特許第6938851号(P6938851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938851油脂組成物及びこれを使用した食品並びに油脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938851
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】油脂組成物及びこれを使用した食品並びに油脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20210909BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   A23D9/00 504
   A23D9/00 506
   A23G3/34 108
   A23G3/34 104
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-87042(P2016-87042)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-6116(P2017-6116A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-125612(P2015-125612)
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢島 洋介
(72)【発明者】
【氏名】松井 正行
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/145339(WO,A2)
【文献】 特開2001−178363(JP,A)
【文献】 特開平08−131070(JP,A)
【文献】 特開2011−130717(JP,A)
【文献】 特開2012−143195(JP,A)
【文献】 特開平10−075795(JP,A)
【文献】 特開2013−212068(JP,A)
【文献】 特開2016−202118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00−9/06
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12以下の糖類、糖アルコールから選択される糖質1種以上を含有する、加熱調理用油脂又は加熱調理食品のコク味強化用油脂組成物。
【請求項2】
糖質の含有量が、2重量ppm以上1500重量ppm以下である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
糖質が水溶性である、請求項1又は請求項2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
糖質の炭素数が6以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項5】
糖質がイノシトールである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項6】
加熱調理用である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の油脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する加熱調理食品。
【請求項8】
スナック菓子又は米菓である請求項7に記載の加熱調理食品。
【請求項9】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の油脂組成物を使用した、加熱調理用油脂又は加熱調理食品のコク味強化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物及びこれを使用した食品並びに油脂組成物の製造方法に関し、より詳しくは、良好なコク味が得られる油脂組成物及びこれを使用した食品並びに油脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常法により精製された一般の食用油脂は、ごま油、オリーブ油あるいはカカオ脂のような特殊な油脂に比べて、殆ど無味無臭である。従来、このような食用油脂に風味付けをした香味油あるいは呈味油と呼ばれる油脂が知られている。これらの油脂の製造法は、例えば油脂を強火加熱したものに茴香、葱、にんにくを投入してエキスを十分抽出させるなど、特殊な製造法であるし、香味油とは調味に使う油であって、通常料理の仕上げに少量使用されるものであり、調理の初めから使用して料理の風味を整える、食用油脂とは使用方法が異なる。
【0003】
食用油脂に風味を付与する方法として、特許文献1および2では、油脂に米糠を加え、加熱することによる風味油の製造方法が開示されている。特許文献3は、油脂に米糠由来不けん化物を添加する、油脂組成物が開示されている。特許文献4は、食用油脂に糖アルコール又は/及びポリグリセリンと乳化剤とを含有することにより、揚げ物が軟化して食感が低下するのを防ぎ、揚げた直後の食感を持続させ、かつ冷凍して解凍した場合でも食感の優れた揚げ物類を得ることができる揚げ油用油脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−218549号公報
【特許文献2】特開平5−146252号公報
【特許文献3】特開2011−120543号公報
【特許文献4】特開平8−131070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3の方法で得られる油脂は、コク味が不十分であり、特許文献1および2の方法は、添加した米糠を除去するという工程を付加する必要があり、工程が煩雑であった。特許文献4で得られる油脂は、揚げ物の食感改良について明記されているが、風味改善効果は開示されていない。
【0006】
本発明の目的は、平易な方法で、優れた良好なコク味を有する油脂組成物および該油脂組成物を使用することにより良好なコク味を有する食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、糖質を含有する油脂組成物が、良好なコク味を有する事を見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) 炭素数12以下の糖類、糖アルコールから選択される糖質1種以上を含有する、油脂組成物、
(2) 糖質の含有量が、2重量ppm以上1500重量ppm以下である、(1)の油脂組成物、
(3) 糖質が水溶性である、(1)または(2)の油脂組成物、
(4) 糖質の炭素数が6以下である、(1)〜(3)のいずれかの油脂組成物、
(5) 糖質がイノシトールである、(1)〜(4)のいずれかの油脂組成物、
(6) (5)のイノシトールが脱脂米糠由来成分である、油脂組成物、
(7) 加熱調理用である、(1)〜(6)のいずれかの油脂組成物、
(8) (1)〜(7)のいずれかの油脂組成物を含有する加熱調理食品、
(9) スナック菓子または米菓である(8)の加熱調理食品、
(10) (1)〜(7)のいずれかの油脂組成物を使用した、加熱調理用油脂または加熱調理食品の風味改善方法、
(11) 糖質を水性媒体に加えて、溶液状態で油脂に添加することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかの油脂組成物の製造方法、
(12) 糖質がイノシトールである、(11)の油脂組成物の製造方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、良好なコク味を有する油脂組成物が得られ、かかる油脂組成物を使用することで、コク味を有する油脂である米油やごま油等を使用することなく、良好なコク味を有する食品を提供することができる。あるいは、米油やごま油等の配合量を減少させても、かかる油脂組成物を使用することで、コク味の低下を補うことができる。
より好ましい態様としては、本発明の油脂組成物を使用し、加熱処理を加えることで、より良好なコク味を有する食品を提供することができる。
また、本発明により、パーム油、パームオレイン、硬化油等、不飽和度が低く酸化安定性の高い油脂にも良好なコク味を付与することができるため、酸化安定性が高い良好なコク味を有する油脂組成物を得ることができる。かかる油脂組成物は酸化安定性が低いといった米油、ごま油の欠点を補ったものであるため、賞味期限を延長したり、酸化安定性が低いため使用できなかった新たな用途で本油脂組成物を展開することも可能である。
また別の態様として、本発明の油脂組成物は従来の米油、ごま油の物性である、室温で液状であるという性状のみならず、ベースとなる油脂を適宜選択することで、固形状であったり、半固形状であったり、用途に応じて適切な物性を選択して、良好なコク味を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用する糖質は、炭素数12以下の糖類、糖アルコールから選択される糖質であれば、特に限定されない。好ましくは、効率的に良好な風味が付与できる点で、水溶性の糖質であり、単糖であるグルコース、フルクトース、ガラクトース、二糖であるマルトース、スクロース、糖アルコールであるエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イノシトールが例示できる。かかる成分2種以上を混合して使用しても良い。好ましくは、炭素数6個以下の糖であり、単糖であるグルコース、フルクトース、ガラクトース、糖アルコールであるエリスリトール、ソルビトール、イノシトールが例示でき、加熱調理した食品に適した良好なコクが得られる点で、最も好ましくはイノシトールである。
【0011】
本発明において、イノシトールは、由来原料を問わず使用することができる。米糠由来、コーン由来、合成して得られるイノシトールが例示できる。好ましくは、米糠由来、コーン由来であって、より好ましくは、米糠由来である。
【0012】
本発明の油脂組成物は糖質を含有するが、糖質の含有量は、好ましくは、2重量ppm〜1500重量ppm、より好ましくは10重量ppm〜500重量ppm、さらに好ましくは10重量ppm〜300重量ppm、最も好ましくは10重量ppm〜150重量ppmである。2重量ppm未満では、風味改善効果が不十分となるため好ましくない。1500重量ppmを超えて加えても、添加量に相当する程度に風味改善効果が増強されない場合があるため好ましくない。
【0013】
本発明の油脂組成物は、糖質が油脂中に分散した状態であって、均質に分散した状態が好ましく、より好ましくは、糖質が水溶性であって、さらに好ましくは水溶液に溶解した状態で添加された糖質を含有する。
【0014】
本発明の油脂組成物は、前記糖質を含有するが、風味付与を目的として他の添加物を含有させても良い。他の添加物としては、米原油やごま原油に由来する成分が例示でき、米原油、ごま原油に由来する油溶性成分や水溶性成分が使用でき、油溶性成分としては、オリザノールが例示できる。その他、風味付与を目的として、米原油、米糠、脱脂米糠由来成分以外の、各種水溶性成分や油溶性成分を使用することができる。
【0015】
本発明の油脂組成物を得る方法は、効率的かつ均質に油脂中に分散できる点で、糖質を水性媒体に加えて、溶液状態で油脂に添加することが好ましい。例えば、糖質であるイノシトールを含有してなる油脂組成物を得ようとすれば、70℃に加熱した油脂中に1%イノシトール水溶液を規定量加え、50〜180℃、0.1kPa〜13kPaの減圧条件下で攪拌しながら15分間〜1時間処理して十分に脱水を行うことにより、イノシトールを含有する油脂組成物を得ることができる。また、上記の方法以外にイノシトールの結晶が析出しないよう油脂へ分散させる方法があれば適宜用いることができ、その場合に乳化剤を用いてもよい。
【0016】
本発明の油脂組成物は、本発明の有効成分を効率良く含有させるために、乳化剤を使用しても良い。乳化剤は、W/O型乳化作用を有する乳化剤であれば特に制限はなく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を使用することができる。好ましい乳化剤として、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが使用できる。例えば、市販されている理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100、ポエム PR-300、阪本薬品工業株式会社製 SYグリスターCRS-75、SYグリスターCR-ED、太陽化学株式会社製 サンソフト818H等が例示できる。油脂組成物中の乳化剤含有量は脱脂米糠由来成分の含有量の4倍以下であることが好ましく、より好ましくは3倍以下である。乳化剤が糖質の含有量の4倍を超えると、得られる効果との対比で、非効率であるため好ましくない。また、乳化剤由来の好ましくない風味も感じられる場合があるため好ましくない。
【0017】
本発明の油脂組成物に使用することができる油脂の種類は特に限定はされないが、一般に用いられている食用油脂より適宜選択して用いることが出来る。大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、落花生油、ひまわり油、こめ油、ベニバナ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、エゴマ油、グレープシード油、亜麻仁油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂並びに牛脂、豚脂等の動物脂が例示でき、必要に応じてこれらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂の単品又は、これらの組み合わせでも良い。好ましくは、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、パーム油である。かかる油脂の加工油脂も使用できるし、これらの組み合わせでも良い。液体油から融点の高い油脂に至るまで幅広い油脂を適用できる。
【0018】
本発明の油脂組成物は、良好なコク味を有することを特徴とする。本発明の油脂組成物は米油やごま油が使用されている用途や、米油やごま油が使用されている食品に好適に使用できるが、かかる用途や食品に限定されることなく、良好な風味や、コク味が求められる油脂組成物の用途や食品に使用することができる。好ましい食品は、良好なコク味が重視される、スナック菓子や米菓であるが、良好なコク味が食品の特徴として有用とされるマーガリン、ショートニング、練り込みなど、用途は限定されないが、加熱工程を経る食品において好適に使用できる。加熱調理とは、ポテトチップやあられ、天ぷらといったフライ油としての使用法に加え、本発明の油脂組成物をバターのように菓子生地に練り込み、焼成するクッキーや、食品表面に油脂組成物をスプレーし、オーブンで焼成するオーブンフライ用食品、食品中に油脂組成物を含有し、レンジアップする冷凍食品などが例示できる。
【0019】
本発明の油脂組成物を用いた食品の製造法は、公知の方法を使用することができる。スナック菓子であるポテトチップの製造法を例示すると、じゃがいもを薄くスライスした後、水にさらして表面の糖質を洗い流す。十分に水気を取り、本発明の油脂組成物を用いて170℃、2分間フライすることで、良好なコク味を有するポテトチップが得られる。また、米菓の製造法を例示すると、うるち米やもち米を、蒸し・練り・成型・乾燥といった工程を経た後、本発明の油脂組成物を用いてフライすることで、良好なコク味を有するあられや揚げせんべいといった米菓を得ることができる。
【0020】
前記のとおり、本発明の油脂組成物を使用することで、食品の風味を改善し良好なコク味を付与することができる。スナック菓子であるポテトチップや米菓では、米油や、米油を含む食用油脂を用いて、フライ調理することで得られる米油に由来する特徴的な風味が好まれる傾向にあるが、本発明の油脂組成物を使用することで、米油配合量の減少、あるいは、米油不使用でも、良好な風味となる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
【0022】
[油脂組成物Aの作製]
イノシトール(築野食品工業株式会社製、商品名:イノシトール(米糠由来)、純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン(不二製油株式会社製、商品名:ユニバー100N)100重量部に対し1%イノシトール含有水溶液を0.5重量部加えて混合し、60℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行った。脱水処理を行った後、TOYO No.5C濾紙(1μm相当)にて濾過し、イノシトールを16.1重量ppm含有するパームオレインを得た。かかるイノシトール含有パームオレイン31.1部とイノシトール無添加のパームオレイン43.9部、米油(不二製油株式会社製、商品名:食用こめ油)25部を混合し、イノシトール含量が5.0重量ppmの油脂組成物Aを得た。
【0023】
[油脂組成物Bの作製]
イノシトール(築野食品工業株式会社製、商品名:イノシトール(米糠由来)、純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.003部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液0.15部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が15重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Bとして使用した。
【0024】
[油脂組成物Cの作製]
イノシトール(築野食品工業株式会社製、商品名:イノシトール(米糠由来)、純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.02部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液1.0部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が100重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Cとして使用した。
【0025】
[油脂組成物Dの作製]
イノシトール(築野食品工業株式会社製、商品名:イノシトール(米糠由来)、純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.06部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液3.0部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が300重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Dとして使用した。
【0026】
[油脂組成物Eの作製]
グルコース(キシダ化学製)を水に加え溶解し、1%グルコース含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.003部を加えて溶解し、1%グルコース含有水溶液0.15部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、グルコース含量が15重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Eとして使用した。
【0027】
[油脂組成物Fの作製]
マルチトール(キシダ化学製)を水に加え溶解し、1%マルチトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.003部を加えて溶解し、1%グルコース含有水溶液0.15部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、マルチトール含量が15重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Fとして使用した。
【0028】
[油脂組成物Gの作製]
50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、0.5部の米糠由来不けん化物(築野食品工業株式会社製、商品名:ライステロールエステル)を添加し、油脂組成物Gとして使用した。
【0029】
<油脂の加熱処理方法>
各油脂組成物を、180℃、1時間加熱した。
<油脂の風味評価方法>
パネラー10名により、油脂の風味を以下の基準に従い評価した。「△」以上を合格とした。
「×」コク味付与効果なし
「△」コク味付与効果がある
「○」コク味付与効果が優れている
「◎」コク味付与効果が非常に優れている
【0030】
<ポテトチップの作製方法>
じゃがいもを厚さ0.5mmにスライスした後、水に30分間さらした。十分に水気を取り、各フライ油で180℃、2分間フライして、ポテトチップを得た。
【0031】
<ポテトチップの評価方法>
パネラー10名により、以下の基準に従い評価した。「△」以上を合格とした。
「×」コク味付与効果なし
「△」コク味付与効果がある
「○」コク味付与効果が優れている
「◎」コク味付与効果が非常に優れている
【0032】
[比較例1]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、パームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部を使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0033】
[比較例2]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、パームオレイン50部、米油50部の混合油100重量部を使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0034】
[実施例1]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Aを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0035】
[実施例2]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Bを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0036】
[実施例3]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Cを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0037】
[実施例4]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Dを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0038】
[実施例5]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Eを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0039】
[実施例6]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Fを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0040】
[比較例3]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Gを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0041】
[比較例4]
油脂組成物Bを使用して油脂を加熱せずに、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。
【0042】
【表1】
【0043】
(表1の考察)
比較例1は、コク味が弱く不合格であった。
実施例1〜実施例6は、コク味が付与されており合格であった。そのうち実施例2〜実施例5はより好ましいコク味であった。実施例2と実施例3は、比較例2と同等なコク味が得られていた。
比較例3、4は不合格であった。
【0044】
[比較例5]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油にパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部を使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0045】
[比較例6]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油にパームオレイン50部、米油50部の混合油100重量部を使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0046】
[実施例7]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Aを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0047】
[実施例8]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Bを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0048】
[実施例9]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Cを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0049】
[実施例10]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Dを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0050】
[実施例11]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Eを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0051】
[実施例12]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Fを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0052】
[比較例7]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Gを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。
【0053】
【表2】
【0054】
(表2の考察)
比較例5は、コク味が弱く不合格であった。
実施例7〜実施例12は、コク味が付与されており合格であった。そのうち実施例8〜実施例10はより好ましいコク味であった。実施例8と実施例9は、比較例6と同等なコク味が得られていた。
比較例7は不合格であった。
【0055】
[油脂組成物Hの作製]
コーン由来イノシトール(敷島スターチ株式会社製 純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.003部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液0.15部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が15重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Hとして使用した。
【0056】
[油脂組成物Iの作製]
合成イノシトール(Fluka社製、純度:99%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.003部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液0.15部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が15重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Iとして使用した。
【0057】
[油脂組成物Jの作製]
コーン由来イノシトール(敷島スターチ株式会社製 純度:97%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.02部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液1.0部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が100重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Jとして使用した。
【0058】
[油脂組成物Kの作製]
合成イノシトール(Fluka社製、純度:99%以上)を水に加え、1%イノシトール含有水溶液を作製する。次いで50℃に加温したパームオレイン75部、米油25部の混合油100重量部に対し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR-100)0.02部を加えて溶解し、1%イノシトール含有水溶液1.0部加えた後、ホモミキサー(TK ROBO MIX:特殊機化工業株式会社製)にて10000rpmで10分の撹拌を行った。その後、50℃、1.6kPa(12torr)の減圧条件下で、攪拌しながら30分間脱水処理を行って得られた、イノシトール含量が100重量ppmの油脂をそのまま、他の食用油脂を配合せずに油脂組成物Kとして使用した。
【0059】
[実施例13]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Hを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0060】
[実施例14]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Iを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0061】
[実施例15]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Jを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0062】
[実施例16]
上記の油脂の加熱処理方法に従い、油脂組成物Kを使用して油脂を加熱し、上記の油脂の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0063】
[実施例17]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Hを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0064】
[実施例18]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Iを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0065】
[実施例19]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Jを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0066】
[実施例20]
上記のポテトチップの作製方法に従い、フライ油に油脂組成物Kを使用してポテトチップを作製し、上記の評価方法に従い評価した。結果を表3にまとめた。
【0067】
【表3】
【0068】
(表3の考察)
実施例13〜実施例16は、コク味が付与されており、好ましいコク味であった。
実施例17〜実施例20は、得られたポテトチップスにも、コク味が付与されており、好ましいコク味であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、平易な方法で、良好なコク味を有する油脂組成物が得られ、かかる油脂組成物を使用することで、良好なコク味を有する食品が提供できるようになった。