【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る塩基発生剤は、陰イオンと、陽イオンと、を含み、前記陰イオンは、五配位又は六配位構造を有する14族元素の第1の原子を含むことを特徴とする。上記の塩基発生剤において製造コストを低減する必要がある場合は、原料原価が比較的安い六配位構造が好ましい場合がある。また、六配位構造では一構造単位から複数の塩基分子を発生させることができるため、塩基発生効率及び硬化性能という観点から優れる場合がある。
【0007】
上記の塩基発生剤は、例えば、以下(1)乃至(3)のいずれかを含む。
水等の溶媒に溶解することにより水酸化物イオンを発生させる化合物又は水酸化物イオンを直接発生させるもの
(2)プロトンを受容するブレンステッド塩基 (Broensted base)として機能する化学種又は物質を発生させるもの
(3)置換基を有していてもよいアミン及び置換基を有していてもよいホスフィン等のルイス塩基を発生させるもの
【0008】
上記の塩基発生剤において、前記陽イオンは、第15族元素の第2の原子を含むことが好ましい。
【0009】
上記の塩基発生剤において、前記第2の原子は、窒素原子又はリン原子であることが好ましい。
【0010】
上記の塩基発生剤において、前記塩基は、前記陽イオンが分解することにより発生することが好ましい。典型的には、前記陽イオンからプロトン脱離等することで前記塩基が発生する。
【0011】
上記の塩基発生剤において、前記第2の原子は4つの結合を有することが好ましい。例えば、前記第2の原子が窒素原子やリン原子の場合、4つの結合のうち一つの結合が開裂することで、それぞれ求核性の強いアミンやホスフィンを発生させることができる。このため、エポキシ化合物等のモノマーの有効な開始剤と成り得る。
【0012】
上記の塩基発生剤において、前記第1の原子は少なくとも4つの第16族元素である第3の原子に結合していることが好ましい。
【0013】
上記の塩基発生剤において、前記第3の原子は酸素原子であることが好ましい。
【0014】
上記の塩基発生剤において、50℃以上の温度に加熱することにより塩基が発生することが好ましい。
【0015】
上記の塩基発生剤は110℃以下の温度で加熱しても塩基を発生させることができることが好ましい。例えば、本発明の態様に係る、後述する有機塩18、19、21、22及び23は、80〜110℃以下の加熱であっても長くとも一時間程度で樹脂を硬化することが可能である。
【0016】
本発明のいくつかの態様に係る試剤は、モノマー又は樹脂を硬化させる又はモノマー又は樹脂の硬化を促進する試剤であって、前記試剤は、陰イオンと、陽イオンと、を含み、前記陰イオンは、五配位又は六配位構造を有する第14族の元素の第1の原子を含むことを特徴とする。
【0017】
上記の試剤において、前記陽イオンは、第15族元素のである第2の原子を含むことが好ましい。
【0018】
上記の試剤において、前記陰イオンは、前記第1の原子は六配位構造を有することが好ましい。
【0019】
上記の試剤において、50℃以上の温度に加熱することによりモノマー又は樹脂を硬化させることが好ましい。上記の塩基発生剤は110℃以下の温度で加熱しても塩基を発生させることができることが好ましい。例えば、本発明の態様に係る、後述する有機塩18、19、21、22及び23は、80〜110℃以下の加熱であっても長くとも一時間程度で樹脂を硬化することが可能である。
【0020】
上記の試剤において、前記第1の原子は六個の酸素原子に結合していることが好ましい。
【0021】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(1)及び(2)のいずれかで表されることを特徴とする。
【化4】
[上記一般式(3)及び(4)のZ
1乃至Z
5の各々は互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基の場合は、Z
1乃至Z
5のうち少なくとも二つが少なくとも一つの原子を介して結合してもよい。上記一般式(1)及び(2)のR
1乃至R
5の各々は、互いに同一でも異なっていてもよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。上記一般式(1)及び(2)のDは酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、E及びGの各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、H及びJの各々は、互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0022】
上記一般式(1)及び(2)の各陽イオンは一価の陽イオンであることが好ましい。陽イオンを一価とすることにより、静電相互作用を低減し、静電相互作用の束縛から解放され易くなり、電気的に中性の塩基をより発生しやすくする。
【0023】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(3)及び(4)のいずれかで表されることを特徴とする。
【化5】
[上記一般式(3)及び(4)のZ
6乃至Z
11の各々は互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基の場合は、Z
6乃至Z
11のうち少なくとも二つが少なくとも一つの原子を介して結合してもよい。上記一般式(3)及び(4)のR
5乃至R
8の各々は、互いに同一でも異なっていてもよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。上記一般式(3)及び(4)のLは酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、M及びQの各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示し、T及びXの各々は、互いに独立して、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0024】
上記一般式(3)及び(4)の各々は、二つの陽イオンを有する。各陽イオンは一価の陽イオンであることが好ましい。これにより陰イオンと複数の陽イオンから構成される有機塩から複数の塩基を発生させることが可能となり、硬化性能が向上する。
【0025】
上記の有機塩において、前記D及びLは炭素原子を含む二価の有機基であることが好ましい。この有機塩の具体的な例の代表としては、後述する有機塩1、4、13、16、21乃至23等が挙げられる。このような有機塩の特長としては、例えば、加熱でエポキシ化合物等の基質の重合を促進する試剤として用いた場合、加熱温度を低下させられるとい点等である。有機塩1、4、13、21乃至23のように特にベンジルアンモニウム型のものは低温硬化性に優れており、110℃以下の例えば80℃でも硬化剤及び硬化促進剤として機能する。さらに、有機塩13、21乃至23のように対アニオンを六配位ケイ素型アニオンとすることで単位構造から発生するアミン量を向上させることができるためより硬化の効率が向上する。
【0026】
上記の有機塩において、前記R
4及びR
8は芳香族を含むことが好ましい。
【0027】
上記の有機塩において、前記E又はGは窒素原子を含むことが好ましい。上記一般式(2)の陽イオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアゾリウムカチオン、置換基を有していてもよいイミダゾリウムが挙げられる。さらにアゾリウムカチオンの具体例は、例えば、1,2,4−トリアゾリウム、オキサゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジアゾリウム、ベンゾトリアゾリウム、ヒドロキシベンゾトリアゾリウム、ベンゾキサゾリウム、1,2,3−ベンゾチアジアゾリウム、3−メルカプトベンゾトリゾリウム等が挙げられる。イミダゾリウムカチオンとしては、置換基を有さないイミダゾリウム及び2−メチルイミダゾリウム、2−エチルイミダゾリウム、2−ウンデシルイミダゾリウム、2−ヘプタデシルイミダゾリウム及び2−フェニルイミダゾリウム等の2位にアルキル基やアリール基等の有機基を有するイミダゾリウム、2位以外にもアルキル基やアリール基等の有機基を有する2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾリウム等の置換基を有するイミダゾリウムが挙げられる。1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム等の極性の高いニトリル基を有するイミダゾリウムも例として挙げられる。
【0028】
上記の有機塩において、前記M又はQは窒素原子を含むことが好ましい。上記一般式(4)の陽イオンとしては、例えば、置換基を有していてもよいアゾリウムカチオン、置換基を有していてもよいイミダゾリウムが挙げられる。さらにアゾリウムカチオンの具体例は、例えば、1,2,4−トリアゾリウム、オキサゾリウム、オキサジアゾリウム、チアジアゾリウム、ベンゾトリアゾリウム、ヒドロキシベンゾトリアゾリウム、ベンゾキサゾリウム、1,2,3−ベンゾチアジアゾリウム、3−メルカプトベンゾトリゾリウム等が挙げられる。イミダゾリウムカチオンとしては、置換基を有さないイミダゾリウム及び2−メチルイミダゾリウム、2−エチルイミダゾリウム、2−ウンデシルイミダゾリウム、2−ヘプタデシルイミダゾリウム及び2−フェニルイミダゾリウム等の2位にアルキル基やアリール基等の有機基を有するイミダゾリウム、2位以外にもアルキル基やアリール基等の有機基を有する2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウム、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾリウム等の置換基を有するイミダゾリウムが挙げられる。1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウム、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム等の極性の高いニトリル基を有するイミダゾリウムも例として挙げられる。
【0029】
上記の有機塩において、前記E又はGは炭素―窒素二重結合を含むことが好ましい。上記一般式(2)の陽イオンの具体例としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジ二ウム、置換基を有していてもよいピリダジ二ウム、置換基を有していてもよいピリミジ二ウム及び置換基を有していてもよいトリアジ二ウムが挙げられる。なお、ピリジニウムイオンから構成される上記の有機塩において、硬化剤若しくは硬化促進剤としての性能を向上させるためには、ピリジ二ウムから中性のピリジンに変化した際に当該ピリジンの窒素原子上の電子密度を向上させる必要がある。具体的には、例えば、窒素原子上に置換基を有していてもよいアミノ基及びアルコキシ基、ヒドロキシ基等の電子供与性基がピリジン骨格を構成するいずれかの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0030】
上記の有機塩において、前記M又はQは炭素―窒素二重結合を含むことが好ましい。上記一般式(4)の陽イオンの具体例としては、例えば、置換基を有していてもよいピリジ二ウム、置換基を有していてもよいピリダジ二ウム、置換基を有していてもよいピリミジ二ウム及び置換基を有していてもよいトリアジ二ウムが挙げられる。なお、ピリジニウムイオンから構成される上記の有機塩において、硬化剤若しくは硬化促進剤としての性能を向上させるためには、ピリジ二ウムから中性のピリジンに変化した際に当該ピリジンの窒素原子上の電子密度を向上させる必要がある。具体的には、例えば、窒素原子上に置換基を有していてもよいアミノ基及びアルコキシ基、ヒドロキシ基等の電子供与性基がピリジン骨格を構成するいずれかの炭素原子に結合していることが好ましい。
【0031】
本発明のいくつかの態様に係る有機塩は、下記一般式(5)、(6)、(7)及び(8)のいずれかで表される。
【化6】
[上記一般式(5)乃至(8)のA
1は水素原子、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、A
2乃至A
6の各々は、互いに独立して、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、前記有機基は異なる二つの酸素原子に結合する少なくとも一つの原子を含み、上記一般式(5)乃至(8)のD及びLは窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、E、G、M及びQの各々は、独立して、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示し、H、J、T及びXの各々は、独立して、水素原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。上記一般式のR
1乃至R
8はそれぞれ水素原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の原子、若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。]
【0032】
上記一般式(1)及び(3)において、R
1とR
5は、各々水素原子であることがさらに好ましい。R
2、R
3、R
4及びR
5は、各々アルキル基であることがさらに好ましい。D及びLはさらにメチレン基であることがさらに好ましい。R
4とR
8は、各々置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。代表的には置換基を有していてもよいフェニル基及びナフチル基であるである。
【0033】
上記の有機塩において、A
2乃至A
6の各々は互いに結合した二つの炭素原子を含むことが好ましい。
【0034】
上記の有機塩において、前記二つの炭素原子のそれぞれが異なる酸素原子に結合していることが好ましい。
【0035】
上記の有機塩において、A
2乃至A
6の各々は置換基を有していても良いアリール基であることが好ましい。
【0036】
上記の有機塩において、A
1は水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリル基及び置換基を有していてもよいビニル基等の有機基であることが好ましい。
【0037】
上記の有機塩において、A
2乃至A
6の具体例は、例えば、下記一般式で表される。下記一般式(9)乃至(13)においてR
9乃至R
13の各々は、少なくとも一つの互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子又はハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R
9乃至R
13の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子又はハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。
【化7】
【0038】
上記一般式(9)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有していてもよいアルカンジオール又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(10)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいグリコール酸又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(11)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいシュウ酸又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(12)の構造を含む五配位以上の高配位ケイ素化合物は例えば置換基を有してもよいカテコール又はその塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(12)の構造を含む5配以上の高配位ケイ素化合物は例えばベンゼン環上に二つ以上のヒドロキシ基を有し、上記ヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよいカテコール誘導体及びピロガロール誘導体等の化合物又はそれらの化合物の塩を出発原料として合成することができる。上記一般式(13)の構造を含む五配以上の高配位ケイ素化合物は例えばナフタレン環に代表される縮合環式炭化水素上に二つ以上のヒドロキシ基を有し、上記ヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよいジヒドロキシ誘導体等の化合物又はそれらの化合物の塩を出発原料として合成することができる。置換基R
13は、二つの酸素原子に結合したベンゼン環側(I)にあってもよいし、ケイ素原子に結合する酸素原子等のヘテロ原子の位置は、当該縮合環式炭化水素の骨格を構成する炭素原子の中から適宜選択することができる。
【0039】
カテコール誘導体は、二つのヒドロキシ基が結合する炭素原子同士が結合している構造を有しているが、この構造は接着性を向上させることができる。本発明に係る有機塩のうちカテコール誘導体をケイ素原子上の配位子として有する有機塩は、加熱等による分解により当該カテコール誘導体からケイ素原子が外れてフリーのカテコール誘導体が発生する。このカテコール誘導体により本発明に係る有機塩を接着剤用の組成物の硬化剤又は硬化促進剤として使用した場合、加熱より形成された硬化膜のせん断接着強度は向上する傾向がある。
【0040】
なお、上記一般式(12)に示したベンゼン環を構成する炭素原子の少なくとも一つを窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子に置換したものも使用可能である。
【0041】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む典型例としては、例えば、下記一般式(14)及び(15)で表されるピリジン環を有するものがある。下記式(14)においては、ケイ素原子はピリジン環の2位及び3位に結合した酸素原子に結合しており、下記式(15)においては、ケイ素原子はピリジン環の3位及び4位に結合した酸素原子に結合している。
【0042】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(16)に示したような、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち二つが窒素原子に置換され、当該二つの窒素原子の間には一つの炭素原子を有する、ピリミジン環骨格を有していてもよい。
【0043】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(17)のような、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち二つを窒素原子に置換し、当該二つの窒素原子の間には二つの炭素原子を有する、ピラジン環骨格を有していてもよい。
【0044】
上記一般式(12)に記載の構造でヘテロ原子を含む他の典型例としては、下記式(18)及び(19)のように、ベンゼン環に含まれる炭素原子のうち互いに結合する二つが窒素原子に置換されたピリダジン環骨格を有していてもよい。下記式(18)に示した構造おいては、ケイ素原子はピリダジン環の2位及び3位に結合した酸素原子に結合しており、下記式(19)に示した構造においては、ケイ素原子はピリダジン環の3位及び4位に結合した酸素原子に結合している。
【0045】
下記一般式(14)乃至(19)のR
14乃至R
19の各々は、互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R
9乃至R
13の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子若しくはケイ素原子等の炭素原子以外の第14族の元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子又は置換基を有していてもよい。
【化8】
【0046】
上記一般式(13)に示したナフタレン環を構成する炭素原子の少なくとも一つを窒素原子、酸素原子及び硫黄原子等のヘテロ原子に置換したものも使用可能である。
【0047】
下記一般式(13)に記載の構造でヘテロ原子を含む典型例としては、例えば、下記一般式(20)で表されるキノリン骨格、下記一般式(21)で表されるキノザリン骨格、下記一般式(22)で表されるキナゾリン骨格、下記一般式(23)で表されるナフチリジン骨格、下記一般式(24)で表されるイソキノリン骨格を有するものがある。下記一般式(20)乃至(24)で表される部分構造において、ケイ素原子が結合する二つの酸素原子等のようなヘテロ原子は、キノリン骨格、キノザリン骨格、キナゾリン骨格、ナフチリジン骨格及びイソキノリン骨格等のヘテロ原子を少なくとも一つ含む縮合環式炭化水素の骨格を形成する複数の炭素原子の中から適宜選択することができる。
【化9】
【0048】
上記一般式(20)乃至(24)のR
20乃至R
29の各々は、少なくとも一つの互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等のような炭素原子以外の第14族元素である原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。R
20乃至R
29の各々は、互いに同一でも異なってよい二つ以上の置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等のような炭素原子以外の第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を有する置換基又は置換基を有していてもよい有機基である。
【0049】
本発明のいくつかの態様に係る組成物は、上記のいずれかの塩基発生剤、上記のいずれかの試剤又は上記のいずれかの有機塩と、モノマー又は樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0050】
上記の組成物にいて、前記モノマー又は前記樹脂は、環状構造を有し、前記環状構造は、第16族元素の第4の原子は含んでいることが好ましい。
【0051】
上記の組成物において、前記モノマー又は前記樹脂は、エポキシ基又はオキセタニル基を有することが好ましい。
【0052】
上記の組成物において、さらにヒドロキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0053】
上記の組成物において、前記モノマー又は前記樹脂は、ケイ素原子を含むことが好ましい。前記モノマー又は前記樹脂の具体例は、例えば、ケイ素―酸素結合を有するシロキサン化合物や一つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物である。
【0054】
上記の組成物において、さらにフィラー等の粒子を含むことが好ましい。
【0055】
上記の組成物において、前記粒子は、無機粒子であることが好ましい。
【0056】
本発明のいくつかの態様に係る素子の製造方法は、上記のいずれかの組成物又は当該組成物の溶液を基体に塗布することにより第1の膜を形成する第1の工程と、前記第1の膜又は前記第1の膜から揮発成分の少なくとも一部を除去した第2の膜を50℃以上の温度で加熱する加熱工程を行うことにより前記第1の膜又は前記第2の膜を硬化させる第2の工程と、を含むことを特徴とする。
【0057】
上記の素子の製造方法において、前記加熱工程は、前記第1の膜又は前記第2の膜を80℃以上の温度に加熱することにより行われることが好ましい。
【0058】
上記の
素子の製造方法において、前記加熱工程は、110℃以
下で行うことが好ましい。
【0059】
本発明のいくつかの態様に係る硬化膜は、上記のいずれかの組成物を硬化することにより得られることを特徴とする。
【0060】
本発明のいくつかの態様に係る素子は、上記の硬化膜を含むことを特徴とする。
【0061】
上記の陽イオンとしては、例えば、フェニルアンモニウム、エチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、sec−プロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、sec−ブチルアンモニウム、i−ブチルアンモニウム、tert−ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、オクチルアンモニウム、デシルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、1,2−ジメチルヘキシルアンモニウム、3−ペンチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、アリルアンモニウム、1−ヒドロキシエチルアンモニウム、1−ヒドロキシアンモニウム、1−メチル―2−ヒドロキシエチルアンモニウム、4−ヒドロキシブチルアンモニウム、1−ヒドロキシペンチルアンモニウム、1−ヒドロキシヘキシルアンモニウム、3−エトキシプロピルアンモニウム、3−プロポキシプロピルアンモニウム、3−イソプロポキシプロピルアンモニウム、3−ブトキシプロピルアンモニウム、3−イソブトキシプロピルアンモニウム、3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピルアンモニウム、シクロペンチルアンモニウム、シクロヘキシルアンモニウム、ノルボルニルアンモニウム、シクロヘキシルメチルアンモニウム、フェニルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、フェネチルアンモニウム、α−フェニルエチルアンモニウム、ナフチルアンモニウム、フルフリルアンモニウム等の1置換アンモニウム;エチレンジアンモニウム、プロパン−1,2−ジアンモニウム、プロパン−1,3−ジアンモニウム、ブタン−1,2−ジアンモニウム、ブタン−1,3−ジアンモニウム、ブタン−1,4−ジアンモニウム、ペンタン−1,5−ジアンモニウム、ヘキサン−1,6−ジアンモニウム、ヘプタン−1,7−ジアンモニウム、オクタン−1,8−ジアンモニウム、シクロヘキサン−1,4−ジアンモニウム、高分子であるポリエチレンイミン等の多価アンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジ−n−ブチルアンモニウム、ジ−sec−ブチルアンモニウム、ジイソブチルアンモニウム、ジ−n−ペンチルアンモニウム、ジ−3−ペンチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、ジ(2−エチルヘキシル)アンモニウム、メチルヘキシルアンモニウム、ジアリルアンモニウム、ジフェニルアンモニウム、メチル−フェニル−アンモニウム、エチル−フェニル−アンモニウム、ジベンジルアンモニウム、メチルベンジルアンモニウム、ジナフチルアンモニウム等の2置換アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ−n−プロピルアンモニウム、トリ−iso−プロピルアンモニウム、トリ−1,2−ジメチルプロピルアンモニウム、トリ−3−メトキシプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、トリ−iso−ブチルアンモニウム、トリ−sec−ブチルアンモニウム、トリ−ペンチルアンモニウム、トリ−3−ペンチルアンモニウム、トリ−n−ヘキシルアンモニウム、トリ−n−オクチルアンモニウム、トリ−2−エチルヘキシルアンモニウム、トリ−ドデシルアンモニウム、トリ−ラウリルアンモニウム、ジシクロヘキシルエチルアンモニウム、シクロヘキシルジエチルアンモニウム、トリ−シクロヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム、N−メチルジヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、N−メチルジシクロヘキシルアンモニウム、N、N−ジエチルエタノールアンモニウム、N、N−ジメチルエタノールアンモニウム、N−エチルジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリベンジルアンモニウム、N,N−ジメチルフェニルアンモニウム、N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、ジエチルベンジルアンモニウム、トリフェニルアンモニウム等の3級アミン;置換基を有していてもよい又は環状構造を有していてもよいグアニジニウム及びビグアニジウム等が挙げられる。無置換のピリジ二ウム塩やピリジン環上にアミノ基、アルコキシ基、アルキル基及びヒドロキシ基等の少なくとも一つの電子供与性置換基を有する4−アミノピリジニウム、4−メトキシピリジニウム、4−メチルピリジニウム、N,N−ジメチル―4−アミノピリジン(DMAP)及び4−ヒドロキシピリジニウム等のピリジ二ウムであってもよい。
【0062】
上記に例示したアンモニウムのうちフェニルアンモニウムの前駆体であるアニリン及びN,N−ジメチルフェニルアンモニウムの前駆体であるN,N−ジメチルフェニルアミンのように無置換のベンゼンに直接窒素原子が結合したフェニルアミンやピリジ二ウムの前駆体である無置換のピリジンは、硬化促進能自体が低いため、一液型の樹脂硬化剤の硬化剤又は硬化促進剤として使用するために積極的に高配位ケイ素構造を有するアニオンと有機塩を構成する必要が無い場合がある。なお、そのような有機塩は、例えば、硬化を遅延させる硬化遅延剤として用いることができる。
【0063】
なお、4−(アミノメチル)ピぺリジン、3−ジアミノプロパン及び4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタンのように一分子内に二つの一級のアミノ基又は一分子内に一級のアミノ基と二級のアミノ基を有し、プロトンが付加され、二価のカチオンとして6配位ケイ素構造を有するアニオンと有機塩を構成する場合は、一分子内の一方のアンモニウム基から加熱等によりプロトンが脱離し、中性のアミノ基となったとしても、引き続き有機塩を構成することになるので、当該中性のアミノ基の運動が束縛され、熱硬化促進能が低下する場合がある。そのような有機塩も、同様に、硬化を遅延させる硬化遅延剤として用いることができる。
【0064】
1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル―1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン (MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン(TBD)、tert−ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1.3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン(BEMP)等共役酸のアセトニトリル中のpKaが21以上の超強塩基も用いることができる。
【0065】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、低温硬化性に比較的優れ、硬化物を形成した際に高いガラス転移点を示す、下記一般式(25)で表されるイミダゾール系が望ましい。
【0066】
実際、後述する表1からも分かるように本発明に係る有機塩であって、イミダゾール誘導体由来の陽イオンを含むものを硬化促進剤として用いて得られた硬化膜は高いガラス点を有する。また、比較例との比較からも分かるように上記一般式(12)及び(13)で示されたカテコール誘導体が陰イオンの配位子として含まれているものを硬化促進剤として用いた場合、陽イオンが同じイミダゾリウムであってもガラス転移点が上昇する。
【0067】
つまり、ケイ素高配位構造を構成する配位子としてカテコール誘導体を用い、陽イオン側にイミダゾリウムイオンを用いることで、高いガラス転移点を達成することができる。高いガラス転移点は、封止性能に正に相関するので、カテコール誘導体型高配位ケイ素アニオン―イミダゾール誘導体カチオン有機塩は、優れた樹脂の重合触媒であると言える。
【0068】
下記一般式(25)においてR
30乃至R
34の各々は、互いに独立であって、同一でも異なってよい置換基である。水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等炭素原子以外の第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。さらにR
30が水素原子であることが好ましい。また、R
31とR
32とが少なく一つの結合を介して結合して環状構造を形成していてもよいし、R
33とR
34とが少なくておも一つの結合を介して結合して環状構造を形成していてもよい。なお、下記一般式(25)のイミダゾリウムの五員環骨格のうち少なくとも一つの炭素原子を硫黄原子や酸素原子等のヘテロ原子に置換したものも用いることができる。例えば、当該五員環骨格の二つ窒素原子の間の炭素原子を硫黄原子に変更してもよく、このようにすることで本有機塩によりエポキシ化合物等の基質を硬化させた硬化膜の耐酸化性を向上させることができる。
【化10】
【0069】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、下記一般式(26)乃至(28)で表されるように一分子内に複数のアミノ基を有しつつ、当該複数のアミノ基のうち一つのアミノ基にプロトンが付加してアンモニウム基となっている一価の陽イオンが挙げられる。具体的な例としては、下記一般式(26)は環状構造を有するピペラジニウムであり、下記一般式(27)は環状構造を有するN,N−ジメチルピペラジニウムである。また、下記一般式(28)は、トリエチレンジアミンの一つのアミノ基にプロトンが付加したものである。
【化11】
【0070】
上記一般式(4)、(6)及び(8)に表される化合物の陽イオンとしては、下記一般式(29)及び(30)で表されるようたように、複数の窒素原子を含み、当該複数の窒素原子のうち少なくとも二つの窒素原子が芳香族に結合しており、当該少なくとも二つの窒素原子のうち一つの窒素原子にプロトン付加したものが挙げられる。
【化12】
【0071】
上記一般式(1)、(3)、(5)及び(7)の陽イオンとして好適な例は、窒素原子上にアリールアルキル基を有するものである。このように窒素原子上にアリールメチル基等のアリールアルキル基を備えた一価の陽イオンを有する後述の有機塩1、13、21、22及び23等の化合物は、80〜110℃という低温でもエポキシ化合物を重合させることが可能である。さらにアリールメチル基に加えて、少なくとも一つの有機基を有していてもよい。より具体的な例としては、下記一般式(31)で表されるN,N−ジメチルベンジルアンモニウム、下記一般式(32)で表される2−ジメチルアミノメチルフェノール及び下記一般式(33)で表される2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【化13】
【0072】
上記一般式(1)乃至(8)の有機塩の陰イオンの好適な例としては、下記一般式(35)に示した構造が挙げられる。R
35は、少なくとも一つ以上の置換基であって、互いに同一でも異なってよい置換基であって、水素原子、酸素原子及び硫黄原子等の第16族の元素の原子、窒素原子及びリン原子等の第15族の元素の原子、ケイ素原子等第14族元素の原子若しくはハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基又は置換基を有していてもよい有機基を示す。
【化14】
【0073】
特に好適な置換基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基及びアルキル基である。中でもヒドロキシ基は有機塩から遊離したアミン類等の塩基を捕捉することが可能なので保存安定性の向上に寄与することができる。また、アルキル基やエステル基は、その立体障害により当該有機塩間の会合を抑制するため、液状組成物中での分散性を向上させる。さらに、樹脂やモノマー等の基質と当該有機塩との接近が抑制されるため、保存安定性と硬化性能を両立させることが可能となる。
【0074】
この有機塩に用いるアルキル基としては直鎖状及び分岐状のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられるが、後述する有機塩17及び20乃至23の例にもあるようにtert−ブチル基等のように特に立体障害の大きな置換基を用いることで、分散性が向上することがある。
【0075】
エステル基としては、直鎖状及び分岐状のヘテロ原子を含む置換基を有していてもよいアルキル基を有するものが挙げられるが、後述する有機塩24のように直鎖状のアルキル基を備えたエステル基を用いることができる。もちろん、上記の置換基を適宜組み合わせて用いることも可能である。