特許第6938757号(P6938757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938757光子発射検出装置およびそれを有するホウ素中性子捕捉治療システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938757
(24)【登録日】2021年9月3日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】光子発射検出装置およびそれを有するホウ素中性子捕捉治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   A61N5/10 Q
   A61N5/10 H
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-500940(P2020-500940)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公表番号】特表2020-512167(P2020-512167A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】CN2017092733
(87)【国際公開番号】WO2018205403
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2019年9月25日
(31)【優先権主張番号】201710332087.6
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201720523721.X
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515153495
【氏名又は名称】南京中硼▲聯▼康医▲療▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Medtech Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲蕭▼明城
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/119428(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01860465(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0108896(US,A1)
【文献】 特開2016−214760(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/054557(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
G01T 1/29
G01T 7/00 − G01T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部および治療ベッドを含み、
前記検出部は、前記治療ベッドの両側に位置する第一検出部と第二検出部を含み、
前記治療ベッドの両側に位置する第一支持フレームと第二支持フレームをさらに含み、前記第一支持フレームは、地面に移動可能な第一ベース、前記第一ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮する第一伸縮アームおよび前記第一伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記第一検出部に接続される第一延長アームを含み、前記第一検出部が前記第一延長アームに設けられ、前記第二支持フレームは、地面に移動可能な第二ベース、前記第二ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮可能な第二伸縮アームおよび前記第二伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記検出部に接続される第二延長アームを含み、前記第二検出部が前記第二延長アームに設けられ、前記第一支持フレームと前記第二支持フレームは、前記第一ベースと前記第二ベースの運動に伴って治療ベッドから離間またはそれに接近し
記第一検出部と前記第二検出部は、相互に離間または接近することができることにより検出部が前記治療ベッドを取り巻く環状を形成し、
前記第一検出部は、前記第一支持フレームの伸縮運動によって移動可能であり、前記第二検出部は、前記第二支持フレームの伸縮運動によって移動可能であり、
前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドを取り巻く環状の半径が減少するように、前記第一支持フレームおよび前記第二支持フレームを相互に接近させ、
前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドの外周を取り巻く最大半径の環状を形成するまで、前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドを取り巻く環状の半径が増加するように、前記第一支持フレームと前記第二支持フレームを相互に離間させる、ことを特徴とする、
光子発射検出装置。
【請求項2】
前記第一検出部と第二検出部内にいずれも治療ベッドに対して回転可能な検知装置が取り付けられ、前記検出部は、検知装置によって硼素中性子捕捉反応から生成されたプロンプトガンマ線を検出する、ことを特徴とする、
請求項1に記載の光子発射検出装置。
【請求項3】
前記第一伸縮アームが第二伸縮アームの伸縮距離と同じで、前記第一検出部と第二検出部が相互に接触するまで前記第一ベースと第二ベースが相互に接近する時、前記第一検出部と前記第二検出部は、前記治療ベッドの外周を取り巻く最大半径の環状を形成する;前記第一伸縮アームが第二伸縮アームの伸縮距離と異なり、前記第一ベースと第二ベースが相互に接近する時、前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドの外周を取り巻く環状の半径が減少する、ことを特徴とする、
請求項1に記載の光子発射検出装置。
【請求項4】
前記第一検出部および/または第二検出部は、治療ベッドに対して回転することができる、ことを特徴とする、
請求項1に記載の光子発射検出装置。
【請求項5】
前記第一伸縮アームと第一延長アームとの間に回転部材が設けられ、第二伸縮アームと第二延長アーム間との間に回転部材が設けられ、第一延長アームは、回転部材回りに回転することができて第一検出部を治療ベッドに対して回転させ、第二延長アームは、回転部材回りに回転することができて第二検出部を治療ベッドに対して回転させる、ことを特徴とする、
請求項4に記載の光子発射検出装置。
【請求項6】
ウ素中性子捕捉治療システムは、中性子捕捉治療装置、光子発射検出装置および治療ベッドを含み、
前記中性子捕捉治療装置は、荷電粒子ビームを生成するための加速器、前記荷電粒子ビームを経て照射した後に中性子ビームを生成する中性子生成部、前記中性子ビームを整形するビーム整形体およびコリメータを含み、前記ビーム整形体は、減速体および前記減速体の外周に被覆した反射体を含み、前記減速体は、前記中性子生成部から生成された中性子を予め設けられたエネルギースペクトルに減速し、前記反射体は、逸脱した中性子を戻して予め設けられたエネルギースペクトル内の中性子の強度を向上させ、前記コリメータは、前記中性子生成部から生成された中性子を集中し、前記中性子は、硼素(10B)薬物を照射した後にガンマ線を生成し、
前記光子発射検出装置は、前記治療ベッドの外周を取り巻き、かつ、中性子が硼素(10B)薬物を照射した後に生成したガンマ線を検出する検出部を含み、
前記光子発射検出装置は、
前記検出部は、前記治療ベッドの両側に位置する第一検出部と第二検出部を含み、
前記治療ベッドの両側に位置する第一支持フレームと第二支持フレームをさらに含み、前記第一支持フレームは、地面に移動可能な第一ベース、前記第一ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮する第一伸縮アームおよび前記第一伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記第一検出部に接続される第一延長アームを含み、前記第一検出部が前記第一延長アームに設けられ、前記第二支持フレームは、地面に移動可能な第二ベース、前記第二ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮可能な第二伸縮アームおよび前記第二伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記検出部に接続される第二延長アームを含み、前記第二検出部が前記第二延長アームに設けられ、前記第一支持フレームと前記第二支持フレームは、前記第一ベースと前記第二ベースの運動に伴って前記治療ベッドから離間またはそれに接近し
記第一検出部と前記第二検出部が相互に離間または接近することができることにより、検出部が前記治療ベッドを取り巻く環状を形成し、
前記第一検出部は、前記第一支持フレームの伸縮運動によって移動可能であり、前記第二検出部は、前記第二支持フレームの伸縮運動によって移動可能であり、
前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドを取り巻く環状の半径が減少するように、前記第一支持フレームおよび前記第二支持フレームを相互に接近させ、
前記第一検出部と前記第二検出部が前記治療ベッドの外周を取り巻く最大半径の環状を形成するまで、前記第一検出部と前記第二検出部が形成する前記環状の半径が増加するように、前記第一支持フレームと前記第二支持フレームを相互に離間させる、ことを特徴とする、
ホウ素中性子捕捉治療システム。
【請求項7】
前記第一検出部と第二検出部内にいずれも治療ベッドに対して回転可能な検知装置が取り付けられ、前記検出部は、検知装置によって前記ガンマ線に対する検出を実現する、ことを特徴とする、
請求項6に記載のホウ素中性子捕捉治療システム。
【請求項8】
前記第一検出部および/または第二検出部は、治療ベッドに対して回転可能であって、第一検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離を第二検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離に一致させる、ことを特徴とする、
請求項6に記載のホウ素中性子捕捉治療システム。
【請求項9】
前記光子発射検出装置に、検出部から検出されたガンマ線を収集する信号収集ユニット、収集された信号を利用して硼素濃度を計算する計算ユニットおよび中性子捕捉治療装置に接続され、かつ、計算された硼素(10B)濃度を中性子捕捉治療装置にリアルタイムにフィードバックするフィードバックユニットが接続され、前記中性子捕捉治療装置に、前記フィードバックユニットからフィードバックされた信号に基づいて中性子捕捉治療装置から生成された中性子ビームが腫瘤を照射する時間を修正することができる修正ユニットが接続される、ことを特徴とする、
請求項6に記載のホウ素中性子捕捉治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方、医療器械領域に関し、特に光子発射検出装置に関する;本発明の他方は、ホウ素中性子捕捉治療システムに関し、特に光子発射検出装置を有するホウ素中性子捕捉治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光子発射コンピュータ断層現像は今現在核医学において先進的な設備と現像方式である。光子発射コンピュータ断層現像は、単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography、SPECT、単一光子発射と略称し)とポジトロン断層法(Positron Emission Tomography、PET、陽電子発射と略称し)を含み、放射性物質(例えば99mTc、123Iなど)を放射性薬物(該薬物は、蛋白質または有機分子である可能性がある)にマークし、マーク薬物は、一般的には、人体の異なる部位に選択的に吸収され、光子発射は、薬物に伴って人体内に注入する単一光子放射性核種(例えば99mTc、123Iなど)から発射されたγ線を利用してコンピュータの補助より映像を再建し、相応する部位断層映像を構成する。例えば、心筋に集まることができる薬物は、心臓の光子発射イメージングに用いられる。これらの一定量の放射性物質がマークされた薬物を吸収可能な器官は、画像にブライトブロックを現れることができ、器官に異常な吸収状況があれば器官の異常な明るさまたは暗さを引き起こす。
【0003】
現在ほとんど全ての光子発射検出装置は、いずれも回転γカメラ型に属し、即ち精密な環状スライドレールに固定された高品質のγカメラプローブを利用し、コンピュータの駆動によってそれを被検物体周りに回転させ、かつ、情報を収集させ、さらにコンピュータによりデータ処理を行い、被検物の空間イメージを再建し、かつ、体躯軸横断、矢状断、冠状断、または任意の断面方向に従って該物体の断層イメージを表示する。BNCT(ホウ素中性子捕捉治療)部屋内に一セットの光子発射検出装置を載置すると考慮すれば、患者に硼素(10B)薬物を服用させ、かつ、中性子捕捉治療装置から生成された中性子ビームに硼素(10B)薬物を照射させ、γ線を生成させ、さらに光子発射検出装置を利用して生成されたγ線を検出し、中性子放射線環境において、可動パーツを少なくする必要があり、かつ、急速に検知することが要求され、従来技術中のプローブの回転は、プローブを回転するために多くの可動付属品を必要とし、かつ、検知速度が遅く、この問題を克服するために、市場に往々にして全環式光子発射検出装置を採用することによって、検出装置全体を回転することによって全てのプローブを回転することを避けて可動付属品を減少するが、このような全環式光子発射検出装置には、複数の問題が存在し、例えば、全環式光子発射検出装置は、固定体位置決め装置の影響を受けやすく、検知半径が固定され、患者の実際状況に基づいて調整することができず、一層正確な位置決めを取得することができず、それによって一層正確な情報を取得することができない。
【0004】
このため従来技術中の光子発射検出装置を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一方は、光子発射検出装置を提供し、前記光子発射検出装置は、検出部および治療ベッドを含み、前記検出部は、前記治療ベッドの両側に位置する第一検出部と第二検出部を含み、前記第一検出部と第二検出部が相互に離間または接近することができることにより、検出部が半径の増加または減少可能な環状を形成し、前記環状は、前記治療ベッドを取り巻く。被検物の実際状況(例えば異なる位置およびサイズ)に基づいて治療ベッド外周を取り巻く環状の大きさを調整することができ、光子発射検出装置の検出精度を向上させる。
【0006】
さらに、前記第一検出部と第二検出部内にいずれも治療ベッドに対して回転可能な検知装置が取り付けられ、前記検出部は、検知装置によって硼素中性子捕捉反応から生成されたプロンプトガンマ線を検出する。前記第一検出部および/または第二検出部内の検知装置が治療ベッドに対する最大回転角度は、好ましくは、180度に設けられ、さらに他の角度に設けられてもよく、例えば45度、90度、135度である。当然ながら、前記第一検出部および/または第二検出部が治療ベッドに対して移動可能で、かつ、治療ベッドに対して回転可能な多種類の自由度に基づく。このため、ある状況の下で、該最大回転角度は、180度を超えるように設けられてもよい。
【0007】
さらに、前記光子発射検出装置に、検出部から検出されたガンマ線を収集する信号収集ユニット、収集された信号を利用して硼素(10B)濃度を計算する計算ユニットおよび中性子捕捉治療装置に接続され、かつ、計算された硼素(10B)濃度を中性子捕捉治療装置にリアルタイムにフィードバックするフィードバックユニットが接続され、前記中性子捕捉治療装置に、前記フィードバックユニットからフィードバックされた信号に基づいて中性子捕捉治療装置から生成された中性子ビームが腫瘤を照射する時間を修正することができる修正ユニットが接続される。
【0008】
さらに、好ましい実施形態として、前記光子発射検出装置は、さらに治療ベッドの両側に位置する第一支持フレームと第二支持フレームを含み、前記第一支持フレームは、地面に移動可能な第一ベース、第一ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮する第一伸縮アームおよび前記第一伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記第一検出部に接続される第一延長アームを含み、前記第一検出部が前記第一延長アームに設けられ、前記第二支持フレームは、地面に移動可能な第二ベース、前記第二ベースに接続され、かつ、上下方向に沿って上下伸縮可能な第二伸縮アームおよび前記第二伸縮アームの一端に位置し、かつ、前記検出部に接続される第二延長アームを含み、前記第二検出部が前記第二延長アームに設けられ、前記第一支持フレームと第二支持フレームは、第一ベースと第二ベースの運動に伴って治療ベッドから離間またはそれに接近する。
【0009】
さらに、前記第一伸縮アームが第二伸縮アームの伸縮距離と同じで、前記第一検出部と第二検出部が相互に接触するまで前記第一ベースと第二ベースが相互に接近する時、前記第一検出部と第二検出部は、前記治療ベッド外周を取り巻く最大半径の環状を形成する。
【0010】
さらに、前記第一伸縮アームが第二伸縮アームの伸縮距離と異なり、前記第一ベースと第二ベースが相互に接近する時、前記第一検出部と第二検出部は、前記治療ベッド外周を取り巻く半径が減少する環状を形成する。
【0011】
さらに、前記第一検出部と第二検出部は、それぞれ治療ベッドに対して回転することができ、第一検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離を第二検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離に一致させ、前記光子発射検出装置が実際の応用における正確さと精度を向上させる。
【0012】
さらに、前記第一伸縮アームと第一延長アームとの間に回転部材が設けられ、第二伸縮アームと第二延長アーム間との間に回転部材が設けられ、第一延長アームは、回転部材回りに回転することができて第一検出部を治療ベッドに対して回転させ、第二延長アームは、回転部材回りに回転することができて第二検出部を治療ベッドに対して回転させる。
【0013】
本発明の他方は、前記ホウ素中性子捕捉治療システムを提供し、前記ホウ素中性子捕捉治療システムは、中性子捕捉治療装置、光子発射検出装置および治療ベッドを含み、前記中性子捕捉治療装置は、荷電粒子ビームを生成するための加速器、荷電粒子ビームを経て照射した後に中性子ビームを生成する中性子生成部、中性子ビームを整形するビーム整形体およびコリメータを含み、前記ビーム整形体は、減速体および前記減速体の外周に被覆した反射体を含み、前記減速体は、中性子生成部から生成された中性子を予め設けられたエネルギースペクトルに減速し、前記反射体は、逸脱した中性子を戻して予め設けられたエネルギースペクトル内の中性子の強度を向上させ、前記コリメータは、中性生成部から生成された中性子を集中し、前記中性子は、硼素(10B)薬物を照射した後にガンマ線を生成し、前記光子発射検出装置は、前記治療ベッド外周を取り巻き、かつ、中性子が硼素(10B)薬物を照射した後に生成したガンマ線を検出する検出部を含み、前記検出部は、第一検出部と第二検出部を含み、前記第一検出部と第二検出部が相互に離間または接近することができることにより、検出部が半径の増加又は、減少可能な環状を形成し、前記環状は、前記治療ベッドを取り巻き、光子発射検出装置が硼素中性子捕捉システムにおける使用の柔軟性を効果的に向上させることができる。
【0014】
さらに、検出部が治療ベッド上の被照射体に対する全面的検出を実現するために、前記第一検出部と第二検出部内にいずれも治療ベッドに対して180度回転可能な検知装置が取り付けられ、前記検出部は、検知装置によって硼素中性子捕捉反応から生成されたプロンプトガンマ線を検出する。前記第一検出部および/または第二検出部内の検知装置が治療ベッドに対する最大回転角度は、好ましくは、180度に設けられ、さらに他の角度に設けられてもよく、例えば45度、90度、135度である。当然ながら、前記第一検出部および/または第二検出部が治療ベッドに対して移動可能で、かつ、治療ベッドに対して回転可能な多種類の自由度に基づく。このため、ある状況の下で、該最大回転角度は、180度を超えるように設けられてもよい。
【0015】
さらに、前記第一検出部と第二検出部は、それぞれ治療ベッドに対して回転することができ、第一検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離を第二検出部中の検知装置が治療ベッドに対する距離に一致させ、前記光子発射検出装置が実際の応用における正確さと精度を向上させる。
【0016】
光子発射検出装置がホウ素中性子捕捉治療システムにおける使用の柔軟性を向上させるために,前記ホウ素中性子捕捉治療システムは、さらに地面に設けられ、かつ、治療ベッドの両側に位置するレールを含むことができ、前記第一、第二ベースがそれぞれ前記レールに取り付けられ、かつ、前記レールに運動し、前記第一、第二ベースの運動は、前記第一、第二検出部を動かして相互に接近または離間させ、それにより第一検出部と第二検出部が前記治療ベッド外周を取り囲む半径を増大または減少させる。当然ながら、さらに前記治療ベッドを前記第一検出部と第二検出部に形成された環状中に前後移動可能な構造に設けてもよく前記検知装置と治療ベッドまたは中性子捕捉治療装置と治療ベッドとの相対位置を変更する。
【0017】
従来の技術と比較し、本願は、ホウ素中性子捕捉治療システムの光子発射検出装置に用いられてホウ素中性子捕捉治療中の実際状況に基づいて検出物が被照射物を取り巻く環状の半径を変更することができ、それにより前記光子発射検出装置の精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ホウ素中性子捕捉の反応の模式図である。
図210B(n、α)Li中性子捕捉核反応方程式である。
図3】本願の実施例中の中性子捕捉治療装置の模式図である。
図4】本願の実施例中の光子発射検出装置の検出部が治療ベッド外周を取り巻く最大半径時の状態模式図である。
図5】本願の実施例中の光子発射検出装置の検出部の別の角度の模式図である。
図6】本願の実施例中の光子発射検出装置の検出部が治療ベッド外周を取り巻く半径が減少した後の模式図である。
図7】本願の実施例中の光子発射検出装置と中性子捕捉治療装置のモジュール模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
中性子捕捉治療は効果的ながん治療の手段として、近年ではその適用が増加しており、そのうち、ホウ素中性子捕捉治療が最も一般的なものとなった。ホウ素中性子捕捉治療に用いられる中性子は原子炉または加速器で供給できる。ホウ素中性子捕捉治療(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)はホウ素( 10 B)含有薬物が熱中性子に対し大きい捕獲断面積を持つ特性を利用し、10 B(n,α) 7 Li中性子捕捉と核分裂反応により4Heと7Liという2種の重荷電粒子を生成する。図1は、それぞれホウ素中性子捕捉の反応概略図と10B(n,α) 7Li中性子捕捉の原子核反応式を示す。2種の重荷電粒子は平均エネルギーが2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer, LET)及び短い射程という特徴を持つ。α粒子の線エネルギー付与と射程はそれぞれ150 keV/μm、8μmであり、7Li重荷粒子の場合、それぞれ175 keV/μm、5μmである。2種の粒子の合計射程が細胞のサイズに近いので、生体への放射線損害を細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物を選択的に腫瘍細胞に集め、適切な中性子源と合わせることで、正常組織に大きな損害を与えないで腫瘍細胞を部分的に殺せる。
【0020】
本願は、ホウ素中性子捕捉治療システムに応用される光子発射検出装置を開示し、前記光子発射検出装置は、中性子捕捉治療装置から生成された中性子ビームと硼素(10B)薬物が反応した後に生成したガンマ線を検出するために用いられ、それによりガンマ線によって硼素(10B)濃度を計算する。
【0021】
以下に図面を結びつけ、ホウ素中性子捕捉治療システムに応用される光子発射検出装置を具体的には、説明する。
【0022】
図3に示すとおり、前記ホウ素中性子捕捉治療システムは、中性子捕捉治療装置100、光子発射検出装置200および治療ベッド300を含み、前記中性子捕捉治療装置100は、荷電粒子ビームを生成するための加速器101、荷電粒子ビームPを経て照射した後に中性子ビームNを生成する中性子生成部102、中性子ビームを整形するビーム整形体103およびコリメータ104を含み、前記ビーム整形体103は、減速体105および減速体104の外周に被覆した反射体106を含み、前記減速体105は、中性子生成部105から生成された中性子を予め設けられたエネルギースペクトルに減速し、前記反射体106は、逸脱した中性子を戻して予め設けられたエネルギースペクトル内の中性子の強度を向上させ、前記コリメータ104は、中性生成部102から生成された中性子を集中する。
【0023】
患者は、硼素(10B)薬物を服用または注射した後、硼素(10B)薬物は、腫瘤細胞に選択的に集まり、前記中性子は、硼素(10B)薬物に照射した後にガンマ線を生成し、前記光子発射検出装置は、該ガンマ線を検出する。
【0024】
図4図6に示すように、前記光子発射検出装置200は、前記治療ベッド外周を取り巻く検出部201を含み、前記検出部201は、第一検出部202と第二検出部203を含み、前記第一検出部202と第二検出部203は、相互に離間または接近することができることにより検出部が治療ベッド300外周に形成した環状の半径を増加または減少させることができる。前記第一検出部202、第二検出部203内にいずれも第一検出部202と第二検出部203内に分布して治療ベッドに対して180度回転することができる検知装置204が取り付けられ、前記検出部201は、検知装置204によって前記ガンマ線に対する検出を実現する。
【0025】
好ましい実施形態として、本願において、前記第一検出部202と第二検出部203のお互いの離間または接近は、以下の方式によって実現する。
【0026】
前記光子発射検出装置200は、さらに治療ベッド300の両側に位置する第一支持フレーム211と第二支持フレーム221を含む。前記第一支持フレーム211は、地面に移動可能な第一ベース212、第一ベース212に接続される第一伸縮アーム213および前記第一伸縮アーム213の一端に位置し、かつ、前記第一検出部202に接続される第一延長アーム214を含む。前記第一伸縮アーム213は、上下方向に沿って上下伸縮することができ、前記第一検出部202が前記第一延長アーム214に設けられ、前記第一検出部202および前記第一延長アーム214は、第一伸縮アーム213の上下伸縮運動に伴って上下移動する。前記第二支持フレーム221は、地面に移動可能な第二ベース222、第二ベース222に接続される第二伸縮アーム223および前記第二伸縮アーム223の一端に位置し、かつ、前記第二検出部に接続される第二延長アーム224を含み、前記第二伸縮アーム223は、上下方向に沿って上下伸縮することができ、前記第二検出部203が前記第二延長アーム224に設けられ、前記第二検出部203および第二延長アーム224は、第二伸縮アーム223の上下伸縮運動に伴って上下移動する。前記第一支持フレーム211と第二支持フレーム221は、第一ベース212と第二ベース222の運動に伴って治療ベッド300から離間またはそれに接近する。製造しやすくするために、好ましい実施形態として、前記第一支持フレーム211は、第二支持フレーム221の構造と同じである。また、前記第一伸縮アーム213と第二伸縮アーム223を伸縮不可な構造に設け、前記第一延長アーム214と第二延長アーム224をそれぞれ前記第一伸縮アーム213と第二伸縮アーム223に対して回転可能な構造に設けてもよく、第一、第二延長アーム213、223を回転することによって、検出部201が前記治療ベッド外周を取り巻く半径を変更する。当然ながら、前記第一延長アーム214と第二延長アーム224の回転構造および前記第一伸縮アーム213と第二伸縮アーム223の伸縮構造は、同時に採用することができて、前記検出部201の自由度を増加させる。
【0027】
好ましい実施形態として、本願において前記第一伸縮アーム213と第一延長アーム214との間にさらに回転部材30が設けられる。つまり、第一延長アーム214は、回転部材30周りに第一伸縮アーム213に対して回転することができる;第二伸縮アーム223と第二延長アーム224との間に同様に回転部材30が設けられ、第二延長アーム224は、回転部材30周りに第二伸縮アーム223に対して回転することができる。このようにやる利点は、第一、第二延長アーム213、223を回転することによって、検出部201が前記治療ベッド300外周を取り巻く半径を変更ことができ、また検知装置204全体の自由度をさらに向上させることができ、第一検出部201と第二検出部202が腫瘤位置に対する距離を調整し、即ち、第一検出部201が腫瘤位置に対する距離を調整して第二検出部202が腫瘤位置に対する距離に一致させることに役立ち、それにより検知装置204全体の検知精度を向上させることである。
【0028】
実際の検出作業過程において、異なる患者の腫瘤位置は、異なる可能性が高く、例えば、ある患者の腫瘤が頭部にあり、ある患者の腫瘤が胸部にあり、治療ベッド上の患者は、検出する必要な腫瘤部分が頭部であれば、それなら、第一検出部202と第二検出部203が治療ベッド300外周を取り巻く環状の半径は、小さいほうが好ましく、検出する必要な腫瘤部分が胸部であれば、それなら、実際の測定ニーズに応じ、前記第一検出部と第二検出部が治療ベッド外周を取り巻く環状の半径を変更する。検出部が治療ベッド外周を取り巻く環状の半径が小さければ小さいほど、検出部201に取り付けられた検知装置204は、さらに患者に接近することができ、検知装置204が患者腫瘤部位に対する検知距離は、減少し、検知した関連情報は、より多くなり、光子発射検出装置200全体の検知精度は、より高くなる。
【0029】
治療ベッド300外周を取り巻く環状の半径を減少する必要がある時、第一伸縮アーム213または第二伸縮アーム223の伸縮の長さを変更し、第一伸縮アーム213と第二伸縮アーム223の伸縮の長さを一致させず、かつ、第一ベース212と第二ベース222を移動して第一ベース212と第二ベース222を相互に接近させ、第一検出部202と第二検出部203が患者腫瘤外周を取り巻く半径は、減少する(検知装置204から腫瘤位置までの距離が減少する);治療ベッド外周300を取り巻く環状の半径を増加させる必要がある時、第一伸縮アーム213を第二伸縮アーム223の伸縮距離に一致させるように保持し、かつ、第一ベース212と第二ベース222を移動して第一ベース212と第二ベース222を相互に離間させ、第一検出部202と第二検出部203が患者胸部外周を取り巻く半径は、増大する。前記第一伸縮アーム213が第二伸縮アーム223の伸縮距離と同じで、前記第一検出部202が第二検出部203と相互に接触するまで前記第一ベース211と第二ベース221を移動する時、前記第一検出部202と第二検出部203が前記治療ベッド300外周を取り巻く最大半径の環状202を形成する。
【0030】
前記第一ベース212と第二ベース222の移動は、地面に設けられたレール230によって実現することができる。具体的には、地面に治療ベッド300の両側に位置するレール230を設けることによって、前記第一、第二ベース212、222は、それぞれ前記レール230に取り付けられかつ前記レール230上に運動し、前記第一、第二ベース212、222の運動は、前記第一、第二検出部202、203を動かして相互に接近または離間させ、それにより第一検出部202と第二検出部203が前記治療ベッド300外周を取り巻く半径を増大または減少させる。
【0031】
本実施形態において、前記治療ベッド300は、前記第一検出部202と第二検出部203に形成された環状中に前後に移動することができて前記検知装置204と治療ベッド300との相対位置を変更する(即ち検知装置204と腫瘤との相対位置を変更する)。治療ベッド300は、前後に移動することができるため、レール230を治療ベッド300の両側に位置し、かつ、前記治療ベッド300の運動方向に垂直な方向に沿って延びる構造に設ければよく、第一、第二ベース211、221は、前記レール230に取り付けられ、かつ、前記レール230に移動することにより前記治療ベッド300から離間またはそれに接近する。
【0032】
前記検出部201が前記治療ベッド300外周を取り巻く半径は、実際の治療過程における患者腫瘤位置の実際サイズに基づいて変更することができるため、治療ベッド300は、さらに患者腫瘤位置の実際状況に基づいて運動することができ、それにより患者腫瘤部位を検出部201の間にし、このため光子発射検出装置200全体は治療ベッド300と協同して患者腫瘤に対する全面的検出を実現することができる。
【0033】
ホウ素中性子捕捉治療が完了した後、前記第一ベース211と第二ベース221を移動し、光子発射検出装置200全体を二つの部分に分け、かつ、治療ベッド300から離間させる。
【0034】
図7を結び付け、前記光子発射検出装置200にさらに検出部201から検出されたガンマ線を収集する信号収集ユニット240、収集された信号を利用して硼素濃度を計算する計算ユニット250および中性子捕捉治療装置100に接続され、かつ、計算された硼素濃度を中性子捕捉治療装置100にリアルタイムにフィードバックするフィードバックユニット260が接続され、前記中性子捕捉治療装置100にフィードバックユニット260からフィードバックされた信号に基づいて中性子捕捉治療装置100から生成された中性子ビームが腫瘤を照射する時間を修正することができる修正ユニット270が接続される。
【0035】
これから、光子発射検出装置がホウ素中性子捕捉治療システム全体における動作過程を説明する。
【0036】
まず、患者は、硼素(10B)薬物を注射(服用)し、かつ、前記治療ベッド300に載置し、前記硼素(10B)薬物は、患者腫瘤位置に集まる;
前記光子発射検出装置200は、患者腫瘤の部位に基づいて治療ベッド300が検出部201に対する位置(治療ベッド300の運動によって腫瘤部位を検出部201内の検知装置204の対応する位置にする)及び検出部201の第一検出部202と第二検出部203が治療ベッド300外周を取り巻く環状半径を順次調整する;
前記中性子捕捉治療装置100は、中性子ビームNを生成し、前記中性子ビームNは、患者の硼素(10B)薬物が集まる腫瘤位置を照射し、中性子ビームNと硼素(10B)は、ガンマ線を生成する;
前記第一検出部202と第二検出部203は、検知装置204によって中性子ビームNと硼素(10B)を検知してガンマ線を生成する;
前記信号収集ユニット240は、検知したガンマ線を収集し、かつ、計算ユニット250を利用して収集したガンマ線によって硼素(10B)濃度を計算する;
前記フィードバックユニット260は、計算した硼素(10B)濃度を中性子捕捉治療装置100にフィードバックする;
前記中性子捕捉治療装置100は、修正ユニット270によって、フィードバックユニット260からフィードバックされた硼素(10B)濃度に基づいて中性子ビームの照射時間を修正する。
【0037】
治療過程全体が終了した後、前記光子発射検出装置200を二つの部分に分けて中性子捕捉治療装置100から離間した位置まで移動させることができて、中性子捕捉治療装置100と光子発射検出装置200の相互間の放射影響を減少する。
【0038】
本願が掲示したホウ素中性子捕捉治療システムに用いられる光子発射検出装置は、以上の実施例に記載の内容および図面に示された構造に限定されるものではない。かつ、必要があれば、さらに他の断層走査現像装置(例えばComputed Tomography:CT、電子コンピュータ断層走査)に対して本願中の改善を行うことができる。本願の基礎上にそのうちの部材の材料、形状および位置に対して行われた明らかな変更、代替または改正は、いずれも本願が要求する保護範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7