(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板が、第1の基板であり、かつグラフェン層を前記第1の基板上に形成することが、前記グラフェン層を第2の基板から前記第1の基板に転写することを含む、請求項2に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
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図1A】グラフェンベースの層転写プロセスを使用して半導体デバイスを作製する方法を示す図である。
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図1B】グラフェンベースの層転写プロセスを使用して半導体デバイスを作製する方法を示す図である。
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図1C】グラフェンベースの層転写プロセスを使用して半導体デバイスを作製する方法を示す図である。
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図1D】グラフェンベースの層転写プロセスを使用して半導体デバイスを作製する方法を示す図である。
【
図2】
図1A〜1Dに示されるグラフェンベースの技法を使用してデバイスを作製するために使用することができる材料、ならびにこれらの材料の格子定数及び格子不整合を示すグラフである。
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図3A】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図3B】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図3C】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図3D】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図3E】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図3F】ストレッサ層及びテープを使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図4A】グラフェン層の厚さ及び下地基板がグラフェン層上のデバイス層の成長に及ぼす影響を示す図である。
【
図4B】グラフェン層の厚さ及び下地基板がグラフェン層上のデバイス層の成長に及ぼす影響を示す図である。
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図5A】薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法を示す図である。
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図5B】薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法を示す図である。
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図5C】薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法を示す図である。
【
図5D】薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法を示す図である。
【
図5E】薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法を示す図である。
【
図6A】SiO
2基板上に配置されたグラフェン上で成長させたGaNの高分解能X線回折(HRXRD)スキャンを示す図である。
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図6B】SiC基板上に配置されたグラフェン上で成長させたGaNのHRXRDスキャンを示す図である。
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図7A】異なる厚さのグラフェン層を使用する、グラフェンベースの作製技法の3つの構成を示す図である。
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図7B】異なる厚さのグラフェン層を使用する、グラフェンベースの作製技法の3つの構成を示す図である。
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図7C】異なる厚さのグラフェン層を使用する、グラフェンベースの作製技法の3つの構成を示す図である。
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図8A】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8B】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8C】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8D】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8E】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8F】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8G】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図8H】
図7Cに示す構成に相当する、多孔質グラフェンを使用するグラフェンベースの層作製及び転写方法を示す図である。
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図9A】損傷させたグラフェン上で成長させたGeエピ層の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
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図9B】損傷させたグラフェン上で成長させたGaAsエピ層の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
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図10A】
図9Aに示されるGeエピ層の、基板から剥離した後のSEM画像である。
【
図10B】
図9Bに示されるGaAsエピ層の、基板から剥離した後のSEM画像である。
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図11A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図11B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図11C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
【
図11D】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図11E】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図11F】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図11G】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
【
図11H】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して発光ダイオードを作製する方法を示す図である。
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図12A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
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図12B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
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図12C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
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図12D】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
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図12E】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
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図12F】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図12G】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図13A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図13B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図13C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図13D】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図13E】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法を示す図である。
【
図14A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してトランジスタを作製する方法を示す図である。
【
図14B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してトランジスタを作製する方法を示す図である。
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図14C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してトランジスタを作製する方法を示す図である。
【
図15A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図15B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図15C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図15D】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図15E】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図15F】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してヘテロ集積化する方法を示す図である。
【
図16A】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【
図16B】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【
図16C】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【
図16D】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【
図16E】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【
図16F】グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、III−Vデバイスを作製するためのプラットフォームを調製する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上で述べたように、層転写プロセスにおいて、基板の再利用性、剥離後処理の最低限の必要性、高速な剥離速度、剥離界面の正確な制御、及び広範なデバイス材料に対する普遍性を有することが望ましいことであり得る。従来の層転写プロセスは、所望の性質の幾つかを示すことができる。例えば、層の剥離は、機械的リフトオフの方がケミカルまたはオプティカルリフトオフよりはるかに速く、それに対して剥離位置はケミカル及びオプティカルリフトオフの方が良く制御することができる。しかし、従来の層転写方法は、層の剥離後に粗面が形成され、それによって基板の再利用性が制限されるという問題を抱えている。実際に、従来の層転写方法では基板の表面を再生するための加工費は典型的には基板のコストを上回っているので、製造における実用的な適用は困難であり得る。加えて、従来の各方法は、通常、限られた数の特定の材料に対して(例えば、ケミカルリフトオフは、格子がGaAsのものと近いIII−V材料に対して、また、オプティカルリフトオフは、透明な基板上で成長させることができる材料に対して)働く。したがって、これらの方法を汎用的にすることも困難である。
【0021】
従来の層転写方法の欠点に対処するために、本明細書に述べるシステム及び方法は、グラフェンベースの層転写(GBLT)手法を採用してデバイスを作製する。この手法では、機能デバイスはグラフェン層上で作製され、それは次に機能デバイス層に格子整合した基板上に配置される。一例では、グラフェン層は、格子整合した基板上に直接堆積される。別の例では、グラフェン層は、格子整合した基板に別の基板から転写される。作製された機能デバイスは、次いで、格子整合した基板から、例えば機能デバイスに付着させたストレッサを介して、取り出すことができる。
【0022】
このGBLT手法では、グラフェンは、デバイス層を成長させるための再利用可能で普遍的なプラットフォームとしての機能を果たし、また、グラフェン表面での高速で正確な、かつ繰り返し可能な剥離を可能にする剥離層としての機能も果たす。従来の方法と比較して、GBLTには幾つかの利点がある。第1に、グラフェンは結晶膜であるため、それは、エピタキシャルなオーバー層を成長させるのに適した基板である。第2に、他の材料とのグラフェンの弱い相互作用は、エピタキシャル成長の格子不整合則を実質的に緩和することができるので、潜在的にほとんどの半導体膜を低欠陥密度で成長させることができる。第3に、グラフェン基板上で成長させたエピ層(例えば、機能デバイス)は、グラフェンのファンデルワールス相互作用が弱いために基板から容易かつ正確に剥離させることができるので、剥離後に剥離表面の再状態調整をすることなく、エピ層の機械的剥離を迅速に行うことができる。第4に、グラフェンの機械的堅牢性によって、それを複数の成長/剥離サイクルに最大限再利用性することができる。
【0023】
一般的な材料系にGBLTを実装すれば、科学界と産業界の両方に相当な衝撃を与えることができる。何故なら、GBLTは、現在の半導体加工に使用されている高価なミリメートル厚の単結晶ウェハを用いることなくデバイスを作製する潜在力を有しているからである。さらに、追加的な柔軟な機能のために機能デバイス全体をグラフェン層から転写することができる。
【0024】
図1A〜1Dは、グラフェンをプラットフォームとして使用してデバイス層を作製する方法100を示している。
図1Aに示すように、グラフェン層120は、Si基板、SiC基板、または銅箔などの第1の基板110上に作製される。作製されたグラフェン層120は、
図1Bに示すように、次いで第1の基板110から取り出される。取り出されたグラフェン層120は、
図1Cに示すように、次いでGe基板などの第2の基板130上に配置される。
図1Dは、エピ層140(例えば、高い電気的及び光学的なデバイス性能を有するための単結晶膜)が、次いでグラフェン層120上に作製されることを示している。エピ層140は、本出願ではデバイス層または機能層とも呼ばれる。
【0025】
グラフェン層120は、第1の基板110上に様々な方法を通して作製することができる。一例では、グラフェン層120は、単結晶方位を有するエピタキシャルグラフェンを含むことができ、基板110は、シリコン表面を有する(0001)4H−SiCウェハを含むことができる。グラフェン層120の作製は、多段階のアニーリングステップを含むことができる。第1のアニーリングステップは、表面エッチング及びビシナル化(vicinalization)のためにH
2ガス中で実施することができ、第2のアニーリングステップは、高温(例えば、約1,575℃)での黒鉛化のためにAr中で実施することができる。
【0026】
別の例では、グラフェン層120は、第1の基板110上に化学蒸着(CVD)プロセスを通して成長させることができる。基板110は、ニッケル基板または銅基板を含むことができる。あるいは、基板100は、絶縁基板であるSiO
2、HfO
2、Al
2O
3、Si
3N
4、及び実質的にCVDによる高温に適合性のある任意の他の平面材料を含むことができる。
【0027】
さらに別の例では、第1の基板110は、グラフェン層120を保持することができる任意の基板であることができ、作製は、機械的剥脱プロセスを含むことができる。この例では、第1の基板110は、グラフェン層120の一時的なホルダーとして機能することができる。
【0028】
様々な方法を使用して、グラフェン層120を第1の基板110から第2の基板に転写することもできる。一例では、キャリア膜をグラフェン層120に付着させることができる。キャリア膜は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)の厚膜または熱剥離テープを含むことができ、付着は、スピンコーティングプロセスを通して実現することができる。キャリア膜とグラフェン層120との組み合わせを第2の基板130上に配置した後、キャリア膜を溶解させて(例えば、アセトン中に)、グラフェン層120上にエピ層140をさらに作製することができる。
【0029】
別の例では、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのエラストマー材料を含むスタンプ層をグラフェン層120に付着させることができ、第1の基板をエッチング除去して、スタンプ層とグラフェン層120との組み合わせを残すことができる。スタンプ層及びグラフェン層120を第2の基板130上に置いた後、スタンプ層を機械的に取り外すことによって除去して、さらなる加工のためにグラフェン層120の清浄表面を生成することができる。
【0030】
さらに別の例では、自己剥離転写(self−release transfer)方法を使用してグラフェン層120を第2の基板130に転写することができる。この方法では、最初に自己剥離層がグラフェン層120を覆って回転成形される。エラストマースタンプを、次いで自己剥離層と共形接触するように置く。第1の基板110をエッチング除去して、スタンプ層、自己剥離層、及びグラフェン層の組み合わせを残すことができる。この組み合わせを第2の基板130上に置いた後、スタンプ層を機械的に除去することができ、自己剥離層を穏やかな条件下で適切な溶媒中に溶解させることができる。この剥離層は、ポリスチレン(PS)、ポリ(イソブチレン)(PIB)、及びTeflon AF(ポリ[4,5−ジフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソール−co−テトラフルオロエチレン])を含むことができる。
【0031】
エピ層140は、とりわけ、III−V半導体、Si、Ge、III−N半導体、SiC、SiGe、及びII−VI半導体を含むことができる。一例では、第2の基板130の格子はエピ層140に整合し、この場合、グラフェン層120が多孔質であるかまたは十分に薄ければ(例えば、グラフェン層120が一層の厚さであれば)、第2の基板130はエピ層140の成長のための種晶として機能する。グラフェン層120を第2の基板130とエピ層140で挟むと、損傷させることなくエピ層140を素早く剥離し、転写しやすくすることができる。
【0032】
別の例では、グラフェン層120は、エピ層140を成長させるための種晶として機能するのに十分なほど厚くなる(例えば、数層の厚さ)ことができ、この場合、エピ層140はグラフェン層120と格子整合することができる。この例であれば、第2の基板130を繰り返し使用することもできる。さらに別の例では、第2の基板130は、グラフェン層120とともにエピ層140を成長させるための種晶として機能することができる。
【0033】
グラフェンを種晶として使用してエピ層140を作製すると、エピ層材料とグラフェンの間の格子定数の不整合に対する許容度を増大させることができる。何らかの特定の理論または動作モードに縛られるものではないが、2次元(2D)の材料(例えば、グラフェン)または準2Dの層状結晶の表面は、典型的にはダングリングボンドを有さず、それらの上の材料とファンデルワールス力に似た弱い力を介して相互作用する。相互作用が弱いため、エピ層は、最初からそれ自体の格子定数で成長して、欠陥の少ない界面を形成することができる。この種の成長は、ファンデルワールスエピタキシ(VDWE)と呼ぶことができる。VDWEの場合、格子整合条件を大幅に緩和することができるので、多種多様の異なるヘテロ構造が、高度に格子不整合な系であっても可能となる。
【0034】
実際には、格子不整合は約0%〜約70%であり得る(例えば、約0%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、及び約70%であり、その間の任意の値及び部分範囲を含む)。
【0035】
一例では、エピ層140は、2D材料系を含む。別の例では、エピ層140は、3D材料系を含む。2D材料系と3D材料系の両方を作製する柔軟性によって、当技術分野で公知の広範な光学デバイス、光電子デバイス、及びフォトニックデバイスを作製することが可能となる。
【0036】
図2は、グラフェン層120上に堆積させてエピ層140を形成する材料を示すグラフである。
図2はまた、これらの材料の格子定数及びこれらの格子定数のグラフェンに対する不整合を示している。これらの材料には、SiC、AlN、GaN、InN、GaP、AlP、シリコン、AlAs、Ge、GaAs、及びInPが含まれる。
図2に列挙するこれらの材料は、例示を目的とするに過ぎない。実際には、グラフェンに対して同様の格子不整合を有する他の材料もエピ層140を形成するために使用することができる。
【0037】
エピ層140の作製は、当技術分野で公知の半導体作製技法を使用して行うことができる。例えば、減圧有機金属化学蒸着法(MOCVD)を使用してグラフェン層120上にエピ層140(例えば、GaN膜)を成長させて、それを次に第2の基板130(例えば、SiC基板)上に配置することができる。この例では、グラフェン層120及び第2の基板130は、焼成して(例えば、H
2下、>1,100℃で、>15分間)表面を清浄にすることができる。次いで、GaNを含むエピ層140の堆積を、例えば200mbarで実施することができる。トリメチルガリウム、アンモニア、及び水素を、それぞれ、Ga源、窒素源、及びキャリアガスとして使用することができる。改変した2段階成長を採用して、平坦なGaNエピタキシャル膜をエピタキシャルグラフェン120上に得ることができる。第1のステップは、1,100℃の成長温度で数分行うことができ、ここで、テラス端部で誘導される核生成を促進することができる。第2の成長ステップは、1,250℃に上昇させた温度で行って、沿面成長を促進することができる。この場合の垂直方向のGaN成長速度は、1分当たり20nm前後であり得る。
【0039】
図3A〜3Fは、グラフェンベースの層転写方法300を図示している。
図3Aは、グラフェン層320がドナーウェハ310(単結晶ウェハであり得る)上に形成されるまたは配置されることを示す。例えば、グラフェン層320は、当技術分野で公知のようにドナーウェハ310上で成長させたエピタキシャルグラフェンを含むことができる。あるいは、グラフェン層320を、別のウェハ(図示せず)から剥脱してドナーウェハ310に転写することができる。さらに別の例では、
図1A〜1Dに関して上で述べたグラフェン転写技法のいずれかをここで使用して、ドナーウェハ320上に配置されるグラフェン層320を調製することができる。
【0040】
図3Bは、エピ層330をグラフェン層320上でエピタキシャルに成長させることを示している。エピ層330は、電子層、フォトニック層、または任意の他の機能デバイス層を含むことができる。エピ層330を作製するための方法は、
図1A〜1Dに関して上で述べた任意の方法及び技法を含むことができる。
【0041】
図3Cは、ストレッサ340がエピ層330上に配置されることを示している。例えば、ストレッサ330は、Ni膜などの高応力の金属膜を含むことができる。この例では、Niストレッサは、蒸発装置中で1×10
−5Torrの真空レベルで堆積させることができる。
【0042】
図3Dは、ストレッサ340を操作するためのテープ層350がストレッサ340上に配置されることを示している。テープ350及びストレッサ340を使用すると、高い歪みエネルギーをエピ層330とグラフェン層320の間の界面にかけることによって、エピ層330をグラフェン層320から高速な剥離速度で機械的に剥脱することができる。剥離速度は、少なくとも、グラフェンとエピ層330などの他の材料の間の弱いファンデルワールス結合によって、高速であり得る。
【0043】
図3Eでは、剥離されたエピ層330は、ストレッサ340及びテープ層350とともにホストウェハ360上に配置される。
図3Fでは、テープ340及びストレッサ340は除去されて、より精巧なデバイスを形成するまたはエピ層330上に追加材料を堆積させるなどのさらなる加工のためにエピ層330が残される。一例では、テープ層350及びストレッサ340は、FeCl
3系溶液によってエッチング除去することができる。
【0044】
方法300では、
図3Dに示すエピ層330の剥離後に、残留するドナーウェハ310及びグラフェン層320は、エピ層を作製する次のサイクルに再利用することができる。あるいは、グラフェン層320も剥離することができる。この場合、エピ層を作製する次のサイクルの前に、新しいグラフェン層をドナーウェハ310上に配置することができる。いずれの場合においても、グラフェン層320はドナーウェハ310を損傷から保護し、それによって複数の使用が可能となり、コストが低減される。
【0045】
対照的に、従来のプロセスは、通常、ウェハ表面を再状態調整するために、剥離後に化学的機械的平坦化(CMP)を含む。CMPは、比較的厚い材料を消費することがあり、CMPを繰り返すとウェハを破壊する機会が増加する。GBLTは、原子的に平滑な剥離表面を作り出すので、再利用性を増大させるまたは最大化させることができる。GBLTでは、層剥離はエピ層330とグラフェン層320の間の界面で正確に起こり得る。何故なら、グラフェンの弱いファンデルワールス力では隣接する材料と強く結合できないからである。これによって、研磨ステップを必要とすることなく、かつグラフェンの機械的堅牢性のためにグラフェンを損傷させることもなく、グラフェン層320を複数の成長/剥脱サイクルに再利用することが可能となる。加えて、GBLTは、高速な剥離速度及び様々な材料への普遍的な適用を保証することができる。エピ層330は、弱いグラフェン表面から機械的に剥離されるので、GBLTにおける層剥離速度は高速であり得る。従来の層転写方法が特定の材料に限定されるのに対して、GBLTは普遍的に適用することができる。何故なら、VDWEは極めて高い格子不整合を克服することができ、ほとんどの半導体膜をグラフェン上でエピタキシャルに成長させることができるからである。
【0046】
さらに、
図3Dに示すような剥離後の高度に歪みのある自立型エピ層330を有することにより、エピ層330から作られたデバイスは、より高い電子または正孔移動度を有することができる。エピ層330から作られた光電子デバイスは、強化された光学的応答を有することもできる。
【0047】
エピ層330をグラフェン層320から機械的に剥離する場合、ストレッサ340の材料が、損傷のない剥脱/転写を促進するのに十分な歪みエネルギーをエピ層/グラフェン界面に提供することが望ましいことであり得る。機械的剥離プロセスに関する1つの懸念は、剥脱中のエピ層330の屈曲及びストレッサ340の堆積中の自己剥脱であり得る。剥脱中に湾曲の半径が低減すれば、歪みエネルギーがエピ層330中で増加し得る。歪みエネルギーが臨界点に達すると、亀裂が形成され得る。また、ストレッサ内の歪みエネルギーがエピ層/グラフェン界面エネルギーを超えれば、エピ層330がストレッサの堆積中に離層する可能性がある。この懸念に対処するために、エピ層のグラフェン上への転写をフィードバックループ制御によって実施することができる。
【0049】
図1A〜1D及び
図3A〜3Fに図示する方法では、デバイス層は、グラフェン層上に作製される。グラフェンは、典型的には1原子厚ほど(例えば、3Åほど)であるため、グラフェンの直下にある任意の共有結合された基板の表面は、例えば、デバイス層の結晶方位の変化によって、デバイス層のエピタキシャル成長に影響を及ぼす可能性がある。したがって、下地基板がデバイス層の成長に及ぼす影響を理解して、例えば、デバイス層上の欠陥密度を低減させるようにするだけでなく、デバイス層の結晶方位などの性質を制御するようにすることが有益であり得る。
【0050】
図4A〜4Bは、下地基板がデバイス層の成長に及ぼす影響を例示するために、グラフェンベースの作製システムの概略図を示している。
図4Aは、基板411及び基板411上に配置されたグラフェン層421を含むシステム401を示している。デバイス層431は、グラフェン層421上に作製される。基板411は、
図4A中に矢印によって示されるポテンシャル場441(例えば、ファンデルワールス力または他の原子間力もしくは分子力による)を有する。この場合で、グラフェン層421はグラフェンの単層を1層しか含んでおらず(すなわち、グラフェン層421は1原子厚である)、ポテンシャル場441はグラフェン層421を超えて達し、デバイス層431と相互作用し得る。その結果、基板411の材料の性質(結晶方位など)に依存するポテンシャル場441は、デバイス層431の成長に影響を及ぼし得る。それと同時に、グラフェン層421もそれ自体のポテンシャル場を有し(
図4Aに図示せず)、それは同様にデバイス層431の成長に影響し得る。その最終結果として、デバイス層431が(100)及び(111)方位などの2つの異なる方位を有する膜431a及び431bを含むことがある。あるいは、基板の力が十分に強くてグラフェンの場に打ち勝つこともあり、この場合、基板に似た単結晶膜が成長し得る。
【0051】
図4Bは、基板412及び基板412上に配置されたグラフェン層422を含むシステム402を示している。デバイス層432は、グラフェン層422上に作製される。基板412は、
図4B中の矢印によって示されるポテンシャル場442を有する。
図4A中のグラフェン層421とは対照的に、
図4B中のグラフェン層422は、複数の単層グラフェンの積層を含む(すなわち、グラフェン層422は1原子厚より厚い)。したがって、ポテンシャル場442はグラフェン層422としか相互作用できず、デバイス層432に達することができない。言い換えれば、デバイス層432のVDWEは、基板412のポテンシャル場442の外側で起きる。この場合、グラフェン層422のポテンシャル場がデバイス層432の成長に影響を及ぼす。
【0052】
図4A〜4Bは、デバイス層(例えば、431及び432)の成長に及ぼす基板(例えば、411及び412)の影響が、それらの間の距離に依存することを図示している。言い換えれば、基板とデバイス層の間に挟まれるグラフェン層(例えば、421及び422)の厚さが、相互作用強度を決定する。臨界距離を過ぎると、下地基板はデバイス層のエピタキシャル成長に影響を何も及ぼすことができない。エピ層は臨界距離を超えるとグラフェン格子と類似し得るので、この臨界距離は、高分解能X線回折(HRXRD)を使用してグラフェンの厚さに応じたエピ層の結晶方位をモニタリングすることで検証することができる。
【0053】
図5A〜5Eは、薄いグラフェン層を使用する、グラフェンベースの層転写方法500を図示している。
図5Aでは、ドナーウェハ510aが、グラフェン層520を成長させる(
図5Bに示す)ために用意される。
図5Bは、グラフェン層520が、次いで第2のウェハ510bに転写されることを示しており、第2のウェハ510bは、III−N半導体、II−IV半導体、III−V半導体、及びIV半導体を含むことができる。
【0054】
図5Cでは、膜530がグラフェン層520の上でエピタキシャルに成長する。この場合グラフェン層520は十分に薄いので、膜530の成長は、グラフェン層520の下にある第2のウェハ510bによって種晶添加される。
図5Dでは、後続の層転写を容易にするためにストレッサ540が膜530上に堆積される。ストレッサ540は、ニッケルなどの高応力の金属材料を含むことができる。
図5Eでは、ストレッサ540を操作して膜530をグラフェン層520及び第2のウェハ510bから剥離するように、テープ層550がストレッサ540上に配置される。方法500では、グラフェン層520は十分に薄く、グラフェンの種晶添加の影響が消失し得るのに対して、基板の種晶添加の影響は強い。このようにして、方法500を通して任意の剥離可能な膜を作ることができる。
【0055】
図6A〜6Bは、異なる下地基板を使用してグラフェン上で成長させたエピ層の結晶学的方位のばらつきを示している。
図6Aは、グラフェン/SiO
2(SiO
2基板上のグラフェン)上のGaNの、HRXRDでのω−2θスキャンを示している。
図6Bは、グラフェン/SiC(SiC基板上のグラフェン)上のGaNのω−2θスキャンを示している。
【0056】
エピタキシャルグラフェンとSiC基板の間のエピタキシャルな関係を排除するために、
図6Aに使用するようなエピタキシャルグラフェンは、SiCから剥脱し、次いで非晶質SiO
2で被覆されたSi基板に転写することができる。次いで、GaNを基板上で成長させることができる。HRXRDのω−2θスキャンから、SiO
2の上部のエピタキシャルグラフェン上で成長させたGaN膜は(0002)集合組織の多結晶であるのに対して、SiCの上部のエピタキシャルグラフェン上で成長させたGaN膜は単一(0002)方位を有することがわかる(
図6A及び
図6Bを参照されたい)。これによって、グラフェン層の直下にある基板がエピタキシャル方位の決定に役割を担っていることが暗示される。したがって、基板の材料(または結晶方位)を、デバイス層のエピタキシャル方位を制御するために採用することができる。
【0057】
グラフェンベースの層作製及び転写における種晶添加位置の制御
【0058】
グラフェンベースの層作製及び転写を実際に適用する際には、高品質な単結晶膜がグラフェン上に得られるように、エピタキシャルレジストリ(epitaxial registry)をグラフェンまたは基板のいずれかに調整できると有益であり得る。種晶添加位置をこのように制御すると、グラフェン上での直接的なエピタキシまたは基板から種晶添加されるリモートエピタキシを実現することができる。グラフェン上での直接的なエピタキシでは、グラフェンは種晶としてだけでなく、剥離層としての役割も果たす。基板から種晶添加されるリモートエピタキシでは、グラフェンは剥離層のみとなる一方で、基板が種晶として働く。
【0059】
図7A〜7Cは、異なる厚さのグラフェン層を使用する3つの異なるタイプのグラフェンベースの層作製システムの概略図を示している。適用する際に、使用者は、デバイス層と下地基板の間の所望の相互作用強度に基づいて、あるいはデバイス層とグラフェンの間の所望の相互作用強度に応じて、これらのシステムのうちの1つを使用することを選択することができる。これらの3つの選択肢は、様々な作製タスクに対応するための大きな柔軟性を提供することができる。
【0060】
図7Aは、基板711及び基板711上で成長させたグラフェン層721を含む、システム701(タイプIシステムとも呼ばれる)を示している。エピ層731を、次いでグラフェン層721上で成長させる。タイプIシステム701では、グラフェン層721と基板711の両方が、
図7A中の矢印によって示されるようにエピ層731と相互作用する。
【0061】
一例では、エピタキシャルグラフェン721(例えば、単層グラフェン)は、SiC基板上で成長させてタイプIシステムで使用することができる。この例では、グラフェン及びSiCの結晶学的方位が整列しているために、それらは両方とも<0001>ウルツ鉱構造のための六方晶系の種晶を供給することができる。III−N半導体とグラフェンの間の格子不整合が小さいことから、この基板は、単結晶ウルツ鉱III−N(またはSiC)膜を成長させるために採用することができる。このエピタキシャルグラフェン/SiC基板は、グラフェンとSiCが両方とも(111)方位の種晶となるために、(111)立方晶のIII−V、Si、及びGe膜を成長させるためにも使用することができる。
【0062】
別の例では、基板711は、グラフェン層721をエピタキシャルに成長させるためにゲルマニウム(Ge)を含む。Geと他の立方晶材料の間の格子不整合は、典型的にはSiCと立方晶材料の間の格子不整合より小さい。この例では、グラフェン層721は、MOCVD技法を通してGe基板711上に成長させることができる。さらに別の例では、グラフェンは、GaAs InP、及びGaNなどの他の半導体ウェハ上に直接成長させることができる。
【0063】
図7Bは、基板712及び基板712上で成長させたグラフェン層722を含む、システム702(タイプIIシステムとも呼ばれる)を示している。エピ層732を、次いでグラフェン層722上で成長させる。タイプIIシステム702では、グラフェン層722の厚さは、基板712とエピ層732の間の相互作用の臨界距離と実質的に等しいまたはそれより大きい。したがって、エピ層732は、純粋なVDWEを提供するエピタキシャルグラフェン722としか相互作用しない。このタイプIIシステムは、III−N半導体膜またはSiC単結晶膜を成長させるのに最適であり得る。何故なら、グラフェンに対するそれらの格子不整合が実質的に大きくないからである。銅箔を使用して、大きいサイズの多結晶グラフェン(例えば、8インチ超、12インチ超、またはそれ以上)を作製することができる。
【0064】
図7Cは、基板713及び基板713上で成長させたグラフェン層723を含む、システム703(タイプIIIシステムとも呼ばれる)を示している。エピ層733を、次いでグラフェン層723上で成長させる。タイプIIIシステム703では、グラフェン層723は剥離層としてのみ働き、エピタキシャル成長は、基板713からのみ種晶添加される。エピ層733と同一のまたは同様の格子を有する基板材料を使用することができる。グラフェン層723は、エピ層733の結晶方位の決定に加わらない。したがって、グラフェン層723は、単結晶グラフェンまたは多結晶グラフェンのいずれかを含むことができる。
【0065】
タイプIIIシステムは、エピ層733のレジストリを基板に割り当てる。この構成の1つの利点は、高品質のエピ層を、格子整合する基板上でホモエピタキシ同然に成長させながら、エピ層をグラフェン表面から剥離することができることである。これを果たすために、グラフェン層723は、エピ層733に対して成長中に実質的に透過性であることが望ましいことであり得る。これは、イオンを介して(例えば、ドライエッチングを介して)グラフェンを非晶質化するまたは損傷することによって実現することができる。グラフェン層723に損傷があれば、グラフェン層723がエピ層733の結晶方位を誘導しないように、グラフェン層723を通してエピ層733と基板713とを直接相互作用させることが可能となる。
【0066】
一例では、基板は、III−V基板、III−N基板、II−V基板、及び/またはイオン結合した基板(例えば、酸化物、ペロフスカイト)など、極性を有し、未加工のグラフェンをウェハ上に転写することができ、エピ層はウェハのものと同じ結晶化度を有することができ、成長させた膜はいつでも剥脱することができる。別の例では、基板には極性がなくてもよく(例えば、第IV族)、グラフェンを損傷することによって、基板/エピ層の相互作用の促進を助けることができる。
【0067】
図8A〜8Hは、周期的な空孔を有するグラフェン(以降、多孔質グラフェンと呼ばれる)を使用する、グラフェンベースの層作製及び転写方法800を図示している。方法800は、タイプIIIシステムを用いて実装することができ、それにおいて、グラフェンは剥離層として機能し、基板が1つまたは複数の機能層のエピタキシャル成長に種晶添加する。
【0068】
図8Aでは、グラフェン層820が基板810上に配置される。グラフェン層820は、基板810上に、例えば化学蒸着を介して成長させることができる。あるいは、グラフェン層820は、基板810に転写することができる。多孔質膜830(例えば、酸化物、窒化物、またはフォトレジスト膜)が、
図8Bに示すように、次いでグラフェン層820上に配置される。多孔質膜830は、高密度のピンホールを有する(例えば、1平方ミクロン当たり約1個の空孔)。あるいは、多孔質膜830は、
図8C〜8Hに示す後続の加工を可能とする、空孔を有する任意の膜を含むことができる。
【0069】
図8Cでは、ArプラズマまたはO
2プラズマを使用するドライエッチングが行われて、多孔質膜830中にピンホールが開口される。このエッチングによって多孔質膜830中に複数の空孔835が作り出され、エッチングプラズマ中のイオンが多孔質膜830を通って透過し、グラフェン層820に到達することが可能となる。エッチングプラズマは、次いで多孔質膜830中のピンホール835の真下にあるグラフェン層820の一部をエッチングする。エッチングプラズマ中のイオンは、グラフェン層820中に複数の空孔825を作り出すことによってグラフェン層820を損傷させることができ、それはこの時点で多孔質グラフェン層820となる。一例では、多孔質膜830のエッチング及びグラフェン層820のエッチングは、同じエッチングプラズマを用いて実現することができる。別の例では、多孔質膜830のエッチング及びグラフェン層820のエッチングは、異なるエッチングプラズマを用いて実現することができる。
【0070】
図8Eでは、多孔質膜830が除去され、今では多孔質であるグラフェン層820が、さらなる加工のために露出されて残される。一例では、多孔質膜830はフォトレジスト材料を含み、アセトンによって除去することができる。別の例では、多孔質膜830は酸化物または窒化物を含み、フッ化水素(HF)によって除去することができる。
図8Eは、エピ層840を多孔質グラフェン層820上で成長させることも示している。成長は、空孔825が作り出された領域から開始する。空孔825によって基板810とエピ層840の直接相互作用が可能となり、それによって、基板810がエピ層840の結晶方位を誘導することが可能となる。次いで、エピ層840の成長はグラフェン層820全体を覆うように広がって、平面状エピ層840を形成する。
【0071】
図8Gでは、形成されたエピ層840が、グラフェン層820及び基板810から剥離される。剥離されたエピ層840は、さらなる加工、例えば機能デバイスの形成のために、
図8Hに示すようにターゲット基板850に転写される。グラフェン層820及び基板810は、
図8Gに示すエピ層840の剥離後に、次いで別のエピ層を作製するために再利用され、このサイクルは何回も繰り返すことができる。
【0072】
図9A及び9Bは、損傷させたグラフェン上で成長させた、それぞれGe及びGaAs膜の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。グラフェンの限られた核生成及び成長面の不完全な衝突に起因する窪みが表面上に現れているが、基板から完全に種晶添加された平面(100)結晶が観察される。
【0073】
図10A及び10Bは、
図9A及び9Bにそれぞれ示すGe及びGaAs膜の、Niストレッサを使用した剥脱後のSEM画像である。平滑な剥脱表面によって、層がグラフェンから正確に剥離されたことが暗示され、これは、ウェット転写中のグラフェン様のしわの痕跡が観察されることによって確認される。
【0074】
図8A〜8Hに図示した通りであり、
図9A〜9B及び
図10A〜10Bにおいて実験的に調査したこの多孔質グラフェン手法は、幾つかの他の材料系に適用することができる。一例では、InP膜を、InPウェハ上に配置された損傷グラフェン上で作製することができる。別の例では、Si膜を、Siウェハ上に配置された損傷グラフェン上で成長させることができる。さらに別の例では、GaN膜を、GaNウェハ上に配置された損傷グラフェン上で成長させることができる。エピ層のエピタキシャルレジストリを基板に調整して、グラフェンを通した基板上へのエピタキシャル成長が確実に成功裏に行われるようにすることができる。
【0075】
可撓性機能デバイスの作製及びヘテロ集積化
【0076】
グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用して、グラフェン上に成長させたエピ層をベースとする様々な機能デバイスを作製することができる。一例では、III−N高電子移動度トランジスタ(HEMT)をIII−Nエピ層から作製することができる。このトランジスタを、次いで熱放散用に多結晶ダイアモンド基板に転写することができる。GaNパワーデバイスをこれらの膜から構築することもできる。別の例では、可撓性GaAs太陽電池をIII−Vエピ層から作製することができる。Si集積回路を組み込んだ光電子デバイスも、III−Vエピ層から構築することができる。さらに別の例では、IVエピ層をグラフェン上で成長させ、それを剥脱し、自立型Geを引っ張り歪みGeに引き伸ばし、それをSi集積回路に転写することによって、GeベースのLED及び光検出器を作製することができる。さらに別の例では、Geを12インチSiウェハ上で成長させ、次いで単結晶グラフェンを成長させるための種晶として使用することができる。次いで、III−V光電子材料をGe/Siウェハ上のグラフェン上に転位を何も生じることなく成長させることができる。
【0077】
図11A〜11Hは、上で述べたグラフェンベースの層転写技法を使用して発光ダイオード(LED)を作製する方法1100を図示している。
図11Aでは、グラフェン層1120を基板1110(例えば、6インチSiC基板)上で成長させる。次いで、グラフェン層1120が、
図11Bに示すように基板1110から剥離され、
図11Cに示すようにターゲット基板1130に転写される。ターゲット基板1130は、例えば、
図11Aに使用されるSiCウェハより安価であり得る。
【0078】
図11Dでは、LED積層体1140(例えば、可視LED積層体)がグラフェン層1120上で作製される。この例では、LED積層体1140は、p−GaN層とn−GaN層の間に挟まれた3周期のIII族窒化物多重量子井戸(InGaNウェル及びGaNバリア)を含む。当業者であれば容易に認識するように、他のタイプのLED積層体もグラフェン層1120上で成長させることができる。
【0079】
作製されたLED積層体1140は、次いで、少なくとも2通りの方法で加工することができる。1つの方法では、
図11Eに図示するように、電極1150をLED積層体1140上に堆積させて電気接点を形成することができる。例えば、薄いNi/Au(5nm/5nm)をLED積層体1140上に堆積させ、次いで500℃で10分間アニールすることができる。これによって、基板1130を含むLEDが得られる。
【0080】
あるいは、
図11Fに図示するように、LED積層体1140は基板1130から取り出してもよい。LED積層体1140を基板1130から取り出すために、ストレッサ層1160をLED積層体1140上に配置して、LED積層体1140をターゲット基板1130及びグラフェン1120から剥離する。次いで、
図11Gに示すように、ストレッサ層1160とLED積層体1140との組み合わせを裏返し、第2のターゲット基板1135上に置く。ストレッサ層1160は第2のターゲット基板1135と接触し、LED積層体1140は、さらなる加工のために露出される。例えば、
図11Gは、LEDメサ1145がLED積層体1140からエッチングされたことを示している。
図11Fでは、追加的な電気接点1170が、LEDメサ1145及びストレッサ層1160に組み込まれる。
【0081】
一例では、グラフェン層1120は、LED積層体1140の成長に種晶添加することができ、ターゲット基板1130は、LED積層体1140の成長に何も影響を及ぼさないことが可能である。別の例では、タイプIIIの種晶添加(例えば、
図7Cに図示するもの)を使用することができる。この場合、グラフェン層1120は薄くてもよく、ターゲット基板1130は、LED積層体1140の成長に種晶添加することができる。ターゲット基板1130は、GaN基板を含むことができる。
【0082】
図12A〜12Gは、グラフェンベースの層転写技法を使用してGaAs太陽電池を作製する方法1200を図示している。
図12Aでは、グラフェン層1220(例えば、単結晶グラフェン層)は、基板1210(例えば、6インチSiCウェハ)上に作製される。
図12Bに見られるように、次いでグラフェン層1220がターゲット基板1230に転写される。
図12Cは、GaAs太陽電池1240が、例えば、当技術分野で公知のエピタキシャル成長技法を介してグラフェン層1220上に作製されることを示している。
図12Dは、後続のデバイス転写を容易にするために、次いでストレッサ層1250が太陽電池1240上に堆積されることを示している。
図12Eに見られるように、デバイス転写の操作を助けるためにテープ層1260がストレッサ1250上に配置される。
【0083】
ターゲット基板1230の剥離後に、太陽電池1240は自立型となり、2通りの方法で加工することができる。1つの方法では、
図12Fに図示するように、後続のモジュール作製のために太陽電池1240を金属1240上に置くことができる。太陽電池1240は、ダイレクトボンディングまたは当技術分野で公知の任意の他の技法を介して金属1240上に置くことができる。あるいは、
図12Gに図示するように、自立型太陽電池1240は、ストレッサ層1250及びテープ層1260とともに、それ自体で軽量な可撓性太陽電池組立品を形成する。この可撓性太陽電池組立品は、パワー電子デバイスを含めた他のシステムに容易に組み込むことができる。
【0084】
一例では、グラフェン層1220は、太陽電池1240の成長に種晶添加することができ、ターゲット基板1230は、太陽電池1240の成長に何も影響を及ぼさないことが可能である。別の例では、タイプIIIの種晶添加(例えば、
図7Cに図示するもの)を使用することができる。この場合、グラフェン層1220は薄くてもよく、ターゲット基板1230が太陽電池1240の成長に種晶添加することができる。ターゲット基板1230は、GaAs基板を含むことができる。
【0085】
図13A〜13Eは、グラフェンベースの層転写技法を使用して多接合太陽電池を作製する方法1300を図示している。方法1300は、
図13Aに示すように、透明導電酸化物(TCO)表面を有するガラス基板1310上にグラフェン層1320を配置することによって始まる。グラフェン層1320は、本出願に述べる任意の方法または当技術分野で公知の任意の他の方法によってガラス基板1310に転写することができる。
【0086】
図13Bは、InGaP層1330、InGaP層1330上のGaAs層1340、及びGaAs層1340上の第2のグラフェン層1350を含めた3つの材料層がグラフェン層1320上に堆積されることを示している。
図13Cは、InGaAs層1360が第2のグラフェン層1350上に堆積されることを示している。第2のグラフェン層1350は、InGaAs層1360を作製する間の格子整合を助けることができる。
図13Dに示すように、次いで金属接点1370が電気伝導のためにInGaAs層1360上に置かれる。次いで
図13Eでは、InGaP層1330、GaAs層1340、第2のグラフェン層1350、及びInGaAs層1350の積層体がエッチングされて2つの太陽電池メサ1380となり、各太陽電池メサはそれぞれの金属接点1370の下にある。
【0087】
図14A〜14Cは、トランジスタを作製する方法1400を図示している。
図14Aでは、グラフェン層1420は、SiCウェハなどの基板1410上に配置される。InGaAs層1430が、グラフェン層1420上に堆積される。次いで、
図14Bに示すように、InGaAs層1430が、シリコンウェハ1440の表面上に配置された酸化物層1450を有するシリコンウェハ1440に転写される。次いで、Al
2O
3層1470が、InGaAs層1430上にトップゲート絶縁膜として堆積される。
図14Cに示すように、ゲート1480がAl
2O
3層1470上に作製されてトランジスタが形成される。
【0088】
一例では、グラフェン層1420は、InGaAs層1430の成長に種晶添加することができ、シリコンウェハ1440は、InGaAs層1430の成長に何も影響を及ぼさないことが可能である。別の例では、タイプIIIの種晶添加(例えば、
図7Cに図示するもの)を使用することができる。この場合、グラフェン層1420は薄くてもよく、シリコンウェハ1440をInP基板に置き換えて、InGaAs層1430の成長に種晶添加するようにできる。
【0089】
図15A〜15Fは、グラフェンベースの層転写技法を使用してヘテロ構造を形成する方法1500を図示している。
図15Aでは、グラフェン層1520(例えば、単層グラフェン)が、SiCウェハなどの基板1510上に配置される。次いでh−BN層1530(すなわち、六方晶形窒化ホウ素)をグラフェン層1520上にエピタキシャルに成長させる。
図15Bは、ストレッサ層1540(例えば、ニッケル膜)がh−BN層1530上に被覆され、テープ層1550がストレッサ層1540上に配置されることを示している。前に述べたように、テープ層1550及びストレッサ層1540は、
図15Cに図示するように、酸化物層1565(例えば、酸化ケイ素)を上部上に有するシリコンウェハ1560を含む第2の基板にh−BN層1530を転写することができる。
図15Cはまた、ストレッサ層1540及びテープ層1550がエッチング除去されて、h−BN層1530がさらなる加工のために残されることを示している。
【0090】
図15Dでは、h−BN/MoS
2ヘテロ構造を形成するように、MoS
2層1570がh−BN層1530上に堆積され、第2のh−BN層1580がMoS
2層1570上に堆積される。
図15Fは、HfO
3層1590が第2のh−BN層1580上にトップゲート絶縁膜として堆積され、トップゲート1595が電気伝導のためにHfO
3層1590上に堆積されることを示している。
【0091】
図16A〜16Fは、グラフェンベースの層作製及び転写技法を使用してIII−Vデバイス作製用プラットフォームを調製する方法1600を図示している。
図16Aは、12インチシリコンウェハ1610を示している。次いで、緩和されたGe膜1620が、
図12Bに示すように、例えば、エピタキシャル成長を介してウェハ1610上に配置される。Ge膜1620は、
図16Cに見られるように、次いでグラフェン層1630をエピタキシャルに成長させるための種晶として機能する。グラフェン層1630は、単結晶グラフェンを含むことができる。
【0092】
図16Dでは、グラフェン層1630は、例えば、当技術分野で公知のリソグラフィ技法を介してパターン形成される。パターン形成によって、グラフェン層1630中に間隙1635が生じる。言い換えれば、グラフェン層1630は、パターン形成して単離されたグラフェンの小部分にすることができる。
図16Eでは、デバイス層1640がグラフェン層1620上に作製される。デバイス層1640は、例えば、III−V材料、または酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、レーザ、もしくは当技術分野で公知の任意の他の構造体などの構造体を含むことができる。デバイス層1640は、
図1610に示すように、次いで追加デバイス1650を形成するためのプラットフォームとして機能する。
【0094】
様々な本発明の実施形態を本明細書に記述し、説明してきたが、当業者であれば、機能を実施するための、ならびに/あるいは本明細書に記述する結果及び/または利点の1つもしくは複数を得るための種々の他の手段及び/または構造を容易に想起するであろう。またそのような変形形態及び/または改変形態のそれぞれは、本明細書に記述する本発明の実施形態の範囲内と見なされる。より一般的には、本明細書に記述するすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示であることを意味しており、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/または構成は本発明の教示が使用される特定の用途(1種または複数)に依存することとなることを、当業者であれば容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書に記述する本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解し、日常的な実験法だけを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単なる例として提示されるものであって、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に記述および特許請求した通りとは異なるように実践されてもよいことが理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記述する個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法それぞれを対象としている。加えて、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法の任意の組み合わせは、かかる特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法が相互に矛盾しなければ、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0095】
上で述べた実施形態は、多数の方法のうちのいずれかで実装することができる。例えば、本明細書に開示するテクノロジーを設計し、作製する実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装することができる。ソフトウェアで実装するときは、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータ上に設けられるか、または複数のコンピュータ間で分散されるかにかかわらず、任意の適切なプロセッサまたは一群のプロセッサ上で実行することができる。
【0096】
さらに、コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはタブレットコンピュータなどの幾つもの形態のいずれかに具現化されてもよいことが認識されるべきである。加えて、コンピュータは、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、または任意の他の適切な携帯用または固定電子デバイスを含めた、一般的にはコンピュータとはみなされないが適切な処理能力を有するデバイス内に埋め込まれてもよい。
【0097】
また、コンピュータは、1つまたは複数の入出力デバイスを有してもよい。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースを演出するために使用することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用することができる出力デバイスの例として、出力を視覚的に演出するためのプリンタまたは表示画面、及び出力を可聴式に演出するためのスピーカまたは他の音響発生デバイスが挙げられる。ユーザインタフェースに使用することができる入力デバイスの例として、キーボード、及びポインティングデバイス(マウス、タッチパッド、及びディジタイズ用タブレットなど)が挙げられる。別の例として、コンピュータは、音声認識または他の可聴形式を通して入力情報を受け取ってもよい。
【0098】
かかるコンピュータは、ローカルエリアネットワークまたは広域ネットワーク、例えば企業ネットワーク、及びインテリジェントネットワーク(IN)またはインターネットを含めた、任意の適切な形式の1つまたは複数のネットワークによって相互接続されてもよい。かかるネットワークは、任意の適切なテクノロジーに基づいてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してもよく、無線ネットワーク、有線ネットワーク、または光ファイバネットワークを含んでもよい。
【0099】
本明細書に概説される様々な方法またはプロセスは、種々のオペレーティングシステムまたはプラットフォームのいずれか1つに採用される1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコードされてもよい。加えて、かかるソフトウェアは、幾つもの適切なプログラミング言語及び/またはプログラミングもしくはスクリプトツールのいずれかを使用して書かれてもよく、また、実行可能な機械語コードまたはフレームワークもしくは仮想マシン上で実行される中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0100】
この点に関して、様々な発明概念は、1つもしくは複数のコンピュータまたは他のプロセッサ上で実行されたときに、上で論じた本発明の様々な実施形態を実装する方法を実施する1つまたは複数のプログラムで符号化された、コンピュータ読取可能な記憶媒体(または複数のコンピュータ読取可能な記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つまたは複数のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体デバイスの回路構成、または他の非一時的媒体もしくは有形のコンピュータ記憶媒体)として具現化されてもよい。コンピュータ読取可能な記憶媒体(1つまたは複数)は、そこに格納されたプログラム(1つまたは複数)を1つもしくは複数の異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードして上で論じた通りの本発明の様々な態様を実装できるように、可搬性であり得る。
【0101】
「プログラム」または「ソフトウェア」という用語は、本明細書では、コンピュータまたは他のプロセッサをプログラムして上で論じた通りの実施形態の様々な態様を実装するために採用することができる任意のタイプのコンピュータコードまたは1組のコンピュータ実行可能命令を指すために、一般的な意味で使用される。加えて、一態様によれば、実行されると本発明の方法を実施する1つまたは複数のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサ上に存在する必要はなく、本発明の様々な態様を実装するために幾つもの異なるコンピュータまたはプロセッサ間で、モジュール方式で分散されてもよいことが認識されるべきである。
【0102】
コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のコンピュータまたは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュールなどの多くの形態であってもよい。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するまたは特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造などを含む。典型的には、プログラムモジュールの機能性は、様々な実施形態で所望されるように組み合わせても分散させてもよい。
【0103】
また、データ構造は、コンピュータ読取可能媒体に任意の適切な形態で記憶されてもよい。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造中の位置を通して関連するフィールドを有していると示されてもよい。かかる関係は、フィールド用の記憶領域に、フィールド間の関係を伝達するコンピュータ読取可能媒体の位置を割り当てることによって同様に実現されてもよい。しかし、ポインタ、タグ、またはデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用を介することを含めた、任意の適切な機構を使用してデータ構造のフィールドにおける情報間の関係を確立してもよい。
【0104】
また、様々な発明概念は、1つまたは複数の方法として具現化されてもよく、それらの例を提供してきた。方法の一部として実施される行為は、任意の適切な方法で順序付けすることができる。したがって、実施形態は、例示した順序とは異なる順序で行為を行って構築されてもよく、例示的実施形態には連続した行為として示されていたとしても、ある行為を同時に行うことを含んでもよい。
【0105】
すべての定義は、本明細書で定義されて使用される場合、辞書の定義、参照によって組み込まれた文書での定義、及び/または定義された用語の通常の意味を制するものと理解されるべきである。
【0106】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、明らかにそれに反する指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味することが理解されるべきである。
【0107】
「及び/または」という語句は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、そのように等位接続された要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には選言的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/または」とともに列挙される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように等位接続された要素のうちの「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「及び/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、具体的に特定されたこれらの要素と関係があるかないかにかかわらず、場合によって存在し得る。よって、非限定的な例として、「A及び/またはB」への言及は、「comprising(含む)」などのオープンエンドな言葉とともに使用されるとき、一実施形態ではAのみ(場合によってB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(場合によってA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAとBの両方(場合によって他の要素を含む);などを指すことができる。
【0108】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上で定義した通りの「及び/または」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、一覧における項目を分けるとき、「または」または「及び/または」は、包括的であるとして、すなわち、幾つかの要素または要素の一覧のうち少なくとも1つだけでなく2つ以上、および場合によって列挙されていない追加的な項目を含むものとして解釈されるべきである。「のうち1つのみ」もしくは「のうち唯1つ」などの明らかにそれに反する指示のある用語のみ、または特許請求の範囲で使用されるとき、「からなる」は、幾つかの要素または要素の一覧うち唯1つの要素を含むことを指すことになる。一般に、「または」という用語は、本明細書に使用される場合、「いずれか」、「のうち1つ」、「のうち1つのみ」、または「のうち唯1つ」などの排他性を有する用語が先行するとき、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すとしてのみ解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用されるとき、特許法の分野で使用される通りのその通常の意味を有するものとする。
【0109】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素の一覧の言及における「少なくとも1つ」という語句は、要素の一覧における任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素であるが、要素の一覧に具体的に列挙した要素のそれぞれ及びすべての要素のうち少なくとも1つを必ずしも含まなくてもよく、要素の一覧における要素の任意の組み合わせを排除しないことを意味すると理解されるべきである。この定義は、「少なくとも1つの」という語句が言及する要素の一覧中で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定されたこれらの要素と関係があるかないかにかかわらず、場合によって存在し得ることも許可する。よって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(または同様な意味合いで「AまたはBの少なくとも1つ」、または同様な意味合いで「A及び/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、場合によって2つ以上を含むAであって、Bが存在しない(および場合によってB以外の要素を含む)こと;別の実施形態では、少なくとも1つの、場合によって2つ以上を含むBであって、Aが存在しない(および場合によってA以外の要素を含む)こと;さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、場合によって2つ以上を含むA、及び少なくとも1つの、場合によって2つ以上を含む、B(場合によって他の要素を含む);などを指すことができる。
【0110】
上の明細書のみならず特許請求の範囲においても、「comprising(含む)」、「including(含む)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち、含むが限定されないことを意味することが理解されるべきである。「からなる」及び「から本質的になる」という移行句だけが、米国特許庁米国特許審査マニュアル、セクション2111.03に記載される通りに、それぞれクローズドまたはセミクローズド移行句であるものとする。