【文献】
Pentacoordinate hydridosilicates: synthesis and some aspects of their reactivity,Organometallics,1991年 月 日,Vol. 10, No. 7,pp. 2297-2303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。発明の内容を説明する目的のために、発明の内容の例示的な実施形態を図面に示すが、本明細書に開示された発明は、開示された特定の実施形態、装置、及びシステムに限定されない。
【0025】
本発明は、安定なシリル化組成物及びそれを使用する方法に関する。この組成物は、遷移金属触媒の存在を必要とせず、ヘテロアリール及びその他の不飽和基質をシリル化するその能力は、それらの存在又はUV照射又は電気(プラズマを含む)放電を必要としない。
【0026】
ヘテロアリールC−H結合、アセチレンC−H結合及び末端オレフィンC−H結合の直接脱水素C−Hシリル化の方法論は従来から報告されているが、これらの従来の方法は、各成分を同時に又はほぼ同時に混合してからそれらを反応条件に付すという点についてのみ記載されている。例えば、2013年10月2日に出願された米国特許出願第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族化合物)、現在は米国特許第9,000,167号(特許文献1);2015年8月5日に出願された米国特許出願第14/818,417号明細書(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献2);2015年9月1日に出願された米国特許出願第14/841,964号明細書(アルキン)、現在は米国特許第9,556,206号(特許文献3);2015年12月17日に出願された米国特許出願第14/972,653号明細書(ジシラン)、現在は米国特許第9,556,08号(特許文献4)、2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,405号明細書(末端オレフィン)(特許文献5)を参照のこと。各文献は、その各々は、あらゆる目的のために、特に、その使用の方法、基質の範囲、及び実験条件について、全体を参照により本明細書に援用する。
【0027】
これらのシステム及び方法は、ヒドロシラン又はオルガノジシラン、及び水酸化物、アルコキシド、及びアニオン性アミド等の塩基の使用について記載されているが、それらの根底にあるメカニズムは未定義であった。これらの反応の機構的基盤を同定することを目的とする研究において、本発明者らは、従来報告されたものと同じ基質をシリル化することができる一連の溶液安定性組成物を同定した。これらの溶液安定性組成物により、シリル化剤の大量調製及び貯蔵が可能となり、少量の反応性ヒドロシランを個々のバッチベースで処理する必要がなくなることにより、それらの使用を簡便なものとすることができる。また、これらの組成物は、高揮発性の液体、また、さらにはガス状ヒドロシラン又はオルガノジシランを、低揮発性の溶媒に組み込んでもよく、これらシラン試薬の取り扱いを簡易にすることもできる。第三に、これら前調整済み溶液を使用することにより、シリル化反応に関連して従来存在した誘導期間を回避する反応性が得られる。
【0028】
本発明は、添付の図面及び実施例に関連して以下の説明を参照することにより、より容易に理解することができ、各図面及び実施例は全て本開示の一部を構成する。本発明は、本明細書に記載又は示される特定の製品、方法、条件又はパラメータに限定されず、本明細書において使用する用語は、特定の実施形態を例示のために記載する目的のものであり、特許請求の範囲に記載の発明を限定することを意図したものではないことを理解されたい。同様に、特に断りのない限り、可能なメカニズム又は動作態様(mode)又は改善の理由についての説明は例示的なものに過ぎず、本発明は、そのような示唆されたメカニズム、態様の正確性又は不正確さ、又は改善のための行動又は理由等によって制約されるものではない。本明細書の全体を通して、この記載は、組成物及び当該組成物を製造及び使用する方法の両方を指すことを認識されたい。すなわち、本開示が、組成物又は組成物を製造又は使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載又は請求する場合、そのような説明又は特許請求の範囲は、これらの特徴又は実施形態を、各文脈(すなわち、組成物、作成方法、及び使用方法)における各実施形態に拡張することを意図したものであることを理解されたい。
【0030】
本発明の特定の実施形態は、(a)前駆体としてのヒドロシラン又はオルガノジシランと、(b)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート(例えば,カリウムトリメチルシラノレート、KOTMS)、水酸化ルビジウム、ルビジウムアルコキシド、ルビジウムシラノレート、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、カリウムアミド(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、カリウムグラファイト(例えば、KC
8)、又はそれらの組み合わせを含むか又は本質的にそれらからなる塩基との混合物を前調整することにより調製した組成物を含み、前調整することは、ヒドロシランと塩基との混合物を、混合物と基質を接触させることにより、混合物を前調整してから少なくとも30分後に適切な基質の測定可能なシリル化を開始可能な組成物を生成するのに十分な条件下に保持することを含む。前調整することは、また、合成ヒドロシラン(combined hydrosilane)と塩基との混合物を、45℃(又は未満)の温度で、30分、25分、20分、15分、10分、5分又はそれ未満の誘導時間で、1−メチルインドールをシリル化するのに十分な条件下で、保持することを含む。誘導期間の有無は、本明細書に記載の任意の方法であって本目的のための方法、例えば、時間依存ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて判断すればよい。上記組成物を生成する温度範囲の一例としては、例えば、約25℃〜約125℃を含む。上記組成物を生成する時間範囲の例としては、例えば、約30分〜約24時間を含む。例示的な範囲について、これらの例示的範囲外の時間及び温度でもの時間及び温度でもこれらの組成物を生成することができる場合があることを理解されたい。
【0031】
これらの用途におけるグラファイトカリウム(例えば、KC
8)の有効性を考慮すると、他の表面上に堆積したカリウム(例えば、グラフェン、グラフェン酸化物、木炭、活性炭、アルミナ等の炭素の同素体)も有効(operable)であり、本開示の範囲内であると予想するのが合理的である。
【0032】
この場合も、各組成物は、1−メチルインドール(N−メチルインドール)に対する反応性に関して記載しているが、各組成物は、他の様々なC−H結合又は−OH結合のシリル化に有用である。1−メチルインドール(N−メチルインドール)の使用は、活性を測定するための一標準ゲージとしてのみ用いるものであり、組成物の用途をこの基質に限定するものと解釈すべきことを意図したものではない。
【0033】
他の実施形態は、これらの前調整済み組成物を水酸化ケイ素に着目して記載するが、本明細書の他の箇所に記載するように、この前調整反応は、Si−H系種の観察可能な存在を生じても生じなくてもよい。むしろ、持続的で安定なシリル化反応の存在の別の尺度は、1時間、6時間、12時間、24時間、1週間、2週間、1ヶ月、6ヶ月、1年を超える期間にわたり、溶液中のSi−H系種を冷蔵保存した後であっても、好適な基質(すなわち、例えば、従来報告され、本明細書の他の箇所で記載されているもの等のように、ヒドロシラン/塩基の組み合わせと同時に混合した場合にシリル化を受けやすいことが予めわかっているもの)をシリル化する物質の能力である。
図1及び
図2を参照されたい。少なくともこの点に関しては、「安定」という用語は、「保存可能」も意味し得る。さらに興味深いことに、これらの前調整済み組成物は、ヘテロ芳香族基質を含む好適な有機基質を、これらの基質と接触したら直ちに又は実質的に直ちに、又はその後まもなく、シリル化することができる。
【0034】
従来は報告されていないが、本実施例に記載されるように、ヒドロシラン及び成分を同時に又は略同時に混合した塩基触媒を用いたヘテロ芳香族基質のシリル化は、測定可能な誘導期間を有するシリル化反応を受けることが、例えば、2013年10月2日に出願された米国特許第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族化合物)、現在は米国特許第9,000,167号(特許文献7);2015年8月5日に出願された米国特許出願第14/818,417号(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献1);2015年9月1日に出願された米国特許出願第14/841,964号明細書(アルキン)、現在は米国特許第9,556,206号(特許文献3);及び2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,405号明細書(末端オレフィン)(特許文献5)に記載されており、各文献は参照により本明細書に援用される。この特徴点は従来報告されていなかった。しかしながら、ヒドロシラン及び塩基を本明細書に記載したように前調整済み」の場合には、前調整済み混合物は安定であり、誘導期間なしで反応が進行する。
【0035】
他の実施形態において、前調整済み組成物は、本明細書に記載したように、Si−H系種に関して特徴づけ又は記載することができる。すなわち、本発明の特定の他の実施形態は、(a)前駆体としてのヒドロシランと、(b)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート(例えばKOTMS)、水酸化ルビジウム、ルビジウムアルコキシド、ルビジウムシラノレート、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、カリウムアミド(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、又はそれらの組み合わせとの間の前調整反応から派生するSi−H系種を含む組成物を含む。これらの実施形態のいくつかの態様において、前調整反応から派生した又は派生し得るSi−H系種は、その赤外Si−H伸縮振動の特徴的なシフトにより識別することができる。すなわち、比較可能な条件下で評価した場合に、前駆体としてのヒドロシランは、当該前駆体としてのヒドロシランの吸収ピークよりも低エネルギー(低波数)である赤外スペクトルのSi−H伸縮領域において吸収ピークを呈する。そのようなSi−H系種は、溶液中に存在し検出することができ、又は固体組成物として存在し検出することができる(各実施例を参照のこと)。
【0036】
溶液において、生成物/中間体Si−H系種の存在は、その場(in situ)でのフーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いて、溶液中で、観測することができ、また観測されてきた。例えば、メトラー・トレド社はこのような分析のためだけにReactIR装置を製作している。ReactIRは広範囲の化学反応に適しており、重要な反応種のリアルタイムモニタリングを行い、反応の過程でこれらの種がどのように変化するかを提供する。ReactIR全反射測定法(Attenuated Total Reflection(ATR))は、反応の進行に追従するように設計されており、反応開始、変換、中間体及び終点に関する特定の情報を提供する。各実施例に示すように、例示的なシランEt
3SiHの反応は、本明細書に記載のアルコキシド及び水酸化物と反応して、超配位の水素化ケイ素と一致する分光構造を提供することが示されている。
【0037】
前調整から生じるこれらのSi−H系種は、これらのヒドロシラン/塩基対と有機基質との相対的反応性と一致して、ヒドロシラン及び特にアルコキシド又はヒドロキシド塩基の性質の両方に応じたIR吸収シフトを示す。
【0038】
このような構造及びそのような赤外線吸収の観察と一致してシリル化反応性と相関するが、各請求項はそのような解釈の正確さ又は不正確さに必ずしも結びつくものではないことを留意されたい。言い換えると、これらの前調整済み組成物は、Si−H伸縮振動数に一致するが必ずしもSi−H伸縮振動数に起因するものではない範囲、例えば、2000〜2100cm
−1の範囲において赤外線吸収ピークを呈するものとして記載又は特徴づけることができる。この場合も、これらの吸光度は、前駆体としてのシランよりも低エネルギー(より低波数)である。いくつかの実施形態において、吸収ピークは、10〜100cm
−1の範囲のより低波数に、又は
図7の(A)に示されるように、シフトしてもよい。重水素化シランで前調整済みの組成物は、この範囲の吸光度を示さないが、上記の反応性を示すことは、当業者には明らかであるはずである。
【0039】
種々の実施形態において、Si−H系種は、前調整済みの組成物において、赤外スペクトルのSi−H伸縮領域に起因するこの吸収ピークを検出するのに十分な量で存在する。
【0040】
いくつかの実施形態において、これらの前調整済み組成物は溶液として存在する。他の実施形態においては、無溶媒で、又は単離された固体又は半固体として存在する。そして、無溶媒で存在する場合、これらの前調整済み組成物は、溶媒、一般には有機溶媒、好ましくは無水溶媒を含むものとして記載することができる。好ましくは、このような組成物は、空気、酸素、又は遷移金属化合物又は種等の他の酸化種を実質的に含まない。また、溶媒は、Si−H系種を含む前調整済み組成物又はシリル化反応に対して測定可能な反応性を有しないことが好ましい。好適な溶媒としては、炭化水素、例えば芳香族炭化水素、例えばベンゼン又はトルエンが挙げられる。他の好適で好ましい溶媒としては、いわゆる酸素供与体溶媒、好ましくはエーテル型溶媒を含むものが挙げられる。テトラヒドロフラン(2−メチルテトラヒドロフランを含む)、ジエチル及びジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、及び1,2−ジメトキシエタンのようなアルキル末端グリコールは良好に作用することがわかっている。ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)等の他の極性非プロトン性溶媒も許容されると考えられている。テトラヒドロフラン(2−メチル−テトラヒドロフランを含む)が好ましい。
【0041】
上記のように、いくつかの実施形態において、前調整反応において用いた塩基は、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、カリウムアルコキシド、ルビジウムアルコキシド、又はセシウムアルコキシド、又はそれらの組み合わせである。本明細書の他の箇所に記載されているようなその他の塩基も用いることができる。好適なアルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、n−ブトキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシド、n−ペントキシド、2−ペントキシド、3−ペントキシド、又はイソ−ペントキシド等のC
1−6アルコキシドが挙げられ、好ましくは、tert−ブチルブトキシドである。これまでに試験した塩基の中で、カリウムアルコキシド、特にカリウムtert−ブトキシドが好ましい。
【0042】
好適なシラノレートには、式(C
1−6アルキル)
3Si−O−の構造が含まれ、(式中、C
1−6アルキルは独立して配置される。KOTMS、すなわちカリウムトリメチルシラノレートは、この用途において魅力的なシラノレートである。
【0043】
いくつかの実施形態において、前調整済み組成物に用いられる前駆体としてのヒドロシランは、以下の式(I)又は式(II)で表され:
(R)
3−mSi(H)
m+1 (I)
(R)
3−m(H)
mSi−Si(R)
2−m(H)
m+1 (II)
式中、mは独立して0、1、又は2であり;Rはそれぞれ独立して、任意に置換されたC
1−24アルキル又はヘテロアルキル、任意に置換されたC
2−24アルケニル、任意に置換されたC
2−24アルキニル、任意に置換されたC
6−12アリール、C
3−12ヘテロアリール、任意に置換されたC
7−13アルカリール、任意に置換されたC
4−12ヘテロアルカリール、任意に置換されたC
7−13アラルキル、又は任意に置換されたC
4−12ヘテロアラルキルであり、置換されている場合、各置換基は、ホスホナート、ホスホリル、ホスホニル、ホスフィノ、スルホナート、C
1−C
20アルキルスルファニル、C
5−C
20アリールスルファニル、C
1−C
20アルキルスルホニル、C
5−C
20アリールスルホニル、C
1−C
20アルキルスルフィニル、5〜12環員のアリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C
1−C
20アルコキシ、C
5−C
20アリールオキシ、C
2−C
20アルコキシカルボニル、C
5−C
20アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシラト、メルカプト、ホルミル、C
1−C
20チオエステル、シアノ、シアナート、チオシアナート、イソシアネート、チオイソシアネート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロナート、ボリル、又はハロゲン、又は、金属含有基又はメタロイド含有基であり、メタロイドはSn又はGeであり、各置換基は、アルミナ、シリカ、又は炭素を含む不溶性又は難溶性の支持媒体に、任意選択でテザー(tether)を提供してもよい。
【0044】
特定の好ましい実施形態において、前調整済み組成物において用いる前駆体としてのヒドロシランは、式(R)
3SiH又は(R)
2SiH
2で表される化合物であるか、又はそれを含み、式中、Rは、それぞれ独立して、C
1−6アルキル、フェニル、トリル、又はピリジニルである。例示的な前駆体としてのヒドロシランは、Rがそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、フェニル、ビフェニル、ベンジル、又はピリジニル、又はそれらの置換誘導体であるものを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前調整済み組成物に用いる前駆体としてのオルガノジシランは、式(III)で表され:
(R’)
3Si−Si(R’)
3 (III),
式中、R’は上記したものである。R’は、さらに、独立して、任意に置換されたC
1−24アルコキシ、任意に置換されたC
6−12アリールオキシ、任意に置換されたC
3−12ヘテロアリールオキシ、任意に置換されたC
7−13アルカリールオキシ、任意に置換されたC
4−12ヘテロアルカリールオキシ、任意に置換されたC
6−12アラルコキシ、C
4−12ヘテロアラルコキシ、又はトリメチルシロキシ部分を含む。好ましい実施形態において、R’は独立してC
1−3アルキル又はアリールであり;他の好ましい態様において、オルガノジシランは、ヘキサメチルジシラン、テトラメチルジフェニルジシラン、ヘキサエトキシジシラン、又はヘキサメトキシジシランである。
【0046】
したがって、本発明の特定の実施形態は、任意選択で溶媒和された、式(IV)の水素化ケイ素構造を有する化合物を含み:
【化2】
式中、
M
+は、カリウム、ルビジウム、セシウム、又はそれらの組み合わせを含むカチオンであるか、又はそれを含み;
−OR
Bは、水酸化物、アルコキシド、アルキルシラノレート、又はそれらの組み合わせであるか、又はそれらを含み;
−R
Sは、H、−R、又は−Si(R)
3−
mH
m、又はそれらの組み合わせであるか、又はそれを含み、
式中、m及びRは、本明細書の他の箇所に記載されているとおりであるか、又はその異性体である。
【0047】
あるいは、この化合物は、(a)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート、水酸化ルビジウム、ルビジウムアルコキシド、ルビジウムシラノレート、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、又はそれらの組み合わせと、(b)式(I)又は式(II)の前駆体としてのヒドロシラン、又は本明細書の他の箇所に記載されるような個々の前駆体としてのヒドロシランのいずれかとの付加生成物として記載又は特徴づけてもよい。
【0048】
式(IV)の構造は、他のシステムで従来観察された構造に類似しているが、本構造は劇的に異なりかつ予期しない活性を示す。例えば、強いケイ素親水性ルイス塩基(例えば、フッ化物、アルコキシド)の添加は、C=O結合のヒドロシリル化におけるヒドロシランの反応性を高めることができることが知られている。強配位のケイ酸塩錯体は、そのようなプロセス中の求核性アニオンの配位によって形成されると推測されており、それは一般にSi−H結合を弱化させ、この結合の水素化特性を増加させる。Corriuらによる研究によれば、(RO)
3SiHを、THF中の対応するKOR(R=アルキル又はアリール)と、室温で、直接反応させることにより、アニオン性で5配位の水酸化ケイ酸塩[HSi(OR)
4]Kが良好に得られることが明らかになった。例えば、Becker,B.ら、J.Organometallic Chem.,359(2)、1989年1月、pp.C33−C35;Corriu,R.ら、J.C.Chem.Rev.,1993年、93、1371−1448;Corriu,R.J.ら、Tetrahedron,1983年、39、999〜1009;Boyer,J.ら、Tetrahedron,1981年、37、2165〜2171;Corriu,R.ら、Organometallics,2002年、10、2297〜2303;及びCorriu,R.ら、Wang,Q.J.Organomet.Chem.,1989年、365、C7〜C10を参照。
【0049】
本明細書の他の箇所に記載したように、式(IV)の任意溶媒和構造を有する化合物は、分光学的に、及びその反応性(基質及び位置選択性に関して)により、及び動態プロファイルによって特徴付けられている。式(IV)の任意溶媒和構造を有する化合物のSi−H結合は、ブレンステッド・ローリーの塩基性を示す。シリコンは水素よりも電気陰性度が低く、式(IV)中のSi−H結合は水素化物特性を有する。求核性(tBuO−)攻撃の際に、超配位ケイ素中間体(IV)中のSi−H結合は、場合によっては、水素化物供与体として機能することができる。確かに、強求核剤によりヒドロシラン中のSi−H結合を開裂して水素化物の損失を伴うアルキル化又はアリール化シランを形成することは、先行技術文献において開示されている。したがって、(IV)中のシラン水素は、ヘテロ芳香族基質からプロトンを引き抜き、H
2の生成をもたらすのに十分に塩基性であると予想される。当該説は、同位体標識実験によってさらに立証されている:C2−重水素化1−メチルインドール基質を基質として使用した場合、HDガスの発生が観察された。
【0050】
同様に、異なるアルコキシド塩基を化学量論的反応における触媒として使用した場合、反応効率は塩基性に概ね追従した(すなわち、KOtBu>KOEt>KOMe)(アルコキシド適用)。この挙動は、反応性の超配位シリコン中間体を形成するのにアルコキシドアニオンをシラン前駆体シランに添加することが提案されていることと一致する。
【0051】
カチオンの性質は既に説明している−すなわち、少なくともヘテロアレーンのシリル化は、ナトリウム又はリチウムカチオンそれ自体では、又は添加したカリウムイオンが(例えば、クラウンエーテルによって)封鎖(sequestered)された場合には、作用(operate)しないが、カリウム、ルビジウム、又はセシウムを用いた場合には容易に作用する。興味深いことに、アルキン又はアルコールのシリル化は、塩基がナトリウムカチオンを含む場合に作用し、また、これらのカチオンを含む水素化物は観察されてこなかったが、安定した前調整済み混合物は、そのような塩基から派生し得る。カチオンがこれらの試薬の活性において有害な役割を果たすことは明らかである。特定の理論の正確さに拘束されることは意図しないが、おそらくこの役割は、触媒中間体の(不)安定化又は基質の活性化のいずれかを含む。そのようであるから、各塩基が本明細書においてカリウム、ルビジウム、又はセシウムを含むものとして特徴付けられる場合には、クラウンエーテル又は他のカチオン封鎖剤(sequesting agent)の不存在下で、水酸化物、アルコキシド、又はシラノレートを使用すべきである。さらに、これらの塩基は、作動可能な水酸化物、アルコキシド又はシラノラートアニオン源とともに、これらの封鎖されていないカチオン(K
+、Cs
+、Rb
+)の供給源をも含むものとして説明することもできる。例えば、添加したカリウム塩、例えば塩化カリウム、硝酸塩、硫酸塩、又は別の類似の非反応性アニオンを含むカリウム塩の存在下でLiOH、NaOH又はアルカリ土類金属水酸化物を使用することは、KOH自体と機能的に同等であると考えることができる。
【0052】
特定の条件下では、前調整済み組成物は、Si−H結合の均質な切断と一致する性質を示し、また、対応するラジカル種を形成する。このことは、例えば、鉄又はコバルトを含むもの等の遷移金属錯体の1電子還元剤としてのこれらの化合物又は組成物の潜在的有用性を示唆し得る。
【0054】
以上、本発明を組成物に関して説明してきたが、当該組成物はシリル化方法においても有用であり、特定の実施形態は、この機能におけるそれらの使用に関することを理解されたい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態は、前調整済み組成物、及び/又は式(IV)で表される組成物を、適切なC−H結合又はO−H結合を有する有機基質と接触させてその炭素又は酸素をシリル化する方法を含む。例えば、いくつかの実施形態は、有機基質を、本明細書に記載の任意の前調整済み混合物に接触させる方法であって、当該接触させることにより、それまでC−H結合により占有されていた位置にC−Si結合が形成され、又は、それまでO−H結合により占有されていた位置にO−Si結合が形成される。
ここで、不飽和基質のC−H結合は、
(a)ヘテロ芳香族部分上に配置され;
(b)ヘテロアリール部分に対してアルファに位置するアルキル、アルコキシ、又はアルキレン部分上に配置され;
(c)アルキニルC−H結合であるか;又は
(d)末端オレフィンC−H結合である。
前調整条件、塩基、ヒドロシラン、及び基質の順列は、それぞれ、あたかも個々に引用されたかのように、本開示の独立した実施形態とみなす。特定の独立した実施形態では、前調整された混合物及び有機基質の接触は、前調整反応が完了した後、少なくとも30分、1時間、4時間、8時間、12時間、24時間、2日、4日、7日、又は28日後に行われる。一般には、特に長期間にわたり、前調整済み混合物を冷凍してその安定性を図る(favor the stablity)。前調整条件、塩基、ヒドロシラン、及び基質への接触は、通常、結果として生じる混合物を約25℃〜約75℃の範囲内の1つ以上の温度で、約1時間〜約48時間の範囲の時間保持することを含み、又は、特定の有機基質に関して本明細書に引用する種々の出願に記載されている通りである。
【0056】
さらに、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、又はKC
8の使用は、ヒドロシラン及び少なくともヘテロ芳香族基質と組み合わせたシリル化反応のための有力な塩基として、従来認識又は開示されていないことがわかる。そうであるから、この能力におけるそれらの使用を説明する方法は、本開示の独立した実施形態と考えられる。そして、特定の実施形態は、C−H結合又は−OH結合を含有する少なくとも1つの有機基質をシリル化する方法を含み、この方法は、有機基質を、
(a)前駆体としてのヒドロシラン;及び
(b)水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、KC
8、又はそれらの組み合わせを含むか又は本質的にそれらからなる塩基と接触させることを含み、
不飽和基質のC−H結合は、
(a)ヘテロ芳香族部分上に配置され;
(b)ヘテロアリール部分に対してアルファに位置するアルキル、アルコキシ、又はアルキレン部分上に配置され;
(c)アルキニルC−H結合であるか;又は
(d)末端オレフィンC−H結合であり、
上記のように接触させることにより、それまでC−H結合により占有されていた位置にC−Si結合が形成される。
【0057】
さらに別の実施形態は、前駆体としてのヒドロシラン及び塩基を有機基質と接触させる前に前調整する方法を含み、当該前調整は、混合物と基質との接触に際して、組成物の前調整から少なくとも30分間後に適切な基質の測定可能なシリル化を開始可能な組成物を生成するのに十分な条件下に前駆体としてのヒドロシラン及び塩基を含む混合物を保持することを含む。前調整は、また、45℃(又は未満)の温度で、30分未満、25分未満、20分未満、15分未満、10分未満、5分未満、又は1分未満の誘導期間で、1−メチルインドールの測定可能なシリル化を開始するのに十分な条件下で、合成ヒドロシランと塩基の混合物を保持することも含む。
【0059】
同一出願人の一部による先の出願において、塩基及びヒドロシランを用いて、C−H結合又は−OH結合を有する有機基質をシリル化することが記載されており、シリル化は、C−H結合をC−Si結合で置換するものとして、又はO−H結合をO−Si結合と置換するものとして規定されている。例えば、2013年10月2日に出願された米国特許出願第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族化合物)、現在は米国特許第9,000,167号(特許文献1)、又は2015年8月5日に出願された米国特許出願第14/818,417号明細書(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献2);2015年9月1日に出願された米国特許出願第14/841,964号明細書(アルキン)、現在は米国特許第9,556,206号(特許文献3);2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,405号明細書(末端オレフィン)(特許文献5);及び2016年7月26日に出願された米国特許出願第15/219,710号明細書(水酸化物を有するアルコール)(特許文献6)を参照されたい。それぞれ、それらのそれぞれの基質をシリル化することに関連する基質及び反応物を含む方法及び反応条件の教示内容を、参照により本明細書に援用する。
【0060】
本明細書に記載の方法は、これらの特許出願に記載の基質のいずれにも適切に適用される。例えば、有機基質は以下の物を含むか又は以下の物からなる:
(1)例えば、任意に置換されたフラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾフラン、イソベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、アザインドール、ベンジイソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾピロール、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、キサンテン、ジベンゾピロール、又はジベンゾチオフェン部分を含むヘテロ芳香族部分。これらの基質のより具体的な例は、2013年10月2日に出願された米国特許出願第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族)、現在は米国特許第9,000,167号(特許文献1)、又は2015年8月5日に出願された又は米国特許出願第14/818,417号明細書(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献2)に記載されており、少なくともそれらの教示内容を、それぞれ参照により本明細書に援用する。
(2)アリール又はヘテロアリール部分に対してアルファに位置する、アルキル、アルコキシ、又はアルキレン部分を含む基質であって、例えば、ベンジル型C−H結合、又は、1、2−ジメチルインドール又は2,5−ジメチルチオフェン、又はエキソサイクリックメトキシ基等の、ヘテロアリール部分に対してアルファに位置するC−H結合を含む基質。これらの基質のより具体的な例は、2013年10月2日に出願された米国特許出願第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族)、現在は米国特許第9,000,167号(特許文献1)、又は2015年8月5日に出願された米国特許出願第14/818,417号明細書(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献2)に記載されている。
(3)次式を有するアルキニルC−H結合:
R
3−C≡C−H、
式中、R
3は任意に置換されたC
1−18アルキル、任意に置換されたC
2−18アルケニル、任意に置換されたC
2−18アルキニル、任意に置換されたC
6−18アリール、任意に置換されたC
6−18アリールオキシ、任意に置換されたC
7−18アラルキル、任意に置換されたC
7−18アラルキルオキシ、任意に置換されたC
3−18ヘテロアリール、任意に置換されたC
3−18ヘテロアリールオキシ、任意に置換されたC
4−18ヘテロアリールアルキル、任意に置換されたC
4−18ヘテロアラルキルオキシ、又は任意に置換されたメタロセンである。これらの基質のより具体的な例は、2015年9月1日に出願された米国特許出願第14/841,964号明細書(アルキン類)、現在は米国特許第9,556,206号に記載されており(特許文献3)、少なくともその教示内容を、参照により本明細書に援用する。
(4)式(V)を有する末端オレフィンであって:
【化3】
式中、pは0又は1であり;R
1及びR
2は、それぞれ、H、任意に置換されたC
1−18アルキル、C
2−18アルケニル、任意に置換されたC
2−18アルキニル、任意に置換されたC
6−18アリール、任意に置換されたC
1−18ヘテロアルキル、任意に置換された5〜6環員のヘテロアリール、任意に置換された5〜6環員のアラルキル、任意に置換された5〜6環員のヘテロアラルキル、又は任意に置換されたメタロセンを含み、ただし、R
1及びR
2の両方ともHでないことを条件とする。これらの基質のより具体的な実施例は、2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,405号明細書(末端オレフィン)(特許文献5)に記載されており、少なくともその教示内容を参照により本明細書に援用する。
(5)式(VIA)又は(VIB)の構造を有する有機アルコールであって、
R
4−OH (VIA) HO−R
5−OH (VIB)、
式中、R
4は、任意に置換されたC
1−24アルキル、任意に置換されたC
2−24アルケニル、任意に置換されたC
2−24アルキニル、任意に置換されたC
6−24アリール
、任意に置換されたC
1−24ヘテロアルキル
、任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリール、任意に置換されたC
7−24アラルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、又は任意に置換されたメタロセンを含み、及び式中、R
5は、任意に置換されたC
2−12アルキレン、任意に置換されたC
2−12アルケニレン、任意に置換されたC
6−24アリレン、任意に置換されたC
1−12ヘテロアルキレン、又は任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリレンを含む。本実施形態のいくつかの態様において、少なくとも1つの有機アルコール部分を有する有機基質は、任意に置換されたカテコール部分であるか又は当該部分を含み、又は式(IV)を有し:
【化4】
式中、nは0〜6であり、好ましくは0又は1であり;
R
M及びR
Nは、独立してH又はメチルであり
R
D、R
E、R
F、及びR
Gは、独立して、H、C
1−6アルキル、C
1−6アルケニル、任意に置換されたフェニル、任意に置換されたベンジル、又は任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリールであり、任意に置換された基は、C
1−3アルキル、C
1−3アルコキシ、又はハロである。この属の中で(within this genus)、有機基質は、置換1,2−ジオール、1,3−ジオール、1,4−ジオールを含み、これらは、1つ以上のアルキル及び/又は任意に置換されたアリール又はヘテロアリール置換基で置換されている。有機基質は、少なくともその教示内容について参照により本明細書に援用される2016年7月26日に出願された米国特許出願第15/219,710号明細書(アルコール)(特許文献6)に記載されるような末端オレフィンを有する任意のものである。
【0061】
各実施例に示すように、本発明の組成物/化合物は、また、アミド基又は他のアシル保護官能基(例えば、エステル)の脱保護/切断のための適切な試薬であると思われる。実施例2.7はN−ベンゾイルインドールの例示的脱保護を示すが、例えばアセチル(Ac)ならびにベンゾイル(Bz)官能基による他のカルボニル保護アミン又はアルコールも同様に反応することが所期される。
【0063】
本開示では、単数形「a」、「an」及び「the」は複数への言及を含み、文脈上特に明記しない限り、特定の数値への言及は少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「材料(a material)」と言及した場合、当業者に知られているそのような材料及びその均等物の少なくとも1つに対する言及である。
【0064】
値が、記述子「約」を用いて近似値として表される場合、その特定の値は別の実施形態を構成することが理解されよう。一般に、「約」という用語を用いた場合、本開示の主題によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似を示し、その機能に基づいて、使用される特定の文脈で解釈される。当業者は、これをルーチンとして解釈することができるであろう。場合によっては、特定の値に使用する有効数字の数は、「約」の語の範囲を決定する1つの非限定的な方法であり得る。他の場合において、段階的に変化する一連の値を用いることで、各値について、用語「約」を利用可能な意図する範囲を決定することができる。存在する場合、全ての範囲は包括的なものであり、かつ組み合わせることができる。すなわち、範囲内に記載された値に言及することは、その範囲内の全ての値への言及を含む。
【0065】
本明細書に記載される本発明の特定の特徴は、明確化のため、別個の実施形態の文脈で記載されるが、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。すなわち、明らかに矛盾するか、又は明確に除外されない限り、各個々の実施形態は他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、このような組み合わせは別の実施形態となると考えられる。反対に、本発明の種々の特徴点は、便宜上単一の実施形態の文脈で記載されるが、別々に、又は任意の部分的な組み合わせで規定することもできる。最後に、実施形態は、一連のステップの一部又はより一般的な構造の一部として説明することができるが、各ステップは、それ自体、他のものと組み合わせ可能な独立した実施形態と考えることもできる。
【0066】
用語「備える(comprising)」、「本質的に〜からなる(consisting of essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」という移行語句は、特許の用語で一般に認められている意味を暗示することを意図している。すなわち、(i)「からなる(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又は制限されておらず、引用されていない追加の要素又は方法のステップを排除するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、請求項に特定されていない要素、ステップ、又は成分を除外するものであり、また(iii)「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、特定の材料又はステップ、及び請求項に記載の発明の基本的かつ新規な特性に実質的な影響を与えないものに限定する。語句「備える(comprising)」(又はその等価物)に関して記載された実施形態は、また、実施形態として、「からなる(consisting of)」及び「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」という用語で独立して記載されるものも提供する。「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」という用語で提供される各実施形態についての基本的かつ新規な特徴は、本明細書に挙げた各有効成分を使用するだけで、簡易な方法によりシリル化した生成物を有意な収率で提供できること(又は、そのような方法において使用するシステムであって、生成物組成物を有意な収率で提供するシステムの能力、又はそのシステムから派生した組成物)である。本質的にヒドロシラン又はオルガノジシラン及び強塩基からなる組成物を提供する実施形態において、この用語は、シリル化可能な芳香族性基質、オレフィン性基質、又はアセチレン性基質の不存在下で当該組成物が存在するという事実を指す。
【0067】
「有意な生成物収率」という用語は、20%を超える生成物収率を反映することを意図しているが、特定した場合には、当該用語はまた、原基質に対し、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上よりも大きい収率も意味する。
【0068】
リストを提示した場合、特に明記しない限り、そのリストのそれぞれの個々の要素、及びそのリストのすべての組み合わせは、別個の実施形態であると理解すべきである。例えば、「A、B、又はC」として示された各実施形態のリストは、「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」の各実施形態を含んでいると解釈すべきである。同様に、C
1−3のような指定は、C
1−3だけでなく、C
1、C
2、C
3、C
1−2、C
2−3、及びC
1,3を別個の実施形態として含む。
【0069】
本明細書を通して、各語句にはそれらの通常の意味が与えられることが、当該技術分野の当業者には理解されよう。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味は明確に定義され、又は明らかにされることになる。
【0070】
本明細書において使用する用語「アルキル」は、一般的に、必ずしもそうではないが、炭素数1〜約24、好ましくは炭素数1〜約12の直鎖状、分枝状又は環状の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、オクチル、デシル等、ならびにシクロペンチル、シクロヘキシル等のようなシクロアルキル基を指す。一般に、本明細書におけるアルキル基の炭素数は、1〜約12である。この用語はまた、別個の実施形態として「低級アルキル」を含み、これは炭素数1〜6のアルキル基を指し、「シクロアルキル」という用語は、一般に、炭素数4〜8、好ましくは5〜7の環状アルキル基を意味する。用語「置換アルキル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルキル基を指し、用語「ヘテロ原子含有アルキル」及び「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたアルキル基を指す。別段の指示がない限り、用語「アルキル」及び「低級アルキル」には、直鎖状、分枝状、環状、非置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルキル及び低級アルキル基がそれぞれ含まれる。
【0071】
本明細書で使用する用語「アルキレン」は、二官能性の直鎖状、分枝状、又は環状アルキル基を指し、「アルキル」は先に規定したとおりである。
【0072】
本明細書で使用する用語「アルケニル」は、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、エイコセニル、テトラコセニル等の少なくとも1つの二重結合を含む炭素数2〜約24の直鎖状、分枝状、又は環状炭化水素が挙げられる。本明細書のアルケニル基は、炭素数2〜約12であることが好ましい。この用語には、炭素数2〜6のアルケニル基を指す別の実施形態としての「低級アルケニル」も含まれ、「シクロアルケニル」という特定の用語は、好ましくは、炭素数5〜8の環状アルケニル基を意味する。用語「置換アルケニル」は、1つ以上の置換基で置換されたアルケニル基を指し、用語「ヘテロ原子含有アルケニル」及び「ヘテロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられたアルケニル基をいう。別段の指示がない限り、用語「アルケニル」及び「低級アルケニル」には、直鎖状、分枝状、環状、非置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルケニル基及び低級アルケニル基がそれぞれ含まれる。
【0073】
本明細書で使用する用語「アルケニレン」は、二官能性の直鎖状、分枝状、又は環状アルケニル基を指し、「アルケニル」については先に規定したとおりである。
【0074】
本明細書で使用する用語「アルキニル」は、エチニル、n−プロピニル等、少なくとも1つの三重結合を含む炭素数2〜約24の直鎖又は分枝炭化水素基を指す。本明細書において、アルキニル基は、炭素数2〜約12であることが好ましい。用語「低級アルキニル」は、炭素数2〜6のアルキニル基を意味する。この用語は、また、別個の実施形態としての「低級アルキニル」も含み、1つ以上の置換基で置換されたアルキニル基をいう。用語「ヘテロ原子含有アルキニル」及び「ヘテロアルキニル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキニルをいう。別段の指示がない限り、「アルキニル」及び「低級アルキニル」という用語は、それぞれ、直鎖状、分枝状、非置換、置換、及び/又はヘテロ原子含有アルキニル基及び低級アルキニル基を含む。
【0075】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意味する。すなわち、「アルコキシ」基は、−O−アルキル(ここで、アルキルは先に規定した通りである)として表すことができる。本用語は、別の実施形態として「低級アルコキシ」も含み、これは炭素数1〜6のアルコキシ基を指す。同様に、「アルケニルオキシ」及び「低級アルケニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルケニル及び低級アルケニル基を指し、「アルキニルオキシ」及び「低級アルキニルオキシ」は、それぞれ、単一の末端エーテル結合を介して結合したアルキニル及び低級アルキニル基を指す。
【0076】
用語「芳香族」は、芳香族性のためのヒュッケル則4n+2を満たす環部分をいい、アリール(すなわち、炭素環式)構造及びヘテロアリール(ヘテロ芳香族とも呼ぶ)構造の両方を含み、アラルキル、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、若しくはアルク−ヘテロアリール部分、又は、そのプレポリメリック(例えば、単量体型、二量体型)、オリゴメリック、又はポリメリックアナログ等を含む。
【0077】
本明細書で使用する用語「アリール」は、別段の定めがない限り、(連結された異なる芳香族部分が、メチレン又はエチレン部分等の共通の基に結合するように)共に縮合、直接的又は間接的に連結した単一の芳香族環又は複数の芳香族環を含有する炭素環式芳香族置換基又は構造をいう。アリール基は炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜14であることが特に好ましい。例示的なアリール基としては、1つの芳香環又は2つの縮合又は結合芳香族環、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノン等が挙げられる。以下にさらに詳細に説明するように、「置換アリール」は、1つ以上の置換基で置換されたアリール部分をいい、用語「ヘテロ原子含有アリール」及び「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたアリール置換基をいう。
【0078】
別段の定めがない限り、用語「C−H結合」は、本明細書においてシリル化反応の文脈で使用される場合には、アセチレン又はアルキニルC−H結合、末端オレフィンC−H結合、芳香族(アリール又はヘテロアリール)C−H結合、又は、本明細書において引用する参考文献のいずれかに既に記載されているような、前駆体基質、ヒドロシラン/オルガノシラン、及び水酸化物を含む強塩基を同時に混合することによりシリル化される傾向を示す芳香族/ヘテロ芳香族環系(例えば、ベンジル基又は2,5−ジメチルチオフェン基質)に対してアルファに位置するアルキル、アルコキシ、又はアルキレン基のC−H結合を意味する。
【0079】
本明細書において使用する用語「アリールオキシ」は、単一の末端エーテル結合を介して結合したアリール基を指し、「アリール」は先に規定した通りである。「アリールオキシ」基は、−O−アリール(式中、アリールは先に規定した通りである)として表すことができる。好ましいアリールオキシ基の炭素数は6〜24であり、特に好ましいアリールオキシ基の炭素数は6〜14である。アリールオキシ基の例としては、特に限定はしないが、フェノキシ、o−ハロ−フェノキシ、m−ハロ−フェノキシ、p−ハロ−フェノキシ、o−メトキシ−フェノキシ、m−メトキシ−フェノキシ、p−メトキシ−フェノキシ、2,4−ジメトキシ−フェノキシ、3,4,5−トリメトキシ−フェノキシ等が挙げられる。
【0080】
用語「アルカリール」は、アルキル置換基を有するアリール基をいい、用語「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキル基をいい、ここで「アリール」及び「アルキル」は先に規定した通りである。好ましいアルカリール基及びアラルキル基の炭素数は7〜24であり、特に好ましいアルカリール基及びアラルキル基の炭素数は7〜16である。アルカリール基の例としては、例えば、p−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、p−シクロヘキシルフェニル、2,7−ジメチルナフチル、7−シクロオクチルナフチル、3−エチル−シクロペンタ−1,4−ジエン等が挙げられる。アラルキル基の例としては、特に限定はしないが、ベンジル、2−フェニル−エチル、3−フェニル−プロピル、4−フェニル−ブチル、5−フェニル−ペンチル、4−フェニルシクロヘキシル、4−ベンジルシクロヘキシル、4−フェニルシクロヘキシルメチル、4−ベンジルシクロヘキシルメチル等が挙げられる。「アルカリールオキシ」及び「アラルキルオキシ」の各用語は、式−ORの置換基を指し、式中、Rは、それぞれ、先に定義したように、当該アルカリール又はアラルキルである。
【0081】
用語「アシル」は、式−(CO)−アルキル、−(CO)−アリール、又は−(CO)−アラルキルを有する置換基をいい、また、用語「アシルオキシ」は、式−O(CO)−アルキル、−O(CO)−アリール、又は−O(CO)−アラルキルを有する置換基を指し、「アルキル」、「アリール」、及び「アラルキル」は先に規定した通りである。
【0082】
用語「環状」及び「環」という用語は、脂環式基又は芳香族基を指し、各基は置換でされていてもいなくてもよく、及び/又はヘテロ原子を含有してもしなくてもよい。各基は、単環式、二環式、又は多環式とすることができる。用語「脂環式」は、芳香族環式部分とは対照的に、脂肪族環式部分を指すために従来の意味で用いられ、単環式、二環式、又は多環式とすることができる。用語「非環式」とは、環構造内に二重結合が含まれない構造をいう。
【0083】
用語「ハロ」、「ハロゲン化物」、及び「ハロゲン」は、従来の意味で使用され、クロロ、ブロモ、フルオロ、又はヨード置換基を指す。
【0084】
「ヒドロカルビル」は、炭素数1〜約30、好ましくは炭素数1〜約24、最も好ましくは炭素数1〜約12の一価のヒドロカルビル基を指し、アルキル基、アルケニル基、アリール基等の、直鎖状、分枝状、環状、飽和、及び不飽和種を含む。用語「低級ヒドロカルビル」は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のヒドロカルビル基を意図し、用語「ヒドロカルビレン」は、炭素数1〜約30、好ましくは炭素数1〜約24、最も好ましくは炭素数1〜約12の二価のヒドロカルビル部分を意味し、直鎖状、分枝状、環状、飽和、及び不飽和種を含む。用語「低級ヒドロカルビレン」は、炭素数1〜6のヒドロカルビレン基を意味する。「置換ヒドロカルビル」は、1つ以上の置換基で置換されたヒドロカルビルをいい、用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル」及び「ヘテロヒドロカルビル」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたヒドロカルビルをいう。同様に、「置換ヒドロカルビレン」は、1つ以上の置換基で置換されたヒドロカルビレンを指し、用語「ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン」及び「ヘテロヒドロカルビニレン」は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されたヒドロカルビレンをいう。別段の指示が限り、用語「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビレン」は、置換及び/又はヘテロ原子含有ヒドロカルビル及びヒドロカルビレン部分をそれぞれ含むと解釈すべきである。
【0085】
「ヘテロ原子含有ヒドロカルビル基」における用語「ヘテロ原子含有」は、1つ以上の炭素原子が炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄、リン、又はケイ素等、一般には、窒素、酸素、又は硫黄の原子で置換されている炭化水素分子又はヒドロカルビル分子フラグメントを指す。同様に、用語「ヘテロアルキル」は、ヘテロ原子含有のアルキル置換基を指し、用語「ヘテロ環式」は、ヘテロ原子含有の環状置換基を指し、用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、それぞれ、ヘテロ原子含有の「アリール」置換基及び「芳香族」置換基等を指す。「ヘテロ環式」基又は化合物は、芳香族であってもなくてもよく、さらには、「ヘテロ環」は、上述したように、用語「アリール」に対しては、単環式、二環式、又は多環式とすることができる。ヘテロアルキル基の例としては、アルコキシアリール、アルキルスルファニル置換アルキル、N−アルキル化アミノアルキル等がある。ヘテロアリール置換基の非限定的な例としては、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、キノリニル、インドリル、ピリミジニル、イミダゾイル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル等があり、ヘテロ原子含有脂環式基の例は、ピロリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ等である。
【0086】
本明細書において使用する用語「基質」又は「有機基質」は、個別の小分子(「有機化合物」と記載されることがある)及び記載の反応条件下でシリル化することができるC−H基を含有するオリゴマー及びポリマーの両方を暗示することを意図している。用語「芳香族部分」は、示された芳香族構造の少なくとも1つを含む、化合物、プレポリマー(すなわち、重合可能なモノマー化合物)、オリゴマー、又はポリマーのそれらの部分を指すことを意図している。構造として示された場合には、各部分は少なくとも本明細書において示されたものであり、さらに、少なくとも本明細書において「Fn」と記載される官能化を含むが、これに限定されず、さらなる官能化、置換基、又はその両方を含む。
【0087】
先のいくつかの定義において間接的に言及されているような「置換ヒドロカルビル」、「置換アルキル」、「置換アリール」等における「置換」とは、ヒドロカルビル部分、アルキル部分、アリール部分、ヘテロアリール部分、又は他の部分において、炭素(又は他の)原子に結合した少なくとも1つの水素原子が1つ以上の非水素置換基で置換されていることを意味している。そのような置換基の例としては、限定はしないが、本明細書において「Fn」と呼ぶ官能基、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、スルフヒドリル、C
1−C
24アルコキシ、C
2−C
24アルケニルオキシ、C
2−C
24アルキニルオキシ、C
5−C
24アリールオキシ、C
6−C
24アラルキルオキシ、C
6−C
24アルカリールオキシ、アシル(C
1−C
24アルキルカルボニル(−CO−アルキル)及びC
6−C
24アリールカルボニル(−CO−アリール)等を含む)、アシルオキシ(−O−アシル、C
2−C
24アルキルカルボニルオキシ(−O−CO−アルキル)及びC
6−C
24アリールカルボニルオキシ(−O−CO−アリール))、C
2−C
24アルコキシカルボニル((CO)−O−アルキル)、C
6−C
24アリールオキシカルボニル(−(CO)−O−アリール)、ハロカルボニル(−CO)−Xであって、式中、Xはハロであるもの等を含む)、C
2−C
24アルキルカルボナート(−O−(CO)−O−アルキル)、C
6−C
24アリールカルボナート(−O−(CO)−O−アリール)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシラト(−COO−)、カルバモイル(−(CO)−NH
2)、モノ−(C
1−C
24アルキル)−置換カルバモイル(−(CO)NH(C
1−C
24アルキル))、ジ−(C
1−C
24アルキル)−置換カルバモイル(−(CO)−N(C
1−C
24アルキル)
2)、モノ−(C
1−C
24ハロアルキル)−置換カルバモイル(−(CO)−NH(C
1−C
24アルキル))、ジ−(C
1−C
24ハロアルキル)−置換カルバモイル(−(CO)−N(C
1−C
24アルキル)
2)、モノ−(C
5−C
24アリール)−置換カルバモイル(−(CO)−NH−アリール)、ジ−(C
5−C
24アリール)置換カルバモイル(−(CO)−N(C
5−C
24アリール)
2),ジ−N−(C
1−C
24アルキル)、N−(C
5−C
24アリール)−置換カルバモイル、チオカルバモイル(−(CS)−NH
2)、モノ−(C
1−C
24アルキル)−置換チオカルバモイル(−(CO)−NH(C
1−C
24アルキル))、ジ−(C
1−C
24アルキル)−置換チオカルバモイル(−(CO)−N(C
1−C
24アルキル)
2)、モノ−(C
5−C
24アリール)置換チオカルバモイル(−(CO)−NH−アリール)、ジ−(C
5−C
24アリール)−置換チカルバモイル(−(CO)−N(C
5−C
24アリール)
2)、ジ−N−(C
1−C
24アルキル)、N−(C
5−C
24アリール)−置換チオカルバモイル、カルバミド(−NH−(CO)−NH
2)、シアノ(−C≡N)、シアナート(−O−C=N)、チオシアナート(−S−C=N)、ホルミル(−(CO)−H)、チオホルミル(−(CS)−H)、アミノ(−NH
2)、モノ−(C
1−C
24アルキル)−置換アミノ、ジ−(C
1−C
24アルキル)−置換アミノ、モノ−(C
5−C
24アリール)置換アミノ、ジ−(C
5−C
24アリール)−置換アミノ、C
1−C
24アルキルアミド(−NH−(CO)−アルキル)、C
6−C
24アリールアミド(−NH−(CO)−アリール)、イミノ(−CR=NH、式中、Rは水素、C
1−C
24アルキル、C5−C24アリール、C
6−C
24アルカリール、C
6−C
24アラルキル等.),C
2−C
20アルキルイミノ(−CR=N(アルキル)、式中、Rは、水素、C
1−C
24アルキル、C
5−C
24アリール、C
6−C
24アルカリール、C
6−C
24アラルキル等)、アリールイミノ(−CR=N(アリール)、式中、Rは水素、C
1−C
20アルキル、C
5−C
24アリール、C
6−C
24アルカリール、C
6−C
24アラルキル等)、ニトロ(−NO
2)、ニトロソ(−NO)、スルホ(−SO
2OH)、スルホン酸(SO
2O−)、C
1−C
24アルキルスルファニル(−S−アルキル;「アルキルチオ」ともいう)、C
5−C
24アリールスルファニル(−S−アリール;「アリールチオ」ともいう)、C
1−C
24アルキルスルフィニル(−(SO)−アルキル)、C
5−C
24アリールスルフィニル(−(SO)−アリール)、C
1−C
24アルキルスルホニル(−SO
2−アルキル)、C
1−C
24モノアルキルアミノスルホニル−SO
2−N(H)アルキル)、C
1−C
24ジアルキルアミノスルホニル−SO
2−N(アルキル)
2、C
5−C
24アリールスルホニル(−SO
2−アリール)、ボリル(−BH
2)、ボロノ(−B(OH)
2)、ボロナート(−B(OR)
2)、式中、Rはアルキル又は他のヒドロカルビル)、ホスホノ(−P(O)(OH)
2)、ホスホナート(−P(O)(O)
2)、ホスフィナート(P(O)(O−))、ホスホ(−PO
2)、及びホスフィン(−PH
2);及びヒドロカルビル部分C
1−C
24アルキル(好ましくはC
1−C
l2アルキル、より好ましくはC
1−C
6アルキル)、C
2−C
24アルケニル(好ましくはC
2−C
12アルケニル、より好ましくは、C
2−C
6アルケニル)、C
2−C
24アルキニル(好ましくはC
2−C
12アルキニル、より好ましくはC
2−C
6アルキニル)、C
5−C
24アリール(好ましくはC
5−C
24アリール)、C
6−C
24アルカリール(好ましくはC
6−C
16アルカリール)、及びC
6−C
24アラルキル(好ましくはC
6−C
16アラルキル)等が挙げられる。これらの置換基構造内で、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アルケニレン」、「アルキニル」、「アルキニレン」、「アルコキシ」、「芳香族」、「アリール」、「アリールオキシ」、「アルカリール」、及び「アラルキル」部分は、任意選択で、フッ素置換又は全フッ素置換してもよい。加えて、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸、ケトン、又は他の同様の反応性官能基についての言及は、その保護されたアナログ(their protected analogs)も含む。例えば、ヒドロキシ又はアルコールについての言及は、ヒドロキシが、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β−メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル,[ビス−(4−メトキシフェニル)フェニルメチル](DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル、MMT)、p−メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(トリフェニルメチル、Tr)、シリルエーテル(もっとも有名なものとしては、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)エーテル、トリ−イソ−プロピルシリルオキシメチル(TOM)エーテル、及びトリイソプロピルシル(TIPS)エーテルが挙げられる)、エトキシエチルエーテル(EE)により保護されている置換基も含む。アミンへの言及は、アミンが、BOCグリシン、カルボベンジルオキシ(Cbz)、p−メトキシベンジルカルボニル(Moz又はMeOZ)、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、カルバメート、p−メトキシベンジル(PMB)、3,4−ジメトキシベンジル(DMPM)、p−メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)基、又はスルホンアミド(Nosyl&Nps)基により保護されている置換基も含む。カルボニル基を含有する置換基への言及は、また、カルボニル基が、アセチル基又はケタール基、アシラール基、又はジアセン基により保護されているカルボン酸等の置換基も含む。カルボン酸塩又はカルボキシレート基を含有する置換基についての言及は、カルボン酸又はカルボキシレート基が、そのメチルエステル、ベンジルエステル、tert−ブチルエステル、2,6−ジ置換フェノール(例えば、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、シリルエステル、オルトエステル、又はオキサゾリンに保護されているものも含む。好ましい置換基は、本明細書において、シリル化の化学反応(silylationchemistries)に全く又はほとんど影響しないと規定されているものであり、例えば、アルキル、アルコキシド、アリールオキシド、保護されたカルボニル基、F、Cl、−CF
3で任意に置換されたアリール;エポキシド、N−アルキルアジリジン;cis−及びトランス−オレフィン;アセチレン;ピリジン、第1、第2、第3級アミン、ホスフィン、及び水酸化物を含む置換基を含む。
【0088】
「官能化ヒドロカルビル」、「官能化アルキル」、「官能化オレフィン」、「官能化環状オレフィン」等における「官能化」とは、ヒドロカルビル、アルキル、アリール、ヘテロアリール、オレフィン、環状オレフィン、又は他の部分において、炭素原子(又は他の原子)に結合した少なくとも1つの水素原子が、本明細書及び上記に記載した1つ以上の官能基によって置換されていることを意味する。用語「官能基」は、本明細書に記載の置換基のいずれかを「Fn]の範囲で含むことを意味する。
【0089】
さらに、上記の官能基は、特定の基が許容する場合には、1つ以上の追加の官能基で、又は1つ以上のヒドロカルビル部分(例えば、上に具体的に列挙されたもの)でさらに置換され得る。同様に、上記のヒドロカルビル部分は、1以上の官能基又は追加のヒドロカルビル部分、例えば具体的に列挙されたもの等でさらに置換されていてもよい。
【0090】
「任意の」又は「任意に」は、その後に記載された状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、したがって、その記載は、その状況が起こる場合及び起こらない場合を含む。例えば、「任意に置換された」という語句は、非水素置換基が所与の原子又は有機部分に存在しても存在しなくてもよいことを意味し、したがって、当該記載は、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0091】
本明細書において使用する「有機シラン」又は「ヒドロシラン」という用語は互換的に使用され、少なくとも1つのケイ素−水素(Si−H)結合、好ましくは少なくとも1つの炭素含有部分を有する化合物又は試薬をいう。ヒドロシランは、さらに、ケイ素−炭素、ケイ素−酸素(すなわち、「オルガノシロキサン」という用語を包含する)、ケイ素−窒素結合、又はそれらの組み合わせを含有してもよく、モノマーであってもよく、又はオリゴマー又はポリマーフレームワーク内に含まれてもよく、例えば、異種又は均質支持構造にテザーされていてもよい。用語「ヒドロシラン」はまた、対応するS−H結合がSi−D同族体(cogeners)において濃縮されている重水素シランも含む。
【0092】
本明細書で使用する用語「オルガノジシラン」及び「ジシラン」は互換的に使用され、少なくとも1つのSi−Si結合を有する化合物又は試薬を指す。これらの用語は、ジシランが少なくとも1つのSi−H結合を含む実施形態、及びジシランがケイ素−水素(Si−H)結合を含まない実施形態を含む。本開示は、Si−Si結合を有する化合物の反応を指すが、Si−H結合の任意の存在は、オルガノシラン試薬を用いてシリル化に関して記載した反応マニホールドを介して反応を進行させることができる。そのようなSi−H経路は、ジシラン系においてシリル化を進行させるために必要ではないが、シリル化試薬がSi−Si結合とSi−H結合の両方を含む場合、反応は互いに並行して動作し得る。オルガノジシランは、ケイ素−炭素、ケイ素−酸素、ケイ素−窒素結合、又はそれらの組合せをさらに含んでもよく、モノマーであってもよく、又はオリゴマー又はポリマーフレームワーク内に含まれてもよく、例えば、異種又は均質支持構造にテザーされていてもよい。
【0093】
オルガノシラン又はオルガノジシランの語は、本明細書中で使用される場合、反対の内容が明示的に述べられていない限り、Si−ハロゲン結合を含まない物質を指すものとする。しかしながら、いくつかの実施形態において、オルガノシラン又はオルガノジシランは、Si−ハロゲン結合を含んでいてもよい。
【0094】
本明細書で使用する用語「シリル化すること」又は「シリル化」という用語は、その前に炭素−水素結合によって占有されていた位置に炭素−ケイ素結合を形成することをいう。シリル化は、C−H及びSi−H結合又はC−H及びSi−Si結合の脱水素的カップリングと見ることができ、C−Si結合を形成する。
【0095】
本明細書で使用する用語「遷移金属化合物を実質的に含まない」は、システムが(前調整済み(preconditioned)組成物の文脈において)安定であり、(方法の場合に)本明細書に記載した比較的温和な条件下で、任意の外因性の(すなわち、意図的な添加等による)遷移金属触媒が全く存在しなくても、C−H結合をシリル化するという意図した目的に有効である。特定の実施形態は、シリル化反応を触媒することができる遷移金属を含む遷移金属が、このような触媒活性に通常関連するレベル(例えば、基質がメタロセンを含む場合)で、本明細書に記載のシステム又は方法において存在し得ることを規定するが、(触媒又は観客化合物のいずれかとしての)そのような金属の存在は不要であり、多くの場合には望ましくない。そのため、多くの好ましい実施形態では、システム及び方法は「遷移金属化合物を実質的に含まない」。別段の記載がない限り、「遷移金属化合物を実質的に含まない」という用語は、シリル化系内の遷移金属の総量が、独立して又は有機基質の存在下で、ICP−MSによって測定した場合に約5ppm未満であることを反映するように規定される。このように明示的に述べると、追加の実施形態においては、また、遷移金属の濃度は約10重量%、5重量%、1重量%、100ppm、50ppm、30ppm、25ppm、20ppm、15ppm、10ppm未満、又は5ppm〜約1ppm又は0ppmである。本明細書で使用する用語「遷移金属」は、d−ブロック要素、例えば、Ag、Au、Co、Cr、Rh、Ir、Fe、Ru、Os、Ni、Pd、Pt、Cu、Zn、又はそれらの組み合わせを含む。さらなる特定の独立した実施形態では、ICP−MSによって測定されるNiの濃度は、25ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、又は1ppm未満である。
【0096】
同様に、用語「C−Hシリル化可能なヘテロ芳香族、オレフィン性、又はアセチレン性基質の実質的な不存在」は、化合物又は前調整済み組成物が、前駆体ヒドロシランの量に対して、これらの物質を部分化学量論量(substoichiometric amounts)含有すること、又は、添加した基質物質が存在しないこと、及び好ましくは、上記の条件下で、さもなければC−H位置でシリル化され得る基質が追加されていないことを反映することを意図している。このような不飽和有機基質は、特にヘテロ芳香族基質を指すが、本明細書の他の箇所で引用された各特許出願に記載されている末端オレフィン基質又はアセチレン基質も指す。
【0097】
水及び酸素へのシステムの暴露を制限する必要はないかもしれないが、これらの物質の存在は、例えば、フリーラジカル中間体を形成し、それによって、前調整済み混合物の安定性、水素化物化合物、又はその後のシリル化反応の速度に、物質的に悪影響を与え得る。いくつかの実施形態では、本化学系及び方法は、水、酸素、又は水と酸素の両方を実質的に含まない。他の実施形態では、空気及び/又は水が存在する。別段の指定がない限り、「実質的に水を含まない」という用語は、約500ppm未満の水のレベルを指し、「実質的に酸素を含まない」とは、1トル未満の分圧に対応する酸素レベルを指す。記載されている場合、追加の独立した実施形態は、「実質的に水を含まない」とは、1.5重量%、1重量%、0.5重量%、1000ppm、500ppm、250ppm、100ppm、50ppm、10ppm、又は1ppmであり、また、「実質的に酸素を含まない」とは、50トル、10トル、5トル、1トル、500ミリトル、250ミリトル、100ミリトル、50ミリトル、又は10ミリトル未満の分圧に対応する酸素レベルを指す。本明細書に記載の一般的な手順では、特に明記しない限り、水と酸素の両方を意図的に排除する努力がなされた。
【0098】
用語「末端シリル化オレフィン生成物」は、本明細書に記載の反応のオレフィン生成物を指し、末端置換ビニルシラン又はアリルシランを含む。用語「末端シリル化オレフィン部分」は、生成物がアリール又はビニルシリル化合物であるかどうかにかかわらず、末端シリル化オレフィン生成物のシリル部分を指す。用語「末端ヒドロシリル化生成物」という用語は、一般には、ビニル芳香族基質への反マルコニコフ的ヒドロシリル化付加の結果として、シリル基がエチレン結合の末端位置に配置された生成物を指す。
【実施例】
【0099】
以下に挙げた各実施形態は、これまでの説明を置換又は差し替えるものではなく、補完することを意図している。
【0100】
(実施形態1)
(a)前駆体としてのヒドロシラン又はオルガノジシランと、
(b)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート(例えば、KOTMA)、水酸化ルビジウム、ルビジウムシラノレート、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、カリウムアミド(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、カリウムグラファイト(例えば、KC
8)、又はそれらの組み合わせを含むか又は本質的にそれらからなる基質と、の混合物を前調整することにより調製した組成物であって、
前調整することは、1−メチルインドールの測定可能なシリル化を開始可能な組成物を生成するのに十分な条件下で、45℃以下の温度で、誘導期間が30分未満、25分未満、15分未満、10分未満、5分未満、又は1分未満で、合成ヒドロシラン及び塩基の混合物を保持することを含むか、又は本質的に保持することからなる。本実施形態の特定の態様において、組成物は、添加されたヘテロ芳香族、オレフィン、又はアセチレン基質を含まない。
【0101】
(実施形態2)
(a)前駆体としてのヒドロシランと、
(b)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート(例えば、KOTMS)、水酸化ルビジウム、ルビジウムアルコキシド、ルビジウムシラノレート、水酸化セシウム、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、カリウムアミド(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)、又はそれらの組み合わせを含むか又は本質的にそれらからなる塩基と、の間の実施形態1に記載の前調整の反応から派生し得るSi−H系種を含む、実施形態1に記載の組成物であって、
比較可能な条件下で評価した場合に、前記前駆体としてのヒドロシランは赤外スペクトルのSi−H伸縮領域において吸収ピークを呈し、前記Si−H系種は赤外スペクトルのSi−H伸縮領域において吸収ピークを呈し、当該吸収ピークは前記前駆体としてのヒドロシランの前記吸収ピークよりも低エネルギーである。本実施形態のいくつかの態様において、Si−H系種は、Si−H結合を含む超配位ケイ素種であるか、又はそれを含む。本実施形態の特定の態様においては、組成物には、ヘテロ芳香族性、オレフィン性、又はアセチレン性基質が添加されていない。用語「派生可能」は、組成物が前駆体としてのヒドロシランと塩基との間の反応から派生し得るが、必ずしも派生しないことを意味する。
【0102】
(実施形態3)
実施形態1又は2の組成物であって、溶媒をさらに含む組成物。
本実施形態の他の態様において、組成物は溶媒を含まない(すなわち、ヒドロシラン又はオルガノジシラン及び塩基は無溶媒混合物として存在する)。本実施形態のいくつかの態様において、組成物は、炭化水素溶媒を含む溶液である。本実施形態のいくつかの態様において、組成物は、本明細書の他の箇所に記載されるような酸素供与体含有溶媒、好ましくはエーテル型溶媒、より好ましくは任意に置換されたテトラヒドロフラン、例えば2−メチルテトラヒドロフランを含む溶液である。
【0103】
(実施形態4)
実施形態1〜3のいずれか一の組成物であって、塩基は水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、又は水酸化セシウムを含む、組成物。
【0104】
(実施形態5)
実施形態1〜3のいずれか一の組成物であって、塩基は水酸化カリウムを含む、組成物。.
【0105】
(実施形態6)
実施形態1〜3のいずれか一の組成物であって、塩基はカリウムアルコキシド、ルビジウムアルコキシド、又はセシウムアルコキシドを含む、組成物。
【0106】
(実施形態7)
実施形態1〜3のいずれか一の組成物であって、塩基はカリウムアルコキシドを含む、組成物。
【0107】
(実施形態8)
実施形態1、6、又は7のいずれか一の組成物であって、アルコキシドは、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、又はブトキシド、好ましくはtert−ブチルブトキシド等のC
1−6アルコキシドを含む、組成物。
【0108】
(実施形態9)
実施形態1〜8のいずれか一の組成物であって、前駆体としてのヒドロシランは式(I)又は式(II):
(R)
3−mSi(H)
m+1 (I)
(R)
3−m(H)
mSi−Si(R)
2−m(H)
m+1 (II)で表され
式中、mは、独立して0、1,又は2であり、また、Rはそれぞれ独立して、任意に置換されたC
1−24アルキル又はヘテロアルキル、任意に置換されたC
2−24アルケニル、任意に置換されたC
2−24アルキニル、任意に置換されたC
6−12アリール、C
3−12ヘテロアリール、任意に置換されたC
7−13アルカリール、任意に置換されたC
4−12ヘテロアルカリール、任意に置換されたC
7−13アラルキル、任意に置換されたC
4−12ヘテロアラルキル、任意に置換された−O−C
1−24アルキル、任意に置換されたC
6−12アリールオキシ、任意に置換されたC
3−12ヘテロアリールオキシ、任意に置換されたC
7−13アルカリールオキシ、任意に置換されたC
4−12ヘテロアルカリールオキシ、任意に置換されたC
6−12アラルコキシ、又はC
4−12ヘテロアラルコキシであり、及び、置換されている場合、置換基は、ホスホナート、ホスホリル、ホスファニル、ホスフィノ、スルホナート、C
1−C
20アルキルスルファニル、C
5−C
20アリールスルファニル、C
1−C
20アルキルスルホニル、C
5−C
20アリールスルホニル、C
1−C
20アルキルスルフィニル、5〜12環員のアリールスルフィニル、スルホンアミド、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシル、C
1−C
20アルコキシ、C
5−C
20アリールオキシ、C
2−C
20アルコキシカルボニル、C
5−C
20アリールオキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシラート、メルカプト、ホルミル、C
1−C
20チオエステル、シアノ、シアナート、チオシアナート、イソシアネート、チオイソシアネート、カルバモイル、エポキシ、スチレニル、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロナート、ボリル、又はハロゲン、又は、金属含有又はメタロイド含有基であり、メタロイドはSn又はGeであり、各置換基は、アルミナ、シリカ、又は炭素を含む不溶性又は難溶性の支持媒体に、任意選択でテザーを提供してもよい。本実施形態の特定の態様において、前駆体としてのオルガノジシランは式(III)で表され
(R’)
3Si−Si(R’)
3 (III)
式中、R’は先に定義したRであり、又は、さらに、任意で置換したアルコキシ又はアリールオキシ部分又はトリメチルシロキシを含む。本実施形態の他の態様において、R又はR’は、独立して、任意で置換したアルキル、アルケニル、アリール、及び/又はヘテロアリール部分であり、その詳細は本明細書の他の箇所においてさらに記載する。R’は、独立して、任意で置換したアルコキシ又はアリールオキシ部分又はトリメチルシロキシを含んでもよい。
【0109】
(実施形態10)
実施形態1〜9のいずれか一の組成物であって、少なくとも1つのヒドロシランが(R)
3SiH又は(R)
2SiH
2であり、式中、Rはそれぞれ独立してC
1−6アルキル、フェニル、トリル、又はピリジニルである。本実施形態の特定の態様において、Rはそれぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、フェニル、ビオフェニル、ベンジル、又はピリジニルであり、例えば、EtMe
2SiH、PhMe
2SiH、BnMe
2SiH、(n−Bu)
3SiH、Et
2SiH
2、Me
3SiH、Et
3SiH、n−Pr
3SiH、i−Pr
3SiH、n−Bu
3SiH、sec−Bu
3SiH、tert−Bu
3SiH、Me
2(ピリジニル)SiH、又はMe
3Si−SiMe
2Hである。本実施形態の特定の態様において、これらの置換基は任意で置換される。
【0110】
(実施形態11)
実施形態10の組成物であって、該組成物は溶液であり、塩基は、カリウムtert−ブトキシドを含む、組成物。
【0111】
(実施形態12)
実施形態1〜11のいずれか一の組成物であって、組成物には、遷移金属又は遷移金属種が添加されていない。本実施形態の特定の態様において、遷移金属又は遷移金属種は、組成物の全重量に対し、1%未満、1000ppm、100ppm、50ppm、又は10ppmで存在する。
【0112】
(実施形態13)
実施形態1〜11のいずれか一の組成物であって、当該組成物は、好ましくはエテール系溶液であり、最も好ましくはテトラヒドロフラン又は2−メチル−テトラヒドロフランである。
【0113】
(実施形態14)
実施形態13の組成物であって、テトラヒドロフラン中で、さらに、
図3に示すような実質的にg=2.0007を中心とするTHF中の電子常磁性共鳴(EPR)信号を示す。
【0114】
(実施形態15)
化合物又はその化合物自体を含む組成物であって、式(IV)で表される、任意溶媒和水酸化ケイ素構造:
【化5】
又はその幾何異性体を有し、
式中、
M
+は、カリウム、ルビジウム、セシウム、又はそれらの組み合わせを含むカチオンであるか、又はそれらを含み;
−OR
Bは、水酸化物、アルコキシド、アルキルシラノレート、又はその組み合わせであるか、又はそれらを含み;及び
−R
Sは、H、−R、又は−Si(R)
3−mH
m、又はそれらの組み合わせを含み、
式中、m及びRは本明細書の他の箇所に記載した通りであり、又はその異性体である、組成物。
【0115】
(実施形態16)
(a)水酸化カリウム、カリウムアルコキシド、カリウムシラノレート、水酸化ルビジウム、ルビジウムアルコキシド、ルビジウムシラノレート、セシウムヒドロキシド、セシウムアルコキシド、セシウムシラノレート、又はその組み合わせと、(b)式(I)又は(II)で表される前駆体であるヒドロシラン、又は、本明細書の他の箇所に記載したような、前駆体としての個々のヒドロシランのいずれかとの付加生成物である化合物。
【0116】
(実施形態17)
ヘテロ芳香族基質、オレフィン基質、又はアセチレン基質が添加されていない実施形態1〜16のいずれか一の化合物又は組成物。本実施形態の特定の態様において、用語「ない(free)」とは、添加された基質を含まないことを意味する。
【0117】
(実施形態18)
C−H結合又はアルコールO−H結合を有する有機基質をシリル化することを含む方法であって、当該有機基質を実施形態1〜17の組成物又は化合物と接触させることを含む方法において、
接触させた結果、その前にC−H結合によって占有されていた位置にC−Si結合が形成され、又は、その前にO−H結合によって占有されていた位置にO−Si結合が形成され、
C−H結合は、
(a)ヘテロ芳香族部分上に配置され;
(b)ヘテロアリール部分に対してアルファに位置するアルキル、アルコキシ、又はアルキレン部分上に配置され;
(c)アルキニルC−H結合であるか;又は
(d)末端オレフィン性結合であり、
前調整済み混合物は、30分、25分、20分、15分、10分、5分、又は1分未満の誘導期間で、45℃(又は未満)の温度で1−メチルインドールの測定可能なシリル化を開始することができる。各基質又は基質の種類は、それぞれ、独立した実施形態と考えられる。本実施形態の特定の個々の態様において、前駆体としてのヒドロシランは、式(I)又は(II)の化合物、又は本明細書に記載した任意の個々のヒドロシランである。
【0118】
(実施形態19)
C−H結合又は−OH結合を含有する少なくとも1つの有機基質をシリル化することを含む方法であって、当該方法は、
(a)前駆体としてのヒドロシラン;及び
(b)水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、KC
8、又はそれらの組み合わせを含むか又は本質的にそれらからなる塩基;
と有機基質を接触させることを含み、
C−H結合は:
(a)ヘテロ芳香族部分上に配置され、
(b)アリール又はヘテロアリール部分に対してアルファに位置するアルキル、アルコキシ、又はアルキレン部分上に配置され、
(c)アルキニルC−H結合;又は
(d)末端オレフィン性C−H結合であり、
接触させた結果、その前にC−H結合によって占有されていた位置にC−Si結合が形成され、又は、その前にO−H結合によって占有されていた位置にO−Si結合が形成される。各基質又は基質の種類は、それぞれ、独立した実施形態と考えられる。本実施形態の特定の個々の態様において、前駆体としてのヒドロシランは、式(I)又は(II)の化合物であるか、又は本明細書に記載した任意の個々のヒドロシランである。本実施形態の他の個々の態様において、前駆体としてのオルガノジシランは、式(III)で表される化合物であるか、又は本明細書に記載した任意の個々のヒドロシランである。
【0119】
(実施形態20)
実施形態19に記載の方法であって、前駆体としてのヒドロシラン又はオルガノジシラン及び塩基は、有機基質と接触させる前に前調整される。
前調整とは、前駆体としてのヒドロシラン及び塩基を約25℃〜約125℃の範囲内における一以上の温度で約30分〜約24時間の範囲内の時間にわたって保持することを含み、当該時間と温度の組み合わせは、30分、25分、20分、15分、10分、5分、又は1分未満の誘導期間で、45℃(又は未満)の温度で1−メチルインドールの測定可能なシリル化を開始可能な組成物を生成するのに十分なものとする。
【0120】
(実施形態21)
実施形態18〜20のいずれか一の方法であって、有機基質はヘテロ芳香族部分であり、例えば、任意に置換されたフラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアゾン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾフラン、イソベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、アザインドール、ベンジイソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、ナフチリジン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾピロール、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、キサンテン、ジベンゾピロール、又はジベンゾチオフェン部分である。本実施形態の特定の態様において、有機基質は、2013年10月2日に出願された米国特許第14/043,929号明細書(アルコキシドとヘテロ芳香族化合物)、現在は米国特許第第9,000,167号(特許文献1)又は2015年8月5日に出願された米国特許出願第14/818,417号明細書(水酸化物とヘテロ芳香族化合物)(特許文献2)に記載されており、各文献は参照により少なくともその教示の内容が本明細書において援用される
【0121】
(実施形態22)
実施形態18〜20のいずれか一の方法において、有機基質は、以下の式を有するアルキニルC−H結合を含み:
R
3−C≡C−H、
式中、R
3は、任意に置換されたC
1−18アルキル、任意に置換されたC
2−18アルケニル、任意に置換されたC
2−18アルキニル、任意に置換されたC
6−18アリール、任意に置換されたC
6−18アリールオキシ、任意に置換されたC
7−18アラルキル、任意に置換されたC
7−18アラルキルオキシ、任意に置換されたC
3−18ヘテロアリール、任意に置換されたC
3−18ヘテロアリールオキシ、任意に置換されたC
4−18ヘテロアリールアルキル、任意に置換されたC
4−18ヘテロアラルキルオキシ、又は任意に置換されたメタロセンを含む。本実施形態の特定の態様において、有機基質は、2015年9月1日に出願された米国特許出願第14/841,964号明細書(アルキン)、現在は米国特許第9,556,206号(特許文献3)に記載のアルキンであり、少なくともその教示の内容を参照により本明細書に援用する。
【0122】
(実施形態23)
実施形態18〜20のいずれか一の方法において、少なくとも一つの有機基質は式(V)を有する末端オレフィンを含み:
【化6】
式中、pは0又は1であり;R
1及びR
2は、独立して、H、任意に置換されたC
1−18アルキル、任意に置換されたC
2−18アルケニル、任意に置換されたC
2−18アルキニル、任意に置換されたC
6−18アリール、任意に置換されたC
1−18ヘテロアルキル、任意に置換された5〜6環員のヘテロアリール、任意に置換された5〜6環員のアラルキル、任意に置換された5〜6環員のヘテロアラルキル、又は任意に置換されたメタロセンを含み、ただし、R
1及びR
2の両方ともHでないことを条件とする。本実施形態の特定の態様において、有機基質は、2016年5月27日に出願された米国特許出願第15/166,405号明細書(末端オレフィン)(特許文献5)に記載されているような末端オレフィンを有する任意のものであり、少なくともその教示の内容を参照により本明細書に援用する。
【0123】
(実施形態23)
実施形態18〜20のいずれか一の方法において、少なくとも1つの有機基質は、式(VIA)又は式(VIB)の構造を有するアルコール性−OH基を含み:
R
4−OH (VIA) HO−R
5−OH (VIB)、
式中、R
4は、任意に置換されたC
1−24アルキル、任意に置換されたC
2−24アルケニル、任意に置換されたC
2−24アルキニル、任意に置換されたC
6−24アリール、任意に置換されたC
1−24ヘテロアルキル、任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリール、任意に置換されたC
7−24アラルキル、任意に置換されたヘテロアラルキル、又は任意に置換されたメタロセンを含み;式中、R
5は、任意に置換されたC
2−12アルキレン、任意に置換されたC
2−12アルケニレン、任意に置換されたC
6−24アリレン、任意に置換されたC
1−12ヘテロアルキレン、又は任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリレンを含む。本実施形態のある態様において、少なくとも1つの有機アルコール部分を有する有機基質は、任意に置換されたカテコール部分を含むか、又は当該部分からなり、又は式(IV)を有する:
【化7】
式中、nは0〜6であり、好ましくは0又は1であり;
R
M及びR
Nは独立してH又はメチルであり、
R
D、R
E、R
F、及びR
Gは独立してH、C
1−6アルキル、C
1−6アルケニル、,任意に置換されたフェニル、任意に置換されたベンジル、又は任意に置換された5環員又は6環員のヘテロアリールであり、任意の置換基は、C
1−3アルキル、C
1−3アルコキシ、又はハロである。この属の中で、有機基質は、置換1,2−ジオール、1,3−ジオール、1,4−ジオールを含み、これらは1つ以上のアルキル及び/又は任意に置換されたアリール又はヘテロアリール置換基で置換されている。この属の中で、有機基質は、置換1,2−ジオール、1,3−ジオール、1,4−ジオールを含み、これらは1つ以上のアルキル及び/又は任意に置換されたアリール又はヘテロアリール置換基で置換されている。本実施形態の特定の態様において、有機基質は、2016年7月26日に出願された米国特許第15/219,710号明細書(水酸化物を有するアルコール)(特許文献6)に記載されたような末端オレフィンを有する任意のものであり、全ての目的のため又は少なくともその教示の内容を参照により本明細書に援用する。
【0124】
以下の実施例は、本開示内に記載した概念のいくつかを例示するために提供する。各実施例は、組成物、調製方法及び使用の特定の個々の実施形態を提供すると考えられるが、実施例のいずれも、本明細書に記載のより一般的な実施形態を限定するとみなされるべきではない。
【0125】
以下の各実施例では、使用する数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を保証する努力がなされたが、実験誤差及び偏差はある程度考慮すべきである。特に指示のない限り、温度は℃(摂氏)であり、圧力は大気圧又はそれに近い圧力である。
【0126】
(実施例1)一般情報
【0127】
別段の記載がない限り、反応は、窒素充填グローブボックス内で、又はアルゴン又は窒素雰囲気下において、乾燥脱酸素化溶媒を使用して火炎乾燥したガラス器具内で行った。アルゴン下で活性アルミナカラムを通過させることにより溶媒を乾燥させた。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、GC、又はアジレント社1290超高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(Agilent1290UHPLC-MS)によってモニタした。E.Merckシリカゲル60F254プレコートガラスプレート(0.25mm)を用いてTLCを行い、UV蛍光消光、p−アニスアルデヒド、又はKMnO
4染色により可視化した。SilicycleSiliaFlash(登録商標)P60アカデミックシリカゲル(粒度40〜63nm)をフラッシュクロマトグラフィーに使用した。
1H−NMRスペクトルをVarian社製Inova500MHz又はBruker社製400MHz分光計で記録し、残留CHCl
3(δ7.26ppm)、C
6H
6(δ7.16ppm)、又はTHF(δ3.58、1.72ppm)に対して記録した。
13C−NMRスペクトルを、Varian社製Inova500MHz分光計(125MHz)又はBruker社製400MHz分光計(100MHz)で記録し、CHCl
3(δ77.16ppm)に対して記録した。
13C−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)の観点から記録された。IRスペクトルは、パーキンエルマー社製SpectrumBXII分光計又はNicolet6700FTIR分光計の使用により、NaClプレート上に堆積された薄膜を使用して取得し、吸収の頻度(cm
−1)で記録した。GC−FID分析は、HP−1100%ジメチルポリシロキサンキャピラリーカラム(アジレント社)を備えたアジレント社6850Nガスクロマトグラフで取得した。GC−MS分析は、HP−5(5%−フェニル)−メチルポリシロキサンキャピラリーカラム(アジレント社)を備えたアジレント社6850ガスクロマトグラフで取得した。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、エレクトロスプレーイオン化(ESI+)、大気圧化学イオン化(APCI+)、又は混合イオン化モード(MM:ESI−APCI+)においてアジレント社G1978Aマルチモードソースを用いたアジレント社6200シリーズTOFから取得したか、又はカルテック質量分析研究所から取得した。FT−ATR−IR測定は、iD5 ATRアクセサリを備えたThermo Scientific Nicolet iS 5 FT-IR分光計で行った。ReactIR測定は、Sentinel高圧プローブ及びSIComp窓を備えたK4導管を用いてMettler-Toledo ReactIR ic10上で実施した。電子常磁性共鳴(EPR)スペクトルは、XバンドのBruker社製EMX分光計で取得した。Omyical SuperCRC又はInsight CPR 220反応熱量計を使用して熱流量をモニタした。
【0128】
トリエチルシラン(99%、Sure/Seal(商標))及びKOt−Bu(昇華グレード、99.99%微量金属ベース)をアルドリッチ社から購入し、そのまま使用した。KOHを粉砕し、使用前に、デシケーター中のP
2O
5上で24時間真空下において乾燥させた。他の試薬は、シグマ−アルドリッチ社、アクロスオーガニック社、Strem社、又はアルファAesar社から購入し、特に明記しない限り、受領したままの状態で使用した。
【0129】
(実施例2)代表的条件
【0130】
(実施例2.1)反応条件
【0131】
一般的な反応手順:窒素充填グローブボックス内で、触媒(KOtBu、0.5当量)をオーブン乾燥した2mLガラスバイアル中に測り入れた。次いで、オレフィン基質(1.0当量)をバイアルに添加した。そして、溶媒(DME(ジメトキシエタン);DME中のオレフィン濃度を1Mとするもの)及びシラン(3.0当量)を添加し、テフロン(登録商標)攪拌棒をバイアルに入れ、反応物を密閉し、45℃〜150℃の範囲内の温度で、24時間〜96時間撹拌する。ジエチルエーテルで希釈することによりこの反応を停止した;溶液をシリカの短プラグを介して濾過し、次いで減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製により、以下に詳述する純粋な化合物を得た。収率は、内部標準を使用して粗混合物の
1H−NMR又はGC−FID分析により求めた。シス/トランス比は、NMR又はGC−FIDにより求めた。
【0132】
(実施例2.2)塩基触媒のスクリーニングのための一般的な方法及び動力学的プロファイル:
【0133】
窒素充填グローブボックス内で、1−メチルインドール(0.5ミリモル、1当量)、トリエチルシラン(1.5ミリモル、3当量)、所定の(indicated)塩基(0.1ミリモル、20モル%)、及びTHF(5mL)を、磁気攪拌棒を備えた1ドラムバイアルに添加した。指示された時間に、ガラス毛細管を用いてアリコートを除去し、Et
2Oで希釈し、GC−FIDを用いて分析して、位置選択性及び収率を求めた。GC変換は、生成物(C2−及びC3−シリル化)を生成物及び出発物質で除したものとして記録される。表1に結果を示す。
【表1】
【0134】
(実施例2.3)インサイチュ(in situ)
1H−NMRによる時間経過反応モニタリングの手順
【0135】
窒素充填グローブボックス内で、KOt−Bu(60.5mg、0.539mmol)及び1,2,5−トリメトキシベンゼン(使用する場合、45.4mg、0.267mmol)を含むストック溶液をTHF−D8(2.7ml)中で調製する。次いで、グローブボックス中で、J−Young気密NMR管に、1−メチルインドール(32.8mg、0.25mmol、1当量)、Et
3SiH(0.75mmol、3当量)、及び0.25mLのストック溶液を装填する。チューブは、対応するテフロン(登録商標)プラグでしっかりと蓋をし、グローブボックスから取り出して、NMRの内腔に載置し、45℃に加熱する。
1H−NMRスペクトルは、「アレイ」モードで取得し、実験をする間スペクトルを約3分ごとに取得した。データはMestReNovaを用いて処理し、ピーク積分を1,2,5−トリメトキシベンゼン(使用した場合)に正規化した。
【0136】
1−メチルインドール[1]を0.25〜0.76ミリモル(0.5〜1.5当量)の範囲で変化させながら、1H−NMR(内部標準を用いる)による時間経過反応モニタリングの手順に従って検討を行った。誘導期間ののち生成物形成のバースト段階となった。しかしながら、残念なことにこの誘導期間のせいでこの段階の初期速度を確定することは困難であったが、全ての試験は、バースト期間中、同様の速度を有するようであった。バースト段階の長さ(すなわち、生成物形成)は、基質の性質に関係するようである。興味深いことに、バースト段階の後、全てのグラフ(プロット)の傾きは一致しているようであり、反応は基質の性質に依存しえないことを示している。
図2〜
図4を参照のこと。この研究は、シリル化反応が以下の3つのレジーム中、すなわち誘導中、バースト中、及び持続反応期間中に起こったことを実証するのに役立った。
【0137】
(実施例2.4)反応アリコットのGC分析による時間経過反応モニタリングの手順
【0138】
窒素充填グローブボックス内で、磁気攪拌棒を備えた1ドラムバイアルに、所定の塩基(0.1mmol、20mol%、Strem社から未知の水和物として供給され、受領したままの状態で使用した)、1−メチルインドール(65.6mg、0.5mmol、1当量)、トリメチルシラン(174.4mg、1.5mmol、3当量)を装填し、その後PTFEライナー付きのスクリューキャップで密封し、撹拌しながら45℃に加熱した。所定の時点で、清潔で乾燥したガラス細管を用いてアリコートを取り出し、Et
2Oで希釈し、GC−FIDで分析した。転化率は、C2−及びC3−シリル化生成物の両方の百分率を生成物及び出発物質で除したものとして記録される。各時点で、位置選択性(すなわち、C2〜C3シリル化比、表2)も得ることができた。
【表2-1】
【表2-2】
【0139】
(実施例2.5)ReactORを用いた反応時間経過の手順
【0140】
ReactIR Sentinel高圧プローブと共に使用するためのガラス反応容器及び磁気攪拌棒をオーブン乾燥し、PTFEアダプターを取り付け、窒素充填グローブボックスに入れ、又はアルゴン流下で冷却し、全ての付加反応(addition)に対して標準的な空気排除技術(air-free technique)を用いた。KOt−Bu(0.8mmol、20mol%)、1−メチルインドール(1.05g、8mmol、1当量)、トリエチルシラン(13.89mL、24mmol、3当量)、添加剤、及びTHF(8mL、1M)をReactIRプローブに適合させた反応容器に添加し、アルゴン下で攪拌しながら45℃に加熱した。スペクトルを反応の過程にわたって記録し、データはReactIRソフトウェアを用いて分析した。
図5及び
図6を参照のこと。
【0141】
超配位ケイ酸塩に起因する新たなピークが見えるまでインドール1は添加せずに、類似の実験を行った。その後、シリンジを介してインドール1を添加し、反応は誘導期間なしで直ちに進行する。
【0142】
(実施例2.6)ATR−FTIR測定の一般的な手順
【0143】
窒素充填グローブボックス内で、磁気攪拌棒を備えた1ドラムのシンチレーションバイアルに、塩基(0.1ミリモル)、Et
3SiH(80μL、0.5ミリモル、5当量)、及びTHF(0.5mL)を添加した。バイアルを密閉し、混合物を表3に示す時間45℃で撹拌した。バイアルを、ATR−FTIRを有する別の窒素充填グローブボックスに移し、ATR結晶上にこの混合物を数滴滴下した。5分間待ってすべての揮発性物質(すなわち、THF及びシラン)を蒸発させた後、残留物のIRスペクトルを記録した。塩基によるSi−H結合の新たな伸長は観察されず、これらは必要な超配位錯体を形成しなかったため、シリル化反応(例えば、NaOt−Bu、Mg(Ot−Bu)
2、又はLiOt−Bu)に触媒作用を及ぼさなかった。表3及び
図7A〜7O参照のこと。
【表3】
【0144】
(実施例2.7)その他の具体的な代表な実施例
【0145】
トリメチルシラン:関連する実験では、ガス状ヒドロシランの使用を検討することを目的とし、トリメチルシラン(Me
3SiH、15mmol)、KO−tBu(0.076mmol)、及びTHF(0.38mL)をシュレンクフラスコに添加し、テフロンストッパーで密封し、室温(〜23℃)で約3週間静置した。N
2充填グローブボックス中に、1−メチルインドール(0.38mmol)を添加し、反応物を45℃に48時間加熱した。
1H−NMRは、1−メチル−2−トリメチルシリルインドールへの転化率が約73%であることを示した。
【0146】
ヘキサメチルジシラン:別の関連実験は、オルガノジシランの使用を検討することを目的とし、窒素充填グローブボックス内の密閉バイアル内で、ヘキサメチルジシラン(2mmol)、KO−tBu(0.2mmol)、及びTHF(1mL)を混合し、45℃で24時間加熱した。次いで、溶液を放冷し、この混合物241mgを1−メチルインドール(0.2mmol)を含有するバイアルに加えた。このバイアルを密封し45℃で24時間加熱した。
1H−NMRは、1−メチル−2−トリメチルシリルインドールへの転化率が約76%であることを示した。
【0147】
ベンジルアルコール:N
2充填グローブボックス内で、ベンジルアルコール(0.2mmol、21.6mg、MgSO
4及び3ÅMSで乾燥)をバイアルに添加した。あらかじめ混合したシリル化溶液(251mg、0.04mmolのKOtBu、0.6mmolのEt
3SiH及び0.2mLのTHFを含有)を加え、溶液を45℃に加熱した。48時間後、反応物を熱から外し、白色の沈殿物が観察された。沈殿物が溶液になったときに混合物をEt
2Oでクエンチし、バイアルに移し、真空中で濃縮した。
1H−NMRスペクトルは、生成物が(残留シラン及び全体で0.1未満の少量の未同定生成物とともに)ベンジルオキシトリエチルシリルエーテルへ完全に転化したことを示した。
【0148】
N−ベンゾイルインドールの脱保護:グローブボックス内で、1mLのTHFあたり3mmolのトリエチルシラン及び0.2mmolのKOtBuを含有する溶液を予め調製した。この溶液を45℃に24時間加熱した後、放冷し、グローブボックスに保存した。0.2ミリモルのN−ベンゾイルインドールに、予め混合した251mgの溶液(0.6ミリモルのシラン、0.04ミリモルのKOtBu及び0.2mLのTHFを含む)を添加した。バイアルを密封し、45℃で24時間加熱した。Et
2Oで希釈した後、粗NMRを採取したが、出発物質:脱保護されたインドール(すなわち、遊離インドール)の比は1:1であることを示しているようであった。
【0149】
(実施例3)検討
【0150】
(実施例3.1)触媒アイデンティティの効果
バルキーな塩基性アニオンとカリウムカチオンとの組合せは、1−メチルインドール及び他のヘテロ芳香族基質のC−Hシリル化に必須であると従来から報告されている。種々のアルカリ、アルカリ土類金属、及び他の金属由来塩基の触媒能力の詳細な研究が行われている。表1に示すように、K
+、Rb
+、及びCs
+等の半径の大きいカチオン(すなわち半径≧K+)を有するアルカリ金属のアルコキシド及び水酸化物は、中〜良好な収率でシリル化生成物を提供することができる(表1、項目1〜3、6、9、及び10)。
【0151】
調査した全ての触媒の中で、KOt−Buは理想的な触媒であることが証明され、最高の収率が得られた。しかしながら、KOAc又はKHを触媒として使用した場合、生成物は検出されなかった(項目5及び7)。おそらく驚くべきことに、グラファイト(KC
8)上のカリウムは、良好な収率で所望の生成物を得ることができた(項目8)。小カチオン(例えば、LiOt−Bu及びNaOt−Bu)を有するアルカリ金属塩基は、反応性を全く有さず、反応時間を延長しても生成物は観察されなかった(項目11及び12)。アルカリ土類金属又はアルミニウムのアルコキシドもまた触媒として検討したが、何らの生成物も得られなかった(項目13〜16)。
【0152】
KOt−Bu触媒を用いたシリル化反応の動態挙動を、インサイチュ(in situ)
1H−NMR分光法を用いて検討した。従来は報告されていないが、
図1及び
図2に示すように、シリル化反応は、誘導期間(
図1)、生成物の急速な形成を伴う活性期間(「バースト」)、及び反応速度が有意に低下した最終期間の3段階で起こることがわかった。これら3つの段階の時間枠は、反応条件及び反応成分(ヒドロシラン、塩基、添加剤、酸素、水分及び溶媒を含む)によって変化したが、誘導期間は、これらの成分を同時に又はほぼ同時に添加した場合に常に観察された。
【0153】
次に、調査範囲を拡大して、表1(
図4)に提示した各活性触媒を含めた。誘導期間の長さは、金属イオンと対イオンの両方の性質に依存することが分かった。アニオンの場合、誘導期間はKC
8(最短)<KOEt<KOt−Bu<KOH(最長)の順に増加した。カチオンの半径が減少すると、CsOH(最短)<RbOH<KOH(最長)で、誘導期間の増加が観察された。触媒負荷、溶媒、及び反応温度に基づいて誘導期間が変化することは注目に値する。添加物、酸素、及び水分もまた、誘導期間に大きな影響を及ぼし得、一般に、その期間を延長し得る。それにもかかわらず、誘導期間は、異なる時間に設定した同一の反応に対して良好な再現性を示した。KOt−Buによる誘導期間は試験した全ての触媒の中で最短ではないが(
図4参照)、この触媒は開始後の回転率の頻度及び生成物の収率が最も高い。
【0154】
(実施例3.2)FTIRの研究による配位シラン種の検討
【0155】
ReactIRを用いてシリル化反応をモニタすることにより、新たなケイ酸塩種であって、超配位の可能性のあるものが存在する証拠が見つかった。
図5及び
図6のインサイチュ(in situ)IRスペクトルに示すように、Et
3SiH(2100cm
−1)におけるSi−H伸縮帯域に隣接する2056cm
−1において新たなピークを視認することができる。この低振動ピーク(lower frequency peak)は、このような超配位錯体において所期されるように、5配位ケイ酸塩中の伸長し弱化したSi−H軸方向結合と一致する。N、N−ジメチルアミノプロピルシラン[H
3Si(CH
2)
3NMe
2]における2151〜2107cm
−1のトランスSi−H伸縮についても同様のシフトが従前報告されている。この場合、観察された赤方偏移は、X線分析によって確認されたような超配位錯体を形成するN−Si相互作用が原因で発生するものと合意的に解釈した。この場合、新たに形成されたIRピーク(
図5)と生成物形成の開始(すなわち誘導期間終了)との間の相関が観察された。新たなIRピークが定常状態に達すると、1−メチルインドール1が消費され、また、シリル化生成物の生成が即座に生じた。さらに、反応の間中、新しいIRピークが視認できた。これは、Et
3SiHとKOt−BuをTHF中において45℃で2時間予備混合した後に1−メチルインドール1を添加すると誘導期間がなくなったという観察と一致する。これはまた、高配位ケイ酸塩の形成が観察された誘導期間の原因であるという事実と一致する。
【0156】
揮発性物質(すなわち、THF、Et
3SiH)を除去した後、窒素充填グローブボックス内でATR−FTIRを利用して、表1に列挙したEt
3SiH及び金属アルコキシドの混合物を用いてさらなる研究を行った。
図7の(A)に示すように、有能なシリル化触媒であったアルコキシド塩基はいずれも、低エネルギーのSi−H特徴(2016−2051cm
−1、高配位シリコン種のSi−H結合に相当)を現れた。これとは全く対照的に、非反応性触媒[即ち、LiOt−Bu、NaOt−Bu(
図7(M)及び7(N))、アルカリ土類金属又はアルミニウムアルコキシド]ではそのような種は検出されず、このことは、この新しい任意溶媒和超配位錯体がシリル化反応にとって重要であるらしいことを実証している。KOt−Bu及びKOEtから形成される超配位ケイ酸塩については、Si−H吸収の頻度の減少は誘導期間の短縮と相関している(
図7(D)及び
図7(E))。最後に、KOH、RbOH、及びCsOHでの誘導期間には大きなばらつきがあるが、それらの塩基から生じる超配位ケイ酸塩のSi−H振動に差異は観察されない。水酸化物はシラノレートに変換され、続いてケイ酸塩に変換されて、活性触媒として機能する。
【0157】
当業者には理解されるように、これらの教示に照らして本発明の多数の変更及び変形が可能であり、本明細書はその全てを意図している。本明細書中に引用される全ての参考文献は、少なくとも、それらの記載の文脈におけるその教示のために、参照により組み込まれる。