特許第6938903号(P6938903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6938903車両における衝突回避装置および衝突回避方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6938903
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】車両における衝突回避装置および衝突回避方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210909BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20210909BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20210909BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20210909BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B62D6/00
   B60W30/09
   B60W30/095
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-242119(P2016-242119)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-97648(P2018-97648A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 慶
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小栗 崇治
(72)【発明者】
【氏名】馬場 崇弘
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−044461(JP,A)
【文献】 特開2010−083314(JP,A)
【文献】 特開2010−097261(JP,A)
【文献】 特開2005−149402(JP,A)
【文献】 特開2008−102690(JP,A)
【文献】 特開2005−135025(JP,A)
【文献】 特開2006−298294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B62D 6/00
B60W 30/09
B60W 30/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(500)における衝突回避装置(10)であって、
対象物を検知する対象物検知部(21、21、22)と、
前記対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両(M2、M3)の属性を取得する属性取得部(100、101、P1)と、
前記属性取得部によって取得された前記属性が、継続的な監視により前記対向車両が中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が中央線(CL)をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する衝突回避実行部(31、100、101、P2)とを備える、車両における衝突回避装置。
【請求項2】
車両(500)における衝突回避装置(10)であって、
中央線を含む対象物を検知する対象物検知部(21、21、22)と、
前記対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両(M2、M3)の属性を取得する属性取得部(100、101、P1)と、
前記属性取得部によって取得された前記属性が、継続的な監視により前記対向車両が中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が前記中央線(CL)をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する衝突回避実行部(31、100、101、P2)とを備える、車両における衝突回避装置。
【請求項3】
車両(500)における衝突回避装置(10)であって、
対象物を検知する対象物検知部(21、21、22)と、
前記対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両(M2、M3)の属性を取得する属性取得部(100、101、P1)であって、継続的な監視により前記対向車両が中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有するか否か、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあるか否か、前記対向車両が自車両に対して直進しているか否かの属性を取得する属性取得部と、
前記属性取得部によって取得された前記属性が、前記対向車両中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が中央線(CL)をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する衝突回避実行部(31、100、101、P2)とを備える、車両における衝突回避装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部は、自車両が中央線に沿って走行している場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、車両における衝突回避装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部は、衝突可能性の報知の後に、衝突回避操作を実行する、車両における衝突回避装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部は、前記対象物検知部による検知結果を用いて、自車両の待避スペース(FS)が確認できた場合に、前記待避スペースへの衝突回避操作を実行する、車両における衝突回避装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両における衝突回避装置において、
前記対象物検知部は、単眼撮像装置(22)およびレーダ(21、21s)または単眼撮像装置およびライダーの組み合わせである、車両における衝突回避装置。
【請求項8】
請求項6に記載の車両における衝突回避装置において、
前記対象物検知部は、単眼撮像装置(22)およびレーダ(21、21s)または単眼撮像装置およびライダーの組み合わせである、車両における衝突回避装置。
【請求項9】
請求項8記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部は、自車両の走行車線内において、前記単眼撮像装置によって空きスペースを検出し、前記レーダまたはライダーによって前記空きスペースに有効なミリ波反射点が検出されない、場合に前記待避スペースを確認する、車両における衝突回避装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部により実行される衝突回避操作は、操舵部(505)を介した回避操作である、車両における衝突回避装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両における衝突回避装置において、
前記衝突回避実行部により実行される衝突回避操作は、さらに、制動部(502)を介した制動支援を含む、車両における衝突回避装置。
【請求項12】
車両における衝突回避方法であって、
対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両の属性を取得し、
取得された前記属性が、継続的な監視により前記対向車両中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が中央線をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、ことを備える、車両における衝突回避方法。
【請求項13】
車両における衝突回避方法であって、
中央線を含む対象物を検知する対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両の属性を取得し、
取得された前記属性が、継続的な監視により前記対向車両前記中央線に近接または前記中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が前記中央線をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、ことを備える、車両における衝突回避方法。
【請求項14】
車両における衝突回避方法であって、
対象物検知部による検知結果を用いて、継続的な監視により前記対向車両が中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有するか否か、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあるか否か、前記対向車両が自車両に対して直進しているか否かを示す対向車両の属性を取得し、
取得された前記属性が、前記対向車両中央線に近接または中央線をはみ出すという回避履歴を有することを示すと共に、前記対向車両と自車両(M1)とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、前記対向車両が中央線をはみ出していると判定し、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、ことを備える、車両における衝突回避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両における衝突回避装置および衝突回避方法に関し、特には、対向車両に対する衝突回避の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやレーダといった対象物検知器からの検知結果を用いて、自車両の前方に存在する他車両や障害物といった対象物との衝突を回避するための技術が実用化されている。障害物回避技術において、運転者が十分認知している対象物に対する衝突可能性の報知や衝突回避制御の実行は運転者にとって煩わしさを与える。そこで、運転者が認識できていないと推測される対象物について、運転者に対して報知、あるいは、衝突防止の制御を行う技術が提案されている(例えば、引用文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−106805号公報
【0004】
しかしながら、衝突回避の対象物が対向車両である場合、対向車両はその位置が動的に変動する対象物であり、対向車両の挙動の予測は容易ではないという問題がある。また、対面通行路においては、自車両に対する対向車両は断続的に存在する。さらに、対向車両に対する衝突回避においては、操舵制御や制動制御を伴うので、対向車両以外の対象物、例えば、他車両との衝突可能性や他車両に与える影響をも考慮することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、衝突の可能性が高い場合に、対向車両との衝突回避を実行することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の態様として実現することが可能である。
【0007】
第1の態様は、車両における衝突回避装置を提供する。第1の態様に係る車両における衝突回避装置は、対象物を検知する対象物検知部と、前記対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両の属性を取得する属性取得部と、前記属性取得部によって取得された前記属性を用いて、前記対向車両が中央線をはみ出していると判定した場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する衝突回避実行部とを備える。
【0008】
第1の態様係る車両における衝突回避装置によれば、衝突の可能性が高い場合に、対向車両との衝突回避を実行することができる。
【0009】
第2の態様は、車両における衝突回避方法を提供する。第2の態様に係る車両における衝突回避方法は、対象物検知部による検知結果を用いて、対向車両の属性を取得し、前記属性取得部によって取得された前記属性を用いて、前記対向車両が中央線をはみ出していると判定した場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、ことを備える。
【0010】
第2の態様係る車両における衝突回避方法によれば、衝突の可能性が高い場合に、対向車両との衝突回避を実行することができる。なお、本開示は、車両における衝突回避プログラムまたは当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能記録媒体としても実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る衝突回避装置が搭載された車両を示す説明図。
図2】第1の実施形態に係る衝突回避装置が備える制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図3】第1の実施形態に係る衝突回避装置によって実行される対向車両との衝突を回避するための処理フローを示すフローチャート。
図4】第1の実施形態における、衝突回避処理が実行される際の第1の例示的な自車両と対向車両との位置関係を模式的に示す説明図。
図5】第1の実施形態における、自車両と対向車両とのラップ率を求める際の自車両と対向車両との位置関係を模式的に示す説明図。
図6】第1の実施形態における、衝突回避処理が実行される際の第2の例示的な自車両と対向車両との位置関係を模式的に示す説明図。
図7】第1の実施形態における、衝突回避処理が実行される際の第3の例示的な自車両と対向車両との位置関係を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る車両における衝突回避装置および車両における衝突回避方法について、いくつかの実施形態に基づいて以下説明する。
【0013】
第1の実施形態:
図1に示すように、第1の実施形態に係る衝突回避装置10は、車両500に搭載されて用いられる。衝突回避装置10は、制御装置100、ミリ波レーダ21、21s、単眼カメラ22、ヨーレートセンサ23、車輪速度センサ24、舵角センサ25、制動支援アクチュエータ30および操舵支援アクチュエータ31を備えている。車両500は、車輪501、制動装置502、制動ライン503、ステアリングホイール504、フロントガラス510およびフロントバンパ520を備えている。なお、車両は、対象物検知部として、ミリ波レーダ21、21s、単眼カメラ22、および、ライダー(LIDAR:レーザレーダ)のうち少なくとも単眼カメラ22を備えていれば良く、本実施形態においては、ミリ波レーダ21、21s、および単眼カメラ22が対象物検知部として備えられている。
【0014】
車両500において、制動装置502は、各車輪501に備えられている。各制動装置502は、運転者の制動ペダル操作に応じて制動ライン503を介して供給されるブレーキ液圧によって各車輪501の制動を実現する。制動ライン503には制動ペダル操作に応じたブレーキ液圧を派生させるブレーキピストンおよびブレーキ液ラインが含まれる。本実施形態においては、制動支援アクチュエータ30が制動ライン503に備えられ、制動ペダル操作とは独立して液圧制御が可能であり、これにより制動支援が実現される。なお、制動ライン503としては、ブレーキ液ラインに代えて、制御信号線とし、各制動装置502に備えられているアクチュエータを作動させる構成が採用されても良い。ステアリングホイール504は、ステアリングロッドを含む操舵機構505を介して前側の車輪501と接続されている。本実施形態においては、運転者によるステアリングホイール504の操作とは独立して前側車輪501の操舵を実行可能な操舵支援アクチュエータ31が操舵機構505、例えば、ステアリンロッド、に備えられており、これにより操舵支援が実現される。
【0015】
図2に示すように、制御装置100は、中央処理装置(CPU)101、メモリ102、入出力インタフェース103およびバス104を備えている。CPU101、メモリ102および入出力インタフェース103はバスを介して双方向通信可能に接続されている。メモリ102は、対向車両の属性を取得するための属性取得プログラムP1および操舵機構505による操舵の支援および制動装置502による制動の支援により衝突回避を実行するための衝突回避プログラムP2を不揮発的且つ読み出し専用に格納するメモリ、例えばROMと、CPU101による読み書きが可能なメモリ、例えばRAMとを含んでいる。CPU101はメモリ102に格納されている属性取得プログラムP1を読み書き可能なメモリに展開して実行することによって属性取得部として機能し、同様に衝突回避プログラムP2を実行することによって衝突回避実行部として機能する。なお、衝突回避実行部には、CPU101からの制御信号を受けて操舵機構505に対して操舵支援のために回転トルクを付与する操舵支援アクチュエータ31、制動ライン503に対して制動支援のためのブレーキ液圧を印加する制動支援アクチュエータ30も含まれる。また、衝突回避実行部は、衝突回避の実行を制御する衝突回避プログラムP2を実行して各アクチュエータに対して制御信号を送信する制御部としてのCPU101および衝突回避のために制動装置502および操舵機構505を駆動する駆動部としての制動支援アクチュエータ30および操舵支援アクチュエータ31とに区分することも可能である。CPU101は、単体のCPUであっても良く、各プログラムを実行する複数のCPUであっても良く、あるいは、複数のプログラムを同時実行可能なマルチスレッドタイプのCPUであっても良い。
【0016】
入出力インタフェース103には、ミリ波レーダ21、21s、単眼カメラ22、ヨーレートセンサ23、車輪速度センサ24、舵角センサ25および制動支援アクチュエータ30がそれぞれ制御信号線を介して接続されている。ミリ波レーダ21、21s、単眼カメラ22、ヨーレートセンサ23、車輪速度センサ24および舵角センサ25からは、検知情報が入力され、制動支援アクチュエータ30に対しては制動レベルを指示する制御信号が出力され、操舵支援アクチュエータ31に対しては操舵角を指示する制御信号が出力される。
【0017】
ミリ波レーダ21、21sはミリ波を射出し、対象物によって反射された反射波を受信することによって対象物の距離、相対速度および角度を検知するセンサである。本実施形態において、ミリ波レーダ21は、フロントバンパ520の中央に配置され、2つのミリ波レーダ21sはそれぞれフロントバンパ520の両側面に配置されている。ミリ波レーダ21、21sから出力される検知信号は、例えば、ミリ波レーダ21、21sが備える処理回路において受信波が処理された対象物の1または複数の代表位置を示す点または点列からなる信号であっても良く、あるいは、未処理の受信波を示す信号であっても良い。未処理の受信波が検出信号として用いられる場合には、制御装置100において対象物の位置および距離を特定するための信号処理が実行される。なお、ミリ波レーダに代えて、ライダーが用いられても良い。
【0018】
単眼カメラ22は、CCD等の撮像素子を1つ備える撮像装置であり、可視光を受光することによって対象物の外形情報を検知結果である画像データとして出力するセンサである。単眼カメラ22から出力される画像データは、時系列的に連続する複数のフレーム画像によって構成されており、各フレーム画像は画素データにより表されている。本実施形態において、単眼カメラ22はフロントガラス510の上部中央に配置されている。単眼カメラ22から出力される画素データは、モノクロの画素データまたはカラーの画素データである。なお、単眼カメラ22に代えて複眼のステレオカメラが用いられても良い。
【0019】
ヨーレートセンサ23は、車両500の回転角速度を検出するセンサである。ヨーレートセンサ23は、例えば、車両の中央部に配置されている。ヨーレートセンサ23から出力される検出信号は、回転方向と角速度に比例する電圧値である。
【0020】
車輪速度センサ24は、車輪501の回転速度を検出するセンサであり、各車輪501に備えられている。車輪速度センサ24から出力される検出信号は、車輪速度に比例する電圧値または車輪速度に応じた間隔を示すパルス波である。車輪速度センサ24からの検出信号を用いることによって、車両速度、車両の走行距離等の情報を得ることができる。
【0021】
舵角センサ25は、ステアリングホイール504の操舵によりステアリンロッドに生じるねじれ量、すなわち、操舵トルク、を検出するトルクセンサである。本実施形態において、舵角センサ25は、ステアリングホイール504と操舵機構とを接続するステアリングロッドに備えられている。舵角センサ25から出力される検出信号は、ねじれ量に比例する電圧値である。
【0022】
制動支援アクチュエータ30は、運転者による制動ペダル操作とは無関係に制動装置502による制動を実現するためのアクチュエータである。なお、制動支援アクチュエータ30には、CPU101からの制御信号に基づきアクチュエータの動作を制御するドライバが実装されている。本実施形態において、制動支援アクチュエータ30は、制動ライン503に備えられており、制御装置100からの制御信号に従って制動ライン503における油圧を増減させる。制動支援アクチュエータ30は、例えば、電動モータと電動モータにより駆動される油圧ピストンとを備えるモジュールから構成されている。あるいは、横滑り防止装置、アンチロックブレーキシステムとして既に導入されている制動制御アクチュエータが用いられても良い。
【0023】
操舵支援アクチュエータ31は、運転者によるステアリングホイール504の操作とは無関係に操舵機構505による操舵を実現するためのアクチュエータである。なお、操舵支援アクチュエータ31には、CPU101からの制御信号に基づきアクチュエータの動作を制御するドライバが実装されている。本実施形態において、操舵支援アクチュエータ31は、操舵機構505に含まれるステアリングロッド、あるいは、ラックアンドピニオンギヤ部に備えられており、制御装置100からの制御信号に従って操舵機構505による舵角を変化させる。操舵支援アクチュエータ31は、例えば、電動モータと減速機とを備えるモジュールから構成されている。このモジュールは、油圧式パワーステアリングを備える操舵機構505に新たに装備されても良く、あるいは、電動パワーステアリング用のアクチュエータとして既に導入されている電動モータと減速機とを備えるモジュールと兼用されも良い。
【0024】
図3図7を参照して、第1の実施形態に係る衝突回避装置10により実行される衝突回避処理について説明する。図3に示す処理ルーチンは、CPU101が属性取得プログラムP1および衝突回避プログラムP2を実行することによって、例えば、車両の制御システムの始動時から停止時まで、または、スタートスイッチがオンされてからスタートスイッチがオフされるまで、所定の時間間隔にて繰り返して実行される。図4に示す状況を例にとって以下説明する。なお、属性取得プログラムP1と衝突回避プログラムP2とは異なるタイミングにて起動される別々の処理ルーチンであっても良い。例えば、対向車両M2、M3の属性を取得する属性取得プログラムP1は、自車両M1の起動時、あるいは、自車両M1が走行可能状態にある場合には継続的に実行され、衝突回避プログラムP2は、対向車両M2、M3が中央線CLを自車両車線側にはみ出していることが判定されたことをトリガに実行されても良い。
【0025】
図4に示す状況において、CPU101は、対向車両M2、M3の属性を取得する(ステップS100)。本実施形態において、対向車両M2、M3とは、自車両M1に対して対向する進行中の車両を意味する。CPU101は、ミリ波レーダ21、21sからの検知結果を用いて、例えば、自車両M1から対向車両M2、M3までの距離、自車両M1に対する対向車両M2、M3の相対速度、対向車両M2、M3の向き、自車両M1と対向車両M2、M3とのラップ率、対向車両M2、M3と衝突するまでの衝突予想時間(TTC)を対向車両M2、M3の属性情報として算出、取得する。CPU101は、また、単眼カメラ22からの画像データを用いて、例えば、他車両M2、M3の外形寸法、自車両M1に対する相対位置、中央線に対する対向車両M2、M3の位置を対向車両M2、M3の属性情報として算出、取得する。なお、対向車両M2、M3の向き、自車両M1と対向車両M2、M3とのラップ率については、ミリ波レーダ21、21sからの検知結果と単眼カメラからの画像データとを用いてデータフュージョン処理を実行することによって判定精度を向上させることができる。ラップ率とは。自車両M1の横幅と対向車両M2、M3との幅方向、すなわち横方向における重なりの割合を意味する。
【0026】
対向車両M2、M3の向きは、例えば、以下のように特定される。CPU101は、ミリ波レーダ21、21sから入力される検知結果としての検出点と、予め用意されている自車両M1からの距離に応じた車両正面の横幅寸法とを用いて車両正面に相当する座標値を特定する。CPU101は、特定した車両正面の横幅を超える座標位置に存在する車両側面に相当する検出点が存在する場合、縦方向、すなわち、自車両M1の進行方向の座標値が予め用意された車両の全長寸法に相当する座標値未満である検出点を特定する。本実施例では、特に断らない限り、車線に平行な方向を縦方向、車線に垂直な方向を横方向と呼ぶ。CPU101は、車両正面の横幅の端点の座標値と車両側面に相当する検出点の座標値を結ぶ直線の傾きから対向車両M2、M3の向きを特定する。あるいは、CPU101は、データフュージョン処理により、単眼カメラ22から入力される画像データから抽出された車両の正面領域および側面領域に、ミリ波レーダ21、21sから入力された各検出点の座標位置を重ね合わせ、各検出点の座標値を用いて対向車両M2、M3の向きを特定しても良い。
【0027】
ミリ波レーダ21、21sの分解能が高く、対象物を表す複数の検出点が点列として出力される場合には、点列を用いて上記手法に倣って対向車両M2、M3の向きが特定されれば良い。さらには、中央線CLに対する対向車両M2、M3の車両正面の傾きによって対向車両M2、M3の向きが決定されても良い。中央線CLは後述する手法によって特定可能であり、対向車両M2、M3の車両正面の幅方向の直線を表す座標は既述のように点列の座標値を用いて特定可能である。
【0028】
図5を例にとって、自車両M1と対向車両M2、M3とのラップ率の算出について説明する。CPU101は、ミリ波レーダ21、21sから入力された車両正面に相当する検出点または幅方向に並ぶ点列と予め用意されている自車両M1からの距離に応じた車両正面の横幅寸法とを用いて対向車両M2、M3の最近接端部WP1の座標を特定する。対向車両M2、M3の最近接端部WP1とは、自車両M1に対して最も近い距離にある対向車両M2、M3の端部であり、左側通行の場合には、対向車両M2、M3の右前端部が、右側通行の場合には、対向車両M2、M3の左前端部が該当する。なお、以下では、説明を簡易にするため左側通行を例にとって説明する。CPU101は、自車両M1の最近接端部WP2を対向車両M2、M3に向けて延伸させた延伸線EL1と対向車両M2、M3の正面に沿う幅方向の延伸線EL2との交点ISの座標値を求め、最近接端部WPの座標値との幅方向の差分LPを算出し、算出した幅方向の座標値差分の寸法と自車両M1の幅寸法との重なり割合を算出してラップ率を取得する。
【0029】
CPU101は、さらに、対向車両M2、M3の挙動を継続的に監視し、属性情報として、障害物回避履歴フラグを設定する。障害物回避履歴フラグは、対向車両M2が対向車線における静止車両または対向車両M2に先行する対向車両M3の後方または斜め後方に存在した事象、および、静止車両または対向車両M3(以下、「障害物車両」ともいう。)を追い越そうとした事象の双方が記録された場合にオン、すなわち、障害物回避履歴有りに設定される。CPU101は、各事象が発生する度にメモリ102に記録し、両事象が記録されると、障害物回避履歴フラグをオンする。対向車両M2が障害物車両M3の後方または斜め後方に存在したことの事象は、継続的に入力されるミリ波レーダ21、21sからの検知結果を用いて対向車両M2の位置座標が障害物車両M3の位置座標の後方または斜め後方に存在することが検知されると記録される。対向車両M2が障害物車両M3を追い越そうとしたことの事象は、継続的に入力されるミリ波レーダ21、21sからの検知結果を用いて対向車両M2の位置座標が障害物車両M3の位置座標の横にあり、あるいは、対向車両M2が横速度を有しており、対向車両M2の縦方向の対地速度V2(km/h)が障害物車両M3の縦方向の対地速度V3(km/h)よりも大きいことを検知すると記録される。各事象を経時的に記録することにより各事象についての履歴を得ることができる。
【0030】
CPU101は、以下の条件のいずれか1つがが満たされると障害物回避履歴なし、すなわち、障害物回避履歴フラグをオフする。
(i)|対向車両横位置|≧|障害物車両横位置|−α
対向車両が自車両の車線を交差する旋回、すなわち、右折を行った場合には、監視対象の対向車両は存在しなくなるので、障害物回避履歴フラグをオフする。なお、上記式において、横位置は各車両における横方向の座標値であり、自車両に対して最近接端の座標値を意味、αは、例えば、一車線の幅寸法に相当する値である。
(ii)対向車両が障害物車両と同一車線内に収まっている
この場合には、対向車両は既に障害物車両を追い抜き対向車線内に収まっている、あるいは、障害物車両の追い越しをあきらめ対向車線内に収まっているので、衝突の可能性は低下し、衝突回避の必要性は解消したと考えることができる。
(iii)障害物回避履歴あり、が一定時間以上継続している
障害物回避履歴ありの判定から一定時間以上、すなわち、タイムアウト時間以上経過すると、対向車両の障害物回避の情報は古くなり、信頼性が低下する。そこで、障害物回避履歴フラグがオンされてから一定時間以上経過した時点で、障害物回避履歴フラグをクリアする。
【0031】
CPU101は、取得した属性情報を用いて対向車両M2、M3が中央線CLを自車両車線側にはみ出しているか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、CPU101は、単眼カメラ22から入力された画像データからパターンマッチング法を用いて中央線CLに相当する画素領域、および対向車両M2、M3に相当する画素領域を抽出し、抽出された対向車両M2、M3に相当する画素領域の位置座標と中央線CLに相当する画素領域の位置座標とを用いて、対向車両M2、M3が中央線CLをはみ出しているか否かを判定する。
【0032】
図4の例では、対向車両M2が中央線CLをはみ出しており、CPU101は、対向車両M2は中央線CLをはみ出していると判定し(ステップS102:Yes)、ステップS104に移行する。一方、CPU101は、中央線CLをはみ出している対向車両が存在しない場合には(ステップS102:No)、本処理ルーチンを終了する。
【0033】
ステップS104においてCPU101は、自車両M1の位置を取得する。具体的には、CPU101は、単眼カメラ22から入力された画像データから中央線CLを抽出し、中央線CLに対する自車両M1の位置を取得する。中央線CLに対する自車両M1の位置とは、図4に示すように自車両M1が中央線CLに接する車線を走行中である、あるいは、図7に示すように自車両M1が中央線CLに接しない車線を走行中である、の2つの対応を意味する。自車両M1が走行中の道路が1車線道路の場合、自車両M1は必ず中央線CLに接する車線を走行することになる。一方、自車両M1が走行中の道路が2車線以上の道路の場合、自車両M1は中央線CLに接する車線あるいは中央線CLに接しない車線を走行することになる。さらには、自車両M1が中央線CLに接する車線を走行中とは、左側通行の場合、自車両M1の右側の線が中央線CLであることを意味し、右側通行の場合、自車両M1の左側の線が中央線CLであることを意味する。
【0034】
CPU101は、対向車両M2の属性情報および自車両M1の位置を用いて衝突回避の報知を要するか否かを判定する(ステップS106)。CPU101は、以下の条件の少なくとも1つが満たされる場合に、報知を要すると判定する。
(1)自車両M1が中央線CLに接する車線を走行中、
(2)対向車両M2が直進中である、
(3)対向車両M2に障害物回避履歴がある、
(4)自車両M1と対向車両M2とのラップ率が予め定められた範囲である。なお、条件(2)〜(4)が優先して判定されても良く、条件(1)を考慮することによって、更に、衝突可能性が低い場合における衝突回避の実行を低減することができる。また、判定される条件数が増えるに連れて衝突可能性が高いと判定することが可能になる。
【0035】
(1)の条件はステップS104において取得された自車両M1の位置により判定さ、(2)の条件は対向車両M2の向きにより判定され、(3)の条件は障害物回避履歴フラグにより判定され、(4)の条件における予め用意された範囲は、例えば、0〜50%、より好ましくは30〜50%であり、対向車両の属性を取得した際に求められたラップ率が、これら予め用意された範囲に入る場合に(4)の条件は満たされる。なお、ラップ率の上限を50%とするのは、操舵支援によって衝突回避すべき衝突態様は、衝突による衝撃が偏る車両損傷が大きい傾向になるいわゆるオフセット衝突であり、ラップ率が50%を超える、いわゆるフルラップ衝突の場合には、車両全体で衝撃を受け止めることができると共に、操舵支援による衝突回避によって却ってオフセット衝突を招く事態を回避するためである。
【0036】
CPU101は、(1)〜(4)の条件のいずれか1つでも満たされていない判断した場合(ステップS106:No)、本処理ルーチンを終了する。CPU101は、(1)〜(4)の条件が満たされていると判断した場合に(ステップS106:Yes)、衝突予想時間TTC(s)が報知を要する判定時間TTC1(s)以下であるか否かを判定する(ステップS108)。CPU101は、TTC>TTC1であると判定した場合(ステップS108:No)、本処理ルーチンを終了する。自車両M1と対向車両M2との衝突を回避するまでに十分な時間がある場合、すなわち、少なくともTTC1よりも長い時間がある場合、には報知を行わず、運転者による自発的な回避を待機する。CPU101は、TTC≦TTC1であると判定した場合(ステップS108:Yes)には、衝突回避を促す報知を実行する(ステップS110)。報知は、音声並びにメータパネルまたはフロントガラス510における表示の少なくともいずれか一方によって実行され得る。加えて、ステアリングホイール504を振動させる等の報知が実行されても良い。
【0037】
CPU101は、ミリ波レーダ21、21sからの検知結果、単眼カメラ22からの画像データを用いて自車両M1が中央線CLから離間する方向の車線上の道路環境を取得し、自車両M1が対向車両M2との衝突を回避するための待避スペースを確認する(ステップS112)。なお、確認とは待避スペースの存在の特定、判断を意味する。具体的には、CPU101は、単眼カメラ22からの画像データ中に自車両M1の左側の道路上の予め定められている想定待避領域に何かしらの対象物を示す画素領域が存在するか否か、換言すれば空きスペースが検知できるか否かを判定し、主にミリ波レーダ21sの検知結果を用いて想定待避領域内に対象物が存在するか否か、すなわち、マンホールや道路上の上方構造物を示す有効なミリ波反射点が検出されるか否かを判定する。CPU101は、単眼カメラ22からの画像データを用いて想定待避領域に何かしらの対象物を示す画素領域が存在すると判定した場合には、ミリ波レーダ21sを用いて想定待避領域中の対象物を示す画素領域に対応する座標位置までの距離を求める。CPU101は、ミリ波レーダ21sおよび単眼カメラ22からの検知結果および画像データを用いて、図4に示すように自車両M1の左側車線または車線路肩に対象物が存在しない場合には、自車両M1を前方左側に進行(軌跡AS)させることが可能な待避スペースFSが存在すると判定する。加えて、CPU101は、想定待避領域中の対象物を示す画素領域に対応する座標位置までの距離と、対象物と自車両M1との相対速度を求め、対象物に衝突することなく自車両M1を前方左側に進行(軌跡AS)させられるか否かを判定しても良い。例えば、図6に示すように、二車線道路において、路肩側の車線に他車両M4が存在する場合であっても、自車両M1の速度が時速V1、他車両M4の速度が時速V3であり、自車両に対する相対速度(V3−V1)が0km/h以上であれば、他車両M4と衝突することなく左前方に進路変更(軌跡AS)可能な待避スペースFSが存在する。さらには、対象物の相対速度が0km/h未満であっても、制動支援によって対象物に衝突することなく停止できる距離に対象物が位置する場合には左前方に進路変更可能な待避スペースFSが存在する。
【0038】
CPU101は、待避スペースFSへの待避が可能であるか否か、すなわち、待避スペースFSが存在するか否かを判定する(ステップS114)。CPU101は、待避スペースFSへの待避が可能でないと判定した場合(ステップS114:No)には、本処理ルーチンを終了する。衝突回避を実行することによって他車両を含む対象物との衝突を招くことを回避するためである。なお、CPU101は、以下の条件を再度判定しても良い。
(1)自車両M1が中央線CLに接する車線を走行中、
(2)対向車両M2が直進中である、
(3)対向車両M2に障害物回避履歴がある、
(4)自車両M1と対向車両M2とのラップ率が予め定められた範囲である
【0039】
CPU101は、待避スペースFSへの回避が可能であると判定した場合(ステップS114:Yes)には、衝突予想時間TTC(s)が衝突回避を要する判定時間TTC2(s)以下であるか否かを判定する(ステップS116)。CPU101は、TTC>TTC2であると判定した場合(ステップS116:No)、本処理ルーチンを終了する。自車両M1と対向車両M2との衝突を回避するまでに十分な時間がある場合、すなわち、少なくともTTC2よりも長い時間がある場合、には衝突回避を行わず、運転者による自発的な回避を待機する。CPU101は、TTC≦TTC2であると判定した場合(ステップS116:Yes)には、衝突回避を実行し(ステップS118)、本処理ルーチンを終了する。衝突回避は、例えば、図4および図6における軌跡ASに沿うように自車両M1の進路を変更させることにより実行される。CPU101は、待避スペースFSへ進路変更するための操舵角を決定し、決定した操舵角を指示する制御信号が操舵支援アクチュエータ31に送信する。操舵支援アクチュエータ31は、決定された操舵角を実現するよう操舵機構505を作動させて自車両M1の向きを左側に向ける。さらに、自車両M1の左側前方に対象物が存在する交通環境下で衝突回避を実行する場合には、制動支援アクチュエータ30を用いた制動支援が同時に実行されても良い。制動支援量は、自車両M1の左側前方に位置する対象物と自車両M1との距離および相対速度に応じてCPU101によって決定される。
【0040】
左側前方への車線変更の際には、さらに、車両後方に存在する後方車両の存非を判定し、後方車両との接触を招くことなく車線変更できる場合に、待避スペースFSへの待避が可能であると判断しても良い。後方車両の検知には、例えば、車両後部バンパの側方に備えられているミリ波レーダ、パーキングセンサとして車両後部バンパに備えられている超音波センサからの検知信号を用いることができる。
【0041】
以上説明した第1の実施形態に係る衝突回避装置10および衝突回避方法によれば、対向車両M2、M3の属性に基づき、対向車両M2、M3が中央線をはみ出している場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行するので、対向車両M2、M3との衝突の可能性が高い場合に衝突回避を実行することができる。すなわち、衝突回避の要否判断の精度を向上させることが可能となり、不要な衝突回避の実行を低減させることできる。特に、ミリ波レーダ21、21sおよび単眼カメラ22の組み合わせは、対処物が存在することの検知精度に比べて対象物が存在しないことの検知精度は低い傾向にある。したがって、対向車両M2、M3が中央線をはみ出している場合、すなわち、対向車両M2、M3との衝突の可能性が高い場合に衝突回避を実行することが特に望ましい。
【0042】
加えて、第1の実施形態においては、(1)自車両M1が中央線CLに接する車線を走行中であり、中央線CLをはみ出し自車両M1に向かってくる対向車両M2との衝突可能性が有る場合、(2)対向車両M2が直進中であり、中央線CLをはみ出したままでは自車両M1との衝突可能性が高い場合、に衝突回避操作が実行される。したがって、衝突回避の要否判断の精度、すなわち、対向車両M2、M3との衝突の可能性が高い状況の判断精度を向上させることができる。
【0043】
衝突回避の対象物が対向車両M2、M3である場合、対向車両M2、M3はその位置が動的に変動する対象物であり、対向車両M2、M3の挙動の予測は容易ではないが、第1の実施形態においては、障害物回避履歴をひも付けて対向車両M2、M3の挙動を監視しているので、対向車両M2、M3が中央線CLをはみ出す傾向にある対向車両M2であるか否かを認識することができる。また、中央分離帯を備えない対面通行路においては、自車両M1に対する対向車両M2、M3は断続的に存在するが、第1の実施形態においては、中央線CLをはみ出す対向車両M2のみを回避対象とすると共に、中央線CLのはみ出しを衝突回避処理の実行トリガとしているので、不要な衝突回避を避けること、すなわち、現実に衝突回避を要する場合に衝突回避支援を実行することができる。さらに、対向車両M2に対する衝突回避においては、操舵制御や制動制御を伴うので、対向車両以外の対象物、例えば、自車両M1の前方を進行中の他車両M4との衝突可能性や自車両M1の後方を進行中の他車両に与える影響をも考慮することが求められる。第1の実施形態においては、自車両M1の前方を進行中の他車両M4の挙動、例えば、対地速度に基づく相対速度を衝突回避処理実行の開始条件としているので、他車両M4との衝突は生じない。また、自車両M1の後方を進行中の他車両については、他車両の挙動を検知し、他車両と衝突し得る状況においては衝突回避処理を実行しないことにより、他車両との衝突を防いでいる。
【0044】
・変形例:
(1)上記第1の実施形態においては、少なくとも対象物検知部として単眼カメラ22を備えているが、中央線CLを識別できる対象物検知部が少なくとも備えられていれば良い。例えば、ライダーの分解能が向上され、中央線CLを識別可能となった場合には、ライダーのみが備えられていても良い。あるいは、ステレオカメラのみが備えられていても良い。
【0045】
(2)第1の実施形態においては、対向車両M2の属性は、対象物検知部としてのミリ波レーダ21、21s、単眼カメラ22、あるいは、ライダーおよびステレオカメラからの検知信号または画像データを用いて判定されている。これに対して、車両間通信システムを介して取得される他車両の挙動に関するデータ、例えば、舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量を用いて対向車両M2の属性が判定されても良い。
【0046】
(3)第1の実施形態においては、衝突回避の報知、衝突回避の実行を連続的に行っているが、衝突回避の報知のみ、あるいは、衝突回避の実行のみが実行されても良い。いずれの場合であっても、対向車両M2との衝突可能性が高い場合に、衝突回避の報知、または衝突回避の実行を実行することが可能となり、不要な衝突回避に関する処理の実行を低減することができる。
【0047】
(4)第1の実施形態においては、CPU101が属性取得プログラムP1および衝突回避プログラムP2を実行することによって、ソフトウェア的に属性取得部および衝突回避実行部が実現されているが、予めプログラムされた集積回路またはディスクリート回路によってハードウェア的に実現されても良い。
【0048】
以上、実施形態、変形例に基づき本開示について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物が含まれる。たとえば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記第1の態様に係る車両における衝突回避装置を適用例1とし、
適用例2:適用例2に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部は、取得された前記属性が、前記対向車両に中央線に近接または中央線をはみ出す回避履歴、前記対向車両と自車両とのラップ率が予め規定された範囲にあること、前記対向車両が自車両に対して直進していること、の少なくともいずれか一つを示す場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、車両における衝突回避装置。
適用例3:適用例1または2に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部は、自車両が中央線に沿って走行している場合に、衝突可能性の報知および衝突回避操作の少なくともいずれか一方を実行する、車両における衝突回避装置。
適用例4:適用例1から3のいずれか一の適用例に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部は、衝突可能性の報知の後に、衝突回避操作を実行する、車両における衝突回避装置。
適用例5:適用例4に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部は、前記対象物検知部による検知結果を用いて、自車両の待避スペースが確認できた場合に、前記待避スペースへの衝突回避操作を実行する、車両における衝突回避装置。
適用例6:適用例1から5のいずれか一の適用例に記載の車両における衝突回避装置において、前記対象物検知部は、単眼撮像装置およびレーダまたは単眼撮像装置およびライダーの組み合わせである、車両における衝突回避装置。
適用例7:適用例6に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部は、自車両の走行車線内において、前記単眼撮像装置によって空きスペースを検出し、前記レーダまたはライダーによって前記空きスペースに有効なミリ波反射点が検出されない、場合に前記待避スペースを確認しても良い。
適用例8:適用例1から7のいずれか一の適用例に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部により実行される衝突回避操作は、操舵部を介した回避操作である、車両における衝突回避装置。
適用例9:適用例8に記載の車両における衝突回避装置において、前記衝突回避実行部により実行される衝突回避操作は、さらに、制動部を介した制動支援を含む、車両における衝突回避装置。
【符号の説明】
【0049】
10…衝突回避装置、21、21s…ミリ波レーダ、22…単眼カメラ、23…ヨーレートセンサ、24…車輪速度センサ、25…舵角センサ、30…制動支援アクチュエータ、31…操舵支援アクチュエータ、100…制御装置、101…CPU、102…メモリ、103…入出力インタフェース、104…バス、500…車両、501…車輪、502…制動装置、503…制動ライン、504…ステアリングホイール、505…操舵機構、510…フロントガラス、520…フロントバンパ、AS…軌跡、CL…中央線、EL1、EL2…延伸線、FS…待避スペース、IS…交点、LP…差分、M1…自車両、M2…他車両、対向車両、M3…障害物車両、対向車両、M4…他車両、P1…属性取得プログラム、P2…衝突回避プログラム、TTC…衝突予想時間、TTC1、TTC2…判定時間、V1、V2、V3…時速、対地速度、WP…最近接端部、WP1、WP2…最近接端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7