(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液滴が内部空間を通過する第1筒部と、発光部を含み、前記第1筒部の軸方向に対して交差する方向に光を出射する光源と、前記光の光軸に対し傾いて設けられ、前記液滴で屈折された光を受光する受光部と、を有する液滴検知装置と、
前記液滴を生成する液滴生成部と、
前記液滴を収納する複数の容器を備える収納部と、
前記液滴生成部と前記収納部との間に配置され、前記液滴を複数の前記容器ごとに振り分けるセルソータと、を有し、
前記液滴検知装置は、前記セルソータと前記収納部との間に配置され、
前記収納部の前記容器は開口を備え、
前記第1筒部の内径と前記開口の径は等しい大きさを有する
フローサイトメータ。
さらに、前記光源が内部に固定される第2筒部と、前記受光部と前記第1筒部との間に設けられたレンズと、前記レンズが内部に収納される第3筒部とを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなフローサイトメータやセルソータでは、微小な細胞に光を照射するためにレーザ光源が用いられる。また、細胞からの散乱光を測定するために光電子倍増管(PMT:Photomultiplier tube)が用いられる。
【0005】
また、セルソータにおいて、細胞検知部(光電子管)の信号から、液滴が飛翔して、マイクロプレートに着弾するまでの時間を考慮して、ステージを動かす方法もあるが、ノズルからマイクロプレートまでは途中に荷電偏向板もあり距離が長いため、飛翔した液滴がマイクロプレートに正確に着弾したのか信頼性が乏しい。また、空中から異物の混入リスクもある。さらに、セルソータは、ステージ(マイクロプレート)の原点位置を目視で見ながら、人手によって調整する必要がある。微小な液滴を目視で確認することは困難であり、また、ヒトから採取した細胞の懸濁液を分取する場合、作業者が、マイクロプレートに顔を近づけて作業すると、細胞の懸濁液が作業者に接触する可能性もある。
【0006】
本発明は、セルソータの信頼性やスループットを高めることができる液滴検知装置及びフローサイトメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る液滴検知装置は、液滴が内部空間を通過する第1筒部と、発光部を含み、前記第1筒部の軸方向に対して交差する方向に光を出射する光源と、前記光の光軸に対し傾いて設けられ、前記液滴で屈折された光を受光する受光部と、を有する。
【0008】
これにより、受光部は、光の光軸に対し傾いて設けられ、液滴で屈折された光を受光するため、レーザ光源や、光電子倍増管等の大型の検出器を用いずに、簡便な構成で液滴の通過を検知できる。したがって、液滴検知装置を適用したセルソータの信頼性やスループットを高めることができる。なお、信頼性とは、人から採取し、培養した貴重な細胞等の検体を、セルソータやマイクロプレートの位置調整や着水、着弾の検知の不正確さから、無駄にすることがないという意味が含まれる。
【0009】
本発明の一態様に係る液滴検知装置において、前記発光部は、発光ダイオードである。これにより、液滴検知装置の小型化を図るとともに、構成を簡便にしてコストを低減できる。
【0010】
本発明の一態様に係る液滴検知装置において、前記受光部は、フォトダイオードである。これにより、液滴検知装置の小型化を図るとともに、構成を簡便にしてコストを低減できる。
【0011】
本発明の一態様に係る液滴検知装置において、さらに、前記光源が内部に固定される第2筒部と、前記受光部と前記第1筒部との間に設けられたレンズと、前記レンズが内部に収納される第3筒部とを有する。これにより、光源や受光部を第1筒部の近傍に集約して配置することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る液滴検知装置において、前記第1筒部の側部には、穴部が設けられており、前記穴部は、前記光軸と同軸上に設けられている。これにより、第1筒部の内面で光が反射して拡散して、液滴に望まない屈折光が生じることを防ぐことができる。
【0013】
本発明の一態様に係る液滴検知装置において、前記第1筒部、前記第2筒部及び前記第3筒部の一部又は全部は、光造形により形成された光造形物である。これにより、光源を保持する第2筒部やレンズを保持する第3筒部を低コストで製造できる。
【0014】
本発明の一態様に係るフローサイトメータは、上記の液滴検知装置と、前記液滴を生成する液滴生成部と、前記液滴を収納する複数の容器を備える収納部と、前記液滴生成部と前記収納部との間に配置され、前記液滴を複数の前記容器ごとに振り分けるセルソータと、を有し、前記液滴検知装置は、前記セルソータと前記収納部との間に配置される。
【0015】
これにより、液滴検知装置は、光源として発光ダイオードを用い、液滴で屈折された光をフォトダイオードにより検出する。フローサイトメータは、液滴の中の細胞を測定するため、レーザ光や光電子倍増管が必要であるが、液滴検知装置は、液滴が収納部に収納されたことを確実に検出すればよい。このため、レーザ光源や、光電子倍増管等の大型の検出器を用いずに、液滴の通過を検知できる。したがって、フローサイトメータの小型化及び構成の簡便化を図ることができる。また、発光ダイオードを用いているため、セルソータを通過して飛翔軌道が安定しない液滴の通過を検知できる。したがって、セルソータの信頼性やスループットを高めることができる。
【0016】
本発明の一態様に係るフローサイトメータは、前記収納部が載置されたテーブルと、前記テーブルを駆動するモータと、前記液滴検知装置からの検出信号に基づいて前記モータの駆動制御を行う制御部とを備える。これによれば、モータは、液滴検知装置によって出力された電気信号をトリガにしてテーブルを動作させて、液滴を収納する容器の位置を順次、移動させることができる。或いは、液滴の通過信号が最も強い位置に収納部の位置を調整することも可能である。
【0017】
本発明の一態様に係るフローサイトメータにおいて、前記収納部の前記容器は開口を備え、前記第1筒部の内径と前記開口の径は等しい大きさを有する。これによれば、第1筒部を通過した液滴を確実に容器に収納することができる。
【0018】
本発明によれば、セルソータの信頼性やスループットを高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
図1は、実施形態に係るフローサイトメータの構成例を示すブロック図である。
図2は、収納部の構成例を説明するための説明図である。
図1に示すように、フローサイトメータ100は、液滴生成部110と、セルソータ120と、液滴検知装置1と、収納部130とを有する。
【0022】
液滴生成部110は、ノズル111と、サンプル供給部112と、シース液供給部113と、振動発生素子114と、を含む。シース液供給部113は、シース液導入部113aを介して、ノズル111の内部にシース液を供給する。サンプル供給部112は、サンプル導入部112aを介して、サンプルをノズル111の内部に供給する。サンプルは、例えば細胞等の微小対象物である。シース液は、サンプルとともに流体力学的に収束して吐出口111aから外部に流出する。
【0023】
振動発生素子114は、例えば圧電素子等である。振動発生素子114は、所定の周波数の振動を、ノズル111の全体又は一部に加える。これにより、吐出口111aから液滴101が吐出される。液滴101は、サンプルの周囲がシース液に囲まれた球体状である。
【0024】
液滴101の形状は、例えば以下の表1に例示される。ここで、ノズル径dは吐出口111aの直径である。圧力Pは、シース液供給部113からノズル111の内部に加えられる圧力である。流速vは、シース液の流れる速度である。周波数fは、振動発生素子114の振動の周波数である。
【0026】
表1に示すように、ノズル径dが70μmの場合、液滴101の粒子径Dは約138μm、液滴101の粒子間隔λは約356μm、液滴101の粒子質量mは約5.3μgである。また、ノズル径dが100μmの場合、液滴101の粒子径Dは約202μm、液滴101の粒子間隔λは約552μm、液滴101の粒子質量mは約18μgである。
【0027】
なお、表1に示す値は、あくまで一例であり、ノズル径d、圧力P、流速v、周波数f等の条件は適宜変更することができる。これらの各条件に応じて液滴101の粒子径D等も適宜変更することができる。このように、粒子径Dが200μm程度の液滴101の内部に、例えば直径6μm程度の細胞が内包される。
【0028】
図1に示すように、セルソータ120は、荷電部121と、偏向板122とを有する。セルソータ120は、液滴生成部110から供給された液滴101を、サンプルの性状に応じて分離取得するための装置である。荷電部121は、液滴101に含まれるサンプルの大きさ、形態、構造等の情報に基づいて、液滴101ごとにプラス又はマイナスの電荷を液滴101に与える。これにより、液滴101は帯電する。
【0029】
偏向板122は、液滴101の飛翔経路を挟んで一対設けられている。偏向板122の一方と他方とに、それぞれ極性の異なる電圧が印加される。荷電部121により帯電された液滴101は、偏向板122の間を通過する。これにより、液滴101の極性と、偏向板122の極性に応じて、液滴101の飛翔軌道が所定の方向に変更される。
【0030】
液滴検知装置1は、セルソータ120と収納部130との間に配置される。液滴検知装置1は、セルソータ120を通過し、飛翔軌道が安定しない液滴101の通過を検知する。
【0031】
図2に示すように、収納部130は、複数の容器131を有するマイクロプレート132である。マイクロプレート132は、図示しないステージ上に設けられる。ステージは電動モータ134、135によって第1方向Dx及び第2方向Dyに駆動される。また、フローサイトメータ100は、液滴検知装置1の受光部の検出結果を利用して電動モータ134、135の駆動制御を行う制御部を備える。液滴101は、セルソータ120によって容器131ごとに振り分けられる。本実施形態では、マイクロプレート132の直上に液滴検知装置1を設置する。複数の容器131はそれぞれ開口が設けられており、液滴検知装置1の第1筒部51の内径と、各容器131の開口の径は、ほぼ等しい大きさを有する。これにより、第1筒部51を通過した液滴101を確実に容器131に収納することができる。また、電動モータ134、135は、液滴検知装置1からの検出信号に基づいて、マイクロプレート132を移動させる。これにより、電動モータ134、135は、検出信号をトリガにして、液滴101を収納する容器131の位置を順次、移動させることができる。或いは、液滴101の通過信号が最も強い位置にマイクロプレート132の位置を調整することも可能である。液滴検知装置1により液滴101の通過を検知したら、速やかにステージを次の位置に移動させることで、均一に細胞が納められたマイクロプレート132を作成することができる。
【0032】
次に、液滴検知装置1の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る液滴検知装置の斜視図である。
【0033】
図3に示すように、液滴検知装置1は、光源10と、第1レンズ11と、第2レンズ21と、受光部54と、第1筒部51と、第2筒部52と、第3筒部53とを含む。第1筒部51は、内部空間51aを有する円筒状の部材である。内部空間51aの直径は、例えば約7mmである。
図1に示すセルソータ120からの液滴101は、第1筒部51の内部空間51aを中心軸AX1に沿った方向に通過する。
【0034】
第2筒部52は、内部空間52aを有する円筒状の部材である。第2筒部52は、第1筒部51の外周に接続され、内部空間52aと内部空間51aとが連通する。本実施形態では、第2筒部52の中心軸AX2は、第1筒部51の中心軸AX1と直交する。
【0035】
ここで用いた第1レンズ11及び第2レンズ21は、反射防止コーティングを施しており、光源10の所定の波長のみを通過させて、それ以外の透過を抑制できる。
【0036】
第3筒部53は、内部空間53aを有する円筒状の部材である。第3筒部53は、第1筒部51の外周に傾いた状態で接続され、内部空間53aと内部空間51aとが連通する。本実施形態では、第3筒部53の中心軸AX3は、第1筒部51の中心軸AX1と傾斜して交差し、かつ、第2筒部52の中心軸AX2と傾斜して交差する。
【0037】
光源10及び第1レンズ11は、第2筒部52の内部空間52aに固定される。光源10は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられる。光源10は、可視光から赤外光のいずれでもよい。例えば、光源10から出射される光L1(
図4参照)の波長は、可視光では、470nm(青)、527nm(緑)、587nm(黄)、605nm(橙)、620nm(赤)等である。赤外光の波長は、840nmから900nmの間であり、例えば870nmである。より望ましいのは、フォトダイオード31の分光感度特性から、可視光の場合、波長が620nm以上である。又は、赤外光の場合、波長が870nm以上、1100nm以下の範囲がより望ましい。
【0038】
ここで、受光部54は、フォトダイオード31と増幅回路(I/Vアンプ)、電源等を一体化したモジュールを用いることができる。アンプとフォトダイオード31を近接させて一体化することで、微弱な屈折光であっても、精度よく検知が可能となる。受光素子をアバランシェフォトダイオード(以下、APD(avalanche photodiode)と表す場合がある)として、さらにアンプを一体化したモジュールを用いることで、S/N比の高い測定が可能となり、φ200μm程度の液滴101の屈折光も検知可能となっている。例えば、その差をV/Wで表すと(Wは光量)、10
5にもなる。もちろん、測定光量はAPDモジュールの場合、0.06μWとなるが、光源以外の光、例えば太陽の光、室内の蛍光灯、その他のUV光などをなくした状態をつくることで、後述する実施例の様な測定が可能となる。また、セルソータ本体の電磁ノイズの影響をAPDモジュールのアンプが受ける可能性があるが、一体型モジュールとして、また鉛フィルム等を回路に覆うことで、測定が可能となった。
【0039】
第1レンズ11は、光源10と第1筒部51との間に設けられる。第1レンズ11は、例えばシリンダーレンズが用いられる。シリンダーレンズは、円柱の側面の一部を切り出した外径形状を有する。シリンダーレンズは、第1筒部51の中心軸AX1方向から見たときに曲面を有さず、中心軸AX1及び中心軸AX2と交差する方向から見たときに曲面を有する。このような構成により、シリンダーレンズは、一方向のみにレンズ作用を有する。光源10から出射される光L1は、第1レンズ11によって集光されて、第1筒部51の内部空間51aを横切って通過する。
【0040】
第2レンズ21は、第3筒部53の内部空間53aに固定される。第3筒部53の端部に受光部54が設けられる。第2レンズ21は、例えば平凸レンズが用いられる。受光部54は、フォトダイオード31を含む。フォトダイオード31は、例えば、Siフォトダイオードやアバランシェフォトダイオードが用いられる。液滴101の粒子径Dが、例えば500μmの場合、Siフォトダイオードにより検知が可能である。液滴101の粒子径Dが、例えば200μmの場合、アバランシェフォトダイオードが適している。液滴101によって屈折された光は、第2レンズ21により集光され、フォトダイオード31に入射する。これにより、液滴検知装置1は、液滴101の通過を検知する。また、LED光源の光が第1筒部51内で反射拡散して検知性能が低下することを防ぐため、第1筒部51のLED光源の照射先側には、光を逃がす穴部51b(
図5参照)を設けている。これにより、第1筒部51の内面(LEDの正面側)で光が反射して拡散して、液滴101に望まない屈折光が生じることを防いでいる。
【0041】
第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、3Dプリンタを用いて製造することができる。3Dプリンタの方式としては光造形が最も望ましい。光造形方式の3Dプリンタは、CAD(Computer Aided Design)により作成された3次元形状データを用いて、3次元形状モデルを作成する。光造形方式では、液状の光硬化性樹脂に光を照射して硬化層を形成し、硬化層を複数積層して光造形物を形成する。これにより、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、同じ工程で一体に形成される。光造形方式で形成することにより、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53を低コストで形成することができる。この場合、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、複数の層を積層する故に0.3mm程度の寸法精度である。このため、光源10、第1レンズ11、第2レンズ21及び受光部54の精度も光造形の寸法精度に制約される。この場合であっても、粒子径Dが200μm程度の液滴101であれば検知可能である。
【0042】
また、3Dプリンタを用いて製造することにより、光源10、第1レンズ11、第2レンズ21及び受光部54を互いに近傍に集約して配置できる。このため、
図2に示すように、マイクロプレート132の直上に液滴検知装置1を設置することができる。なお、
図2では、マイクロプレート132の容器131が開口する方向と、第1筒部51の中心軸AX1とが一致している。容器131の開口は、例えば直径7mm程度(96ウェル)であるが、更に小さい直径の場合には、中心軸AX1を傾けて第1筒部51を設けてもよい。或いは、液滴101の一筋の軌跡方向に、第1筒部51の中心軸AX1を一致させてもよい。
【0043】
なお、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、塗装が施されていることが好ましい。塗装の色は、黒色が望ましい。これにより、内部空間51a、52a、53aに外部からの光が侵入することを抑制できる。また、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、円筒に限定されない。第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53は、それぞれ、断面形状で四角形状、多角形状、楕円形状或いは異形状であってもよい。また、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53の全部を光造形方式で形成する場合に限定されない。第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53の一部を光造形方式で形成してもよい。
【0044】
次に、液滴検知装置1による液滴101の検知方法について説明する。
図4は、実施形態に係る液滴検知装置を模式的に示す上面図である。
図5は、実施形態に係る液滴検知装置を模式的に示す側面図である。
図6は、液滴を通過する光の屈折を説明するための説明図である。なお、
図4及び
図5では、図面を見やすくするために、第2筒部52及び第3筒部53を省略して示す。
【0045】
図4及び
図5に示すように、光源10は発光ダイオードであるため、光L1は非コヒーレント光であり、かつ、拡がり角を有する。光L1の光軸AX0は、第1方向Dxに沿った方向に向けられる。つまり、光L1は第1筒部51の中心軸AX1に交差する方向に出射される。
【0046】
以下の説明において、第1方向Dx、第2方向Dy及び第3方向Dzが用いられる。第1筒部51の中心軸AX1(
図3参照)に沿う方向を第3方向Dzとする。第1方向Dxと、第2方向Dyとがなす平面は、中心軸AX1(
図3参照)と交差する。第1方向Dx及び第2方向Dyの両方に対して第3方向Dzは垂直な方向である。なお、これに限定されず、第2方向Dyは第1方向Dxに対して90°以外の角度で交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyに対して90°以外の角度で交差してもよい。
【0047】
図4に示すように、第3方向Dzから見たときに、光源10、第1レンズ11、第1筒部51、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、光軸AX0と重なって、第1方向Dxに配列される。光L1は、第1レンズ11で集光される。第1レンズ11はシリンダーレンズであるため、
図5に示すように、側面(第2方向Dy)から見たときに、第1レンズ11から出射される光L2は集光される。一方、
図4に示すように、上方(第3方向Dz)から見たときに光L2は集光されない。このため、第1筒部51の内部空間51aの、液滴101が通過する面の全体に光L2が照射される。第1レンズ11としてシリンダーレンズを用いることにより、液滴101の通過位置がばらついた場合であっても、液滴101を検知することができる。
【0048】
図5に示すように、光L2は、液滴101により屈折されて進行する第1屈折光L3と、屈折されずに進行する光L4とに分かれる。第2レンズ21及びフォトダイオード31は、第2方向Dyから見たときに、光軸AX0に対して傾いた位置に設けられ、第1屈折光L3を受光可能となっている。言い換えると、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、液滴101により屈折されない光L4に対してずれた位置に配置される。第1屈折光L3は、第2レンズ21で集光されてフォトダイオード31に入射する。このように、フォトダイオード31は、第1屈折光L3を受光することにより、液滴101の通過を検知することができる。
【0049】
図6は、液滴101に入射する光L2と、第1屈折光L3及び第2屈折光L3aの関係を示す。光L2は、基準線HLに対して平行であり、液滴101の中心Cから上方にずれた位置に入射する。ここで、基準線HLは、液滴101の中心Cと交差し、第1方向Dx(
図4、
図5参照)と平行な線である。言い換えると、基準線HLは、水平方向と平行な線である。光L2は、法線NL1に対して角度θ1を有して液滴101に入射する。光L2は、液滴101と空気との境界で、屈折する光L2aと、反射する反射光L2bとに分岐される。屈折する光L2aは、法線NL1に対して角度θ2を有して、液滴101の内部を進行する。また、反射光L2bは、法線NL1に対して角度θ3を有して反射する。光L2の角度θ1と、反射光L2bの角度θ3は、互いに等しい角度である。
【0050】
ここで、光L2の角度θ1と、光L2aの角度θ2とは、以下の関係が成り立つ。ただし、n1は、液滴101の外部、すなわち空気の屈折率であり、n1=1である。n2は、液滴101の屈折率であり、n2=1.33である。
【0052】
液滴101の内部を進行する光L2aは、液滴101と空気との境界で、第1屈折光L3と、反射光L2cとに分かれる。第1屈折光L3は、法線NL2に対して角度θ5を有して液滴101の外部に出射される。また、第1屈折光L3は、基準線HLに対して角度θ8を有する。
図5に示すフォトダイオード31は、受光面に垂直な方向が、基準線HLに対して角度θ8を有して傾いて配置される。これにより、フォトダイオード31は、液滴101で2回屈折して出射する第1屈折光L3を検知する。また、反射光L2cは、法線NL2に対して角度θ4を有して反射する。ここで、光L2aと法線NL2とがなす角度θ4と、第1屈折光L3の角度θ5とは、以下の関係が成り立つ。
【0054】
同様に、液滴101の内部を進行する反射光L2cは、液滴101と空気との境界で、第2屈折光L3aと、反射する光(図示を省略する)とに分岐される。第2屈折光L3aは、法線NL3に対して角度θ7を有して液滴101の外部に出射される。
図5に示すフォトダイオード31は、第2屈折光L3aを検知するように配置されてもよい。ここで、反射光L2cと法線NL3とがなす角度θ6と、第2屈折光L3aと法線NL3とがなす角度θ7とは、以下の関係が成り立つ。
【0056】
なお、
図3から
図5に示す例では、液滴101に入射する光L2は、基準線HLに対して平行に入射しているが、これに限定されない。光L2は、基準線HLに対して角度を有して液滴101に入射してもよい。この場合も、光L2は、屈折及び反射を繰り返して、液滴101の外部に出射される。例えば、
図6に示すように光L2が、基準線HLに対して、上方にθ0=14°の角度を有して液滴101に入射した場合、第1屈折光L3は基準線HLに対して下方にθ8=39°の角度で出射される。このように、光L2の入射角度に応じて、第1屈折光L3の角度を変更することができるため、
図5に示すフォトダイオード31により確実に第1屈折光L3を検知できる。
【0057】
(第1実施例)
図7は、第1実施例に係るフォトダイオードの出力電圧波形を示すグラフである。
図8は、第1実施例に係るフォトダイオードの出力電圧波形の、他の例を示すグラフである。
図9は、第1実施例に係るフォトダイオードの出力電圧波形の、他の例を示すグラフである。
【0058】
図7から
図9に示すグラフ1からグラフ3は、液滴101に換えて直径500μmのガラスビーズを第1筒部51に自然落下させたときの、フォトダイオード31の出力電圧波形を示している。グラフ1からグラフ3は、いずれも横軸が時間であり、縦軸が出力電圧である。グラフ1からグラフ3は、それぞれ、第3方向Dzから見たときのガラスビーズの落下位置が異なっている場合の出力電圧波形を示している。
【0059】
本実施例での、光源10の光L1の波長は、620nm(赤)である。第1レンズ11は、両凸レンズを用いている。フォトダイオード31の受光感度は、波長620nmにおいて、0.4V/Aである。フォトダイオード31に接続されるアンプ部の変換インピーダンスは、1×10
4V/Aである。
【0060】
グラフ1からグラフ3に示すように、ガラスビーズが通過すると、フォトダイオード31はガラスビーズからの屈折光を受光する。これにより、出力電圧が大きくなり、ガラスビーズの通過を検知できる。また、グラフ1からグラフ3に示すように、ガラスビーズの落下位置に応じて、出力電圧の大きさが異なる可能性がある。これにより、ガラスビーズの落下位置を検知できる可能性が示された。
【0061】
(第2実施例)
図10は、第2実施例に係るフローサイトメータの測定波形を示すグラフである。
図10に示すグラフ4は、
図1に示すように、フローサイトメータ100に液滴検知装置1を適用した場合の測定波形である。具体的には、
図1に示すように、液滴検知装置1はセルソータ120の下方に配置され、偏向板122の間から第1筒部51を通過する液滴101を検出する。なお、グラフ4は、横軸が時間であり、縦軸が出力電圧である。
【0062】
本実施例での、ノズル径dは、100μmである。流速vや周波数f等の諸条件は、表1に示す通りである。フォトダイオード31は、アバランシェダイオードを用いている。フォトダイオード31の受光部の直径は、約3mmであり、最大入射光量(限界)は、0.06μmであり、受光感度は−1.5×10
8V/Wである。また、光源10の光L1の波長は、620nm(赤)である。フォトダイオード31の最大入射光量を超えずに、光量変化が検出できるように、光源10の電圧値及び電流値を調整している。
【0063】
図10に示すように、液滴101が通過することで出力電圧の変化が生じる。これにより、本実施例のフローサイトメータ100は、セルソータ120を通過して飛翔軌道が安定しない液滴101の通過を液滴検知装置1により検知できる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の液滴検知装置1は、液滴101が内部空間51aを通過する第1筒部51と、発光ダイオードを含み、第1筒部51の軸方向に対して交差する方向に光を出射する光源10と、光L1の光軸AX0に対し傾いて設けられ、液滴101で屈折された光(第1屈折光L3)を受光するフォトダイオード31と、を有する。
【0065】
これにより、光源10として発光ダイオードを用い、液滴101で屈折された第1屈折光L3をフォトダイオード31により検出する。このため、レーザ光源や、光電子倍増管等の高価で大型の検出器を用いずに、液滴101の通過を検知できる。したがって、液滴検知装置1は、セルソータの信頼性やスループット(全てのウェル(容器131)に細胞が収められたマイクロプレート132を完成品として)を高めることができる。したがって、液滴検知装置1を小型化するとともに、構成を簡便にしてコストを低減できる。
【0066】
本実施形態に係る液滴検知装置1において、光L1の光軸AX0は、水平方向に対して傾いて設けられる。これにより、液滴101で屈折された第1屈折光L3の方向と、フォトダイオード31の位置とを一致させることができる。
【0067】
本実施形態に係る液滴検知装置1において、光源10と第1筒部51との間に第1レンズ11(シリンダーレンズ)が設けられている。第1レンズ11を通過した前記光は、光軸AX0及び第1筒部51の中心軸AX1と交差する方向、すなわち第2方向Dyから見たときに集光され、第1筒部51の中心軸AX1方向、すなわち第3方向Dzから見たときに集光されず第1筒部51を通過する。これにより、第1筒部51の内部空間51aの、液滴101が通過する面の全体に光L2を照射することができる。このため、液滴検知装置1は、液滴101が通過する位置を検知することができる。
【0068】
本実施形態に係る液滴検知装置1は、さらに、光源10が内部に固定される第2筒部52と、フォトダイオード31と第1筒部51との間に設けられた第2レンズ21と、第2レンズ21が内部に収納された第3筒部53とを有し、第1筒部51、第2筒部52及び第3筒部53の一部又は全部は、光造形により形成された光造形物である。これにより、光源10を保持する第2筒部52や、第2レンズ21を保持する第3筒部53を低コストで製造できる。
【0069】
本実施形態に係るフローサイトメータ100は、上記の液滴検知装置1と、液滴101を生成する液滴生成部110と、液滴101を収納する複数の容器131を備える収納部130と、液滴生成部110と収納部130との間に配置され、液滴101を複数の容器131ごとに振り分けるセルソータ120と、を有し、液滴検知装置1は、セルソータ120と収納部130との間に配置される。
【0070】
これにより、液滴検知装置1は、光源10として発光ダイオードを用い、液滴101で屈折された第1屈折光L3をフォトダイオード31により検出する。このため、レーザ光源や、光電子倍増管等の高価で大型の検出器を用いずに、液滴の通過を検知できる。したがって、フローサイトメータ100を小型化するとともに、構成を簡便にしてコストを低減できる。また、発光ダイオードを用いているため、セルソータ120を通過して飛翔軌道が安定しない液滴101の通過を検知できる。
【0071】
本実施形態に係るフローサイトメータ100において、収納部130の容器131は開口を備え、第1筒部51の内径と開口の径は等しい大きさを有する。これによれば、第1筒部51を通過した液滴101を確実に容器131に収納することができる。
【0072】
本実施形態に係るフローサイトメータ100において、さらに、液滴検知装置1からの検出信号に基づいて、収納部130を移動させる駆動部(電動モータ134、135)を有する。これによれば、電動モータ134、135は、検出信号をトリガにして、液滴101を収納する容器131の位置を順次、移動させることができる。或いは、液滴101の通過信号が最も強い位置に収納部130の位置を調整することも可能である。
【0073】
(第1変形例)
図11は、第1変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す側面図である。本変形例の液滴検知装置1Aにおいて、光源10及び第1レンズ11は、基準線HLに対して傾いて配置される。言い換えると、光L2は、基準線HLに対して上方(第3方向Dz側)に傾斜する。光L2は基準線HLに対して角度θ10を有して、液滴101に出射される。
【0074】
液滴101で屈折された第1屈折光L3は、基準線HLに対して角度θ11を有して上方に出射される。第1屈折光L3は、第2レンズ21で集光されてフォトダイオード31に受光される。これにより、液滴101の通過を検知できる。このように、光源10及びフォトダイオード31を、基準線HLに対して、同じ側に傾けて配置した構成であっても液滴101を検知することができる。
【0075】
(第2変形例)
図12は、第2変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す側面図である。本変形例の液滴検知装置1Bにおいて、光源10及び第1レンズ11と、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、第1筒部51の中心軸AX1に対して同じ側に配置される。光源10及び第1レンズ11は、基準線HLに対して上方(第3方向Dz側)に傾斜して配置される。光L2は基準線HLに対して角度θ12を有して、液滴101に出射される。
【0076】
液滴101で屈折された第2屈折光L3aは、基準線HLに対して角度θ13を有して下方(光源10及び第1レンズ11の反対側)に出射される。第2屈折光L3aは、第2レンズ21で集光されてフォトダイオード31に受光される。これにより、液滴101の通過を検知できる。このように、光源10及びフォトダイオード31を、第1筒部51の中心軸AX1に対して、同じ側に配置した構成であっても液滴101を検知することができる。
【0077】
(第3変形例)
図13は、第3変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す上面図である。本変形例の液滴検知装置1Cにおいて、第3方向Dzから見たときに、光源10及び第1レンズ11は、基準線HLと重なる位置に配置される。また、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、第3方向Dzから見たときに、基準線HLに対して傾いた位置に配置される。言い換えると、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、光L2の光軸と重ならない位置に配置される。第2レンズ21及びフォトダイオード31は、第1方向Dxと第2方向Dyとで形成される平面内に配置されてもよい。
【0078】
この場合において、第1屈折光L3は、液滴101で屈折されて、基準線HLに対して角度θ14を有して液滴101から出射される。第1屈折光L3は、第2レンズ21で集光されてフォトダイオード31に受光される。これにより、液滴101の通過を検知できる。また、本変形例では、単独の液滴101の検知だけではなく、連続した水流の通過も検知できる。
【0079】
(第4変形例)
図14は、第4変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す上面図である。本変形例の液滴検知装置1Dにおいて、第3方向Dzから見たときに、第1筒部51の円周方向に沿って複数の第2レンズ21a、21b、21c、21dと、複数のフォトダイオード31a、31b、31c、31dが設けられている。本変形例では、複数のフォトダイオード31a、31b、31c、31dは、それぞれ、液滴101において異なる角度で出射される屈折光L31、L32、L33、L34を受光する。
【0080】
液滴検知装置1Dは、複数のフォトダイオード31a、31b、31c、31dで検出された情報に基づいて、光強度の分布や、時間差等から、液滴101の通過位置を検知することができる。
【0081】
(第5変形例)
図15は、第5変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す上面図である。
図16は、第5変形例に係る液滴検知装置を模式的に示す側面図である。本変形例の液滴検知装置1Eにおいて、第1レンズ11Aは、両凸レンズが用いられる。光源10から出射された光L1は、第1レンズ11Aで集光される。第1レンズ11Aは両凸レンズであるため、
図15に示すように、第3方向Dzから見たときに、第1レンズ11Aから出射される光L2は集光される。また、
図16に示すように、第2方向Dyから見たときにも、光L2は集光される。
【0082】
光L2の焦点は、第1筒部51の内部空間51aに形成される。光L2は焦点から角度θ15の範囲で拡がって進行する。角度θ15は、例えば約40°程度である。本変形例では、内部空間51aの、角度θ15の範囲内を通過する液滴101が検知可能である。
【0083】
本変形例でも、
図15に示すように、第3方向Dzから見たときに、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、光軸AX0と重なる位置に配置される。また、
図16に示すように、第2方向Dyから見たときに、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、光軸AX0に対して傾いた位置に配置される。言い換えると、第2レンズ21及びフォトダイオード31は、円錐状に拡がる光L4と重ならない位置に配置される。
【0084】
以上説明した液滴検知装置1、1Aから1E及びフローサイトメータ100の構成は適宜変更してもよい。光源10からの光L1の波長は、あくまで一例であり、適宜変更することができる。液滴101の粒子径D等もあくまで一例であり、表1等に示すものに限定されるものではない。また、液滴検知装置1、1Aから1Eは、フローサイトメータ100に適用される場合に限定されない。液滴検知装置1、1Aから1Eは、液滴を生成して供給するディスペンサや、インクジェットノズルに適用することもできる。