(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭化水素基が、炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2以上20以下の不飽和脂肪族炭化水素基、又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0022】
<酸化チタン粒子>
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物が酸素原子を介して表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持ち、表面における炭素CとチタンTiとの元素比C/Tiが0.2以上1.1以下である。
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、光触媒として好適に用いられる。
【0023】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、上記構成により、可視光領域においても高い光触媒機能を発現する。この理由は、次のように推測される。
【0024】
まず、従来光触媒として用いられてきた未処理の酸化チタン粒子は、紫外光を吸収することにより光触媒機能(光触媒活性)を発揮する。このため、未処理の酸化チタン粒子は、紫外光が確保される晴れた日の昼間は光触媒機能を発揮するものの、夜又は日陰では十分な機能が低下する。たとえば、未処理の酸化チタン粒子を外壁材に用いた場合は、日向と日陰とで耐汚染性能に差が出る場合が多い。また、未処理の酸化チタン粒子を空気清浄機又は浄水器等に用いた場合は、機器の内部に、紫外線の光源となるブラックライト等を設置するなど、設置空間が必要になる場合がある。
【0025】
近年、可視光の光吸収で光触媒機能(光触媒活性)を発現する酸化チタン粒子も知られている。例えば、可視光吸収型の酸化チタン粒子として、異種金属(鉄、銅、白金等)を酸化チタンに付着させた酸化チタン粒子、窒素元素、イオウ元素等をドーピングした酸化チタン粒子等が知られている。
【0026】
一方で、可視光領域においても高い光触媒機能を発現する酸化チタン粒子が求められている。
【0027】
それに対して、本実施形態の酸化チタン粒子は、チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物が酸素原子を介して表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持ち、表面における炭素Cとチタンとの元素比C/Tiが0.2以上1.1以下である。
【0028】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、例えば、未処理の酸化チタン粒子を、チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理し、加熱処理により前記炭化水素基の少なくとも一部を酸化してC−O結合又はC=O結合に変化させることで得られる。詳細な機序は不明であるが、炭素原子が適度に酸化されている金属化合物と酸素原子とチタン原子とが共有結合で順に連なっている構造が酸化チタン粒子の表面に存在することにより、酸化チタン粒子表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、酸化チタン粒子が可視光応答性を発現すると推測される。
【0029】
そして、酸化チタン粒子表面における元素比C/Tiが0.2以上1.1以下であることにより、酸化チタン粒子表面における炭化水素基等の炭素量が適度であり、波長450nm及び750nmに十分な吸収を有し、可視光領域において高い光触媒機能を発現する。
具体的には、元素比C/Tiが上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べ、適度な量の金属化合物が表面に結合していることで、波長450nm及び750nmに十分な吸収が得られ、可視光領域における光触媒機能が高くなる。また、元素比C/Tiが上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べ、表面に結合した金属化合物が多すぎることによる酸化チタンの活性部の露出量減少及び炭化水素基の分解が抑制され、可視光領域における光触媒機能が得られやすくなる。
【0030】
以上の理由から、本実施形態に係る酸化チタン粒子は、上記構成とすることで、可視光領域においても高い光触媒機能を発現すると推測される。
【0031】
本実施形態に係る酸化チタン粒子の表面に酸素原子を介して結合している金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、チタン原子と炭素原子と水素原子と酸素原子とのみからなる金属化合物及びチタン原子と炭素原子と水素原子と酸素原子とリン原子とからなる金属化合物の少なくとも1種であることが好ましく、チタン原子と炭素原子と水素原子と酸素原子とのみからなる金属化合物がより好ましい。
【0032】
本実施形態に係る酸化チタン粒子の表面に酸素原子を介して結合している金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、金属化合物中のチタン原子Tiに直接結合した酸素原子Oを介して酸化チタン粒子の表面に結合していること、即ち、Ti−O−Tiなる共有結合によって酸化チタン粒子の表面に結合していることが好ましい。
【0033】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、チタン原子と該チタン原子に酸素原子を介して結合した、炭化水素基を有する金属化合物が、酸素原子を介して表面に結合していることが好ましい。つまり、炭化水素基の炭素原子Cと酸素原子Oと金属化合物中のチタン原子Tiと酸素原子Oと酸化チタン粒子中のチタン原子Tiとが共有結合で順に連なっている構造(C−O−Ti−O−Ti)が酸化チタン粒子の表面に存在することが好ましい。そして、上記構造を有し、かつ、炭素原子Cが適度に酸化されていることにより、酸化チタン粒子表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、酸化チタン粒子が可視光応答性をより発現すると推測される。
【0034】
なお、本実施形態に係る酸化チタン粒子は、可視光領域においても高い光触媒機能を発現することに加えて、下記の観点からも有利である。
【0035】
一般的に、未処理の酸化チタン粒子は粒径、粒径分布、及び粒子形状の制御自由度が低く、粒子凝集性が高い。このため、酸化チタン粒子は樹脂中又は液体中での分散性がよくなく、1)光触媒機能が発揮されにくい、2)塗布液の塗膜の均一性が低い、3)フィルム等の透明性が低い、という傾向がある。
一方、本実施形態に係る酸化チタン粒子は、表面に金属化合物に由来する炭化水素基を有するため、分散性がよい。このため、均一に近い塗膜が形成され、効率よく酸化チタン粒子に光が当たり、光触媒機能が発揮されやすい。また、フィルム等の透明性、塗布液の塗膜の均一性も高まりデザイン性も保たれる。その結果、例えば、外壁材、板、パイプ、不織布(セラミック等の不織布)の表面に、酸化チタン粒子を含む塗料を塗着するとき、酸化チタン粒子の凝集又は塗布欠陥が抑制され、長期にわたり、光触媒機能が発揮されやすい。
【0036】
以下、本実施形態に係る酸化チタン粒子の詳細について説明する。
【0037】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、未処理の酸化チタン粒子を、チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理し、そして、加熱処理により前記炭化水素基の少なくとも一部を酸化してなる酸化チタン粒子であることが好ましい。本開示において、チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物を、単に「金属化合物」ともいう。
【0038】
[未処理の酸化チタン粒子]
本開示において、金属化合物により表面処理されていない酸化チタン粒子を「未処理の酸化チタン粒子」という。未処理の酸化チタン粒子(表面処理の対象となる酸化チタン粒子)としては、例えば、ブルッカイト型、アナターゼ型、ルチル型等の酸化チタンの粒子が挙げられる。酸化チタン粒子は、ブルッカイト、アナターゼ、ルチル等の単結晶構造を有してもよく、これら結晶が共存する混晶構造を有してもよい。
【0039】
本実施形態における未処理の酸化チタン粒子は、金属化合物により表面処理されていない酸化チタン粒子であり、他の表面処理を除外するものでないことは言うまでもない。ただし、本実施形態に係る酸化チタン粒子は、金属化合物のみにより表面処理された酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0040】
未処理の酸化チタン粒子の製法は、特に制限はないが、例えば、塩素法(気相法)、硫酸法(液相法)が挙げられる。
【0041】
塩素法(気相法)の一例は、次の通りである。まず、原料であるルチル鉱石をコークス及び塩素と反応させ、一度、ガス状の四塩化チタンにした後、冷却して、液状の四塩化チタンを得る。次に、高温で、液状の四塩化チタンを酸素と反応させた後、塩素ガスを分離することによって、未処理の酸化チタンを得る。
硫酸法(液相法)の一例は、次の通りである。まず、原料であるイルメナイト鉱石(FeTiO
3)又はチタンスラグを濃硫酸に溶解させ、不純物である鉄成分を硫酸鉄(FeSO
4)として分離し、一度、オキシ硫酸チタン(TiOSO
4)とする。次に、オキシ硫酸チタン(TiOSO
4)を加水分解し、オキシ水酸化チタン(TiO(OH)
2)として沈殿させる。次に、この沈殿物を洗浄及び乾燥し、乾燥物を焼成することによって、未処理の酸化チタンを得る。
【0042】
ほかに、未処理の酸化チタン粒子の製造方法としては、チタンアルコキシドを用いたゾルゲル法、メタチタン酸を焼成する方法などがある。酸化チタン粒子の結晶構造は、焼成温度(例えば400℃以上1,200℃の範囲での加熱)の高さに従い、ブルッカイト、アナターゼ、ルチルへと変化するので、焼成温度の高低を調整することにより目的の結晶構造の酸化チタン粒子が得られる。
【0043】
[金属化合物]
本実施形態に係る酸化チタン粒子の表面に存在する「チタン原子及び炭化水素基を有する金属化合物」は、酸化チタン粒子の表面処理に用いられた金属化合物に由来する。
【0044】
酸化チタン粒子の表面処理に用いる金属化合物としては、チタン原子と該チタン原子に酸素原子を介して(より好ましくは、1つの酸素原子のみを介して)結合した炭化水素基とを有する金属化合物であることが好ましい。金属化合物が複数個の炭化水素基を有する場合、高い光触媒機能の発揮及び分散性の向上の観点から、少なくとも1個の炭化水素基が、金属化合物のチタン原子に酸素原子を介して(より好ましくは、1つの酸素原子のみを介して)結合することが好ましい。
なお、炭化水素基は、酸素原子以外の連結基を介して金属化合物のチタン原子に結合していてもよい。金属化合物のチタン原子と炭化水素基とを連結する連結基としては、酸素原子のほか、例えば、リン原子、カルボニル基等が挙げられ、これらのうち1つ単独の又は複数組み合わせた連結基が挙げられる。
【0045】
金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数1以上40以下(好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは炭素数1以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、特に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2以上40以下(好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、特に好ましくは炭素数4以上10以下)の不飽和脂肪族炭化水素基、又は炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、特に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0046】
炭化水素基は、高い光触媒機能の発現及び分散性の向上の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよいが、分散性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
【0047】
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0048】
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ヘキシニル基、2−ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0049】
脂肪族炭化水素基は、置換された脂肪族炭化水素基も含む。脂肪族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0050】
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、置換された芳香族炭化水素基も含む。芳香族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0051】
金属化合物としては、炭化水素基を有するチタン化合物が挙げられ、具体的には、例えば、チタネート系カップリング剤(例えば、チタン酸エステル、チタン酸エステルの亜リン酸塩等)、チタニウムキレート等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
また、チタニウムキレートとしては、例えば、ジ−i−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシチタンジアセテート、ジ−i−プロポキシチタンジプロピオネート等が挙げられる。
【0052】
また、金属化合物としては、これらの他に、例えば、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、チタニウムラクテートアンモニウム塩、テトラステアリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、イソプロピルジメタクリイソステアロイルチタネート、チタニウムラクテートエチルエステル、オクチレングリコールチタネート、トリイソステアリルイソプロピルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタン系カップリング剤も挙げられる。
なお、金属化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
[酸化チタン粒子の特性]
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、可視光領域においても高い光触媒機能を発現させる観点から、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm、600nm、及び750nmに吸収を持つことが好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm以上750nm以下の全範囲に吸収を持つことがより好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つことが特に好ましい。
また、可視光領域においても高い光触媒機能を発現させる観点から、酸化チタン粒子は、紫外可視吸収スペクトルにおいて、波長350nmの吸光度を1としたとき、波長450nmの吸光度が0.02以上(好ましくは0.1以上)であることが好ましく、波長450nmの吸光度が0.2以上(好ましくは0.3以上)、波長750nmの吸光度が0.02以上(好ましくは0.1以上)であることがより好ましい。
なお、上記「波長450nm及び750nmに吸収を持つ」とは、波長350nmの吸光度を1とした紫外可視吸収スペクトルにおいて、波長450nmの吸光度が0.005以上であり、かつ、波長750nmの吸光度が0.005以上であることを意味する。
【0054】
紫外可視吸収スペクトルの測定は、次に示す方法により測定される。まず、測定対象となる酸化チタン粒子をテトラヒドロフランに分散させた後、ガラス基板上に塗布し、大気中、24℃で乾燥させる。測定は、拡散反射配置で測定し、Kubelka-Munk変換により理論的に吸光度を求める。拡散反射スペクトルは、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製:U−4100)[測定条件;スキャンスピード:600nm、スリット幅:2nm、サンプリング間隔:1nm、全反射率測定モードで測定]により、波長200nm以上900nmの範囲を反射率で測定し、Kubelka-Munk変換をして、可視吸収スペクトルを得る。
【0055】
本実施形態に係る酸化チタン粒子は、表面における元素比C/Tiが0.2以上1.1以下である。
具体的には、例えば、可視光領域においても高い光触媒機能を発現させる観点から、酸化チタン粒子は、表面における元素比C/Tiが0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.4以上0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.8以下であることが特に好ましい。
【0056】
また、可視光領域においても高い光触媒機能を発現させる観点から、酸化チタン粒子は、表面における酸素OとチタンTiとの元素比O/Tiの値が2.05以上2.5以下であることが好ましく、2.1以上2.45以下であることがより好ましく、2.15以上2.4以下であることが更に好ましい。
【0057】
金属化合物により表面処理した通常の酸化チタン粒子表面における酸素OとチタンTiとの元素比O/Tiの値は、2.0または2.0よりやや低い値を示す。しかし、本実施形態に係る酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子表面における元素比O/Tiの値が2.05以上2.5以下となる傾向が強い。これは、酸化チタン粒子表面の炭化水素基が適度に炭化しているためと考えられ、それにより、波長450nm及び750nmに十分な吸収を有し、可視光領域において高い光触媒機能を発現する。
前記元素比O/Tiが上記範囲であることにより、上記範囲よりも小さい場合に比べ、酸化チタン粒子表面の炭化水素基の炭化が十分であり、波長450nm及び750nmに高い吸収が得られ、可視光領域における光触媒機能が発揮されやすい。また、前記元素比O/Tiが上記範囲であることにより、上記範囲よりも大きい場合に比べ、酸化チタン粒子表面のO原子が多すぎることによる酸化チタンの活性部の露出量減少が抑制され、可視光領域における光触媒機能が発揮されやすい。
【0058】
酸化チタン粒子表面における元素比C/Ti及び元素比O/Tiの測定は、次に示す方法により測定される。まず、測定対象となる酸化チタン粒子に対して、X線光電子分光(XPS)分析装置(日本電子(株)製JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を20mAに設定して測定し、各元素のピークの強度から元素比C/Ti及び元素比O/Tiの値を算出する。
【0059】
本実施形態では、酸化チタン粒子に対して波長352nm、照射強度1.3mW/cm
2の紫外線を20時間照射した場合の、酸化チタン粒子表面における元素比C/Tiの減少量は、0.1以上0.9以下であることが好ましい。
以下、酸化チタン粒子に対して波長352nm、照射強度1.3mW/cm
2の紫外線を20時間照射した場合の酸化チタン粒子表面における元素比C/Tiの減少量を「紫外線照射による元素比C/Tiの減少量」又は「元素比C/Tiの減少量」ともいう。紫外線照射による元素比C/Tiの減少量は、上記紫外線照射前に測定された元素比C/Tiの値から紫外線照射後に測定された元素比C/Tiを引いた値である。
【0060】
前記紫外線照射による元素比C/Tiの減少量を満たす酸化チタン粒子は、金属化合物により表面処理した通常の酸化チタン粒子や未処理の酸化チタン粒子と比べ、元素比C/Tiの減少量が大きい値を示している。それにより、酸化チタン粒子表面における炭化水素基等の炭素量や炭化水素が炭化した炭素量(カーボン)が適度であり、波長450nm及び750nmに十分な吸収を有し、可視光領域においてより高い光触媒機能を発現する。また、酸化チタン粒子表面の炭化水素基等が酸化チタン粒子の光触媒活性により適度に分解することによりバインダーや基材の劣化を抑制する。
【0061】
つまり、元素比C/Tiの減少量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも高い場合に比べ、酸化チタン粒子表面における炭化水素基等の炭素や炭化水素が炭化した炭素(カーボン)の光触媒活性による分解及び酸化チタン粒子からの離脱が抑制される。それにより、可視光領域における光触媒機能の劣化が抑制される。また、元素比C/Tiの減少量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも低い場合に比べ、酸化チタン粒子表面における炭素量が多く、波長450nm及び750nmに十分な吸収が得られやすく、可視光領域における光触媒機能が得られやすくなる。また、酸化チタン粒子表面の炭化水素基等がある程度分解することで、バインダーや基材の劣化が抑制される。
【0062】
なお、可視光領域においても高い光触媒機能を発現させる観点から、紫外線照射による粒子表面における元素比C/Tiの減少量は、0.2以上0.85以下であることがより好ましく、0.25以上0.8以下であることがさらに好ましい。
【0063】
本実施形態に係る酸化チタン粒子の体積平均粒径は、10nm以上1μm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、15nm以上200nm以下が更に好ましい。酸化チタン粒子の体積平均粒径が10nm以上であると、酸化チタン粒子が凝集しにくく、光触媒機能が高まりやすい。酸化チタン粒子の体積平均粒径が1μm以下であると、量に対する比表面積の割合が大きくなり、光触媒機能が高まりやすい。このため、酸化チタン粒子の体積平均粒径を上記範囲にすると、可視光領域において高い光触媒機能を発現させ易くなる。
【0064】
酸化チタン粒子の体積平均粒径は、動的光散乱式粒度測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製ナノトラックUPA−ST)を用いて測定する。測定条件は、サンプル濃度を20%、測定時間を300秒とする。動的光散乱式粒度測定装置は、分散質のブラウン運動を利用して粒子径を測定するものであり、溶液にレーザー光を照射し、その散乱光を検出することにより粒子径を測定する。そして、動的光散乱式粒度測定装置により測定される粒度分布を基にして、分割された粒度範囲(チャンネル)に対して個々の粒子の体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径として求める。
【0065】
<酸化チタン粒子の製造方法>
本実施形態に係る酸化チタン粒子の製造方法は、特に制限はないが、金属化合物により未処理の酸化チタン粒子を表面処理する工程と、前記未処理の酸化チタン粒子を表面処理する工程中又は後に、酸化チタン粒子を加熱処理する工程と、を含むことが好ましい。
【0066】
[表面処理する工程]
金属化合物により未処理の酸化チタン粒子を表面処理する方法としては、特に制限はないが、例えば、金属化合物自体を直接未処理の酸化チタン粒子に接触させる方法;溶媒に金属化合物を溶解させた処理液を未処理の酸化チタン粒子に接触させる方法;が挙げられる。具体的には、例えば、未処理の酸化チタン粒子を溶媒に分散した分散液に、撹拌下で、金属化合物自体又は処理液を添加する方法;ヘンシェルミキサー等の撹拌などにより流動している状態の未処理の酸化チタン粒子に、金属化合物自体又は処理液を添加(滴下、噴霧等)する方法;が挙げられる。これら方法により、金属化合物中の反応性基(例えば、ハロゲノ基、アルコキシ基等の加水分解性基)が、未処理の酸化チタン粒子の表面に存在する水酸基と反応し、未処理の酸化チタン粒子の表面処理がなされる。
【0067】
金属化合物を溶解する溶媒としては、有機溶媒(例えば、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒等)、水、これらの混合溶媒などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、オクタン、ヘキサデカン、シクロヘキサン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル等が挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール等が挙げられる。水としては、例えば、水道水、蒸留水、純水等が挙げられる。
溶媒としては、これら以外に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、硫酸などの溶媒を用いてもよい。
【0068】
溶媒に金属化合物を溶解させた処理液において、金属化合物の濃度は、0.05mol/L以上500mol/L以下が好ましく、0.5mol/L以上10mol/L以下がより好ましい。
【0069】
金属化合物による酸化チタン粒子の表面処理の条件は、高い光触媒機能の発現及び分散性の向上の観点から、次の条件がよい。未処理の酸化チタン粒子100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下(好ましくは20質量部以上75質量部以下、より好ましくは25質量部以上50質量部以下)の金属化合物により、未処理の酸化チタン粒子を表面処理することがよい。金属化合物の量を10質量部以上にすることで、可視光領域においても高い光触媒機能がより発現し易くなり、また、分散性も高まり易くなる。金属化合物の量を100質量部以下にすることで、酸化チタン粒子の表面に存在する金属化合物に由来する金属量が過剰になることを抑え、余剰の金属による光触媒機能の低下が抑制される。
【0070】
金属化合物による未処理の酸化チタン粒子の表面処理温度は、15℃以上150℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下がより好ましい。表面処理時間は、10分間以上120分間以下が好ましく、30分間以上90分間以下がより好ましい。
【0071】
金属化合物による未処理の酸化チタン粒子の表面処理後は、乾燥処理を行うことがよい。乾燥処理の方法は、特定制限はなく、例えば、真空乾燥法、噴霧乾燥法等の公知の乾燥法を適用する。乾燥温度は、20℃以上150℃以下が好ましい。
【0072】
[加熱処理する工程]
加熱処理は、未処理の酸化チタン粒子を表面処理する工程中、又は、未処理の酸化チタン粒子を表面処理する工程後に実施する。
【0073】
加熱処理は、金属化合物により未処理の酸化チタン粒子を表面処理するとき;表面処理後の乾燥処理をするとき;又は、乾燥処理後に別途、実施してもよい。加熱処理する前に酸化チタン粒子と金属化合物との反応性を高める観点から、表面処理後の乾燥処理をするとき、又は、乾燥処理後に別途、実施することが好ましく、乾燥処理を適切に実施する観点から、乾燥処理後に別途実施することがより好ましい。
【0074】
加熱処理の温度は、高い光触媒機能の発現及び分散性の向上の観点から、180℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上450℃以下がより好ましく、250℃以上400℃以下が更に好ましい。
加熱処理の時間は、高い光触媒機能の発現及び分散性の向上の観点から、10分間以上300分間以下が好ましく、30分間以上120分間以下がより好ましい。
未処理の酸化チタン粒子を表面処理する工程中に加熱処理を行う場合は、先ず前記表面処理の温度で金属化合物を十分に反応させた後に前記加熱処理の温度で加熱処理を実施することが好ましい。表面処理後の乾燥処理において加熱処理を行う場合は、前記乾燥処理の温度は、加熱処理温度として実施する。
【0075】
なお、加熱処理の温度を180℃以上500℃以下とすることにより、可視光領域においても高い光触媒機能を発現する酸化チタン粒子が効率的に得られる。180℃以上500℃以下で加熱処理すると、酸化チタン粒子の表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基が適度に酸化し、C−C結合又はC=C結合の一部が、C−O結合又はC=O結合に変化すると推測される。
【0076】
加熱処理は、酸素濃度(体積%)が1%以上21%以下の雰囲気で行われることが好ましい。この酸素雰囲気で加熱処理を行うことにより、酸化チタン粒子の表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基の酸化を、適度に且つ効率よく行われる。酸素濃度(体積%)は、3%以上21%以下がより好ましく、5%以上21%以下が更に好ましい。
【0077】
加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、気炉、焼成炉(ローラーハースキルン、シャトルキルン等)、輻射式加熱炉等による加熱;レーザー光、赤外線、UV、マイクロ波等による加熱;など公知の加熱方法を適用する。
【0078】
以上の工程を経て、本実施形態に係る酸化チタン粒子が好適に得られる。
【0079】
<光触媒形成用組成物>
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、本実施形態に係る酸化チタン粒子と、分散媒及びバインダーからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む。
【0080】
本実施形態に係る光触媒形成用組成物の態様としては、例えば、本実施形態に係る酸化チタン粒子及び分散媒を含む分散液;本実施形態に係る酸化チタン粒子及び有機又は無機バインダーを含む組成物;などが挙げられる。分散液は、粘度が高いペースト状のものであってもよい。
【0081】
前記分散媒としては、水、有機溶媒等が好ましく用いられる。
水としては、例えば、水道水、蒸留水、純水などが挙げられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒等が挙げられる。
前記分散液は、分散安定性及び保存安定性の観点から、分散剤及び界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。分散剤及び界面活性剤としては、公知の化学物質が用いられる。分散液は、バインダーをエマルションとして含んでいてもよい。
【0082】
前記組成物に用いられるバインダーとしては、特に制限はないが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリサルファイド樹脂、ポリフェノール樹脂、これらの複合物、これらをシリコーン変性又はハロゲン変性させた樹脂等の有機系バインダー;ガラス、セラミック、金属粉などの無機系バインダー;が挙げられる。
【0083】
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、公知の添加剤が用いられ、例えば、助触媒、着色剤、充填剤、防腐剤、消泡剤、密着改良剤、増粘剤などが挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、本実施形態に係る酸化チタン粒子を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0085】
本実施形態に係る光触媒形成用組成物における本実施形態に係る酸化チタン粒子の含有量は、特に制限はなく、分散液、樹脂組成物等の各種態様、及び、所望の光触媒量等に応じて、適宜選択すればよい。
【0086】
本実施形態に係る光触媒形成用組成物を用いる光触媒又は光触媒を有する構造体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の付与方法が用いられる。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物の付与方法としては、例えば、スピン塗布法、ディップ塗布法、フロー塗布法、スプレー塗布法、ロール塗布法、刷毛塗り法、スポンジ塗り法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法などが挙げられる。
【0087】
<光触媒、構造体>
本実施形態に係る光触媒は、本実施形態に係る酸化チタン粒子を含む。
また、本実施形態に係る構造体は、本実施形態に係る酸化チタン粒子を有する。
【0088】
本実施形態に係る光触媒は、本実施形態に係る酸化チタン粒子のみからなる光触媒でもよく、本実施形態に係る酸化チタン粒子に助触媒を混合した光触媒でも、本実施形態に係る酸化チタン粒子を接着剤や粘着剤により所望の形状に固めた光触媒でもよい。
【0089】
本実施形態に係る構造体は、光触媒として、本実施形態に係る酸化チタン粒子を有することが好ましい。本実施形態に係る構造体は、光触媒活性の観点から、本実施形態に係る酸化チタン粒子を少なくとも表面に有することが好ましい。
【0090】
本実施形態に係る構造体は、基材表面の少なくとも一部に本実施形態に係る酸化チタン粒子を有する構造体であることが好ましく、基材表面の少なくとも一部に本実施形態に係る光触媒形成用組成物を付与して形成された構造体であることが好ましい。該構造体において、本実施形態に係る光触媒形成用組成物を付与する量は、特に制限はなく、所望に応じて選択すればよい。
【0091】
本実施形態に係る構造体においては、基材表面に本実施形態に係る酸化チタン粒子が付着した状態であっても、固定化されていてもよいが、光触媒の耐久性の観点から、固定化されていることが好ましい。固定化方法は、特に制限はなく、公知の固定化方法が用いられる。
【0092】
本実施形態に用いられる基材は、無機材料、有機材料を問わず種々の材料が挙げられ、その形状も限定されない。
基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、木、紙、これらの組合せ、これらの積層体、これらの表面に少なくとも一層の被膜を有する物品が挙げられる。
用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、外装材、窓枠、窓ガラス、鏡、テーブル、食器、カーテン、レンズ、プリズム、乗物の外装及び塗装、機械装置の外装、物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ポリマーフィルム、ポリマーシート、フィルター、屋内看板、屋外看板、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、空気清浄機、浄水器、医療用器具、介護用品などが挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。また、「部」、「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0094】
<実施例1>
市販のアナターゼ型酸化チタン粒子(「SSP−20(堺化学工業(株)製)」体積平均粒径12nm))をメタノールに分散した分散液に、この未処理の酸化チタン粒子に対して40質量部のイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(プレンアクトKR−TTS、味の素ファインテクノ株式会社製、表中「イソプロピル」と示す)を滴下し、60℃で1時間反応させた後、出口温度120℃で噴霧乾燥して乾燥粉体を得た。そして、得られた乾燥粉体に対して、電気炉で400℃、1時間の加熱処理を行い、酸化チタン粒子1を得た。
【0095】
<実施例2>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート(プレンアクトKR−46B、味の素ファインテクノ株式会社製、表中「オクチル」と示す)とした以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子2を得た。
【0096】
<実施例3>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート(プレンアクトKR−138S、味の素ファインテクノ株式会社製、表中「メチル」と示す)とした以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子3を得た。
【0097】
<実施例4>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの添加量を40部から50部に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子4を得た。
【0098】
<実施例5>
実施例1において、乾燥後の粉体粒子を加熱処理するときの電気炉での温度を400℃から250℃とした以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子5を得た。
【0099】
<実施例6>
実施例1において、乾燥後の粉体粒子を加熱処理するときの電気炉での温度を400℃から500℃とした以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子6を得た。
【0100】
<実施例7>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの添加量を40部から25部に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子7を得た。
【0101】
<実施例8>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの添加量を40部から75部に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子8を得た。
【0102】
<実施例9>
実施例1において、アナターゼ型酸化チタン粒子を市販のルチル型酸化チタン粒子(「STR−100N(堺化学工業(株)製)」:体積平均粒径16nm))に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子9を得た。
【0103】
<実施例10>
実施例1において、アナターゼ型酸化チタン粒子をゾルゲル法で作製した酸化チタン粒子(体積平均粒径80nm))に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子10を得た。
【0104】
<実施例11>
実施例1において、アナターゼ型酸化チタン粒子をゾルゲル法で作製した型酸化チタン粒子(体積平均粒径200nm))に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子11を得た。
【0105】
<実施例12>
実施例1において、アナターゼ型酸化チタン粒子をゾルゲル法で作製した酸化チタン粒子(体積平均粒径800nm))に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子12を得た。
【0106】
<比較例1>
市販のアナターゼ型酸化チタン粒子(「SSP−20(堺化学工業(株)製)」体積平均粒径12nm))を、そのまま、酸化チタン粒子C1とした。
【0107】
<比較例2>
市販のルチル型酸化チタン粒子(「STR−100N(堺化学工業(株)製)」体積平均粒径16nm))を、そのまま、酸化チタン粒子C2とした。
【0108】
<比較例3>
市販のアナターゼ型酸化チタン粒子(「SSP−20(堺化学工業(株)製)」体積平均粒径12nm))に対して、電気炉で400℃、1時間の加熱処理を行い、酸化チタン粒子C3を得た。
【0109】
<比較例4>
市販のルチル型酸化チタン粒子(「STR−100N(堺化学工業(株)製)」体積平均粒径16nm))に対して、電気炉で400℃、1時間の加熱処理を行い、酸化チタン粒子C4を得た。
【0110】
<比較例5>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの添加量を40部から5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子C5を得た。
【0111】
<比較例6>
実施例1において、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの添加量を40部から120部に変更した以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子C6を得た。
【0112】
<比較例7>
実施例2において、乾燥後の粉体粒子を加熱処理するときの電気炉での温度を400℃から600℃とした以外は、実施例2と同様にして、酸化チタン粒子C7を得た。
【0113】
<比較例8>
実施例3において、乾燥後の粉体粒子を加熱処理するときの電気炉での温度を400℃から160℃とした以外は、実施例3と同様にして、酸化チタン粒子C8を得た。
【0114】
<比較例9>
実施例1において、乾燥後の粉体粒子の加熱処理を実施しない以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン粒子C9を得た。
【0115】
<測定>
各例で得られた粒子について、可視吸収スペクトル特性を確認した。その結果、実施例1〜12及び比較例5〜7の粒子は、波長400nm以上800nm以下の範囲に吸収を有していた。波長350nmの吸光度を1としたときにおける、波長450nmの吸光度、波長600nmの吸光度、及び750nmの吸光度を表1に示す(表中の「UV−Vis特性」)。
また、XPSによる粒子表面における元素比C/Ti及び元素比O/Ti、並びに体積平均粒径(表中の「D50v」)を既述の方法に従って測定した。
また、各例で得られた粒子表面に、波長352nm、照射強度1.3mW/cm
2の紫外線を照射開始時25℃において20時間照射した後(表中の「紫外線照射後」)、XPSによる粒子表面におけるC/Ti元素比を既述の方法に従って測定し、前記紫外線の照射による元素比C/Tiの減少量を算出した。
【0116】
<酸化チタン粒子の性能評価>
[光触媒活性]
可視光領域における酸化チタン粒子の光触媒活性として、下記のとおり、インクの分解性(色度変動)を評価した。
【0117】
各例で得られた酸化チタン粒子を固形分濃度2質量%になるように、4質量%のメタノールを含む水に分散させた後、その分散液をタイル(5cm四方)に噴霧塗布した後、乾燥し、タイル表面に均一に酸化チタン粒子を付着させた。次いで、その表面に、万年筆用インク((株)パイロットコーポレーション製INK−30−R)をメタノール・水混合液(メタノール:水=3:5)で15倍に希釈した希釈インクを噴霧塗布した後、乾燥し、試験片を作製した。
【0118】
波長400nm以上800nm以下の可視光を照射する発光ダイオード(LED)を使用し(ただし、インクの吸収波長領域(波長450nm以上550nm以下)はフィルターでカットした。)、試験片作製直後の試験片に可視光(10,000LX(ルクス))を2時間連続照射した。その際、試験片の照射面中央部に5円玉を設置し、照射の遮蔽部分を形成した。
【0119】
作製直後の試験片と、可視光2時間照射後の試験片とにおける色相を分光色差計(エックスライト社製RM200QC)により測定し、下記式で算出されるΔE1及びΔE2を求めた。色度EはE={(L
*)
2+(a
*)
2+(b
*)
2}
0.5で算出される値であり、L
*、a
*及びb
*はL
*a
*b
*表色系の座標値である。
・ΔE1=可視光2時間連続照射後の照射面の色度−試験片作製直後の試験片面の色度
・ΔE2=可視光2時間連続照射後の照射遮蔽面の色度−試験片作製直後の試験片面の色度
【0120】
ΔE1とΔE2とから消色変動値ΔE=ΔE1−ΔE2を求め、ΔEに基づいて分解性を下記のとおり評価した。
【0121】
A:分解性が良好
B:分解性がやや良好
C:分解性が不良
【0122】
[分散性]
ビーカーに各例で得られた酸化チタン粒子0.05gを入れ、メチルエチルケトン40gを添加し、超音波分散機で10分間分散した後の粒度分布をナノトラックUPA−ST(マイクロトラック・ベル社製動的光散乱式粒度測定装置)により測定し、体積粒度分布の分布形態を下記のとおり分類した。
【0123】
A:体積粒度分布のピークが一山であり、分散性が良好である。
B:体積粒度分布が二山であるが、メインピーク値が他ピーク値の10倍以上あり、実用上分散性に問題が無い。
C:体積粒度分布のピークが三山以上あり、分散性が不良である。
【0124】
【表1】
【0125】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、光触媒活性が良好であることがわかる。これにより、本実施例は、比較例に比べ、可視光領域においても高い光触媒機能を発現していることがわかる。また、本実施例は、分散性も確保されていることがわかる。