(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シフト制御部は、前記操作走行モードにおいて前記先ギヤ段における前記車両の現在の速度の駆動力から前記現走行区間における前記車両の走行抵抗を差し引いた値が前記第2所定値未満であり、前記現走行区間の残り区間の距離が前記所定距離以上であり、且つ前記車両の速度が前記車両に設定された上限速度である場合には、前記先ギヤ段へのシフトアップを延期しない、請求項2に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態>
[実施の形態に係る車両Vの概要]
図1を参照しながら、本実施の形態に係る車両Vの概要について説明する。
図1は、本実施の形態の車両制御装置10が搭載された車両Vの概要を説明するための図である。車両制御装置10は、変速機を制御することにより、車両Vのギヤ段を変速する。
【0014】
車両Vは、現走行区間Aと現走行区間Aに比べて道路の平均勾配の小さい先走行区間Bとの連続区間を走行する。走行区間は、道路の勾配が等しいとみなすことができる区間である。現走行区間Aは、車両Vが走行中の走行区間であり、先走行区間Bは、現走行区間Aに隣接し、且つ現走行区間Aよりも車両Vの進行方向前方の走行区間である。先走行区間Bは、現走行区間Aとは道路勾配が異なる。
【0015】
車両制御装置10は、車両Vにおいて道路の走行抵抗に比べて所定値D1以上大きな駆動力を発生可能なギヤ段のうち、最も高いギヤ段に変速する。所定値D1は、例えば、運転者がアクセル操作に対して所定の応答性を感じるための値として適宜定めることができる。また、車両制御装置10は、現走行区間A及び先走行区間Bにおいてギヤ段の変速後に車両Vに発生させる駆動力を求め、求めた駆動力が後述する条件を満たす場合に、現走行区間Aにおいて先走行区間Bの始点に到達する前にギヤ段を予めシフトアップする。これにより、車両制御装置10は、例えば、先走行区間の始点でシフトアップする場合に比べてシフトアップのタイミングをより早くするので、燃料消費を向上させることができる。
【0016】
[実施の形態に係る車両の構成]
図2を参照しながら、本実施の形態に係る車両Vの構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る車両Vの構成を模式的に示す図である。本実施の形態に係る車両Vは、エンジン1、変速機2、GPS(Global Positioning System)センサ3、重量センサ4、速度センサ5、アクセル開度センサ6及び車両制御装置10を備える。
【0017】
車両Vは、ディーゼルエンジン等のエンジン1を駆動力とする大型車両であり、特にオート走行モードを搭載する車両である。変速機2は、エンジン1の駆動力を車両Vの駆動輪(不図示)に伝達する。変速機2は、エンジン1の駆動力を変換するための複数段のギヤを含む。
【0018】
ここで、車両Vにおける「オート走行モード」とは、運転者がアクセルやシフトレバーを操作しなくても、予め設定された車両Vの速度を維持するように、エンジン1及び変速機2等が車両制御装置10によって自動で定速走行を行うモードをいう。オート走行モードは、車両Vが高速道路を走行する際に使用されることが主に想定されている。一方、車両Vにおける「操作走行モード」は、オート走行モードとは異なるモードであり、運転者のアクセル操作で走行するモードである。
【0019】
GPSセンサ3は、複数の航法衛星から送信された電波を受信して解析することにより、GPSセンサ3の位置、すなわちGPSセンサ3を搭載する車両Vの位置を取得する。GPSセンサ3は、車両Vの位置を示す情報を車両制御装置10に出力する。
【0020】
重量センサ4は、車両Vの総重量を取得する。具体的には、重量センサ4は車両Vの積荷の重量を計測し、積荷を除いた車両V単体の重量と合算することで車両Vの総重量を取得する。重量センサ4は、車両Vの総重量を示す情報を車両制御装置10に出力する。
【0021】
速度センサ5は、車両Vの速度を計測する。速度センサ5は、計測された車両Vの速度を示す情報を車両制御装置10に出力する。アクセル開度センサ6は、車両Vの運転者によるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を計測する。アクセル開度センサ6は、アクセル開度を示す情報を車両制御装置10に出力する。
【0022】
車両制御装置10は、上述の各センサから情報を取得し、取得した情報に基づいてエンジン1内のシリンダに供給する燃料の量、及び変速機2のギヤ段を制御する。車両制御装置10は、車両Vがオート走行モードの場合には、車両Vにおいて設定された速度を保って走行するように、エンジン1及び変速機2を制御する。また、車両制御装置10は、車両Vの速度制限装置(Speed Limit Device:SLD)が稼働している場合には、車両Vの速度が設定された上限速度を超えないように、エンジン1及び変速機2を制御する。
【0023】
[車両制御装置の構成]
図3は、本実施の形態に係る車両制御装置10の構成を示す図である。本実施の形態に係る車両制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。
【0024】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)である。記憶部11は、制御部12を機能させるための各種のプログラムを記憶する。
【0025】
制御部12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することによって、現ギヤ段選択部13、道路勾配取得部14、走行区間決定部15、先ギヤ段選択部16及びシフト制御部17の機能を実現する。
【0026】
現ギヤ段選択部13は、車両Vの現走行区間Aの走行抵抗に基づいて現走行区間における変速機2のギヤ段である現ギヤ段を選択する。現走行区間Aの走行抵抗は、車両Vのタイヤの転がり抵抗、車両Vにかかる空気抵抗、車両Vが走行中の道路の勾配に基づく勾配抵抗等を合算した抵抗である。
【0027】
現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力及び加速度を測定しており、車両Vの駆動力と加速度との関係から車両Vの走行抵抗を求める。現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力が車両Vの現走行区間Aの走行抵抗よりも所定値D1以上大きくなるギヤ段のうち、最も高いギヤ段を現ギヤ段として選択する。
【0028】
[現ギヤ段の選択方法]
図4を参照して、現ギヤ段選択部13による現ギヤ段の選択方法について説明する。
図4は、車両Vの走行性能線図である。
図4の縦軸は、エンジン1の駆動力をkgfで示し、横軸は、車両Vの速度をkm/hで示す。実線P
7〜P
12は、それぞれ7段〜12段における車両Vの最大駆動力を示す。破線P
10’〜P
12’は、それぞれ10段〜12段における現ギヤ段の補正駆動力である。補正駆動力は、最大駆動力に1より小さい所定の係数を乗じて得た値である。
【0029】
また、曲線Hは、走行中の車両Vにおける現走行区間Aの走行抵抗を示す。原則として、車両Vの燃料消費は、高いギヤ段ほど減少する。一方、現ギヤ段選択部13において現走行区間Aの走行抵抗より小さい最大駆動力を有するギヤ段を選択したとすれば、車両Vの最大駆動力に比べて車両Vにかかる現走行区間Aの走行抵抗が大きくなるので、車両Vは失速する。また、現ギヤ段選択部13において現走行区間Aの走行抵抗より低い現ギヤ段の補正駆動力を有するギヤ段を選択したとすれば、車両Vは、実駆動力が走行抵抗よりも高くなる場合を除き、失速する。
【0030】
そこで、現ギヤ段選択部13は、現ギヤ段の補正駆動力が現走行区間Aの走行抵抗より大きいギヤ段のうち、最も高いギヤ段を現ギヤ段として選択する。現ギヤ段選択部13は、現ギヤ段の補正駆動力が現走行区間Aの走行抵抗より大きくなるように、ギヤ段を選択するので、最大駆動力と現ギヤ段の補正駆動力の差分を所定値D1の駆動力とすれば、車両Vの最大駆動力は、少なくとも所定値D1以上、現走行区間Aの走行抵抗より大きくなる。
【0031】
図4の例では、車両Vの速度を80km/hとすれば、破線P
12’に示す12段の現ギヤ段の補正駆動力は、曲線Hに示す現走行区間Aの走行抵抗より小さくなる。一方、破線P
11’に示す11段のギヤ段は、その現ギヤ段の補正駆動力が現走行区間Aの走行抵抗より大きくなるギヤ段のうち、最も高いギヤ段になる。このため、現ギヤ段選択部13は、11段のギヤ段を選択する。
【0032】
道路勾配取得部14は、GPSセンサ3から取得した車両Vの位置を示す情報と、記憶部11に格納されている地図情報とに基づいて、車両Vが走行中の道路における道路勾配を取得する。道路勾配取得部14は、所定の勾配取得範囲における道路勾配を取得し、例えば、GPSセンサ3から取得した車両Vの走行位置から車両Vの進行方向前方500mの位置までの道路勾配を取得する。また、道路勾配取得部14は、道路勾配を例えば25mの測定単位ごとに取得し、車両Vが25m前進するごとに車両の走行位置の500m先の位置における道路勾配を記憶部11から読み出す。
【0033】
走行区間決定部15は、道路勾配取得部14が取得した道路勾配に基づいて、現走行区間A及び先走行区間Bを決定する。まず、走行区間決定部15は、勾配取得範囲において仮の走行区間を定める。例えば、走行区間決定部15は、車両Vの走行位置から車両Vの進行方向前方100mの最小区間までを仮走行区間と定める。
【0034】
[走行区間の評価方法]
次に、
図5を参照して、走行区間決定部15による走行区間の評価方法を説明する。
図5は、仮走行区間を分割した様子を示す。走行区間決定部15は、仮走行区間が車両Vの走行位置P1から位置P9までの範囲である場合に、仮走行区間を複数の区間に等分する。ここでは、走行区間決定部15は、位置P2、P3、・・・、P8において仮走行区間を8等分する。さらに、走行区間決定部15は、等分された区間の端点である位置P1―P2、位置P2―P3、位置P3―P4、位置P4―P5、位置P5―P6、位置P6―P7、位置P7―P8、位置P8―P9をそれぞれ結ぶ線分を順にたどる折れ線Bと、P1―P9を結ぶ線分Lとの間に形成される面積の総和を求める。
【0035】
折れ線Bと線分Lとは、位置P3とP4との間の位置Xにおいて交差している。折れ線Bと線分Lとの間に形成される面積の総和は、位置P1、P2、P3及びXの4箇所からなる四角形の面積と、位置X、P4、P5、P6、P7、P8及びP9の7箇所からなる七角形の面積との合計として求められる。このとき、四角形は、線分Lの上側に形成され、七角形は、線分Lの下側に形成される。そこで、走行区間決定部15は、線分Lの上側に形成される面積を正の面積とし、線分Lの下側に形成される面積を負の面積として総和を求めてもよい。
【0036】
走行区間決定部15は、折れ線Bと線分Lとの間に形成される面積の総和の絶対値を等勾配判定閾値と比較し、面積の総和の絶対値が等勾配判定閾値よりも大きければ、末端の位置P9を除いた位置P1から位置P8までの区間を一の走行区間であると決定する。この等勾配判定閾値は、走行区間内の各位置の勾配が等しいとみなせるか否かを判定するための値である。
【0037】
一方、走行区間決定部15は、面積の総和の絶対値が等勾配判定閾値よりも小さければ、仮の走行区間をさらに延長する。例えば、走行区間決定部15は、仮の走行区間が測定単位だけ延長されるように新たな位置P10を追加し、同様に、位置P1からP10までの範囲を仮走行区間として等分された区間の各端点である位置P(k)―P(k+1)(k=1、2、・・・、9)間の線分を順にたどる折れ線と、仮走行区間の端点である位置P1―P10の線分との間に形成される面積の総和を求める。走行区間決定部15は、この面積の総和の絶対値が等勾配判定閾値より大きくなるまで、仮の走行区間を延長することにより、一の走行区間を決定する。走行区間決定部15は、互いに隣接する複数の走行区間を順次決定することにより、現走行区間A及び先走行区間Bを決定する。
【0038】
先ギヤ段選択部16は、先走行区間Bの道路勾配と車両Vの速度とに基づいて、先走行区間Bにおける変速機2のギヤ段である先ギヤ段を選択する。現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力と車両Vの加速度との関係から現走行区間Aの走行抵抗を求めるのに対し、先ギヤ段選択部16は、道路勾配取得部14が取得した道路勾配を用いて、車両Vにかかる先走行区間Bの走行抵抗を求める。先ギヤ段選択部16は、車両Vの最大駆動力が車両Vの先走行区間Bの走行抵抗よりも所定値D2以上大きくなるギヤ段のうち、最も高いギヤ段を先ギヤ段として選択する。このため、先ギヤ段にシフトアップしたときの車両Vの最大駆動力から車両Vの先走行区間Bの走行抵抗を差し引いた余裕駆動力は、車両Vの速度等の変動がなければ、所定値D2以上になる。
【0039】
先ギヤ段選択部16は、GPSセンサ3により取得した車両Vの位置に対応する道路勾配データを取得しているため、現走行区間Aの走行抵抗よりも高精度に先走行区間Bの走行抵抗を把握できる。そのため、現ギヤ段の算出に対し、先ギヤ段は、最大駆動力と先ギヤ段の補正駆動力との差分の駆動力である所定値D2を0又は現ギヤ段選択時の所定値D1に対して小さく設定した条件において先ギヤ段を選択できる。所定値D2を所定値D1より小さくすることができるため、先ギヤ段選択部16がより高いギヤ段を選ぶ頻度が向上する。このため、燃費をより良好にすることができる。
【0040】
図6を参照して、先ギヤ段選択部16による先ギヤ段の選択方法について説明する。
図6は、車両Vの走行性能線図である。
図4と同様に、
図6の縦軸は、車両の駆動力をkgfで示し、横軸は、車両Vの速度をkm/hで示す。実線P
7〜P
12は、それぞれ7段〜12段における車両Vの最大駆動力であり、
図4と同一である。一点鎖線P
10”〜P
12”は、それぞれ10段〜12段における先ギヤ段の補正駆動力である。最大駆動力と先ギヤ段の補正駆動力との差分の駆動力である所定値D2は、所定値D1より小さいため、一点鎖線P
10”〜P
12”は、それぞれ10段〜12段における現ギヤ段の補正駆動力を示す破線P
10’〜P
12’よりも大きな値となる。先ギヤ段の補正駆動力は、最大駆動力に1より小さい所定の係数を乗じて得た値である。
【0041】
先走行区間Bの走行抵抗を示す曲線H’を
図6に示す。曲線H’の走行抵抗は、曲線Hの走行抵抗とは走行区間の勾配が異なる場合のものである。先ギヤ段選択部16は、先走行区間Bの走行抵抗を超える先ギヤ段の補正駆動力を有するギヤ段のうち、最も高いギヤ段を選択する。
【0042】
図6の例では、車両Vの速度を80km/hとすれば、曲線H’上に示す先走行区間Bの走行抵抗を超える先ギヤ段の補正駆動力を有するギヤ段のうち、最も高いギヤ段は12段のギヤ段である。このため、先ギヤ段選択部16は、先ギヤ段として12段のギヤ段を選択する。
【0043】
シフト制御部17は、変速機2を制御することにより、車両Vを変速させる。シフト制御部17は、現走行区間Aにおいて現ギヤ段選択部13に選択された現ギヤ段に変速する。シフト制御部17は、オート走行モードであること、車両Vの速度制限装置が稼働していること、あるいは、速度センサ5が計測した車両Vの速度の変動幅が定常走行判定閾値よりも小さい定常状態であることのいずれにも該当しない場合には、先ギヤ段選択部16により選択された先ギヤ段に変速せず、現ギヤ段選択部13に選択された現ギヤ段に変速する。定常走行判定閾値は、右左折や停止の少ない道路を車両Vが走行していることを検出するための値である。右左折や停止の少ない道路としては、例えば、高速道路が挙げられる。
【0044】
シフト制御部17は、先走行区間Bの走行抵抗が現走行区間Aの走行抵抗より小さい場合、所定条件下において現走行区間Aの走行中に先ギヤ段にシフトアップする。より詳しくは、シフト制御部17は、現走行区間Aの走行抵抗と、先ギヤ段における駆動力を比較する。言い換えれば、シフト制御部17は、先ギヤ段における最大駆動力が、現走行区間の走行抵抗よりも大きいか否かを比較する。
【0045】
シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップしたときの車両Vの最大駆動力が車両Vの現走行区間Aの走行抵抗以上である場合、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップする。
【0046】
車両Vがオート走行モードの場合には、加速する必要がないため、シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であっても、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップする。先ギヤ段選択部16は、先走行区間の余裕駆動力が所定値D2以上になるように先ギヤ段を選択し、且つ先走行区間では走行抵抗が減少するため、現走行区間Aにおいて余裕駆動力が所定値D1未満であっても、先走行区間Bにおいて車速を維持することができる。
【0047】
一方、オート走行モードにおいてアクセル開度センサ6が計測したアクセル開度が加速判定閾値以上である場合には、運転者は、燃料消費を低減させることよりも加速度を得ることを優先している可能性が高い。加速判定閾値は、運転者がオート走行モードにおいて設定された車両Vの速度よりも高い速度で走行することを意図しているか否かを判定するための閾値である。そこで、シフト制御部17は、オート走行モードにおいて車両Vのアクセル開度が加速判定閾値以上である場合には、先ギヤ段にシフトアップしない。
【0048】
また、操作走行モードにおいて現走行区間Aの残り区間がわずかであり、且つ先走行区間Bにおいて十分な加速度が得られる場合には、車両Vの加速度が小さくても運転者が違和感を覚える可能性は小さい。このため、シフト制御部17は、(1)操作走行モードにおいて先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であっても、(2)現走行区間Aの残り距離が所定距離未満であり、且つ(3)先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vが失速しない場合には、現走行区間Aで先ギヤ段にシフトアップする。
【0049】
所定距離は、車両Vの加速度の低下に運転者が違和感を覚えない程度の距離である。先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vが失速しないとは、先ギヤ段にシフトアップしたときに車両Vの現在の速度の駆動力が現走行区間Aにおける車両Vの走行抵抗以上であることに相当する。
【0050】
シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vが失速しないか否かを確認するために、現走行区間Aの走行抵抗と、車両Vの先ギヤ段の最大駆動力とを比較する。先ギヤ段の最大駆動力が現走行区間Aの走行抵抗以上である場合には、先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vは失速しない。一方、先ギヤ段の最大駆動力が現走行区間Aの走行抵抗未満である場合には、先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vは失速する。
【0051】
シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップしたときに現走行区間Aにおいて車両Vが失速する場合には、先ギヤ段にシフトアップしない。また、シフト制御部17は、(1)先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であり、且つ(2)操作走行モードにおいて現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上であれば、現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離未満になるまで、先ギヤ段へのシフトアップを延期する。シフト制御部17は、先ギヤ段へのシフトアップを延期した後、操作走行モードにおいて現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離未満になったときに、先ギヤ段にシフトアップするか否かを再度判定してもよい。
【0052】
また、操作走行モードにおいて車両Vに設定された上限速度に達したことにより、速度制限装置が稼働している場合には、速度制限装置は、車両Vの速度が設定された上限速度を超えないように、エンジン1及び変速機2を制御する。車両Vは、速度制限装置が稼働している場合、加速することができない。
【0053】
そこで、シフト制御部17は、(1)操作走行モードにおいて車両Vの速度が車両Vに設定された上限速度である場合には、(2)先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であり、且つ(3)現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上であっても、先ギヤ段へのシフトアップを延期せず、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップする。
【0054】
[車両制御装置10の動作の一例を示すフローチャート]
図7及び
図8は、車両制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。速度センサ5が計測した車両Vの速度の変動幅が定常走行判定閾値よりも小さい定常状態であるときにこの処理手順は開始される。定常走行判定閾値は、右左折や停止の少ない道路を車両Vが走行していることを検出するための値である。
【0055】
まず、シフト制御部17は、車両Vの現在のギヤ段と先ギヤ段とを比較する(S11)。シフト制御部17は、先ギヤ段が現在のギヤ段より高い場合(S11のYES)、アクセル開度センサ6においてキックダウン操作に割り当てられたアクセル開度を計測したか否かを判定する(S12)。シフト制御部は、アクセル開度センサにおいて計測したアクセル開度がキックダウン操作に割り当てられたアクセル開度を計測していないと判定した場合には(S12のNO)、先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの駆動力と、走行抵抗とを比較する(S13)。シフト制御部17は、現走行区間Aの駆動力が走行抵抗以上である場合(S13のYES)、現走行区間Aの残り区間の距離と所定距離とを比較する(S14)。所定距離は、車両Vの加速度が低下していることに運転者が違和感を覚えない程度の距離である。シフト制御部17は、現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上である場合には(S14のNO)、ステップS21の処理に移る。
【0056】
シフト制御部17は、現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上である場合には、車両Vにおいて設定された上限速度に車両Vの速度が達しているか否かを判定する(S21)。シフト制御部17は、車両Vの速度が上限速度に達していない場合には(S21のNO)、車両Vがオート走行モードであるか否かを判定する(S22)。シフト制御部17は、車両Vがオート走行モードである場合には(S22のYES)、アクセル開度センサ6が計測したアクセル開度が加速判定閾値以上であるか否かを判定する(S23)。
【0057】
シフト制御部17は、アクセル開度が加速判定閾値未満である場合には(S23のNO)、先走行区間Bが傾斜判定閾値を超える勾配を有する下り勾配であるか否かを判定する(S24)。傾斜判定閾値は、エンジンブレーキをかける必要のある傾斜を検出するための閾値である。シフト制御部17は、先走行区間Bが傾斜判定閾値を超える勾配を有する下り勾配でないと判定した場合には(S24のNO)、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップし(S25)、処理を終了する。
【0058】
シフト制御部17は、
図7のステップS11の判定において先ギヤ段が現在のギヤ段と同じ又は低いギヤ段である場合には(S11のNO)、処理を終了する。シフト制御部17は、ステップS12の判定においてアクセル開度センサ6が計測したアクセル開度がキックダウン操作に割り当てられたアクセル開度であると判定した場合には(S12のYES)、現在のギヤ段からシフトダウンし(S15)、処理を終了する。シフト制御部17は、ステップS13の判定において先ギヤ段における現走行区間Aの駆動力が走行抵抗よりも小さい場合には(S13のNO)、先ギヤ段にシフトアップせず処理を終了する。シフト制御部17は、ステップS14の判定において現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離未満である場合には(S14のYES)、ステップS24の処理に移る。
【0059】
シフト制御部17は、ステップS21の判定において車両Vの速度が上限速度に達している場合には(S21のYES)、ステップS24の処理に移る。シフト制御部17は、ステップS22の判定において車両Vが操作走行モードである場合には(S22のNO)、先ギヤ段にシフトアップせず、処理を終了する。シフト制御部17は、ステップS23の判定においてアクセル開度センサ6が計測したアクセル開度が加速判定閾値以上である場合には(S23のYES)、先ギヤ段にシフトアップをせずに処理を終了する。
【0060】
ステップS24の判定において先走行区間Bが傾斜判定閾値を超える勾配を有する下り勾配であると判定した場合には(S24のYES)、より強いエンジンブレーキをかける必要があるため、先ギヤ段に比べて低い現在のギヤ段を維持することが望ましい。そこで、シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップをせずに処理を終了する。
【0061】
本実施の形態によれば、シフト制御部17は、先ギヤ段における車両Vの現在の速度の最大駆動力から現走行区間Aにおける車両Vの走行抵抗を差し引いた現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であっても、先ギヤ段における車両Vの現在の速度の駆動力から先走行区間Bにおける車両Vの走行抵抗を差し引いた先走行区間Bの余裕駆動力が所定値D2以上であり、且つ先走行区間では走行抵抗が減少する場合、先ギヤ段にシフトアップする。このため、シフト制御部17は、先ギヤ段にシフトアップするタイミングを早めることにより、エンジン1をより早く高負荷低回転の状態にすることができる。このため、車両Vの燃料消費を低減させることができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、シフト制御部17は、先ギヤ段における車両Vの現在の速度の駆動力が現走行区間Aにおける車両Vの走行抵抗以上である場合に、先ギヤ段にシフトアップする。このため、シフト制御部17は、先ギヤ段へのシフトアップに起因して現走行区間において車両Vが失速することを抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、シフト制御部17は、操作走行モードにおいて先ギヤ段における現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であり、且つ現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上であれば、先ギヤ段へのシフトアップを延期する。このため、操作走行モードにおいて車両Vの余裕駆動力が低下した状態が所定距離以上継続することにより運転者が違和感を覚えることを抑制することができる。一方、オート走行モードでは、加速する必要がない。このため、シフト制御部17は、余裕駆動力を確保する必要がなくなり、より高いギヤ段を選択することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、シフト制御部17は、車両Vの速度が車両Vに設定された上限速度である場合には、先ギヤ段における現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であり、且つ現走行区間Aの残り区間の距離が所定距離以上であっても、先ギヤ段へのシフトアップを延期しない。車両Vに設定された上限速度において速度制限装置が稼働している場合には、加速することができない状態であるため、余裕駆動力を確保する必要がない。このため、シフト制御部17は、高いギヤ段を選択することが可能となる。したがって、シフト制御部17は、車両Vの燃料消費を低減させることができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、シフト制御部17は、オート走行モードにおいて車両Vのアクセル開度センサ6が計測したアクセル開度が加速判定閾値以上である場合には、先ギヤ段にシフトアップしない。アクセル開度センサ6が計測したアクセル開度が加速判定閾値以上である場合には、運転者は、燃料消費を低減させることよりも加速度を得ることを優先している可能性が高い。このため、シフト制御部17は、現ギヤ段を維持することにより、シフトアップに起因する加速度の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、本実施の形態ではシフト制御部17が、(1)先走行区間Bの走行抵抗が現走行区間Aの走行抵抗より小さく、(2)先ギヤ段にシフトアップしたときの現走行区間Aの余裕駆動力が所定値D1未満であり、且つ(3)先ギヤ段にシフトアップしたときの先走行区間Bの余裕駆動力が所定値D2以上である場合に、(4)車両Vがオート走行モード又は車両Vの速度が車両Vに設定された上限値であることを条件として、先ギヤ段での走行時に現走行区間における余裕駆動力が0に近くなることを許容し、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップする場合の例について説明した。
【0067】
しかしながら、本発明は、車両Vがオート走行モード又は車両Vの速度が車両Vに設定された上限値であることを条件とする例に限定されない。例えば、シフト制御部17は、上述の(1)〜(3)の場合に、速度センサ5が計測した車両Vの速度の変動幅が定常走行判定閾値よりも小さい定常状態であることを条件として、現走行区間Aにおいて先ギヤ段にシフトアップする構成であってもよい。
【0068】
また、現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力が車両Vの現走行区間Aの走行抵抗より所定値D1以上大きくなるようにギヤ段を選択し、先ギヤ段選択部16は、車両Vの駆動力が車両Vの先走行区間Bの走行抵抗より所定値D2以上大きくなるようにギヤ段を選択する。本実施の形態では、所定値D2が所定値D1よりも小さいか、または所定値D2が0である場合の例について説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、所定値D1と、所定値D2とが同一の値であってもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、現ギヤ段選択部13が、車両Vの駆動力と車両Vの加速度との関係から現走行区間Aの走行抵抗を求め、この走行抵抗及び車両Vの速度に基づいて走行抵抗を求める場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、現ギヤ段選択部13は、道路勾配取得部14が記憶部11から読み出した道路勾配を用いて走行抵抗を求めてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、選択するギヤ段によらずに所定値D1及びD2が一定である場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ギヤ段ごとに異なる所定値を用いてもよく、より高いギヤ段を選択する場合に所定値をより大きくする構成であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、現ギヤ段選択部13及び先ギヤ段選択部16が、
図4の走行性能線図を利用してそれぞれ現ギヤ段及び先ギヤ段を選択する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、現ギヤ段選択部13及び先ギヤ段選択部16が、等馬力線図を利用してそれぞれ現ギヤ段及び先ギヤ段を選択する構成であってもよい。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。