特許第6939034号(P6939034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6939034冷却システム、冷却装置、及び電子システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939034
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】冷却システム、冷却装置、及び電子システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20210909BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20210909BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20210909BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H05K7/20 N
   F28D7/00 Z
   H01L23/46 Z
   G06F1/20 A
   G06F1/20 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-74947(P2017-74947)
(22)【出願日】2017年4月5日
(65)【公開番号】特開2018-181923(P2018-181923A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】稲野 聡
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 稔
(72)【発明者】
【氏名】脇野 有希子
【審査官】 三森 雄介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−243771(JP,A)
【文献】 特開平06−164178(JP,A)
【文献】 特開平02−214147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
F28D 7/00
H01L 23/473
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置と、前記冷却装置に接続されるポンプと排熱装置とを有する冷却システムにおいて、
前記冷却装置は、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有し、
前記液浸槽は、
前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通すること
を特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記第2の冷媒槽は、
前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が送出される第2の送出用冷媒管と前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が還流される第2の還流用冷媒管とが貫通することを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
冷却装置と、前記冷却装置に接続されるポンプと排熱装置とを有する冷却システムにおいて、
前記冷却装置は、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有し、
前記第2の冷媒槽は、
前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が送出される第2の送出用冷媒管と前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が還流される第2の還流用冷媒管とが貫通することを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
排熱装置とポンプとに接続される冷却装置において、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有し、
前記液浸槽は、
前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通すること
を特徴とする冷却装置。
【請求項5】
排熱装置とポンプとに接続される電子システムにおいて、
発熱する電子装置と、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に前記電子装置を保持するとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有し、
前記液浸槽は、
前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通すること
を特徴とする電子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システム、冷却装置、及び電子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の到来にともなって、情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)を利用した電子装置の重要性がますます増加している。例えばデータセンターでは、室内に多数のラックを設置し、各ラックにそれぞれサーバやストレージ装置等の電子装置を複数収納して、それらの電子装置を一括管理している。
【0003】
ところで、電子装置の高性能化にともない、電子装置の発熱量が増大している。発熱量が大きい電子装置を高密度に実装すると、他の電子装置が排気した高温の空気を吸入することを繰り返すことにより電子装置の温度が許容上限温度を超えてしまい、誤動作や故障又は処理能力の低下の原因となる。そのため、発熱量が大きい電子装置を高密度に実装しても十分に冷却できる冷却方法が要求されている。
【0004】
そのような冷却方法の一つとして、電子装置を液体の冷媒中に浸漬して冷却することが提案されている。以下、この種の冷却方法を、液浸冷却法と呼ぶ。液浸冷却法では、液浸槽内に絶縁性の不活性冷媒(例えば、フッ素化合物又は油等)を入れ、冷媒中に電子装置を浸漬し、冷媒を介して電子装置で発生した熱を屋外の排熱装置(チラー又はクーリングタワー等)まで輸送して、排熱装置から大気中に放散している。以下、絶縁性の不活性冷媒を、単に「不活性冷媒」という。
【0005】
従来から、一次冷媒を入れた液浸槽内に電子部品を実装した基板と冷却板とを浸漬し、基板で発生した熱を一次冷媒及び冷却板を介して二次冷媒に伝達して排熱装置まで輸送する冷却方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、一次冷媒を入れた液浸槽の外面に熱交換器を取り付け、液浸槽内の電子装置で発生した熱を、一次冷媒、熱交換器、及び二次冷媒を介して排熱装置に輸送する冷却システムも提案されている(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−2397号公報
【特許文献2】特表2016−509278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、液浸冷却法では、電子装置で発生した熱を屋外の排熱装置まで輸送して大気中に放散している。しかし、電子装置の設置場所(室内)と排熱装置の設置場所(屋外)とが離れているため、液浸槽と排熱装置との間を不活性冷媒が循環するようにすると、不活性冷媒の使用量が多くなる。不活性冷媒は通常の冷媒よりも高価であるため、不活性冷媒の使用量が多くなるとシステムの構築コスト及び運用コストが高くなる。
【0008】
例えば特許文献2のように液浸槽の近くに熱交換器を設置して一次冷媒(不活性冷媒)と二次冷媒(例えば水)との間で熱交換を行い、二次冷媒を介して排熱装置まで熱を輸送することで、不活性冷媒の使用量を削減することが考えられる。しかし、その場合は、熱交換器とポンプとが必要になるとともに、それらを設置する場所が必要であり、設備コストが高くなるという問題がある。
【0009】
開示の技術は、従来よりも不活性冷媒の使用量が少なく、且つ設備コストも削減できる冷却システム、冷却装置、及び電子システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の技術の一観点によれば、冷却装置と、前記冷却装置に接続されるポンプと排熱装置とを有する冷却システムにおいて、前記冷却装置は、前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽とを有し、前記液浸槽は、前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通する冷却システムが提供される。
【0011】
開示の技術の他の一観点によれば、排熱装置とポンプとに接続される冷却装置において、前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽とを有し、前記液浸槽は、前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通する冷却装置が提供される。
【0012】
開示の技術の更に他の一観点によれば、排熱装置とポンプとに接続される電子システムにおいて、発熱する電子装置と、前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に前記電子装置を保持するとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽とを有し、前記液浸槽は、前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通する電子システムが提供される。

【発明の効果】
【0013】
上記一観点に係る冷却システム、冷却装置、及び電子システムによれば、不活性冷媒の使用量が少なく、且つ設備コストも削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施形態に係る冷却システムの概要を示す模式図である。
図2図2(a)は電子システムの上面図、図2(b)は同じくその電子システムの正面図である。
図3図3は、同じくその電子システムの側面図である。
図4図4(a)は冷却装置の上面図、図4(b)は同じくその冷却装置の正面図である。
図5図5(a),(b)は、図4(a),(b)から冷却水の流路を削除した図である。
図6図6(a),(b)は、図4(a),(b)から不活性冷媒の流路を削除した図である。
図7図7(a)は電子装置の平面図、図7(b)は同じくその電子装置の側面図である。
図8図8は、制御部によるポンプ及び流量調整弁の制御方法を示すフローチャートである。
図9図9は、温度差ΔTとポンプの制御量(回転率)との関係、及び温度差ΔTと流量調整弁の制御量(開度)との関係を併せて示す図である。
図10図10(a)は第2の実施形態に係る電子システムの正面図、図10(b)は同じくその電子システムの側面図である。
図11図11は、一組の冷却槽及び液浸槽を拡大して示す側面図である。
図12図12(a)は電子装置の上面図、図12(b)は同じくその電子装置の側面図、図12(c)は電子装置の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る冷却システムの概要を示す模式図である。また、図2(a)は電子システムの上面図、図2(b)は同じくその電子システムの正面図、図3は同じくその電子システムの側面図である。更に、図4(a)は冷却装置の上面図、図4(b)は同じくその冷却装置の正面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る冷却システム10は、電子システム25と、排熱装置30とを有している。
【0018】
また、図2(a),(b)及び図3に示すように、電子システム25は、冷却装置26と、冷却装置26内に配置された電子装置27とを有している。
【0019】
図5(a),(b)は、図4(a),(b)から冷却水の流路(配管23a,23b)を削除した図である。また、図6(a),(b)は、図4(a),(b)から不活性冷媒の流路(配管22a,22b及びポンプ21)を削除した図である。これらの図4(a),(b)、図5(a),(b)、及び図6(a),(b)を参照して、冷却装置26の構造について説明する。
【0020】
図4(a),(b)、図5(a),(b)、及び図6(a),(b)に示すように、冷却装置26は、筐体11と、筐体11内に設けられた複数の冷媒槽12と、同じく筐体11内に設けられた複数の液浸槽13とを有する。冷媒槽12と液浸槽13とは交互に配置されており、各液浸槽13はそれぞれ2つの冷媒槽12に挟まれている。液浸槽13を挟む2つの冷媒槽12のうちの一方が第1の冷媒槽であり、他方が第2の冷媒槽である。
【0021】
冷却装置26の筐体11は、例えば厚さが5mmのステンレス板により、上側が開放された箱状に形成されている。また、冷媒槽12と液浸槽13とは、例えば厚さが0.5mmのステンレス板により仕切られている。
【0022】
冷却装置26の筐体11内には、液浸槽13に不活性冷媒16を供給する配管22aと、液浸槽13から不活性冷媒16を回収する配管22bと、冷媒槽12に冷却水19を供給する配管23aと、冷媒槽12から冷却水19を回収する配管23bとが設けられている。これらの配管22a,22b及び配管23a,23bは筐体11を貫通している。
【0023】
冷却水19は第1の冷媒の一例であり、不活性冷媒16は第2の冷媒の一例である。また、配管23aは第1の送出用冷媒管の一例であり、配管23bは第1の還流用冷媒管の一例である。更に、配管22aは第2の送出用冷媒管の一例であり、配管22bは第2の還流用冷媒管の一例である。
【0024】
筐体11内において、配管22a及び配管23bは、筐体11の一方の側板の近傍に配置されており、配管22aは下側に、配管23bは上側に配置されている。また、配管22b及び配管23aは上述の一方の側板に対向する他方の側板の近傍に配置されており、配管22bは上側に、配管23aは下側に配置されている。
【0025】
図2(a),図5(a)中の符号17aは配管22aに設けられた不活性冷媒16の噴出口を示し、符号17bは配管22bに設けられた不活性冷媒16の吸込み口を示している。また、図2(a),図6(a)中の符号18aは配管23aに設けられた冷却水19の噴出口を示し、符号18bは配管23bに設けられた冷却水19の吸込み口を示している。
【0026】
筐体11の外壁にはポンプ21が取り付けられている。図3、及び図4(a)中の符号29は、ポンプ21を筐体11に固定するための支持台を示している。ポンプ21の吐出口(デリバリー)は配管22aに接続されており、ポンプ21の吸引口(サクション)は配管22bに接続されている。
【0027】
このポンプ21により、配管22a内を通って噴出口17aから液浸槽13内に入り、液浸槽13内を通流し、吸込み口17bから配管22b内に入り、配管22b内を通ってポンプ21に戻る不活性冷媒16の流れが形成される。ポンプ21は、制御部28(図1参照)により回転数(吐出量)が制御される。
【0028】
なお、本実施形態では、ポンプ21が液浸槽13の外壁に取り付けられている。そのため、液浸槽13とポンプ21との間の配管長が短く、ポンプ21にかかる負荷は比較的小さい。従って、ポンプ21として小型のポンプを使用することができ、設備コスト及び設置スペースの増加を抑えることができる。
【0029】
配管23a,23bは、図1に示すように、屋外に設置された排熱装置30に接続されている。排熱装置30はポンプ(図示せず)を有している。このポンプにより、配管23aを通って噴出口18aから冷媒槽12内に入り、冷媒槽12内を通流し、吸い込み口18bから配管23b内に入り、配管23bを通って排熱装置30に戻る冷却水19の流れが形成される。
【0030】
排熱装置30として、例えば公知のチラー又はクーリングタワーを使用することができる。また、本実施形態では、不活性冷媒16として、フッ素化合物(例えばフロリナート(商標))又はPOA(ポリアルファオレフィン)等の油を使用する。
【0031】
図1に示すように、配管23aには流量調整弁31が設けられている。この流量調整弁31は制御部28からの信号により開度が制御され、流量調整弁31の開度により配管23aを通る冷却水19の流量が決定される。また、配管22bには、液浸槽13から排出される不活性冷媒16の温度を検出する温度センサ24が設けられている。この温度センサ24の出力は制御部28に伝送される。流量調整弁31は流量調整部の一例である。
【0032】
制御部28は、温度センサ24の出力に応じて、ポンプ21の回転数と流量調整弁31の開度とを制御する。制御部28による流量調整弁31及びポンプ21の制御方法については後述する。
【0033】
図4(a),(b)に示すように、液浸槽13の上板13aには、電子装置27を挿入するための開口部13bが設けられている。また、各液浸槽13には、電子装置27を液浸槽13内に挿入するときに電子装置27の両側を案内する一対のガイドレール14が垂直に配置されている。更に、液浸槽13の上板13aには、電子装置27を液浸槽13に固定するためのねじ穴15が設けられている。
【0034】
図7(a)は電子装置27の平面図、図7(b)は同じくその電子装置27の側面図である。
【0035】
図7(a),(b)に示すように、電子装置27は、基板41と、基板41上に搭載されたCPU42、メモリ43、ストレージ44及び電源ユニット(Power Supply Unit:PSU)45とを有する。また、電子装置27には、ハンドル48と、ねじ穴15に螺合して電子装置27を液浸槽13の上板13aに固定する固定用ねじ49と、ガイドレール14(図4(a)参照)に沿って摺動する摺動部材47とが設けられている。
【0036】
以下、本実施形態に係る冷却システム10の動作について、図1の模式図を参照して説明する。
【0037】
電子装置27は、稼働にともなって熱を発生する。電子装置27で発生した熱は、液浸槽13内の不活性冷媒16を介して冷媒槽12に移動する。熱が冷媒槽12に移動することにより、電子装置27の温度は許容上限温度以下に維持される。
【0038】
一方、不活性冷媒16を介して冷媒槽12に移動した熱は、冷媒槽12を通る冷却水19により排熱装置30まで輸送され、排熱装置30から大気中に放散される。これにより、排熱装置30を通る冷却水19の温度が低下する。この温度が低下した冷却水19は、排熱装置30から配管23aを通って冷媒槽12に移動する。
【0039】
このようにして、本実施形態では、電子装置27で発生した熱は筐体11内において液浸槽13内の不活性冷媒16を介して冷却槽12の冷却水19に移動し、冷却水19を介して屋外の排熱装置30まで輸送される。
【0040】
本実施形態では、不活性冷媒16中に電子装置27を浸漬するため、発熱量が大きい電子装置であっても効率的に冷却できる。
【0041】
また、本実施形態では、筐体11から排熱装置30まで冷却水19により熱を輸送する。このため、不活性冷媒16の使用量が少なくてすみ、不活性冷媒16に要するコストを抑制することができる。
【0042】
更に、本実施形態では、冷却装置26の筐体11内で不活性冷媒16から冷却水19に熱を移動させるため、熱交換器を別途設ける必要がない。これにより、設備コストを抑制することができる。
【0043】
ところで、本実施形態では、ポンプ21により、ポンプ21と液浸槽13との間で不活性冷媒16を循環させている。これは、以下の理由による。
【0044】
本実施形態において不活性冷媒16として使用するフッ素化合物又は油等は、一般的に伝熱係数が低い。そのため、単に液浸槽13内に貯留した不活性冷媒16中に電子装置27を浸漬しただけでは、CPU42(図5(a),(b)参照)で発生した熱がCPU42の周囲に滞留してCPU42の温度が許容上限温度を超えてしまうおそれがある。ポンプ21により液浸槽13内に不活性冷媒16の流れを強制的に発生させることで、CPU42から発生した熱をCPU42の周囲から迅速に移動させて、CPU42の温度を許容上限温度以下に維持することができる。
【0045】
次に、制御部28によるポンプ21及び流量調整弁31の制御について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0046】
まず、ステップS11において、制御部28は、温度センサ24の出力に基づき液浸槽13から排出される不活性冷媒16の温度を取得する。その後、ステップS12に移行し、制御部28は不活性冷媒16の温度と目標温度との温度差ΔT(=目標温度−不活性冷媒16の温度)を計算する。
【0047】
目標温度とは予め設定された温度であり、任意に設定することができる。但し、目標温度が低すぎるとポンプ12や排熱装置30で使用する電気量が多くなり、目標温度が高すぎると電子装置27の誤動作、故障又は処理能力の低下の原因となる。そのため、目標温度は35℃以上、且つ45℃以下に設定することが好ましい。ここでは、目標温度を35℃に設定したものとする。
【0048】
ステップS12で温度差ΔTを算出した後、ステップS13に移行し、制御部28は温度差ΔTが0又はプラスの値になるか、又はマイナスの値になるかを判定する。ここで、温度差ΔTが0又はプラスの値になると判定した場合はステップS14に移行し、温度差ΔTがマイナスの値になると判定した場合はステップS16に移行する。
【0049】
ステップS13からステップS14に移行した場合、すなわち目標温度よりも不活性冷媒16の温度が低い場合、制御部28は下記(1)式によりポンプ21の制御量(回転率)を計算する。但し、ステップS14に移行した場合、流量調整弁27の制御量は50%とする。また、温度差ΔTが10℃以上の場合、ポンプ21の制御量は50%とする。
【0050】
制御量(%)=5×(−ΔT+10)+50 …(1)
例えば温度差ΔTが0℃の場合、ポンプ21の制御量は100%となる。また、温度差ΔTが5℃の場合、ポンプ21の制御量は75%となる。更に、温度差ΔTが10℃又はそれよりも大きい場合、ポンプ21の制御量は50%となる。
【0051】
このようにしてステップS14でポンプ21の制御量を算出した後、ステップS15に移行し、制御部28は算出した制御量(回転率)となるようにポンプ21を制御する。その後、ステップS18に移行する。
【0052】
一方、ステップS13からステップS16に移行した場合、すなわち目標温度よりも不活性冷媒16の温度が高い場合、制御部28は下記(2)式により流量調整弁27の制御量(開度)を計算する。但し、ステップS16に移行した場合、ポンプ21の制御量は100%とする。また、温度差ΔTが−10℃以上の場合、流量調整弁27の制御量は100%とする。
【0053】
制御量(%)=(5×(−ΔT))+50 …(2)
例えば温度差ΔTが0℃の場合、流量調整弁27の制御量は50%となる。また、温度差ΔTが−5℃の場合、流量調整弁27の制御量は75%となる。更に、温度差ΔTが−10℃又はそれ以上の場合、流量調整弁27の制御量は100%となる。
【0054】
このようにしてステップS16で流量調整弁27の制御量を計算した後、ステップS17に移行し、制御部28は算出した制御量(開度)となるように流量調整弁27を制御する。その後、ステップS18に移行する。
【0055】
図9に、温度差ΔTとポンプ21の制御量(回転率)との関係、及び温度差ΔTと流量調整弁27の制御量(開度)との関係を併せて示す。この図9に示すように、温度差ΔTが0又はプラスの値のときは、流量調整弁27の開度を50%とし、ポンプ21の回転率を制御する。また、温度差ΔTがマイナスの値のときは、ポンプ21の回転率を100%とし、流量調整弁27の開度を制御する。
【0056】
ステップS15又はステップS17からステップS18に移行すると、制御部28は所定の時間経過するのを待つ。これは、流量調整弁27の開度又はポンプ21の回転率を変更した後に液浸槽13から排出される不活性冷媒16の温度が安定するまでに時間がかかるためである。本実施形態では、所定の時間は10分間とする。
【0057】
ステップS18において所定の時間が経過したと判定した場合は、ステップS11に戻り、上述した各ステップを繰り返す。
【0058】
上述したように、本実施形態では目標温度を35℃〜45℃と比較的高い温度に設定している。そのため、排熱装置30の負荷は比較的軽くなり、排熱装置30で消費する電力量を削減できる。
【0059】
なお、本実施形態では冷却槽12と液浸槽13との間を仕切る仕切り板を平板としているが、冷却槽12と液浸槽13との間の熱交換効率を高めるために、仕切り板の表面に凹凸を設けてもよい。
【0060】
(第2の実施形態)
図10(a)は第2の実施形態に係る電子システムの正面図、図10(b)は同じくその電子システムの側面図である。
【0061】
図10(a),(b)に示すように、電子システム55は、冷却装置56と、冷却装置56内に配置された電子装置57とを有している。また、冷却装置56は、筐体61と、筐体61内に設けられた複数の冷媒槽62と、同じく筐体61内に設けられた複数の液浸槽63とを有する。本実施形態では、冷媒槽62と液浸槽63とが高さ方向に交互に配置されている。
【0062】
冷却装置56の筐体61内には、冷却槽62に冷却水19を供給する配管51aと、冷却槽62から冷却水19を回収する配管51bとが設けられている。図10(a)中の符号52aは配管51aに設けられた冷却水19の噴出口を示し、符号52bは配管51bに設けられた冷却水19の吸込み口を示している。配管51a,51bは、第1の実施形態と同様に、屋外に設置された排熱装置30(図1参照)に接続されている。
【0063】
液浸槽63の正面側のパネルには、電子装置57を挿入するための開口部と、電子装置57を液浸槽63に固定するためのねじ(図示せず)とが設けられている。また、液浸槽68内には、電子装置57を液浸槽63内に挿入するときに電子装置57の両側を案内する一対のガイドレール(図示せず)が水平に配置されている。
【0064】
図11は、一組の冷却槽62及び液浸槽63を拡大して示す側面図である。
【0065】
冷却槽62内では、図10(a),(b)に示す配管51aの噴出口52aから配管51bの吸込み口52bに向けて冷却水19が流れる。この冷却槽62の上には、液浸槽63が配置されている。冷媒槽62と液浸槽63との間は、例えば厚さが0.5mmのステンレス板により仕切られている。
【0066】
液浸槽63の背面側には、ポンプ65が設けられている。ポンプ65の下側には吸い込み用のパイプ65aが設けられており、上側には吐出用のパイプ65bが設けられている。吐出用パイプ65bの先端は、液浸槽63内に配置された電子装置57の上まで延びている。このポンプ65は、液浸槽63の下側から不活性媒体16を吸込み、上側から電子装置57内に不活性冷媒16を吐出する。
【0067】
図12(a)は電子装置57の上面図、図12(b)は同じくその電子装置57の側面図、図12(c)は電子装置57の裏面図である。
【0068】
電子装置57は、上側が開放された箱状のケース58と、ケース58内に配置された基板41と、基板41上に搭載されたCPU42、メモリ43、ストレージ44及び電源ユニット45とを有する。また、電子装置57には、ハンドル48と、電子装置57を液浸槽63のパネルに固定するための固定用ねじ49と、ガイドレールに沿って摺動する摺動部材47とが設けられている。更に、ケース58の側面には、不活性冷媒16がオーバーフローする開口部58aが設けられている。
【0069】
ケース58内には、開口部58aからオーバーフローするまで不活性冷媒16が入れられ、それによりCPU42等の部品(発熱部品)は不活性冷媒16中に浸漬された状態となる。ケース58の裏面側にはポンプ65の吐出口側のパイプ65bが通る切り欠き58bが設けられている。
【0070】
以下、本実施形態に係る冷却システムの動作について説明する。
【0071】
液浸槽63内に配置されたポンプ65により、電子装置57のケース58内に不活性冷媒16が供給される。ケース58の側面には開口部58aが設けられているので、この開口部58aから下方に不活性冷媒16がオーバーフローする。オーバーフローした不活性冷媒16は、ポンプ65により再度電子装置57のケース58内に送られる。
【0072】
電子装置57で発生した熱は不活性冷媒16に伝達され、不活性冷媒16のオーバーフローとともに液浸槽63の下側に移動する。電子装置57で発生した熱が不活性冷媒16に移動することにより、電子装置57の温度は許容上限温度以下に維持される。
【0073】
不活性冷媒16により液浸槽63の下側に移動した熱は、更に液浸槽63から冷却槽62に移動する。そして、冷却槽62内を通流する冷却水19とともに排熱装置30(図1参照)まで輸送され、排熱装置30から大気中に放散される。
【0074】
本実施形態においても、不活性冷媒16中に電子装置57の発熱部品(CPU42等)を浸漬するため、発熱量が大きい電子装置であっても効率的に冷却できる。
【0075】
また、本実施形態においても、筐体61から排熱装置30まで冷却水19により熱を輸送する。このため、不活性冷媒16の使用量が少なくてすみ、不活性冷媒16に要するコストを抑制することができる。
【0076】
更に、本実施形態においても、冷却装置56の筐体61内で不活性冷媒16から冷却水19に熱を移動させるため、熱交換器を別途設ける必要がなく、設備コストを抑制することができる。
【0077】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0078】
(付記1)冷却装置と、前記冷却装置に接続されるポンプと排熱装置とを有する冷却システムにおいて、
前記冷却装置は、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有することを特徴とする冷却システム。
【0079】
(付記2)前記液浸槽は、
前記第2の冷媒槽から前記第1の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が送出される第1の送出用冷媒管と、前記第1の冷媒槽から前記第2の冷媒槽に向かう前記第1の冷媒が還流される第1の還流用冷媒管とが貫通することを特徴とする付記1に記載の冷却システム。
【0080】
(付記3)前記第2の冷媒槽は、
前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が送出される第2の送出用冷媒管と前記液浸槽に向かう前記第2の冷媒が還流される第2の還流用冷媒管とが貫通することを特徴とする付記1又は2に記載の冷却システム。
【0081】
(付記4)前記液浸槽から前記ポンプに向かう前記第2の冷媒の温度を検出する温度センサと、
前記排熱装置から出力される前記第1の冷媒の流量を調整する流量調整部と、
前記温度センサの出力に基づいて前記ポンプ及び前記流量調整部を制御する制御部と
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の冷却システム。
【0082】
(付記5)前記ポンプが、前記液浸槽内に配置されていることを特徴とする付記1に記載の冷却システム。
【0083】
(付記6)排熱装置とポンプとに接続される冷却装置において、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に電子装置を保持しうるとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有することを特徴とする冷却装置。
【0084】
(付記7)前記ポンプが、前記液浸槽内に配置されていることを特徴とする付記6に記載の冷却装置。
【0085】
(付記8)排熱装置とポンプとに接続される電子システムにおいて、
発熱する電子装置と、
前記排熱装置から出力されるとともに前記排熱装置へ入力される第1の冷媒をそれぞれ貯留する第1の冷媒槽及び第2の冷媒槽と、
前記ポンプから出力されるとともに前記ポンプへ入力される第2の冷媒の中に前記電子装置を保持するとともに、前記第1の冷媒槽と前記第2の冷媒槽との間に挟持された液浸槽と
を有することを特徴とする電子システム。
【0086】
(付記9)前記ポンプが、前記液浸槽内に配置されていることを特徴とする付記8に記載の電子システム。
【符号の説明】
【0087】
10…冷却システム、11,61…筐体、12,62…冷媒槽、13,63…液浸槽、16…不活性冷媒、19…冷却水、21,65…ポンプ、22a,22b,23a,23b,51a,51b…配管、24…温度センサ、25,55…電子システム、26,56…冷却装置、27,57…電子装置、28…制御部、30…排熱装置、31…流量調整弁、41…基板、42…CPU、43…メモリ、44…ストレージ、45…電源ユニット、47…摺動部材、48…ハンドル、49…固定用ねじ、58…ケース、58a…開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12