特許第6938480号(P6938480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938480塩基発生剤、試剤、有機塩、組成物、素子の製造方法、硬化膜及び素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938480
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】塩基発生剤、試剤、有機塩、組成物、素子の製造方法、硬化膜及び素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210909BHJP
   C07C 215/66 20060101ALI20210909BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210909BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20210909BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C09K3/00 K
   C07C215/66CSP
   B05D7/24 301B
   B05D3/02 Z
   B05D7/24 303E
   B05D7/24 302Z
   B05D7/24 302F
   B05D7/24 302J
   B05D7/24 302P
   B05D7/24 302U
   B05D7/24 302Y
   B05D3/00 D
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-517053(P2018-517053)
(86)(22)【出願日】2017年5月10日
(86)【国際出願番号】JP2017017680
(87)【国際公開番号】WO2017195822
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-94853(P2016-94853)
(32)【優先日】2016年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】藤間 佑樹
【審査官】 山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−185147(JP,A)
【文献】 特開2013−136662(JP,A)
【文献】 特開2006−348283(JP,A)
【文献】 特開2008−189824(JP,A)
【文献】 特開平03−116958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)及び(4)のいずれかで表される有機塩であって、
前記一般式(2)及び(4)のカチオンが、アゾリウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、トリアジニウムカチオン及びピペラジニウムからなる群より選択される有機塩
【化1】
[上記一般式(2)及び(4)において、乃至Zの各々及び乃至Z11の各々は互いに独立して、水素原子;第16族の元素の原子、第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;又は一価の有機基を示し、前記一価の有機基の場合は、Z乃至Zのうち少なくとも二つ又はZ乃至Z11のうち少なくとも二つが少なくとも一つの原子を介して結合してもよい。
上記一般式(2)及び(4)において、E、G、M及びQの各々は、互いに独立して、第16族の元素の原子;第15族の元素の原子;炭素原子以外の第14族の原子;ハロゲン原子;又は二価の有機基を示し、H、J、T及びXの各々は、互いに独立して、水素原子;第16族の元素の原子;第15族の元素の原子;炭素原子以外の第14族の元素の原子;ハロゲン原子;又は一価の有機基を示す。]
【請求項2】
請求項1に記載の有機塩において、
前記カチオンが、1,2,4−トリアゾリウム、オキサゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジアゾリウム、ベンゾトリアゾリウム、ヒドロキシベンゾトリアゾリウム、ベンゾキサゾリウム、1,2,3−ベンゾチアジアゾリウム、3−メルカプトベンゾトリゾリウム、置換基を有さないイミダゾリウム、2−メチルイミダゾリウム、2−エチルイミダゾリウム、2−ウンデシルイミダゾリウム、2−ヘプタデシルイミダゾリウム、2−フェニルイミダゾリウム、2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウム、1−イソブチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム及び1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムからなる群より選択される有機塩。
【請求項3】
請求項に記載の有機塩において、
前記有機塩が、下記一般式(6)及び(8)のいずれかで表されること、
を特徴とする有機塩。
【化2】
[上記一般式(6)及び(8)において、は水素原子;第16族の元素の原子、第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;又は一価の有機基を示し、
乃至Aの各々は、互いに独立して、第16族の元素の原子、第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;又は二価の有機基を示し、
前記二価の有機基は異なる二つの酸素原子に結合する少なくとも一つの原子を含み、
上記一般式(6)及び(8)において、E、G、M及びQの各々は、独立して、第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;又は二価の有機基を示し、
H、J、T及びXの各々は、独立して、水素原子;第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;又は一価の有機基を示す
【請求項4】
請求項に記載の有機塩において、
乃至Aの各々は互いに結合した二つの炭素原子を含むこと、
を特徴とする有機塩。
【請求項5】
請求項に記載の有機塩において、
前記二つの炭素原子のそれぞれが異なる酸素原子に結合していること、
を特徴とする有機塩。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の有機塩について
乃至Aの各々は置換基を有していても良いアリーレン基であること、
を特徴とする有機塩。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載の有機塩において、
は水素原子;第15族の元素の原子、炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子を含む置換基;置換基を有していてもよいアリール基;置換基を有していてもよいアリル基;及び置換基を有していてもよいビニル基からなる群より選択される基であること、
を特徴とする有機塩。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の有機塩と、
モノマー又は樹脂と、を含むこと、
を特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項に記載の組成物において、
前記モノマー又は前記樹脂は、環状構造を有し、
前記環状構造は、第16族元素の第4の原子を含んでいること、
を特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の組成物において、
さらにヒドロキシ基を有する化合物を含むこと、
を特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載の組成物において、
さらに粒子を含むこと、
を特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれかに記載の組成物又は前記組成物の溶液を基体に塗布することにより第1の膜を形成する第1の工程と、
前記第1の膜又は前記第1の膜から揮発成分の少なくとも一部を除去した第2の膜を50℃以上の温度で加熱する加熱工程を行うことにより前記第1の膜又は前記第2の膜を硬化させる第2の工程と、を含むこと、
を特徴とする素子の製造方法。
【請求項13】
請求項8乃至11のいずれかに記載の組成物を硬化することにより得られた硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの態様は、塩基発生剤、硬化剤、硬化促進剤、試剤、有機塩、組成物、素子の製造方法、硬化膜及び素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一液性エポキシ樹脂組成物は電子部品及び光学製品等種々の製品の封止や接着に用いられている。一液性エポキシ樹脂組成物は室温でエポキシ樹脂と反応せず、加熱することによって始めて反応を起こす潜在性硬化剤が用いられる。このような潜在性硬化剤としては、高融点の粉体で室温ではエポキシ樹脂に分散していて加熱することにより溶けて反応する、いわゆる固体分散型の潜在性硬化剤が一般に用いられ、中でもイミダゾール等のアミン化合物とエポキシ化合物を反応させて得られるアミンアダクト系硬化剤が、硬化性と保存安定性のバランスが優れている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−505497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固体分散型潜在性硬化剤は一般にエポキシ樹脂に不溶の固体であるため、狭い隙間に浸透しにくく、その部分が硬化不良を起こしたり、硬化が不均一となる場合があり、その応用範囲は制限されていた。
【0005】
本発明のいくつかの態様は上記の課題を解決すべく行われたものであり、簡便且つ安価に製造可能であり、モノマーやエポキシ樹脂等樹脂の硬化させる硬化剤又は硬化促進剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る塩基発生剤は、陰イオンと、陽イオンと、を含み、前記陰イオンは、五配位又は六配位構造を有する14族元素の第1の原子を含むことを特徴とする。上記の塩基発生剤において製造コストを低減する必要がある場合は、原料原価が比較的安い六配位構造が好ましい場合がある。また、六配位構造では一構造単位から複数の塩基分子を発生させることができるため、塩基発生効率及び硬化性能という観点から優れる場合がある。
【0007】
上記の塩基発生剤は、例えば、以下(1)乃至(3)のいずれかを含む。
水等の溶媒に溶解することにより水酸化物イオンを発生させる化合物又は水酸化物イオンを直接発生させるもの
(2)プロトンを受容するブレンステッド塩基 (Broensted base)として機能する化学種又は物質を発生させるもの
(3)置換基を有していてもよいアミン及び置換基を有していてもよいホスフィン等のルイス塩基を発生させるもの
【0008】
上記の塩基発生剤において、前記陽イオンは、第15族元素の第2の原子を含むことが好ましい。
【0009】
上記の塩基発生剤において、前記第2の原子は、窒素原子又はリン原子であることが好ましい。
【0010】
上記の塩基発生剤において、前記塩基は、前記陽イオンが分解することにより発生することが好ましい。典型的には、前記陽イオンからプロトン脱離等することで前記塩基が発生する。
【0011】
上記の塩基発生剤において、前記第2の原子は4つの結合を有することが好ましい。例えば、前記第2の原子が窒素原子やリン原子の場合、4つの結合のうち一つの結合が開裂することで、それぞれ求核性の強いアミンやホスフィンを発生させることができる。このため、エポキシ化合物等のモノマーの有効な開始剤と成り得る。
【0012】
上記の塩基発生剤において、前記第1の原子は少なくとも4つの第16族元素である第3の原子に結合していることが好ましい。
【0013】
上記の塩基発生剤において、前記第3の原子は酸素原子であることが好ましい。
【0014】
上記の塩基発生剤において、50℃以上の温度に加熱することにより塩基が発生することが好ましい。
【0015】
上記の塩基発生剤は110℃以下の温度で加熱しても塩基を発生させることができることが好ましい。例えば、本発明の態様に係る、後述する有機塩18、19、21、22及び23は、80〜110℃以下の加熱であっても長くとも一時間程度で樹脂を硬化することが可能である。
【0016】
本発明のいくつかの態様に係る試剤は、モノマー又は樹脂を硬化させる又はモノマー又は樹脂の硬化を促進する試剤であって、前記試剤は、陰イオンと、陽イオンと、を含み、前記陰イオンは、五配位又は六配位構造を有する第14族の元素の第1の原子を含むことを特徴とする。
【0017】
上記の試剤において、前記陽イオンは、第15族元素のである第2の原子を含むことが好ましい。
【0018】
上記の試剤において、前記陰イオンは、前記第1の原子は六配位構造を有することが好ましい。
【0019】
上記の試剤において、50℃以上の温度に加熱することによりモノマー又は樹脂を硬化させることが好ましい。上記の塩基発生剤は110℃以下の温度で加熱しても塩基を発生させることができることが好ましい。例えば、本発明の態様に係る、後述する有機塩18、19、21、22及び23は、80〜110℃以下の加熱であっても長くとも一時間程度で樹脂を硬化することが可能である。
【0020】
上記の試剤において、前記第1の原子は六個の酸素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表されることを特徴とする。
【化4】

[上記一般式(3)及び(4)のZ乃至Zの各々は互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基の場合は、Z乃至Zのうち少なくとも二つが少なくとも一つの原子を介して結合してもよい。上記一般式(1)及び(2)のR乃至Rの各々は、互いに同一でも異なっていてもよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。上記一般式(1)及び(2)のDは酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、E及びGの各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、H及びJの各々は、互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0022】
上記一般式(1)及び(2)の各陽イオンは一価の陽イオンであることが好ましい。陽イオンを一価とすることにより、静電相互作用を低減し、静電相互作用の束縛から解放され易くなり、電気的に中性の塩基をより発生しやすくする。
【0023】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(3)及び(4)のいずれかで表されることを特徴とする。
【化5】

[上記一般式(3)及び(4)のZ乃至Z11の各々は互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基の場合は、Z乃至Z11のうち少なくとも二つが少なくとも一つの原子を介して結合してもよい。上記一般式(3)及び(4)のR乃至Rの各々は、互いに同一でも異なっていてもよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。上記一般式(3)及び(4)のLは酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、M及びQの各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、T及びXの各々は、互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0024】
上記一般式(3)及び(4)の各々は、二つの陽イオンを有する。各陽イオンは一価の陽イオンであることが好ましい。これにより陰イオンと複数の陽イオンから構成される有機塩から複数の塩基を発生させることが可能となり、硬化性能が向上する。
【0025】
上記の有機塩において、前記D及びLは炭素原子を含む二価の有機基であることが好ましい。この有機塩の具体的な例の代表としては、後述する有機塩1、4、13、16、21乃至23等が挙げられる。このような有機塩の特長としては、例えば、加熱でエポキシ化合物等の基質の重合を促進する試剤として用いた場合、加熱温度を低下させられるとい点等である。有機塩1、4、13、21乃至23のように特にベンジルアンモニウム型のものは低温硬化性に優れており、110℃以下の例えば80℃でも硬化剤及び硬化促進剤として機能する。さらに、有機塩13、21乃至23のように対アニオンを六配位ケイ素型アニオンとすることで単位構造から発生するアミン量を向上させることができるためより硬化の効率が向上する。
【0026】
上記の有機塩において、前記R及びRは芳香族を含むことが好ましい。
【0027】
上記の有機塩において、前記E又はGは窒素原子を含むことが好ましい。上記一般式(2)の陽イオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアゾリウムカチオン、置換基を有していてもよいイミダゾリウムが挙げられる。さらにアゾリウムカチオンの具体例は、例えば、1,2,4−トリアゾリウム、オキサゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジアゾリウム、ベンゾトリアゾリウム、ヒドロキシベンゾトリアゾリウム、ベンゾキサゾリウム、1,2,3−ベンゾチアジアゾリウム、3−メルカプトベンゾトリゾリウム等が挙げられる。イミダゾリウムカチオンとしては、置換基を有さないイミダゾリウム及び2−メチルイミダゾリウム、2−エチルイミダゾリウム、2−ウンデシルイミダゾリウム、2−ヘプタデシルイミダゾリウム及び2−フェニルイミダゾリウム等の2位にアルキル基やアリール基等の有機基を有するイミダゾリウム、2位以外にもアルキル基やアリール基等の有機基を有する2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾリウム等の置換基を有するイミダゾリウムが挙げられる。1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム等の極性の高いニトリル基を有するイミダゾリウムも例として挙げられる。
【0028】
上記の有機塩において、前記M又はQは窒素原子を含むことが好ましい。上記一般式(4)の陽イオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアゾリウムカチオン、置換基を有していてもよいイミダゾリウムが挙げられる。さらにアゾリウムカチオンの具体例は、例えば、1,2,4−トリアゾリウム、オキサゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジアゾリウム、ベンゾトリアゾリウム、ヒドロキシベンゾトリアゾリウム、ベンゾキサゾリウム、1,2,3−ベンゾチアジアゾリウム、3−メルカプトベンゾトリゾリウム等が挙げられる。イミダゾリウムカチオンとしては、置換基を有さないイミダゾリウム及び2−メチルイミダゾリウム、2−エチルイミダゾリウム、2−ウンデシルイミダゾリウム、2−ヘプタデシルイミダゾリウム及び2−フェニルイミダゾリウム等の2位にアルキル基やアリール基等の有機基を有するイミダゾリウム、2位以外にもアルキル基やアリール基等の有機基を有する2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾリウム等の置換基を有するイミダゾリウムが挙げられる。1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム等の極性の高いニトリル基を有するイミダゾリウムも例として挙げられる。
【0029】
上記の有機塩において、前記E又はGは炭素―窒素二重結合を含むことが好ましい。上記一般式(2)の陽イオンの具体例としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジ二ウム、置換基を有していてもよいピリダジ二ウム、置換基を有していてもよいピリミジ二ウム及び置換基を有していてもよいトリアジ二ウムが挙げられる。なお、ピリジニウムイオンから構成される上記の有機塩において、硬化剤若しくは硬化促進剤としての性能を向上させるためには、ピリジ二ウムから中性のピリジンに変化した際に当該ピリジンの窒素原子上の電子密度を向上させる必要がある。具体的には、例えば、窒素原子上に置換基を有していてもよいアミノ基及びアルコキシ基、ヒドロキシ基等の電子供与性基がピリジン骨格を構成するいずれかの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0030】
上記の有機塩において、前記M又はQは炭素―窒素二重結合を含むことが好ましい。上記一般式(4)の陽イオンの具体例としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジ二ウム、置換基を有していてもよいピリダジ二ウム、置換基を有していてもよいピリミジ二ウム及び置換基を有していてもよいトリアジ二ウムが挙げられる。なお、ピリジニウムイオンから構成される上記の有機塩において、硬化剤若しくは硬化促進剤としての性能を向上させるためには、ピリジ二ウムから中性のピリジンに変化した際に当該ピリジンの窒素原子上の電子密度を向上させる必要がある。具体的には、例えば、窒素原子上に置換基を有していてもよいアミノ基及びアルコキシ基、ヒドロキシ基等の電子供与性基がピリジン骨格を構成するいずれかの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0031】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(5)、(6)、(7)及び(8)のいずれかで表される。
【化6】



[上記一般式(5)乃至(8)のAは水素原子、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、A乃至Aの各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基は異なる二つの酸素原子に結合する少なくとも一つの原子を含み、上記一般式(5)乃至(8)のD及びLは窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、E、G、M及びQの各々は、独立して、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、H、J、T及びXの各々は、独立して、水素原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。上記一般式のR乃至R8はそれぞれ水素原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0032】
上記一般式(1)及び(3)において、RとRは、各々水素原子であることがさらに好ましい。R、R、R及びRは、各々アルキル基であることがさらに好ましい。D及びLはさらにメチレン基であることがさらに好ましい。RとRは、各々置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。代表的には置換基を有していてもよいフェニル基及びナフチル基であるである。
【0033】
上記の有機塩において、A乃至Aの各々は互いに結合した二つの炭素原子を含むことが好ましい。
【0034】
上記の有機塩において、前記二つの炭素原子のそれぞれが異なる酸素原子に結合していることが好ましい。
【0035】
上記の有機塩において、A乃至Aの各々は置換基を有していても良いアリール基であることが好ましい。
【0036】
上記の有機塩において、Aは水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリル基及び置換基を有していてもよいビニル基等の有機基であることが好ましい。
【0037】
上記の有機塩において、A乃至Aの具体例は、例えば、下記一般式で表される。下記一般式(9)乃至(13)においてR乃至R13の各々は、少なくとも一つの互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子又はハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R乃至R13の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子又はハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。
【化7】
【0038】
上記一般式(9)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有していてもよいアルカンジオール又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(10)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいグリコール酸又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(11)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいシュウ酸又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(12)の構造を含む五配位以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいカテコール又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(12)の構造を含む5配以上の高配位ケイ素化合物は例えばベンゼン環上に二つ以上のヒドロキシ基を有し、上記ヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよいカテコール誘導体及びピロガロール誘導体等の化合物又はそれらの化合物の塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(13)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えばナフタレン環に代表される縮合環式炭化水素上に二つ以上のヒドロキシ基を有し、上記ヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよいジヒドロキシ誘導体等の化合物又はそれらの化合物の塩を出発原料として合成することができる。置換基R13は、二つの酸素原子に結合したベンゼン環側(I)にあってもよいし、ケイ素原子に結合する酸素原子等のヘテロ原子の位置は、当該縮合環式炭化水素の骨格を構成する炭素原子の中から適宜選択することができる。
【0039】
カテコール誘導体は、二つのヒドロキシ基が結合する炭素原子同士が結合している構造を有しているが、この構造は接着性を向上させることができる。本発明に係る有機塩のうちカテコール誘導体をケイ素原子上の配位子として有する有機塩は、加熱等による分解により当該カテコール誘導体からケイ素原子が外れてフリーのカテコール誘導体が発生する。このカテコール誘導体により本発明に係る有機塩を接着剤用の組成物の硬化剤又は硬化促進剤として使用した場合、加熱より形成された硬化膜のせん断接着強度は向上する傾向がある。
【0040】
なお、上記一般式(12)に示したベンゼン環を構成する炭素原子の少なくとも一つを窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子に置換したものも使用可能である。
【0041】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む典型例としては、例えば、下記一般式(14)及び(15)で表されるピリジン環を有するものがある。下記式(14)においては、ケイ素原子はピリジン環の2位及び3位に結合した酸素原子に結合しており、下記式(15)においては、ケイ素原子はピリジン環の3位及び4位に結合した酸素原子に結合している。
【0042】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(16)に示したような、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち二つが窒素原子に置換され、当該二つの窒素原子の間には一つの炭素原子を有する、ピリミジン環骨格を有していてもよい。
【0043】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(17)のような、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち二つを窒素原子に置換し、当該二つの窒素原子の間には二つの炭素原子を有する、ピラジン環骨格を有していてもよい。
【0044】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(18)及び(19)のように、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち互いに結合する二つが窒素原子に置換されたピリダジン環骨格を有していてもよい。下記式(18)に示した構造おいては、ケイ素原子はピリダジン環の2位及び3位に結合した酸素原子に結合しており、下記式(19)に示した構造においては、ケイ素原子はピリダジン環の3位及び4位に結合した酸素原子に結合している。
【0045】
下記一般式(14)乃至(19)のR14乃至R19の各々は、互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R乃至R13の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子若しくはケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。
【化8】
【0046】
上記一般式(13)に示したナフタレン環を構成する炭素原子の少なくとも一つを窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子に置換したものも使用可能である。
【0047】
下記一般式(13)に記載の構造でヘテロ原子を含む典型例としては、例えば、下記一般式(20)で表されるキノリン骨格、下記一般式(21)で表されるキノザリン骨格、下記一般式(22)で表されるキナゾリン骨格、下記一般式(23)で表されるナフチリジン骨格、下記一般式(24)で表されるイソキノリン骨格を有するものがある。下記一般式(20)乃至(24)で表される部分構造において、ケイ素原子が結合する二つの酸素原子等のようなヘテロ原子は、キノリン骨格、キノザリン骨格、キナゾリン骨格、ナフチリジン骨格及びイソキノリン骨格等のヘテロ原子を少なくとも一つ含む縮合環式炭化水素の骨格を形成する複数の炭素原子の中から適宜選択することができる。
【化9】

【0048】
上記一般式(20)乃至(24)のR20乃至R29の各々は、少なくとも一つの互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等のような炭素原子以外の第14族元素である原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R20乃至R29の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等のような炭素原子以外の第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を有する置換基又は置換基を有していてもよい有機基である。
【0049】
本発明のいくつかの態様に係る組成物は、上記のいずれかの塩基発生剤、上記のいずれかの試剤又は上記のいずれかの有機塩と、モノマー又は樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0050】
上記の組成物にいて、前記モノマー又は前記樹脂は、環状構造を有し、前記環状構造は、第16族元素の第4の原子は含んでいることが好ましい。
【0051】
上記の組成物において、前記モノマー又は前記樹脂は、エポキシ基又はオキセタニル基を有することが好ましい。
【0052】
上記の組成物において、さらにヒドロキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0053】
上記の組成物において、前記モノマー又は前記樹脂は、ケイ素原子を含むことが好ましい。前記モノマー又は前記樹脂の具体例は、例えば、ケイ素―酸素結合を有するシロキサン化合物や一つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物である。
【0054】
上記の組成物において、さらにフィラー等の粒子を含むことが好ましい。
【0055】
上記の組成物において、前記粒子は、無機粒子であることが好ましい。
【0056】
本発明のいくつかの態様に係る素子の製造方法は、上記のいずれかの組成物又は当該組成物の溶液を基体に塗布することにより第1の膜を形成する第1の工程と、前記第1の膜又は前記第1の膜から揮発成分の少なくとも一部を除去した第2の膜を50℃以上の温度で加熱する加熱工程を行うことにより前記第1の膜又は前記第2の膜を硬化させる第2の工程と、を含むことを特徴とする。
【0057】
上記の素子の製造方法において、前記加熱工程は、前記第1の膜又は前記第2の膜を80℃以上の温度に加熱することにより行われることが好ましい。
【0058】
上記の素子の製造方法において、前記加熱工程は、110℃以で行うことが好ましい。
【0059】
本発明のいくつかの態様に係る硬化膜は、上記のいずれかの組成物を硬化することにより得られることを特徴とする。
【0060】
本発明のいくつかの態様に係る素子は、上記の硬化膜を含むことを特徴とする。
【0061】
上記の陽イオンとしては、例えば、フェニルアンモニウム、エチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、sec−プロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、sec−ブチルアンモニウム、i−ブチルアンモニウム、tert−ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、デシルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、1,2−ジメチルヘキシルアンモニウム、3−ペンチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、アリルアンモニウム、1−ヒドロキシエチルアンモニウム、1−ヒドロキシアンモニウム、1−メチル―2−ヒドロキシエチルアンモニウム、4−ヒドロキシブチルアンモニウム、1−ヒドロキシペンチルアンモニウム、1−ヒドロキシヘキシルアンモニウム、3−エトキシプロピルアンモニウム、3−プロポキシプロピルアンモニウム、3−イソプロポキシプロピルアンモニウム、3−ブトキシプロピルアンモニウム、3−イソブトキシプロピルアンモニウム、3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピルアンモニウム、シクロペンチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ノルボルニルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、フェニルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、フェネチルアンモニウム、α−フェニルエチルアンモニウム、ナフチルアンモニウム、フルフリルアンモニウム等の1置換アンモニウム;エチレンジアンモニウム、プロパン−1,2−ジアンモニウム、プロパン−1,3−ジアンモニウム、ブタン−1,2−ジアンモニウム、ブタン−1,3−ジアンモニウム、ブタン−1,4−ジアンモニウム、ペンタン−1,5−ジアンモニウム、ヘキサン−1,6−ジアンモニウム、ヘプタン−1,7−ジアンモニウム、オクタン−1,8−ジアンモニウム、シクロヘキサン−1,4−ジアンモニウム、高分子であるポリエチレンイミン等の多価アンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジ−n−ブチルアンモニウム、ジ−sec−ブチルアンモニウム、ジイソブチルアンモニウム、ジ−n−ペンチルアンモニウム、ジ−3−ペンチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、ジ(2−エチルヘキシル)アンモニウム、メチルヘキシルアンモニウム、ジアリルアンモニウム、ジフェニルアンモニウム、メチル−フェニル−アンモニウム、エチル−フェニル−アンモニウム、ジベンジルアンモニウム、メチルベンジルアンモニウム、ジナフチルアンモニウム等の2置換アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ−n−プロピルアンモニウム、トリ−iso−プロピルアンモニウム、トリ−1,2−ジメチルプロピルアンモニウム、トリ−3−メトキシプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、トリ−iso−ブチルアンモニウム、トリ−sec−ブチルアンモニウム、トリ−ペンチルアンモニウム、トリ−3−ペンチルアンモニウム、トリ−n−ヘキシルアンモニウム、トリ−n−オクチルアンモニウム、トリ−2−エチルヘキシルアンモニウム、トリ−ドデシルアンモニウム、トリ−ラウリルアンモニウム、ジシクロヘキシルエチルアンモニウム、シクロヘキシルジエチルアンモニウム、トリ−シクロヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム、N−メチルジヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、N−メチルジシクロヘキシルアンモニウム、N、N−ジエチルエタノールアンモニウム、N、N−ジメチルエタノールアンモニウム、N−エチルジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N−ジメチルフェニルアンモニウム、N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、ジエチルベンジルアンモニウム、トリフェニルアンモニウム等の3級アミン;置換基を有していてもよい又は環状構造を有していてもよいグアニジニウム及びビグアニジウム等が挙げられる。無置換のピリジ二ウム塩やピリジン環上にアミノ基、アルコキシ基、アルキル基及びヒドロキシ基等の少なくとも一つの電子供与性置換基を有する4−アミノピリジニウム、4−メトキシピリジニウム、4−メチルピリジニウム、N,N−ジメチル―4−アミノピリジン(DMAP)及び4−ヒドロキシピリジニウム等のピリジ二ウムであってもよい。
【0062】
上記に例示したアンモニウムのうちフェニルアンモニウムの前駆体であるアニリン及びN,N−ジメチルフェニルアンモニウムの前駆体であるN,N−ジメチルフェニルアミンのように無置換のベンゼンに直接窒素原子が結合したフェニルアミンやピリジ二ウムの前駆体である無置換のピリジンは、硬化促進能自体が低いため、一液型の樹脂硬化剤の硬化剤又は硬化促進剤として使用するために積極的に高配位ケイ素構造を有するアニオンと有機塩を構成する必要が無い場合がある。なお、そのような有機塩は、例えば、硬化を遅延させる硬化遅延剤として用いることができる。
【0063】
なお、4−(アミノメチル)ピぺリジン、3−ジアミノプロパン及び4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタンのように一分子内に二つの一級のアミノ基又は一分子内に一級のアミノ基と二級のアミノ基を有し、プロトンが付加され、二価のカチオンとして6配位ケイ素構造を有するアニオンと有機塩を構成する場合は、一分子内の一方のアンモニウム基から加熱等によりプロトンが脱離し、中性のアミノ基となったとしても、引き続き有機塩を構成することになるので、当該中性のアミノ基の運動が束縛され、熱硬化促進能が低下する場合がある。そのような有機塩も、同様に、硬化を遅延させる硬化遅延剤として用いることができる。
【0064】
1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル―1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン (MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン(TBD)、tert−ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1.3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン(BEMP)等共役酸のアセトニトリル中のpKaが21以上の超強塩基も用いることができる。
【0065】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、低温硬化性に比較的優れ、硬化物を形成した際に高いガラス転移点を示す、下記一般式(25)で表されるイミダゾール系が望ましい。
【0066】
実際、後述する表1からも分かるように本発明に係る有機塩であって、イミダゾール誘導体由来の陽イオンを含むものを硬化促進剤として用いて得られた硬化膜は高いガラス点を有する。また、比較例との比較からも分かるように上記一般式(12)及び(13)で示されたカテコール誘導体が陰イオンの配位子として含まれているものを硬化促進剤として用いた場合、陽イオンが同じイミダゾリウムであってもガラス転移点が上昇する。
【0067】
つまり、ケイ素高配位構造を構成する配位子としてカテコール誘導体を用い、陽イオン側にイミダゾリウムイオンを用いることで、高いガラス転移点を達成することができる。高いガラス転移点は、封止性能に正に相関するので、カテコール誘導体型高配位ケイ素アニオン―イミダゾール誘導体カチオン有機塩は、優れた樹脂の重合触媒であると言える。
【0068】
下記一般式(25)においてR30乃至R34の各々は、互いに独立であって、同一でも異なってよい置換基である。水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等炭素原子以外の第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。さらにR30が水素原子であることが好ましい。また、R31とR32とが少なく一つの結合を介して結合して環状構造を形成していてもよいし、R33とR34とが少なくておも一つの結合を介して結合して環状構造を形成していてもよい。なお、下記一般式(25)のイミダゾリウムの五員環骨格のうち少なくとも一つの炭素原子を硫黄原子や酸素原子等のヘテロ原子に置換したものも用いることができる。例えば、当該五員環骨格の二つ窒素原子の間の炭素原子を硫黄原子に変更してもよく、このようにすることで本有機塩によりエポキシ化合物等の基質を硬化させた硬化膜の耐酸化性を向上させることができる。
【化10】
【0069】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、下記一般式(26)乃至(28)で表されるように一分子内に複数のアミノ基を有しつつ、当該複数のアミノ基のうち一つのアミノ基にプロトンが付加してアンモニウム基となっている一価の陽イオンが挙げられる。具体的な例としては、下記一般式(26)は環状構造を有するピペラジニウムであり、下記一般式(27)は環状構造を有するN,N−ジメチルピペラジニウムである。また、下記一般式(28)は、トリエチレンジアミンの一つのアミノ基にプロトンが付加したものである。
【化11】
【0070】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、下記一般式(29)及び(30)で表されるようたように、複数の窒素原子を含み、当該複数の窒素原子のうち少なくとも二つの窒素原子が芳香族に結合しており、当該少なくとも二つの窒素原子のうち一つの窒素原子にプロトン付加したものが挙げられる。
【化12】
【0071】
上記一般式(1)、(3)、(5)及び(7)の陽イオンとして好適な例は、窒素原子上にアリールアルキル基を有するものである。このように窒素原子上にアリールメチル基等のアリールアルキル基を備えた一価の陽イオンを有する後述の有機塩1、13、21、22及び23等の化合物は、80〜110℃という低温でもエポキシ化合物を重合させることが可能である。さらにアリールメチル基に加えて、少なくとも一つの有機基を有していてもよい。より具体的な例としては、下記一般式(31)で表されるN,N−ジメチルベンジルアンモニウム、下記一般式(32)で表される2−ジメチルアミノメチルフェノール及び下記一般式(33)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。

【化13】
【0072】
上記一般式(1)乃至(8)の有機塩の陰イオンの好適な例としては、下記一般式(35)に示した構造が挙げられる。R35は、少なくとも一つ以上の置換基であって、互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。
【化14】
【0073】
特に好適な置換基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基及びアルキル基である。中でもヒドロキシ基は有機塩から遊離したアミン類等の塩基を捕捉することが可能なので保存安定性の向上に寄与することができる。また、アルキル基やエステル基は、その立体障害により当該有機塩間の会合を抑制するため、液状組成物中での分散性を向上させる。さらに、樹脂やモノマー等の基質と当該有機塩との接近が抑制されるため、保存安定性と硬化性能を両立させることが可能となる。
【0074】
この有機塩に用いるアルキル基としては直鎖状及び分岐状のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられるが、後述する有機塩17及び20乃至23の例にもあるようにtert−ブチル基等のように特に立体障害の大きな置換基を用いることで、分散性が向上することがある。
【0075】
エステル基としては、直鎖状及び分岐状のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよいアルキル基を有するものが挙げられるが、後述する有機塩24のように直鎖状のアルキル基を備えたエステル基を用いることができる。もちろん、上記の置換基を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、本発明に係る好適な実施形態について説明する。
[有機塩の合成]
【0077】
本発明のいくつの態様に係る典型的な有機塩の合成は、少なくとも二つ以上の水酸基を有するその他の置換基を有していてもよい化合物と一つのケイ素原子上に三つ以上のアルコキシ基を有するシラン化合物とをアミン等の塩基存在下で反応させる工程を経て合成される。
【0078】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール22.0g(0.20mol)、フェニルトリエトキシシラン24.0g(0.10mol)及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。ベンジルアミン10.7g(0.10mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で2時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式36で表される有機塩1を得る。
【化15】
【0079】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール22.0g(0.20mol)、フェニルトリエトキシシラン24.0g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。イミダゾール6.81g(0.10mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で2時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式37で表される有機塩2を得る。
【化16】
【0080】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール22.0g(0.20mol)、フェニルトリエトキシシラン24.0g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2―メチルイミダゾール8.21g(0.10mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で2時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式38で表される有機塩3を得る。
【化17】

【0081】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。ベンジルアミン21.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式39で表される有機塩4を得る。
【化18】

【0082】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。イミダゾール13.6g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式40で表される有機塩5を得る。
【化19】
【0083】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2−メチルイミダゾール16.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式41で表される有機塩6を得る。
【化20】
【0084】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2−メチルイミダゾール16.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式42で表される有機塩7を得る。
【化21】

【0085】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。イミダゾール13.6g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式43で表される有機塩8を得る。
【化22】
【0086】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。1,2−ジメチルイミダゾール19.2g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式44で表される有機塩9を得る。
【化23】

【0087】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール22.0g(0.20mol)、フェニルトリエトキシシラン24.0g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。4−アミノピリジン9.4g(0.10mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式45で表される有機塩10を得る。
【化24】
【0088】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール22.0g(0.20mol)、フェニルトリエトキシシラン24.0g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2級アミンであるピぺリジン8.5g(0.10mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で2時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式46で表される有機塩11を得る。
【化25】

【0089】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。テトラメチルグアニジン23.3g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式47で表される有機塩12を得る。
【化26】

【0090】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。3級アミンであるN,N-ジメチルベンジルアミン27.0g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式48で表される有機塩13を得る。
【化27】

【0091】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。平均分子量1800のポリエチレンイミン(PEI)8.6gを10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式49で表される高分子型有機塩14を得る。なお、塩基としてポリエチレンイミン(PEI)のような高分子を用いることにより硬化温度を上げることが可能であり、本有機塩を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)100質量部に対して、25質量部を用いて熱硬化実験を行うと、硬化温度が180℃以上で硬化する。
【化28】
【0092】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。トリエチルアミン20.2g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式50で表される有機塩15を得る。
【化29】

【0093】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。プロピルアミン11.8g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式51で表される有機塩16を得る。
【化30】

【0094】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2−メチルイミダゾール16.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式52で表される有機塩17を得る。
【化31】
【0095】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。ベンズイミダゾール23.6g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式53で表される有機塩18を得る。
【化32】

【0096】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。1−メチルイミダゾール16.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式54で表される有機塩19を得る。
【化33】
【0097】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。ピぺラジン17.2g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式55で表される有機塩20を得る。
【化34】

【0098】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。N,N−ジメチルベンジルアミン27.0g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式56で表される有機塩21を得る。
【化35】

【0099】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2−-ジメチルアミノメチルフェノール30.2g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解する溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式57で表される有機塩22を得る。
【化36】
【0100】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。3−ピコリルアミン21.6g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解する溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式58で表される有機塩23を得る。
【化37】
【0101】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、没食子酸プロピル63.7g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。2−メチルイミダゾール16.4g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式59で表される有機塩24を得る。
【化38】
【0102】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、4−tert−ブチルカテコール49.9g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)30.448g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式60で表される有機塩25を得る。
【化39】
【0103】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、カテコール33.0g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)30.448g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式61で表される有機塩26を得る。
【化40】
【0104】
冷却管及び撹拌装置付きのセパラブルフラスコ(容量:500mL)に、ピロガロール37.8g(0.30mol)、テトラエトキシシラン20.1g(0.10mol)、及びメタノール50mLを仕込み、攪拌下で均一溶解する。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)30.448g(0.20mol)を10mLのメタノールに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。室温で1時間反応させた後、イソピロピルエーテル20mLを当該セパラブルフラスコに投入し、結晶を析出させた後、析出した結晶を濾過、洗浄及び真空乾燥することにより精製し、下記一般式62で表される有機塩27を得る。
【化41】


【0105】
上記の有機塩は、例えば熱又は光により塩基を発生させる塩基発生剤として機能させることができる。また、上記の有機塩は、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ポリアミック酸等のモノマー又は樹脂を硬化させる硬化剤又は硬化促進剤として機能させることができる。
【0106】
[組成物の調製及び硬化膜の作製]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)100質量部に対して、酸無水物(HN-5500、日立化成株式会社製)を161質量部、有機塩3、26,25、18、19、17、20、22、21及び23を14質量部、
シランカップリング剤KBM−403、信越化学工業株式会社製)0.55質量部を混練し、液状組成物を調製する。ゲル化時間及び粘度変化は、それぞれ150℃及び25℃で測定する。比較例は2−メチルイミダゾールのアミアダクトである。二つの鉄の試験片の間に上記液状組成物を塗布し、せん断接着強度はひっぱり試験機を用いて測定する。
【表1】
【0107】
表1から比較例であるアミンアダクトを硬化促進剤として用いた場合に比べ、本発明に係る有機塩を硬化促進剤として用いた場合、せん断接着強度が1.5倍程と高くなることが分かる。
【0108】
アンモニウムカチオンがDBUのプロトン付加体で3個のカテコールが配位した6配位ケイ素をアニオンとする有機塩26を半導体封止剤用のフェノール樹脂及びエポキシ樹脂を含む粉末状組成物として用いた場合は、高い保存安定性を示すが、液状組成物中では保存安定性はさほど良くなく、有機塩25のように3個のカテコール配位子のベンゼン環上にアルキル基等の置換基を導入することで保存安定性は液状組成物中でも向上する。有機塩27のようにケイ素原子に配位するカテコール配位子のベンゼン環上に当該ケイ素原子に配位する酸素原子以外にヒドロキシ基等の置換基を有している場合、当該ヒドロキシ基が遊離したDBUの捕捉サイトとしても機能する場合があり、液状組成物における保存安定性が向上する場合がある。
【0109】
表1の比較例の硬化膜に比べて、硬化膜のせん断強度は1.5倍以上も向上しており、本発明に係る有機塩のアニオン部分がせん断接着強度の向上に寄与することを示している。
【0110】
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)100質量部に対して、ジシアンジアミドを8質量部及び有機塩18を5質量部室温で混錬して液状組成物を調製し、二つの鉄の試験片の間に塗布し、170℃で20分間加熱し、硬化膜を作製し、硬化膜のせん断接着強度を測定する。本発明に係る有機塩を硬化促進剤として用いて得られた硬化膜は、最低でも比較例は2−メチルイミダゾールのアミンアダクト型化合物を硬化促進剤として用いて得られる硬化膜に比べて、最低でも1.3倍以上のせん断接着強度が観察される。
【0111】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)100質量部に対して、有機塩3及び18を25質量部、シランカップリング剤KBM−403、信越化学工業株式会社製)0.55質量部を室温で混錬し、本発明に係る有機塩及び比較例が硬化剤として機能する液状組成物を得る。この液状組成物を二つの鉄の試験片の間に上記液状組成物を塗布し、100℃で30分加熱し、硬化膜のせん断接着強度はひっぱり試験機を用いて測定する。本発明に係る有機塩を硬化剤として用いた場合も比較例である2−メチルイミダゾールのアミンアダクト型化合物を硬化剤として用いて得られた硬化膜に比べて、やはりひっぱりせん断強度が向上し、最低でも1.3倍以上のせん断接着強度が観察される。
【0112】
以上のように本発明に係る有機塩を硬化剤若しくは硬化促進剤として用いることで、硬化膜のせん断接着強度が向上することから、当該有機塩を含む組成物は、半導体素子等のデバイスの他のデバイスや基板との接着させるアンダーフィル剤等の電子部品向けの接着剤や、自動車や建築等の構造物を製造する際に用いる構造接着剤として極めて有用である。
【0113】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)と硬化剤として機能する上記樹脂に対して25wt%の上記の有機塩1乃至13、14及び16のいずれかと上記樹脂に対して1wt%のEVONIK社製のアエロジル200とを含む組成物Aを調製する。
【0114】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱化学株式会社社製)と硬化促進剤として機能する上記樹脂に対して10wt%の上記の有機塩13又は15と上記樹脂に対して90wt%のマレイン酸無水物と硬化促進助剤としての上記樹脂に対して10wt%の1,4-シクロヘキサンジメタノールとを含む組成物Bを調製する。
【0115】
[デバイスの製造]
上記の組成物A及びBを配線用基板に接着剤塗布機で塗布することにより塗膜を形成し、上記塗膜を80℃〜150°C、1Torrで3分間体積膨張したものに、20PinSOIC部品等の電子部品を部品装着機にて装着し、基板を150°Cに、5分間暴露し、上記塗膜を熱硬化させることにより電子回路が形成させた基板を形成する。
【0116】
上記の配線用基板及び20PinSOIC部品をそれぞれガラス基板及びプリズム及びレンズ等光学素子に変更し、同様に上記組成物A及びBの塗膜を熱硬化することにより光学素子を形成することができる。上記の有機塩の多くは透明性が高いため光学部品を形成するための接着剤としても好適である。
【0117】
圧電素子型、バブルジェット(登録商標)型、連続噴射型、静電誘導型等の方式のインクジェットヘッドから熱硬化インクとして上記組成物A及びBを吐出して所望のパターン形状を形成することができる。つまり上記組成物A及びB等のようなインク化し、熱硬化インクとして用いて所望のパターンを直描することができる。スポッターも本発明に係る熱硬化インクによるパターンの直描に用いることができる。
【0118】
上記熱硬化インクに顔料、染料、発光材等光学的な効果を有する化合物をさらに加えることにより、ガラス、金属等プラスチックの基板に対して所望の表示をすることが可能となる。
【0119】
[炭素繊維強化プラスチックス用プリプレグ樹脂組成物]
N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(エポキシ当量120)350g、ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量360)300g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189)350g、硬化剤となる有機塩4又は有機塩21を250g、ポリエーテルサルホン100pを2564g(20部添加)を塩化メチレン(55)/クロロホルム(42)/メタノール(3)の混合溶媒3590gに溶かす。この溶液をトレカT300クロス#7373に含浸させ、一晩放置後、120℃、5分間乾燥してWR41%のクロスプリプレグを作製する。このプリプレグを疑似等方に24プライ積層した後、離型処理したアルミ板上に載せ、ナイロン製のバキュムバッグでオートクレーブ用にセットする。このセットした物をオートクレーブに入れ6kg/cm2に加圧した後、180℃、2時間加熱して硬化板を得る。この硬化板の厚さは、5.0mm、ガラス転移温度は190℃である。この硬化板から縦150mm、横100mmの試験片を切り出した後、縦横厚さ方向が90゜になるよう端面加工する。この試験片に厚さ10mmあたり900kg−cmの落錘衝撃を与えた後、縦方向に圧縮荷重をかけ衝撃後の残存圧縮強度を測定すると、有機塩4及び有機塩21を硬化剤に用いて得られた場合のそれぞれについて、26.5kg/mm及び27.0kg/mmである。結果は、比較例として、N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン350g、ブロム化エポキシ樹脂300g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂350g、ネオペンチルグリコールビス(p−アミノベンゾエート)470g(エポキシ1当量に対してアミン1当量に相当)をMEKに溶かす。この溶液を用いて上記と同様にして、衝撃後の残存圧縮強度を測定すると、18.0kg/mmである。
【0120】
本発明のいくつかの態様に係る上記の有機塩を硬化剤、硬化促進剤、試材又は塩基発生剤は、封止部材、接着部材、プリプレグや防錆剤、保護膜、反射膜及び絶縁膜等、機械的、化学的、光学的及び電気的な性能を有する部材又は膜を形成するための組成物又はインクを調製することができる。
【0121】
本発明のいくつかの態様に係る上述の有機塩は、エポキシ化合物、フェノール化合物又はウレタン樹脂を作製するためのイソシアナート化合物及びアルコール化合物等の重合性基質を含む組成物の硬化剤及び硬化促進剤として、低温硬化性や当該組成物の硬化後の膜質(例えば、ガラス転移点及びせん断接着強度等)及び保存安定性の観点から優れている。
【0122】
本発明のいくつかの態様に係る上述の有機塩は、粉末状組成物等とは異なり硬化剤及び硬化促進剤の寿命が短縮する溶液状組成物又は粒子が分散した分散液状組成物に対して、良好な硬化膜の膜質を含めた硬化性能を維持しつつ保存安定性に優れている点から特に意義のあるものである。