(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記内層を形成するポリウレタン塗料において、主剤が有する水酸基(OH基)と硬化剤が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO/OH)が、0.50以上2.0以下である、請求項1から12のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
[第一実施形態]
図1に示されたゴルフボール2は、本体4と、この本体4の外側に位置するペイント層6とを有している。本体4は、球状のコア8と、このコア8の外側に位置する中間層10と、この中間層10の外側に位置するカバー12とを有している。ペイント層6は、カバー12の外側に位置する内層14と、この内層14の外側に位置する外層16とを有している。このゴルフボール2は、その表面に複数のディンプル18を有している。ゴルフボール2の表面のうちディンプル18以外の部分は、ランド20である。このゴルフボール2が、マーク層を有してもよい。このマーク層は、カバー12とペイント層6との間に位置してもよく、ペイント層6の外側に位置してもよい。マーク層が、内層14と外層16との間に位置してもよい。ペイント層6は、内層14と外層16との間に、さらに他の層を備えうる。
【0023】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0024】
打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量Sbは、1.80mm以上が好ましく、1.90mm以上がより好ましく、2.00mm以上が特に好ましい。スピン性能の観点から、圧縮変形量Sbは、3.30mm以下が好ましく、3.20mm以下がより好ましく、3.10mm以下が特に好ましい。圧縮変形量Sbの測定方法については、後述する。
【0025】
コア8は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0026】
好ましくは、コア8のゴム組成物は、共架橋剤を含む。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物が、共架橋剤と共に有機過酸化物を含むことが好ましい。好ましい有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。特に汎用性の高い有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイドである。
【0027】
コア8のゴム組成物は、有機硫黄化合物を含みうる。有機硫黄化合物の例として、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、4−クロロ−1−ナフタレンチオール等のナフタレンチオール系化合物;ベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、3−ブロモベンゼンチオール、4−シアノベンゼンチオール等のベンゼンチオール系化合物及びジフェニルスルフィド、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィド(PBPS)等のジスルフィド系化合物が挙げられる。2−ナフタレンチオール、ジフェニルスルフィド及びビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィド(PBPS)が好ましい。2種以上の有機硫黄化合物が、併用されてもよい。
【0028】
コア8のゴム組成物が、前述した共架橋剤とは別に、カルボン酸及び/又はその金属塩を含んでもよい。カルボン酸成分の炭素数が1以上30以下であるカルボン酸及び/又はその金属塩が、好ましい。好適なカルボン酸としては、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、10−ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸等が例示される。カルボン酸金属塩を構成する金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム等が例示される。
【0029】
スピン抑制の観点から、カルボン酸及び/又はその金属塩の量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。コントロール性能の観点から、カルボン酸及び/又はその金属塩の量は、基材ゴム100質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。2種以上のカルボン酸及び/又はその金属塩が併用されてもよい。
【0030】
コア8のゴム組成物が、比重調整等のための充填剤を含んでもよい。好適な充填剤として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コア8の意図した比重が達成されるように適宜決定される。さらに、このゴム組成物は、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤及び分散剤のような添加剤を含みうる。ゴム組成物が、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末を含んでもよい。
【0031】
コア8の質量は、10g以上42g以下が好ましい。コア8の架橋温度は、140℃以上180℃以下である。コア8の架橋時間は、10分以上60分以下である。
【0032】
反発性能の観点から、コア8の直径は、30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。スピン性能の観点から、コア8の直径は、42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。コア8が、2以上の層を有してもよい。コア8が、その表面にリブを有してもよい。コア8が中空であってもよい。
【0033】
コントロール性能及び耐久性の観点から、コア8の中心点におけるショアC硬度Hoは40以上が好ましく、50以上がより好ましい。打球感の観点から、硬度Hoは、75以下が好ましく、65以下がより好ましい。アプローチ性能の観点から、コア8の表面におけるショアC硬度Hsは、60以上が好ましく、70以上がより好ましい。打球感の観点から、硬度Hsは、95以下が好ましく、90以下がより好ましい。
【0034】
飛行性能の観点から、硬度Hsと硬度Hoとの差(Hs−Ho)は、10以上が好ましく、15以上がより好ましい。ゴルフボール2のスピン性能を過度に抑制しないとの観点から、差(Hs−Ho)は、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
【0035】
自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計が、コア8が切断されて得られる半球の断面中心に押しつけられることにより、硬度Hoが測定される。この硬度計が、コア8の表面に押しつけられることにより、硬度Hsが測定される。測定は、いずれも、23℃の環境下でなされる。
【0036】
打球感の観点から、コア8の圧縮変形量Scは、2.50mm以上が好ましく、2.60mm以上がより好ましく、2.70mm以上が特に好ましい。反発性能の観点から、圧縮変形量Scは、3.90mm以下が好ましく、3.80mm以下がより好ましく、3.70mm以下が特に好ましい。圧縮変形量Scの測定方法については、後述する。
【0037】
このゴルフボール2では、コア8の外側に中間層10が形成されている。中間層10が2以上の層から構成されてもよい。中間層10とコア8との間に、さらに他の層を備えてもよい。
【0038】
中間層10は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0039】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、中間層10の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
【0040】
中間層10の樹脂組成物が、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。比重調整の目的で、この樹脂組成物がタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末を含んでもよい。
【0041】
耐久性及び飛行性能の観点から、中間層10のショアD硬度Hmは、40以上が好ましく、50以上が特に好ましい。コントロール性能及び打球感の観点から、硬度Hmは、90以下が好ましく、80以下が特に好ましい。中間層10が2以上の層からなる場合、中間層10をなす各層の硬度が、この数値範囲を満たすことが好ましい。硬度Hmの測定方法については、後述する。
【0042】
耐久性及び飛行性能の観点から、中間層10の厚みTmは、0.2mm以上が好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、厚みTmは、2.5mm以下が好ましく、2.2mm以下が特に好ましい。中間層10の厚みTmは、ランド20の直下において測定される。中間層10が2以上の層からなる場合、中間層10をなす全ての層の合計厚みが、この数値範囲を満たすことが好ましい。
【0043】
中間層10の比重は、0.90以上が好ましく、0.95以上が特に好ましい。中間層10の比重は、1.10以下が好ましく、1.05以下が特に好ましい。
【0044】
このゴルフボール2では、中間層10の外側にカバー12が形成されている。カバー12が、2以上の層から構成されてもよい。中間層10とカバー12との間に、さらに他の層を備えてもよい。
【0045】
カバー12は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、ポリウレタンである。樹脂組成物が、熱可塑性ポリウレタンを含んでもよく、熱硬化性ポリウレタンを含んでもよい。生産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。基材がポリウレタンであるカバー12は、ゴルフボール2のスピン性能に寄与しうる。さらにこのカバー12は、ゴルフボール2の打球感にも寄与しうる。
【0046】
ポリウレタンは、分子内にウレタン結合を有する。このウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によって形成されうる。
【0047】
ウレタン結合の原料であるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールが用いられうる。
【0048】
ポリウレタン成分のイソシアネートとして、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。特に、脂環式ジイソシアネートが好ましい。脂環式ジイソシアネートは主鎖に二重結合を有さないので、カバー12の黄変が抑制される。脂環式ジイソシアネートとして、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。汎用性及び加工性の観点から、H
12MDIが好ましい。
【0049】
ポリウレタンに代えて、カバー12の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
【0050】
カバー12の樹脂組成物が、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。
【0051】
このゴルフボール2において、カバー12のショアD硬度Hcは、20以上50未満が好ましい。硬度Hcが20以上であるカバー12を有するゴルフボール2は、耐汚染性及び耐久性に優れる。この観点から、カバー12の硬度Hcは22以上がより好ましく、24以上が特に好ましい。硬度Hcが50未満であるカバー12を有するゴルフボール2は、アプローチショットでのスピン性能及び打球感に優れる。この観点から、カバー12の硬度Hcは48以下がより好ましく、46以下が特に好ましい。カバー12が2以上の層から構成される場合、カバー12をなす各層の硬度が、この数値範囲を満たすことが好ましい。
【0052】
カバー12(又は中間層10)の硬度は、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して測定される。自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアD型硬度計により、硬度が測定される。測定には、熱プレスで成形された、カバー12(又は中間層10)の材料と同一の材料からなる、厚みが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。
【0053】
このゴルフボール2において、このカバー12の厚みTcは0.1mm以上2.0mm以下が好ましい。厚みTcが0.1mm以上であるカバー12は、アプローチショットでのスピン性能及び打球感に寄与する。この観点から、カバー12の厚みTcは、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上が特に好ましい。厚みTcが2.0mm以下のカバー12を有するゴルフボール2は、飛行性能に優れる。この観点から、カバー12の厚みTcは、1.5mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。カバー12の厚みTcは、ランド20の直下において測定される。カバー12が2以上の層から構成される場合、カバー12をなす全ての層の合計厚みが、この数値範囲を満たすことが好ましい。
【0054】
ゴルフボール2が、中間層10とカバー12との間に、補強層を備えてもよい。補強層は、中間層10と堅固に密着し、カバー12とも堅固に密着する。補強層は、中間層10からのカバー12の剥離を抑制する。補強層は、ポリマー組成物からなる。補強層の基材ポリマーとして、二液硬化型エポキシ樹脂及び二液硬化型ウレタン樹脂が例示される。
【0055】
このゴルフボール2では、カバー12の外側に、ペイント層6が形成されている。図示される通り、このペイント層6は、内層14と外層16とを有している。本発明では、内層14の押し込み深さDiと、外層16の押し込み深さDoとが、それぞれ測定される。
【0056】
他の実施形態において、ペイント層6が、3以上の層を有してもよい。このペイント層6をなす3以上の層のうち、カバー12に最も近接する層が最内層と称され、カバー12から最も離れた層が最外層と称される。この実施形態では、ペイント層6の最内層の押し込み深さがDiとして測定され、ペイント層6の最外層の押し込み深さがDoとして測定される。
【0057】
押し込み深さの測定では、ゴルフボール2が割られて、半球が得られる。この半球には、ゴルフボール2の中心を通過する断面が露出する。この断面は、ペイント層6の断面を含んでいる。ペイント層6の断面には、内層14の断面と外層16の断面とが含まれる。クライオミクロトームにより、この半球の断面が水平とされる。この断面に、ナノインデンターの圧子が当てられ、断面に対して垂直な方向に押圧される。押圧により、圧子は進行する。圧子の荷重と進行距離とが、計測される。測定時の条件は、以下の通りである。
ナノインデンター:株式会社エリオニクスの「ENT−2100」
温度:30℃
圧子:バーコビッチ圧子(65.03° As(h)=26.43h
2)
分割数:500ステップ
ステップインターバル:20msec (100mgf)
圧子の荷重は、50mgfに到達するまで、徐々に高められる。荷重が30mgfであるときの圧子の進行距離(nm)が、押し込み深さとして計測される。
【0058】
ゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面のうち、内層14の断面において計測される圧子の進行距離が、内層14の押し込み深さDiである。外層16の断面において計測される圧子の進行距離が、外層16の押し込み深さDoである。押し込み深さDiと押し込み深さDoとは、カバー12の硬度の影響を受けることなく測定される。押し込み深さDiによって、内層14の硬度が精度よく評価される。押し込み深さDoによって、外層16の硬度が精度よく評価される。
【0059】
本発明において、内層14の押し込み深さDiは、外層16の押し込み深さDoよりも小さい。換言すれば、この内層14は、外層16よりも硬い。硬い内層14は、ウェット状態での大きなスピン速度に寄与する。このゴルフボール2では、押し込み深さDiが小さい内層14によって、ウェット状態のアプローチショットのコントロール性能が向上する。一方、この外層16は、内層14と比較して、柔軟である。柔軟な外層16は、ドライ状態での大きなスピン速度に寄与する。この外層16を有するゴルフボール2は、ドライ状態でのアプローチショットにおけるコントロール性能に優れる。
【0060】
ウェット状態でのコントロール性及び耐汚染性の観点から、内層14の押し込み深さDiは、1000nm未満が好ましく、900nm以下がより好ましく、800nm以下が特に好ましい。ドライ状態でのコントロール性及び打球感の観点から、内層14の押し込み深さDiは、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、300nm以上が特に好ましい。
【0061】
ドライ状態でのコントロール性及び打球感の観点から、外層16の押し込み深さDoは1000nm以上が好ましく、1100nm以上がより好ましく、1200nm以上が特に好ましい。ウェット状態でのコントロール性及び耐汚染性の観点から、外層16の押し込み深さDoは、3000nm以下が好ましく、2900nm以下がより好ましく、2800nm以下が特に好ましい。
【0062】
ウェット状態及びドライ状態でのコントロール性能両立の観点から、外層16の押し込み深さDoと内層14の押し込み深さDiとの差(Do−Di)は、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましい。ペイント層6の耐久性の観点から、この差(Do−Di)は、1800nm以下が好ましく、1700nm以下がより好ましく、1600nm以下が更に好ましい。
【0063】
前述した通り、このゴルフボール2では、カバー12が、アプローチショットでのスピン性能に寄与する。硬度Hcが20以上50未満であるカバー12との相乗効果の観点から、より好ましい差(Do−Di)は、200nm以上1800nm以下である。硬度Hcが20以上50未満のカバー12と、差(Do−Di)が200nm以上1800nm以下のペイント層6とを有するゴルフボール2では、ウェット状態及びドライ状態でのコントロール性能が高いレベルで両立される。
【0064】
アプローチショットでのスピン性能の観点から、内層14の厚みTiは5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上が特に好ましい。同様の観点から、厚みTiは50μm以下が好ましく、40μm以下とより好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0065】
アプローチショットでのスピン性能の観点から、外層16の厚みToは5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上が特に好ましい。同様の観点から、厚みToは50μm以下が好ましく、40μm以下とより好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0066】
内層14の厚みTiと外層16の厚みToとの和(Ti+To)は、10μm以上100μm以下が好ましい。ペイント層6が、内層14と外層16との間に他の層を有している場合、ペイント層6を形成する全ての層の合計厚みが、10μm以上100μm以下とされる。この合計厚みが10μm以上のペイント層6は、ドライ状態及びウェット状態での大きなスピン速度に寄与しうる。この観点から、ペイント層6の合計厚みは、12μm以上がより好ましく、14μm以上が特に好ましい。合計厚みが、100μm以下のペイント層6を有するゴルフボール2では、カバー12による効果が阻害されない。この観点から、合計厚みは、80μm以下がより好ましく、60μm以下が特に好ましい。
【0067】
ドライ状態でのコントロール性能の観点から、内層14の厚みTiに対する外層16の厚みToの比(To/Ti)は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が特に好ましい。ウェット状態でのコントロール性能の観点から、比(To/Ti)は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
【0068】
内層14は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の基材樹脂として、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂及びポリエステルが例示される。特に好ましい基材樹脂は、ポリウレタンである。
【0069】
外層16は、樹脂組成物から形成されている。この樹脂組成物の基材樹脂として、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂及びポリエステルが例示される。特に好ましい基材樹脂は、ポリウレタンである。
【0070】
典型的には、内層14及び外層16は、それぞれ、ポリウレタン塗料から形成される。この塗料は、(A)ポリオール組成物と、(B)ポリイソシアネート組成物とを含有する。この塗料では、ポリオール組成物(A)が主剤であり、ポリイソシアネート組成物(B)が硬化剤である。
【0071】
ポリオール組成物(A)は、ポリオール化合物を含有する。ポリオール化合物は、分子中に2以上の水酸基を有する。(a1)分子鎖の末端に水酸基を有するポリオール化合物であってもよく、(a2)分子鎖の末端以外に水酸基を有するポリオール化合物であってもよい。ポリオール組成物(A)が、2種以上のポリオール化合物を有してもよい。
【0072】
分子鎖の末端に水酸基を有するポリオール化合物(a1)には、低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールが含まれる。低分子量ポリオールの数平均分子量は、500未満である。高分子量ポリオールの数平均分子量は、500以上である。低分子量ポリオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールのようなジオール;並びにグリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールのようなトリオールが例示される。
【0073】
高分子量のポリオールとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ウレタンポリオール及びアクリルポリオールが例示される。ポリエーテルポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)が例示される。ポリエステルポリオールとして、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)が例示される。ポリカプロラクトンポリオールとして、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)が例示される。ポリカーボネートポリオールとして、ポリヘキサメチレンカーボネートが例示される。
【0074】
ウレタンポリオールは、2以上のウレタン結合を有し、かつ2以上の水酸基を有する。ウレタンポリオールは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とが、ポリオール成分の水酸基がポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させられることで、得られうる。
【0075】
ウレタンポリオールの出発原料であるポリオール成分として、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール及びポリカーボネートジオールが例示される。好ましいポリオール成分は、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオールである。ポリオキシテトラメチレングリコールがより好ましい。
【0076】
ポリエーテルジオールの数平均分子量は、550以上が好ましい。この分子量が550以上であるポリエーテルジオールは、スピン性能に寄与しうる。この観点から、この分子量は600以上がより好ましく、630以上が特に好ましい。この分子量は、3,000以下が好ましい。この分子量が3,000以下であるポリエーテルジオールは、ペイント層6の耐汚染性に寄与しうる。この観点から、この分子量は2,500以下がより好ましく、2,000以下が特に好ましい。ポリオール成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。測定条件は、以下の通りである。
標準物質:ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:有機溶媒系GPC用カラム(昭和電工社の商品名「Shodex KFシリ ーズ」)
【0077】
ポリエーテルジオールを60質量%以上含んでなるウレタンポリオールが好ましい。このウレタンポリオールは、スピン性能に寄与しうる。この観点から、ウレタンポリオールにおけるポリエーテルジオールの含有率は62質量%以上がより好ましく、65質量%以上が特に好ましい。
【0078】
ウレタンポリオールの出発原料であるポリオール成分として、低分子量ポリオールが用いられうる。この低分子量ポリオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールのようなジオール;並びにグリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールのようなトリオールが例示される。出発原料として、2種以上の低分子量ポリオールが用いられてもよい。
【0079】
ウレタンポリオールの出発原料であるポリイソシアネート成分は、2以上のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート成分として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H
6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びノルボルネンジイソシアネート(NBDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びに脂肪族ポリイソシアネートが例示される。出発原料として、2種以上のポリイソシアネートが用いられてもよい。
【0080】
ウレタンポリオールの重量平均分子量は、4,000以上が好ましい。この分子量が4,000以上であるウレタンポリオールは、スピン性能に寄与しうる。この観点から、この分子量は4,300以上がより好ましく、4,500以上が特に好ましい。この分子量は、20,000以下が好ましい。この分子量が20,000以下であるウレタンポリオールは、ペイント層6の耐汚染性に寄与しうる。この観点から、この分子量は18,000以下がより好ましく、16,000以下が特に好ましい。
【0081】
ウレタンポリオールの水酸基価は、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上が特に好ましい。水酸基価は200mgKOH/g以下が好ましく、190mgKOH/g以下がより好ましく、180mgKOH/g以下が特に好ましい。水酸基価は、「JIS K 1557−1」の規定に準拠して測定される。測定には、アセチル化法が採用される。
【0082】
分子の末端以外に水酸基を有するポリオール化合物(a2)として、水酸基を有する修飾ポリロタキサン、及び水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体が例示される。
【0083】
水酸基を有する修飾ポリロタキサンは、シクロデキストリン、直鎖状分子及び封鎖基を有する。シクロデキストリンは、環状分子である。直鎖状分子は、シクロデキストリンを貫通している。封鎖基は、直鎖状分子の両末端に配置されている。この封鎖基は、直鎖状分子からのシクロデキストリンの脱離を防止する。このポリロタキサンでは、シクロデキストリンが直鎖状分子に沿って移動可能である。このポリロタキサンを含むペイント層6に張力が加わったとき、この張力が分散される。このペイント層6では、クラック及び傷が生じにくい。
【0084】
シクロデキストリンは、環状構造を有するオリゴ糖である。このシクロデキストリンでは、6個から8個のD−グルコピラノース残基がα―1,4−グルコシド結合により環状に結合している。シクロデキストリンとして、α−シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β−シクロデキストリン(グルコース数:7個)及びγ―シクロデキストリン(グルコース数:8個)が例示される。α−シクロデキストリンが好ましい。2種以上のクロデキストリンが併用されてもよい。
【0085】
シクロデキストリンを貫通する直鎖状分子として、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリエーテル及びポリアクリルが例示される。ポリエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
【0086】
この直鎖状分子の重量平均分子量は、5,000以上が好ましく、6,000以上が特に好ましい。この分子量は100,000以下が好ましく、80,000以下が特に好ましい。
【0087】
その両末端に官能基を有する直鎖状分子が、好ましい。この直鎖状分子は、封鎖基と容易に反応しうる。この官能基として、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びチオール基が例示される。
【0088】
封鎖基によるシクロデキストリンの脱離の防止方法として、嵩高い封鎖基による物理的防止方法、及びイオン性の封鎖基による静電気的防止方法が例示される。嵩高い封鎖基として、シクロデキストリン及びアダマンタン基が例示される。直鎖上分子が貫通しているシクロデキストリンの個数の、その最大数に対する比は、0.06以上0.61以下が好ましく、0.11以上0.48以下がより好ましく、0.24以上0.41以下が特に好ましい。この比が上記範囲内であるペイント層6は、物性に優れる。
【0089】
シクロデキストリンが有する水酸基の少なくとも一部が、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサンが好ましい。このポリロタキサンでは、ポリロタキサンと硬化剤であるポリイソシアネート化合物との立体障害が緩和される。
【0090】
以下、変性方法の一例が説明される。まず、シクロデキストリンの水酸基がプロピレンオキシドで処理され、ヒドロキシプロピル化される。次に、ε−カプロラクトンが添加され、開環重合がなされる。シクロデキストリンの環状構造の外側に、カプロラクトン鎖−(CO(CH
2)
5O)nHが、−O−C
3H
6−O−基を介して、結合する。nは、重合度を表し、1−100の自然数であることが好ましく、2−70の自然数であることがより好ましく、3−40の自然数であることが特に好ましい。カプロラクトン鎖の他方の末端には、開環重合により水酸基が形成される。この水酸基は、ポリイソシアネート化合物と反応しうる。
【0091】
変性前のシクロデキストリンが有する全水酸基(100モル%)に対する、カプロラクトン鎖で変性される水酸基の比率は、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。この比率が上記範囲内であるポリロタキサンは疎水性である。このポリロタキサンの、ポリイソシアネート化合物との反応性は、高い。
【0092】
ポリロタキサンの水酸基価は、10mgKOH/g以上400mgKOH/g以下が好ましい。このポリロタキサンのポリイソシアネート化合物との反応性は、高い。この観点から、水酸基価は15mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上が特に好ましい。水酸基価は300mgKOH/g以下がより好ましく、220mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0093】
ポリロタキサンの重量平均分子量は30,000以上3,000,000以下が好ましい。この分子量が30,000以上であるポリロタキサンは、ペイント層6の強度に寄与しうる。この観点から、この分子量は40,000以上がより好ましく、50,000以上が特に好ましい。この分子量が3,000,000以下であるポリロタキサンは、ペイント層6の柔軟性に寄与しうる。この観点から、この分子量は2,500,000以下がより好ましく、2,000,000以下が特に好ましい。この分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。測定条件は、以下の通りである。
標準物質:ポリスチレン
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:有機溶媒系GPC用カラム(昭和電工社の商品名「Shodex KFシリ ーズ」)
【0094】
ポリカプロラクトンで変性されたポリロタキサンの具体例として、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社のセルムスーパーポリマーSH3400P、SH2400P及びSH1310Pが例示される。
【0095】
分子鎖の末端以外に水酸基を有するポリオール化合物(a2)の一つである水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体は、ゴルフボール2のスピン性能に寄与しうる。この共重合体は、水酸基を有する単量体、塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合によって得られうる。この水酸基を有する単量体として、ポリビニルアルコール及びヒドロキシアルキルアクリレートが例示される。この共重合体は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化又は完全ケン化によっても得られうる。
【0096】
この水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体における、塩化ビニル成分の含有率は、1質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。この含有率は99質量%以下が好ましく、95質量%以下が特に好ましい。水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の具体例として、日信化学工業社の商品名「ソルバインA」、「ソルバインAL」及び「ソルバインTA3」が例示される。
【0097】
好ましいポリオール組成物(A)の態様として、以下が例示される。
態様1:数平均分子量が550以上3,000以下であるポリエーテルジオールを含有 するウレタンポリオールを含む組成物
態様2:シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、−O−C
3H
6−O−基を介 して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサンを含む組成物
【0098】
態様1のポリオール組成物(A)における、ポリオール化合物の全量に対するウレタンポリオールの量の比率は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。このポリオール組成物(A)が、ポリオール化合物として、ウレタンポリオールのみを含んでもよい。
【0099】
態様2のポリオール組成物(A)における、ポリオール化合物の全量に対するポリロタキサンの量の比率は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。この比率は100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0100】
態様2のポリオール組成物(A)は、好ましくは、ポリカプロラクトンポリオールを含有する。ポリカプロラクトンポリオールとポリロタキサンとの質量比は、0/100以上が好ましく、5/95以上がより好ましく、10/90以上が特に好ましい。この比は、90/10以下が好ましく、85/15以下がより好ましく、80/20以下が特に好ましい。
【0101】
態様2のポリオール組成物(A)は、好ましくは、前述の水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含有する。このポリオール組成物(A)における、ポリオール化合物の全量に対する水酸基変性塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の比率は、4質量%以上が好ましく、8質量%以上が特に好ましい。この比率は50質量%以下が好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
【0102】
硬化剤であるポリイソシアネート組成物(B)は、ポリイソシアネート化合物を含有する。ポリイソシアネート化合物は、2以上のイソシアネート基を有する。
【0103】
ポリイソシアネート化合物として、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ジイソシアネート類;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(H
6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びノルボルネンジイソシアネート(NBDI)のような脂環式又は脂肪族ジイソシアネート類;並びにジイソシアネートのアロハネート体、ビュレット体、イソシアヌレート体及びアダクト体のようなトリイソシアネート類が例示される。ポリイソシアネート組成物(B)が、2種以上のポリイソシアネート化合物を含んでもよい。
【0104】
好ましいトリイソシアネート類として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が例示される。
【0105】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物(B)は、トリイソシアネート類を含有する。ポリイソシアネート組成物(B)における、ポリイソシアネート化合物の全量に対する、トリイソシアネート類の比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。ポリイソシアネート組成物(B)が、ポリイソシアネート化合物として、トリイソシアネート類のみを含有してもよい。
【0106】
ポリイソシアネート組成物(B)が含有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基量(NCO%)は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。このイソシアネート基量は45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が特に好ましい。イソシアネート基量(NCO%)は、下記数式によって算出される。
NCO = (100 × Mi × 42) / Wi
Mi:ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数
42:NCOの分子量
Wi:ポリイソシアネート化合物の総質量(g)
【0107】
ポリイソシアネート化合物の具体例として、DIC社の商品名「バーノックD−800」、「バーノックDN−950」及び「バーノックDN−955」;住化バイエルウレタン社の商品名「デスモジュールN75MPA/X」、「デスモジュールN3300」、「デスモジュールL75(C)」及び「スミジュールE21−1」;日本ポリウレタン工業社の商品名「コロネートHX」及び「コロネートHK」;旭化成ケミカルズ社の商品名「デュラネート24A−100」、「デュラネート21S−75E」、「デュラネートTPA−100」及び「デュラネートTKA−100」;並びにデグサ社の商品名「VESTANAT T1890」が例示される。
【0108】
ペイント層6を形成するポリウレタン塗料において、主剤が有する水酸基(OH基)と硬化剤が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO/OH)は、0.10以上が好ましい。このモル比が0.10以上であるポリウレタン塗料では、耐汚染性に優れたペイント層6が形成されうる。この観点から、このモル比は、0.20以上が特に好ましい。ゴルフボール2のスピン性能の観点から、このモル比(NCO/OH)は、2.0以下が好ましく、1.80以下がより好ましく、1.60以下が特に好ましい。
【0109】
前述の態様1のポリオール組成物(A)に適したポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体及びイソホロンジイソシアヌレートのイソシアヌレート変性体である。ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体とが、併用されてもよい。この場合、ビュレット変性体とイソシアヌレート変性体との質量比は、20/40以上40/20以下が好ましく、25/35以上35/25以下が特に好ましい。
【0110】
前述の態様2のポリオール組成物(A)に適したポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体である。
【0111】
この実施形態では、ゴルフボール2のカバー12の外表面に第一塗料が塗布され、乾燥されることにより、内層14が形成される。乾燥温度は、30℃以上70℃以下が好ましい。乾燥時間は、1時間以上24時間以下が好ましい。
【0112】
このゴルフボール2では、内層14の外表面に第二塗料が塗布され、乾燥されることにより、外層16が形成される。乾燥温度は、30℃以上70℃以下が好ましい。乾燥時間は、1時間以上24時間以下が好ましい。
【0113】
内層14にモル比(NCO/OH)が大きい第一塗料が用いられ、外層16にモル比(NCO/OH)が小さい第二塗料が用いられることにより、押し込み深さDiが押し込み深さDoよりも小さいペイント層6が得られうる。この観点から、内層14を形成する第一塗料のモル比(NCO/OH)は、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましい。同様の観点から、外層16を形成する第二塗料のモル比(NCO/OH)は、1.50以下が好ましく、1.30以下がより好ましい。
【0114】
内層14に分子量の小さなポリオール化合物を含む第一塗料が用いられ、外層16に分子量の大きなポリオール化合物を含む第二塗料が用いられることにより、押し込み深さDiが押し込み深さDoよりも小さいペイント層6が得られうる。
【0115】
[第二実施形態]
図2に示されたゴルフボール22は、本体24と、この本体24の外側に位置するペイント層26とを有している。本体24は、球状のコア28と、このコア28の外側に位置するカバー30とを有している。ペイント層26は、カバー30の外側に位置する内層32と、この内層32の外側に位置する外層34とを有している。このゴルフボール22は、その表面に複数のディンプル36を有している。ゴルフボール22の表面のうちディンプル36以外の部分は、ランド38である。このゴルフボール22が、マーク層を有してもよい。このマーク層は、カバー30とペイント層26との間に位置してよく、ペイント層26の外側に位置してもよい。マーク層が、内層32と外層34との間に位置してもよい。ペイント層26は、内層32と外層34との間に、さらに他の層を備えうる。
【0116】
このゴルフボール22の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール22の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0117】
このゴルフボール22の好ましい圧縮変形量Sbは、1.80mm以上3.30mm以下である。圧縮変形量Sbの測定方法については、後述する。
【0118】
コア28は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。コア28には、第一実施形態にて前述したコア8のゴム組成物と同様のゴム組成物が用いられうる。反発性能の観点から、コア28の直径は、30.0mm以上が好ましく、38.0mm以上が特に好ましい。スピン性能の観点から、コア28の直径は、42.0mm以下が好ましく、41.5mm以下が特に好ましい。
【0119】
このコア28において、好ましい圧縮変形量Scは、2.5mm以上3.9mm以下である。圧縮変形量Scの測定方法については、後述する。
【0120】
このコア28において、好ましい硬度Hoは、40以上75以下であり、好ましい硬度Hsは、60以上95以下である。硬度差(Hs−Ho)は、10以上45以下が好ましい。コア28の硬度Ho及び硬度Hsは、第一実施形態にて前述したコア8と同様の方法により測定される。
【0121】
このゴルフボール22では、コア28の外側に、カバー30が形成されている。カバー30が、2以上の層から構成されてもよい。
【0122】
カバー30は、樹脂組成物から形成されている。カバー30には、第一実施形態にて前述した中間層10の樹脂組成物と同様の樹脂組成物が用いられうる。この樹脂組成物の好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。
【0123】
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、カバー30の樹脂組成物が他のポリマーを含んでもよい。他のポリマーとして、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリウレタンが例示される。樹脂組成物が、2種以上のポリマーを含んでもよい。
【0124】
このゴルフボール22において、カバー30のショアD硬度Hcは、50以上80以下が好ましい。硬度Hcが50以上であるカバー30を有するゴルフボール22は、耐汚染性に優れる。この観点から、カバー30の硬度Hcは、52以上がより好ましく、54以上が特に好ましい。硬度Hcが80以下であるカバー30は、アプローチショットでの大きなスピン速度及び打球感に寄与する。この観点から、カバー30の硬度Hcは、78以下がより好ましく、76以下が特に好ましい。カバー30が2以上の層から構成される場合、カバー30をなす各層の硬度が、この数値範囲を満たすことが好ましい。カバー30の硬度Hcは、第一実施形態にて前述したカバー12と同様の方法で測定される。
【0125】
このゴルフボール22において、このカバー30の厚みTcは0.5mm以上3.0mm以下が好ましい。厚みTcが0.5mm以上であるカバー30は、スピン性能に寄与しうる。この観点から、カバー30の厚みTcは、0.8mm以上がより好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。厚みTcが3.0mm以下のカバー30は、打球感に寄与しうる。この観点から、カバー30の厚みTcは2.7mm以下がより好ましく、2.5mm以下が特に好ましい。カバー30が2以上の層から構成される場合、カバー30をなす全ての層の合計厚みが、この数値範囲を満たすことが好ましい。カバー30の厚みTcは、ランド38の直下において測定される。
【0126】
このゴルフボール22では、カバー30の外側に、ペイント層26が形成されている。図示される通り、このペイント層26は、内層32と外層34とを有している。本発明では、第一実施形態にて前述した内層14及び外層16と同様の方法で、内層32の押し込み深さDiと、外層34の押し込み深さDoとが測定される。
【0127】
他の実施形態において、ペイント層26が3以上の層を有する場合、カバー30に最も近接する層が最内層と称され、カバー30から最も離れた層が最外層と称される。この実施形態では、ペイント層26の最内層の押し込み深さがDiとして測定され、ペイント層26の最外層の押し込み深さがDoとして測定される。
【0128】
本発明において、内層32の押し込み深さDiは、外層34の押し込み深さDoよりも小さい。換言すれば、この内層32は、外層34よりも硬い。硬い内層32は、ウェット状態での大きなスピン速度に寄与する。このゴルフボール22では、押し込み深さDiが小さい内層32によって、ウェット状態のアプローチショットのコントロール性能が向上する。一方、この外層34は、内層32と比較して、柔軟である。柔軟な外層34は、ドライ状態での大きなスピン速度に寄与する。この外層34を有するゴルフボール22は、ドライ状態でのアプローチショットにおけるコントロール性能に優れる。
【0129】
ウェット状態でのコントロール性及び耐汚染性の観点から、内層32の押し込み深さDiは、1000nm未満が好ましく、900nm以下がより好ましく、800nm以下が特に好ましい。ドライ状態でのコントロール性及び打球感の観点から、内層32の押し込み深さDiは、100nm以上が好ましく、200nm以上がより好ましく、300nm以上が特に好ましい。
【0130】
ドライ状態でのコントロール性及び打球感の観点から、外層34の押し込み深さDoは1000nm以上が好ましく、1100nm以上がより好ましく、1200nm以上が特に好ましい。ウェット状態でのコントロール性及び耐汚染性の観点から、外層34の押し込み深さDoは、3000nm以下が好ましく、2900nm以下がより好ましく、2800nm以下が特に好ましい。
【0131】
ウェット状態及びドライ状態でのコントロール性能両立の観点から、外層34の押し込み深さDoと内層32の押し込み深さDiとの差(Do−Di)は、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、90nm以上が更に好ましい。ペイント層26の耐久性の観点から、この差(Do−Di)は、1800nm以下が好ましく、1700nm以下がより好ましく、1600nm以下が更に好ましい。
【0132】
前述した通り、このゴルフボール22では、カバー30が、アプローチショットでのスピン性能に寄与する。硬度Hcが50以上80以下であるカバー30との相乗効果の観点から、より好ましい差(Do−Di)は、50nm以上1000nm以下である。硬度Hcが50以上80以下のカバー30と、差(Do−Di)が50nm以上1000nm以下のペイント層26とを有するゴルフボール22では、ウェット状態及びドライ状態でのコントロール性能が高いレベルで両立される。
【0133】
アプローチショットでのスピン性能の観点から、内層32の厚みTiは5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上が特に好ましい。同様の観点から、内層32の厚みTiは50μm以下が好ましく、40μm以下とより好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0134】
アプローチショットでのスピン性能の観点から、外層34の厚みToは5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上が特に好ましい。同様の観点から、外層34の厚みToは50μm以下が好ましく、40μm以下とより好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0135】
内層32の厚みTiと外層34の厚みToとの和(Ti+To)は、10μm以上100μm以下が好ましい。ペイント層26が、内層32と外層34との間に他の層を有している場合、ペイント層26を形成する全ての層の合計厚みが、10μm以上100μm以下とされる。ドライ状態及びウェット状態でのコントロール性能の観点から、この合計厚みは、12μm以上がより好ましく、14μm以上が特に好ましい。カバー30による効果が阻害されないとの観点から、合計厚みは、80μm以下がより好ましく、60μm以下が特に好ましい。
【0136】
ドライ状態でのコントロール性能の観点から、内層32の厚みTiに対する外層34の厚みToの比(To/Ti)は、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上が特に好ましい。ウェット状態でのコントロール性能の観点から、この比(To/Ti)は、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
【0137】
内層32は、樹脂組成物から形成されている。内層32には、第一実施形態にて前述した内層14の樹脂組成物と同様の樹脂組成物が用いられうる。この実施形態では、ゴルフボール22のカバー30の外表面に第一塗料が塗布され、乾燥されることにより、内層32が形成される。
【0138】
外層34は、樹脂組成物から形成されている。外層34には、第一実施形態にて前述した外層16の樹脂組成物と同様の樹脂組成物が用いられうる。このゴルフボール22では、内層32の外表面に第二塗料が塗布され、乾燥されることにより、外層34が形成される。
【実施例】
【0139】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0140】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、23.5質量部のアクリル酸亜鉛(三新化学工業社の「サンセラーSR」)、5質量部の酸化亜鉛(東邦亜鉛社の商品名「銀嶺R」)、適量の硫酸バリウム(堺化学社の商品名「硫酸バリウムBD」)及び0.95質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社の商品名「パークミルD」)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、155℃の温度下で18分間加熱して、直径が38.7mmであるコアS1を得た。所定の質量のコアが得られるように、硫酸バリウムの量を調整した。得られたコアS1の詳細が、下記の表1に示されている。
【0141】
55質量部のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミランAM7329」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」)、適量の硫酸バリウム及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物aを得た。この樹脂組成物aから、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コアS1を被覆した。これらのハーフシェル及びコアS1を、それぞれが半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にて厚み2.0mmのカバーを得た。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。
【0142】
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG、数平均分子量650)及びトリメチロールプロパン(TMP)を溶剤(トルエン及びメチルエチルケトン)に溶解した。モル比(PTMG:TMP)は、1.8:1.0であった。この溶液に、触媒として、主剤全量に対して0.1質量%のジブチル錫ジラウレートを添加した。このポリオール溶液を80℃に保持しながら、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を滴下混合した。この混合液のモル比(NCO/OH)は、0.6であった。滴下後、混合液中のイソシアネート成分がなくなるまで攪拌を続け、その後常温で冷却し、主剤(ポリオール組成物(A))であるウレタンポリオールを得た。この主剤の詳細は、以下の通りである。
固形分:30質量%
PTMGの含有率:67質量%
固形分の水酸基価:67.4mgKOH/g
ウレタンポリオールの重量平均分子量:4867
【0143】
30質量部のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(旭化成ケミカルズ社の商品名「デュラネートTKA−100」、NCO含有率:21.7質量%)、30質量部のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体(旭化成ケミカルズ社の商品名「デュラネート21S−75E」、NCO含有率:15.5質量%)、及び40質量部のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(BAYER社の商品名「デスモジュールZ4470」、NCO含有率:11.9質量%)を混合した。この混合物に、溶媒として、メチルエチルケトン、酢酸n−ブチル及びトルエンの混合溶媒を添加し、硬化剤であるポリイソシアネート組成物(B)を得た。この硬化剤におけるポリイソシアネート化合物の濃度は、60質量%であった。
【0144】
前述の主剤(ポリオール組成物(A))と硬化剤(ポリイソシアネート組成物(B)とを混合して第一塗料を得た。この第一塗料の、固形分換算による混合比(A/B)は3.06/1(質量比)であり、モル比(NCO/OH)は1.03であった。前述のコア及びカバーからなる本体の表面をサンドブラストによって処理し、このカバーの周りに第一塗料を塗布し、40℃の温度下で24時間乾燥させて、厚み10μmの内層を得た。
【0145】
前述の主剤と硬化剤とを混合して、第二塗料を得た。この第二塗料の、固形分換算による混合比(A/B)は6.8/1(質量比)であり、モル比(NCO/OH)は0.46であった。この第二塗料を、内層の周りに塗布し、40℃の温度下で24時間乾燥させて、厚み10μmの外層を得た。この外層を有するゴルフボールの直径は約42.7mmであり、質量は約45.6gであった。
【0146】
[実施例2及び3並びに比較例1−3]
前述の主剤と硬化剤との混合比(A/B)を、下記の表3に示される通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例2及び3並びに比較例1−3のゴルフボールを得た。
【0147】
[実施例4]
カバーの組成並びに第一塗料及び第二塗料の混合比(A/B)を下記の表3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のゴルフボールを得た。カバーの組成の詳細が、下記の表2に示されている。
【0148】
[実施例5]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、30.5質量部のアクリル酸亜鉛(三新化学工業社の「サンセラーSR」)、10質量部の酸化亜鉛(東邦亜鉛社の商品名「銀嶺R」)、適量の硫酸バリウム(堺化学社の商品名「硫酸バリウムBD」)、0.1質量部の2−チオナフトール(東京化成工業社)、0.3質量部のビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド(PBPS)(川口化学工業社)、0.7質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社の商品名「パークミルD」)及び2質量部の安息香酸(東京化成工業社)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、150℃の温度下で19分間加熱して、直径が39.7mmであるコアS2を得た。所定の質量のコアが得られるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0149】
55質量部のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミランAM7329」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」)、適量の硫酸バリウム及び3質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物aを得た。この樹脂組成物aを射出成形法にてコアS2の周りに被覆し、厚み1.0mmの中間層を形成した。
【0150】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を、調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とを含む。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の二酸化チタンとを含む。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、23℃の雰囲気下で12時間保持して、補強層を得た。この補強層の厚みは、10μmであった。
【0151】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(BASFジャパン社の商品名「エラストランNY80A」)、4質量部の二酸化チタン及び0.04質量部のウルトラマリンブルーを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物bを得た。この樹脂組成物bから、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コアS2、中間層及び補強層からなる球体を被覆した。これらのハーフシェル及び球体を、それぞれが半球状キャビティを備え、キャビティ面に多数のピンプルを備えた上型及び下型からなるファイナル金型に投入し、圧縮成形法にて厚み0.5mmのカバーを得た。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。
【0152】
実施例1で前述した主剤と硬化剤とを混合して、第一塗料(固形分換算による質量比(A/B)=3.06/1、モル比(NCO/OH)=1.03)を得た。前述のコアS2、中間層、補強層及びカバーからなる本体の表面をサンドブラストによって処理し、このカバーの周りに第一塗料を塗布し、40℃の温度下で24時間乾燥させて、厚み10μmの内層を得た。
【0153】
実施例1で前述した主剤と硬化剤とを混合して、第二塗料(固形分換算による質量比(A/B)=6.8/1、モル比(NCO/OH)=0.46)を得た。この第二塗料を、内層の周りに塗装し、40℃の温度下で24時間乾燥させて、厚み10μmの外層を得た。この外層を有するゴルフボールの直径は約42.7mmであり、質量は約45.6gであった。
【0154】
[実施例6−8及び比較例4−6]
実施例1で前述した主剤と硬化剤との混合比(A/B)を、下記の表4及び5に示される通りとした以外は実施例5と同様にして、実施例6−8及び比較例4−6のゴルフボールを得た。
【0155】
[実施例9]
カバーの組成並びに第一塗料及び第二塗料の混合比(A/B)を下記の表4に示される通りとした他は実施例5と同様にして、実施例9のゴルフボールを得た。カバーの組成の詳細が、下記の表2に示されている。
【0156】
[圧縮変形量]
YAMADA式コンプレッションテスターにより、コア及びゴルフボールの圧縮変形量を測定した。このテスターでは、測定される球体(コア又はゴルフボール)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって、金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。ゴルフボールに98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離(mm)が、測定される。初荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、0.83mm/sである。初荷重がかかってから終荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、1.67mm/sである。得られたコアの圧縮変形量が、Scとして、下記の表1に示されている。得られたゴルフボールの圧縮変形量が、Sbとして下記の表3−5に示されている。
【0157】
[スピン速度(SW)]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、サンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社の商品名「CG15フォードウェッジ」、ロフト角:52°)を装着した。ヘッド速度が16m/sである条件でゴルフボールを打撃して、ドライ条件でのバックスピンの速度Rd(rpm)を測定した。サンドウェッジのフェース及びゴルフボールに水を付着させた状態で、同様の試験をおこなうことにより、ウェット条件でのバックスピン速度Rw(rpm)を測定した。各10回の測定で得られたデータの平均値が、下記の表3−5に示されている。
【0158】
[打球感]
30名のプレーヤーにサンドウェッジ(クリーブランドゴルフ社の商品名「CG15フォードウェッジ」、ロフト角:52°)にてゴルフボールを打撃させ、打球感を聞き取った。「打球感がよい」と答えたプレーヤーの数に基づき、下記の格付けを行った。
A:25人以上
B:20−24人
C:15−19人
D:14人以下
この結果が、下記の表3−5に示されている。
【0159】
[耐汚染性]
ゴルフボールの表面の色調(L,a,b)を、色差計(コニカミノルタ社の「CM3500D)にて測定した。6質量%のヨウ素と4質量%のヨウ化カリウムとを含むエタノール溶液(すなわちヨードチンキ)を用意した。このヨードチンキを水で40倍に希釈した。この希釈液に、ゴルフボールを30秒間浸漬した。希釈液から取り出したゴルフボールの表面に付着した希釈液を、拭き取った。このゴルフボールの色調を、再度測定した。下記の数式に基づき、色差ΔEを算出した。
ΔE = (ΔL
2 + Δa
2 + Δb
2)
1/2
この色差ΔEに基づき、下記の格付けを行った。
A:ΔEが15以下である。
B:ΔEが15を超えて20以下である。
C:ΔEが20を超えて25以下である。
D:ΔEが25を超えている。
この結果が、下記の表3−5に示されている。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
表3−5に示されるように、各実施例のゴルフボールは、諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。