【文献】
山田 貴、他,石英系PLC-LiNbO2ハイブリッド集積技術を用いたマッハツェンダ干渉計型高速光変調器及び光スイッチの開発,第69回応用物理学会学術講演会講演予稿集,日本,2008年09月 日,p.48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、光変調器では、入力用の光ファイバと出力用の光ファイバとがそれぞれパッケージの両側に直列に接続される。しかしながら、入力用の光ファイバと出力用の光ファイバとが光変調器の両側に接続されると、光変調器全体のサイズが大きくなり、実装面積が増大してしまう。
【0003】
そこで、光変調器において、並列に配置された入力用の光ファイバ及び出力用の光ファイバをパッケージの片側に接続することにより、実装面積の削減が図られることがある。
【0004】
並列に配置された入力用の光ファイバ及び出力用の光ファイバに接続される光変調器では、入力用の光ファイバの端部と、出力用の光ファイバの端部との間において光の方向転換が行われる。このような光の方向転換に関する技術として、例えばミラー及び光変調チップを用いる技術が提案されている。この技術では、入力用の光ファイバの端部から出射される光をミラーによって入射面となる光変調チップの側面に反射し、反射された光を光変調チップ上の光導波路の屈曲部によって光変調チップの側面に直交する一端面に伝搬させつつ光変調を行う。光変調によって得られた光ビームは、出射面となる光変調チップの一端面から出力用の光ファイバの端部へ出力される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する光変調器及び光モジュールの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
【0012】
(実施例1)
図1は、実施例1に係る光変調器100の構成例を示す図である。
図1に示す光変調器100は、並列に配置された光ファイバ110a、110bに接続される。そして、光変調器100は、フェルール120a、120b、レンズ130、光路変換部140、光変調チップ150、中継基板154、レンズ群160、偏波合成部170、レンズ180及びパッケージ190を有する。
【0013】
フェルール120a、120bは、それぞれ光ファイバ110a、110bの先端を収納し、光ファイバ110a、110bの位置を固定する。
図1に示す光変調器100においては、光ファイバ110a及びフェルール120aから信号光が入力され、フェルール120b及び光ファイバ110bから信号光が出力される。
【0014】
レンズ130は、フェルール120aに収納された光ファイバ110aの端部から出射される信号光を平行光に変換し、得られた光ビームを光路変換部140へ入力する。
【0015】
光路変換部140は、レンズ130から入力される光ビームをフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に向けて折り返す。具体的には、光路変換部140は、第1のプリズム141及び第2のプリズム142を有する。第1のプリズム141は、レンズ130から入力される光ビームを反射して当該光ビームの進行方向を90°回転させる。第2のプリズム142は、第1のプリズム141によって進行方向が90°回転された光ビームを反射して当該光ビームの進行方向を90°回転させる。このように、第1のプリズム141及び第2のプリズム142によって光ビームの進行方向が合計で180°回転されることにより、レンズ130から入力される光ビームがフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に向けて折り返される。
【0016】
光変調チップ150は、光路変換部140によって折り返される光ビームを変調する。そして、光変調チップ150は、光変調により得られる光ビームを、レンズ群160、偏波合成部170及びレンズ180を介して、フェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部へ出力する。具体的には、光変調チップ150は、基板151、光導波路152、信号電極153を有する。
【0017】
基板151は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO
3(LN))などの電気光学結晶を用いた結晶基板である。基板151の端面151aは、光路変換部140に対向する。
【0018】
光導波路152は、基板151上の一部にチタン(Ti)などの金属膜を形成し熱拡散することによって形成される。光導波路152は、光路変換部140によって折り返される光ビームを基板151の長手方向に沿って基板151の端面151aから端面151aとは反対側の端面151bまで伝搬させつつ、信号電極153に供給される電気信号に基づく光変調を行う。そして、光導波路152は、光変調により得られる光ビームを基板151の端面151bからフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に向けて出力する。
図1の例では、光導波路152は、光路変換部140によって折り返される光ビームを2つに分岐し、それぞれの光ビームを基板151の端面151bまで伝搬させつつ光変調を行い、光変調により得られる2つの光ビームを基板151の端面151bから出力する。
【0019】
信号電極153は、光導波路152に沿って形成されるコプレーナ線路である。
図1の例では、光導波路152が4組の平行なマッハツェンダ型光導波路を含んでいるため、それぞれのマッハツェンダ型光導波路に対応する信号電極153が形成されている。信号電極153は、例えばそれぞれのマッハツェンダ型光導波路の上にパターニングされる。そして、光導波路152中を伝搬する光が信号電極153によって吸収されるのを防ぐために、基板151と信号電極153との間にバッファ層が設けられる。バッファ層としては、例えば厚さ0.2〜2μm程度の二酸化ケイ素(SiO
2)等を用いることができる。
【0020】
中継基板154は、光変調器100の外部から入力される電気信号を変調器チップ150へ中継し、変調器チップ150の信号電極153へ入力する。
【0021】
レンズ群160は、2つのコリメートレンズから構成され、光変調チップ150から出力される2つの光ビームをそれぞれ平行光に変換し、偏波合成部170へ向けて出力する。すなわち、レンズ群160は、2つの併進する光ビームを偏波合成部170へ出力する。レンズ群160が出力する2つの光ビームの偏波方向は同一である。
【0022】
偏波合成部170は、レンズ群160から出力される2つの光ビームを合成し、偏波方向が直交する2つの偏波を含む光ビームを出力する。すなわち、偏波合成部170は、レンズ群160から出力される一方の光ビームの偏波方向を回転させた後、他方のビームと合成し、得られた1つの光ビームを出力する。
【0023】
レンズ180は、偏波合成部170から出力される光ビームをフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に照射する。
【0024】
パッケージ190は、フェルール120a、120b、レンズ130、光路変換部140、光変調チップ150、レンズ群160及び偏波合成部170を収容する。パッケージ190の片側の側壁には、貫通路191が形成される。貫通路191は、例えばパッケージ190の側壁を貫通する貫通孔と貫通孔に接続する筒状部(パイプ)とから構成され、フェルール120a及びフェルール120bは、この貫通路191からパッケージ190の内部に挿通されて、パッケージ190に収容される。そして、貫通路191は、パッケージ190内の気密性を確保するために、フェルール120a及びフェルール120bがパッケージ190の内部に挿通された状態で、ハンダによって封止される。
【0025】
以上のように、本実施例によれば、並列な2つの光ファイバのうち一方の光ファイバの端部からの光を光路変換部により他方の光ファイバの端部に向けて折り返した後に、光変調チップによる光変調を行い、得られた光ビームを他方の光ファイバの端部へ出力する。このため、光変調チップ上の光導波路に屈曲部を設けることなく、並列な2つの光ファイバの端部間において光の方向転換を行うことができる。したがって、光変調チップにニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの電気光学結晶が適用された場合であっても、光変調チップ上の光導波路から光が漏出することがなく、結果として、光の方向転換に起因した損失を低減することができる。
【0026】
(実施例2)
実施例2の特徴は、並列な2つの光ファイバのうち一方の光ファイバの端部からの光を光変調チップにより変調した後に、光変調チップによって出力される光ビームを他方の光ファイバの端部へ折り返す点である。
【0027】
図2は、実施例2に係る光変調器200の構成例を示す図である。
図2において
図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図2に示す光変調器200は、フェルール120a、120b、光変調チップ250、中継基板154、レンズ群160、偏波合成部170、光路変換部240、レンズ280及びパッケージ190を有する。
【0028】
光変調チップ250は、フェルール120aに収納された光ファイバ110aの端部から出射される信号光を変調する。そして、光変調チップ250は、光変調により得られる光ビームを出力する。具体的には、光変調チップ250は、基板251、光導波路252、信号電極153を有する。
【0029】
基板251は、基本的には
図1に示した基板151に対応する。基板251の端面251aは、フェルール120aに収納された光ファイバ110aの端部に対向する。基板251の端面251aには、基板251の端面251a側の光導波路252の端面と、フェルール120aに収納された光ファイバ110aの端部とが接続された状態で、フェルール120aが固定される。これにより、レンズ等の光学部品を用いることなく、基板251の端面251a側の光導波路252の端面とフェルール120aに収納された光ファイバ110aの端部とを光学的に接続することができる。
【0030】
光導波路252は、基本的には
図1に示した光導波路152に対応する。光導波路252は、光ファイバ110aの端部から出射される信号光を基板251の長手方向に沿って基板251の端面251aから端面251aとは反対側の端面251bまで伝搬させつつ、信号電極153に供給される電気信号に基づく光変調を行う。そして、光導波路252は、光変調により得られる光ビームを基板251の端面251bからレンズ群160及び偏波合成部170を介して光路変換部240へ出力する。
図2の例では、光導波路252は、光ファイバ110aの端部から出射される信号光を2つに分岐し、それぞれの信号光を基板251の端面251bまで伝搬させつつ光変調を行い、光変調により得られる2つの光ビームを基板251の端面251bから出力する。
【0031】
光路変換部240は、偏波合成部170から出力される光ビームをフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に向けて折り返す。具体的には、光路変換部240は、第1のプリズム241及び第2のプリズム242を有する。第1のプリズム241は、偏波合成部170から出力される光ビームを反射して当該光ビームの進行方向を90°回転させる。第2のプリズム242は、第1のプリズム241によって進行方向が90°回転された光ビームを反射して当該光ビームの進行方向を90°回転させる。このように、第1のプリズム241及び第2のプリズム242によって光ビームの進行方向が合計で180°回転されることにより、偏波合成部170から出力される光ビームがフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に向けて折り返される。
【0032】
レンズ280は、光路変換部240によって折り返された光ビームをフェルール120bに収納された光ファイバ110bの端部に照射する。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、並列な2つの光ファイバのうち一方の光ファイバの端部からの光を光変調チップにより変調した後に、光変調チップによって出力される光ビームを光路変換部によって他方の光ファイバの端部へ折り返す。このため、光変調チップ上の光導波路に屈曲部を設けることなく、並列な2つの光ファイバの端部間において光の方向転換を行うことができる。したがって、光変調チップにニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの電気光学結晶が適用された場合であっても、光変調チップ上の光導波路から光が漏出することがなく、結果として、光の方向転換に起因した損失を低減することができる。
【0034】
また、本実施例によれば、光変調チップ(基板)の端面に、一方の光ファイバの端部を収納するフェルールを直接固定することができ、基板の端面側の光導波路の端面とフェルールに収納された光ファイバの端部とを光学的に接続するための光学部品が省略される。
【0035】
(実施例3)
実施例3の特徴は、並列な2つの光ファイバのうち一方の光ファイバの端部を収納するフェルールと、他方の光ファイバの端部を収納するフェルールとを一体的に成形された部品とする点である。
【0036】
図3は、実施例3に係る光変調器300の構成例を示す図である。
図3において
図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図3に示す光変調器300は、フェルール320、レンズ130、光路変換部140、光変調チップ150、中継基板154、レンズ群160、偏波合成部170、レンズ180及びパッケージ190を有する。
【0037】
フェルール320は、
図1に示したフェルール120aとフェルール120bとが一体的に成形されることで得られる部品である。すなわち、フェルール320は、光ファイバ110a、110bの先端を収納し、光ファイバ110a、110bの位置を同一の位置に固定する。
【0038】
以上のように、本実施例によれば、並列に配置された光ファイバ110a、110b間の距離を近づけても、光ファイバ110a、110bの先端を一つのフェルール320によって収納することができる。したがって、フェルール320のサイズ、及びフェルール320が挿通されるパッケージ190の貫通路191のサイズを共に小さくすることができ、ハンダによる貫通路191の封止が安定化され、パッケージ190の気密性を向上することが可能となる。
【0039】
なお、上記実施例1では、フェルール120a及びフェルール120bが、パッケージ190の貫通路191からパッケージ190の内部に挿通されて、パッケージ190に収容される例を示した。しかしながら、フェルール120a及びフェルール120bは、パッケージ190の2つの貫通路からパッケージ190の内部に挿通されて、パッケージ190に収容されても良い。
【0040】
図4は、変形例に係る光変調器400の構成例を示す図である。
図4において
図1と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4に示す光変調器400において、パッケージ190の片側の側壁には、貫通路191−1、191−2が形成される。貫通路191−1、191−2の各々は、例えばパッケージ190の側壁を貫通する貫通孔と貫通孔に接続する筒状部(パイプ)とから構成される。フェルール120aは、貫通路191−1からパッケージ190の内部に挿通されて、パッケージ190に収容される。そして、貫通路191−1は、パッケージ190内の気密性を確保するために、フェルール120aがパッケージ190の内部に挿通された状態で、ハンダによって封止される。また、フェルール120bは、貫通路191−2からパッケージ190の内部に挿通されて、パッケージ190に収容される。そして、貫通路191−2は、パッケージ190内の気密性を確保するために、フェルール120bがパッケージ190の内部に挿通された状態で、ハンダによって封止される。このような構成により、パッケージ190の貫通路191−1、191−2の各々のサイズを小さくすることができ、ハンダによる貫通路191−1、191−2の封止が安定化され、パッケージ190の気密性を向上することが可能となる。
【0041】
また、上記各実施例及び変形例において説明した光変調器100〜400は、例えば光信号を送受信する送受信装置などの光モジュールに配置することができる。
図5は、このような光モジュール500の構成例を示す図である。
図5に示すように、光モジュール500の内部には、光変調器100が配置される。
【0042】
ここで、上記実施例1において説明したように、光変調器100は、並列な2つの光ファイバのうち一方の光ファイバの端部からの光を他方の光ファイバの端部に向けて折り返した後に、光変調を行い、得られた光ビームを他方の光ファイバの端部へ出力する。これにより、光の方向転換に起因した損失が低減され、光モジュール500は、光信号を効率よく送受信することができる。
【0043】
また、上記実施例では、光路変換部として、第1のプリズムと第2のプリズムとを用いた例を示したが、光路変換部として、コーナキューブプリズムなどを用いても良い。