(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
本実施形態に係る温度センサ1は、保護管51の内部を往復移動する磁気シールド61が、保護管51よりも硬さが低く作製されている。これにより、磁気シールド61が保護管51よりも容易に摩耗することで、摩擦力を軽減できる。
【0018】
[全体構成]
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以降の説明において、各図の上側を上方U、下側を下方Lとして説明する。
温度センサ1は、
図8に示すように、一例として調理機器としてのガスコンロ100において、鍋などの調理器107の底面108に接触してその温度を検出する。温度センサ1は、調理器107が載せられる五徳106,106の間の中央またはその近傍する位置に設けられる。
温度センサ1は、
図1および
図2に示すように、温度検出の主たる要素である感熱素子10と、感熱素子10のリード線13と電気的に接続される継線30と、感熱素子10を保持するセンサ保持体40と、を備えている。そして、
図8に示すように、温度センサ1は、後述する集熱体42の接触面が五徳106,106の上方U側の端部よりも上方U側へ突出するように、保護管51を介してガスコンロ100に取り付けられている。
【0019】
[感熱素子10]
感熱素子10は、
図3に示すように、感熱体11と、感熱体11の対向する二面(図中の左右)のそれぞれに形成される電極12,12と、電極12,12を介して感熱体11に電気的に接続される一対のリード線13,13と、感熱体11を封止する保護層16とを備えている。
【0020】
感熱体11は、温度変化によって電気抵抗値が変化する特性を有する金属酸化物または金属が用いられる。感熱体11に一対のリード線13,13を介して一定の電流を流し、測定器で感熱体11の電極12,12の間の電圧を測定し、オームの法則(E=IR)から抵抗値を求め、温度を検出する。
金属酸化物としてはサーミスタ(Thermistor:Thermally Sensitive Resistor)が好適に用いられ、典型的には負の温度係数を有するNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)が用いられる。金属としては白金(例えば、Pt100;JIS−C1604)が好適に用いられる。
【0021】
電極12は、感熱体11とリード線13を電気的に接続するものであり、好ましくは金、白金などの貴金属で構成される。
リード線13は感熱体11に一定の電流を流す導線であり、芯線14と、芯線14を覆う絶縁被覆15と、からなる。芯線14には電気伝導度の高い金属材料、典型的には銅が用いられる。リード線13の芯線14は単線からなる。
【0022】
保護層16としてガラスが用いられる場合には、芯線14にはジュメット線(Dumet Wire)が好適に用いられる。ジュメット線とは、鉄−ニッケル合金からなる内層と銅からなる外層とをクラッドした複合線をいう。内層を構成する鉄−ニッケル合金の線膨張係数がガラスに近似する。したがって、保護層16がガラスからなる場合であっても、ジュメット線を用いることにより芯線14の熱膨張による保護層16の破損が阻止される。
絶縁被覆15は、芯線14の外周面を覆う絶縁体である。
リード線13は感熱体11に一定の電流を流す電線である点で後述する継線30と同じ役割を有するが、感熱体11に直接的に接続される電線をリード線13と称し、リード線13を介して感熱体11に間接的に接続される電線を継線30と区別する。
【0023】
保護層16は、感熱体11を封止して気密状態に維持することによって、感熱体11に化学的な変化及び物理的な変化が生ずるのを避けるために設けられる。保護層16としてはガラスが用いられるのが好ましいが、温度センサ1を使用する環境によっては樹脂材料を用いることもできる。
【0024】
[継線30]
図2に示す継線30は、感熱素子10と図示しない後段の電気回路等とを電気的に接続するための電線で、芯線31と、芯線31を覆う絶縁被覆33と、を備えている。
芯線31は、複数、例えば7本、12本の導線を撚り合わせて作製された撚線である。撚線を構成するそれぞれの導線にはリード線13の芯線14よりも線径が小さい導線が用いられる。
継線30は、保護管51に挿通され、その一端がリード線13の端部と、例えば溶接により電気的に接続され、他端が図示しない後段の電気回路等に接続される。この継線30には、保護管51よりも十分細い線径を有し、かつ可動体41の接触面42Aを介して調理器107から押圧力が加わっても変形しない程度の強度を有する電線が用いられる。また、この継線30は、保護管51の内側に、可動体41が移動したときに、この移動に応じて保護管51の軸方向に移動可能に配置されている。
なお、
図2および
図6において、継線30は破断部分において90°だけ捩じられている。
【0025】
[センサ保持体40]
センサ保持体40は、
図1(a)および
図8に示すように、調理器107の底面108に当接すると下方Lへ移動可能に設けられた可動体41と、可動体41を支持する保護管51と、を備えている。
【0026】
[可動体41]
可動体41は、
図1および
図8に示すように、調理器107の底面108におもて面が当接される板状の集熱体42と、集熱体42のうら面側に設けられ、感熱体11を収容して保持する収容筒43と、集熱体42を上端部44Aで支持する筒状のホルダ44と、ホルダ44の上端部44Aから下端部44Bの付近までを同心状に覆う筒状のカバー45と、コイルばね46とを備えている。集熱体42、収容筒43、ホルダ44、カバー45およびコイルばね46は、耐熱性、耐酸化性を有する金属材料、例えばステンレス鋼により構成されることが好ましい。
【0027】
集熱体42は、調理器107の底面108に面接触するように、おもて面に平坦な接触面42Aを備えている。
収容筒43は、フランジ状に形成された上端部43Aを備える。この上端部43Aが集熱体42のうら面42Bに、例えば溶接により接合されることで、収容筒43は、上端部43Aの側が閉じられている。収容筒43の下端部43Bは開口している。収容筒43の内部には感熱素子10の感熱体11が収容される。感熱体11はその上端部が集熱体42のうら面42Bに接触するように収容筒43に収容される。収容筒43の内部には感熱体11との隙間を埋める充填材を充填することが好ましい。この充填材には、耐熱性の接着剤、特に金属フィラーを含むものを用いるのが好ましい。
【0028】
ホルダ44は、収容筒43よりも径の大きな筒状の部材であり、径の異なる上端部44Aと下端部44Bとから構成されている。上端部44Aの内部には、収容筒43、感熱素子10および絶縁チューブ47が収容される。
ホルダ44の上端部44Aはフランジ状に形成されており、集熱体42の周縁部がホルダ44の上端部44Aの全周縁に亘って折り込まれている。これにより、ホルダ44は、上端部44A側が集熱体42により密閉されるので、調理器から煮こぼれがあってもこぼれた汁が内部に浸入しないようになっている。
ホルダ44の上端部44Aの下方Lの側には、段差部44Cを介して上端部44Aよりも径の細い下端部44Bが形成される。下端部44Bの下方L側には開口部44Eが形成されており、この開口部44Eから保護管51がホルダ44の外部へ突出している。そして、段差部44Cが、後述する保護管51の内側に形成された座金54に接触することで、可動体41の位置が規定される。このときの可動体41の位置は、保護管51に対して可動体41が最も上方U側へ移動した位置であり、集熱体42に荷重が加わらないとき、すなわち、調理器107が五徳106,106に載せられていないときは、可動体41はこの位置にいる。以下、この集熱体42に荷重が加わっていないとき(無負荷)の集熱体42の位置を第一位置と称する。
【0029】
カバー45の上端部45Aは閉じられており、その内側が円筒状の空隙45Bをなしている。また、カバー45の下端部45Cは開放されている。
カバー45は、その上端部45Aがホルダ44の上端部44Aの外周に圧入されることで、ホルダ44に対して固定される。こうして、ホルダ44とカバー45は相互に液密状態に固定される。
【0030】
コイルばね46は、保護管51に対して集熱体42、ホルダ44およびカバー45を上方U側に向けて付勢するための弾性体である。コイルばね46は、ホルダ44の内部に収容され、その上端部46Aが集熱体42のうら面42B側で支持され、下端部46Bが保護管51の上端部で支持される。
図8に示すように、集熱体42の接触面42Aは、五徳106,106の上端から上方U側へ突出している。したがって、調理器107をガスコンロ100の五徳106,106に載せるときには、集熱体42の接触面42Aが調理器107の底面108と当接し、集熱体42は調理器107の自重により下方L側へ押し下げられる。そして、五徳106,106の上に調理器107が載ると、集熱体42の接触面42Aは、
図8中の下方Lの実線で示す位置まで押し下げられる。したがって、コイルばね46には、この五徳106,106に調理器107が載せられたときに調理器107の底面108への集熱体42の接触を維持できる程度の弾性力を有しているものが用いられる。以下、この調理器107がガスコンロ100に載せられたあとの集熱体42の位置を第二位置と称する。
図8において、第一位置における集熱体42はその頂部だけが一点鎖線で示されており、第二位置における集熱体42はその全体が実線で示されている。
絶縁チューブ47は、一対のリード線13,13を保護するための絶縁性のチューブである。絶縁チューブ47には、感熱体11の一対のリード線13,13が挿通され、これらの端部が後述する保護管51の内部で継線30に電気的に接続される。
【0031】
[保護管51]
保護管51は、
図1に示すように、上方U側にフランジ状に突き出す上端部53Aが形成されており、この上端部53Aの下面には座金54が配置される。座金54は、保護管51の外周に嵌合される円筒状の部材である。座金54は、可動体41の上方L側へのホルダ44の移動量を規制する。ホルダ44の段差部44Cがこの座金54に突き当たることで、可動体41の上方U側への移動が規制される。
保護管51および座金54は、ホルダ44と同様の金属材料で構成されるのが好ましい。
【0032】
[検出部60]
保護管51の下端53Bの側には、
図2に示すように、検出部60が設けられている。検出部60は、調理機器に調理器が載せられていることを検出するために設けられている。
検出部60は、保護管51の内側に配置される継線30に固定される磁気シールド61と、保護管51の外側に配置される永久磁石からなる磁場発生体69と、磁場発生体69からの磁場を受けて動作するリードスイッチ71と、を備えている。
【0033】
<磁気シールド61>
磁気シールド61は、磁場発生体69からの磁場がリードスイッチ71に達するのを阻止するためのシールド部63と、磁気シールド61を継線30に固定するためのホルダ65と、シールド部63とホルダ65を繋ぐ接続片67と、を備える。磁気シールド61は、一例として、強磁性体を示す金属板を機械加工することにより一体形成されている。この金属板の材料には、磁場発生体69からの磁場(磁束)が漏れなく吸収できる磁気特性(透磁率)を備えることに加えて、保護管51を構成する材料との所定の硬さの関係を備える材料が用いられる。保護管51を構成する材料との硬さの関係については後述する。
【0034】
シールド部63は、
図2および
図4に示すように、軸線方向(C)に所定の寸法を有する円筒形状をなしている。シールド部63の内側には継線30が挿通される。このシールド部63の内径は、継線30が所定の遊びを有して取り囲まれるように設定される。シールド部63の外径は、保護管51の内径よりも小さく設定される。
シールド部63の軸線方向(C)の寸法は、磁場発生体69と対向する位置にあるときに磁場発生体69からの磁束を漏れなく吸収できる長さ、一例としては、スイッチ部71の軸線方向(C)の長さと略同一になるように設定される。なお、このシールド部63の長さは、五徳106,106上に調理器107が載せられてシールド部63が移動したときに、磁場発生体69の磁場がスイッチ部71へ達するのを阻害しない寸法であればこれに限られない。
【0035】
また、ここでは、一例として、シールド部63の形状が円筒状の形態を有している場合を説明しているが、本発明はこれに限定されない。磁気シールドの機能を発揮できる限り、シールド部63の形状は円筒状にする必要はないからである。例えば、シールド部63の磁場発生体69に対向する側だけを覆い、リードスイッチ71に対向する側は開放される形態や、矩形状としても良い。
【0036】
ホルダ65は、
図4に示すように、継線30をかしめる前にはU字状の形態をなしているが、継線30をかしめることで略円筒形状に形成されている。ホルダ65をかしめることにより、磁気シールド61は、継線30に固定され、継線30の移動に伴って移動する。
シールド部63とホルダ65の軸線が一致するように、接続片67は、当該軸線に向かって傾斜するように加工されている。なお、本実施形態においては、シールド部63の軸線とホルダ65の軸線とが一致する場合を例示して説明しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、磁気シールド61が移動するときにホルダ65が保護管51の内壁と摺動しなければ、任意の傾斜や形状等を採用することができる。
ホルダ65は、シールド部63を基準にして、感熱体の反対側に配置される。
【0037】
磁気シールド61は、継線30の往復移動にともなって保護管51の内部を往復移動する。
図2に示すように、磁気シールド61は、シールド部63が磁場発生体69に磁気的に吸引される。このため、磁気シールド61は、保護管51の内壁であって磁場発生体69に対向する側に接触する。したがって、継線30の往復移動に連動してシールド部63は保護管51の内壁と摺動し、摩擦が生じる。
【0038】
<磁場発生体69>
磁場発生体69は、
図2に示すように、保護管51の径方向(R)の一方端の外側の所定の位置に設けられている。磁場発生体69からの磁場は、リードスイッチ71に作用する。
磁場発生体69は、リードスイッチ71に磁場が達する磁力を有している限り、その材質は任意である。例えば、フェライト永久磁石の他に、Sm−Co系、Nd−Fe−B系などの希土類磁石を用いることができる。調理機器に用いられる磁場発生体69は150℃程度まで加熱されるので、キュリー点を考慮する必要がある。ただし、フェライト永久磁石(450℃)、Sm−Co系(750℃)、Nd−Fe−B系(850℃)などの希土類磁石のキュリー点は150℃を凌駕する。
また、磁場発生体69は焼結体からなる永久磁石に限らず、磁石粉を樹脂に分散させたボンド磁石を用いることもできる。
また、磁場発生体69は永久磁石に限らず、電磁石を用いることもできる。
【0039】
磁場発生体69は、例えば樹脂材料からなる磁石ホルダ76に収容された状態で、保護管51に固定される。前述したように、保護管51は非磁性体であるオーステナイト系のステンレス鋼(JIS SUS304)で構成されていれば、磁場発生体69からの磁場は、保護管51を通過してその内部および磁気シールド61の位置によってはリードスイッチ71まで達することができる。
【0040】
<リードスイッチ71>
磁気センサとしてのリードスイッチ71は、外部からの磁場を用いて図示しない電気回路のオンオフ切り替えを行うためのスイッチである。
図2に示すように、リードスイッチ71は、スイッチ部73と、スイッチ部73の図示しない一対の強磁性体リードにそれぞれが繋がるリード線75A,75Bと、スイッチ部73およびリード線75A,75Bを収容するスイッチ保護管77と、を備えている。
スイッチ部73は、保護管51の外側の所定の位置に配置されている。スイッチ部73には、一対の強磁性体リードが所定の接点間隔を持って、ガラス管の中に封入されている。一対の強磁性体リードは、スイッチ部73の径方向(図中のR方向)に磁場発生体69からの磁場を受けると磁化され、それぞれの自由端が互いに接触することで、磁気的な回路が閉ざされる(ON)。また、磁場を消去すればそれぞれのリードの弾性により、接触が解かれることで、磁気的な回路は開かれる(OFF)。
【0041】
リードスイッチ71は、スイッチ保護管77の内部に収容された状態で、保護管51に固定される。スイッチ部73は、保護管51の径方向(R)の他方端の外側に固定されており、保護管51を挟んで磁場発生体69とは反対側の位置に置かれる。
【0042】
リード線75A,75Bは、スイッチ部73と図示しない電気回路とを電気的に接続するための線路である。本実施形態においては、この電気回路がスイッチ部73によるON/OFFの動作により調理器107が五徳106上に載せられているか否かを検出するようになっている。すなわち、この電気回路は、スイッチ部73が非導通(OFF)であるときには五徳上に調理器107が載せられておらず、導通(ON)しているときには五徳106上に調理器107が載せられていると検出するようになっている。
【0043】
[温度センサ1の動作]
以上の構成を備える温度センサ1の動作、作用について
図5および
図8を参照して説明する。
この温度センサ1が取り付けられたガスコンロ100の五徳106上に調理器107が載せられていないときは、可動体41は、
図8の一点鎖線で示す第一位置に位置する。
図5(a),(b)および
図8に示すように、ガスコンロ100の五徳106の上に調理器107が載せられると、調理器107の底面に集熱体42が当接し、可動体41が下方Lへ移動する。このとき、
図5(b)に示すように、ホルダ44およびカバー45も集熱体42とともにコイルばね46の弾性力に抗して移動する。そして、可動体41にはコイルばね46からの弾性力が上方U方向に加わっているので、五徳106上に調理器107が載ると、当接面42Aが調理器107に当接した状態を維持しつつ、
図8中の実線で示す第二位置で停止する。調理の終了に伴って調理器107が五徳106から取り除かれると、集熱体42、ホルダ44およびカバー45は、コイルばね46の弾性力により上方Uへ移動する。集熱体42などは、
図5(a)に示すように、ホルダ44の段差部44Cが座金54に接する第一位置で止まる。このように、温度センサ1においては、感熱体11を保持する可動体41が、第一位置と第二位置との間で往復移動する。
【0044】
可動体41の移動は継線30の移動を伴うので、継線30に固定された磁気シールド61もまた可動体41の移動に伴って移動する。
【0045】
図6(a)は、可動体41が第一位置に留まっているときの、磁気シールド61の位置を示している。このとき、磁気シールド61は、磁場発生体69とリードスイッチ71(スイッチ部73)との間に位置する。以下、このときの磁気シールド61の位置をシールド位置と称す。
磁気シールド61がシールド位置にあるとき、磁気シールド61のシールド部63は、磁場発生体69とリードスイッチ71のスイッチ部73との間に位置しているため、磁場発生体69から生じる磁場はシールド部63に吸収される。このため、スイッチ部73は磁場発生体69からの磁場を受けない。その結果、リードスイッチ71は磁気的な回路が開かれる(OFF)。
【0046】
図6(b)は、可動体41が第二位置に留まっているときの、磁気シールド61の位置を示している。このときの磁気シールド61の位置を非シールド位置と称す。
このとき、磁気シールド61のシールド部63は磁場発生体69とリードスイッチ71のスイッチ部73との間から退避しているため、磁場発生体69から生じる磁場はシールド部63で吸収されない。したがって、スイッチ部73は磁場発生体69から生じる磁場を受ける。つまり、リードスイッチ71は磁気的な回路が閉じられて(ON)、五徳106,106上に調理器107が載せられていることを検出できる。
【0047】
[保護管51とシールド部63の構成材料]
本実施形態においては、一例として、保護管51はJIS SUS304で構成され、シールド部63はJIS SUS420J2で構成されている。
JIS SUS304は非磁性のオーステナイト系のステンレス鋼であり、JIS SUS420J2は強磁性を有するマルテンサイト系のステンレス鋼である。保護管51を非磁性のオーステナイト系のステンレス鋼から構成するのは、磁場発生体69から生じる磁場を通過させるためである。シールド部63を強磁性のマルテンサイト系のステンレス鋼から構成するのは、シールド位置において、磁場発生体69からの磁場をシールドし、リードスイッチ71に到達させないためである。
【0048】
次に、保護管51を構成するJIS SUS304は、標準的な熱処理である固溶化熱処理(1010〜1050℃急冷)が施されたときの硬さHvが200以下である。これに対して、シールド部63を構成するJIS SUS420J2は、標準的な熱処理である焼き入れ(920〜980℃油冷)、焼きなまし(800〜900℃徐冷)が施されたときの硬さHvが247以下である。つまり、熱処理の条件を選択することにより、シールド部63は保護管51よりも硬くなる。シールド部63と保護管51の硬さの差は、Hv30以上、好ましくはHv50以上にできる。
【0049】
[温度センサ1の作用・効果]
次に、本実施形態に係る温度センサ1の作用・効果について述べる。
<保護管51とシールド部63の間の摩擦力軽減>
本実施形態において、保護管51とシールド部63の硬さに差異があり、保護管51の方がシールド部63よりも硬さが低い。したがって、保護管51の中をシールド部63が摺動すると、硬さの低い保護管51が優先的に摩耗することで摩擦力を軽減できる。
ここで、仮に保護管51とシールド部63の硬さが同じであれば、双方の摺動面の凹凸が噛み合うために、摩擦力が大きくなる。ところが、本実施形態のように、摺動面の硬さを一方よりも他方を高くすれば、硬さの高い方が硬さの低い方を削る動作を繰り返すことにより、摩擦力を軽減できる。
【0050】
本実施形態で保護管51とシールド部63に用いたJIS SUS304、JIS SUS420J2などのステンレス鋼は、以下の理由により摺動環境下でかじりが発生しやすいとされる。しかし、本実施形態の用途において、保護管51とシールド部63の摺動の頻度は小さいといえるので、かじりのおそれは極めて小さい。
・摩擦係数が大きく、熱が発生しやすい
・熱伝導率が小さく、熱が逃げにくい
【0051】
<磁気シールド61の構造>
次に、磁気シールド61のシールド部63は、その外径が保護管51の内径より微小量だけ小さい。これにより、保護管51の内部におけるシールド部63の径方向(R)の移動量が小さい。したがって、シールド部63の内側に配置される継線30の径方向(R)における移動量も小さくて済むので、継線30に与える負荷を小さく抑えることができる。
【0052】
次に、ホルダ65は強磁性体からなるので、磁場発生体69が発する磁場を少なからずともシールドしてしまう。したがって、ホルダ65は第一位置および第二位置のいずれにおいても、磁場発生体69とリードスイッチ71の間からずれていることが、検出部60の検出精度を確保するうえで好ましい。そこで、本実施形態は、第一位置に比べて第二位置において、ホルダ65が磁場発生体69とリードスイッチ71の間から遠ざかるように、ホルダ65をシールド部63よりも後方に設けている。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は実施形態に限るものではなく、種々の変形を許容する。
<硬さの関係>
本実施形態に係る温度センサ1は、保護管51よりもシールド部63が硬い例を説明したが、本発明はこれに限定されない。つまり、本実施形態とは逆に、保護管51よりもシールド部63よりも保護管51を硬くしても、以上で説明した保護管51とシールド部63の間の摩擦力を抑制する効果が得られる。ただし、本実施形態の検出部60の構成を前提とすれば、保護管51は非磁性、シールド部63は強磁性であることを前提とする。この場合、シールド部63を例えばフェライト系のステンレス鋼であるJIS SUS430を用い、熱処理により低めの硬さに調整すればよい。
【0054】
<保護管51、シールド部63を構成する材料>
本実施形態に係る温度センサ1は、ステンレス鋼からなる保護管51およびシールド部63を例示したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、本実施形態において非磁性であることが前提である保護管51は、樹脂、ゴムで構成することができる。また、シールド部63についても強磁性を有する金属材料からなることに限らない。例えば、強磁性を有する金属粉末が分散された樹脂部材、強磁性を有する金属膜が表面に形成された樹脂部材、金属膜と樹脂とが交互に積層された樹脂部材など、磁気シールドとして機能しうる部材が適用できる。
【0055】
<検出部60の構成>
本実施形態に係る温度センサ1は、磁場発生体69から生じる磁場を検出する手段としてリードスイッチ71を用いたが、本発明はこれに限定されず、コイル、ホール素子、磁気抵抗素子などの他の磁器検出手段を用いることができる。
コイルは、その中を通過する磁場が変化すると、電磁誘導による電圧が発生し、この電圧を検出することで磁気を検出する。
また、ホール素子は、半導体薄膜などに電流を流すと、ホール効果によって磁場密度や向きに応じた電圧が発生し、この電圧を検出することで磁気を検出する。
磁気抵抗素子は、磁場が印加されると電気抵抗が変化する材料から構成され、この電気抵抗の変動を検出することで磁場を検出する。
以上の他に、磁気インピーダンス素子、超伝導量子干渉素子などを用いることができる。また、磁気に限らず他の検知手法、例えば光を検知するなどの手法により、検知部60を構成してもよい。
【0056】
また、本実施形態に係る温度センサ1は、調理器107が五徳106に載せられているときに、磁気回路が閉じる(ON)検出部60を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図7(a),(b)に示すように、磁場発生体69に隣接してホール素子、磁気抵抗効果素子などからなる磁気センサ70を設ける。調理器107が五徳106に載せられていないときには、
図7(a)に示すように、移動磁気シールド61が磁場発生体69の磁場を受ける位置(シールド位置)におり、調理器107が五徳106に載せられると、
図7(b)に示すように、移動磁気シールド61が磁場発生体69の磁場を受けない位置(非シールド位置)にいる。
移動磁気シールド61がシールドにいるときには、移動磁気シールド61が磁場発生体69の磁場を吸収することにより、磁気センサ70に磁場が印加されない。移動磁気シールド61が非シールド位置にいるときには、移動磁気シールド61が磁場発生体69の磁場を吸収しないために、磁場が磁気センサ70まで広がることにより、磁気センサ70に磁場が印加される。これにより、調理器107が五徳106に載せられているか否かを検出できる。
【0057】
<温度センサ1の用途>
さらに、温度センサ1の用途として示したガスコンロ100はあくまで本発明の一例にすぎず、加熱対象物と接触して温度を測定する機器に広く適用できる。例えば、電磁調理器、電気炊飯器、ポット、コーヒーメーカなどが掲げられる。
電気炊飯器200に適用される例を
図9に示す。電気炊飯器200は、内部に炊飯用の飯器203を収納し得るように構成され且つ空間部204を有する二重構造の筐体201と、筐体201の上部開口を開閉自在に覆蓋する蓋体202と、を備えている。
筐体201は、合成樹脂の一体成形品からなる外ケース205と、合成樹脂製の有底筒状の保護枠206と、底壁を構成する合成樹脂製の皿形状の底ケース207とによって構成されている。
保護枠206の底面中央部には、飯器温度を測定するための温度センサ1がセンサ保持孔208に保持されている。
【0058】
また、温度センサ1の構造もあくまで本発明の一例であり、固定体に対して往復移動する可動体を備える温度センサに広く適用される。固定体および可動体を構成する部材の材料も、実施形態に示した以外の材料を用いることもできる。例えば、金属材料を用いるとした部材について、測定温度が低ければ樹脂からなる成形品を用いることもできる。