【実施例1】
【0028】
図1は本発明の脱硫システムの一実施例の概略説明図である。
図1において、本発明の脱硫システム1は、吸収塔2を有する。吸収塔2は、内部が上下方向に延びる円筒状に形成されている。吸収塔2の下部には、吸収スラリ(吸収液)が収容される吸収スラリタンク3が配置されている。
吸収塔2の上部には、吸収スラリをスプレするノズル4が複数配置されている。ノズル4は、水平方向に間隔をあけて複数、また図示していないが複数段配置されている。ノズル4には、循環ポンプ7により、吸収スラリタンク3から吸収スラリが汲み上げられて供給される。なお、ノズル4の数や位置、数等の構成に関しては、従来公知の種々の構成を採用可能であり、例えば、特許第5725725号公報(特許文献3)等に記載されているため、図示や詳細な説明は省略する。
【0029】
図2は
図1の矢印II方向から見た図(正面図)である。
図3は、
図2のIII−III線断面図である。
図4は実施例1の脱硫システムにおけるガスの流れの説明図である。
図1〜
図3において、吸収スラリタンク3の上方且つノズル4の下方には、排ガス(被処理ガス)を吸収塔2に導入する入口ダクト6が接続されている。実施例1の入口ダクト6は、水平方向の幅6aが、吸収塔2の内径2aと同等の長さに形成されている。したがって、水平方向の幅6aが吸収塔2の内径2aよりも小さい場合(
図9〜
図12の場合)に比べて、入口ダクト6の高さ6bは短く設定されている。
【0030】
実施例1の脱硫システム1では、入口ダクト6と吸収塔2との接続部の近傍には、流れ制御部の一例としての整流板11が幅方向に間隔をあけて一対配置されている。すなわち、整流板11は、ガスの流れ方向に対して、入口ダクト6の下流端部に配置されている。
図4に示すように、実施例1の整流板11は、入口ダクト6から吸収塔2に流入するガスを、水平方向の内側(吸収塔2の中心部2c側)に向けて偏らせるように形状および位置が設定されている。したがって、一対の整流板11の内端11aどうしの水平方向の距離11bは、入口ダクト6の幅6aよりも短く設定されている。
【0031】
また、実施例1では、整流板11の上流端11cは、吸収塔2の上流端2bよりも下流側に配置されている。したがって、実施例1のガスの流路は、整流部材11により、吸収塔2の入口(上流端2b)よりも内側で絞られている。
【0032】
前記構成を備えた実施例1の脱硫システム1では、排ガスが吸収塔2に流入する際に、排ガスが吸収塔2の水平方向外側から中心部2cに向けて偏向される。よって、吸収塔2においてスプレされる吸収スラリの密度が低い領域(
図4、
図17、
図18参照)に排ガスが流れにくくなる。したがって、入口ダクト6の幅6aを広げても、排ガスが、脱硫が不十分な状態で吸収塔2を通過することが低減され、脱硫性能が確保される。そして、入口ダクト6の幅6aを広げることで、入口ダクト6の高さ6bを短くすることができ、吸収塔2の全体の高さや、循環ポンプ7の揚程も短くすることができる。したがって、脱硫システム1の小型化や吸収塔2のコスト削減が可能であるとともに、循環ポンプ7の動力を低減することも可能である。特に、入口ダクト6の幅6aを広げるほど高さ6bを下げることができるため、入口ダクト6の幅6aは、吸収塔2の径2aと同等以上とすることが好ましい。
【0033】
図5は実施例1の脱硫システムにおいて整流板による絞り比と流速差や圧力損失との関係を示すグラフである。
図5において、整流板11で絞る前の幅(6a)と、絞った後の幅(11b)との比率(11b/6a)(以下、絞り比)と圧力損失、吸収塔2内の側壁ガス流速と平均流速との差の関係を確認した。絞り比が小さくなると(整流板11の内端11aの幅11bが短くなると)、側壁ガス流速と平均流速との差がほとんど変わらないのに対して、圧力損失が大きくなっている。したがって、
図5のグラフでは、絞り比が0.7を下回ると、それ以上幅11bを短くしても、圧力損失が増えるだけで、脱硫性能としてはほとんど変わらなくなる。
【0034】
一方、
図5において、絞り比が0.95を上回ると、側壁ガス流速と平均流速との差が急激に大きくなる。したがって、吸収スラリの密度が低い領域にガスが流れ込みやすくなって、排ガス中のSO
2吸収に偏りが生じる恐れがある。
したがって、本構成を採用する際には、絞り比を0.95以下とすることが好ましく、より好適には絞り比を0.7〜0.95の範囲とすることが好ましい。
【0035】
さらに、入口ダクト6の幅6aを整流板11で急角度で縮小させると、内端11aよりも下流側で渦が発生しやすくなる。渦が発生すると、圧力損失が増加したり、吸収スラリが付着する等の問題が発生する。したがって、幅6aを縮小させる整流板11の角度θは、渦が発生しにくい低角度とすることが望ましい。特に、入口ダクト6の上流側の壁面に対する整流板11の上流部の内面との傾斜角度θを、45度以下とすることが好ましい。
また、実施例1のガスの流路は、整流板11により、吸収塔2の入口(上流端2b)よりも内側で絞られているので、整流板11でガスが水平方向外側から中心部2cに向けて偏る(絞られる)際には、ガスの一部が吸収塔2に沿って上下方向に移動可能な状態となっている。したがって、整流板11でガス流路が絞られる際に、ガスの一部が上下方向に抜けることで、ガスの流速が過剰に高速になることが抑制される。よって、整流板11でガスの流れが絞られても、ガスの流速を一定範囲(10〜15m/s程度)に保つことが可能である。
【0036】
図6は本発明の変更例1の説明図である。
図6において、実施例1の脱硫システム1において、整流板11に変えて、入口ダクト6の下流端部6d(流れ制御部の一例)の形状を、ガス流路が縮小するように構成することも可能である。
図6のように構成することで、部品点数を削減することが可能であるが、入口ダクト6の構造が複雑化し、強度を確保する必要がある点に気を付ける必要がある。
図6に示す変更例1の構成でも、実施例1と同様に、脱硫性能を確保しつつコストや動力を削減することができる。
【0037】
図7は本発明の変更例2の説明図である。
図7において、実施例1の脱硫システム1において、整流板11を設置することで、入口ダクト6には、排ガスやスプレされる吸収スラリに接触しない領域6eが発生する。従来の入口ダクト6では、排ガスや吸収スラリに接触するため、耐酸性、耐腐食性、耐摩耗性の材料を使用する必要があったが、整流板11が設置される領域6cについては、材料を廉価な材料を使用することも可能である。
このように構成することで、脱硫システム1のコストをさらに削減することが可能である。
【0038】
図8は本発明の変更例3の説明図である。
図8において、入口ダクト6の水平方向の幅6aは、吸収塔の径2aより広く設定している。そして、入口ダクト6の下流端部では入口ダクト6の幅が、吸収塔2の径2aに縮小して、入口ダクト6が吸収塔2に接続されるように構成されている。この場合でも、吸収塔2との接続部でガス流れを吸収塔2の水平方向外側から中心部2cに向かうように整流板11を介して接続することで、吸収塔2の脱硫性能を確保することができる。
【0039】
(その他の変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、例示した具体的な数値は、設計や仕様等に応じて適宜変更可能である。
(H02)前記実施例において、流れ制御部の形状は、略三角形状(楔状)の整流板11や下流端部6dを例示したが、これに限定されない。整流板11等の形状は、曲線あるいは台形状等、制御したいガスの流れの向きや方向等に応じて、任意の形状に変更可能である。また、整流板11を幅方向の両側に一対設ける構成を例示したが、これに限定されず、吸収塔2の水平方向外側から中心部2cに向けて流れを偏らせることが可能であれば、1つまたは3つ以上設置する構成とすることも可能である。
【0040】
(H03)前記実施例において、整流板11の上流端11cの位置は、吸収塔2の上流端2bよりも下流側に配置することが望ましいがこれに限定されない。例えば、内端11aが上流端2bよりも下流側であれば、整流板11の上流端11cは、上流端2bより、同一または上流側に配置することも可能である。
(H04)前記実施例において、整流板11の内端11aの位置は、吸収塔の最外周位置(
図7の11d)より上流側に配置することが望ましいが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように入口ダクトの幅6aを吸収塔の内径2aよりも大きくする場合は、整流板11の内端11aの位置を吸収塔の最外周位置に配置することも可能である。
(H05)前記実施例において、整流板11の材質は、耐酸性、耐腐食性、耐摩耗性に優れたハステロイ鋼等が望ましいが、上記の性能に準ずる他の合金鋼やライニングおよび塗布材料を使用することも可能である。