後端部32が前端部31よりも回転ドラム10の回転方向側へ偏位され、これにより、ゆで卵Eの転落通路Pが回転ドラム10の終端部12に向かうにしたがって漸次幅狭とされている場合は、ゆで卵Eは転落通路Pの幅が広い回転ドラム10の始端部11側では卵の短軸周りに転動しがちとなることから、卵の鋭端部と鈍端部とが胴部よりもそれぞれ回転ドラム10と衝突部30とに衝突する機会が増えるため、卵の胴部周面だけでなく鋭端部と鈍端部にも罅裂が生成される。また、回転ドラム10の終端部12側に向かうにしたがって転落通路Pが漸次狭くなることから、ゆで卵Eは卵の長軸周りに転動しがちとなるため、ここに達するまでに略全周面に亘って罅裂が生成されるとともに卵殻と卵膜との間に水が浸潤して卵殻が剥がれ易くなったゆで卵Eは、長軸周りに転動することにより回転ドラム10と衝突部30とによって卵殻がすべて剥がされる場合が生じることになる。この結果、後工程である殻剥き作業における作業量を軽減することが可能となる。
【0052】
上記のようにして卵殻の全周面に罅裂が生成したゆで卵Eは、回転ドラム10の終端部12から受トレイ70内に落下する。その際、受トレイ70内には水が張られているので、水がクッションとなってゆで卵Eの卵白部が傷付くことがない。なお、受トレイ70には回転ドラム10から給水手段40の水が流入し続けるが、その分の水は受トレイ70からは適宜オーバーフローして、受トレイ70内には常に一定量の水が貯溜されることとなる。
【0053】
上記のようになるゆで卵用卵殻罅裂生成装置は、卵白部がしっかりしている固茹で卵は勿論のこと、固茹で卵に比べて卵白部が非常に柔らかく傷付き易い半熟卵でも、卵白部が傷付くことなく卵殻の全周面に亘って満遍に罅裂を生成させることができる。また、回転ドラム10内に供給された水が、卵殻に罅裂が生成される際に卵殻とその内側の卵殻膜との間に浸潤するため、後の殻剥き作業が極めて容易になる。さらに、前記従来の装置(特許文献1及び特許文献2に開示された装置)に比べて、構成要素が圧倒的に少ないため、製造コストの低減化、メンテナンスの容易化及び小型化が図れる。また、飛び散った卵殻の破片は回転ドラム10と衝突部30の各表面に付着するだけであるため、それらに洗浄水を噴射するだけで卵殻の破片を除去することができ、常に装置を清潔に保つことができる。
【0054】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によって示すものであって、明細書本文及び図面の記載にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ゆで卵用卵殻罅裂生成装置
10 回転ドラム
20 回転駆動手段
30 衝突部
35 突条
40 給水手段
50 干渉部
51 突条
E ゆで卵
P 転落通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6