特許第6938507号(P6938507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938507手術支援ロボットシステム用の器械装置マニピュレータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938507
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】手術支援ロボットシステム用の器械装置マニピュレータ
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20210909BHJP
   A61B 46/10 20160101ALI20210909BHJP
【FI】
   A61B34/30
   A61B46/10
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-532524(P2018-532524)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-533450(P2018-533450A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】US2016051154
(87)【国際公開番号】WO2017044884
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】62/216,239
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シュー,トラヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マシュー レーガン
(72)【発明者】
【氏名】ボガスキー,ジョセフ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミンツ,デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】ユ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】キンツ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ダン,ヨウイチロウ
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0071821(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015650(US,A1)
【文献】 特開平07−136173(JP,A)
【文献】 欧州特許第02259744(EP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0066944(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61B 46/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに固定されるように構成された手術用アームと、
手術用器具ホルダーアセンブリであって、
前記手術用アームに取り付けられたハウジング、
通路を有する手術用器具ホルダー、
前記手術用器具ホルダーの第1の端部上にある取付インターフェース、および
前記手術用器具ホルダーを前記ハウジングに対して回転させる少なくとも1つのモータ
を含む、手術用器具ホルダーアセンブリと、
手術用器具であって、
前記手術用器具の第1の面上にある相互取付インターフェース、
前記相互取付インターフェースを前記手術用器具ホルダーの前記取付インターフェースに解放可能に取り付けるように構成された取付機構、および
前記手術用器具の前記第1の面から延在する細長状本体であって、前記手術用器具ホルダーの前記通路を通過可能な細長状本体
を含む、手術用器具と
を含む、手術用器械操作システム。
【請求項2】
前記手術用アームが手術支援ロボットシステムによって操作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハウジングはシリンダー形状である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記手術用器具が前記手術用器具ホルダーに取り付けられているときに、前記通路、前記手術用器具ホルダーの前記細長状本体、および前記手術用器具ホルダーの回転軸は、同軸上に整列されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記手術用器具が前記手術用器具ホルダーに取り付けられ、前記少なくとも1つのモータが前記手術用器具ホルダーを前記ハウジングに対して回転させるときに、前記通路は、前記手術用器具の前記細長状本体が前記回転軸の周りで連続的に回転できるようにする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記取付インターフェースは、前記取付インターフェースから外向きに突出する複数のトルクカップラーを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記相互取付インターフェースは、前記複数のトルクカップラーと相互に噛合するように構成される複数の器械入力部を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のトルクカップラーのそれぞれは、駆動機構に結合される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
各トルクカップラー用の前記駆動機構は、前記トルクカップラーを回転させ、それにより、それぞれの前記器械入力部を回転させるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
複数の前記駆動機構が、前記通路の周りでリング構成に配置されている、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記細長状本体は、内視鏡用の操縦可能なカテーテル、または腹腔鏡用の硬質カテーテルのうちの一方である、請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記手術用器械操作システム用の手術用ドレープは、前記手術用器具ホルダーアセンブリと前記手術用器具との間に無菌境界を生じさせる、請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記手術用ドレープは、前記手術用器具ホルダーと、前記取付インターフェースを介して前記手術用器具ホルダーに取り付けられた前記手術用器具との間に位置決めされる滅菌アダプターとを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記滅菌アダプターは、前記手術用器具ホルダーと前記手術用器具との間でデータ、電力、および電気信号を伝送することができる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ハウジングに固定されたリング状ギヤと、
前記少なくとも1つのモータに結合され、前記リング状ギヤのギヤの歯に噛合する回転ギヤと、
をさらに含み、
前記少なくとも1つのモータは、前記リング状ギヤのギヤの歯に沿って前記回転ギヤを移動させることにより、前記手術用器具ホルダーの回転を駆動する、
請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月9日出願の米国仮特許出願第62/216,239号明細書の利益を主張し、その全体を参照することにより本書に援用する。
【0002】
本出願の主題は、2014年10月24日出願の米国特許出願第14/523,760号明細書;2014年11月14日出願の米国特許出願第14/542,403号明細書(2013年10月24日出願の米国仮特許出願第61/895,315号明細書の利益を主張する);2014年7月1日出願の米国仮特許出願第62/019,816号明細書;2014年8月14日出願の米国仮特許出願第62/037,520号明細書;2014年9月30日出願の米国仮特許出願第62/057,936号明細書;2015年3月17日出願の米国仮特許出願第62/134,366号明細書;および2015年6月25日出願の米国仮特許出願第62/184,741号明細書に関する。上記のそれぞれの全体を本願明細書に援用する。
【0003】
この説明は、概して、手術支援ロボット(surgical robotics)に関し、特に、手術用器具に取り付けられ、手術用器具を回転させることができる器械装置マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0004】
ロボット技術は様々に応用される。特に、ロボットアームは、通常、人が行うタスクを終わらせるのを助ける。例えば、工場では、ロボットアームを使用して自動車および消費家電製品を製造している。さらに、科学施設では、マイクロプレートを運ぶなどの実験手順を自動化するためにロボットアームを使用している。医療分野では、医師が、外科的処置を行うのを助けるためにロボットアームを使用し始めている。
【0005】
手術用ロボットシステムでは、ロボットアームは、例えば、ロボットアームの端部において器械装置マニピュレータに接続され、および器械装置マニピュレータを、規定された作業空間内の任意の位置へ動かすことができる。器械装置マニピュレータは、内視鏡に利用される操作可能なカテーテルまたは様々な腹腔鏡器具のいずれかなどの手術用器具に取り外し可能に結合され得る。器械装置マニピュレータは、ロボットアームから動きを伝えて手術用器具の位置を制御し、また、プル・ワイヤなどの器具の制御を開始してカテーテルを操作する。さらに、器械装置マニピュレータは、器具に電気的および/または光学的に結合されて、電力、光、または制御信号を提供し、器具からのデータ、例えば器具上のカメラからのビデオストリームを受信し得る。
【0006】
内視鏡または他の細長状の手術用器具をロボットで駆動するために、所望の線形方向において関節接合し、かつ所望の角度方向において「ローリング」することが望ましいことが多い。本明細書では、用語「ローリング」は、管腔内用のまたは他の細長状の手術用器具を手術用器具の縦軸の周りで回転することを意味する。現在の細長状の医療装置では、装置のシャフトでのローリングは、プル・ケーブルの管理を犠牲にして達成されることが多い。例えば、市場に出回っているいくつかの腹腔鏡装置では、装置のシャフトのローリングは、作動用プル・ワイヤ(装置のエンドエフェクタおよび/または手首の操作に使用される)を互いの周りで、シャフトと同じ速度で、単に捻ることによって、成し遂げられ得る。いずれかの方向において回転が機械的に制限されているため、ケーブルの捻じれがあってもローリングまたは把持装置操作のいずれかに対する悪影響は、皆無かそれに近い。それにも関わらず、このプル・ワイヤ管理の欠如は、シャフトの回転を通して、著しい
様々なレベルの摩擦を生じる。摩擦の蓄積は、プル・ワイヤがもはや、結果として生じる摩擦に打ち勝つことができなくなって装置のエンドエフェクタおよび/または手首に張力を与えるまで、ワイヤロープのようにプル・ワイヤが互いの周りにきつく結び付けられるまで、回転毎に着実に増加する。
【0007】
いくつかの製品では、関節接合とローリングとは、ロボットの外側「シース」を使用して切り離されて、ピッチングおよびヨウイングによる関節接合を可能にする一方で、可撓性の腹腔鏡器具はローリングによる挿入およびエンドエフェクタの作動を制御する。しかしながら、これは、異なる自由度を制御する2つの別個のモジュールを備える、不必要に大きいシステムを生じる。別個のモジュールは、手術前の作業の流れを複雑にする。なぜなら、オペレータは、患者に対して2組の装置を登録する必要があるためである。手動の内視鏡では、ノブおよびダイアルでスコープの遠位先端を作動させるが、シャフトの回転は、器具の近位端部全体を捻ることによって、行う。その結果、スコープをローリングさせるとき、オペレータは、不自然な補正位置へと強制的にひねって、ノブおよびダイアルを操作する。これらのひねりは望ましくないため、異なるアプローチを必要とする。
【0008】
手術用ロボットシステムを使用している間、手術用器具は器械装置マニピュレータに接続されているため、器具は患者から離れており、それゆえ、ロボットアームは、器械装置マニピュレータおよびそれに接続された器具を、患者の体内の手術部位の方へ前進させる。手術中のいくつかの状況では、器械装置マニピュレータから器具を迅速に切り離して、患者から取り除くことが望ましい。しかし、器具が器械装置マニピュレータの遠位面に接続されていると、器械装置マニピュレータからの器具の取り外しは、器具が器械装置マニピュレータの取付機構から持ち上げられ得るようにするために、器具を、手術部位の方へ短い距離前進させる必要があるかもしれない。手術部位の方へのわずかな動きでも、患者に損傷を引き起こす可能性がある。あるいは、手術用器具は、器械装置マニピュレータの頂面に接続され得る。これにより、器具を手術部位の方へ前進させずに、器具を器械装置マニピュレータから切り離すことができるが、器具の軸の周りで対称的にならないように器具を接続することは、手術用アームおよび/または器械装置マニピュレータが器具に与えることができるローリングの量を制限し得る。
【0009】
さらに、臨床の場で患者に手術用ロボットシステムを使用する前に、システムの複数の部分を滅菌するかまたはドレープで覆うことにより、無菌環境を保護する必要がある。手術用器具は、無菌であり、かつ使い捨てであるが、ロボットアームおよび器械装置マニピュレータは使い捨てではないため、それらと手術部位との間に境界を作るために、ドレープで覆う必要がある。しかしながら、器械装置マニピュレータおよび器具の構成は様々であり、器械装置マニピュレータをドレープで覆うことに対し、ドレープで覆われた器械装置マニピュレータと、ドレープで覆われていない器具との間に電気的、光学的、および他の接続を提供するなどの様々な課題を提示する。さらに、器具は、器械装置マニピュレータに対して回転し得るため、器具が回転されるときに、ドレープが絡むのを回避することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、器械装置マニピュレータから手術用器具をより簡単に外し、また外すための動きを軽減する機構が必要とされている。さらに、器具の作動能力と関節接合能力とを損なわずに、管腔内用のおよび他の細長状の手術用器具を「ローリング」することができる手術用器具マニピュレータが必要とされており、およびそのようなマニピュレータと適合する手術用ドレープを提供することがさらに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、器具を手術部位の方へ前進させずに、手術用ロボットシステムのロボットアーム上にある器械装置マニピュレータ(IDM)から手術用器具を切り離すことができるようにする。例えば、IDMのいずれの取付機構からも器具を取り外すように十分に動かすために必要な動きが、手術部位から離れる方向であるようにするために、(患者から離れている)IDMの近位面上に取付インターフェースが含まれているため、器具の遠位端部は手術部位から引き離される。さらに、IDMはまた、器具の軸の周りでほぼ対称的になるように、器具をIDMに取り付けることができるように貫通する通路を含んでもよい。側面に装着される配置とは対照的に、これは、より大きな量のローリング(おそらく無限)を、IDMによって器具に与えることができる。
【0012】
様々な実施形態では、IDMは、手術用器具を手術用器具の軸の周りで連続的に回転または「ローリング」させることができるように、手術用器具を手術用ロボットアームに取り付けるように構成される。IDMは、手術用ロボットアームに取り外し可能にまたは固定して取り付けられるように構成されたベースと、ベースに取り付けられた手術用器具ホルダーアセンブリとを含む。手術用器具ホルダーアセンブリは、手術用器具ホルダーアセンブリ内に回転可能に固定される手術用器具ホルダーを含む。手術用器具ホルダーは、取付インターフェースを介して手術用器具を固定して、手術用器具が手術用器具ホルダーと一緒に回転するようにする。手術用器具ホルダーは、さらに、手術用器具の近位延在部を受け入れ、ベースに対する手術用器具の自由な回転を可能にするように構成される通路を含む。手術用器具ホルダーは、ベースに対して手術用器具ホルダーを回転させるための1つ以上の駆動機構を含む。IDMは、さらに、ベースを手術用器具ホルダーに電気的にやり取り可能に結合して1つ以上の駆動機構に給電するために、複数のスリップリングを含む。
【0013】
取付インターフェースは、手術用器具上の複数の器械入力部と係合できる1つ以上のトルクカップラーを含む。トルクカップラーは、アクチュエータによって駆動され、それによりトルクカップラーを回転させ、それにより複数の器械入力部を回転させ、それゆえ手術用器具の複数のエンドエフェクタを駆動させる。複数のトルクカップラーは、取付インターフェースから外向きに突出し、各トルクカップラーは、取付インターフェースから外向きに突出する第1の状態と、ハウジング内に引っ込む第2の状態との間で移行できる。第2の状態では、複数のトルクカップラーは、複数の器械入力部から関節接合を解除され(de−articulated)、手術用器具を手術用器具ホルダーアセンブリから取り外すことができるようにする。手術用器具ホルダーアセンブリは、さらに、手術用器具が手術用器具ホルダーアセンブリに解放可能に固定されるように、第1の状態と第2の状態との間の移行を制御するように構成された作動機構を含む。いくつかの実施形態では、手術用器具の外側ハウジングは、回転運動によって作動機構を作動させるように、回転できる。この器具の係合解除の構成によって、手術用器具を手術用器具ホルダーアセンブリから係合解除でき、かつ患者に対して遠位方向に取り外すことができ、手術用器具の取り外す最中の患者の安全性が高められる。
【0014】
本発明の実施形態は、手術用ロボットシステムのIDM用の手術用ドレープを含む。手術用ドレープは、手術用アームの少なくとも一部分およびIDMを被覆するように構成された滅菌シートを含む。滅菌シートには第1の突起および第2の突起が取り付けられており、各突起は、IDMの通路に挿入可能である。第1および第2の突起は、それぞれ、ひとたび通路に挿入されたら、相互に嵌合するように構成された固定インターフェースを有する。第1および第2の突起は、さらに、手術用器具の細長状本体を受け入れるように構成される。特定の実施形態では、第1の突起は、外側リング内で回転可能にかつ同軸上に固定される内側ディスクに接続され得る。内側ディスクは、IDMの取付インターフェースを被覆するように構成される。この構成によって、IDMが手術用器具の軸の周りで連続的に回転または「ローリング」するように構成されるときに、内側ディスクを、IDM
に取り付けられた手術用器具と一緒に自由に回転させることができる。他の実施形態では、第2のインターフェースも、滅菌シートに回転可能に取り付けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態による手術用ロボットシステムを示す。
図2】一実施形態による手術用ロボットシステム用のコマンドコンソールを示す。
図3】一実施形態による手術用ロボットシステム用の器械装置マニピュレータの斜視図を示す。
図4】一実施形態による、図3の器械装置マニピュレータの側面図を示す。
図5】一実施形態による、図3の器械装置マニピュレータに固定された、例示的な手術用器具の前面分解斜視図を示す。
図6】一実施形態による、図3の器械装置マニピュレータに固定された、例示的な手術用器具の背面分解斜視図を示す。
図7】一実施形態による、手術用器具ホルダーからの手術用器具の係合および係合解除用の作動機構の拡大斜視図を示す。
図8A】一実施形態による、滅菌アダプターからの手術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。
図8B】一実施形態による、滅菌アダプターからの手術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。
図9A】追加的な実施形態による、滅菌アダプターからの手術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。
図9B】追加的な実施形態による、滅菌アダプターからの手術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。
図10A】一実施形態による、器械装置マニピュレータ内で手術用器具ホルダーをローリングするための機構の斜視図を示す。
図10B】一実施形態による器械装置マニピュレータの断面図を示す。
図11A】一実施形態による、器械装置マニピュレータおよびそのいくつかの電気部品の内部構成要素の部分的な分解斜視図を示す。
図11B】一実施形態による、器械装置マニピュレータおよびそのいくつかの電気部品の内部構成要素の部分的な分解斜視図を示す。
図12】一実施形態による、手術用器具ホルダーを回転割り出しするための、器械装置マニピュレータの電気部品の拡大斜視図を示す。
図13】一実施形態による、手術支援ロボットシステムのための器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの断面図を示す。
図14】一実施形態による、手術用器具ホルダー用の手術用ドレープの相互嵌合インターフェースの断面図を示す。
図15】一実施形態による、器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの滅菌アダプターの断面図を示す。
図16】追加的な実施形態による、器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの断面図を示す。
図17】一実施形態による、手術用器具と器械装置マニピュレータとの間の電力およびデータの伝送のための光インターフェースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面は、説明のためだけに、本発明の実施形態を示す。当業者は、以下の説明から、本明細書で説明する本発明の原理から逸脱せずに、本明細書に示す構造および方法の代替的な実施形態が用いられ得ることを容易に認識するであろう。
【0017】
I.手術用ロボットシステム
図1は、手術用ロボットシステム100の実施形態を示す。手術用ロボットシステム1
00は、1つ以上のロボットアーム、例えば、ロボットアーム102に結合されたベース101を含む。ベース101は、図2を参照して本明細書でさらに説明されるコマンドコンソールに通信可能に結合される。ベース101は、ロボットアーム102が、患者に外科的処置を行うためにアクセスするように位置決めされ得る一方で、医師などのユーザは、コマンドコンソールからくつろいだ状態で、手術用ロボットシステム100を制御し得る。いくつかの実施形態では、ベース101は、患者を支持するための手術台またはベッドに結合され得る。明快にするために図1には示さないが、ベース101は、サブシステム、例えば制御エレクトロニクス、空気力学機構、電力源、光源などを含み得る。ロボットアーム102は、ジョイント111で結合された複数のアームセグメント110を含み、これにより、ロボットアーム102に多自由度、例えば、7個のアームセグメントに対応する7自由度をもたらす。ベース101は、電力源112、空気圧113、および制御およびセンサーエレクトロニクス114−中央処理装置、データバス、制御回路、およびメモリなどの構成要素を含む−およびロボットアーム102を動かすためのモータなどの関連のアクチュエータを含み得る。ベース101内のエレクトロニクス114はまた、コマンドコンソールから通信された制御信号を処理および伝送し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、ベース101は、手術用ロボットシステム100を運搬するための車輪115を含む。手術用ロボットシステム100に移動性があることにより、手術室における空間の制約に適応させるのを、ならびに手術用機器の適切な位置決めおよび動きを容易にするのを助ける。さらに、移動性によって、ロボットアーム102が患者、医師、麻酔科医、または任意の他の機器を邪魔しないように、ロボットアーム102を構成できる。処置の最中、ユーザは、コマンドコンソールなどの制御装置を使用してロボットアーム102を制御し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム102は、ロボットアーム102の位置を維持するために、ブレーキおよび釣り合い錘の組み合わせを使用するセットアップジョイントを含む。釣り合い錘は、ガススプリングまたはコイルバネを含み得る。ブレーキ、例えば、フェイルセーフブレーキは、機械部品および/または電気部品を含み得る。さらに、ロボットアーム102は、重力補助式受動的支持(gravity−assisted passive support)型のロボットアームとし得る。
【0020】
各ロボットアーム102は、機構チェンジャーインターフェース(MCI)116を使用して器械装置マニピュレータ(IDM)117に結合され得る。IDM117は取り外されて、異なるタイプのIDMと交換されることができ、例えば、第1のタイプのIDMは内視鏡を操作する一方で、第2のタイプのIDMは腹腔鏡を操作する。MCI116は、ロボットアーム102からIDM117へ空気圧、電気出力、電気信号、および光信号を伝達するためにコネクタを含む。MCI116は、止めネジまたはベースプレートコネクタとし得る。IDM117は、直接駆動、ハーモニックドライブ(登録商標)、歯車駆動、ベルト車、磁気駆動などを含む技術を使用して、内視鏡118などの手術用器械を操作する。MCI116は、IDM117のタイプに基づいて取り替え可能であり、およびある種の外科的処置向けにカスタマイズされ得る。ロボットアーム102は、KUKA AG(登録商標)LBR5ロボットアームなど、遠位端部に手首とジョイントレベルトルク感知部とを含み得る。
【0021】
内視鏡118は、患者の解剖学的構造に挿入されて解剖学的構造(例えば、体組織)の画像を撮る、チューブ状で可撓性の手術用器械である。特に、内視鏡118は、画像を撮る1つ以上の撮像装置(例えば、カメラまたはセンサー)を含む。撮像装置は、光ファイバー、ファイバーアレイ、またはレンズなどの1つ以上の光学部品を含み得る。光学部品は内視鏡118の先端と一緒に動いて、内視鏡118の先端の動きにより、撮像装置によって撮られる画像を変更するようにする。内視鏡は全体を通して主要な例として使用され
るが、手術用ロボットシステム100は、様々な手術用器械と一緒に使用され得ることが理解される。
【0022】
いくつかの実施形態では、手術用ロボットシステム100のロボットアーム102は、細長状の移動部材を使用して内視鏡118を操作する。細長状の移動部材は、プルまたはプッシュ・ワイヤとも呼ばれるプル・ワイヤ、ケーブル、ファイバー、または可撓性シャフトを含み得る。例えば、ロボットアーム102は、内視鏡118に結合された複数のプル・ワイヤを作動させ、内視鏡118の先端を撓ませる。プル・ワイヤは、金属材料および非金属材料の双方、例えばステンレス鋼、Kevlar、タングステン、カーボンファイバーなどを含み得る。内視鏡118は、細長状の移動部材によって加えられた力に応答して、非線形のふるまいを示し得る。非線形のふるまいは、内視鏡118の剛性および圧縮性、ならびに異なる細長状の移動部材間の弛みまたはスティフネスの変動性に基づき得る。
【0023】
手術用ロボットシステム100は、コントローラ120、例えば、コンピュータプロセッサを含む。コントローラ120は、較正モジュール125、画像登録モジュール130、および較正記憶装置135を含む。較正モジュール125は、勾配、ヒステリシス、およびデッドゾーンの値などのパラメータと併せて、区分的線形応答のモデルを使用して、非線形のふるまいを特徴付け得る。手術用ロボットシステム100は、パラメータの正確な値を決定することによって、内視鏡118をより正確に制御できる。いくつかの実施形態では、コントローラ120のある程度のまたは全ての機能性は、手術用ロボットシステム100の外部で、例えば、手術用ロボットシステム100に通信可能に結合された別のコンピュータシステムまたはサーバー上で行われる。
【0024】
II.コマンドコンソール
図2は、一実施形態による手術用ロボットシステム100用のコマンドコンソール200を示す。コマンドコンソール200は、コンソールベース201と、ディスプレイモジュール202、例えばモニタと、制御モジュール、例えばキーボード203およびジョイスティック204とを含む。いくつかの実施形態では、コマンドモジュール200の機能の1つ以上は、手術用ロボットシステム100のベース101、または手術用ロボットシステム100に通信可能に結合された別のシステムに組み込まれ得る。ユーザ205、例えば医師は、コマンドコンソール200を使用して人間工学的位置から手術用ロボットシステム100を遠隔制御する。
【0025】
コンソールベース201は、例えば図1に示す内視鏡118からのカメラ画像データおよび追跡センサーデータなどの信号を解読して処理することに関与する中央処理装置、メモリ装置、データバス、および関連のデータ通信ポートを含み得る。いくつかの実施形態では、コンソールベース201およびベース101の双方とも、不可分散のために信号処理を実行する。コンソールベース201はまた、制御モジュール203および204を通してユーザ205によって提供されたコマンドおよび命令を処理し得る。図2に示すキーボード203およびジョイスティック204に加えて、制御モジュールは、他の装置、例えば、コンピュータマウス、トラックパッド、トラックボール、制御パッド、テレビゲームコントローラ、および手を使ったジェスチャーおよび指を使ったジェスチャーを捉えるセンサー(例えば、モーションセンサーまたはカメラ)を含み得る。
【0026】
ユーザ205は、速度モードまたは位置制御モードでコマンドコンソール200を使用して、内視鏡118などの手術用器械を制御し得る。速度モードでは、ユーザ205は、制御モジュールを使用する直接的な手動制御に基づいて、内視鏡118の遠位端部のピッチおよびヨウ運動を直接的に制御する。例えば、ジョイスティック204の動きは、内視鏡118の遠位端部におけるヨウイングおよびピッチングの動きにマップされ得る。ジョ
イスティック204は、ユーザ205に触覚フィードバックを提供し得る。例えば、ジョイスティック204は振動して、内視鏡118がある方向にさらに平行移動したりまたは回転したりはできないことを示す。コマンドコンソール200はまた、視覚フィードバック(例えば、ポップアップメッセージ)および/または音声フィードバック(例えば、ビープ音)を提供して、内視鏡118が最大平行移動または回転に到達したことを示し得る。
【0027】
位置制御モードでは、コマンドコンソール200は、患者の三次元(3D)マップおよび患者の予め決められたコンピュータモデルを使用して、手術用器械、例えば、内視鏡118を制御する。コマンドコンソール200は、手術用ロボットシステム100のロボットアーム102に制御信号を提供して、内視鏡118を標的箇所まで操作する。3Dマップへの依存に起因して、位置制御モードは、患者の解剖学的構造の正確なマッピングを必要とする。
【0028】
いくつかの実施形態では、ユーザ205は、コマンドコンソール200を使用することなく、手術用ロボットシステム100のロボットアーム102を手動で操作し得る。手術室内で設定する際に、ユーザ205は、ロボットアーム102、内視鏡118、および他の手術用機器を動かして、患者にアクセスしてもよい。手術用ロボットシステム100は、ユーザ205からの力フィードバックおよび慣性制御に応じて、ロボットアーム102および機器の適切な構成を決定し得る。
【0029】
ディスプレイモジュール202は、電子モニタ、バーチャルリアリティー表示装置(virtual reality viewing device)、例えばゴーグルや眼鏡、および/または他の手段のディスプレイ装置を含み得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイモジュール202は、例えば、タッチスクリーンを備えるタブレット型デバイスとして、制御モジュールと一体化される。さらに、ユーザ205は、統合されたディスプレイモジュール202と制御モジュールを使用して、データの閲覧、および手術用ロボットシステム100へのコマンドの入力の双方を行い得る。
【0030】
ディスプレイモジュール202は、立体視装置、例えばバイザーやゴーグルを使用して、3D画像を表示し得る。3D画像は、「エンドビュー(endo view)」(すなわち、内視鏡映像(endoscopic view))を提供し、これは、患者の解剖学的構造を示すコンピュータの3Dモデルである。「エンドビュー」は、患者の体内の仮想環境、および患者の体内での内視鏡118の予測される位置を提供する。ユーザ205は、「エンドビュー」モデルを、カメラで撮った実際の画像と比較して、患者の体内で内視鏡118が正しい−または適度に正しい−位置にあるように心の中で向きを決め、かつそれを確認する助けにする。「エンドビュー」は、解剖学的構造、例えば、内視鏡118の遠位端部の周りにある患者の腸または結腸の形状に関する情報を提供する。ディスプレイモジュール202は、内視鏡118の遠位端部の周りの解剖学的構造の3Dモデルおよびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを同時に表示し得る。さらに、ディスプレイモジュール202は、内視鏡118の予め決められた最適なナビゲーションパスを3DモデルおよびCTスキャンに重ね合わせることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、内視鏡118のモデルは3Dモデルと一緒に表示されて、外科的処置のステータスを示すのを助ける。例えば、CTスキャンは、生検が必要かもしれない解剖学的構造内の病変を特定する。手術中、ディスプレイモジュール202は、内視鏡118の現在の箇所に対応する、内視鏡118が撮った参照画像を示し得る。ディスプレイモジュール202は、ユーザ設定および特定の外科的処置に依存して、内視鏡118のモデルの異なる映像を自動的に表示し得る。例えば、ディスプレイモジュール202は、内視鏡118が患者の手術領域に接近するときのナビゲーションステップの最中の内視
鏡118の透視オーバーヘッドビュー(overhead fluoroscopic view)を示す。
【0032】
III.器械装置マニピュレータ
一実施形態に従って、図3は、手術用ロボットシステム用の器械装置マニピュレータ(IDM)300の斜視図を示し、および図4は、IDM300の側面図を示す。IDM300は、手術用器具が手術用器具の軸の周りで連続的に回転または「ローリング」できるように、手術用器具を手術用ロボットアームに取り付けるように構成されている。IDM300は、ベース302および手術用器具ホルダーアセンブリ304を含む。手術用器具ホルダーアセンブリ304は、さらに、外側ハウジング306、手術用器具ホルダー308、取付インターフェース310、通路312、および複数のトルクカップラー314を含む。IDM300は、様々な手術用器具(図3には図示せず)と一緒に使用されてもよく、これら手術用器具は、ハウジングおよび細長状本体を含んでもよく、および腹腔鏡、内視鏡、または手術用器械の他のタイプのエンドエフェクタのためのものとし得る。
【0033】
ベース302は、IDM300を手術用ロボットシステムの手術用ロボットアームに取り外し可能にまたは固定して装着する。図3の実施形態では、ベース302は、手術用器具ホルダーアセンブリ304の外側ハウジング306に固定して取り付けられている。代替的な実施形態では、ベース302は、取付インターフェース310とは対向する面に手術用器具ホルダー308を回転式に受け入れるように適合されるプラットフォームを含むような構造にされ得る。プラットフォームは、手術用器具の細長状本体を受け入れるために、通路312と整列された通路、および、いくつかの実施形態では、第1の手術用器具と同軸上に装着される第2の手術用器具の追加的な細長状本体を含み得る。
【0034】
手術用器具ホルダーアセンブリ304は、手術用器具をIDM300に固定し、かつベース302に対して手術用器具を回転させるように構成される。機械的および電気的接続が、手術用アームからベース302まで、その後、手術用器具ホルダーアセンブリ304までもたらされ、外側ハウジング306に対して手術用器具ホルダー308を回転させ、かつ手術用アームから手術用器具ホルダー308まで、および最終的には手術用器具まで、電力および/または信号を操作および/または送達する。信号は、空気圧、電気出力、電気信号、および/または光信号に関する信号を含み得る。
【0035】
外側ハウジング306は、ベース302に対して手術用器具ホルダーアセンブリ304を支持する。外側ハウジング306は、ベース302に固定して取り付けられ、ベース302に対して静止したままであるようにする一方で、手術用器具ホルダー308は外側ハウジング306に対して自由に回転できるようにする。図3の実施形態では、外側ハウジング306は、シリンダー形状であり、かつ手術用器具ホルダー308を完全に囲む。外側ハウジング306は、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。代替的な実施形態では、ハウジングの形状は異なってもよい。
【0036】
手術用器具ホルダー308は、取付インターフェース310を介して手術用器具をIDM300に固定する。手術用器具ホルダー308は、外側ハウジング306とは無関係に回転することができる。手術用器具ホルダー308は、手術用器具の細長状本体と同軸上に整列する回転軸316の周りで回転し、手術用器具が手術用器具ホルダー308と一緒に回転するようにする。
【0037】
取付インターフェース310は、手術用器具ホルダー308の、手術用器具に取り付ける面である。取付インターフェース310は、取付機構の第1の部分を含み、第1の部分は、手術用器具上に配置された取付機構の第2の部分と相互に噛合し、これについて、図8Aおよび図8Bに関して詳細を説明する。取付インターフェース310は複数のトルク
カップラー314を含み、これらトルクカップラーは、取付インターフェース310から外向きに突出し、かつ手術用器具上のそれぞれの器械入力部と係合する。いくつかの実施形態では、IDM300と手術用器具との間に無菌境界を生じるために、滅菌アダプターに結合された手術用ドレープが使用され得る。これらの実施形態では、滅菌アダプターは、手術用器具がIDM300に固定されるときに、取付インターフェース310と手術用器具との間に位置決めされて、手術用ドレープが、手術用器具および患者をIDM300および手術支援ロボットシステムから分離するようにし得る。
【0038】
通路312は、手術用器具が取付インターフェース310に固定されるときに、手術用器具の細長状本体を受け入れるように構成される。図3の実施形態では、通路312は、手術用器具の細長状本体の縦軸および手術用器具ホルダー308の回転軸316と同軸上に位置合わせされる。通路312は、手術用器具の細長状本体が通路312内で自由に回転できるようにする。この構成は、最小限の制約で、または制約がない状態で、手術用器具が回転軸316の周りでいずれの方向にも連続的に回転またはローリングされるようにできる。
【0039】
複数のトルクカップラー314は、手術用器具が手術用器具ホルダー308に固定されているときに、手術用器具の構成要素に係合してそれらを駆動するように構成される。各トルクカップラー314は、手術用器具上にあるそれぞれの器械入力部に挿入される。複数のトルクカップラー314はまた、手術用器具と手術用器具ホルダー308との間の回転整列を維持する働きをし得る。図3に示すように、各トルクカップラー314は、取付インターフェース310から外向きに突出するシリンダー状突起の形状にされる。シリンダー状突起の外表面領域に沿ってノッチ318が配置され得る。いくつかの実施形態では、ノッチ318の配置構成によって、スプラインインターフェースを生じる。手術用器具上の器械入力部は、トルクカップラー314に対して相補的な幾何学的形状を有するように構成される。例えば、図3には示さないが、手術用器具の器械入力部は、シリンダー形状とし、および各トルクカップラー314上の複数のノッチ318と相互に噛合する複数のリッジを有し、そのようにして、それらのノッチ318にトルクを与えるようにしてもよい。代替的な実施形態では、シリンダー状突起の頂面は、それぞれの器械入力部内の複数のリッジと噛合するように構成された複数のノッチ318を含んでもよい。この構成では、各トルクカップラー314は、そのそれぞれの器械入力部と完全に係合する。
【0040】
さらに、各トルクカップラー314は、トルクカップラーを平行移動させることができるバネに結合され得る。図3の実施形態では、バネは、各トルクカップラー314を取付インターフェース310から離れるように外向きに跳ねるように付勢される。バネは、軸方向の平行移動を生じる、すなわち、取付インターフェース310から離れるように突き出し、かつ手術用器具ホルダー308の方へ引っ込むように構成される。いくつかの実施形態では、各トルクカップラー314は、手術用器具ホルダー308内へ部分的に引っ込むことができる。他の実施形態では、各トルクカップラー314は、各トルクカップラーの実効高さが、取付インターフェース310に対してゼロになるように、手術用器具ホルダー308内に完全に引っ込むことができる。図3の実施形態では、各トルクカップラー314の平行移動は作動機構によって作動され、これについて、図7〜8に関してさらに詳細に説明する。様々な実施形態では、各トルクカップラー314は、1つのバネ、複数のバネ、または各トルクカップラーのそれぞれのバネに結合され得る。
【0041】
さらに、各トルクカップラー314は、それぞれのアクチュエータによって駆動され、これにより、トルクカップラーのいずれかの方向への回転を生じる。それゆえ、ひとたび器械入力部と係合されたら、各トルクカップラー314は電力を伝送して、手術用器具内でプル・ワイヤを引っ張ったりまたは緩めたりでき、それにより、手術用器具のエンドエフェクタを操作する。図3の実施形態では、IDM300は5個のトルクカップラー31
4を含むが、他の実施形態では、個数は、手術用器具のエンドエフェクタに対する所望の数の自由度に応じて、変わってもよい。いくつかの実施形態では、滅菌アダプターに結合された手術用ドレープを使用して、IDM300と手術用器具との間に無菌境界を生じ得る。これらの実施形態では、滅菌アダプターは、手術用器具がIDM300に固定されているときには、取付インターフェース310と手術用器具との間に位置決めされ得、および滅菌アダプターは、各トルクカップラー314からそれぞれの器械入力部へ電力を伝送するように構成され得る。
【0042】
図3に示すIDM300の実施形態は、手術用ロボットシステムを備える様々な構成において使用され得る。所望の構成は、患者に対して行われる外科的処置のタイプ、または外科的処置の最中に使用される手術用器具のタイプに依存し得る。例えば、IDM300の所望の構成は、内視鏡的処置では、腹腔鏡的処置と異なってもよい。
【0043】
第1の構成では、IDM300は、手術用アームに取り外し可能にまたは固定して取り付けられて、外科的処置の最中に取付インターフェース310が患者の近位になるようにし得る。以下「前面装着構成」と称すこの構成では、手術用器具は、患者に対して近位の側でIDM300に固定される。前面装着構成で使用する手術用器具は、手術用器具の細長状本体が手術用器具の取付インターフェースに対向する側から延在するような構造にされる。手術用器具が前面装着構成のIDM300から取り外されるとき、手術用器具は、患者に対して近位方向に取り外される。
【0044】
第2の構成では、IDM300は、手術用アームに取り外し可能にまたは固定して取り付けられて、外科的処置の最中に取付インターフェース310が患者の遠位になるようにし得る。以下「背面装着構成」と称すこの構成では、手術用器具は、患者に対して遠位の側でIDM300に固定される。背面装着構成で使用する手術用器具は、手術用器具の細長状本体が手術用器具の取付インターフェースから延在するような構造にされる。この構成は、IDM300から器具を取り外す最中の患者の安全性を高める。手術用器具が背面装着構成のIDM300から取り外されるとき、手術用器具は患者から遠位方向に取り外される。
【0045】
手術用器具のいくつかの構成は、手術用器具が前面装着構成または背面装着構成のいずれかにあるIDMと一緒に使用され得るような構造にされ得る。これらの構成では、手術用器具は、手術用器具の両端部に取付インターフェースを含む。いくつかの外科的処置では、医師は、行っている外科的処置のタイプに応じてIDMの構成を決定し得る。例えば、背面装着構成は腹腔鏡的処置に有益とし得、腹腔鏡器具は、他の手術用器械と比べて特に長いとし得る。手術用アームは、医師が手術用器具の遠位端部を患者の遠い箇所(例えば、肺または血管)へと方向付けるときなどの外科的処置の最中に動くため、腹腔鏡器具の長さが長いことにより、手術用アームを、より大きな弧の周りで揺動させることとなる。背面装着構成は、通路312を通して細長状本体の一部分を受け入れ、それにより手術用器具を位置決めするために手術用アームによって必要とされる動きの弧を小さくすることによって、手術用器具の器具実効長を短くすることが、有益である。
【0046】
図5〜6は、一実施形態による、図3の器械装置マニピュレータ300に固定された例示的な手術用器具500の分解斜視図を示す。手術用器具500は、ハウジング502、細長状本体504、および複数の器械入力部600を含む。上述の通り、長尺状本体504は、腹腔鏡、内視鏡、またはエンドエフェクタを有する他の手術用器械とし得る。図示の通り、複数のトルクカップラー314は、取付インターフェース310から外向きに突出して、手術用器具の器械入力部600と係合する。器械入力部600の構造は図6に示し得るが、器械入力部600は、トルクカップラー314に対応する幾何学的形状を有して、手術用器具を確実にしっかりと係合する。
【0047】
外科的処置の最中、手術用ドレープは、IDM300と外部環境(すなわち、手術室)との間の無菌境界を維持するために使用され得る。図5〜6の実施形態では、手術用ドレープは、滅菌アダプター506、第1の突起508、および第2の突起510を含む。図5〜6には示さないが、滅菌シートが滅菌アダプター、および第2の突起に接続され、かつIDM300の周りをドレープで覆って無菌境界を生じる。
【0048】
滅菌アダプター506は、IDM300に固定されるときに、IDM300と手術用器具500との間に滅菌インターフェースを生じるように構成される。図5〜6の実施形態では、滅菌アダプター506は、IDM300の取付インターフェース310を被覆するディスク様の幾何学的形状を有する。滅菌アダプター506は、手術用器具500の細長状本体504を受け入れるように構成される中心穴508を含む。この構成では、滅菌アダプター506は、手術用器具500がIDM300に固定されるときに、取付インターフェース310と手術用器具500との間に位置決めされて、手術用器具500とIDM300との間に無菌境界を生じ、かつ細長状本体504が通路312を通過できるようにする。いくつかの実施形態では、滅菌アダプター506は、手術用器具ホルダー308と一緒に回転でき、複数のトルクカップラー314から手術用器具500へ回転トルクを伝達でき、IDM300と手術用器具500との間に電気信号を通すことができ、またはそれらのいくつかの組み合わせを行うことができるとし得る。
【0049】
図5〜6の実施形態では、滅菌アダプター506は、さらに、複数のカップラー512を含む。カップラー512の第1の側面は、それぞれのトルクカップラー314と係合するように構成される一方、カップラー512の第2の側面は、それぞれの器械入力部600と係合するように構成される。複数のトルクカップラー314の構造と同様に、各カップラー512は、複数のノッチを含むシリンダー状突起として構造される。カップラー512の各側面は、それぞれのトルクカップラー314およびそれぞれの器械入力部600と完全に係合するための相補的な幾何学的形状を有する。各カップラー512は、それぞれのトルクカップラー314と一緒に時計方向または反時計方向に回転するように構成される。この構成は、各カップラー512が、IDM300の複数のトルクカップラー314から手術用器具500の複数の器械入力部600へ回転トルクを伝達できるようにするため、手術用器具500のエンドエフェクタを制御する。
【0050】
第1の突起508および第2の突起510は、IDM300の通路312を通過しかつ通路312内で互いに噛合するように構成される。各突起508、510は、細長状本体504がそれら突起、それゆえ通路312を通過できるような構造にされる。第1の突起508と第2の突起510の接続によって、IDM300と外部環境(すなわち、手術室)との間に無菌境界を生じる。手術用ドレープについて、図13〜16に関してさらに詳細に説明する。
【0051】
IV.手術用器具の係合解除
図7は、一実施形態による、手術用ドレープの滅菌アダプター506に対して手術用器具500を係合および係合解除するための作動機構の拡大斜視図を示す。図3に関して説明するようなIDM300の構成に起因して、外科的処置の最中に患者へ挿入する手術用器具の軸は、手術用器具を取り外す軸と同じである。手術用器具の取り外す最中に患者の安全性を保証するために、手術用器具500は、手術用器具500を取り外す前に、滅菌アダプター506およびIDM300から関節接合を解除され得る。図7の実施形態では、複数のカップラー512は、軸方向に平行移動する、すなわち、滅菌アダプター506から離れるように突き出し、および滅菌アダプターの方へ引っ込むように構成される。複数のカップラー512の平行移動は、それぞれの器械入力部600からの複数のカップラー512の係合解除によって手術用器具500の関節接合を確実に解除される作動機構に
よって作動される。作動機構は、ウェッジ702およびプッシャプレート704を含む。
【0052】
ウェッジ702は、手術用器具の係合解除のプロセスの最中にプッシャプレート704を起動させる構造部品である。図7の実施形態では、ウェッジ702は、ハウジング502の外周に沿って手術用器具500のハウジング502内に配置される。図示の通り、ウェッジ702は、手術用器具500のハウジング502が滅菌アダプター506に対して時計回りに回転される場合に、プッシャプレート704との接触によって、プッシャプレート704を滅菌アダプター506内へ押し下げるような向きにされる。代替的な実施形態では、ウェッジ702は、手術用器具500のハウジング502が時計回りではなく反時計回りに回転されるように、構成され得る。構造が回転時にプッシャプレートを押し下げることができることを考えると、アーチ型斜面などの、ウェッジ以外の幾何学的形状を用いてもよい。
【0053】
プッシャプレート704は、手術用器具500から複数のカップラー512を係合解除するアクチュエータである。複数のトルクカップラー314と同様に、カップラー512のそれぞれは、各カップラー512を滅菌アダプター506から離れて外向きに跳ねるように偏倚させる1つ以上のバネに結合され得る。複数のカップラー512は、さらに、軸方向に平行移動する、すなわち、滅菌アダプター506から離れて突き出し、かつ滅菌アダプターの方へ引っ込むように、構成される。プッシャプレート704は、カップラー512の平行移動運動を作動させる。プッシャプレート704がウェッジ702によって押し下げられると、プッシャプレート704は、各カップラー512に結合されたバネまたは複数のバネを圧縮させ、カップラー512を滅菌アダプター506内へと引っ込ませる。図7の実施形態では、プッシャプレート704は、複数のカップラー512を同時に引っ込ませるように構成される。代替的な実施形態は、カップラー512を特定の順序でまたは順不同に引っ込ませ得る。図7の実施形態では、プッシャプレート704は、複数のカップラー512を滅菌アダプター506内に部分的に引っ込ませる。この構成は、手術用器具500が取り外される前に、手術用器具500が滅菌アダプター506から関節接合を解除されることができるようにする。この構成はまた、手術用器具500を取り外さずに、ユーザが、望むときはいつでも滅菌アダプター506から手術用器具500の関節接合を解除することができるようにする。代替的な実施形態は、複数のカップラー512を滅菌アダプター506内へ完全に引っ込ませて、測定された各カップラー512の実効高をゼロにすることである。いくつかの実施形態では、プッシャプレート704は、複数のトルクカップラー314を複数のそれぞれのカップラー512と同期して引っ込ませ得る。
【0054】
図8Aおよび図8Bは、一実施形態による、滅菌アダプターからの手術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。図8Aは、固定位置にある滅菌アダプター506および手術用器具500を示し、2つの構成要素は一緒に固定されており、および複数のカップラー512は、手術用器具500のそれぞれの器械入力部600と完全に係合している。図8Aに示すような固定位置を達成するために、手術用器具500の細長状本体504(図示せず)は、手術用器具500および滅菌アダプター506の嵌合面が接触するまで、滅菌アダプター506の中心穴508(図示せず)を通過させられ、および手術用器具500および滅菌アダプター506は、ラッチング機構によって互いに固定される。図8Aおよび図8Bの実施形態では、ラッチング機構は、棚状部802およびラッチ804を含む。
【0055】
棚状部802は、ラッチ804を固定位置に固定する構造部品である。図8Aの実施形態では、棚状部802は、ハウジング502の外周に沿って、手術用器具500のハウジング502内に配置される。図8Aに示すように、棚状部802は、ラッチ804上にある突起の下側に載置されて、図7に関して説明したような複数のカップラー512の跳ね
上がる(sprung−up)性質に起因して、ラッチ804、およびそれにより滅菌アダプター506が手術用器具500から引き離されるのを防止するような向きにされる。
【0056】
ラッチ804は、固定位置にある棚状部802と噛合する構造部品である。図8Aの実施形態では、ラッチ804は、滅菌アダプター506の嵌合面から突出する。ラッチ804は、手術用器具500が滅菌アダプター506に固定されるときに、棚状部802に対して載置されるように構成された突起を含む。図8Aの実施形態では、手術用器具500のハウジング502は、手術用器具500の残りの部分とは無関係に、回転できる。この構成は、ハウジング502が滅菌アダプター506に対して回転できるようにして、棚状部802がラッチ804に固定されるようにし、それにより、手術用器具500を滅菌アダプター502に固定する。図8Aの実施形態では、ハウジング502は、反時計回りに回転されて固定位置を達成するが、他の実施形態は、時計回りに回転するように構成され得る。代替的な実施形態では、棚状部802およびラッチ804は、滅菌アダプター506および手術用器具500を固定位置にロックする様々な幾何学的形状を有し得る。
【0057】
図8Bは、非固定位置にある滅菌アダプター506および手術用器具500を示し、ここでは、手術用器具500は滅菌アダプター506から取り外すことができる。上述の通り、手術用器具500のハウジング502は、手術用器具500の残りの部分とは無関係に、回転できる。この構成は、複数のカップラー512が手術用器具500の器械入力部600と係合されている間でも、ハウジング502が回転できるようにする。固定位置から非固定位置へ移行させるために、ユーザは、手術用器具500のハウジング502を滅菌アダプター506に対して時計回りに回転させる。この回転の最中、ウェッジ702は、プッシャプレート704に接触し、かつプッシャプレートがウェッジ702の角度の付いた平面を摺動するときにプッシャプレート704を徐々に押し下げ、それにより、複数のカップラー512を滅菌アダプター506内へと引っ込ませて、複数の器械入力部600から係合解除させる。さらなる回転によって、ラッチ804を、ウェッジ702と同様の構造にされた軸方向のカム806と接触させる。ラッチ804が回転の最中に軸方向のカム806と接触するため、軸方向のカム806は、ラッチ804を手術用器具500から離れるように外向きに撓ませて、ラッチ804が棚状部802から変位されるようにする。この非固定位置では、複数のカップラー512は引っ込まされ、および手術用器具500は、図8Bの実施形態では、滅菌アダプター506から取り外され得る。他の実施形態では、軸方向のカム806は、回転によってラッチ804を外向きに撓ませる様々な幾何学的形状を有し得る。
【0058】
代替的な実施形態では、手術用器具500のハウジング502の回転の方向を反時計回りの回転として、棚状部802からラッチ804を非固定状態にするように構成し得る。さらに、代替的な実施形態は同様の構成要素を含み得るが、構成要素の箇所は、滅菌アダプター506と手術用器具500との間で切り替えられ得る。例えば、棚状部802は、滅菌アダプター506上に配置され得る一方、ラッチ804は手術用器具500上に配置され得る。他の実施形態では、滅菌アダプター506の外側部分は、手術用器具500のハウジング502ではなく複数のカップラー512に対して回転可能である。代替的な実施形態はまた、ハウジング502が器械入力部600に対して完全に回転されるときに、手術用器具502のハウジング502の回転をロックするための特徴を含み得る。この構成は、器械入力部600がカップラー512から関節接合を解除された場合に、手術用器具の回転を防止する。いくつかの実施形態では、カップラー512の引っ込みおよび突き出しは、トルクカップラー314のそれぞれの引っ込みおよび突き出しと結合されて、トルクカップラー314と係合されたカップラー512が一緒に平行移動するようにし得る。
【0059】
図9Aおよび図9Bは、別の実施形態による、滅菌アダプターに対する手術用器具の手
術用器具の係合および係合解除のプロセスを示す。図9Aおよび図9Bの実施形態では、滅菌アダプター900は、手術用器具904を滅菌アダプター900に固定する外側バンド902を含み得る。図9Aおよび図9Bに示すように、手術用器具904は、ハウジング908の外表面に斜面906を含む。斜面906は、滅菌アダプター900の外側バンド902の内表面に位置決めされる円形突起912を受け入れるように構成されるノッチ910を含む。外側バンド902は、滅菌アダプター900および手術用器具904と無関係におよびそれらに対して回転できる。外側バンド902が第1の方向に回転するとき、円形突起912は、円形突起912がノッチ910内に入れ子にされるまで、斜面906の表面を上方に滑らかに動き、それにより、滅菌アダプター900および手術用器具904を一緒に固定する。外側バンド902の第2の方向の回転によって、滅菌アダプター900および手術用器具904を互いから非固定状態にする。いくつかの実施形態では、この機構は、図7〜8に関して説明されるような滅菌アダプター900上の複数のカップラー914の関節接合の解除と結び付けられ得る。
【0060】
手術用器具の係合解除の代替的な実施形態は、インピーダンスモードなどの追加的な特徴を含み得る。インピーダンスモードでは、手術支援ロボットシステムは、手術用器具がユーザによって滅菌アダプターから取り外せるかどうかを制御し得る。ユーザは、手術用器具の外側ハウジングを回転させかつ滅菌アダプターに対し手術用器具を非固定状態にすることによって、係合解除機構を始動し得るが、手術支援ロボットシステムは、器械入力部からカップラーを解放しなくてもよい。ひとたび手術支援ロボットシステムがインピーダンスモードに移行されたら、カップラーは解放され、およびユーザは、手術用器具を取り外すことができる。手術用器具を係合した状態に保つ利点は、手術支援ロボットシステムが手術用器具のエンドエフェクタを制御し、かつそれらを、手術用器具が取り外される前に、器具の取り外しのために位置決めして、手術用器具への損傷を最小限にすることができることである。インピーダンスモードを起動するために、プッシャプレート704はハードストップを有してもよく、プッシャプレートがある距離まで押し下げられ得るようにする。いくつかの実施形態では、プッシャプレートのハードストップは、ハードストップが手術用器具のハウジングの最大量の回転と一致するように、調整可能とし得る。それゆえ、ひとたび十分な回転が達成されると、ハードストップはまた、プッシャプレートによって接触され得る。複数のセンサーがこれらの事象を検出して、インピーダンスモードをトリガし得る。
【0061】
いくつかの状況では、インピーダンスモードが望ましくないかもしれない外科的処置の最中に緊急の器具の取り外しを必要とし得る。いくつかの実施形態では、プッシャプレートのハードストップは、ハードストップは緊急事態において生じ得るというコンプライアンスを有し得る。プッシャプレートのハードストップはバネに結合されてもよく、追加的な力に応答してハードストップが生じるようにする。他の実施形態では、プッシャプレートのハードストップは、手術用器具を滅菌アダプターに固定するラッチを取り外すことによって、緊急の器具の取り外しが発生するように、硬質とし得る。
【0062】
V.ローリング機構
図10Aは、一実施形態による、器械装置マニピュレータ300内で手術用器具ホルダー308をローリングするための機構の斜視図を示す。図10Aに示すように、取付インターフェース310は取り外されて、ローリング機構を露出させている。この機構は、手術用器具ホルダー308を回転軸316の周りでいずれの方向にも連続的に回転すなわち「ローリング」させ得る。ローリング機構は、ステータギヤ1002およびロータギヤ1004を含む。
【0063】
ステータギヤ1002は、ロータギヤ1004と噛合するように構成された固定ギヤである。図10Aの実施形態では、ステータギヤ1002はリング状ギヤであり、リングの
内周に沿ってギヤの歯を含む。ステータギヤ1002は、取付インターフェース310の後ろ側で外側ハウジング306に固定して取り付けられる。ステータギヤ1002は、ロータギヤ1004と同じピッチを有して、ステータギヤ1002のギヤの歯が、ロータギヤ1004のギヤの歯と噛合するように構成される。ステータギヤ1002は、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。
【0064】
ロータギヤ1004は、手術用器具ホルダー308の回転を誘発するように構成された回転ギヤである。図10Aに示すように、ロータギヤ1004は円形ギヤであり、その外周に沿ってギヤの歯を含む。ロータギヤ1004は、取付インターフェース310の後ろ側に、およびステータギヤ1002の内周に位置決めされて、ロータギヤ1004のギヤの歯が、ステータギヤのギヤの歯と噛合するようにする。上述の通り、ロータギヤ1004とステータギヤ1002とは、同じピッチを有する。図10Aの実施形態では、ロータギヤ1004は、ロータギヤ1004を時計方向または反時計方向に回転させる駆動機構(例えば、モータ)に結合される。駆動機構は、手術用器具ホルダーアセンブリ304内の統合コントローラから信号を受信し得る。駆動機構がロータギヤ1004の回転を引き起こすため、ロータギヤ1004は、ステータギヤ1002のギヤの歯に沿って移動し、それにより、手術用器具ホルダー308の回転を引き起こす。この構成では、ロータギヤ1004はいずれの方向にも連続的に回転できるため、手術用器具ホルダー308は、回転軸316の周りでの無限のローリングを達成する。代替的な実施形態は、無限のローリングを可能にするために、リングギヤおよびピニオンギヤの構成などの同様の機構を使用し得る。
【0065】
図10Bは、一実施形態による、器械装置マニピュレータ300の断面図を示す。図10Bに示すように、ローリング機構は、複数の軸受1006に結合される。軸受は、可動部間の摩擦を低減させる機械部品であり、および固定された軸の周りでの回転を促進させる。1つの軸受だけで、手術用器具ホルダー308が外側ハウジング306内で回転するときのラジアル荷重またはねじり荷重を支持できる。図10Bの実施形態では、IDM300は、手術用器具ホルダー308に固定して取り付けられた2つの軸受1006a、1006bを含んで、軸受1006内の複数の構成要素(ボールまたはシリンダーなど)が外側ハウジング306に接触するようにする。第1の軸受1006aは、取付インターフェース310の後ろ側にある第1の端部に固定され、および第2の軸受1006bは第2の端部に固定される。この構成は、手術用器具ホルダー308が外側ハウジング306内で回転するときの手術用器具ホルダー308の第1の端部と第2の端部との間の剛性、および支持を高める。代替的な実施形態は、手術用器具ホルダーの長さ部分に沿って提供する追加的な支持をもたらす追加的な軸受を含み得る。
【0066】
図10Bはまた、一実施形態による、IDM300内のシーリング部品を示す。IDM300は、複数のOリング1008および複数のガスケット1010を含み、これらは、2つの面の接合部をシールして、接合部に流体が入るのを防止するように構成される。図10Bの実施形態では、IDMは、外側ハウジングの接合部間にOリング1008a、1008b、1008c、1008d、1008e、および手術用器具ホルダー308の接合部間にガスケット1010a、1010bを含む。この構成は、外科的処置の最中に、IDM300内の構成要素の無菌性を維持するのを助ける。ガスケットおよびOリングは、一般に、強いエラストマー材料(例えば、ゴム)で構成される。
【0067】
VI.電気部品
図11Aは、一実施形態による、器械装置マニピュレータの内部構成要素およびそのいくつかの電気部品の部分的な分解斜視図を示す。手術用器具ホルダー308の内部構成要素は、複数のアクチュエータ1102、モータ、ギヤヘッド(図示せず)、トルクセンサー(図示せず)、トルクセンサー増幅器1110、スリップリング1112、複数のエン
コーダボード1114、複数のモータパワーボード1116、および統合コントローラ1118を含む。
【0068】
複数のアクチュエータ1102は、複数のトルクカップラー314のそれぞれの回転を駆動する。図11Aの実施形態では、1102aまたは1102bなどのアクチュエータが、モータシャフトを介してトルクカップラー314に結合される。モータシャフトは、モータシャフトがトルクカップラー314としっかりと嵌合できるように複数の溝を含むようなキー状シャフトとし得る。アクチュエータ1102は、モータシャフトを時計方向または反時計方向に回転させ、それにより、それぞれのトルクカップラー314をその方向に回転させる。いくつかの実施形態では、モータシャフトは、捻り剛性を有してもよいが、バネ従順性(spring compliant)を有してもよく、モータシャフトおよびそれゆえトルクカップラー314が軸方向に回転および平行移動できるようにする。この構成は、複数のトルクカップラー314が手術用器具ホルダー308内で引っ込んだり突き出したりすることができるようにする。各アクチュエータ1102は、モータのシャフトを回転させる方向および量を示す統合コントローラ1118から電気信号を受信し得る。図11Aの実施形態では、手術用器具ホルダー308は、5個のトルクカップラー314、およびそれゆえ5個のアクチュエータ1102を含む。
【0069】
モータは、外側ハウジング306の手術用器具ホルダー308の回転を駆動する。モータは、外側ハウジング306に対して手術用器具ホルダー308を回転させるためにロータギヤ1004およびステータギヤ1002に結合されている(図10A参照)ことを除いて、アクチュエータのものと構造的に同等とし得る。モータは、ロータギヤ1004を時計方向または反時計方向に回転させ、それにより、ロータギヤ1004を、ステータギヤ1002のギヤの歯の周りで移動させる。この構成は、ケーブルまたはプル・ワイヤの潜在的な巻上げによって妨げられることなく、手術用器具ホルダー308を連続的にローリングまたは回転させる。モータは、統合コントローラ1118から、モータシャフトを回転させる方向および量を示す電気信号を受信し得る。
【0070】
ギヤヘッドは、手術用器具500に送達されるトルクの量を制御する。例えば、ギヤヘッドは、手術用器具500の器械入力部600に送達されるトルクの量を増大させ得る。代替的な実施形態は、器械入力部600に送達されるトルクの量をギヤヘッドが減少させるように、構成され得る。
【0071】
トルクセンサーは、回転している手術用器具ホルダー308上で生じたトルク量を測定する。図11Aに示す実施形態では、トルクセンサーは、時計方向および反時計方向のトルクを測定できる。トルクの測定値を使用して、手術用器具の複数のプル・ワイヤにおける特定量の張力を維持し得る。例えば、手術支援ロボットシステムのいくつかの実施形態は、自動張力装置を有してもよく、手術支援ロボットシステムに給電すると、または手術用器具をIDMと係合すると、手術用器具のプル・ワイヤの張力が予荷重される。各プル・ワイヤの張力の量は、プル・ワイヤがぴんと張るのにちょうど十分な張力になるような閾値量に達し得る。トルクセンサー増幅器1110は、回転している手術用器具ホルダー308で生じたトルクの量を測定する信号を増幅するための回路を含む。いくつかの実施形態では、トルクセンサーはモータに装着される。
【0072】
スリップリング1112は、静止構造から回転している構造へ電気出力および信号を伝達できる。図11Aの実施形態では、スリップリング1112は、図11Bのスリップリング1112の追加的な斜視図にも示すように、手術用器具ホルダー308の通路312と位置合わせするように構成される中心穴を含むリングとして構造される。スリップリング1112の第1の側面は、複数の同心状の溝1120を含む一方、スリップリング1112の第2の側面は、図3に関して説明したような、手術用アームおよびベース302か
らもたらされた電気的接続のための複数の電気部品を含む。スリップリング1112は、外側ハウジング306から特定の距離で、手術用器具ホルダー308の外側ハウジング306に固定され、これらの電気的接続のための空間を割り当てる。複数の同心状の溝1120は、統合コントローラに取り付けられた複数のブラシ1122と噛合するように構成される。溝1120とブラシ1122との接触によって、手術用アームおよびベースから手術用器具ホルダーへ電気出力および信号を伝達できる。
【0073】
複数のエンコーダボード1114は、手術用ロボットシステムからスリップリングを通して受信した信号を読み取って処理する。手術用ロボットシステムから受信した信号は、手術用器具の回転の量および方向を示す信号、手術用器具のエンドエフェクタおよび/または手首の回転の量および方向を示す信号、手術用器具上の光源を動作させる信号、手術用器具上のビデオまたは撮像装置を動作させる信号、および手術用器具の様々な機能を動作させる他の信号を含み得る。エンコーダボード1114の構成は、信号全体の処理を手術用器具ホルダー308内で完全に実行できるようにする。複数のモータパワーボード1116はそれぞれ、モータに電力をもたらす回路を含む。
【0074】
統合コントローラ1118は、手術用器具ホルダー308内の計算装置である。図11Aの実施形態では、統合コントローラ1118は、手術用器具ホルダー308の通路312と位置合わせするように構成される中心穴を含むリングとして構造される。統合コントローラ1118は、統合コントローラ1118の第1の側面上に複数のブラシ1122を含む。ブラシ1122は、スリップリング1112と接触し、かつ手術支援ロボットシステムから手術用アーム、ベース302、最終的にはスリップリング1112を通って統合コントローラ1118へと送達される信号を受信する。信号を受信した結果、統合コントローラ1118は、手術用器具ホルダー308内のそれぞれの構成要素へ様々な信号を送信するように構成される。いくつかの実施形態では、エンコーダボード1114および統合コントローラ1118の機能は、ここで説明しているものとは異なる方法で分配されて、エンコーダボード1114および統合コントローラ1118が同じ機能またはそれらのいくつかの組み合わせを実行するようにし得る。
【0075】
図11Bは、一実施形態による、器械装置マニピュレータおよびそのいくつかの電気部品の内部構成要素の部分的な分解斜視図を示す。図11Bの実施形態は、2つのエンコーダボード1114aおよび1114b、トルクセンサー増幅器1110、および3つのモータパワーボード1116a、1116b、および1116cを含む。これらの構成要素は、統合コントローラ1118に固定され、かつ外向きに突出して、統合コントローラ1118から垂直に延在する。この構成は、複数のアクチュエータ1102およびモータを電気ボード内に配置するための空間を提供する。
【0076】
図11Aに関して説明したように、スリップリング1112は、外側ハウジング306から特定の距離で固定される。手術用アームおよびベース302からスリップリング1112への電気的接続のために、スリップリング1112と外側ハウジング306との間で確実に正しく空間を割り当てるために、図11Bの実施形態では、スリップリング1112は、複数の位置合わせピン、複数のコイルバネ、およびシムによって支持される。スリップリング1112は、スリップリング1112の中心穴の各側に、位置合わせピンの第1の側面を受け入れるように構成された穴1124を含む一方、位置合わせピンの第2の側面は、外側ハウジング306にあるそれぞれの穴に挿入される。位置合わせピンは、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。複数のコイルバネは、スリップリング1112の中心の周りに固定され、かつ空間を橋絡するように構成され、およびスリップリング1112と外側ハウジング306との接触を維持する。コイルバネは、IDM300に対するいずれの衝撃も吸収することが有益であるとし得る。シムは、スリップリング1112の中心穴の周りに位置決めされるリング状のスペーサであり、ス
リップリング1112と外側ハウジング306との間にさらなる支持を加える。さらに、これらの構成要素は、統合コントローラ1118上の複数のブラシ1122が複数の同心状の溝1120に接触してそれに対して回転するため、スリップリング1112に安定性をもたらす。代替的な実施形態では、位置合わせピン、コイルバネ、およびシムの数は、スリップリング1112と外側ハウジング306との間に所望の支持が達成されるまで、変わってもよい。
【0077】
図12は、一実施形態による、手術用器具ホルダー308を回転割り出しする(roll indexing)ための器械装置マニピュレータ300の電気部品の拡大斜視図を示す。回転割り出しは、外側ハウジング306に対して手術用器具ホルダー308の位置を監視して、手術用器具500の位置および向きが手術支援ロボットシステムによって連続的に分かるようにしている。図12の実施形態は、マイクロスイッチ1202および隆起1204を含む。マイクロスイッチ1202および隆起1204は、手術用器具ホルダー308内に固定される。隆起1204は、外側ハウジング306上の構造であり、手術用器具ホルダー308が回転するときにマイクロスイッチ1202に接触するため、隆起1204と接触する度にマイクロスイッチを起動するように構成される。図12の実施形態では、マイクロスイッチ1202のための単一の基準点としての機能を果たす1つの隆起1204がある。
【0078】
VII.手術用ドレープ
図13は、一実施形態による、手術支援ロボットシステムのための器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの断面図を示す。手術用ドレープ1300は、外科的処置の最中、IDM、手術用アーム、および手術支援ロボットシステムの他の部分のための無菌境界を提供する。図13の実施形態では、手術用ドレープ1300は、手術用器具がIDM、例えばIDM300に取り付けられると、手術用器具の細長状本体を受け入れるように構成された通路を含むIDMと一緒に使用するように構成される。手術用ドレープ1300は、滅菌シート1302、第1の突起1304、および第2の突起1306を含む。
【0079】
滅菌シート1302は、外科的処置の最中、手術支援ロボットシステムの複数の部分のために無菌環境を生じて維持する。図13の実施形態では、滅菌シート1302は、IDM300、手術用アーム、および手術支援ロボットシステムの複数の部分を被覆するように構成される。滅菌シート1302は、様々な材料、例えばプラスチック(例えば、ポリプロピレン)、紙、および流体に耐性があり得る他の材料で構成され得る。
【0080】
第1の突起1304は、手術用器具の細長状本体、例えば手術用器具500の細長状本体504を受け入れるように構成されたシリンダー状チューブである。図13の実施形態では、第1の突起1304は、滅菌シート1302の第1の部分に接続され、および第1の突起1304の第1の端部は、通路312の第1の端部に挿入されるように構成される。第1の突起1304の第1の端部は、第2の突起1306上の相互(reciprocal)嵌合インターフェース1310と噛合するように構成される嵌合インターフェース1308を含む。第1の突起1304は、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。
【0081】
第2の突起1306は、手術用器具の細長状本体、例えば手術用器具500の細長状本体504を受け入れるように構成されたシリンダー状チューブである。図13の実施形態では、第2の突起1306は、滅菌シート1302の第2の部分に接続され、および第2の突起1306の第1の端部は、通路312の第2の端部に挿入されるように構成されて、第1の突起1304および第2の突起1306が通路312の対向端部に挿入されるようにする。第2の突起1306の第1の端部は、通路312内の第1の突起1304上の嵌合インターフェース1308と取り外し可能に結合されるように構成される相互嵌合イ
ンターフェース1310を含む。互いに結合されると、嵌合インターフェース1308および相互嵌合インターフェース1310は、無菌接合部を生じる。第2の突起1306は、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。代替的な実施形態では、結合機構は、面ファスナー、摩擦嵌合チューブ、ネジ付きチューブ、および他の好適な結合機構を含み得る。
【0082】
図14は、一実施形態による、手術用器具ホルダー用の手術用ドレープの相互嵌合インターフェースの断面図を示す。図13に関して説明したように、第1の突起1304の第1の端部は嵌合インターフェース1308を含む。嵌合インターフェース1308は、2つの同心状チューブとして構造され、図14の横断面によって示すように、それらの同心状チューブ間には隙間があり、この隙間は、別のチューブの端部を受け入れるように構成されたリングである。図14の実施形態では、第2の突起1306の第1の端部にある相互嵌合インターフェース1310は、チューブの第1の端部における直径がチューブの残りの部分と比較して小さくなるように、テーパが付けられたチューブとして構造される。テーパ状端部は、嵌合インターフェース1308内に相互嵌合インターフェース1310を簡単に挿入するように促す。さらに、第1の突起1304および第2の突起1306の内表面は、非滅菌(unsterile)面と接触することが可能である一方、それらの外表面は無菌のままにできる。嵌合インターフェース1308と相互嵌合インターフェース1310との間の接合部は、互いに固定されるとき、第2の突起1306の第1の端部を隙間に入れることによって、回旋状の経路を生じる。この構成は、非滅菌面と接触した第1の突起1304または第2の突起1306のいずれかの面が接合部内に確実に覆い隠されるようにする。この構成は、さらに、いずれの流体も、内表面と外表面との間の接合部を横切って移動することができないように、および無菌環境がIDMおよび手術支援ロボットシステムの他の部分に維持されるようにすることを保証する。いくつかの実施形態では、嵌合インターフェース1308と相互嵌合インターフェース1310との間の接合部は、さらに、流体が接合部に侵入するのを防止するガスケットを含み得る。
【0083】
手術用ドレープのいくつかの実施形態では、手術用ドレープ1300は、さらに、IDMと外部環境または手術用器具との間に無菌境界を提供する複数の滅菌アダプター1400を含み得る。いくつかの実施形態では、滅菌アダプター1400は、IDM、例えばIDM300の回転中のインターフェースに適合するように構成される。図14の実施形態では、滅菌アダプター1400は、外側リング1402および内側ディスク1404を含む。図14に示すように、外側リング1402は滅菌シート1302に接続され、および内側ディスク1404は第1の突起1304に接続される。内側ディスク1404は、外側リング1402内に回転可能に固定される。図14の実施形態では、滅菌アダプター1400は、IDM300の取付インターフェース310を被覆して、手術用器具500がIDM300に固定されるときに、滅菌アダプター1400が取付インターフェース310と手術用器具500との間に位置決めされるようにする。滅菌アダプター1400のこの構成は、IDM300および手術用器具500の回転と一緒に内側ディスク1404または外側リング1402が自由に回転できるようにする。外側リング1402および内側ディスク1404は、硬質材料(例えば、金属または硬質プラスチック)で構成され得る。代替的な実施形態では、内側ディスクの複数の部分は、IDMの複数のトルクカップラーを被覆する膜とし得る。
【0084】
図15は、一実施形態による、器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの滅菌アダプターの断面図を示す。図14に関して説明したように、手術用ドレープ1300は、IDM300の回転中のインターフェースに適合するように構成される複数の滅菌アダプター、例えば1400および1406を含み得る。図15の実施形態では、滅菌アダプター1400、1406は、IDM300の各端部に位置決めされる。取付インターフェース310のないIDM300の端部を被覆するように構成される滅菌アダプター1406は
、取付インターフェース310を被覆するように構成される滅菌アダプター1400とは構造が変わってもよい、すなわち、この滅菌アダプターは、複数のトルクカップラー314に適合する構造を必要としなくてもよい。代替的な実施形態では、第1の突起1304または第2の突起1306の複数の部分は、回転可能な構成要素、例えばころ軸受または上述のような同様の内側ディスクおよび外側リング機構などを含んで、回転が、滅菌アダプターにおいてではなく、通路312内で起こるようにし得る。この構成は、内側ディスク1404の直径と比べて突起の直径が小さいことに起因して、手術用器具ホルダー308が回転している最中の安定性を改善し得る。この構成はまた、取付インターフェース310のないIDM300の端部の追加的な滅菌アダプター1406の必要性を排除し得る。
【0085】
図16は、追加的な実施形態による、器械装置マニピュレータ用の手術用ドレープの断面図を示す。図16に示すように、手術用ドレープ1300は、IDMおよび手術用アーム用の無菌境界を提供する。図16の実施形態は、それぞれのトルクカップラー314が突出し得る内側ディスク1404を示す。
【0086】
VIII.電力およびデータ伝送
図17は、一実施形態による、手術用器具と器械装置マニピュレータとの間の電力およびデータ伝送用の光インターフェースを示す。いくつかの実施形態では、手術用器具は、手術用器具の細長状本体の近位端部で動作するカメラまたは光源などの、電力および/またはデータ伝送を必要とする能力を有し得る。他の特徴は、追跡センサーまたは張力センサーを含み得る。そのような特徴を備える手術用器具は、電力および/またはデータ伝送のためのプラットフォームの残りの部分へのケーブル接続を使用し得るため、手術用器具のローリングの能力を妨げる。これらの手術用器具のための無限回転を達成するために、電力および/またはデータ伝送は、電磁誘導電力および光インターフェースを通して発生し得る。
【0087】
図17の実施形態では、IDM1700は電力送信器を含み、および手術用器具は電力受信器を含む。電力送信器は、直接接続する必要なく、電力を電力受信器へ、取付インターフェース310を横切って、電磁誘導的に伝送する。図17の実施形態では、複数のコイルが、取付インターフェース310に対して垂直なIDM1700内に、かつIDM1700の回転軸に沿って中心となるように、固定される。コイルは、統合コントローラに結合され、かつ電力を伝送するために信号を受信するように構成される。コイルは、IDM1700の通路312の周りに中心のある、様々な直径のものとし得る。より大きな直径は、電力伝送能力を改善し得る。手術用器具1704は、無線電力伝送が中断される場合に器械の動作を支持するために、バッテリーを含み得る。いくつかの実施形態では、電力送信器は、近くにある金属製構成要素への熱の伝達およびIDM1700内のモータの干渉を防止するための遮蔽を有し得る。考えられる遮蔽材料は、ミューメタルである。
【0088】
図17の実施形態では、光インターフェースは、IDM1700の嵌合面と手術用器具1704との間にある。IDM1700および手術用器具1704は、それぞれ、複数の光送信器、例えば1706a、1706b、および複数の光受信器、例えば1708a、1708bを含む。図17の実施形態では、画像データなどのデータを伝達するための、手術用器具1704とIDM1700との間の接続のために少なくとも1つの対、およびIDM1700と手術用器具1704との間の接続のために少なくとも1つの対がある。さらに、無線式二地点間データ接続は、IDM1700から手術用ロボットシステムへの高帯域通信に使用され得る。いくつかの実施形態では、電力送信器はLEDとしてもよく、これは、LED光を透過させる材料で構成された取付インターフェースを横切る滅菌シートを必要とする。代替的な実施形態は、データ伝送のために、IDM1700と手術用器具1704との間にRFID技術または物理的接続を使用し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、光送信器1706および光受信器1708は、複数の器械入力部1710および複数のトルクカップラー1712のそれぞれに対して対称的な向きにされて、手術用器具1704が、いずれの向きでも手術用器具ホルダー1702に取り付けられ得るようにする。ひとたび手術用器具1704が手術用器具ホルダー1702に取り付けられたら、手術用器具1704の光送信器1706は、信号を光受信器1708に伝送するように構成され得る。信号を使用して、手術用器具ホルダー1702に対する手術用器具1704の回転向きを決定できる。ひとたび手術用器具1704の回転向きが決定されたら、光学データフローが十分に確立され、およびトルクカップラー1712用のアクチュエータが正確に制御され得る。
【0090】
IX.別の検討事項
本開示を読むと、当業者は、本明細書の開示の原理による、さらに追加的な代替的な構造的および機能的設計を認識する。それゆえ、特定の実施形態および適用例を示しかつ説明したが、開示の実施形態は、本明細書に開示される正確な構成および構成要素に限定されるものではないことを理解されるべきである。添付の特許請求の範囲に定義される趣旨および範囲から逸脱せずに、本明細書に開示される方法および装置の配置構成、動作および詳細において、当業者には明白な様々な修正、変更および変形がなされ得る。
【0091】
本明細書では、「一実施形態」または「実施形態」のいずれの言及も、実施形態に関連して説明された特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所での語句「一実施形態では」の出現は、必ずしも、全てが同じ実施形態を指すものではない。
【0092】
いくつかの実施形態は、表現「結合された」および「接続された」がそれらの派生語と共に使用されて、説明され得る。例えば、いくつかの実施形態は、2つ以上の要素が直接物理的にまたは電気的に接触していることを示すために、用語「結合された」を使用して説明され得る。しかしながら、用語「結合された」はまた、2つ以上の要素が互いに直接接触はしていないが、それでも、互いに協働するかまたは相互作用することを意味し得る。実施形態は、特にはっきりと明記しない限り、この文脈に限定されない。
【0093】
本明細書では、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形例は、非排他的な包含を網羅するものである。例えば、あるリストの要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしも、それらの要素のみに限定されるものではなく、明白にリストされない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有ではない、他の要素を含んでもよい。さらに、それとは反対であると明示的に示した場合を除き、「または」は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を指す。例えば、条件AまたはBは、以下のうちのいずれか1つを満たす。すなわち、Aが真であり(または存在する)Bが偽である(または存在しない)こと、Aが偽であり(または存在しない)Bが真である(または存在する)こと、AおよびBの双方とも真である(または存在する)ことのいずれかを満たす。
【0094】
さらに、「a」または「an」の使用は、本明細書の実施形態の複数の要素および複数の構成要素を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、および本発明の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、および単数形は、そうではないことを意味することが明白でない限り、複数も含む。
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図8A
図8B
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図9B
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図10B
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図11B
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