(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フタロニトリル樹脂の前記ベンゾオキサジン樹脂に対する重量比が、15:85〜85:15の範囲(両端の値を含む)である、請求項1又は2に記載の樹脂ブレンド。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例A、並びに実施例2、3、及び4のDSCスキャンである。
【0010】
[詳細な説明]
以下の定義された用語の用語解説に関して、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において与えられていない限り、これらの定義が本出願全体に適用されるものとする。
【0011】
用語解説
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して特定の用語が使用されており、大部分は公知であるが、いくらか説明を必要とするものもある。本明細書で使用する場合、以下のようであること理解されたい。
【0012】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語は、「少なくとも1つの」と交換可能に使用され、記載されている要素のうちの1つ又は複数を意味する。
【0013】
「及び/又は(and/or)」という用語は、一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0014】
本明細書で使用する場合、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1〜5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0015】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合、「約」という用語によって修飾されていると解するものとする。したがって、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化しうる。最低でも、請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、報告される有効桁の数に照らして、通常の四捨五入を適用することにより、各数値パラメータは少なくとも解釈されるべきである。
【0016】
「含む(comprises)」という用語及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有しない。
【0017】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供することが可能な、本開示の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況において他の実施形態もまた、好ましい場合もある。更には、1又は複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0018】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ又は複数の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、用語「実施形態」の前に、用語「例示的」が含まれているか否かに関わらず、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ又は複数の実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、「多くの実施形態では」又は「実施形態では」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態の同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の好適な方法で1つ又は複数の実施形態に組み合わされてもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「フタロニトリル」は、2つの隣接ニトリル基を有する特徴的なベンゼン誘導体を有する、化合物及びポリマーを含む。図示されたフタロニトリル基において、Rは、例えば、これらに限定されるものではないが、エーテル、チオエーテル、アリール、アルキル、ハロゲン、アミン、(ヘテロ)ヒドロカルビル、エステル、又はアミドである。
【化1】
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「ベンゾオキサジン」は、特徴的なベンゾオキサジン環を有する、化合物及びポリマーを含む。図示されたベンゾオキサジン基において、Rは、モノ−又はポリ−芳香族アミン、ヒドロカルビルアミン、又は(ヘテロ)ヒドロカルビルアミンの残基である。
【化2】
【0021】
本明細書で使用する場合、「ポリベンゾオキサジン」は、2つ以上のベンゾオキサジン環を有する化合物を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「ポリ(ベンゾオキサジン)」は、ベンゾオキサジンの重合から生じたポリマー、又はポリベンゾオキサジン化合物を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「ブレンステッド酸」は、プロトン供与体として機能することができる任意の分子又はイオン種を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「カルコゲナイド」は、より陽性の元素又は基を有するカルコゲンの二元系化合物を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「トシレート」は、トルエンスルホニル化合物を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「アルキル」は、直鎖状、分枝状、及び環状アルキル基を含み、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、アルキル基は、典型的には1〜20個の炭素原子を含む。本明細書で使用される「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアルキル」は、独立して、S、O、Si、P、及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を有する直鎖、分枝鎖、及び環状アルキル基、並びに非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指示がない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1〜20個の炭素原子を含む。「ヘテロアルキル」は、以下に記載する「ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6−ジオキサヘプチル、3−(トリメチルシリル)−プロピル、及び4−ジメチルアミノブタニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。別途注記のない限り、ヘテロアルキル基は、一価であっても多価であってもよい。
【0028】
本明細書で使用する場合、「アリール」は、6〜18個の環原子を含有する芳香族であり、縮合環を含有してもよく、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素又は硫黄などの1〜3個のヘテロ原子を含むアリールであり、縮合環を含んでもよい。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンズチアゾリルである。別途注記のない限り、アリール及びヘテロアリール基は、一価であっても多価であってもよい。
【0029】
本明細書で使用する場合、「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、(ヘテロ)ヒドロカルビルアルキル及びアリール基、並びにヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルヘテロアルキル及びヘテロアリール基を含み、後者は、エーテル等の1つ又は複数のカテナリー酸素ヘテロ原子又はアミノ基を含む。ヘテロ(ヘテロ)ヒドロカルビルは、任意に、エステル、アミド、ウレア、ウレタン、及びカーボネート官能基を含む、1つ又は複数のカテナリー(鎖内)官能基を含有してもよい。特に指示がない限り、非ポリマー(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的には、1〜60個の炭素原子を含有する。このような(ヘテロ)ヒドロカルビルのいくつかの例は、本明細書で使用する場合、上記「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」について記載したものに加えて、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、4−ジフェニルアミノブチル、2−(2’−フェノキシエトキシ)エチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサへキシル−6−フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「残基」は、記載されている式中の結合している官能基又は結合している基を除去(又は反応)した後に残る基の(ヘテロ)ヒドロカルビル部分を定義するために用いられる。例えば、ブチルアルデヒド、C
4H
9−CHOの「残基」は、一価のアルキルC
4H
9−である。フェニレンジアミンH
2N−C
6H
4−NH
2の残基は、二価のアリール−C
6H
4−である。
【0031】
ここで本開示の様々な実施形態が記述される。本開示の例示的な実施形態には、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を加えてもよい。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に記載されている限定及びそれらの任意の均等物により支配されるものであることを理解すべきである。
【0032】
本開示は、ベンゾオキサジン樹脂及びフタロニトリル樹脂のブレンドを含む樹脂ブレンドに関する。
【0033】
フタロニトリルは、4つのフタロニトリル部分が反応してフタロシアニン環を形成する付加硬化反応を受ける。多官能性フタロニトリル樹脂を使用する場合、フタロニトリル付加反応は、以下のスキーム1にて示すように、フタロシアニン結合ネットワークポリマーをもたらす。フタロシアニン環は、硬化したネットワークに高い架橋密度及び剛性を付与する、大きな、テトラ−官能性芳香族構造である。これは、ネットワークに、優れた温度性能を与え、高い、ガラス転移温度であるT
gを与える。
【化3】
スキーム1.金属不含フタロシアニン結合ネットワークを形成するためのジフタロニトリル付加反応。
【0034】
フタロニトリルは、フタロニトリル由来のフタロシアニン環形成の付加的性質によりバルク反応に有用な前駆体樹脂であり、ネットワークを弱体化させ、ネットワークから浸出し、フタロシアニン系ネットワークポリマーの形成により、高温で揮発し得る非結合の反応副生成物を避けるため、特に有利である。フタロニトリル環化四量体化は、金属不含(PcH
2)フタロシアニン又は金属含有(PcM)フタロシアニンのいずれかを生じるいくつかの方法によって触媒されてもよい。このような反応スキームを、以下のスキーム2にて図示する。塩基、プロトン源及び熱を加えること、又は適切な還元剤及び熱を加えることにより、PcH
2を形成してもよい。これらの条件は、アンモニア、一級アミン、二級及び三級アミンを、活性プロトン源(例えば、アルコール)と共に加えることにより充足されてもよい。好適な還元剤(例えば、ヒドロキノン又は1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)は、2つの電子、及びPcH
2形成に形式的に必要な2つのプロトンを供給することができ、環化四量体化も、もたらすであろう。金属、有機金属又は金属塩及び熱を加えることにより、PcMを形成してもよい。金属は、フタロシアニン環の中央の4つの窒素と配位結合する。配位状態に応じて、金属は2つ以上のフタロシアニン環と相互作用して、積み重なったフタロシアニン構造を生じさせてもよい。多くの金属が、環化四量体化をもたらすことが示されている。
【化4】
スキーム2(A)金属不含フタロシアニン及び(B)金属含有フタロシアニンへのフタロニトリル環化四量体化。
【0035】
ポリマーブレンドの処方は、2つ以上のポリマー材料の有利な特性と結びついてそれらの欠点を最小化する試みである。単純な考えではあるが、混和性を達成し、欠点を最小限に抑えながら有利な特性を選択的に組み合わせることができる樹脂の相溶化を成功させることは容易ではない。ある材料構成成分中で望ましくない特性は、多くの場合、別の材料構成成分中に残るか、望ましい特性を最小限にする。ブレンドが相溶性でない(例えば、不混和性ブレンドが相分離をもたらし、別個の独自のネットワーク形成により、ネットワーク一体化をもたらさない)場合、材料の欠点が代わりに悪化する場合がある。
【0036】
本開示のベンゾオキサジン/フタロニトリル(BZN/PN)ブレンドは、任意の数のベンゾオキサジン及びフタロニトリル単官能性並びに/又は多官能性樹脂を直接ブレンドすることを含み、次いで、典型的には、続いて硬化して、ネットワーク化ポリマーを生成する。樹脂ブレンドの反応は、熱的に開始され、所望の場合、ネットワークの形成を促進する触媒を含むことができる。BZN/PNブレンドは、熱安定性の向上、ガラス転移温度の上昇、並びにベンゾオキサジン樹脂単独、及びフタロニトリル樹脂単独の硬化により形成されたホモポリマーネットワークよりも良好な加工及び硬化特性のうちの1つ又は複数などの有利な特性を示す。このような有利な特性は、これらのブレンドの偶然の結果であり、これは、あまり望ましくない特性を最小限にしながら、個々の樹脂及び硬化したホモポリマーネットワークの好便な特徴を、ブレンド樹脂及びネットワークに付与する能力を提供する。ベンゾオキサジン及びフタロニトリル樹脂を直接ブレンドすることは、例えば、樹脂の少なくとも1つをその他の樹脂の官能基で修飾することを用いて、ベンゾオキサジンとフタロニトリルネットワークとを組み合わせる従来のアプローチ(例えば、ベンゾオキサジンの化学的部分をフタロニトリル官能性分子中に挿入すること)よりも、有利には、より簡単で、より直接的で、かつ低コストである。
【0037】
硬化したブレンドネットワーク中に少なくともいくつかのフタロニトリル樹脂を含むことにより、構成樹脂の合計を超えてネットワークのガラス転移温度であるT
gに非線形に影響を及ぼすことが判明している。これは、このような開示されたベンゾオキサジン/フタロニトリルブレンドの驚くべき特性の一例である。例えば、初期樹脂ブレンド中のわずか25重量%のフタロニトリル樹脂で、ブレンド中に組み込まれるベンゾオキサジン及びフタロニトリル樹脂に応じて、ベンゾオキサジンホモポリマーネットワークよりもT
gを100℃以上高くすることができる。T
gは、フタロニトリルが25重量%以下の樹脂系における低フタロニトリル樹脂で、急速に上昇することが見出されている。約25重量%〜75重量%という中間濃度のフタロニトリル樹脂では、フタロニトリル樹脂の濃度が増大すると、T
gへの顕著な効果が少なくなる場合がある(例えば、T
gの上昇はより緩やかになり得る)。潜在的には、より高い架橋密度及びより高い密度の潜在的なフタロシアニン環に応じて、より低分子量の二官能性フタロニトリル樹脂が、典型的には、より高分子量の二官能性フタロニトリル樹脂よりもブレンドネットワークのT
gを上昇させる。約75重量%以上という高濃度のフタロニトリル樹脂では、T
gがフタロニトリルの特性を再現する新しいレジームに入ることができる。例えば、PdBZN25/RDPN75ブレンドネットワークは、いくつかのフタロニトリル硬化ホモポリマーネットワークと同様に、熱劣化の影響が生じ始める450℃以下では、T
g転移を示さないことが判明した。このようなレジームにおけるT
gは、ベンゾオキサジン樹脂に対して中間濃度のフタロニトリル樹脂を有する樹脂ブレンドのT
gより高くてもよく、又はT
gは、ベンゾオキサジン樹脂に対して中間濃度のフタロニトリルを有する樹脂ブレンドのT
gより低くてもよい。この結果は、中間濃度のフタロニトリル樹脂を有する樹脂ブレンドのネットワーク構造が、従来のベンゾオキサジンネットワーク及びフタロニトリルネットワークと区別されることを示唆している。
【0038】
BZN/PNブレンドの熱安定性の向上は、ベンゾオキサジン硬化ホモポリマーネットワークの耐熱劣化性及び耐酸化劣化性を上回り、樹脂ブレンド中の高濃度のPN樹脂でフタロニトリル硬化ホモポリマーネットワークに匹敵することによって実証された。耐劣化性が高いほど、ベンゾオキサジン硬化ネットワークよりも高い熱安定性及び耐劣化性を必要とする高温用途においてブレンド有用性をもたらすが、フタロニトリル樹脂を使用することの欠点(例えば、高い樹脂融解温度、樹脂コスト、ネットワーク形成硬化温度)は、その使用を妨げる。
【0039】
熱的特性の向上をもたらすブレンドネットワークにおける従来のベンゾオキサジン硬化ネットワークとフタロニトリル硬化ネットワークとの間の会合は、これまで、直接的には知られていない。可能性のある説明によれば、一級アミン(ベンゾオキサジン開環反応からもたらされる)とフタロニトリル部分との組合せに由来するN−置換−3−イミノイソインドレニンの形成に起因すると考えられる。ベンゾオキサジン形成ネットワーク由来のフェノールは、また、フタロニトリルと反応して、アルコキシ−3−イミノイソインドレニンを形成し得る。多官能フタロニトリル樹脂が使用される場合は、更なるフタロニトリルをイミノイソインドレニンに添加すると、ベンゾオキサジン形成ネットワークにより連結したポリマーの3−イミノイソインドレニン鎖、及びフタロニトリル樹脂中のフタロニトリル部分間のR結合を形成し得る。アミン、フェノール、及びフタロニトリルの濃度、並びに形成するネットワーク中のセグメント移動度に応じて、ポリマーの3−イミノイソインドレニンは環化し、異なる置換形態で存在し得るフタロシアニン構造の四量体になり得る。ベンゾオキサジン開環ネットワーク形成反応の際に、ベンゾオキサジンとフタロニトリル樹脂との間の結合形成の機会も存在する。
【0040】
本開示の少なくともいくつかの実施形態に従うBZN/PNブレンドの更なる有用な特徴としては、硬化時の少ない発熱、長い貯蔵寿命を与える周囲条件での固有の安定性、BZN/PN混和性ブレンドにおけるフタロニトリル結晶化の阻害、及び長い作業時間が挙げられる。これらの特徴を、以下で更に詳細に論じる。
【0041】
BZN樹脂を含有することにより、高温及び長い硬化時間を必要とする傾向のあるPNホモポリマーネットワークよりも短い硬化サイクル時間で硬化ネットワークが得られるようにみえる。このような長い硬化サイクル時間及び必要とされる高温後硬化は、フタロニトリル樹脂のより大規模での商業的使用を妨げている。
【0042】
BZN/PNブレンドの二段階硬化により、硬化時の発熱が低く保たれる傾向があり、大量の試料を硬化させる場合の熱暴走を防止するために望ましいものとなる。硬化時の発熱は、十分に分離した温度で硬化を開始する2種のブレンド樹脂の質量によって相殺される。これにより、2つの硬化メカニズムを体系的に研究することが可能となり、より良いブレンドを試験し、開発するための実験的手段がもたらされる。
【0043】
樹脂ブレンドは、周囲条件にて本質的に安定である。硬化触媒の非存在下でのベンゾオキサジン樹脂は長い貯蔵寿命を有し、120℃より高い温度では緩やかな熱硬化開始しか受けない。フタロニトリル樹脂は、また、周囲条件にて安定であり、高温であっても触媒の非存在下では本質的に非反応性である。フタロニトリル樹脂の熱的な反応開始は、長時間の間、250℃よりも高い温度を必要とし、フタロニトリルの転化率は低い。樹脂の本質的な非反応性により、樹脂ブレンドに長い貯蔵寿命がもたらされる。
【0044】
ベンゾオキサジンの開環及びネットワーク形成反応は、一級アミンの形成をもたらすが、これは最近Gordisher及びWebbの研究(Gorodisher,I.及びR.Webb,「Structural and mechanistic insight into polybenzoxazines via NMR」,2013:American Chemical Society;並びに、Webb,R.及びI.Gorodisher,「NMR of benzoxazine oligomers and polymers」,2013:American Chemical Society)によって示されている。ベンゾオキサジンポリマーネットワークの形成は、開環反応と、開環中に形成される二級又は三級ベンジルアミンのその後の転位とを含む、二段階プロセスであることが報告されている。出発のベンゾオキサジンモノマーのアミン構成成分が芳香族である場合、最終的なポリ(ベンゾオキサジン)構造は、よく知られているフェノール−ホルムアルデヒドポリマーとトポロジーにおいて同様のメチレン等価物によって連結された、フェノール及び芳香族アミンのネットワークである。ネットワーク形成反応は、熱的に活性化され、触媒の添加によってより低温で触媒的に活性化され得る。例示的な触媒としては、アミン、チオール、単体硫黄、及び金属塩が挙げられるが、これらに限定されない。この重合メカニズムは、ポリマー骨格に沿ってフェノール及び一級アミン官能基を残す。
【0045】
BZN/PNブレンドでは、プロトン供与体の非存在下でのフタロニトリルの硬化を開始させるベンゾオキサジンの三級アミンの触媒活性は最小限である。ベンゾオキサジンの開環による一級アミン及びアルコールの形成まで、フタロニトリル樹脂構成成分は、フタロシアニン形成に対して非反応性である。しかし、ベンゾオキサジンの開環後、フタロニトリル四量体化は、ベンゾオキサジン開環発熱より高い温度で妥当な速度で進行する。
【0046】
フタロニトリルの高い融解温度は、フタロニトリル樹脂の加工を複雑にする。ほとんどの樹脂のフタロニトリル融解温度は、フタロシアニン形成反応に近いか、それより高く、ゲル化前の樹脂の作業時間を制限する。有利には、ベンゾオキサジン樹脂の添加により、BZN/PN混和性ブレンドにおけるフタロニトリル結晶化が制限される傾向にあり、それにより、ブレンド樹脂の液体加工を促進する。
図1を参照すると、ベンゾオキサジン樹脂の質量分率が増加するにつれて、フタロニトリル樹脂の結晶化が減少して消失することが示されている。
【0047】
多くのベンゾオキサジン及びフタロニトリル樹脂、並びに樹脂ブレンドの軟化温度は、40〜60℃の間である。これは、樹脂軟化温度とベンゾオキサジン硬化時発熱との間に大きな温度差(>100℃)を生じさせ、これが触媒の非存在下で熱的に開始される場合170℃より高い温度で妥当な速度で進行する。大きな温度差は、BZN/PNブレンドに対して大きな加工の窓口をもたらす。フタロニトリル四量体化はベンゾオキサジン開環と関連しているので、ベンゾオキサジン樹脂の長い作業時間が樹脂ブレンドに付与される。
【0048】
驚くべきことに、BZN/PNブレンドの有利な効果は、少量の一方の樹脂が多量の他方の樹脂とブレンドされた場合であっても見出された。例えば、いくつかの実施形態では、樹脂ブレンドは、2:98〜99:1の範囲(両端の値を含む)、5:95〜96:4の範囲(両端の値を含む)、15:85〜85:15の範囲(両端の値を含む)、又は75:25〜25:75の範囲(両端の値を含む)である、フタロニトリル樹脂のベンゾオキサジン樹脂に対する重量比を含む。フタロニトリル樹脂とブレンドされた約1重量%のわずかなベンゾオキサジン樹脂であっても、フタロニトリルホモポリマーと比較して、フタロニトリルの加工特性に対する上記の改良のうちの少なくともいくつかを提供することができる。同様に、ベンゾオキサジン樹脂とブレンドされた約2重量%のわずかなフタロニトリル樹脂であっても、ベンゾオキサジンホモポリマーと比較して、上記のベンゾオキサジン樹脂に対するフタロニトリル樹脂の有益な特徴のうちの少なくともいくつかを提供することができる。
【0049】
特定の実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂は、式Iの樹脂:
【化5】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、共有結合又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、共有結合又は二価のアルキル基であり、
R
3及びR
4は、独立して、一級アミノ化合物の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択され、zは少なくとも1であり、
ただし、R
3又はR
4のいずれも式III:
【化6】
(式中、Rは、共有結合、C4〜C20アルキル鎖、−NH、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)で表されるものではない。]である。
【0050】
特定の実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂は、式IIの樹脂:
【化7】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、フェノール又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、H、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
4は、一級アミノ化合物R
4(NH
2)
mの(ヘテロ)ヒドロカルビル残基であり、ただし、R
4は式IIIのものではなく
【化8】
(式中、Rは、共有結合、C4〜C20アルキル鎖、−NH、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)、
R
4がアリール基である場合、mは1〜4であり、xは少なくとも1である。]である。
【0051】
特定の実施形態では、式Iのベンゾオキサジン樹脂は、式IIのベンゾオキサジン樹脂の部分集合である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂は単官能性ベンゾオキサジンを含み、その他の実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂は多官能性ベンゾオキサジンを含む。例えば、ベンゾオキサジン樹脂は、ビスフェノールA及びアニリンから、又はビスフェノールF及びアニリンから、又はフェノール及びメチレンジアニリンから、又はフェノール及びアニリンから誘導することができる。
【0053】
多くの実施形態では、フタロニトリル樹脂は、式IVの樹脂:
【化9】
[式中、Rは、H、共有結合、−C(CH
3)
3、C4〜C20アルキル鎖、−NO
2、−NH
2、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択され、yは少なくとも1であり、
ただし、Rは、式V又は式VIで表されるものではない。
【化10】
(式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、共有結合又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、共有結合又は二価のアルキル基であり、
R
3及びR
4は、独立して、一級アミノ化合物の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)
【化11】
(式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、フェノール又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、H、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
4は、一級アミノ化合物R
4(NH
2)
m(式中、R
4が、アリール基である場合、mは1〜4である。)の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基であり、xは少なくとも1である。)]である。
【0054】
いくつかの実施形態では、フタロニトリル樹脂は単官能性フタロニトリルを含み、その他の実施形態では、フタロニトリル樹脂は多官能性フタロニトリルを含む。例えば、フタロニトリル樹脂は、レゾルシノール及び4−ニトロフタロニトリルから、又はビスフェノールM及び4−ニトロフタロニトリルから、又はビスフェノールT及び4−ニトロフタロニトリルから、又は他の多官能性フェノール(例えば、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、及びビスフェノールFL)及び4−ニトロフタロニトリルから誘導することができる。その他の実施形態では、フタロニトリル樹脂は、多官能性フェノール及び3−ニトロフタロニトリル、米国特許第5,350,828号(Keller)に開示されるような多官能性チオール及び3−若しくは4−ニトロフタロニトリル、又は米国特許第5,262,514号(Keller)に開示されるような多官能性無水物及び3−若しくは4−アミノフタロニトリルから誘導することができる。特定の実施形態では、フタロニトリル樹脂は、アルキル官能化1,2−ジシアノベンゼンを含む。
【0055】
典型的には、ベンゾオキサジン樹脂との相溶性のため、フタロニトリル樹脂は、220℃以下、又は210℃以下、又は200℃以下、又は180℃以下、又は150℃以下、又は125℃以下、又は100℃以下の融解温度を有する。
【0056】
特定の実施形態では、樹脂ブレンドは25℃にて固体であるが、その他の実施形態では、樹脂ブレンドは25℃にて流体である。
【0057】
加えて、樹脂ブレンドは、2つ以上のベンゾオキサジン樹脂、2つ以上のフタロニトリル樹脂、又はその両方を含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、樹脂ブレンドは、第2のベンゾオキサジン樹脂、第3のベンゾオキサジン樹脂、第4のベンゾオキサジン樹脂などを更に含む。同様に、特定の実施形態では、樹脂ブレンドは、第2のフタロニトリル樹脂、第3のフタロニトリル樹脂、第4のフタロニトリル樹脂などを更に含む。
【0058】
ベンゾオキサジンは、フェノール化合物と、脂肪族アルデヒドと、アニリンなどの一級芳香族アミン化合物と、を組み合わせることによって調製できる。例えば、米国特許第5,543,516号(Ishida)及び米国特許第7,041,772号(Aizawaら)は、ベンゾオキサジンを形成する方法について記載している。単官能、二官能、及びより多官能性ベンゾオキサジンを生成するための他の好適な反応スキームは、N.N.Ghoshらの「Polybenzoxazine−new high performance thermosetting resins:synthesis and properties」,Prog.Polym.Sci.32(2007),pp.1344−1391に記載されている。
【0059】
ベンゾオキサジン樹脂を生成する1つの好適な方法は、以下の反応スキーム3:
【化12】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、フェノール、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、好ましくはH、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
5は、一級アミノ化合物たるR
5(NH
2)
m(式中、R
5は、アリール基であり、mは、1〜4である。)のアリール残基であり、xは少なくとも1である。]によって示される。R
2基は、ポリフェノール化合物の一部であってもよいため、上記R
2基は、別のベンゾオキサジン環と結合してもよいことが、理解されよう。同様に、R
5は、ポリアミン由来であってもよいため、上記R
5もまた、別のベンゾオキサジン環と結合してもよい。
【0060】
ベンゾオキサジン樹脂の調製では、モノ−又はポリフェノール化合物が使用されてもよい。所望であれば、フェノール化合物は制限なしに更に置換されてもよい。例えば、フェノール化合物の3、4、及び5位は、水素であってよく、又はアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アルコキシ、アルコキシアルキレン、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、ハロアルキル、カルボキシル、ハロ、アミノ、アミノアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルホン酸、又はアルキルスルホニル等の他の好適な置換基で置換されてもよい。ヒドロキシル基に対するオルト位のうちの少なくとも1つは、ベンゾオキサジン環形成を促進するために非置換であることが望ましい。
【0061】
フェノール化合物のアリール環は、示されるフェニル環であってよく、又はナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルから選択されてもよい。フェノール化合物のアリール環は、窒素、酸素、又は硫黄等の1〜3個のヘテロ原子を含有するヘテロアリール環を更に含んでもよく、縮合環を含有してもよい。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリルである。
【0062】
一官能性フェノールの例としては、フェノール、クレゾール、2−ブロモ−4−メチルフェノール、2−アリフェノール、4−アミノフェノール等が挙げられる。二官能性フェノール(ポリフェノール化合物)の例としては、フェノールフタレイン、ビフェノール、4−4’−メチレン−ジ−フェノール、4−4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノール−A、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、レゾルシノール、フルオレンビスフェノール等が挙げられる。三官能性フェノールの例は、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等を含む。
【0063】
ベンゾオキサジン樹脂の調製に用いられるアルデヒド反応物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、並びに一般式R
1CHO[式中、R
1はH又はアルキル基である。]を有するアルデヒド、が挙げられ、望ましくは1〜12個の炭素原子を有するこのようなアルデヒドの混合物が挙げられる。R
1基は、直鎖若しくは分枝状、環式若しくは非環式、飽和若しくは不飽和、又はこれらの組み合わせであってよい。他の有用なアルデヒドとしては、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及びヘプタアルデヒドが挙げられる。
【0064】
ベンゾオキサジン樹脂の調製において有用なアミノ化合物は、少なくとも1つの一級アミン基を有する置換又は非置換の芳香族アミンであってよい。アミンは、脂肪族アミンであっても芳香族アミンであってもよい。それは、例えば、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、又はヘテロアラルキル等の基で置換されてよい。
【0065】
ベンゾオキサジン樹脂の調製において有用なアミンとしては、アリールモノアミン及びポリアミンを含む、式R
5(NH
2)
mのものが挙げられる。R
5は、価数mを有するアリール基であり、かつ少なくとも1つの一級アミン基を有するモノ−、ジ−、又はそれ以上の芳香族アミンの残基である。下付き文字のmは、1〜4である。
【0066】
有用な芳香族アミンの例としては、アニリン、o−、m−、又はp−トルイジン、2,6−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリンp−ブロモアニリン、3,5−ジメチルアニリン及び2,4−ジメチルアニリン、p−ニトロアニリン、ジ−(4−アミノフェニル)スルホン、ジ−(4−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’ジメチル(4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−又はp−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、トルエンジアミン、4,4’メチレンジアニリンベンジジン、4,4’−チオジアニリン、4−メトキシ−1,3−フェニルジアミン、2,6−ジアミノピリジン、並びにジアニシジンが挙げられる。
【0067】
モノアミンは、アルデヒド及びフェノール化合物と環化してモノベンゾオキサジン化合物を生成するが、ジ−又はそれ以上のアミンは環化してジ−及びポリ−ベンゾオキサジン化合物を生成すると理解されるであろう。例えば、ジアミン(以下のスキーム4ではm=2)は、スキーム4:
【化13】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、好ましくはH、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
5は、一級アミノ化合物のアリール残基である。]にて示されるように、ジ−ベンゾオキサジンを生成するであろう。
【0068】
更に、ポリマーのベンゾオキサジンは、ビスフェノールAなどのポリフェノール化合物、及びジ−又はポリアミンから調製してもよく、これは、式I
【化14】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、共有結合、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
3及びR
4は、独立して、一級アミノ化合物の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択され、
zは少なくとも1、好ましくは2以上である。]にて示されるように、更に開環重合されてもよい。
【0069】
特定の実施形態では、樹脂ブレンドは、少なくとも1つの添加剤を更に含む。好適な添加剤としては、例えば、これらに限定されるものではないが、触媒、硬化剤、強化剤、充填剤及びこれらの1つ又は複数の組み合わせから選択される添加剤が挙げられる。
【0070】
いくつかの実施形態では、樹脂ブレンドは、触媒を含む。触媒は、トシレート、カルコゲナイド元素又は化合物、ブレンステッド酸、金属又は金属塩を含むことができる。
【0071】
トシレートは、p−トルエンスルホン酸のエステルなどのトルエンスルホニル化合物である。好適なトシレートとしては、共有の国際公開第2014/179100号(Gorodisherら)に記載されているトシレートが挙げられる。
【0072】
ブレンステッド酸は、プロトン供与体として機能することができる任意の分子又はイオン種である。ブレンステッド酸の好適な例としては、例えば、これらに限定されるものではないが、鉱酸(例えば、硫酸、塩化水素酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、及びこれらの部分的に中和した塩)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸、フェニルホスホン酸、エチルホスフィン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
カルコゲナイド元素としては、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、及びポロニウム(Po)が挙げられる。好適な触媒としては、単体硫黄、単体セレン、周期表(古いCAS又はアメリカのグループナンバリングシステムを参照のこと)の第VA族元素(例えば、N、P、As、Sb、Bi)の硫化物、第VIA族元素(例えば、O、S、Se、Te、Po)の硫化物、第VA族元素のセレン化物、第VIA族元素のセレン化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。単体硫黄の結晶又はアモルファス形態を、触媒として使用してもよい。単体硫黄は、名目上はS
8環として説明されるが、その他のポリマー及びオリゴマーが既知である。単体セレンの多様な同素体が使用されてもよい。名目上、硫化セレンは、硫黄及びセレンの多くの異なる化合物を指すが、一般的には、式SeS
2によって示される。セスキ硫化リン、五硫化二リン、及びテトラ硫黄テトラニトリドが使用されてもよい。
【0074】
好適な金属としては、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウムなど、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好適な金属塩としては、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、クロム、コバルト、チタン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、マンガン、ストロンチウム、イットリウム、ランタン、ポリアルミニウムハロゲン化物、塩基性硝酸アルミニウム、加水分解アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジルコニル塩、チタニル塩、及びこれらの組み合わせの可溶性塩が挙げられる。
【0075】
典型的には、触媒は、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する。特定の実施形態では、添加した触媒の融点は、樹脂ブレンドに含まれるベンゾオキサジンの熱的自触媒作用温度より低い。
【0076】
本開示の樹脂ブレンドは、任意に、1つ又は複数の硬化剤を含む。このような硬化剤は、チオール化合物、アミン化合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、チオール化合物及びアミン化合物の少なくとも1つは、多官能性である。特定の実施形態では、硬化剤は、N−シアノグアニジンを含む。このような硬化剤は、反応性希釈剤として機能し得る。
【0077】
有用なこのような化合物は、ベンゾオキサジンを開環する少なくとも1つの求核性官能基を有する。このような化合物は、一般式:
R
6−(ZH)
p (VII)
[式(VII)において、R
6は(ヘテロ)ヒドロカルビル基であり、
それぞれのZは独立して−S−又は−NR
7(式中、R
7はH又は、アリール及びアルキルを含むヒドロカルビル基である。)であり、
pは1〜6(特定の実施形態では、pは少なくとも2である。)である。]のものである。
【0078】
ベンゾオキサジン環は、式:
R
6−(SH)
p (VIII)
[式(VIII)において、R
6及びpは、式(VII)について上述で定義したとおりである。]のチオールでも開くことができる。すなわち、式(VIII)の化合物において、pは、1〜6、又は2〜6であり、R
6としては、脂肪族及び芳香族モノチオール並びにポリチオールを含む、(ヘテロ)ヒドロカルビル基が挙げられる。R
6は、任意に、ヒドロキシル、酸、エステル、シアノ、ウレア、ウレタン及びエーテル基を含む1つ又は複数の官能基を更に含んでもよい。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、式(VIII)のチオール化合物は、式:
R
8−[(CO
2)
x−R
9−SH]
y (IX)
[式(IX)において、式中、R
8はアルキレン基、アリール基、オキシアルキレン基、又はこれらの組み合わせであり、R
9は二価のヒドロカルビル基であり、
xは0又は1であり、
yは1〜6、好ましくは2〜6である。]のものである。
【0080】
特定の実施形態では、式(IX)の化合物は、R
8がアルキレン基であるものである。
【0081】
有用なアルキルチオールには、メチル、エチル、及びブチルチオールが挙げられる。その他の有用なチオールとしては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4−メルカプトブタノール、メルカプトウンデカノール、2−メルカプトエチルアミン、2,3−ジメルカプトプロパノール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピオン酸を含むメルカプトアルカン酸及びそのエステル、2−クロロエタンチオール、2−アミノ−3−メルカプトプロピオン酸、ドデシルメルカプタン、チオフェノール、2−メルカプトエチルエーテル、並びにペンタエリトリトールテトラチオグリコレートが挙げられる。有用なポリチオールの具体的な例としては、ジメルカプトジエチルスルフィド、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、プロパン−1,2,3−トリチオール、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、及びトリチオシアヌル酸が挙げられる。
【0082】
ポリチオールの別の有用な部類としては、チオグリコール酸若しくはβ−メルカプトプロピオン酸又はそのエステルなどのα−又はβ−メルカプトカルボン酸を含む、ポリオールとチオール末端置換カルボン酸(又はエステル又はアシルハライドなどのこれらの誘導体)とのエステル化により得られるものが挙げられる。このように得られる化合物の有用な例としては、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられ、これらは全て市販されている。ポリマーポリチオールの具体的な例は、ポリプロピレン−エーテルグリコール(例えば、BASF Wyandotte Chemical Corp.からPLURAXOLP201の商標名で入手可能)及び3−メルカプトプロピオン酸から、エステル化により調製される、ポリプロピレンエーテルグリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)である。
【0083】
いくつかの実施形態において、有用なチオールは、エポキシ化合物由来のチオールを含む。ポリチオールは、H
2S(又は等価物)と、2つ以上の官能基を有し、好ましくは、1000未満の分子量を有するエポキシ樹脂と、の間の反応から誘導してもよい。例えば、二官能エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂及びビスフェノールFエポキシ樹脂、並びにノボラックエポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂及びクレゾールノボラックエポキシ樹脂、又はアミンエポキシ樹脂を使用することができる。更に、一般的に既知の多官能エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂を使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2つ以上の化学的種類若しくは分子量範囲の組み合わせで使用されてもよい。
【0084】
特に有用なポリチオールは、Japan Epoxy ResinsからQX−11として入手可能なビスフェノールAジグリシジルエーテルから誘導されるものであり、約245のチオール当量及び次の一般的構造:
【化15】
[式中、nは少なくとも1である。]を有する。
【0085】
有用な可溶性高分子量チオールとしては、ポリエチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、並びに商標名LP−3(LP North America,Houston,TXにより供給される)、及び商標名PERMAPOL P3(Products Research&Chemical Corp.(Glendale,CA)により供給される)にて入手可能な樹脂、並びに2−メルカプトエチルアミンとカプロラクタムとの付加体などの化合物が挙げられる。
【0086】
所望により、様々な硬化剤の組み合わせを使用することができる。硬化剤は、典型的には、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する。
【0087】
特定の他の任意による添加剤も更に含んでもよく、例えば、強化剤、充填剤、及びこれらの組み合わせが含まれる。このような添加剤は、様々な機能を提供する。例えば、有機粒子などの強靭化剤は、硬化を妨げることなく、硬化後に、組成物に強度を追加し得る。1つの化合物が、2つ以上の異なる機能を形成してもよいことは、当業者に理解されよう。例えば、化合物は、強靭化剤及び充填剤の両方として機能してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、このような添加剤は、樹脂ブレンドの樹脂と反応しない。いくつかの実施形態では、このような添加剤は、反応性官能基を、特に末端基として含んでもよい。
【0089】
このような反応性官能基の例としては、これらに限定されないが、アミン、チオール、アルコール、エポキシド、ビニル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
本開示の樹脂ブレンドにおいて有用な強靭化剤は、ゴム相及び熱可塑性相の両方を有するポリマー化合物であり、例えば、重合ジエンゴム状コア及びポリアクリレートポリメタクリレートシェルを有するグラフトポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレートシェルを有する、ゴム状のポリアクリレートコアを有するグラフトポリマー、並びにフリーラジカル重合性モノマー及び共重合性ポリマー安定剤からエポキシド中にてin situで重合されるエラストマー粒子である。
【0091】
米国特許第3,496,250号(Czerwinski)に開示されるように、第1の種類の有用な強靭化剤の例としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのシェル、モノビニル芳香族炭化水素、又はこれらの混合物がグラフト化されている重合されたジエンゴム状骨格又はコアを有する、グラフトコポリマーが挙げられる。例示的なゴム状骨格は、重合されたブタジエン又はブタジエン及びスチレンの重合された混合物を含む。重合されたメタクリル酸エステルを含む例示的なシェルは、低級アルキル(C1〜C4)で置換されたメタクリレートである。例示的なモノビニル芳香族炭化水素は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルビニルベンゼン、イソプロピルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、及びエチルクロロスチレンである。グラフトコポリマーは、触媒毒となる官能基を含有しないことが重要である。
【0092】
第2の種類の有用な強靭化剤の例は、アクリレートコア−シェルグラフトコポリマーであり、この場合コア又は骨格は、0℃未満のガラス転移温度を有するポリアクリレートポリマーであり、ポリメチルメタクリレートなどの25℃より高いガラス転移温度を有する、ポリメタクリレートポリマー(シェル)がグラフト化されたポリブチルアクリレート又はポリイソオクチルアクリレートなどである。
【0093】
本発明において有用な第3の部類の強靭化剤は、組成物の他の構成成分と混合する前に、25℃未満のガラス転移温度(T
g)を有するエラストマー粒子を含む。これらのエラストマー粒子は、フリーラジカル重合性モノマー、及びベンゾオキサジンに可溶性である共重合性ポリマー安定剤から重合される。フリーラジカル重合性モノマーは、ジオール、ジアミン、及びアルカノールアミンなどの共反応性二官能性水素化合物と組み合わせた、エチレン性不飽和モノマー又はジイソシアネートである。
【0094】
有用な強靭化剤としては、コアが架橋スチレン/ブタジエンゴムであり、シェルがポリメチルアクリレートである、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)コポリマーなどのコア/シェルポリマー(例えば、Rohm and Haas(Philadelphia,PA)から入手可能なACRYLOID KM653及びKM680)、ポリブタジエンを含むコアと、ポリ(メチルメタクリレート)を含むシェルと、を有するもの(例えば、Kaneka Corporation(Houston,TX)から入手可能なKANE ACE M511、M521、B11A、B22、B31、及びM901、並びにATOFINA(Philadelphia,PA)から入手可能なCLEARSTRENGTH C223)、ポリシロキサンコア及びポリアクリレートシェルを有するもの(例えば、ATOFINAから入手可能なCLEARSTRENGTH S−2001、及びWacker−Chemie GmbH,Wacker Silicones(Munich,Germany)から入手可能なGENIOPERL P22)、ポリアクリレートコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2330、及び武田薬品工業(大阪)から入手可能なSTAPHYLOID AC3355及びAC3395)、MBSコア及びポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの(例えば、Rohm and Haasから入手可能なPARALOID EXL2691A、EXL2691、及びEXL2655)など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
上記で使用したように、アクリルコア/シェル材料のための「コア」は、0℃未満のT
gを有するアクリルポリマーであることが理解され、「シェル」は、25℃より高いT
gを有するアクリルポリマーであることが理解されよう。
【0096】
他の有用な強靭化剤としては、B.F.Goodrich ChemicalCo.からの商標名HYCAR CTBN 1300X8、ATBN 1300X16、及びHYCAR 1072で入手可能なものなどのカルボキシ化されたアミン末端のアクリロニトリル/ブタジエン加硫性エラストマー前駆物質、商標名HYCAR CTBで入手可能なものなどのブタジエンポリマー、3M Co.(St.Paul,MN)からの分子量10,000の一級アミン末端化合物であるHCl101(すなわちポリテトラメチレンオキサイドジアミン)、及びHuntsman Chemical Co.(Houston,TX)からの商標名JEFFAMINEで入手可能なものなどのアミン官能性ポリエーテルが挙げられる。有用な液体ポリ−ブタジエンヒドロキシル末端樹脂としては、Petroflex(Wilmington)からLIQUIFLEXの商標名で、及びSartomer(Exton,PN)からHT45の商標名で入手可能なものが挙げられる。
【0097】
強化剤は、エポキシ末端化合物を含んでもよく、これは、ポリマー骨格に組み込まれ得る。典型的な、好ましい強化剤の一覧には、アクリルコア/シェルポリマー、スチレン−ブタジエン/メタクリレートコア/シェルポリマー、ポリエーテルポリマー、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエン、及びカルボキシル化ブタジエンが挙げられる。エポキシ樹脂を持つ化合物内の鎖延長剤の提供から、上述した強靭化剤が無くとも、利点を得ることができる。しかし、特定の利点は、前に示唆したように、強靭化剤の存在又は異なる薬剤の組み合わせから得られる。
【0098】
いくつかの説明した天然及び合成ゴムは、触媒によって架橋され得る、鎖内不飽和を有することが理解される。したがって、触媒は、ベンゾオキサジンを重合することとなり、同時に、ポリ(ベンゾオキサジン)の同延のネットワーク及び加硫ゴムのために、ゴムを加硫する。
【0099】
所望の場合、強靭化剤の様々な組み合わせを用い得る。使用する場合、強靭化剤は少なくとも3重量%、又は少なくとも5重量%の量で樹脂ブレンド中に存在する。使用する場合、強靭化剤は35重量%以下、又は25重量%以下の量で樹脂ブレンド中に存在する。
【0100】
その他の任意による添加剤又は補助剤は、所望のように、組成物に添加されてもよい。このようなその他の任意による添加剤の例としては、着色剤、酸化防止安定剤、熱分解安定剤、光安定剤、流動化剤、増粘剤、艶消し剤、不活性充填剤、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑化剤、ゴム強化剤、及び当業者に既知のその他の添加剤が挙げられる。このような添加剤は、典型的には、実質的に非反応性である。存在する場合、これらの補助剤は、又はその他の任意による添加剤は、それらの意図された目的に有効な量で加えられる。
【0101】
好適な充填材料の例としては、強化等級カーボンブラック、フルオロプラスチック、粘土、及びこれらのいずれかの任意の割合での任意の組み合わせが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用する場合、語句「強化等級カーボンブラック」は、約10ミクロン未満の平均粒径を有する任意のカーボンブラックを含む。強化等級カーボンブラックに関するいくつかの特に好適な平均粒径は、約9nm〜約40nmの範囲である。強化等級ではないカーボンブラックとしては、平均粒径が約40nmより大きいカーボンブラックが挙げられる。カーボンナノチューブもまた、有用な充填剤である。カーボンブラック充填剤は、典型的には、組成物の伸長、硬度、磨耗耐性、伝導度、及び加工性のバランスをとるため、用いられる。好適な例としては、MTブラックス(メディアム・サーマル・ブラック)(名称:N−991、N−990、N−908、及びN−907)、FEF N−550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。
【0103】
その他の有用な充填剤としては、ケイソウ土、硫酸バリウム、タルク、及びフッ化カルシウムが挙げられる。任意による組成物の選択及び量は、特定の用途の必要性に依存する。
【0104】
組成物を硬化させるための反応条件は、用いられる反応物質及び量に依存し、当業者が決定することができる。硬化性組成物は、任意の順序で、上述したように、少なくとも1つのベンゾオキサジン樹脂と少なくとも1つのフタロニトリル樹脂とを混合することによって調製される。次いで、一般的に、組成物を約50〜300℃、好ましくは約130〜250℃の温度まで、約1〜360分間加熱する。より多くの割合のフタロニトリル樹脂を含むブレンドのいくつかは、最終的な性能を達成するために400℃以下の温度にて後硬化が必要な場合がある。
【0105】
本発明の組成物を硬化するための好適な熱源としては、誘導加熱コイル、オーブン、ホットプレート、ヒートガン、レーザを含む赤外線源、マイクロ波源が挙げられる。好適な光源及び放射線源としては、紫外線源、可視光線源、及び電子ビーム源が挙げられる。
【0106】
溶媒は、加工助剤として使用することが可能である。有用な溶媒は、ラクトン[γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びε−カプロラクトン等]、ケトン[アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、及びシクロヘキサノン等]、スルホン[テトラメチレンスルホン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、ブタジエンスルホン、メチルスルホン、エチルスルホン、プロピルスルホン、ブチルスルホン、メチルビニルスルホン、2−(メチルスルホニル)エタノール、2,2’−スルホニルジエタノール等]、スルホキシド[ジメチルスルホキシド等]、環状カーボネート[プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びビニレンカーボネート等]、カルボン酸エステル[エチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、メチルホルメート等]、並びにその他の溶媒[メチレンクロライド、ニトロメタン、アセトニトリル、グリコールサルファイト、及び1,2−ジメトキシエタン(グリム)等]である。
【0107】
樹脂ブレンドを含む様々な実施形態を提供する。
【0108】
実施形態1は、ベンゾオキサジン樹脂及びフタロニトリル樹脂のブレンドを含む樹脂ブレンドである。
【0109】
実施形態2は、フタロニトリル樹脂のベンゾオキサジン樹脂に対する重量比が、2:98〜99:1の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1に記載の樹脂ブレンドである。
【0110】
実施形態3は、フタロニトリル樹脂のベンゾオキサジン樹脂に対する重量比が、5:95〜96:4の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1又は2に記載の樹脂ブレンドである。
【0111】
実施形態4は、フタロニトリル樹脂のベンゾオキサジン樹脂に対する重量比が、15:85〜85:15の範囲(両端の値を含む)である、実施形態1〜3のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0112】
実施形態5は、ベンゾオキサジン樹脂が、式Iの樹脂:
【化16】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、共有結合又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、共有結合又は二価のアルキル基であり、
R
3及びR
4は、独立して、一級アミノ化合物の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択され、zは少なくとも1であり、
ただし、R
3又はR
4のいずれも式III:
【化17】
(式中、Rは、共有結合、C4〜C20アルキル鎖、−NH、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)で表されるものではない。]である、実施形態1〜4のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0113】
実施形態6は、ベンゾオキサジン樹脂が、式IIの樹脂:
【化18】
[式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、フェノール又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、H、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
4は、一級アミノ化合物R
4(NH
2)
mの(ヘテロ)ヒドロカルビル残基であり、ただし、R
4は式IIIのものではなく
【化19】
(式中、Rは、共有結合、C4〜C20アルキル鎖、−NH、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)、
R
4がアリール基である場合、mは1〜4であり、xは少なくとも1である。]である、実施形態1〜4のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0114】
実施形態7は、ベンゾオキサジン樹脂が単官能性ベンゾオキサジンを含む、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0115】
実施形態8は、ベンゾオキサジン樹脂が多官能性ベンゾオキサジンを含む、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0116】
実施形態9は、ベンゾオキサジン樹脂がビスフェノールA及びアニリンから誘導される、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0117】
実施形態10は、ベンゾオキサジン樹脂がビスフェノールF及びアニリンから誘導される、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0118】
実施形態11は、ベンゾオキサジン樹脂がフェノール及びメチレンジアニリンから誘導される、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0119】
実施形態12は、ベンゾオキサジン樹脂がフェノール及びアニリンから誘導される、実施形態1〜6のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0120】
実施形態13は、フタロニトリル樹脂が、式IVの樹脂:
【化20】
[式中、Rは、H、共有結合、−C(CH
3)
3、C4〜C20アルキル鎖、−NO
2、−NH
2、フェノール、ビフェノール、ビスフェノール、多価フェノール、イミド、エーテル、チオエーテル、アミド、エステル、多価(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択され、yは少なくとも1であり、
ただし、Rは、式V又は式VIで表されるものではない。
【化21】
(式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、共有結合又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、共有結合又は二価のアルキル基であり、
R
3及びR
4は、独立して、一級アミノ化合物の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基から選択される。)
【化22】
(式中、それぞれのR
1は、H又はアルキル基であり、かつ脂肪族アルデヒドの残基であり、
R
2は、H、共有結合、フェノール又は多価(ヘテロ)ヒドロカルビル基、好ましくは、H、共有結合、又は二価のアルキル基であり、
R
4は、一級アミノ化合物R
4(NH
2)
m(式中、R
4が、アリール基である場合、mは1〜4である。)の(ヘテロ)ヒドロカルビル残基であり、xは少なくとも1である。)]である、実施形態1〜12のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0121】
実施形態14は、Rがフェノールである、実施形態13に記載の樹脂ブレンドである。
【0122】
実施形態15は、フタロニトリル樹脂が単官能性フタロニトリルを含む、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0123】
実施形態16は、フタロニトリル樹脂が多官能性フタロニトリルを含む、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0124】
実施形態17は、フタロニトリル樹脂がレゾルシノール及び4−ニトロフタロニトリルから誘導される、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0125】
実施形態18は、フタロニトリル樹脂がビスフェノールM及び4−ニトロフタロニトリルから誘導される、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0126】
実施形態19は、フタロニトリル樹脂がビスフェノールT及び4−ニトロフタロニトリルから誘導される、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0127】
実施形態20は、フタロニトリル樹脂がアルキル官能化1,2−ジシアノベンゼンを含む、実施形態1〜13のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0128】
実施形態21は、フタロニトリル樹脂が、220℃以下の融解温度を有する、実施形態1〜20のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0129】
実施形態22は、少なくとも1つの添加剤を更に含む、実施形態1〜21のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0130】
実施形態23は、少なくとも1つの添加剤が、触媒、硬化剤、強化剤、充填剤及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態22に記載の樹脂ブレンドである。
【0131】
実施形態24は、触媒が、トシレート、カルコゲナイド元素又は化合物、ブレンステッド酸、金属又は金属塩を含む、実施形態22又は23に記載の樹脂ブレンドである。
【0132】
実施形態25は、触媒が、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する、実施形態22〜24のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0133】
実施形態26は、硬化剤がチオール又はアミンを含む、実施形態22〜25のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0134】
実施形態27は、硬化剤がN−シアノグアニジンを含む、実施形態22〜26のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0135】
実施形態28は、硬化剤が、樹脂ブレンドの0〜40重量%の量で存在する、実施形態22〜27のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0136】
実施形態29は、少なくとも1つの添加剤が強化剤を含む、実施形態22〜28のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0137】
実施形態30は、樹脂ブレンドが25℃にて固体である、実施形態1〜29のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0138】
実施形態31は、樹脂ブレンドが25℃にて流体である、実施形態1〜29のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0139】
実施形態32は、第2のベンゾオキサジン樹脂を更に含む、実施形態1〜31のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0140】
実施形態33は、第2のフタロニトリル樹脂を更に含む、実施形態1〜32のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0141】
実施形態34は、第3のベンゾオキサジン樹脂を更に含む、実施形態1〜33のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【0142】
実施形態35は、第3のフタロニトリル樹脂を更に含む、実施形態1〜34のいずれかに記載の樹脂ブレンドである。
【実施例】
【0143】
以下の実施例によって、本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は説明目的のためのものにすぎず、添付の「特許請求の範囲」の範囲を限定することを意図するものではない。別途注記のない限り、実施例において使用される全ての化学物質はSigma−Aldrich Corp.(Saint Louis、MO)から得ることができる。本明細書において別途記載のない限り、全ての微生物学的な補給品及び試薬は、Sigma−Aldrich又はVWRのいずれかから標準製品として購入されたものである。
【表1】
【0144】
方法
示差走査熱量計(DSC)による硬化反応時の発熱測定方法
TA Instruments QシリーズDSC(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。約5mgの樹脂を、アルミニウムDSCパン内に量り取った。試料パンをDSC装置内に入れ、試料の熱流を、1℃/分又は10℃/分のいずれかの昇温速度にて、動的DSC測定で測定した。
【0145】
動的機械分析器(DMA)による剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)の測定方法
TA Instruments QシリーズDMA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。動的機械測定は、単一片持ち梁形状(single cantilever beam geometry)又は引張形状のいずれかを使用して実施した。1Hzの周波数で20μmの制御された変形振幅にて、振動制御された力を加えた時に、低ひずみ同相及び位相外れの変形応答を測定し、得られる貯蔵弾性率及び損失弾性率、並びに損失正接を計算した。温度は、ガラスからゴムへの転移温度範囲にわたって、3℃/分又は5℃/分のいずれかで昇温させた。
【0146】
熱重量分析器(TGA)による重量損失の測定方法
TA Instruments QシリーズTGA(TA Instruments(New Castle,DE)から入手した)を使用した。約5〜10mgの試料を白金パン上にのせ、TGA内に入れた。試料の質量損失を、大気雰囲気下及び窒素雰囲気下にて、1℃/分の昇温速度で測定した。
【0147】
調製例A(RDPN)
250mL三つ口反応フラスコに、9g(0.052mol)の4−ニトロフタロニトリル、2.86g(0.26mol)のレゾルシノール、14.37g(0.104mol)の無水K
2CO
3、及び90gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を300mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を100mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、100mLのメタノールで洗浄した。生成物を回収し、120℃の対流式オーブン内で乾燥させた。生成物8.5g(90.3%)は185℃の融解温度を有し、赤外線分析により所望の化合物であると同定した。
【0148】
調製例B(BTDPN)
250mL三つ口反応フラスコに、9g(0.052mol)の4−ニトロフタロニトリル、5.67g(0.26mol)のビスフェノールT、14.37g(0.104mol)の無水K
2CO
3、及び90gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を300mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を100mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去した。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、100mLのメタノールで洗浄した。生成物を回収し、120℃の対流式オーブン内で乾燥させた。生成物10.8g(89.1%)は178℃の融解温度を有し、赤外線分析により所望の化合物であると同定した。
【0149】
調製例C(BMDPN)
250mL三つ口反応フラスコに、9g(0.052mol)の4−ニトロフタロニトリル、9.01g(0.26mol)のビスフェノールM、14.37g(0.104mol)の無水K
2CO
3、及び90gの乾燥DMSOを添加し、室温にて窒素雰囲気下で48時間撹拌した。反応溶液を300mLの撹拌脱イオン水中に注ぎ、未溶解塩を反応フラスコ内に残した。沈殿生成物を吸引濾過によってブフナー漏斗で回収した。沈殿物を100mLのメタノールに添加し、30分間撹拌して不純物を除去する。固体生成物を、吸引濾過によってブフナー漏斗で2回目の回収をし、100mLのメタノールで洗浄する。生成物を回収し、120℃の対流式オーブン内で乾燥させた。生成物14.21g(91.3%)は158℃の融解温度を有し、赤外線分析により所望の化合物であると同定した。
【0150】
比較例A(CE−A)
CE−Aについて、8.0gのPdBZN(すなわちPdBZN
100)を、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で190℃にて溶融させた。約30mgの溶融材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料の残部を190℃のオーブン内に入れ、190℃にて2時間硬化させた。硬化後、試料を5℃/分で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料は硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離し、上述したように、単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するためにストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、TA Instruments QシリーズTGAで重量損失測定に使用した。
【0151】
実施例1〜4(EX1〜EX4)
EX1について、7.2gのPdBZN、及び0.8gのRDPN(すなわち、PdBZN
90/RDPN
10ブレンド)を溶融させ、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で190℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を190℃のオーブンに入れた。試料を、設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、265℃にて1時間、及び300℃にて1時間硬化させた。次いで、試料を5℃/分の速度で40℃まで冷却し、アルミニウムパンから取り出した。試料は硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、TGAで重量損失測定に使用した。EX2〜EX4(すなわち、それぞれ、PdBZN
75/RDPN
25ブレンド、PdBZN
50/RDPN
50ブレンド、PdBZN
25/RDPN
75ブレンド)を調製し、PdBZNとRDPNとの比を変化させた以外は、EX1と同様にして特性評価した。加えて、EX2及びEX3の試料を、硬化後窒素雰囲気下にて350℃で30分間アニールするとともに、EX4の試料を硬化後窒素雰囲気下にて350℃で30分間及び400℃で30分間アニールした。
【0152】
CE−A及びEX1〜EX4についての組成と特性評価のデータとを、以下の表1にまとめる。
【表2】
【0153】
比較例B(CE−B)
CE−Bについて、4.31gのBFBZN(すなわち、BFBZN
100)を、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内に入れ、120℃の温度にて溶融させ、ブレンドの熱履歴を再現した。約30mgの材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を180℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、210℃にて1時間、及び240℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は、暗赤色、透明で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。長方形の引張フィルム形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx1mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0154】
実施例5〜11(EX5〜EX11)
EX5について、47.5gのBFBZN及び2.50gのBMDPN(すなわち、BFBZN
95/BMDPN
5ブレンド)を、乳鉢及び乳棒を用いて、周囲温度にて粉砕した。固体混合物を溶融させ、150℃の温度にて、均一溶液が得られるまでブレンドした。混合物を周囲温度まで冷却し、上述したように、約30mgのブレンド材料を硬化反応のDSC測定をするために取り出した。次いで、約8.0gの試料を、150℃の空気循環オーブン内のアルミニウムパンに入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、150℃にて2時間、170℃にて2時間、190℃にて2時間、220℃にて2時間、及び240℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は、非常に暗赤色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。長方形の引張フィルム形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx3mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0155】
EX6〜EX11(すなわち、それぞれ、BFBZN
90/BMDPN
10ブレンド、BFBZN
75/BMDPN
25ブレンド、BFBZN
50/BMDPN
50ブレンド、BFBZN
25/BMDPN
75ブレンド、BFBZN
10/BMDPN
90ブレンド、BFBZN
4/BMDPN
96ブレンド)を調製し、PFBZNとBMDPNとの比を以下の表2に記載されたように変化させた以外は、上述のEX5と同様にして特性評価した。加えて、EX6〜EX11の融解温度及び硬化サイクルを以下のとおり変化させた。
【0156】
EX6の試料を170℃で溶融させ、次いで、150℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、150℃にて2時間、170℃にて2時間、190℃にて2時間、220℃にて2時間、及び250℃にて2時間硬化させた。試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。
【0157】
EX7及びEX8の試料を120℃で溶融させ、次いで、180℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、210℃にて1時間、及び240℃にて1時間硬化させた。EX7及びEX8の試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。
【0158】
EX9の試料を170℃で溶融させ、次いで、150℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、150℃にて2時間、170℃にて2時間、190℃にて2時間、220℃にて2時間、及び250℃にて2時間、及び300℃にて1時間硬化させた。試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。試料の目視検査によると、下部バルクよりも低い温度で熱軟化した薄い表皮材料が現れた。動的機械測定の前に、軽いサンディングで表皮を除去した。
【0159】
EX10の試料を160℃で溶融させ、次いで、190℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、及び250℃にて4時間硬化させた。試料の目視検査によると、下部バルクよりも低い温度で熱軟化した薄い表皮材料が現れた。動的機械測定の前に、軽いサンディングで表皮を除去した。
【0160】
EX11の試料を160℃で溶融させ、次いで、190℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、及び265℃にて4時間硬化させた。
【0161】
CE−B及びEX5〜EX11についての組成と特性評価のデータとを、以下の表2にまとめる。
【表3】
【0162】
実施例12(EX12)
EX12について、6.0gのPdBZN、及び2.0gのBTDPN(すなわち、PdBZN
75/BTDPN
25ブレンド)を溶融させ、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で190℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を、190℃のオーブン内に入れ、次いで設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、265℃にて1時間、及び300℃にて1時間硬化させた。試料を窒素雰囲気下にて350℃で30分間アニールし、5℃/分の速度で40℃まで冷却した。試料は硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0163】
実施例13(EX13)
EX13について、6.0gのPdBZN、及び2.0gのBMDPN(すなわち、PdBZN
75/BMDPN
25ブレンド)を溶融させ、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で160℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を、190℃のオーブン内に入れ、次いで設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、265℃にて1時間、及び300℃にて1時間硬化させてアニールした。試料を5℃/分の速度で40℃まで冷却した。試料は硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0164】
EX2、EX12及びEX13についての組成と特性評価のデータとを、以下の表3にまとめる。
【表4】
【0165】
実施例14(EX14)
EX14について、3.36gのBABZN、及び1.12gのBMDPN(すなわち、BABZN
75/BMDPN
25ブレンド)を、乳鉢及び乳棒を用いて周囲温度にて粉砕し、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパンへ移した。固体混合物を溶融させ、均一溶液が得られるまで、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で120℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を、180℃のオーブン内に入れ、次いで設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、210℃にて1時間、240℃にて1時間硬化させた。試料を20℃/分の速度で40℃まで冷却した。試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx1mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0166】
実施例15(EX15)
EX15について、2.52gのPhBZN、及び0.75gのBMDPN(すなわち、PhBZN
77/BMDPN
23ブレンド)を溶融させ、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で160℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を、180℃のオーブン内に入れ、次いで設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、220℃にて2時間、250℃にて1時間硬化させた。試料を20℃/分の速度で40℃まで冷却した。試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx1mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0167】
EX7及びEX13〜EX15についての組成と特性評価とのデータを、以下の表4にまとめる。
【表5】
【0168】
比較例C(CE−C)
CE−Cについて、5.16gのBABZN(すなわち、BABZN
100)を、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内に入れ、120℃にて溶融させ、ブレンドの熱履歴を再現した。約30mgの材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を、180℃の空気循環オーブン内に入れ、次いで設定値間で3℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、210℃にて1時間、及び240℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は、暗赤色、透明で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。長方形の引張フィルム形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx1mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0169】
比較例D(CE−D)
CE−Dについて、10.2gのPhBZN(すなわち、PhBZN
100)を、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内に入れた。固体混合物を140℃の温度にて溶融させ、ブレンドの熱履歴を再現した。約30mgのブレンド材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を180℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、220℃にて2時間、及び250℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は、暗赤色、透明で光沢があり、機械的には硬くて剛性であったが、多くの大きな空隙を有した。極度な空隙は、試料のDMA測定を妨げた。硬化済材料の小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0170】
実施例16(EX16)
EX16について、7.00gのBABZN、及び1.01gのDCB(すなわち、BABZN
87.5/DCB
12.5ブレンド)を、乳鉢及び乳棒を用いて周囲温度にて粉砕し、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパンへ移した。固体混合物を溶融させ、140℃の温度にて、均一溶液が得られるまでブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を180℃の空気循環オーブン内に入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、180℃にて2時間、220℃にて2時間、及び250℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。三点曲げ形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx1mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0171】
実施例17(EX17)
EX17について、30.00gのBFBZN、20.00gのPhBZN、5.00gのBMDPN、及び0.50gのDICY(すなわち、BFBZN
60/PhBZN
30/BMDPN
10ブレンド)を、乳鉢及び乳棒を用いて、周囲温度にて粉砕した。固体混合物を溶融させ、150℃の温度にて、均一溶液が得られるまでブレンドした。混合物を周囲温度まで冷却し、上述したように、約30mgのブレンド材料を硬化反応時発熱のDSC測定をするために取り出した。次いで、約8.0gの試料を、150℃の空気循環オーブン内のアルミニウムパンに入れた。試料を、設定値間で5℃/分の速度で昇温させながら、150℃にて2時間、170℃にて2時間、190℃にて2時間、220℃にて2時間、及び240℃にて1時間硬化させた。試料をオーブン内で20℃/分の速度で40℃まで冷却し、次いで、アルミニウムパンから取り出した。試料の外観は赤黒色で光沢があり、機械的には硬くて剛性であった。長方形の引張フィルム形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料を、40mmx12mmx3mmのおよその寸法を有するストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0172】
実施例18(Ex18)
EX18について、0.48gのBFBZN、5.02gのBMDPN、及び2.50gのRDPN(すなわち、BFBZN
6/BMDPN
63/RDPN
31ブレンド)を溶融させ、平底の70mm直径の薄いゲージアルミニウムパン内で190℃の温度にてブレンドした。約30mgのブレンド材料を取り出し、上述したように、硬化反応時の発熱をDSC測定するためにクエンチした。次いで、試料を190℃のオーブンに入れた。試料を、設定値間で3℃/分で昇温させながら、190℃にて1時間、220℃にて1時間、265℃にて1時間、及び300℃にて1時間硬化させた。試料を窒素雰囲気下にて350℃で30分間、及び400℃で30分間アニールし、5℃/分の速度で40℃まで冷却した。試料は硬くて剛性であった。アルミニウムパンを試料から剥離した。単一片持ち梁形状における剛性(E’)及びガラス転移温度(tanδピーク)をDMA測定するために、試料をストリップへと切断した。硬化済材料の更なる小さな断片(10〜20mg)を、上述したように、重量損失測定に使用した。
【0173】
CE−C、CE−D及びEX15〜EX18についての組成と特性評価とのデータを、以下の表5にまとめる。
【表6】
【0174】
本明細書では、特定の例示的な実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者には、上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び均等物を容易に想起することができる点が、理解されるであろう。更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが、詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度で、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的な実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。