(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
(第1実施形態)
まず、本実施形態にかかるシート処理装置を備えたシート製造装置について説明する。
図1は本実施形態にかかるシート製造装置の構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、シート製造装置100は、供給部10と、製造部102と、制御部104と、を備える。製造部102は、シートSを製造する。製造部102は、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、シート形成部80と、切断部90と、を有している。また、本実施形態のシート製造装置100は、シート処理装置1000を備えている。なお、シート処理装置1000の詳細な説明は後述する。
【0018】
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。供給部10は、例えば、古紙等が投入されたボックスであったり、古紙が収容されたトレーやカセットとされており、収容された古紙をこれらから順次排出して送り出す機能となっている。例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、例えば、古紙やパルプシートなどの繊維を含むものである。
【0019】
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、空気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部12は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部12によって裁断された原料は、ホッパー1で受けてから管2を介して、解繊部20に移送(搬送)される。
【0020】
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料(被解繊物)を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
【0021】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、インク、トナーなどの色剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
【0022】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中(空気中)等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20として、本実施形態ではインペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0023】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43とを有している。ドラム部41としては、例えば、篩(ふるい)を用いる。ドラム部41は、網(フィルター、スクリーン)を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの、第1選別物)と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ(網を通過しないもの、第2選別物)と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、管7を介して、混合部50に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0024】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、混合部50に搬送する。第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部(サクション機構)48と、を含む。
【0025】
吸引部48は、選別部40の開口(網の開口)を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47および吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74およびサクション機構76と同様である。
【0026】
ウェブVは、選別部40および第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、混合部50へと搬送される。
【0027】
回転体49は、ウェブVが混合部50に搬送される前に、ウェブVを切断することができる。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bを有している。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられている。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの解繊物の量の変動を小さくすることができる。
【0028】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられている。図示の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に(張架ローラー47aの横に)設けられている。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。これにより、メッシュベルト46が突部49bによって磨耗する(破損する)ことを抑制することができる。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下であり、メッシュベルト46が損傷を受けずにウェブVを切断することができる距離である。
【0029】
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物(第1ウェブ形成部45により搬送された第1選別物)と、樹脂を含む添加物と、を混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有している。図示の例では、添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。管54は、管7と連続している。
【0030】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
【0031】
添加物供給部52としては、
図1に示すようなスクリューフィーダーや、図示せぬディスクフィーダーなどを用いる。添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂(結着剤)を含む。樹脂が供給された時点では、複数の繊維は結着されていない。樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。
【0032】
添加物供給部52から供給される樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。添加物供給部52から供給される添加物は、繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
【0033】
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、繊維を結着させる樹脂の他、製造されるシートの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤 、繊維等を燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物(第1選別物と添加物との混合物)は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0034】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った解繊物(繊維)をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。さらに、堆積部60は、添加物供給部52から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0035】
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63とを有している。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維または粒子(網を通過するもの)を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0036】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0037】
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有している。
【0038】
メッシュベルト72は、移動しながら、堆積部60の開口(網の開口)を通過した通過物を堆積する。メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通しにくく空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上にウェブWが形成される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。
【0039】
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方(堆積部60側とは反対側)に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流(堆積部60からメッシュベルト72に向く気流)を発生させることができる。サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
【0040】
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。メッシュベルト72に堆積されたウェブWは、シート形成部80へと搬送される。
【0041】
なお、図示の例では、ウェブWを調湿する調湿部78が設けられている。調湿部78は、ウェブWに対して水や水蒸気を添加して、ウェブWと水との量比を調節することができる。
【0042】
シート形成部80(形成部)は、メッシュベルト72に堆積したウェブW(堆積物)を加圧加熱してシートSを成形する。シート形成部80では、ウェブWにおいて混ぜ合された解繊物および添加物の混合物に、熱を加えることにより、混合物中の複数の繊維を、互いに添加物(樹脂)を介して結着することができる。
【0043】
シート形成部80は、ウェブWを加圧する加圧部82と、加圧部82により加圧されたウェブWを加熱する加熱部84と、を備えている。加圧部82は、一対のカレンダーローラー85で構成され、ウェブWに対して圧力を加える。ウェブWは、加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブWの密度が高められる。加熱部84としては、例えば、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロワー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器を用いる。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備えている。加熱部84を加熱ローラー86として構成することにより、加熱部84を板状のプレス装置(平板プレス装置)として構成する場合に比べて、ウェブWを連続的に搬送しながらシートSを成形することができる。ここで、カレンダーローラー85(加圧部82)は、加熱ローラー86(加熱部84)によってウェブWに印加される圧力よりも高い圧力をウェブWに印加することができる。なお、カレンダーローラー85や加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
【0044】
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。図示の例では、切断部90は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
【0045】
以上により、所定のサイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出部96へと排出される。
【0046】
次に、シート処理装置の構成について説明する。
図2はシート処理装置の構成を示す模式図である。
図2に示すように、シート処理装置1000は、画像調査手段としてのスキャナー120及び測色計122と、画像解析手段130と、減墨剤付与手段としてのインクジェット印刷装置124と、微細化手段としての粗砕部12及び解繊部20と、を備えている。
【0047】
スキャナー120は、ラインセンサー等を備え、供給部10によって供給された単票のシート(印刷済み古紙)の画像情報を調査するものであり、具体的にはスキャナー120は、シートに印刷された画像情報の位置、大きさ、形状を読み取る(シートを撮像する)。また、本実施形態では、上述した供給部10から供給されるシートの両面の画像を取得可能にするため、供給されるシートの搬送経路においてシートの各面に対向するように2つ(一対)のスキャナー120が配置されている。各スキャナー120は、画像解析手段130と電気的に接続されており、各スキャナー120によって読み取った画像データは画像解析手段130に送信される。
なお、画像情報とは、シートに印刷された印刷情報をいい、例えば、文字、記号、図形、模様、色彩またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0048】
測色計122は、供給部10によって供給された単票のシート(印刷済み古紙)の画像情報における色情報を調査するものである。測色計122は、公知の計測装置を適用でき、色情報としてL
*a
*b
*値等で数値化される。
また、本実施形態の測色計122は、光源(例えばLED)と受光部(例えばフォトダイオード)を備え、シートに付与(印字)された画像情報の反射率(光沢度)を測定可能である。ここで、シートに印字された色材が水系インク(例えば、市販のインクジェットプリンターによって付着させたインク)である場合と色材が樹脂トナー(例えば、電子写真方式により付着させた帯電制御剤)である場合とでは反射率が異なる。従って、シートの画像に対して反射率を測定することによりシートに形成された色材(水系インクまたは樹脂トナー)の種類を判別することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、供給部10から供給されるシートの両面の画像を取得可能にするため、供給されるシートの搬送経路においてシートの各面に対向するように2つの測色計122が配置されている。各測色計122は、画像解析手段130と電気的に接続されており、各測色計122によって計測された色データは画像解析手段130に送信される。
なお、本実施形態では、測色計122はスキャナー120に対して供給されるシートの搬送方向下流側に配置したが、これに限定されず、測色計122を、スキャナー120に対して供給されるシートの搬送方向上流側に配置してもよい。
【0050】
画像解析手段130は、制御装置であり、CPUや記憶素子、各種ドライバー等を備えている。なお、画像解析手段130に替えて制御部104(
図1参照)にこの機能を搭載させて用いてもよい。
画像解析手段130は、スキャナー120及び測色計122により取得した各種情報(判別データ等を含む)に基づいて、減墨剤の種類と、減墨剤の量とを決定する。
具体的には、スキャナー120及び測色計122により取得した画像情報の位置、画像の大きさ、画像の形状、また、画像の色や画像の反射率を基に、シートに付与する減墨剤の種類と、減墨剤の量とを決定する。
ここで、減墨剤とは、新たに製造するシートSの白色化を向上させる(黒色化を低減する)ために、供給されたシートの画像情報に対して付与(添加)する材料である。
そして、本実施形態の減墨剤はインクである。インクは、水系、溶剤系または油系のいずれも適用可能である。当該インクは各溶液中に減墨剤の色素材料を分散させたものである。
【0051】
なお、本実施形態の減墨剤は、白色インクを適用する。すなわち、供給されるシートの地色に関係なく白色インクを用いる。この場合、白色インクの原料としては、例えば、酸化亜鉛ZnO、酸化チタン(チタンホワイト)TiO
2、アルミナホワイトAl
2O
3・nH
2O、リトポンZnS+BaSO
4、石膏CaSO
4・2H
2O、硫酸バリウムBaSO
4、炭酸カルシウムCaCO
3、鉛白2PbCO
3・Pb(OH)2等がある。
そして、画像解析手段130では、取得した各種情報(判別データ等を含む)からインク吐出データ(印刷データ)を生成し、インク吐出データに従って決定した減墨剤(白色インク)の種類及び減墨剤(白色インク)の量を減墨剤付与手段としてのインクジェット印刷装置124からシートに向けて吐出させる。
【0052】
インクジェット印刷装置124は、インクジェットヘッド125と、インクジェットヘッド125を移動可能な移動部(図示せず)と、インク(減墨剤)を貯留するインク貯留部126(例えば、インクカートリッジ等)を備えている。本実施形態では、水系インク(白色インク)が貯留されたインク貯留部126と及び溶剤系(或いは油系)の白色インクが貯留されたインク貯留部126とが搭載されている。そして、インクジェットヘッド125はインク毎に吐出可能なノズル(図示せず)を有している。
そして、画像解析手段130によって決定された所定の種類及び所定の量の当該減墨剤(本実施形態では白色インク)を、シートに付与された画像情報に重ねて塗布する。すなわち、シートに印字された画像の位置に対応させて白色インクを吐出させ、当該画像領域に白色インクを塗布する。具体的な白色インクの吐出領域は、少なくとも画像情報を覆う領域であって、文字、絵柄、マーク(印)毎、或いはこれらを複数含むブロック毎に塗りつぶした領域に吐出したものであってもよい。
【0053】
微細化手段としての粗砕部12及び解繊部20は、前述したので説明を省略する。
白色インクが付与されたシートは粗砕部12及び解繊部20に投入され微細化される。これにより、シートに形成された画像情報が抹消される。
【0054】
そして、解繊部20によって解繊された解繊物を、選別部40以降の製造部102に投入することにより、白色化された(黒色化が低減された)シートSを製造することができる。
【0055】
なお、上記構成では、供給されるシートの各面に対してスキャナー120、測色計122及びインクジェット印刷装置124が配置されているので、各面に印字された画像情報や色情報を取得し、シートの各面に印字された画像の位置に対応させて白インクを塗布することができる。これにより、両面印刷されたシートに対しても白色度を向上させることができる。
さらに、シートの第1主面(表面)に印字されている部分に対応した同シートの第2主面(裏面)側の位置に対しても白インクを塗布してもよい。この場合、例えば、第1主面に対向して配置されたスキャナー120及び測色計122により画像情報や色情報を取得し、第1主面に対向して配置されたインクジェット印刷装置124により第1主面に対して印字された画像の位置に対応させて白インクを塗布するとともに、第1主面とは反対面の第2主面に対向して配置されたインクジェット印刷装置124により第2主面に対して第1主面に印字された画像の位置に対応させて白インクを塗布してもよい。
このようにすることで画像情報の付与された印字部分に対してシートの両面の各々から白色インクで覆うことができる(被覆することができる)ので白色度を更に向上させることができる。
【0056】
次に、シート処理装置1000のシート処理方法について説明する。
図3は本実施形態にかかるシート処理装置のシート処理方法を示すフローチャートであり、
図4から
図6はシート処理方法を説明する説明図である。また、
図7A及び
図7Bはシート処理装置のシート処理方法を説明する模式図であり、
図8A及び
図8Bは比較例を説明する模式図である。
【0057】
まず、画像調査工程(S11)では、スキャナー120及び測色計122によって供給部10から供給されたシートの画像情報を調査する。
具体的には、スキャナー120及び測色計122を駆動させ、供給部10から排出されたシートSa(
図4参照)に付与された画像情報(
図4の例では「ABCDEF」)に関し、画像の位置、大きさや形状、さらに、画像情報の色や反射率を調査する。調査したデータは、画像解析手段130に送信される。
【0058】
次いで、画像解析工程(S12)では、画像解析手段130がスキャナー120及び測色計122によって取得された調査データに基づいて、減墨剤の種類と、減墨剤の量とを決定する。
具体的には、反射率の調査結果から、シートSaに付与された画像の色材を特定する。この場合、所定の反射率(または光沢度)よりも低い場合には水系インクと判断し、所定の反射率(または光沢度)よりも高い場合には樹脂トナーと判断する。そして、
図5に示すように、画像情報が水系インクと判断した場合には減墨剤の種類として水系インクと決定(選択)する。一方、画像情報が樹脂トナーと判断した場合には減墨剤の種類として溶剤系インク(または油系インク)と決定(選択)する。
【0059】
また、減墨剤の量は、画像情報の大きさに対応して定められたデータテーブルが記憶されており、画像情報の大きさの調査結果から付与すべき減墨剤の量が決定(選択)される。なお、この場合、画像情報が大きいときには、画像情報が少ないときに比べて、減墨剤の量を多くする。すなわち、印刷領域が大きいときには、印刷領域が小さいときに比べて、減墨剤の量が多くなる。
なお、本実施形態では、付与する減墨剤としてのインクの色は白色インクである。すなわち、供給されるシートSaの地色に関係なく白色インクを付与するように設定されている。
また、画像解析工程(S12)では、取得した画像情報からインク吐出データ(印刷データ)を生成し、生成したインク吐出データをインクジェット印刷装置124に送信する。
【0060】
次いで、減墨剤付与工程(S13)では、画像解析工程(S12)によって決定された所定の種類及び所定の量の減墨剤を、シートSaに付与された画像情報に対して付与する。
具体的には、
図6に示すように、インクジェット印刷装置124を駆動させ、シートSaに付与された画像情報の位置に向けて所定の種類(水系または溶剤系(油系インク)及び所定の量の減墨剤(白色インク)を塗布する。これにより、塗布された白色インクは、画像情報(印字部)の表面及び周辺に浸透する。
【0061】
ここで、
図7Aは、シートSaに画像情報として水系インクIaが印字された画像情報に対して減墨剤としての水系インクIw(白色インク)を塗布した状態のシートSaの断面模式図である。
図7Aでは、シートSaに印字された水系インクIwはシートSaの厚み方向に浸透した状態を示している。そして、減墨剤付与工程(S13)にてシートSaに印字された水系インクIa部分に向けて水系インクIw(白色インク)を塗布すると、断面視において水系インクIaを囲むように水系インクIw(白色インク)が浸透する。つまり、シートSaに浸透した部分の水系インクIaの表面の多くを水系インクIwで覆うことが出来る。
【0062】
また、
図7Bは、シートSaに画像情報として樹脂トナーIbが印字された画像情報に対して減墨剤としての溶剤系(油系インク)Is(白色インク)を塗布した状態のシートSaの断面模式図である。
図7Bに示すように、シートSaに印字された樹脂トナーIbはシートSaの表面に固着した状態である。そして、減墨剤付与工程(S13)にてシートSaに印字された樹脂トナーIb部分に向けて溶剤系(油系インク)Is(白色インク)を塗布すると、断面視において樹脂トナーIbを囲むように溶剤系(油系インク)Is(白色インク)が浸透する。つまり、樹脂トナーIbの露出した表面を覆うとともに、シートSa側の裏面の多くを溶剤系(油系インク)Is(白色インク)で覆うことが出来る。このように、
図7A及び
図7Bのいずれの場合も、付与した白色インクは印字部に回り込むように染み込む。
【0063】
また、
図8A及び
図8Bは、
図7A及び
図7Bに対する比較例を示す模式図である。
具体的には、
図8Aは、シートSaに画像情報として水系インクIaが印字された画像情報に対して、例えば、電子写真方式により粉体の帯電制御剤(白色の樹脂トナー)Ipを付着させた状態のシートSaの断面模式図である。
また、
図8Bは、シートSaに画像情報として樹脂トナーIbが印字された画像情報に対して、上記同様に、電子写真方式により粉体の帯電制御剤(白色の樹脂トナー)Ipを付着させた状態のシートSaの断面模式図である。なお、帯電制御剤としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどである。
【0064】
図8Aに示すように、シートSaに画像情報として印字された水系インクIaは、シートSaの厚み方向に浸透した状態であるが、当該水系インクIaが印字された画像情報に対して帯電制御剤(白色の樹脂トナー)Ipを付着させた場合、樹脂トナーIpはシートSaには浸透することなく、水系インクIaの表面を覆うだけである。
従って、
図7Aの場合と比較すると、
図8Aの場合は、画像情報としての水系インクIa量に対する白色の樹脂トナーIpの量が圧倒的に少ない。
【0065】
また、
図8Bに示すように、画像情報としての樹脂トナーIbはシートSaの表面に固着した状態である。そして、当該樹脂トナーIbが印字された画像情報に対して帯電制御剤(白色の樹脂トナー)Ipを付着させた場合、樹脂トナーIpはシートSaには浸透することなく、樹脂トナーIbの表面を覆うだけである。
従って、
図7Bの場合と比較すると、
図8Bの場合は、画像情報としての樹脂トナーIb量に対する白色の樹脂トナーIpの量が圧倒的に少ない。
以上の比較から、
図7A及び
図7Bに示すように、画像情報に対して適切な減墨剤を選択し、選択した減墨剤を塗布する方が、画像情報に対する減墨剤の量が多くなるため、減墨剤が付与されたシートSaを微細化した際に白色化を向上させることができる。換言すれば、黒色化を低減することができる。
また、
図7A及び
図7Bに示すように、画像情報は減墨剤(白色インク)によって覆われるため、画像情報の判読がしにくくなり、機密性を高めることもできる。
【0066】
次いで、微細化工程(S14)では、減墨剤付与工程(S13)によって減墨剤(白色インク)が付与されたシートSaを微細化する。
具体的には、まず、白色インクが付与されたシートSaを粗砕部12(
図2参照)に投入する。粗砕部12に投入されたシートSaは数cm角の細片に裁断される。次いで、裁断れた細片を解繊部20(
図2参照)に投入する。これにより、裁断された細片が解繊される。
従って、微細化工程(S14)によってシートSaの画像情報が完全に抹消されるとともに、白色化された解繊物が形成される。
【0067】
以上、シート処理装置1000のシート処理方法について説明したが、微細化工程(S14)によって形成された解繊物を用いてシートSを製造する場合には、
図1に示すように、シート製造装置100において、解繊された解繊物を、選別部40以降の製造部102に投入する。これにより、白色化された(黒色化が低減された)シートSを製造することができる。
【0068】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0069】
スキャナー120及び測色計122によるシートSaにおける画像の調査結果に基づいて、画像情報に対して適切な種類及び量の減墨剤(白色インク)が画像情報(印字部分)に付与される。そして、減墨剤(白色インク)が付与されたシートSaは解繊部20等により微細化(解繊)される。これにより、大型設備を要することなく、シートの画像情報を抹消化することができるとともに、新たに製造するシートSの白色化に寄与することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態にかかるシート処理装置1000では、画像情報が付与されたシートSaの地色を問わず白色インク(減墨剤)を付与したが、本実施形態では、画像情報が付与されたシートSaの地色に合わせた色のインク(減墨剤)を付与する。
図9は、本実施形態にかかるシート処理装置の構成を示す模式図である。
【0071】
図9に示すように、シート処理装置1000aは、画像調査手段としてのスキャナー120及び測色計122と、画像解析手段130と、減墨剤付与手段としてのインクジェット印刷装置124aと、微細化手段としての粗砕部12及び解繊部20と、を備えている。
なお、スキャナー120及び測色計122、画像解析手段130、粗砕部12及び解繊部20の構成は第1実施形態の構成と同様なので説明は省略する。
【0072】
本実施形態のインクジェット印刷装置124aは、インクジェットヘッド125aと、インクジェットヘッド125aを移動可能な移動部(図示せず)と、インク(減墨剤)を貯留するインク貯留部126a(例えば、インクカートリッジ等)を備えている。
【0073】
本実施形態では、ホワイト(W)の他、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)等の各色の水系インクが貯留されたインク貯留部126aと、同様に、ホワイト(W)の他、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)等の各色の溶剤系インク(或いは油系インク)が貯留されたインク貯留部126aと、が搭載されている。そして、インクジェットヘッド125aはインク毎に吐出可能なノズル(図示せず)を有している。
【0074】
そして、画像解析手段130によって決定された所定の種類及び所定の量の当該減墨剤を、シートに付与された画像情報に対して付与する。すなわち、シートに印字された画像の位置に対応させて所定のインクを吐出させ、当該画像領域に所定のインクを塗布する。
【0075】
この場合、まず、画像解析手段130がスキャナー120及び測色計122によって取得された調査データに基づいて、減墨剤の種類と、減墨剤の量とを決定する。
具体的には、測色計122によってシートSaの地色が測定され、測定結果に基づいて、シートSaの地色と同様の色となるように、複数のインク貯留部126aから適切なインクを選択する。例えば、シートSaが黄色系であると測定された場合には、イエロー(Y)を決定(選択)する。また、反射率の調査結果から、シートSaに付与された画像の色材を特定する。この場合、所定の反射率(または光沢度)よりも低い場合には水系インクと判断し、所定の反射率(または光沢度)よりも高い場合には樹脂トナーと判断する。そして、画像情報が水系インクと判断した場合には減墨剤の種類として水系インクと決定(選択)する。一方、画像情報が樹脂トナーと判断した場合には減墨剤の種類として溶剤系インク(または油系インク)と決定(選択)する(
図5参照)。
【0076】
また、付与するインクの量は、画像情報の大きさに対応して定められたデータテーブルが記憶されており、画像情報の大きさの調査結果から付与すべきインクの量が決定(選択)される。
【0077】
そして、インクジェット印刷装置124aを駆動させ、シートSaに付与された画像情報の位置に向けて所定の色のインク、所定の種類(水系または溶剤系(油系インク))及び所定の量の減墨剤(所定の色のインク)を塗布する。これにより、塗布されたインクは、画像情報(印字部)の表面及び周辺に浸透する。
なお、シートSaに付与されたインクのシートSaに浸透する浸透状況は、第1実施形態と同様である(
図7A及び
図7B参照)。
【0078】
そして、上記インクが付与されたシートSaを粗砕部12及び解繊部20に投入することにより、微細化(解繊)される。これにより、シートSaに形成された画像情報が抹消されるとともに、黒色化が低減された解繊物が形成される。さらに、解繊部20によって解繊された解繊物を、選別部40以降の製造部102(
図1参照)に投入することにより、黒色化が低減されたシートSを製造することができる。
【0079】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0080】
本実施形態のシート処理装置1000aでは、画像情報が付与されたシートSaの地色に合わせた色のインクが付与されたのち、解繊される。これにより、シートの画像情報を抹消化することができる。さらに、新たに製造するシートSの黒色化が低減され、シートSaの地色と同様の色のシートSを製造することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良等を加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0082】
(変形例1)上記実施形態では、画像情報が付与されたシートSaに対して所定の種類及び所定の量の減墨剤(インク)を付与した。その後、減墨剤(インク)を付与したシートSaを解繊し、解繊された解繊物を用いて新たなシートS(再生シートS)を製造した。ここで、新たなシートSを製造した場合、新たなシートSの色と元のシートSaの色とが同様であることが望ましい。
そこで、新たなシートSの色と元のシートSaの色とが同様となるように、シート処理装置1000(1000a)及びシート製造装置100を駆動制御してもよい。
具体的には、画像解析手段130に、画像情報が付与されたシートSaの地色、画像情報の色、画像情報の大きさに対する減墨剤の種類と減墨剤の量とが対応したデータテーブルを記憶させておく。なお、新たなシートSの色と元のシートSaの色とが同様となる判断基準としては、例えば、色差ΔEが5%以下とする。このようにすれば、目視にて判別不可能な水準であるため、新たなシートSの色と元のシートSaの色とが同様と判断できる。また、データテーブルに設定される減墨剤の量等は、例えば、予め試験や評価等により得られた結果から導くことができる。
【0083】
そして、実際に画像情報が付与されたシートSaをスキャナー120や測色計122で調査し、その結果から、上記データテーブルから適切な減墨剤の種類と減墨剤の量とが決定され、決定された減墨剤(インク)がシートSaに付与される。
このようにすれば、元のシートSaの色と同様の色を有する新たなシートSを製造することができる。