(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クッションパネルの一部または全部は、前記幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
一対の前記サイドフレームの一部または全部は、前記幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0021】
[乗物用シート1]
図1は、乗物用シート1の概略構成を示す側面図である。乗物用シート1は、たとえば自動車の後部側座席として構成される。乗物用シート1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、これらシートバック2とシートクッション3とをそれぞれ車両のフロアに対して支持するベース4と、を有している。
【0022】
シートバック2の左右両サイドの下端部は、それぞれ、不図示のリクライナーを介してベース4の左右両サイドの後端部に連結されている。シートバック2の背凭れ角度は、通常時は固定された状態に保持される。ベース4の外側部に設けられた不図示のチップアップレバーが操作されることにより、シートバック2の背凭れ角度の固定状態が解かれる。シートバック2は、付勢によって前傾姿勢となる位置にまで前倒しされて保持される。
【0023】
シートクッション3の内部には、幅方向(乗物用シート1の左右方向)に対して平行な方向に自身の軸方向を向けるヒンジ軸5が設けられている。シートクッション3の左右両サイドの後部はそれぞれ、ヒンジ軸5を介してベース4の左右両サイドの後部に回転可能に連結されている。シートクッション3は、ベース4に対して不図示のチップアップ機構を介して連結されている。シートクッション3は、通常時はベース4(クッションゴム4A)上に倒伏した着座使用位置の状態に固定されて、着座者をその上側に座らせることのできる状態として保持される。
【0024】
シートクッション3は、不図示のチップアップレバーが操作されることによりベース4に対する着座使用位置での固定状態が解かれる。シートクッション3は、付勢によって、ヒンジ軸5を中心に所定の跳上位置へと後側に跳ね上げられて保持される。この跳ね上げによって、シートクッション3と、前傾位置へと前倒しされたシートバック2とが、シート前後方向において相互に重ねられた状態へと切り換えられる。
【0025】
シートバック2の前倒し動作と、シートクッション3が後側へと跳ね上げられるチップアップ動作とが、同時に行なわれることにより、これらが互いにシート前後方向においてコンパクトに折り畳まれた状態へと切り換えられる。ベース4と車両のフロアとの間には不図示のスライドレールが設けられている。チップアップ動作後に、乗物用シート1の全体をこのスライドレールによって前側へとスライドさせることにより、乗物用シート1が設置されていたスペースは、後側に広く空けた状態へと切り換えられる。
【0026】
以上のように動作するシートクッション3の内部には、シートクッション3の骨格部材として、一対のサイドフレーム(サイドフレーム10L,10R)と、クッションパネル(クッションパネル40)とが設けられている。詳細は後述するが、サイドフレーム10L,10Rの各々は、前側フレーム部20および後側フレーム部30(
図3〜
図6等参照)を備えている。クッションパネル40は、前側パネル部50および後側パネル部60(
図3〜
図6等参照)を備えている。以下、これらの構成について説明する。
【0027】
図2は、サイドフレーム10Lおよびクッションパネル40を示す側面図である。
図3は、サイドフレーム10L,10Rおよびクッションパネル40を示す平面図である。
図4は、サイドフレーム10L,10Rおよびクッションパネル40を左斜め上前方から見た際に視認されるこれらの外観態様を示す斜視図である。
図5は、サイドフレーム10L,10Rおよびクッションパネル40を左斜め上後方から見た際に視認されるこれらの外観態様を示す斜視図である。
図6は、サイドフレーム10L,10Rおよびクッションパネル40を左斜め下前方から見た際に視認されるこれらの外観態様を示す斜視図である。
【0028】
図2〜
図6を参照して、乗物用シート1(
図1)は、幅方向(乗物用シート1の左右方向)において相互に離間して配置された一対のサイドフレーム10L,10R(
図3)と、一対のサイドフレーム10L,10Rの間に配置されるクッションパネル40と、クッションパネル40を一対のサイドフレーム10L,10Rに固定するための挿入部材としてのビス70LA,70LB,70LC,70RA,70RB,70RC(
図3)とを有している。図示上の便宜のため、ビス70LA,70LB,70LC,70RA,70RB,70RC(
図7参照)については、
図4〜
図6および後述する
図13等には図示していない。
【0029】
[サイドフレーム10L,10R]
サイドフレーム10L,10Rの各々は、前側フレーム部20および後側フレーム部30を備える。サイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と、サイドフレーム10Rに備えられる前側フレーム部20とは、互いに同一の構成を備えている。サイドフレーム10Lに備えられる後側フレーム部30と、サイドフレーム10Rに備えられる後側フレーム部30とは、互いに同一の構成を備えている。
図7は、サイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と、クッションパネル40に備えられる前側パネル部50との分離状態を示す斜視図である。
【0030】
[前側フレーム部20]
図2および
図7を主として参照して、前側フレーム部20は、前端部21、上側平板部22、下側平板部23A,23B、垂下部24A、接続部24B、弾性変形部25、凹所形成部26,27、後上側嵌合部28、および、後下側嵌合部29を有している。これらはいずれも、乗物用シート1(
図1)の幅方向(
図7に示す矢印AR方向)に延びるように形成されている。前側フレーム部20は、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで作製される。
【0031】
前端部21は、半円弧状に湾曲する湾曲板の形状を備える。上側平板部22は、前端部21の上側部分に連続し、前端部21の上側部分から後上側嵌合部28の位置に向かって平板状に延在している。下側平板部23Aは前端部21の下側部分に連続している。下側平板部23Aは、下側平板部23Aと上側平板部22との間の高さ方向における間隔が、前側から後側に向かうにつれて徐々に広がるように延在している。下側平板部23Bは、下側平板部23Aの後端に連続し、下側平板部23Aの後端から後下側嵌合部29の位置に向かって平板状に延在している。
【0032】
垂下部24Aは、上側平板部22のうち、前端部21と後上側嵌合部28との間に位置する部分から、下側平板部23Aの側に向かって垂れ下がるように設けられている。垂下部24Aは、当該部分から下側平板部23Aに到達しない長さで平板状に延在しており、下側平板部23Aに対して概ね直交する方向に延在している。
【0033】
接続部24Bは、平板状の形状を備え、下側平板部23Aと下側平板部23Bとの間に位置する部分と、上側平板部22のうちの後上側嵌合部28に近接する部分とを接続している。前端部21、上側平板部22、接続部24B、および下側平板部23Aは、全体として連続した閉環状(枠状)の形状を呈している。
図8は、サイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と、クッションパネル40に備えられる前側パネル部50との組立状態を示す側面図である。
【0034】
(弾性変形部25)
図7および
図8に示すように、弾性変形部25は、垂下部24Aの下端に設けられている。弾性変形部25も、幅方向(矢印AR方向)に延びるように形成されている。弾性変形部25は、垂下部24Aに対して前側に位置する外周面(外周面の先端25F)と、垂下部24Aに対して後側に位置する外周面(外周面の後端25B)と、垂下部24Aの側とは反対側(下側平板部23Aの側)に位置する内周面25Sとを備えている。
【0035】
内周面25Sは、略C字状の断面形状を備えており、下側平板部23Aの側に向かって開口している(
図7)。内周面25Sの前側には、前側に向かって延在する第1片部25FTが設けられている。第1片部25FTのうちの前側への延在方向における端面は、先端25Fを構成している。先端25Fは、弾性変形部25の外周面のうちの一部である。内周面25Sの後側には、後側に向かって延在する第2片部25BTが設けられている。第2片部25BTのうちの後側への延在方向における端面は、後端25Bを構成している。後端25Bは、弾性変形部25の外周面のうちの一部である。
【0036】
(凹所形成部26,27)
凹所形成部26は、下側平板部23Aから上側平板部22の側に向かって立ち上がりつつ、前側に向かって半円弧を描くように延びる湾曲板の形状を備えている。凹所形成部26も、幅方向(矢印AR方向)に延びるように形成されている。凹所形成部26は、内表面26Sを備えており、内表面26S上には、前側に向かって突出する凸部26Uが形成されている。
【0037】
凹所形成部27は、幅方向(矢印AR方向)に延びる湾曲部27A,27Bを備えている。湾曲部27A,27Bは、相互に対向し、接続部24Bから前側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。凹所形成部27は、内表面27AS,27BSを備えており、内表面27AS,27BSの間には、前側に向かって突出する凸部27Uが形成されている。
【0038】
(後上側嵌合部28および後下側嵌合部29)
図9は、サイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と後側フレーム部30との分離状態を示す斜視図である。
図10は、サイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と後側フレーム部30との組立状態を示す側面図である。
図9および
図10に示すように、後上側嵌合部28は、上側平板部22(前側フレーム部20)の後側の部分に形成されており、後下側嵌合部29は、下側平板部23B(前側フレーム部20)の後側の部分に形成されている。
【0039】
後上側嵌合部28は、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、上方から下方に向かって延びる凸形状を備えている。後上側嵌合部28には、上述の着座使用位置の状態において、前斜め下方向に向かって延びる後上側傾斜面28Tが形成されている。後上側傾斜面28Tは、後上側嵌合部28の表面のうちの前側を向いている部分により構成されている。
【0040】
後下側嵌合部29は、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、下方から上方に向かって延びる凸形状を備えている。後下側嵌合部29には、上述の着座使用位置の状態において、後斜め上方向に向かって延びる後下側傾斜面29Tが形成されている。後下側傾斜面29Tは、後下側嵌合部29の表面のうちの前側を向いている部分により構成されている。
【0041】
[後側フレーム部30]
図11は、サイドフレーム10Lに備えられる後側フレーム部30と、クッションパネル40に備えられる後側パネル部60との分離状態を示す斜視図である。
図12は、サイドフレーム10Lに備えられる後側フレーム部30と、クッションパネル40に備えられる後側パネル部60との組立状態を示す側面図である。
【0042】
図2,
図11,
図12を主として参照して、後側フレーム部30は、後端部31、上側平板部32、下側平板部33、嵌合部33B,33C,33D,33E、柱部34A,34B,34C,34D,34E、支持リブ35、前端嵌合部36、後端嵌合部37、前上側嵌合部38、および前下側嵌合部39を有している。これらはいずれも、乗物用シート1(
図1)の幅方向(
図11に示す矢印AR方向)に延びるように形成されている。
【0043】
後側フレーム部30も、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで作製される。後端部31、上側平板部32、前上側嵌合部38、支持リブ35、前下側嵌合部39、前端嵌合部36、下側平板部33および後端嵌合部37は、全体として連続した閉環状(枠状)の形状を呈している。
【0044】
(嵌合部33B,33C,33D,33E、前端嵌合部36および後端嵌合部37)
後端部31は、半円弧状に湾曲する湾曲板の形状を備える。上側平板部32は、後端部31の上側部分に連続し、後端部31の上側部分から前上側嵌合部38の位置に向かって延在している。後端部31の下側部分の前側に、後端嵌合部37が設けられている。後端嵌合部37と前端嵌合部36との間に、下側平板部33が設けられている。下側平板部33の下面に、嵌合部33B,33C,33D,33Eが垂れ下がるように設けられている。前端嵌合部36の前側に、前下側嵌合部39が設けられている。
【0045】
柱部34Aは、平板状の形状を備え、上側平板部32と前下側嵌合部39とを接続するように設けられている。柱部34Aは、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、前下側嵌合部39から後斜め上方向に向かって延びている。柱部34B,34C,34D,34Eは、平板状の形状を備え、上側平板部32と下側平板部33とを接続するように互いに略平行に設けられている。柱部34B,34C,34D,34Eは、下側平板部33に対して概ね直交する方向に延在している。柱部34B,34C,34D,34Eは、上述の着座使用位置の状態において、下側平板部33から鉛直上方に向かって延びている。
【0046】
嵌合部33B,33C,33D,33Eは、前端嵌合部36と後端嵌合部37との間に設けられている。嵌合部33B,33C,33D,33Eは、それぞれ、下側平板部33に対して柱部34B,34C,34D,34Eの概ね反対側に位置している。上述の着座使用位置の状態において、前端嵌合部36および嵌合部33C,33Eは、後側に向かって開口する内周面を備えており、嵌合部33B,33Dおよび後端嵌合部37は、前側に向かって開口する内周面を備えている。
【0047】
(前上側嵌合部38および前下側嵌合部39)
図9および
図10に示すように、前上側嵌合部38は、上側平板部32(後側フレーム部30)の前側に形成されており、前下側嵌合部39は、前端嵌合部36(後側フレーム部30)の前側に形成されている。前側フレーム部20および後側フレーム部30は、後上側嵌合部28と前上側嵌合部38とが幅方向において相互に摺接しながら嵌合するとともに、後下側嵌合部29と前下側嵌合部39とが幅方向において相互に摺接しながら嵌合することで、互いに一体化されてサイドフレーム10Lを構成する。サイドフレーム10R(
図3〜
図6等参照)についても同様である。
【0048】
前上側嵌合部38は、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、上方に向かって開口する凹形状を備えている。前上側嵌合部38には、上述の着座使用位置の状態において、後斜め上方向に向かって延びる前上側傾斜面38Tが形成されている。前上側傾斜面38Tは、前上側嵌合部38の表面のうちの後側を向いている部分により構成されている。
【0049】
前下側嵌合部39は、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、下方に向かって開口する凹形状を備えている。前下側嵌合部39には、上述の着座使用位置の状態において、前斜め下方向に向かって延びる前下側傾斜面39Tが形成されている。前下側傾斜面39Tは、前下側嵌合部39の表面のうちの後側を向いている部分により構成されている。
【0050】
後上側嵌合部28と前上側嵌合部38とが相互に嵌合している状態では、後上側傾斜面28Tと前上側傾斜面38Tとが相互に係止している(両要素が相互に密着することで一体化されて挙動を共にする関係を構成している)。同様に、後下側嵌合部29と前下側嵌合部39とが相互に嵌合している状態では、後下側傾斜面29Tと前下側傾斜面39Tとが相互に係止している。
【0051】
(支持リブ35)
後側フレーム部30のうち、前上側嵌合部38と前下側嵌合部39との間の位置に、これらを接続する支持リブ35が設けられている。支持リブ35は、平板状の形状を備え、柱部34B,34C,34D,34E(
図2)と略平行に設けられている。支持リブ35は、下側平板部33に対して概ね直交する方向と同じ方向に沿って延在している。支持リブ35は、上述の着座使用位置の状態において、鉛直方向に対して概ね平行な方向に沿って延びている。
【0052】
[クッションパネル40]
図1〜
図6に示すように、クッションパネル40は、互いに別部材として構成される前側パネル部50および後側パネル部60を備える。クッションパネル40がサイドフレーム10L,10Rに固定された状態では、前側パネル部50および後側パネル部60は前後方向において相互に離間している。
【0053】
[前側パネル部50]
図2および
図7を主として参照して、クッションパネル40に備えられる前側パネル部50は、前端部51、上面部52、下面部53、柱部54A,54B、凹所形成部55、および弾性変形部56,57を有している。これらはいずれも、乗物用シート1(
図1)の幅方向(
図7に示す矢印AR方向)に延びるように形成されている。前側パネル部50は、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで作製される。
【0054】
前端部51は、半円弧状に湾曲する湾曲板の形状を備え、前端部51の幅方向における端寄りの部分は、前端部21の内側に配置される。上面部52は、前端部51の上側部分に連続し、前端部51の上側部分から弾性変形部57の位置に向かって平板状に延在している。下面部53は、前端部51の下側部分に連続しており、前端部51の下側部分から弾性変形部56の位置に向かって平板状に延在している。上面部52および下面部53は、互いに略平行である。
【0055】
柱部54Aは、下面部53のうち、前端部51と弾性変形部56との間に位置する部分から、上面部52のうち、前端部51と弾性変形部57との間に位置する部分(凹所形成部55)に向かって立ち上がるように設けられている。柱部54Aは、平板状に延在しており、下面部53に対して概ね直交している。柱部54Aの延在方向における先端(上端)に、後述する凹所形成部55が形成されている。
【0056】
柱部54Bは、下面部53のうち、柱部54Aと弾性変形部56との間に位置する部分と、上面部52のうち、凹所形成部55と弾性変形部57との間に位置する部分とを接続している。柱部54Bも、平板状に延在しており、下面部53に対して概ね直交している。
【0057】
(凹所形成部55)
図7および
図8を参照して、本実施の形態の前側パネル部50は、複数の凹所形成部55を備えている。具体的には、上面部52に、第1の凹所形成部55Fと第2の凹所形成部55Bとが形成されている。第1の凹所形成部55Fおよび第2の凹所形成部55Bも、幅方向(
図7に示す矢印AR方向)に延びるように形成されている。
【0058】
第1の凹所形成部55Fは、後側に向かって開口する内表面55FTを備えており、第2の凹所形成部55Bは、前側に向かって開口する内表面55BTを備えている。第1の凹所形成部55Fおよび第2の凹所形成部55Bは、上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、内表面55FT,55BTが前後方向において相互に対向するように形成されている。内表面55FT,55BTの間には、上側に向かって突出する凸部55Uが形成されている。
【0059】
(ビス70LA)
図3,
図7,
図8に示すように、挿入部材としてのビス70LAを用いて、クッションパネル40(前側パネル部50)がサイドフレーム10L(前側フレーム部20)に固定される。ビス70LAは、軸部71および頭部72を備える。
【0060】
具体的には、弾性変形部25の第1片部25FTが第1の凹所形成部55Fの内側に位置し、弾性変形部25の第2片部25BTが第2の凹所形成部55Bの内側に位置するように、前側フレーム部20および前側パネル部50が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。組み付け後の状態において、第1の凹所形成部55Fの内表面55FTは第1片部25FT(先端25F)の外周面に対向し、第2の凹所形成部55Bの内表面55BTは第2片部25BT(後端25B)の外周面に対向する。凸部55Uの表面と弾性変形部25の内周面25Sとの間には、略円柱状の空間が形成される。軸部71は、当該空間よりも大きな直径を有しており、幅方向における外側から当該空間の中に向かって圧入される。
【0061】
内周面25Sの内側に軸部71が挿入されることで、第1片部25FT(先端25F)と第2片部25BT(後端25B)との相互間の距離が大きくなる。第1片部25FTの外周面は外側(前側)に向かって押し広げられ(矢印DR5F)、軸部71の挿入によって押し広げられた第1片部25FTの外周面は、第1の凹所形成部55Fの内表面55FTに圧接する。同様に、第2片部25BTの外周面は外側(後側)に向かって押し広げられ(矢印DR5B)、軸部71の挿入によって押し広げられた第2片部25BTの外周面は、第2の凹所形成部55Bの内表面55BTに圧接する。
【0062】
凸部55Uも、内周面25Sの内側に軸部71が挿入されることで、垂下部24Aから遠ざかる方向に付勢される。当該付勢によって、第1の凹所形成部55Fの内表面55FTおよび第2の凹所形成部55Bの内表面55BTも間接的に同方向に付勢され、これにより、内表面55FTは第1片部25FTに、内表面55BTは第2片部25BTに、より強く圧接することが可能となる。
【0063】
この状態で、ビス70LAの頭部72は、軸部71の幅方向における外側に設けられており、弾性変形部25および凹所形成部55(第1の凹所形成部55Fおよび第2の凹所形成部55B)の双方に幅方向における外側から接触することで(
図3)、弾性変形部25と凹所形成部55との幅方向における相対位置を規定できる。すなわち、頭部72のうちの軸部71側の端面を弾性変形部25の外側端面と凹所形成部55の外側端面との双方に押し当てることで、これらの外側端面同士を面一に揃えることが可能となる。
【0064】
(弾性変形部56)
図7および
図8を参照して、弾性変形部56は、前側パネル部50の下面部53の後端に設けられている。弾性変形部56は、幅方向(矢印AR方向)に延びる湾曲部56A,56Bを備えている。湾曲部56A,56Bは、相互に対向し、下面部53の後端から後側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。弾性変形部56の内周面56Sは、略C字状の表面形状を備えている。
【0065】
(ビス70LB)
図3,
図7,
図8に示すように、挿入部材としてのビス70LBも、軸部71および頭部72を備える。弾性変形部56が凹所形成部26の内側に位置するように、前側フレーム部20および前側パネル部50が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。組み付け後の状態において、凹所形成部26の内表面26Sは弾性変形部56の外周面に対向する。凸部26Uの表面と弾性変形部56の内周面56Sとの間には、略円柱状の空間が形成される。軸部71は、当該空間よりも大きな直径を有しており、幅方向における外側から当該空間の中に向かって圧入される。
【0066】
内周面56Sの内側に軸部71が挿入されることで、弾性変形部56(湾曲部56A,56B)の外周面は外側に向かって押し広げられ(矢印DR6U,DR6D)、軸部71の挿入によって押し広げられた弾性変形部56の外周面は、凹所形成部26の内表面26Sに圧接する。
【0067】
凸部26Uも、内周面56Sの内側に軸部71が挿入されることで、後側に向かって変位するように付勢される。当該付勢によって、凹所形成部26の内表面26Sも間接的に同方向に付勢され、これにより、内表面26Sは弾性変形部56の外周面により強く圧接することが可能となる。
【0068】
この状態で、ビス70LBの頭部72は、軸部71の幅方向における外側に設けられており、弾性変形部56および凹所形成部26の双方に幅方向における外側から接触することで(
図3)、弾性変形部56と凹所形成部26との幅方向における相対位置を規定できる。すなわち、頭部72のうちの軸部71側の端面を弾性変形部56の外側端面と凹所形成部26の外側端面との双方に押し当てることで、これらの外側端面同士を面一に揃えることが可能となる。
【0069】
(弾性変形部57)
図7および
図8を参照して、弾性変形部57は、前側パネル部50の上面部52の後端に設けられている。弾性変形部57は、幅方向(矢印AR方向)に延びる湾曲部57A,57Bを備えている。湾曲部57A,57Bは、相互に対向し、上面部52の後端から後側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。弾性変形部57の内周面57Sは、略C字状の表面形状を備えている。
【0070】
(ビス70LC)
図3,
図7,
図8に示すように、挿入部材としてのビス70LCも、軸部71および頭部72を備える。弾性変形部57が凹所形成部27の内側に位置するように、前側フレーム部20および前側パネル部50が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。組み付け後の状態において、凹所形成部27の内表面27AS,27BSは弾性変形部57の外周面に対向する。凸部27Uの表面と弾性変形部57の内周面57Sとの間には、略円柱状の空間が形成される。軸部71は、当該空間よりも大きな直径を有しており、幅方向における外側から当該空間の中に向かって圧入される。
【0071】
内周面57Sの内側に軸部71が挿入されることで、弾性変形部57(湾曲部57A,57B)の外周面は外側に向かって押し広げられ(矢印DR7U,DR7D)、軸部71の挿入によって押し広げられた弾性変形部57の外周面は、凹所形成部27の内表面27AS,27BSに圧接する。
【0072】
凸部27Uも、内周面57Sの内側に軸部71が挿入されることで、後側に向かって変位するように付勢される。当該付勢によって、凹所形成部27の内表面27AS,27BSも間接的に同方向に付勢され、これにより、内表面27AS,27BSは弾性変形部57の外周面により強く圧接することが可能となる。
【0073】
この状態で、ビス70LCの頭部72は、軸部71の幅方向における外側に設けられており、弾性変形部57および凹所形成部27の双方に幅方向における外側から接触することで(
図3)、弾性変形部57と凹所形成部27との幅方向における相対位置を規定できる。すなわち、頭部72のうちの軸部71側の端面を弾性変形部57の外側端面と凹所形成部27の外側端面との双方に押し当てることで、これらの外側端面同士を面一に揃えることが可能となる。
【0074】
図3に示すように、以上のようなビス70LA,70LB,70LCを用いた組み付け構成は、サイドフレーム10Lの前側フレーム部20と前側パネル部50との間に適用される。ビス70RA,70RB,70RCを用いることで、上記と同様な組み付け構成がサイドフレーム10Rの前側フレーム部20と前側パネル部50との間にも適用される。各ビスの頭部72を利用することで、サイドフレーム10Lの前側フレーム部20と前側パネル部50との幅方向における外側端面同士を容易に面一に揃えることができるとともに、サイドフレーム10Rの前側フレーム部20と前側パネル部50との幅方向における外側端面同士を容易に面一に揃えることも可能となる。
【0075】
[後側パネル部60]
図11および
図12を主として参照して、クッションパネル40に備えられる後側パネル部60は、基台部63、補強用リブ63B,63C,63D,63E、波形状部64、前端リブ66、および、後端リブ67を有している。これらはいずれも、乗物用シート1(
図1)の幅方向(
図11に示す矢印AR方向)に延びるように形成されている。後側パネル部60も、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで作製される。
【0076】
(基台部63、前端リブ66および後端リブ67)
基台部63は、板状に形成され、平面視で略矩形状の外形形状を備えている(
図3)。上述の着座使用位置の状態(
図1に示す状態)において、前端リブ66は基台部63の前端に設けられており、後端リブ67は基台部63の後端(前端リブ66よりも後側)に設けられている。前端リブ66および後端リブ67は、いずれも幅方向に延びている。
【0077】
図12に示すように、前端リブ66は、基台部63の前端に設けられた立ち上がり部66Aと、立ち上がり部66Aの上端に設けられ前側を向くように形成された爪部66Bとを備えている。後端リブ67は、基台部63の後端に設けられた立ち上がり部67Aと、立ち上がり部67Aの上端に設けられ後側を向くように形成された延びる爪部67Bとを備えている。
【0078】
(補強用リブ63B,63C,63D,63E)
補強用リブ63B,63C,63D,63Eは、基台部63における前端リブ66と後端リブ67との間に設けられており、前後方向において間隔を空けて並んで形成されている。補強用リブ63B,63Dの各々は、立ち上がり部61と、立ち上がり部61の上端に設けられ後側を向くように形成された爪部62とを備えている。補強用リブ63C,63Eの各々は、立ち上がり部61と、立ち上がり部61の上端に設けられ前側を向くように形成された爪部62とを備えている。補強用リブ63B,63C,63D,63Eは、爪部62が前側を向くように形成された補強用リブ(補強用リブ63C,63E)と、爪部62が後側を向くように形成された補強用リブ(補強用リブ63B,63D)とが、交互に並ぶように設けられている。
【0079】
(波形状部64)
基台部63のうち、隣り合う補強用リブ63B,63Cの間の部分には、幅方向に対して直交する方向の断面形状が湾曲するように形成された波形状部64が設けられている。基台部63のうち、隣り合う補強用リブ63C,63Dの間の部分と、隣り合う補強用リブ63D,63Eの間の部分とについても同様である。基台部63のうち、前端リブ66と補強用リブ63Bとの間の部分についても同様であり、後端リブ67と補強用リブ63Eとの間の部分についても同様である。本実施の形態においては、後側パネル部60が後側フレーム部30に組み付けられた状態において、複数の波形状部64の各々は、下側平板部33に接近する方向に凸状に湾曲する断面形状を備えている。湾曲の方向はこれとは反対向きであってもよいし、湾曲に限られず、波形状部64は屈曲した断面形状であってもよい。
【0080】
後側パネル部60の前端リブ66、補強用リブ63B,63C,63D,63Eおよび後端リブ67が、それぞれ、後側フレーム部30の前端嵌合部36、嵌合部33B,33C,33D,33Eおよび後端嵌合部37の内側に位置するように、後側パネル部60および後側フレーム部30が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。これらの各リブがこれらの各嵌合部に嵌合することによって、クッションパネル40(後側パネル部60)とサイドフレーム10L(後側フレーム部30)とが接続される。以上のような接続構成は、サイドフレーム10Rの後側フレーム部30と後側パネル部60との間の接続構成にも同様に適用される(
図3〜
図5参照)。
【0081】
[まとめ]
以上述べたとおり、サイドフレーム10L,10Rの各々の前側フレーム部20と、クッションパネル40に備えられる前側パネル部50とは、
図7,
図8に示すような態様にて相互に固定される。サイドフレーム10L,10Rの各々の前側フレーム部20と後側フレーム部30とは、
図9,
図10に示すような態様にて相互に固定される。サイドフレーム10L,10Rの各々の後側フレーム部30と、クッションパネル40に備えられる後側パネル部60とは、
図11,
図12に示すような態様にて相互に固定される。
図4〜
図6等に示される本実施の形態のサイドフレーム10L,10Rおよびクッションパネル40は、これらの固定構造を採用することで相互に一体化されている。
【0082】
本実施の形態においては、挿入部材としてのビス70LA,70LB,70LC,70RA,70RB,70RC(
図3)と、弾性変形部25,56,57と、凹所形成部55,26,27とによる締結構造を用いて、前側フレーム部20と前側パネル部50とが相互に固定される。乗物用シート1(
図1)の骨格をなすこれらの前側フレーム部20および前側パネル部50同士を、溶接工法を用いなくとも互いに接合することができ、溶接用の設備や溶接用の加工費の分、製造費用を安く抑えることが可能となる。リベットなどを用いてこれらを接合する場合に比べても、本実施の形態によれば同様の理由により製造費用を安く抑えることが可能となる。
【0083】
ビス70LA,70LB,70LC,70RA,70RB,70RCを用いた締結構造において(
図3参照)、各ビスの頭部72を利用することで、サイドフレーム10Lの前側フレーム部20と前側パネル部50との幅方向における外側端面同士を容易に面一に揃えることができるとともに、サイドフレーム10Rの前側フレーム部20と前側パネル部50との幅方向における外側端面同士を容易に面一に揃えることが可能となる。
【0084】
本実施の形態においては(
図7,
図8)、前側パネル部50の上面部52に、第1の凹所形成部55Fと第2の凹所形成部55Bとが設けられている。これらの凹所形成部は、必要に応じて、いずれか一方のみが上面部52に設けられていても構わない。第1の凹所形成部55Fの内表面55FTおよび第2の凹所形成部55Bの内表面55BTは、相互に逆向きに開口する(すなわち相互に対向する)ように形成されており、弾性変形部25の第1片部25FTおよび第2片部25BTは、それぞれこれらの間に入り込むように互いに逆向きに延びている。当該構成によって、前側パネル部50の前側フレーム部20に対する前側および後側の双方への移動を効果的に規制することができる。
【0085】
本実施の形態においては(
図7,
図8)、前側パネル部50の前端部51が前側フレーム部20の前端部21に接してその内側に配置されているだけでなく、前側パネル部50の後端に弾性変形部56,57が設けられ、それぞれ凹所形成部26,27に固定されている。仮に、前側パネル部50に後側から前側に向かう荷重が作用したとしても、その荷重は、前端部21,51が相互に接触している部分が受けるだけでなく、弾性変形部56と凹所形成部26とが相互に固定されている部分によっても受けることができ、さらには弾性変形部57と凹所形成部27とが相互に固定されている部分によっても受けることができる。このような荷重が作用したとしても、前側パネル部50が左右の前側フレーム部20から前方側に向かって分離してしまうことを十分に抑制することが可能となっている。
【0086】
本実施の形態においては、クッションパネル40の後側パネル部60に、幅方向に延びる補強用リブ63B,63C,63D,63Eが形成されており、サイドフレーム10L,10Rの各々の後側フレーム部30に、幅方向に延びる嵌合部33B,33C,33D,33Eが設けられている。これらの補強用リブがこれらの嵌合部にそれぞれ嵌合することで、後側パネル部60と左右の後側フレーム部30とが接続されている。補強用リブ63B,63C,63D,63Eは、後側パネル部60の強度を向上させるという機能を発揮するだけでなく、後側パネル部60と左右の後側フレーム部30とを接続するという機能を発揮することもできる。接続手段としても機能する補強用リブ63B,63C,63D,63Eの存在によれば、後側パネル部60を形成した後にプレス機などでビードを設けて後側パネル部の強度向上を図ることも特段不要となり、加工費の低減や、高い生産性を期待できる。
【0087】
本実施の形態においては、後側パネル部60に前端リブ66と後端リブ67とが形成されており、一対のサイドフレーム10L,10R(後側パネル部60)に、前端リブ66に嵌合する前端嵌合部36と、後端リブ67に嵌合する後端嵌合部37とが設けられている。後側パネル部60は、その前端および後端において、より高い保持力で安定した構造をもって後側フレーム部30に接続されることが可能となっている。前端リブ66と後端リブ67とは、後側パネル部60と左右の後側フレーム部30とを接続するという機能を発揮するだけでなく、サイドフレーム10Lの後側フレーム部30からサイドフレーム10Rの後側フレーム部30にまで到達するように幅方向に延びているため、後側パネル部60の強度を向上させるという機能をも発揮している。
【0088】
本実施の形態においては、前端リブ66、後端リブ67および補強用リブ63B,63C,63D,63Eのうちの隣り合う2つのリブの間の部分には、幅方向に対して直交する方向の断面形状が湾曲または屈曲するように形成された波形状部64が設けられている。波形状部64の場合には、波形状部64が設けられている箇所が平坦な(まっすぐな)板状に形成されている場合に比べて、前端リブ66および補強用リブ63C,63Eは後側に向けて傾倒しやすく、補強用リブ63B,63Dおよび後端リブ67は前側に向けて傾倒しやすい。したがって、後側パネル部60と後側フレーム部30とを相互に組み付ける際に、幅方向においてこれらを相互に容易に摺接させながら組み付けることが可能となっている。
【0089】
本実施の形態においては、補強用リブ63B,63C,63D,63Eは、爪部62が前側を向くように形成された補強用リブ(補強用リブ63C,63E)と、爪部62が後側を向くように形成された補強用リブ(補強用リブ63B,63D)とが、交互に並ぶように設けられている。後側パネル部60と後側フレーム部30とが相互に組み付けられた状態において、前後方向においてバランスのよい接続構造が実現できており、一部の接続箇所に応力が集中して作用するようなことも抑制することが可能となっている。
【0090】
本実施の形態においては、前側フレーム部20のうちの後側の部分に、幅方向に延びる後上側嵌合部28と後下側嵌合部29とが形成されており、後側フレーム部30のうちの前側の部分に、幅方向に延びる前上側嵌合部38と前下側嵌合部39とが形成されている。前側フレーム部20および後側フレーム部30が相互に摺接しながら嵌合することで(いわゆるスライド嵌合によって)これらが一体化されたサイドフレーム10Lを容易に構成することができ、他の前側フレーム部20および他の後側フレーム部30が相互に摺接しながら嵌合することでこれらが一体化されたサイドフレーム10Rも容易に構成することが可能となっている。
【0091】
図13は、実施の形態における乗物用シート1の作用および効果を説明するための側面図である。上述のとおり、シートクッション3(
図1)は、通常時はベース4(クッションゴム4A)上に倒伏した着座使用位置の状態に固定されて、着座者をその上側に座らせることのできる状態として保持される。この状態で、前側パネル部50の上面部52に、
図13中の矢印AR0に示すような荷重が作用したとする。この荷重は、前側パネル部50に連結された前側フレーム部20の前端部21寄りの部分にも、矢印AR1に示すように作用し、前側フレーム部20の後上側嵌合部28寄りの部分にも、矢印AR2に示すように作用する。上側平板部22の全体が、矢印AR0に示す方向と同方向(すなわち前斜め下向き)に変位するように付勢される。
【0092】
本実施の形態においては、後上側嵌合部28が、上方から下方に向かって延びる凸形状を備えており、前上側嵌合部38が、上方に向かって開口する凹形状を備えている。前上側嵌合部38が矢印AR2に示すような荷重を後上側嵌合部28から受けたとしても、前上側嵌合部38は上方に向かって開口する凹形状を備えていることにより、その荷重に対抗することができるため、後上側嵌合部28と前上側嵌合部38との相互の嵌合状態が解除されてしまうことを抑制できる。
【0093】
本実施の形態においてはさらに、後上側嵌合部28に、前斜め下方向に向かって延びる後上側傾斜面28Tが形成されており、前上側嵌合部38に、後斜め上方向に向かって延びる前上側傾斜面38Tが形成されており、後上側傾斜面28Tと前上側傾斜面38Tとが相互に係止している。この係止構造は、後上側嵌合部28が矢印AR2に示す方向(すなわち前斜め下向き)に変位することや、後上側嵌合部28が前側に向かって変位することに対して対抗することができるため、後上側嵌合部28と前上側嵌合部38との相互の嵌合状態が解除されてしまうことをより一層抑制することが可能となっている。
【0094】
前側フレーム部20は、クッションゴム4Aの側(後端側)が比較的に構造上の剛性が高いために固定端として機能し、前端部21の側が上記固定端に比べて構造上の剛性が低いために自由端として機能し、全体としての前側フレーム部20は概ね片持ち状に支持されていることとなっている。したがって、前側フレーム部20の前端部21寄りの部分に矢印AR1に示すような荷重が作用した場合には、その荷重は後下側嵌合部29の近傍の位置においては、矢印AR3に示すような上向きの荷重として作用することとなる。
【0095】
本実施の形態においては、後下側嵌合部29が、下方から上方に向かって延びる凸形状を備えており、前下側嵌合部39が、下方に向かって開口する凹形状を備えている。前下側嵌合部39が矢印AR3に示すような荷重を後下側嵌合部29から受けたとしても、前下側嵌合部39は下方に向かって開口する凹形状を備えていることにより、その荷重に対抗することができるため、後下側嵌合部29と前下側嵌合部39との相互の嵌合状態が解除されてしまうことを抑制できる。
【0096】
本実施の形態においてはさらに、後下側嵌合部29に、後斜め上方向に向かって延びる後下側傾斜面29Tが形成されており、前下側嵌合部39に、前斜め下方向に向かって延びる前下側傾斜面39Tが形成されており、後下側傾斜面29Tと前下側傾斜面39Tとが相互に係止している。この係止構造は、後下側嵌合部29が矢印AR3に示す方向(すなわち後斜め上向き)に変位することや、後下側嵌合部29が前側に向かって変位することに対して対抗することができるため、後下側嵌合部29と前下側嵌合部39との相互の嵌合状態が解除されてしまうことをより一層抑制することが可能となっている。
【0097】
本実施の形態においては、後側フレーム部30のうち、前上側嵌合部38と前下側嵌合部39との間の部分には、これらを接続する支持リブ35が設けられている。支持リブ35の存在によって、前上側嵌合部38と前下側嵌合部39とが相対的に移動することが規制される。支持リブ35は、後上側嵌合部28および前上側嵌合部38が矢印AR2に示す方向に(すなわち下側に向かって)変位するように付勢されることに対して対抗するとともに(矢印AR4)、後下側嵌合部29および前下側嵌合部39が矢印AR3に示す方向に(すなわち上側に向かって)変位するように付勢されることに対しても対抗する(矢印AR5)。したがって、後上側嵌合部28と前上側嵌合部38との相互の嵌合状態が解除されてしまうことを効果的に抑制できるとともに、後下側嵌合部29と前下側嵌合部39との相互の嵌合状態が解除されてしまうことをも効果的に抑制することが可能となっている。
【0098】
本実施の形態においては、クッションパネル40の一部を構成している前側パネル部50と、クッションパネル40の一部を構成している後側パネル部60とが、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されている。当該構成を備えた前側パネル部50および後側パネル部60は、容易に作製することができるだけでなく、上述した各構成の適用を容易に実現することも可能となっている。前側パネル部50と後側パネル部60とを一体的に構成して、クッションパネル40の全部が1つの部材として、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されていてもよい。
【0099】
本実施の形態においては、サイドフレーム10Lの一部を構成している前側フレーム部20と、サイドフレーム10Lの一部を構成している後側フレーム部30とが、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されている。サイドフレーム10Rについても同様であり、サイドフレーム10Lとサイドフレーム10Rとで同一の構成を備えた前側フレーム部20および後側フレーム部30を利用することができる。当該構成を備えた前側フレーム部20および後側フレーム部30は、容易に作製することができるだけでなく、上述した各構成の適用を容易に実現することも可能となっている。前側フレーム部20と後側フレーム部30とを一体的に構成して、サイドフレーム10Lの全部が1つの部材として、幅方向に対して直交する方向において一定の断面形状を有するアルミニウム合金製またはマグネシウム合金製の押し出し材から切り出されることで構成されていてもよい。サイドフレーム10Rについても同様である。
【0100】
[実施の形態の変形例]
図14は、実施の形態の変形例における乗物用シートに関する側面図であり、当該変形例におけるサイドフレーム10Lに備えられる前側フレーム部20と後側フレーム部30との組立状態を示している。実施の形態における乗物用シート1(
図1)と本変形例における乗物用シートとは、以下の点において相違している。
【0101】
本変形例における乗物用シートは、前側フレーム部20および後側フレーム部30を相互に固定するために、挿入部材としてビス78L,79Lを有している。挿入部材としてのビス78Lは、軸部71および頭部72を備えており、挿入部材としてのビス79Lも、軸部71および頭部72を備えている。
【0102】
(後上側嵌合部28J、前上側嵌合部38J、および、ビス78L)
前側フレーム部20の上側平板部22の後端に、後上側嵌合部28J(弾性変形部としても機能する)が設けられている。後上側嵌合部28Jは、幅方向に延びる湾曲部28A,28Bを備えている。湾曲部28A,28Bは、相互に対向し、上側平板部22の後端から後側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。後上側嵌合部28Jの内周面28Sは、略C字状の表面形状を備えている。
【0103】
後側フレーム部30の上側平板部32の前端に、前上側嵌合部38J(凹所形成部としても機能する)が設けられている。前上側嵌合部38Jは、幅方向に延びる湾曲部38A,38Bを備えている。湾曲部38A,38Bは、相互に対向し、上側平板部32の前端から前側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。前上側嵌合部38Jの湾曲部38A,38Bは、内表面38AS,38BSをそれぞれ備えている。
【0104】
後上側嵌合部28Jが前上側嵌合部38Jの内側に位置するように、前側フレーム部20および後側フレーム部30が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。組み付け後の状態において、前上側嵌合部38Jの内表面38AS,38BSは、後上側嵌合部28J(湾曲部28A,28B)の外周面に対向する。後上側嵌合部28Jの内周面28Sの内側には、略円柱状の空間が形成される。軸部71は、当該空間よりも大きな直径を有しており、幅方向における外側から当該空間の中に向かって圧入される。
【0105】
内周面28Sの内側に軸部71が挿入されることで、後上側嵌合部28J(湾曲部28A,28B)の外周面は外側に向かって押し広げられ、軸部71の挿入によって押し広げられた後上側嵌合部28Jの外周面は、前上側嵌合部38Jの内表面38AS,38BSに圧接する。この状態で、ビス78Lの頭部72は、軸部71の幅方向における外側に設けられており、後上側嵌合部28Jおよび前上側嵌合部38Jの双方に幅方向における外側から接触することで、後上側嵌合部28Jおよび前上側嵌合部38Jとの幅方向における相対位置を規定できる。すなわち、頭部72のうちの軸部71側の端面を後上側嵌合部28Jの外側端面と前上側嵌合部38Jの外側端面との双方に押し当てることで、これらの外側端面同士を面一に揃えることが可能となる。
【0106】
(後下側嵌合部29J、前下側嵌合部39J、および、ビス79L)
前側フレーム部20の下側平板部23Bの後端に、後下側嵌合部29J(弾性変形部としても機能する)が設けられている。後下側嵌合部29Jは、幅方向に延びる湾曲部29A,29Bを備えている。湾曲部29A,29Bは、相互に対向し、下側平板部23Bの後端から後斜め上側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。後下側嵌合部29Jの内周面29Sは、略C字状の表面形状を備えている。
【0107】
後側フレーム部30の前端嵌合部36の前側に、前下側嵌合部39J(凹所形成部としても機能する)が設けられている。前下側嵌合部39Jは、幅方向に延びる湾曲部39A,39Bを備えている。湾曲部39A,39Bは、相互に対向し、前端嵌合部36の前側から前斜め下側に向かって各々が半円弧を描くように延びている。前下側嵌合部39Jの湾曲部39A,39Bは、内表面39AS,39BSをそれぞれ備えている。
【0108】
後下側嵌合部29Jが前下側嵌合部39Jの内側に位置するように、前側フレーム部20および後側フレーム部30が幅方向において相互に摺接しながら組み付けられる。組み付け後の状態において、前下側嵌合部39Jの内表面39AS,39BSは、後下側嵌合部29J(湾曲部29A,29B)の外周面に対向する。後下側嵌合部29Jの内周面29Sの内側には、略円柱状の空間が形成される。軸部71は、当該空間よりも大きな直径を有しており、幅方向における外側から当該空間の中に向かって圧入される。
【0109】
内周面29Sの内側に軸部71が挿入されることで、後下側嵌合部29J(湾曲部29A,29B)の外周面は外側に向かって押し広げられ、軸部71の挿入によって押し広げられた後下側嵌合部29Jの外周面は、前下側嵌合部39Jの内表面39AS,39BSに圧接する。この状態で、ビス79Lの頭部72は、軸部71の幅方向における外側に設けられており、後下側嵌合部29Jおよび前下側嵌合部39Jの双方に幅方向における外側から接触することで、後下側嵌合部29Jおよび前下側嵌合部39Jとの幅方向における相対位置を規定できる。すなわち、頭部72のうちの軸部71側の端面を後下側嵌合部29Jの外側端面と前下側嵌合部39Jの外側端面との双方に押し当てることで、これらの外側端面同士を面一に揃えることが可能となる。
【0110】
本変形例においては、挿入部材としてのビス78L,79L(
図3)と、弾性変形部としての後上側嵌合部28Jおよび後下側嵌合部29Jと、凹所形成部としての前上側嵌合部38Jおよび前下側嵌合部39Jとによる締結構造を用いて、前側フレーム部20と後側フレーム部30とが相互に固定される。乗物用シートの骨格をなすこれらの前側フレーム部20および後側フレーム部30同士を、溶接工法を用いなくとも互いに接合することができ、溶接用の設備や溶接用の加工費の分、製造費用を安く抑えることが可能となる。リベットなどを用いてこれらを接合する場合に比べても、本変形例によれば同様の理由により製造費用を安く抑えることが可能となる。
【0111】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。