(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子放出制限材料が、金属タンタル、金属チタン、金属ジルコニウム、金属タングステン、金属モリブデン、金属レニウム、炭化タンタル、炭化チタン及び炭化ジルコニウムから少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子源。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献の技術について、本発明者らが検討を行ったところ、上記文献の技術によっては電子放出材料の消耗を十分に抑制できない場合があることが分かった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電子放出材料の消耗を抑制することができる、電子源を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)電子放出材料と、前記電子放出材料の側面を被覆する電子放出制限材料とを有する電子源であって、前記電子放出制限材料の仕事関数が前記電子放出材料の仕事関数よりも高く、前記電子放出制限材料の熱輻射率が電子放出材料の熱輻射率よりも低いことを特徴とする電子源。
(2)前記電子放出材料が、ホウ化ランタン、ホウ化セリウム及びイリジウムセリウムの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする(1)に記載の電子源。
(3)前記電子放出材料の側面が、(100)面の結晶面を外周部に備えることを特徴とする(1)または(2)に記載の電子源。
(4)前記電子放出制限材料が、金属タンタル、金属チタン、金属ジルコニウム、金属タングステン、金属モリブデン、金属レニウム、炭化タンタル、炭化チタン及び炭化ジルコニウムから少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電子源。
(5)前記電子放出材料の端面と前記電子放出制限材料の端面とが同一平面上にあり、かつ、その平面の法線が電子の放出方向であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の電子源。
(6)前記電子放出制限材料は、薄膜である、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電子源。
(7)前記薄膜は、厚さが0.1〜2μmである、(6)に記載の電子源。
(8)前記電子放出制限材料の周囲に支持部材を備えることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の電子源。
(9)前記支持部材は、前記電子放出制限材料に密着している、(8)に記載の電子源。
(10)前記支持部材は、黒鉛からなる、(8)又は(9)に記載の電子源。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の電子源の製造方法であって、塗布工程と、固化工程を備え、前記塗布工程では、前記電子放出制限材料を含むペーストを前記電子放出材料の側面に塗布し、前記固化工程では、前記ペーストを固化させる、電子源の製造方法。
(12)前記塗布工程と前記固化工程の間に挿入工程を備え、前記挿入工程では、前記ペーストが塗布された前記電子放出材料が、支持部材に設けられた開口内に挿入される、(11)に記載の電子源の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子放出材料の消耗を抑制することができる
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例について図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
1.電子源1の構成
図1〜
図2に示すように、本発明の一実施形態にかかる電子源1は、電子放出材料3と、電子放出材料3の側面3bを被覆する電子放出制限材料4とを有する。電子放出制限材料4の仕事関数は、電子放出材料3の仕事関数よりも高い。電子放出制限材料4の熱輻射率は、電子放出材料3の熱輻射率よりも低い。好ましくは、電子放出制限材料4の周囲に、支持部材5が設けられる。
【0012】
電子源1は、ヒーターで加熱して使用することができる。ヒーターは、電子源1を加熱可能なものであればその構成は限定されない。ヒーターは、例えば、黒鉛またはタングステンヒーターである。真空中で高電界が印加された状態で電子源1がヒーターで加熱されることによって電子放出材料3の端面(電子放出部)3aから電子が放出される。
【0013】
(電子放出材料3)
電子放出材料3は、加熱によって電子を放出する材料であり、電子放出材料3の例としては、ホウ化ランタン(LaB
6)、ホウ化セリウム(CeB
6)などの希土類ホウ化物及びイリジウムセリウム(Ir5Ce)が挙げられる。仕事関数と熱輻射率はそれぞれ、ホウ化ランタン:2.8eV、0.77、ホウ化セリウム:2.8eV、0.76、イリジウムセリウム:2.6eV、0.45である。
【0014】
この内希土類ホウ化物を使用する場合、電子放出材料3は、仕事関数が低く電子を放出しやすい<100>方位が電子放出方向に一致するよう加工された単結晶体であることが好ましい。
【0015】
電子放出材料3は放電加工などによって所望の形状にすることができる。電子放出材料3の形状は、特に限定されず、例えば、
図1に示すような円柱状であってもよく、
図3に示すような四角柱状であってもよい。電子放出材料3の長さは、0.2〜3mmが好ましく、0.5〜1.5mmがさらに好ましく、1mm程度がさらに好ましい。電子放出材料3が円柱状である場合、その直径は0.02〜0.3mmが好ましく、0.05〜0.15mmがさらに好ましく、0.1mm程度がさらに好ましい。電子放出材料3が四角柱状である場合、その一辺は0.02〜0.3mmが好ましく、0.05〜0.15mmがさらに好ましく、0.1mm程度がさらに好ましい。0.2mm未満の場合は取扱い性(ハンドリング)が悪くなり、3mmを超える場合は昇温が難しくなる。
【0016】
何れの形状の場合でも、電子放出制限材料4が電子放出材料3の側面3bを被覆することによって、電子放出材料3の側面3bからの電子放出材料3の蒸発が抑制される。電子放出制限材料4は、電子放出材料3の側面3bの全周を被覆することが好ましい。
【0017】
電子放出材料3の側面3bは、一般的には結晶方位は規定していないが、低次の結晶面ほど原子間の結合が密であるため、蒸発速度が遅くなると考えられる事から、四角柱状に加工し、側面の4方向の結晶方位も(100)にする事で、(100)面の結晶面を外周部に備えることが望ましい。
【0018】
(電子放出制限材料4)
電子放出制限材料4は、電子放出材料3よりも仕事関数が高く、電子放出材料3よりも熱輻射率よりも低い材料である。電子放出制限材料4の仕事関数が電子放出材料3よりも高いために、電子放出制限材料4で電子放出材料3の側面3bを被覆することによって電子放出材料3の側面3bからの電子の放出が抑制される。また、電子放出制限材料4の熱輻射率が電子放出材料3よりも低いために、電子放出制限材料4で電子放出材料3の側面3bを被覆することによって電子放出材料3の温度上昇が抑制される。また、電子放出制限材料4は、支持部材5よりも熱輻射率が低いことが好ましい。この場合、電子放出材料3の温度上昇がさらに抑制される。
【0019】
(電子放出制限材料4の仕事関数)−(電子放出材料3の仕事関数)で定まる仕事関数差は、1.0eV以上が好ましく、1.4eV以上がさらに好ましく、1.6eV以上がさらに好ましい。(電子放出材料3の熱輻射率)−(電子放出制限材料4の熱輻射率)で定まる熱輻射率差は、0.05以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、0.2以上がさらに好ましく、0.3以上がさらに好ましい。仕事関数が一定値以上の差が無いと、側面からの放出電流を抑制できない。また、輻射率が一定値以上の差が無いと蒸発抑制効果が得られない。
【0020】
電子放出制限材料4は、高融点金属又はその炭化物を含むことが好ましく、金属タンタル、金属チタン、金属ジルコニウム、金属タングステン、金属モリブデン、金属レニウム、炭化タンタル、炭化チタン及び炭化ジルコニウムから少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。また、電子放出制限材料4は、炭化ホウ素と黒鉛のうちの少なくとも一つ以上を含んでもよい。また、電子放出制限材料4は、ニオブ、ハフニウム、バナジウムのうちの少なくとも一つ以上を含んでもよい。
【0021】
各電子放出制限材料4の仕事関数と熱輻射率は、表1に示す通りである。なお、本明細書で使用する各材料の熱輻射率は「新版 高融点化合物物性便覧<下> 日ソ通信社 1994年発行」と「改訂2版 金属データブック丸善株式会社 1984年発行」から引用した。
【0023】
電子放出制限材料4が複数の物質の混合物である場合には、電子放出制限材料4の全体の仕事関数及び熱輻射率は、電子放出制限材料4を構成する全ての物質の体積比率によって決定する。例えば、電子放出制限材料4が金属タンタルと炭化ホウ素を含み、その体積比率が0.38:0.62である場合、全体の仕事関数は、4.3×0.38+5.2×0.62=4.86となり、全体の熱輻射率は、0.45×0.38+0.85×0.62=0.70となる。体積比率は、重量比率と密度から算出することができる。
【0024】
電子放出制限材料4を構成する全ての物質について、電子放出材料3よりも仕事関数が高く、且つ電子放出材料3よりも熱輻射率よりも低いことが好ましい。一方、電子放出制限材料4を構成する一部の物質については、電子放出材料3よりも仕事関数が低かったり、電子放出材料3よりも熱輻射率よりも高かったりしてもよい。この場合でも、電子放出制限材料4の全体の仕事関数は電子放出材料3より高く、電子放出制限材料4の全体の熱輻射率は電子放出材料3よりも低いことは必須である。
【0025】
電子放出制限材料4は、好ましくは、薄膜であり、厚さは、0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがさらに好ましく、0.3〜0.7μmがさらに好ましい。0.1μm未満の場合や2μmを超える場合、剥がれや密着性不良といった問題が生じる可能性がある。
【0026】
図1及び
図3に示すように、電子放出材料3の端面3aと電子放出制限材料4の端面4aとが同一平面上にあり、かつ、その平面の法線が電子の放出方向になっている。
【0027】
(支持部材5)
本実施形態では、電子放出制限材料4の周囲に支持部材5が設けられている。支持部材5を設けることによって電子放出制限材料4が損傷することが抑制される。支持部材5は任意の要素であり、不要な場合には省略可能である。
【0028】
図2Bに示すように、支持部材5は、開口5dを備えており、電子放出制限材料4で被覆した電子放出材料3を開口3d内に挿入することによって、支持部材5を電子放出制限材料4の周囲に設けることができる。支持部材5は、電子放出制限材料4に密着するように設けることが好ましく、電子放出制限材料4の全周に密着するように設けることがさらに好ましい。これによって、電子放出材料3と支持部材5の間が隙間なく電子放出制限材料4によって充填される。また、電子放出材料3で発生した熱が電子放出制限材料4を通じて速やかに支持部材5に伝達されるので、過度な温度上昇が抑制される。
【0029】
支持部材5は黒鉛からなることが好ましい。黒鉛は仕事関数が高いので、支持部材5を黒鉛で形成することによって電子放出制限材料4の厚さが局所的に薄くなってしまったとしても、支持部材5によって、電子放出材料3の側面3bからの電子放出が抑制される。また、電子放出材料3と黒鉛の間の反応性が非常に低いので、電子放出制限材料4の厚さが局所的に薄くなってしまったとしても、電子放出材料3と支持部材5が反応することが抑制される。
【0030】
支持部材5は、側面5aと、テーパー面5bと、端面5cを備える。側面5aと端面5cは、テーパー面5bによって連結されており、支持部材5は、端面5cに向かって先細りになっている。端面5cは、端面3a及び端面4aと同一平面上にある。
【0031】
2.電子源1の製造方法
次に、電子源1の製造方法について説明する。電子源1は、電子放出材料3の側面3bを電子放出制限材料4で被覆することによって形成することができる。その方法としては、蒸着(CVDやPVD)によって電子放出制限材料4の薄膜を側面3bに形成する方法や、電子放出制限材料4を含むペースト4pを電子放出材料3の側面3bに塗布した後にペースト4pを固化する方法が例示される。後者の方法は、製造設備が簡易である点で優れており、以下、後者の方法を詳細に説明する。
【0032】
ペースト塗布による電子源1の製造方法の一例は、塗布工程と、挿入工程と、固化工程と、研磨工程を備える。支持部材5を備えない場合には挿入工程は不要である。また、研磨工程は省略可能である。
【0033】
(塗布工程)
図2A〜
図2Bに示すように、塗布工程では、電子放出制限材料4を含むペースト4pを電子放出材料3の側面3bに塗布する。ペースト4pは側面3bの全体に塗布してもよく、
図2Bに示すように先端3c近傍以外の部位に塗布してもよい。ペースト4pは、固化工程後の厚さが上述した電子放出制限材料4の厚さになるように塗布することが好ましい。電子源1が支持部材5を備える場合には、ペースト4pは、開口5dの内面と電子放出材料3の外面の間の隙間を充填可能な厚さで形成することが好ましい。
【0034】
ペースト4pは、電子放出制限材料4の粉末を分散媒に分散させて形成することができる。分散媒としては、水や有機溶媒などが利用可能であり、水が好ましい。
【0035】
電子放出制限材料4の粉末は、高融点金属(例:チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、レニウム)の粉末のみで構成してもよいが、黒鉛の粉末や、金属炭化物(例:炭化ホウ素)などのセラミックスの粉末を含んでもよい。セラミックスの粉末は、固形分として、金属の粉末100体積部に対して、10体積部以上、200体積部以下であることが好ましい。セラミックスの粉末の配合が多すぎると接合力が劣り、逆に配合が少なすぎると接合前の状態の仮接着性が乏しく、作業性の点で問題がある。
【0036】
(挿入工程)
図2B〜
図2Cに示すように、挿入工程では、ペースト4pが塗布された電子放出材料3が、支持部材5に設けられた開口5d内に挿入される。
【0037】
支持部材5の開口5dは、機械加工によって形成することができる。開口5dの断面のサイズは、電子放出材料3の断面のサイズよりも大きくなるように形成する。開口5dのサイズは、例えば直径0.15mm×深さ0.8mmである。
【0038】
ペースト4pを塗布しない状態で電子放出材料3を開口5d内に挿入すると、電子放出材料3の外面と開口5dの間に隙間が生じてしまい、固定されない状態になってしまう。一方、ペースト4pが塗布された電子放出材料3を開口5dに挿入すると、ペースト4pによって上記隙間が埋められる。
【0039】
また、
図2Cに示すように、電子放出材料3を開口5dに挿入した状態で、電子放出材料3の先端3cが支持部材5からはみ出していることが好ましい。
【0040】
(固化工程)
次に、
図2C〜
図2Dに示すように、ペースト4pが塗布された電子放出材料3が開口5dに挿入された状態で、真空加熱処理を行うことによってペースト4pを固化させて、電子放出制限材料4の薄膜で電子放出材料3を被覆することができる。また、ペースト4pの固化によって電子放出材料3及び電子放出制限材料4を支持部材5に固定することができる。
【0041】
(研磨工程)
次に、電子放出材料3の先端3cを研磨紙あるいはラッピングフィルムなどの研磨部材を用いて研磨する。こうすることで、電子放出材料3の端面3a、電子放出制限材料4の端面4a、及び支持部材5の端面5cが同一平面上にあるようになり、
図1に示す電子源1が得られる。
【実施例】
【0042】
1.電子源1の製造
(実施例1)
電子放出材料3として、ホウ化ランタン単結晶を<100>方向を長軸とした直径0.1mm×1mmの形状の円柱状の棒を放電加工により作製した。側面の結晶方位を限定する事は難しいが、(100)からは約45度ずれていた。
【0043】
次に0.7mm×0.7mm×1.2mmの角状の高純度黒鉛を用意し、先端を機械加工にて尖らせて支持部材5とした。そしてそのチップの長軸方向に直径0.15mm×深さ0.8mmの開口5dを機械加工により設けた。
【0044】
電子放出制限材料4であるタンタル粉を水で溶いたものをペースト4pとし、電子放出材料3の側面3bに塗布した。そしてペースト4pが塗布された電子放出材料3を支持部材5の開口5dに挿入した。
【0045】
ヒーターとして、熱分解グラファイトを0.7mm×0.7mm×0.7mmの大きさに切り出した。そして、支柱によりヒーターブロックで支持部材5を挟み、加圧するように組み立てた。
【0046】
その状態で、10
−5Pa台の真空下で通電し、1600℃にて2分間保持することでペースト4pを固化させた。これによって、電子放出制限材料4で被覆された電子放出材料3が開口5dに挿入されている構造体が得られた。この構造体では、
図2Dに示すように、電子放出材料3の先端3cが支持部材5からはみ出している。
【0047】
次に、支持部材5を支柱から取り外し、電子放出材料3の先端3cを研磨紙により研磨して、電子放出材料3の端面3a、電子放出制限材料4の端面4a、及び支持部材5の端面5cが同一平面上になり、且つ電子放出材料3が電子放出制限材料4及び支持部材5によって同軸状に囲まれた状態とし、電子源1を得た。
【0048】
(実施例2〜3)
電子放出制限材料4として、タンタル粉の代わりに、タンタル粉と炭化ホウ素(商品名:デンカボロンカーバイド#1000)を表2に示す体積比率で混合した粉体を用いた点、及びペースト4pを固化させる温度を1550℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で電子源1を得た。
【0049】
(実施例4)
電子放出材料3として、ホウ化ランタンの代わりに、ホウ化セリウムを用いた点以外は、実施例1と同様の方法で電子源1を得た。
【0050】
(実施例5)
電子放出材料3として、<100>方向を長軸としたホウ化ランタン単結晶の側面に放電加工を施して、縦0.1mm×横0.1mm×長さ1mmの四角柱形状の棒を作製した。放電加工は、(100)面の結晶面が外周部となるように施した。
【0051】
その後、CVD法を用いて電子放出材料3の表面にタンタルの薄膜を膜厚0.5μm程度で形成した。次に、コロイド状カーボンのペーストを電子放出材料3の側面3bに塗布した後、実施例2と同様の条件で電子源1を作製した。
【0052】
(実施例6〜7)
タンタルの代わりに、表2に示す種類の金属を用いた点以外は、実施例5と同様の方法で電子源1を得た。
【0053】
(比較例1)
ペーストとしてコロイド状カーボンのみを使用した以外は、実施例1と同じプロセスで電子源1を作製した。
【0054】
(比較例2)
ペーストとしてコロイド状カーボンのみを使用した以外は、実施例4と同じプロセスで電子源1を作製した。
【0055】
(比較例3)
電子放出制限材料4として、タンタル粉の代わりに、タンタル粉と炭化ホウ素を表2に示す体積比率で混合した粉体を用いた以外は、実施例1と同じプロセスで電子源1を作製した。
【0056】
2.電子源1の評価
まず、電子源1を支柱に組み付け、黒鉛ヒーターで挟んだ。次に、耐熱性評価を目的として、電子源1を10
−5Pa台の真空下で通常動作時の温度である1550℃で2週間連続加熱後に取り出し、電子放出材料3の外周部の消耗状態を走査型電子顕微鏡により端面3a側から観察し、電子放出部となる端面3aの残存径を測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
表2に示すように、実施例1〜7では、電子放出部の残存径が、比較例1〜3よりも大きかった。また、実施例1〜7では、電子放出材料3の外周部の消耗がほとんど観察されなかったが、比較例1〜3では、電子放出材料3の外周部の消耗が目立っていた。
【0058】
仕事関数については、全ての実施例及び比較例において、電子放出制限材料4の方が電子放出材料3よりも高かった。一方、熱輻射率については、実施例1〜7では、電子放出制限材料4の方が電子放出材料3よりも低く、比較例1〜3では、電子放出制限材料4の方が電子放出材料3よりも高かった。
【0059】
以上の結果は、電子放出材料3よりも仕事関数が高く、電子放出材料3よりも熱輻射率よりも低い電子放出制限材料4で、電子放出材料3の側面3bを被覆することによって、電子放出材料3の消耗を防ぐことができることを実証している。
【0060】
【表2】