(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の異物検知部を前記車両に設置し、前記第1の異物検知部の前記異物検知範囲を前記コイル間距離に応じて変化させ、前記第2の異物検知部を前記給電装置に設置し、前記第2の異物検知部の異物検知範囲を変化させないことを特徴とする請求項1に記載の非接触給電システムによる異物検知方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[非接触給電システムの構成]
図1は、本実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム1は、地上に設置された給電装置100と、車両に搭載された受電装置200とを備えている。この非接触給電システム1は、給電スタンド等に配置された給電装置100から電気自動車やハイブリッド車等の車両10に搭載された受電装置200に非接触で電力を供給し、車載バッテリを充電するものである。
【0011】
給電装置100は、給電スタンド近傍の駐車スペースに配置された送電コイル12を備えている。一方、受電装置200は、車両10の底面に設置された受電コイル22を備えている。この受電コイル22は、車両10が駐車スペースの所定位置に停車したときに送電コイル12に対向するように配置されている。
【0012】
送電コイル12は、導電線からなる一次コイルによって構成され、電力を磁気に変換することによって受電コイル22に電力を送電する。また、受電コイル22は、同じく導電線からなる二次コイルによって構成され、磁気を電力に変換することによって送電コイル12からの電力を受電する。両コイル間における電磁誘導作用により、送電コイル12から受電コイル22へ非接触で電力を供給することが可能となる。
【0013】
地上側の給電装置100は、電力制御部11と、送電コイル12と、無線通信部13と、制御部14とを備えている。送電コイル12は、地上側ユニット15に搭載されている。
【0014】
電力制御部11は、交流電源110から送電される交流電力を高周波の交流電力に変換して送電コイル12に送電するための回路である。そして、電力制御部11は、整流部111と、PFC回路112と、インバータ113とを備えている。
【0015】
整流部111は、交流電源110に電気的に接続され、交流電源110から出力される交流電力を整流する回路である。PFC回路112は、整流部111から出力される波形を整形することで力率を改善するための回路(Power Factor Correction)であり、整流部111とインバータ113との間に接続されている。インバータ113は、IGBT等のスイッチング素子で構成されたPWM制御回路を備え、スイッチング制御信号に基づいて直流電力を交流電力に変換して送電コイル12に供給する。
【0016】
無線通信部13は、車両10側に設けられた無線通信部25と双方向の通信を行う。
【0017】
制御部14は、給電装置100全体を制御するためのコントローラであり、車両10が駐車スペースの所定の停止位置に駐車すると、電力制御部11を制御して送電コイル12から受電コイル22へ送電する。また、制御部14は、無線通信部13を介して受電装置200との間で情報の送受信を行う。
【0018】
一方、車両10側の受電装置200は、受電コイル22と、コイル間距離検出部23と、異物検知部24と、無線通信部25と、充電制御部26と、整流部27と、リレー部28と、バッテリ29と、インバータ30と、モータ31と、通知部32とを備えている。受電コイル22とコイル間距離検出部23と異物検知部24は、車両側ユニット33に一体に搭載されている。また、本実施形態では、コイル間距離検出部23と異物検知部24を別々に設置しているが、異物検知部24でコイル間距離も検出するように構成すれば、共用して使用することも可能である。
【0019】
受電コイル22は、車両10を駐車スペースの所定の停止位置に駐車すると、送電コイル12の直上に正対する位置に配置されている。
【0020】
コイル間距離検出部23は、送電コイル12と受電コイル22との間のコイル間距離を検出するセンサであり、音波センサやレーダー等の機器によって構成されている。例えば、コイル間距離検出部23は、送信波を出力して地上側ユニット15の筐体に当たって跳ね返ってきた反射波を受信し、送信から受信までの時間を計測してコイル間距離を検出する。したがって、コイル間距離は、車両側ユニット33から地上側ユニット15までの筐体間の距離でもある。尚、本実施形態では、コイル間距離検出部23を車両10の車両側ユニット33に設置しているが、地上側ユニット15に設置してもよい。
【0021】
異物検知部24は、送電コイル12と受電コイル22との間に設定された異物検知範囲内に存在する異物を検知するセンサであり、音波センサやレーダー等の機器によって構成されている。異物検知部24は、送電コイル12を備えた給電装置100か受電コイル22が搭載された車両10のいずれかに設置されている。本実施形態では、
図1に示すように、異物検知部24が車両10に設置されている場合について説明するが、
図2に示すように、異物検知部17を給電装置100の地上側ユニット15に設置してもよい。
【0022】
異物検知部24は、異物検知範囲内に存在する異物を検知しており、
図3に示すように異物検知範囲には、車両10が停止しているときの異物検知範囲A1と、車両10が走行しているときの異物検知範囲A2がある。停止時の異物検知範囲A1は、車両側ユニット33の幅よりも広い所定の幅W1と、異物検知距離L1とによって規定される領域である。所定の幅W1は、異物が存在した場合に非接触給電に影響を及ぼす範囲に設定されている。異物検知距離L1は、車両10の底面から送電コイル12が設置された地上側ユニット15の直近までの距離に設定されている。そして、異物検知距離L1は、コイル間距離検出部23で検出されたコイル間距離に応じて変化する。
【0023】
走行時の異物検知範囲A2は、車両側ユニット33の幅よりも広い所定の幅W1と、異物検知距離L2とによって規定される領域である。所定の幅W1は、停止時の異物検知範囲A1と同様に、異物が存在した場合に非接触給電に影響を及ぼす範囲に設定されている。異物検知距離L2は、車両に付着している異物を検知するために必要な距離に予め設定されており、車両10の底面から近距離に設定されている。したがって、車両が走行しているときの異物検知範囲A2は、車両が停止しているときの異物検知範囲A1よりも狭く設定されている。また、車両10が駐車するために走行しているときにはコイル間距離の変動が大きいので、異物検知距離L2はコイル間距離に応じて変化させるのではなく、予め設定された固定値とする。そのため、異物検知部24は、車両が停止している間のみコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させる。ただし、異物検知距離L2を必ず固定値にしなければならないわけではなく、異物検知距離L2をコイル間距離に応じて変化させてもよい。
【0024】
尚、
図2に示すように、異物検知部17を地上側に設置した場合には、送電コイル12が設置された地上側ユニット15から車両側ユニット33の直近までの距離を異物検知距離に設定すればよい。
【0025】
次に、
図4〜6を参照して、異物検知部24による異物の検知方法を説明する。
図4に示すように、走行時の異物検知範囲A2内に異物Xが存在し、送電コイル12の近傍に異物Yが存在している場合について説明する。
【0026】
図5に示すように、車両10が駐車しようとして走行しているときには、異物検知部24から送信波Sが出力されると、異物Xによる反射波Rxと、異物Yによる反射波Ryとを受信する。また、コイル間距離検出部23から出力された送信波による反射波Rも存在する。ここで、異物検知部24は、送信波Sを出力してから反射波Rx、Ryを受信するまでの時間を計測して、異物X、Yまでの距離を検出する。そして、異物検知部24は、異物検知距離L2以内に位置する異物Xについてはその存在を検出し、異物検知距離L2よりも遠くに位置する異物Yについては無視してその存在を検出しない。このように車両10が駐車操作中である走行中に異物を検知できれば、その異物が地上にある異物ではなく、車両10に付着した異物であることを特定することができる。したがって、充電を開始する前に予め異物があることを乗員に報知することができる。
【0027】
また、車両10が駐車位置で停止しているときには、
図6に示すように、異物検知距離L1は、コイル間距離に応じて設定される。
図6では、コイル間距離検出部23から出力された送信波による反射波Rの位置がコイル間距離Lになるので、コイル間距離Lから所定値L0だけ引いた値を、異物検知距離L1に設定する。これにより、停止時の異物検知範囲A1は、コイル間距離Lに応じて変化するように設定される。また、所定値L0は、地面や地上側ユニット15を誤って異物と検知することがないように設定された値である。そして、異物検知部24は、異物検知距離L1以内に位置する異物X、Yについてその存在を検出し、異物検知距離L1よりも遠くに位置する地面や地上側ユニット15については無視してその存在を検出しない。
【0028】
このようにコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させるので、異物検知距離L1を適切な値に設定することができる。例えば、異物検知距離を長く設定してしまうと、地面や地上側ユニット15を誤って異物であると検出してしまう場合がある。逆に、異物検知距離を短く設定してしまうと異物を検出できなくなってしまう。しかし、上述したようにコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させれば、検知する必要のある異物は確実に検出することができ、地面や地上側ユニット15を誤って検知することをなくすことができる。さらに、乗員が車両10に乗車して車両の姿勢が下がると、地面や地上側ユニット15を異物であると誤検知してしまう場合が考えられる。しかし、コイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させれば、このような誤検知を防止することができる。したがって、コイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させれば、乗員が車両を乗り降りしたり、積荷の載せ下ろし、風等によって車両の姿勢が変化しても異物の検知を正確に行うことができる。
【0029】
無線通信部25は、給電装置100側に設けられた無線通信部13と双方向の通信を行う。
【0030】
充電制御部26は、バッテリ29の充電を制御するためのコントローラであり、車両10が駐車スペースに駐車するときに、車両10と送電コイル12との間に存在する異物を検知する異物検知処理を実行する。この異物検知処理の詳細については後述する。また、充電制御部26は、無線通信部25、通知部32、リレー部28等を制御しており、充電を開始する旨の信号を、無線通信部25を介して給電装置100の制御部14に送信する。
【0031】
尚、充電制御部26は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路とメモリ等の周辺機器から構成されている。そして、特定のプログラムを実行することにより、異物検知処理を実行する。このような充電制御部26の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含み、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置も含んでいる。
【0032】
整流部27は、受電コイル22に接続され、受電コイル22で受電した交流電力を直流に整流する整流回路によって構成されている。
【0033】
リレー部28は、充電制御部26の制御によってオンオフが切り換えられるリレースイッチを備えている。また、リレー部28は、リレースイッチをオフにすることで、バッテリ29を含む主回路系と、充電回路部となる受電コイル22及び整流部27とを切り離している。
【0034】
バッテリ29は、複数の二次電池を接続して構成され、車両10の電力源となる。
【0035】
インバータ30は、IGBT等のスイッチング素子で構成されたPWM制御回路を備え、スイッチング制御信号に基づいてバッテリ29から出力される直流電力を交流電力に変換してモータ31に供給する。
【0036】
モータ31は、例えば三相の交流電動機によって構成され、車両10を駆動するための駆動源となる。
【0037】
通知部32は、警告ランプ、ナビゲーションシステムのディスプレイまたはスピーカ等によって構成され、充電制御部26の制御に基づいて、ユーザに対して光や画像または音声等を出力する。
【0038】
このような構成により、非接触給電システム1は、送電コイル12と受電コイル22との間の電磁誘導作用によって非接触状態で高周波電力の送電および受電を行う。すなわち、送電コイル12に電圧を加えることによって、送電コイル12と受電コイル22との間に磁気的な結合が生じ、送電コイル12から受電コイル22へ電力が供給される。
【0039】
[異物検知処理の手順]
次に、本実施形態に係る非接触給電システム1による異物検知処理の手順を
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
図7に示すように、まずステップS101において、給電装置100が設置された駐車スペースに車両10が接近して無線通信が可能になると、充電制御部26は、無線通信部25を介して給電装置100との間の通信を開始する。
【0041】
ステップS103において、異物検知部24は、異物の検知を実施する。本実施形態では、異物検知部24が車両側に設置されているので、車両側から異物を検知する場合について説明する。ただし、異物検知部を地上側に設置した場合でも、車両が停車している場合と同様の処理で異物の検知を行うことができる。ステップS103における車両側からの異物の検知を、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
図8に示すように、ステップS201において、充電制御部26は、車両10が停止しているか否かを判定する。停止しているか否かの判定方法としては、車両10の速度が0である場合に停止していると判定し、車両10の速度が0ではない場合に停止していないと判定する。停止していないと判定された場合、すなわち車両10が駐車するために走行中である場合にはステップS203に進み、停車中であると判定された場合にはステップS205に進む。
【0043】
ステップS203において、異物検知部24は、
図3に示すように異物検知距離をL2に設定して、走行時の異物検知範囲A2を設定する。
【0044】
ステップS205において、コイル間距離検出部23は、送電コイル12と受電コイル22との間のコイル間距離を検出する。
【0045】
ステップS207において、異物検知部24は、ステップS205で検出されたコイル間距離Lに応じて異物検知距離L1を設定し、
図3に示す停車時の異物検知範囲A1を設定する。
【0046】
ステップS209において、異物検知部24は、送信波を出力してから反射波を受信するまでの時間を計測して異物までの距離を検出する。
【0047】
ステップS211において、異物検知部24は、停車時の異物検知距離L1または走行時の異物検知距離L2以内に異物が存在するか否かを判定する。すなわち、車両10が停車しているときには、ステップS209で検出された異物までの距離が異物検知距離L1以内であるか否かを判定する。また、車両10が走行しているときには、ステップS209で検出された異物までの距離が異物検知距離L2以内であるか否かを判定する。そして、異物検知距離以内に異物が存在すると判定された場合にはステップS213に進み、異物検知距離以内に異物が存在しないと判定された場合には、
図7のフローチャートへ戻ってステップS105へ進む。
【0048】
ステップS213において、異物検知部24は、異物の検出情報を充電制御部26へ送信する。そして、充電制御部26は、異物の検出情報をメモリに記憶して保持すると、
図7のフローチャートへ戻ってステップS105へ進む。
【0049】
図7のステップS105において、充電制御部26は、異物検知範囲内に異物が検出されたか否かを判定する。このとき、充電制御部26は、ステップS209で検出された異物までの距離に基づいて、異物が車両側にあるのか、地上側にあるのか、あるいは車両側と地上側の両方にあるのかを判定する。そして、異物が車両側のみにある場合にはステップS107に進み、異物が地上側のみにある場合にはステップS109に進み、車両側と地上側の両方に異物がある場合にはステップS111に進む。そして、異物が検出されなかった場合にはステップS113へ進む。
【0050】
ステップS107において、充電制御部26は、通知部32を介して、車両側に異物が存在していることを乗員に報知する。また、ステップS109において、充電制御部26は、通知部32を介して、地上側に異物が存在していることを乗員に報知する。さらに、ステップS111において、充電制御部26は、通知部32を介して、車両側と地上側の両方に異物が存在していることを乗員に報知する。こうしてステップS107〜S111において、異物の存在を乗員に報知すると、本実施形態に係る異物検知処理を終了する。
【0051】
ステップS113において、充電制御部26は、充電シーケンス中であるか否かを判定する。充電シーケンス中であるとは、異物の検知を継続する必要がある状態のことであり、例えば、地上側と車両側の通信が成立しているが充電を開始していない状態や非接触充電を実施している状態等である。そして、充電シーケンス中である場合にはステップS103に戻って継続して異物検知処理を実行し、充電シーケンス中でない場合には本実施形態に係る異物検知処理を終了する。
【0052】
[第1実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る非接触給電システム1では、コイル間距離を検出するコイル間距離検出部23と、異物検知範囲内に存在する異物を検知する異物検知部24とを備えている。そして、異物検知部24は、給電装置100または車両10のいずれかに設置され、コイル間距離検出部23で検出されたコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させる。これにより、乗員が車両を乗り降りして車両の姿勢が変化しても異物の検知を正確に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態に係る非接触給電システム1では、異物検知部24を車両10に設置した場合に、車両10が停止している間のみコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させる。車両10が駐車するために走行している間はコイル間距離の変動が大きいので、車両10が停止している間のみコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させれば、より正確に異物の検知を行うことができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る非接触給電システム1では、異物検知部24を車両10に設置した場合に、車両10が走行しているときの異物検知範囲を、車両10が停止しているときの異物検知範囲より狭くする。これにより、車両10が走行しているときに地面の段差等を誤検知することがなくなり、より正確に異物の検知を行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係る非接触給電システム1では、コイル間距離検出部23を車両10に設置して車両側からコイル間距離を検出する。コイル間距離検出部23を地上側に設置すると、車両底面の受電コイル22以外の部分には凹凸があるので、コイル間距離を正確に検出することが困難になる。そこで、コイル間距離検出部23を車両10に設置すれば、地上側ユニット15は車両側ユニット33よりサイズが大きくフラットな形状をしているので、コイル間距離を正確に検出することができる。
【0056】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。ただし、第1実施形態と同一の構成については、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
[非接触給電システムの構成]
図9は、本実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係る非接触給電システム5では、給電装置100に異物検知部17をさらに備えたことが第1実施形態と相違している。第1実施形態では、給電装置100または車両10のいずれかに異物検知部を設置していたが、本実施形態では、給電装置100または車両10のうち異物検知部が設置されていない側に、さらに異物検知部を設置する。
図1に示す第1実施形態では、車両10に異物検知部24を設置した場合について説明していたので、本実施形態では、給電装置100に異物検知部17をさらに設置する。
【0058】
異物検知部17は、送電コイル12と受電コイル22との間に設定された異物検知範囲内に存在する異物を検知するセンサであり、音波センサやレーダー等の機器によって構成されている。
【0059】
図10に示すように、本実施形態では、車両側の異物検知部24の異物検知範囲A3と、地上側の異物検知部17の異物検知範囲A4とがある。車両側の異物検知部24の異物検知範囲A3は、車両側ユニット33の幅よりも広い所定の幅W1と、異物検知距離L3とによって規定される領域である。所定の幅W1は、異物が存在した場合に非接触給電に影響を及ぼす範囲に設定されている。異物検知距離L3は、車両側に存在している異物を検知するために必要な距離に設定され、コイル間距離検出部23で検出されたコイル間距離に応じて変化する。尚、異物検知範囲A3は、車両10が停止しているときの異物検知範囲であり、
図10では走行時の異物検知範囲を図示していないが、本実施形態でも車両10の走行時には第1実施形態と同様に走行時の異物検知範囲を設定する。
【0060】
地上側の異物検知部17の異物検知範囲A4は、地上側ユニット15の幅よりも広い所定の幅W2と、異物検知距離L4とによって規定される領域である。所定の幅W2は、異物が存在した場合に非接触給電に影響を及ぼす範囲に設定されている。ただし、地上側ユニット15の幅は車両側ユニット33の幅よりも広いので、幅W1よりも幅W2のほうが大きく設定されている。また、異物検知距離L4は、地上に存在している異物を検知するために必要な距離に設定されている。
【0061】
本実施形態では、
図10に示すように、車両側の異物検知範囲A3と地上側の異物検知範囲A4を重複させている。異物検知部17は、異物検知範囲A4を変化させずに、予め設定された固定値に設定する。一方、車両側の異物検知部24は、コイル間距離に応じて異物検知距離L3を変化させ、それによって異物検知範囲A3を変化させる。このとき、異物検知部24は、コイル間距離Lから所定値L0を引いて異物検知距離L3を設定し、L4>L0とすることによって、車両側の異物検知範囲A3と地上側の異物検知範囲A4とを重複させている。尚、地上側の異物検知距離L4を必ず固定値にしなければならないわけではなく、異物検知距離L4をコイル間距離に応じて変化させ、車両側の異物検知距離L3を固定値にしてもよい。ただし、この場合には、コイル間距離が車両側で検出されるので、地上側の異物検知部17は通信を介してコイル間距離を取得する必要があり、迅速に異物検知距離L4を変化させることができない。したがって、車両側の異物検知距離L3をコイル間距離に応じて変化させるようにしたほうが好ましい。
【0062】
次に、
図11〜13を参照して、異物検知部17、24による異物の検知方法を説明する。
図11に示すように、車両側の異物検知範囲A3内に異物Xが存在し、地上側の異物検知範囲A4内に異物Yが存在している場合について説明する。
【0063】
図12に示すように、地上側の異物検知部17から送信波Sが出力されると、異物Xによる反射波Rxと、異物Yによる反射波Ryとを受信する。また、車両10による反射波R0も受信する。ここで、異物検知部17は、送信波Sを出力してから反射波Rx、Ryを受信するまでの時間を計測して、異物X、Yまでの距離を検出する。そして、異物検知部17は、異物検知距離L4以内に位置する異物Yについてはその存在を検出し、異物検知距離L4よりも遠くに位置する異物Xや車両については無視してその存在を検出しない。
【0064】
また、車両側の異物検知部24は、
図13に示すように、異物検知距離L3をコイル間距離に応じて設定する。
図13では、コイル間距離検出部23から出力された送信波による反射波Rの位置がコイル間距離Lとなるので、コイル間距離Lから所定値L0だけ引いた値を異物検知距離L3に設定する。このとき、所定値L0は、車両側の異物検知範囲A3と地上側の異物検知範囲A4とが重複するように、L4>L0となる値に設定されている。そして、異物検知部24は、異物検知距離L3以内に位置する異物Xについてはその存在を検出し、異物検知距離L3よりも遠くに位置する異物Yや地面については無視してその存在を検出しない。このようにコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させるので、乗員が車両を乗り降りして車両の姿勢が変化しても異物の検知を正確に行うことができる。
【0065】
また、地上側か車両側のいずれかに異物検知部を設置した場合には、地上や車両底面の形状はさまざまであるため、検知したい異物のみを検知できるように異物検知範囲を設定することは困難である。しかし、本実施形態では、地上側と車両側の異物検知範囲を重複させているので、地上や車両底面の不規則な形状に影響を受けることのない異物検知範囲を設定することができ、より正確に異物の検知を行うことができる。
【0066】
特に、地上側の異物検知範囲A4は、車両10の近傍には設定されていないので、車両10の底面を異物であると誤検知することはない。また、車両側の異物検知範囲A3は、地面や地上側ユニット15の近傍には設定されていないので、地面や地上側ユニット15を異物であると誤検知することはない。したがって、乗員が車両を乗り降りしたり、積荷の載せ下ろし、風等によって車両の姿勢が変化しても異物の検知を正確に行うことができる。
【0067】
尚、上述した説明では、車両10の停車時についてのみ説明しているが、車両10の走行時についても第1実施形態と同様に異物の検知を行っている。
【0068】
[異物検知処理の手順]
次に、本実施形態に係る非接触給電システム5による異物検知処理の手順を
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
図14に示すように、まずステップS301において、給電装置100が設置された駐車スペースに車両10が接近して無線通信が可能になると、充電制御部26は、無線通信部25を介して給電装置100との間の通信を開始する。
【0070】
ステップS303において、異物検知部17は、地上側から異物の検知を実施する。ステップS303における地上側からの異物の検知を、
図15のフローチャートを参照して説明する。
【0071】
図15に示すように、ステップS401において、異物検知部17は、送信波を出力してから反射波を受信するまでの時間を計測して異物までの距離を検出する。
【0072】
ステップS403において、異物検知部17は、地上側の異物検知距離L4以内に異物が存在するか否かを判定する。そして、異物検知距離L4以内に異物が存在すると判定された場合にはステップS405に進み、異物検知距離L4以内に異物が存在しないと判定された場合には、
図14のフローチャートへ戻ってステップS305へ進む。
【0073】
ステップS405において、異物検知部17は、異物の検出情報を制御部14へ送信する。そして、制御部14は、無線通信部13を介して、異物の検出情報を車両側へ送信する。
【0074】
ステップS407において、充電制御部26は、地上側から送信されてきた異物の検出情報を受信し、メモリに記憶して保持すると、
図14のフローチャートへ戻ってステップS305へ進む。
【0075】
図14のステップS305において、異物検知部24は、車両側から異物の検知を実施する。ただし、本ステップにおける車両側からの異物の検知は、第1実施形態のステップS103における異物の検知と同様の処理が行われるので、詳細な説明は省略する。したがって、本ステップでは、
図8に示すフローチャートに基づいて、車両10の走行中と停車中についてそれぞれ異物の検知が行われる。
【0076】
ステップS307において、充電制御部26は、異物検知範囲内に異物が検出されたか否かを判定する。そして、ステップS303において地上側で異物が検出されずに、ステップS305において車両側で異物が検出された場合にはステップS309へ進む。また、ステップS303において地上側で異物が検出され、ステップS305において車両側で異物が検出されなかった場合にはステップS311へ進む。さらに、ステップS303において地上側で異物が検出され、ステップS305において車両側でも異物が検出された場合にはステップS313へ進む。そして、異物が検出されなかった場合にはステップS315へ進む。
【0077】
ステップS309において、充電制御部26は、通知部32を介して、車両側に異物が存在していることを乗員に報知する。また、ステップS311において、充電制御部26は、通知部32を介して、地上側に異物が存在していることを乗員に報知する。さらに、ステップS313において、充電制御部26は、通知部32を介して、車両側と地上側の両方に異物が存在していることを乗員に報知する。こうしてステップS309〜313において、異物の存在を乗員に報知すると、本実施形態に係る異物検知処理を終了する。
【0078】
ステップS315において、充電制御部26は、充電シーケンス中であるか否かを判定する。そして、充電シーケンス中である場合にはステップS303に戻って継続して異物検知処理を実行し、充電シーケンス中でない場合には本実施形態に係る異物検知処理を終了する。
【0079】
[第2実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る非接触給電システム5では、給電装置100または車両10のうち異物検知部が設置されていない側に、さらに異物検知部を設置する。そして、給電装置100に設置された異物検知部17の異物検知範囲と車両10に設置された異物検知部24の異物検知範囲とを重複させる。地上側か車両側のいずれかに異物検知部を設置した場合には、地上や車両底面の形状はさまざまであるため、検知したい異物のみを検知できるように異物検知範囲を設定することは困難である。しかし、本実施形態では、地上側と車両側の両方に異物検知部を設置して各異物検知範囲を重複させるので、地上や車両底面の不規則な形状に影響を受けることのない異物検知範囲を設定することができ、より正確に異物の検知を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態に係る非接触給電システム5では、車両10に設置された異物検知部24がコイル間距離に応じて異物検知範囲を変化させ、給電装置100に設置された異物検知部17は異物検知範囲を変化させない。これにより、車両の姿勢が変動しても車両側の異物検知部24によって車両の姿勢変化に対応させて異物検知範囲を迅速に変更することができ、異物の検知を正確に行うことができる。
【0081】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。