特許第6939295号(P6939295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939295
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/32 20060101AFI20210909BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H02B1/32 A
   F16F15/02 L
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-174775(P2017-174775)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-50700(P2019-50700A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】三瀬 大海
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−211510(JP,A)
【文献】 特開平03−129709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/32
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の筐体と、
前記筐体の底部に設けられた台座部と、
前記筐体の内部に設けられかつ前記台座部にその下部が固定された内部機器と、を備える盤であって、
前記筐体のフレームの一部であり前記台座部よりも高い位置に設けられた筐体側固定部材と、
その基端部が前記内部機器の上部に固定されその先端部が棒状の機器側固定部材と、を備え、
前記筐体側固定部材は、前記先端部の延在方向と平行に延びかつ前記先端部の外周面を囲う筒部を備え、
前記先端部の外周面と前記筒部の内周面との間には弾性部材が設けられることを特徴とする盤。
【請求項2】
前記筐体は、略鉛直方向に沿って延びる複数の縦フレームと、略水平方向に沿って延び前記複数の縦フレームのうち隣接する2つを連結する複数の横フレームと、を備え、
前記筐体側固定部材は、前記複数の横フレームのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の盤。
【請求項3】
前記内部機器は、上面視で略矩形状であり、
前記内部機器は、前記上部の上面視における短辺と前記筐体側固定部材とが対向しかつ略平行になるように前記筐体の内部に設けられ、
前記先端部は、前記短辺に対し略垂直な向きに延びることを特徴とする請求項2に記載の盤。
【請求項4】
前記筒部は、前記先端部の延在方向と平行に延びかつ当該先端部の外径よりも大きな内径を有し、
前記弾性部材は管状でありその外周面は前記筒部の内周面に溶着され、
前記先端部は前記弾性部材の内部に挿通することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の盤。
【請求項5】
前記筐体側固定部材は、前記先端部の延在方向に対し垂直に延びる板状のプレート部を備え、
前記筒部は、前記プレート部に形成された貫通孔に挿通した状態で当該プレート部と溶接によって接合されていることを特徴とする請求項4に記載の盤。
【請求項6】
前記先端部の外周面と前記筒部の内周面との間には、それぞれ弾性率が異なる複数の弾性部材が設けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の盤。
【請求項7】
前記先端部の外周面には筒状の機器側弾性部材が設けられ、
前記筒部の内周面には、前記機器側弾性部材の外周面の少なくとも一部を覆う内周面を有しかつ前記機器側弾性部材と異なる弾性率を有する筐体側弾性部材が設けられ、
前記内部機器が静止した状態では、前記筐体側弾性部材の内周面と前記機器側弾性部材の外周面との間に間隙が設けられることを特徴とする請求項6に記載の盤。
【請求項8】
前記筒部は、前記先端部の鉛直方向上方側を覆うカバー部材と、水平方向に延びる板状でありかつ前記機器側弾性部材を支持するプレート部と、を備え、
前記機器側弾性部材の底部と前記プレート部との間には、前記底部と前記プレート部との間の摩擦を低減する摩擦低減部材が設けられることを特徴とする請求項7に記載の盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤に関する。より詳しくは、制御盤、配電盤、動力盤、及び分電盤等、箱状の筐体とその内部に収められた内部機器とを備え、この内部機器の筐体の内部における振動を抑制する盤に関する。
【背景技術】
【0002】
制御盤、配電盤、動力盤、及び分電盤等の盤と略称される装置は、インバータ、コンバータ、変圧器、遮断器、コンデンサ、及びコイル等、盤に要求される機能を発揮するために必要な様々な電気機器を箱状の筐体に収納して構成される。一般的な筐体は、構造的に形状を保持するための盤枠と呼称されるフレームを、周辺の作業員の安全や内部の電気機器の保護のため板金で囲った構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
盤には、地震や運搬等による振動から内部の電気機器を保護するため、耐震、制振、及び免震等の振動に対する対策が要求される。ここで盤の制振構造として、例えば筐体のフレームの一部の厚みを変化させ、大きく振動する部分の共振周波数を変化させることが考えられる。しかしながらフレームにはスチールを用いる場合が多く、またスチールは内部減衰が小さく、かつ強度の観点から固有周波数を下げるために厚みを減らすことは難しい。またフレームの固有周波数を上げるために厚みを増やすと、全体の重量が増加し、ひいてはコストが増加する。このため盤の振動対策としては、1.効果的な制振及び免震の機能を有すること、2.適切な強度があること、3.低コストであること、4.筐体内のレイアウトの障害とならないこと、5.メンテナンスが容易であること、等の全ての制振要件を満たすことが好ましい。
【0004】
また例えば特許文献2には、箱状の外部筐体の内部に、その上側及び下側が粘弾性体によって支持された内部筐体を設け、保護対象である電気機器は内部筐体に設ける2重構造の盤が提案されている。特許文献2の盤によれば、内部筐体を、粘弾性体を介して支持することにより、内部筐体の内部の電気機器に伝わる振動を効率的に減衰させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−148421号公報
【特許文献2】特開2007−211916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら粘弾性体は、制振性を向上できるものの、例えば変圧器やコンデンサ等を保護対象とした場合、これら重量物の揺れを抑えるほどの強度が無いため、周辺ケーブル類が破断してしまうおそれがある。すなわち、上記5つの制振要件のうち、1.及び2.の要件を十分に満たすことができない。
【0007】
本発明は、筐体内部の電気機器を保護するための適切な制振要件を満たす盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)盤(例えば、後述のインバータ盤1,1A)は、箱状の筐体(例えば、後述の筐体2)と、前記筐体の底部(例えば、後述のレール部材26a,26b)に設けられた台座部(例えば、後述の台座部27)と、前記筐体の内部に設けられかつ前記台座部にその下部(例えば、後述の下部31)が固定された内部機器(例えば、後述の内部機器3)と、前記筐体のフレームの一部であり前記台座部よりも高い位置に設けられた筐体側固定部材(例えば、後述の横フレーム7,8)と、その基端部(例えば、後述の基端部51b,52b,53b)が前記内部機器の上部(例えば、後述の上部32)に固定されその先端部(例えば、後述の先端部51a,52a,53a)が棒状の機器側固定部材(例えば、後述の棒部材51,52,53,57)と、を備え、前記筐体側固定部材は、前記先端部の延在方向と平行に延びかつ前記先端部の外周面を囲う筒部(例えば、後述の筒部材72,73,74,88)を備え、前記先端部の外周面と前記筒部の内周面との間には弾性部材(例えば、後述の粘弾性部材75,76,77、第1粘弾性部材571、第2粘弾性部材84、及び第3粘弾性部材86,87等)が設けられることを特徴とする。
【0009】
(2)この場合、前記筐体は、略鉛直方向に沿って延びる複数の縦フレーム(例えば、後述の縦フレーム21a,21b,21c,21d)と、略水平方向に沿って延び前記複数の縦フレームのうち隣接する2つを連結する複数の横フレーム(例えば、後述の横フレーム7,8)と、を備え、前記筐体側固定部材は、前記複数の横フレームのうちの1つであることが好ましい。
【0010】
(3)この場合、前記内部機器は、上面視で略矩形状であり、前記内部機器は、前記上部の上面視における短辺(例えば、後述の短辺部33)と前記筐体側固定部材とが対向しかつ略平行になるように前記筐体の内部に設けられ、前記先端部は、前記短辺に対し略垂直な向きに延びることが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記筒部は、前記先端部の延在方向と平行に延びかつ当該先端部の外径よりも大きな内径を有し、前記弾性部材は管状でありその外周面は前記筒部の内周面に溶着され、前記先端部は前記弾性部材の内部に挿通することが好ましい。
【0012】
(5)この場合、前記筐体側固定部材は、前記先端部の延在方向に対し垂直に延びる板状のプレート部(例えば、後述の筐体プレート部71)を備え、前記筒部は、前記プレート部に形成された貫通孔(例えば、後述の貫通孔713)に挿通した状態で当該プレート部と溶接によって接合されていることが好ましい。
【0013】
(6)この場合、前記先端部の外周面と前記筒部の内周面との間には、それぞれ弾性率が異なる複数の弾性部材(例えば、後述の第1粘弾性部材571、第2粘弾性部材84、及び第3粘弾性部材86,87)が設けられることが好ましい。
【0014】
(7)この場合、前記先端部の外周面には筒状の機器側弾性部材(例えば、後述の第1粘弾性部材571)が設けられ、前記筒部の内周面には、前記機器側弾性部材の外周面の少なくとも一部を覆う内周面を有しかつ前記機器側弾性部材と異なる弾性率を有する筐体側弾性部材(例えば、後述の第2粘弾性部材84、及び第3粘弾性部材86,87)が設けられ、前記内部機器が静止した状態では、前記筐体側弾性部材の内周面と前記機器側弾性部材の外周面との間に間隙(例えば、後述の間隙89a,89b)が設けられることが好ましい。
【0015】
(8)この場合、前記筒部は、前記先端部の鉛直方向上方側を覆うカバー部材(例えば、後述のカバー部材83)と、水平方向に延びる板状でありかつ前記機器側弾性部材を支持するプレート部(例えば、後述の筐体プレート部81)と、を備え、前記機器側弾性部材の底部と前記プレート部との間には、前記底部と前記プレート部との間の摩擦を低減する摩擦低減部材(例えば、後述のベアリング574)が設けられることが好ましい。

【発明の効果】
【0016】
(1)本発明の盤によれば、箱状の筐体の底部には台座部が設けられ、保護対象である内部機器の下部はこの台座部に固定される。また内部機器の上部には、その先端部が棒状である機器側固定部材の基端部を固定し、筐体のフレームの一部でありかつ台座部よりも高い位置に設けられたものを筐体側固定部材とする。またこの筐体側固定部材には、機器側固定部材の先端部の延在方向と平行に延びかつこの先端部の外周面を覆う筒部を設け、さらにこの先端部の外周面と筒部の内周面との間には弾性部材を設ける。したがって内部機器の上部は、管状の弾性部材により全方向への変位が規制される。したがって筐体内部の内部機器に振動が伝達した場合、その上部の振動は、棒状の先端部を全周から覆う管状の弾性部材によって効率的に抑制される。特に本発明の盤では、筐体側固定部材に筒部を設け、この筒部の内周面と先端部の外周面との間に弾性部材を設けることにより、弾性部材が大きく変形するような振動が発生した場合であっても、先端部がこの筒部の内径よりも大きく変位することはない。また本発明の盤では、筐体側固定部材として筐体のフレームの一部を利用する。このため本発明の盤では、内部機器に機器側固定部材を設け、筐体側固定部材に機器側固定部材の先端部を覆う筒部を設け、さらにこれら先端部の外周面と筒部の内周面との間に弾性部材を設けるだけでよいので、メンテナンスが容易であり、かつ筐体内のレイアウトの障害となるおそれもなく、またコストが大幅に増加することもない。以上により本発明の盤によれば、簡易な構成で内部機器の振動を十分に抑制することができる。
【0017】
(2)本発明の盤では、筐体を構成する複数の縦フレームのうち隣接する2つを連結する複数の横フレームのうちの1つを筐体側固定部材として利用する。このように一般的な盤の筐体が備える横フレームを筐体側固定部材として流用することにより、コストを抑制することができる。また例えば地震によって筐体全体が振動した場合、その内部の内部機器の上部は水平方向に沿って変位するところ、本発明では水平方向に延びる横フレームを筐体側固定部材として利用することにより、内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0018】
(3)筐体全体が振動した場合、その内部の内部機器の上部は、長手方向よりも短手方向に沿って大きく変位する。そこで本発明の盤では、内部機器を、その短辺と筐体側固定部材とが対向しかつ略平行になるように筐体の内部に設ける。また内部機器の上部に固定する機器側固定部材の先端部は、その短辺に対し略垂直な向きに延びる。これにより、短手方向に沿って大きく変位する内部機器の振動を、筐体側固定部材によって効率的に抑制できる。
【0019】
(4)本発明の盤では、筒部の内周面に管状の弾性部材を溶着させ、さらに機器側固定部材の先端部をこの管状の弾性部材の内部に挿通する。このように、筐体の内部に内部機器を設ける際には、その上部に固定された先端部を管状の弾性部材の内部に挿通するだけでよいので、メンテナンスを容易にしつつ内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0020】
(5)本発明の盤によれば、機器側固定部材の先端部の外周面を覆う筒部は、筐体側固定部材のプレート部に形成された貫通孔に挿通した状態で、このプレート部と溶接によって接合される。本発明の盤によれば、簡易な構成によって内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0021】
(6)本発明の盤では、先端部の外周面と筒部の内周面との間に、それぞれ弾性率が異なる複数の弾性部材を設けることにより、振動の荷重や変位の大きさに応じて各弾性部材を段階的に変形させることができるので、各弾性部材によって揺れのエネルギーを適切に吸収し、内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0022】
(7)本発明の盤によれば、先端部の外周面に筒状の機器側弾性部材を設け、筒部の内周面に機器側弾性部材と異なる弾性率を有する筐体側弾性部材を設ける。また内部機器が静止した状態では、筐体側弾性部材の内周面と機器側弾性部材の外周面との間には、間隙が設けられる。本発明の盤によれば、変位が非常に小さい微弱な振動は上記間隙によって抑制できる。また、この微弱な振動よりも大きな荷重や変位が発生する振動に対しては、荷重や変位の大きさに応じて機器側弾性部材及び筐体側弾性部材を段階的に変形させることができるので、各弾性部材によって揺れのエネルギーを適切に吸収し、内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0023】
(8)本発明の盤によれば、機器側弾性部材の底部と、この底部を支持する筐体側固定部材のプレート部との間には、両部材間の摩擦を低減する摩擦低減部材が設けられる。内部機器に振動が伝達すると、内部機器には、機器側固定部材の先端部を中心としたモーメントが生じる場合がある。本発明の盤によれば、この先端部の外周面に管状の機器側弾性部材を設け、さらにこの機器側弾性部材とプレート部との間に摩擦低減部材を設ける。これにより、上記のようなモーメントを機器側弾性部材によって適切に吸収し、内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るインバータ盤の構成を示す破断斜視図である。
図2A】台座部の側面図である。
図2B】台座部の側面図である。
図3】棒部材、筒部材、及び粘弾性部材の長手方向に沿った断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るインバータ盤の構成を示す破断斜視図である。
図5】機器側固定部材の正面図である。
図6図4の線B−Bに沿った断面図である。
図7】内部機器が振動した場合における先端部の短手方向に沿った変位の大きさと、第1〜第3粘弾性部材及び間隙が機能を発揮する領域との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るインバータ盤1の構成を示す破断斜視図である。インバータ盤1は、図示しないダイナモメータに電力を供給する制御盤の一種であり、箱状の筐体2と、この筐体2の内部に設けられる内部機器3と、を備える。なお以下では、本発明をインバータ盤1に適用した場合について説明するが、本発明はこれに限らない。本発明は、インバータ盤1の他、制御盤、配電盤、動力盤、及び分電盤等にも適用できる。
【0026】
内部機器3は、例えば複数の変圧器によって構成され、その全体形状は図1に示すように略立方体状であり、上面視では略矩形状である。従って地震や移動等により筐体2全体が振動した場合、筐体2の内部に設けられた内部機器3の上部32は、上面視における長手方向LDよりも短手方向SDに沿って大きく変位する。すなわち短手方向SDは、筐体2の内部における内部機器3の振動方向でもある。
【0027】
筐体2は、それぞれ鉛直方向に沿って延びる複数の柱状の縦フレーム21a,21b,21c,21dと、縦フレーム21a〜21dに対し垂直な方向、すなわち水平方向に沿って延び、これら複数の縦フレーム21a〜21dのうち隣接する2つを連結する複数の横フレーム7と、縦フレーム21a〜21dに固定された複数の板状の板金25a,25b,25cと、筐体2の底部を構成する2本のレール部材26a,26bと、これらレール部材26a,26bに設けられた台座部27と、を備える。なお図1には、複数の横フレームのうち、台座部27よりも高い位置に設けられかつ短手方向SDに沿って延びる横フレーム7のみを図示する。またこれら縦フレーム21a〜21dや横フレーム7には、例えばスチール材が用いられる。
【0028】
台座部27は、長手方向LDに沿って延びる2本の柱部材271,272と、短手方向SDに沿って延びこれら2本の柱部材271,272を連結する2つの固定治具273,274と、これら固定治具273,274の短手方向SDに沿った両端部と柱部材271,272とを連結する複数の連結ボルト275a,275b,275cと、2本の柱部材271,272の底部においてそれぞれ回転自在に設けられた複数のころ部材279a,279b,279cと、を備える。
【0029】
内部機器3の下部31は、ボルトやねじ等の図示しない締結部材によって台座部27の固定治具273,274に固定される。また内部機器3が固定された台座部27は、ころ部材279a〜279cをレール部材26a,26bに沿って転がしながら板金25a側へ押し込むことにより、図1に示すように筐体2の内部に納められる。また台座部27を筐体2の内部に納めた後は、レール部材26a,26b上での移動を規制するため、ボルトやねじ等の図示しない締結部材によってレール部材26a,26bに固定される。これにより内部機器3は、その上部32の上面視における短辺部33に設けられる後述の機器側固定部材5と横フレーム7とが対向しかつ略平行になるように筐体2の内部に設けられる。
【0030】
図2Aは、台座部27の側面図である。より具体的には、台座部27を縦フレーム21c,21d側から長手方向LDに沿って視た図であり、内部機器3と台座部27との接続構造を示す図である。図2Aに示すように、固定治具273の短手方向SDに沿って柱部材271側の端部273aは、2枚の板状の防振ゴム276a,277aを介挿して、連結ボルト275aを締結することによって、柱部材271に固定されている。防振ゴム276aは、連結ボルト275aと端部273aとの間に介挿され、防振ゴム277aは、端部273aと柱部材271との間に介挿される。また固定治具273の短手方向SDに沿って柱部材272側の端部273cは、2枚の板状の防振ゴム276c,277cを介挿して、連結ボルト275cを締結することによって、柱部材272に固定されている。防振ゴム276cは、連結ボルト275cと端部273cとの間に介挿され、防振ゴム277cは、端部273cと柱部材272との間に介挿される。
【0031】
なお図2Aには、固定治具273と柱部材271とを2枚の防振ゴムを介挿して固定した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図2Bに示すように、固定治具273と柱部材271とを、1枚の防振ゴムを介挿して固定してもよい。この場合、防振ゴム277aは、端部273aと柱部材271との間に介挿することが好ましい。また防振ゴム277cは、端部273cと柱部材272との間に介挿することが好ましい。
【0032】
図1に戻り、内部機器3の上部32のうち、上面視における短辺部33には、機器側固定部材5が設けられている。機器側固定部材5は、複数本(図1の例では、3本)の棒状の棒部材51,52,53と、これら棒部材51〜53を内部機器3の上部32に固定する板状の取付ステー55と、を備える。棒部材51〜53は、短辺部33から横フレーム7側へ長手方向LDに沿って延びる。これら棒部材51〜53は、短手方向SDに沿って略等間隔で短辺部33に固定されている。これら棒部材51,52,53の先端部51a,52a,53aは、後述の筒部材72,73,74内に覆われる。また棒部材51,52,53の基端部51b,52b,53bは、取付ステー55によって短辺部33に固定されている。なお棒部材51〜53には、例えばスチール材が用いられる。
【0033】
横フレーム7は、水平方向に沿って延びる板状であり、隣接する2つの縦フレーム21a,21bを連結する。横フレーム7は、上記3本の棒部材51〜53の先端部51a〜53aの延在方向に対し垂直に延びる板状の筐体プレート部71と、この筐体プレート部71に設けられ、棒部材51〜53の先端部51a〜53aを囲う円筒状の筒部材72,73,74と、これら棒部材51〜53の外周面と筒部材72〜74の内周面との間に設けられた粘弾性部材75,76,77と、を備える。なお、筐体プレート部71や筒部材72〜74には、例えばスチール材が用いられる。
【0034】
図3は、棒部材51、筒部材72、及び粘弾性部材75の長手方向LDに沿った断面図である。なお、他の棒部材52,53、筒部材73,74、及び粘弾性部材76,77は、棒部材51、筒部材72、及び粘弾性部材75とほぼ同じ構成であるので、断面図の図示及び詳細な説明は省略する。
【0035】
筒部材72は、棒部材51の先端部51aの延在方向(すなわち、長手方向LD)と平行に延びる筒状である。また筒部材72は、棒部材51の先端部51aの外径よりも大きな内径を有する。また図3に示すように、筒部材72は、内部機器3に固定された棒部材51の先端部51aの外周面を囲う。
【0036】
また図3に示すように、筒部材72の長手方向LDに沿った全長は、筐体プレート部71の厚みよりも大きい。このような筒部材72は、筐体プレート部71に予め形成された貫通孔713に挿通した状態で、貫通孔713の縁と筒部材72の外周面とを溶接によって接合することによって、筐体プレート部71に固定される。
【0037】
粘弾性部材75は、筒部材72と平行に延びる管状であり、筒部材72の内径と略等しい外径を有する。粘弾性部材75は、粘性及び弾性を有する材料(例えば、ゴム)によって構成される。粘弾性部材75は、筒部材72の内部に設けられる。より具体的には、粘弾性部材75は、その外周面を筒部材72の内周面に溶着することによって、筒部材72の内部に固定される。また粘弾性部材75の内径は、棒部材51の先端部51aの外径と略等しい。また内部機器3を筐体2の内部に設置した状態では、棒部材51の先端部51aは粘弾性部材75の内部に挿通される。
【0038】
本実施形態のインバータ盤1によれば、以下の効果を奏する。
(1)インバータ盤1によれば、筐体2の底部には台座部27が設けられ、保護対象である内部機器3の下部31はこの台座部27に固定される。また内部機器3の上部32には、その先端部51a〜53aが棒状である棒部材51〜53の基端部51b〜53bを固定する。また、筐体2のフレームの一部でありかつ台座部27よりも高い位置に設けられた横フレーム7には、棒部材51〜53の先端部51a〜53aの延在方向と平行に延びかつこれら先端部51a〜53aの外周面を覆う筒部材72〜74を設け、さらにこれら先端部51a〜53aの外周面と筒部材72〜74の内周面との間には粘弾性部材75〜77を設ける。したがって内部機器3の上部32は、管状の粘弾性部材75〜77により全方向への変位が規制される。したがって筐体2の内部の内部機器3に振動が伝達した場合、その上部32の振動は、棒状の先端部51a〜53aを全周から覆う管状の粘弾性部材75〜77によって効率的に抑制される。特にインバータ盤1では、横フレーム7に筒部材72〜74を設け、これら筒部材72〜74の内周面と先端部51a〜53aの外周面との間にそれぞれ粘弾性部材75〜77を設けることにより、粘弾性部材75〜77が大きく変形するような振動が発生した場合であっても、先端部51a〜53aがこれら筒部材72〜74の内径よりも大きく変位することはない。またインバータ盤1では、筐体2を構成する複数のフレームの1つである横フレーム7を利用する。このためインバータ盤1では、内部機器3に棒部材51〜53を設け、横フレーム7に棒部材51〜53の先端部51a〜53aを覆う筒部材72〜74を設け、さらにこれら先端部51a〜53aの外周面と筒部材72〜74の内周面との間に弾性部材を設けるだけでよいので、メンテナンスが容易であり、かつ筐体2内のレイアウトの障害となるおそれもなく、またコストが大幅に増加することもない。以上によりインバータ盤1によれば、簡易な構成で内部機器の振動を十分に抑制することができる。
【0039】
(2)インバータ盤1では、筐体2を構成する複数の縦フレーム21a〜21dのうち隣接する2つを連結する複数のフレームのうちの1つである横フレーム7を流用して、棒部材51〜53の振動を抑制する。このように一般的なインバータ盤1の筐体2が備える横フレーム7を流用することにより、コストを抑制することができる。また例えば地震によって筐体2全体が振動した場合、その内部の内部機器3の上部32は水平方向に沿って変位するところ、インバータ盤1では水平方向に延びる横フレーム7を利用することにより、内部機器3の振動を効率的に抑制できる。
【0040】
(3)筐体2全体が振動した場合、その内部の内部機器3の上部32は、長手方向LDよりも短手方向SDに沿って大きく変位する。そこでインバータ盤1では、内部機器3を、その短辺部33と横フレーム7とが対向しかつ略平行になるように筐体2の内部に設置する。また内部機器3の上部32に固定する棒部材51〜53の先端部51a〜53aは、内部機器3の短辺部33に対し略垂直な向きに延びる。これにより、短手方向SDに沿って大きく変位する内部機器3の振動を、横フレーム7によって効率的に抑制できる。
【0041】
(4)インバータ盤1では、筒部材72〜74の内周面に管状の粘弾性部材75〜77を溶着させ、さらに棒部材51〜53の先端部51a〜53aをこの管状の粘弾性部材75〜77の内部に挿通する。このように、筐体2の内部に内部機器3を設ける際には、その上部32に固定された先端部51a〜53aを管状の粘弾性部材75〜77の内部に挿通するだけでよいので、メンテナンスを容易にしつつ内部機器3の振動を効率的に抑制できる。
【0042】
(5)インバータ盤1によれば、棒部材51〜53の先端部51a〜53aの外周面を覆う筒部材72〜74は、横フレーム7の筐体プレート部71に形成された貫通孔713に挿通した状態で、この筐体プレート部71と溶接によって接合される。インバータ盤1によれば、簡易な構成によって内部機器3の振動を効率的に抑制できる。
【0043】
なお上記実施形態では、内部機器3の上部32には、3本の棒部材51〜53を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。棒部材の数は、3本よりも少なくてもよいし、多くてもよい。棒部材の数は、少なくとも1本あればよい。
【0044】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係るインバータ盤1Aの構成を示す破断斜視図である。なお、以下のインバータ盤1Aの説明において、第1実施形態に係るインバータ盤1と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。本実施形態のインバータ盤1Aは、第1実施形態に係るインバータ盤1と、主に機器側固定部材5A及び横フレーム8の構成が異なる。
【0045】
内部機器3の上部32のうち、上面視における短辺部33には、機器側固定部材5Aが設けられている。機器側固定部材5Aは、一本の棒状の棒部材57と、この棒部材57を内部機器3の上部32に固定する板状の取付ステー58と、を備える。棒部材57は、短辺部33から横フレーム8側へ長手方向LDに沿って延びる。棒部材57の基端部57bは、取付ステー58によって短辺部33に固定されている。なお棒部材57には、例えばスチール材が用いられる。
【0046】
図5は、機器側固定部材5Aの正面図である。より具体的には、図5は、機器側固定部材5Aの棒部材57の先端部57aを基端部57b側から長手方向LDに沿って視た図である。図6は、図4の線B−Bに沿った断面図である。
【0047】
棒部材57の先端部57aの外周面には、先端部57aの延在方向に沿って延びる円筒状の第1粘弾性部材571が設けられている。第1粘弾性部材571は、粘性及び弾性を有する材料(例えば、ゴム)によって構成される。また第1粘弾性部材571の底部572には、第1粘弾性部材571と後述の筐体プレート部81との間の摩擦を低減する複数のベアリング574が設けられている。
【0048】
横フレーム8は、水平方向に沿って延びる板状であり、隣接する2つの縦フレーム21a,21bを連結する。横フレーム8は、上記棒部材57の先端部57aの延在方向と平行に延び先端部57aの鉛直方向下方側を覆う板状の筐体プレート部81と、この筐体プレート部81に設けられ棒部材57の先端部57aの鉛直方向上方側を覆うカバー部材83と、カバー部材83の内周面と棒部材57の先端部57aの外周面との間に設けられた第2粘弾性部材84及び第3粘弾性部材86,87と、を備える。
【0049】
カバー部材83は、棒部材57の先端部57aの鉛直方向上方側を覆うアーチ状であり、先端部57aの図5中左側において鉛直方向に沿って延びる板状のカバー左側部831と、先端部57aの図5中右側において鉛直方向に沿って延びる板状のカバー右側部832と、先端部57aの図5中上方側において水平方向に沿って延びる板状のカバー上部833と、を組み合わせて構成される。
【0050】
カバー部材83は、図5に示すように、カバー左側部831とカバー右側部832とカバー上部833とによって先端部57aを覆った状態で筐体プレート部81に、図示しない締結部材によって固定される。したがって、これらカバー部材83と筐体プレート部81とを組み合わせることによって、棒部材57の先端部57aの外周面を全周にわたって囲う筒部材88が形成される。
【0051】
第2粘弾性部材84は、棒部材57の先端部57aの鉛直方向上方側を覆うアーチ状である。この第2粘弾性部材84は、粘性及び弾性を有する材料(例えば、ゴム)によって構成される。なおこの第2粘弾性部材84の弾性率は、上述の第1粘弾性部材571の弾性率よりも低い。すなわち、第2粘弾性部材84は、第1粘弾性部材571よりも柔らかい。この第2粘弾性部材84は、カバー部材83の内周面に溶着されている。
【0052】
2つの第3粘弾性部材86,87は、それぞれ板状である。これら第3粘弾性部材86,87は、粘性及び弾性を有する材料(例えば、ゴム)によって構成される。これら第3粘弾性部材86,87の弾性率は、上述の第2粘弾性部材84の弾性率よりも低い。すなわち、第3粘弾性部材86,87は、第2粘弾性部材84よりも柔らかい。これら第3粘弾性部材86,87は、第2粘弾性部材84の内周面、より具体的には第2粘弾性部材84の図5中左側の左内周面841及び図5中右側の右内周面842にそれぞれ溶着されている。また図5に示すように、内部機器3が筐体2の内部において静止している状態では、第1粘弾性部材571の外周面と、これら第3粘弾性部材86,87の表面との間には、間隙89a,89bが設けられている。
【0053】
本実施形態のインバータ盤1Aによれば、以下の効果を奏する。
(6)インバータ盤1Aでは、先端部57aの外周面と筒部材88の内周面との間に、それぞれ弾性率が異なる第1粘弾性部材571、第2粘弾性部材84、及び第3粘弾性部材86,87を設けることにより、振動の荷重や変位の大きさに応じて各粘弾性部材を段階的に変形させることができるので、各粘弾性部材によって揺れのエネルギーを適切に吸収し、内部機器の振動を効率的に抑制できる。
【0054】
(7)インバータ盤1Aによれば、先端部57aの外周面に筒状の第1粘弾性部材571を設け、筒部材88の内周面に第1粘弾性部材571と異なる弾性率を有する第2粘弾性部材84及び第3粘弾性部材86,87を設ける。また内部機器3が静止した状態では、第3粘弾性部材86,87の内周面と第1粘弾性部材571の外周面573との間には、間隙89a,89bが設けられる。
【0055】
図7は、内部機器3が振動した場合における棒部材57の先端部57aの短手方向SDに沿った変位の大きさと、第1粘弾性部材571、第2粘弾性部材84、第3粘弾性部材86,87、及び間隙89a,89bが機能を発揮する領域との関係を示す図である。
【0056】
図7に示すように、例えば微弱な揺れが発生した場合には、先端部57aは、間隙89a,89bの間でのみ変位するため、先端部57aに設けられた第1粘弾性部材571は第3粘弾性部材86,87に接しないため、粘弾性部材571,84,86,87は、何れも機能しない。
【0057】
上述のように、第3粘弾性部材86,87は、3種類の粘弾性部材のうち最も弾性率が低く柔らかい。したがって第1粘弾性部材571が第3粘弾性部材86,87に接する程度に弱い揺れが発生した場合には、3種類の粘弾性部材のうち最も弾性率が低い第3粘弾性部材86,87が弾性変形することによって、棒部材57及びこの棒部材57が固定される内部機器3の振動が抑制される。
【0058】
また第2粘弾性部材84は、3種類の粘弾性部材のうち2番目に弾性率が低い。したがって強い揺れが発生した場合には、第3粘弾性部材86,87及び第2粘弾性部材84が弾性変形することによって、内部機器3の振動が抑制される。
【0059】
また第1粘弾性部材571は、3種類の粘弾性部材のうち最も弾性率が高い。したがって非常に強い揺れが発生した場合には、第3粘弾性部材86,87、第2粘弾性部材84、及び第1粘弾性部材571が弾性変形することによって、内部機器3の振動が抑制される。
【0060】
以上のように、インバータ盤1Aによれば、荷重や変位の大きさに応じて3種類の粘弾性部材を段階的に機能させることができるので、各種粘弾性部材によって揺れのエネルギーを適切に吸収し、内部機器3の振動を効率的抑制できる。
【0061】
(8)インバータ盤1Aによれば、第1粘弾性部材571の底部572と、この底部572を支持する筐体プレート部81との間には、両部材間の摩擦を低減するベアリング574が設けられる。内部機器3に振動が伝達すると、内部機器3には、棒部材57の先端部57aを中心としたモーメントが生じる場合がある。インバータ盤1Aによれば、この先端部57aの外周面に管状の第1粘弾性部材571を設け、さらにこの第1粘弾性部材571と筐体プレート部81との間にベアリング574を設ける。これにより、上記のようなモーメントを第1粘弾性部材571によって適切に吸収し、内部機器3の振動を効率的に抑制できる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A…インバータ盤(盤)
2…筐体(筐体)
21a,21b,21c,21d…縦フレーム
7,8…横フレーム
71,81…筐体プレート部(プレート部)
713…貫通孔
72,73,74,88…筒部材(筒部)
75,76,77…粘弾性部材(弾性部材)
26a,26b…レール部材(底部)
27…台座部
3…内部機器
31…下部
32…上部
33…短辺部(短辺)
5,5A…機器側固定部材
51,52,53,57…棒部材(機器側固定部材)
51a,52a,53a,57a…先端部
51b,52b,53b,57b…基端部
571…第1粘弾性部材(弾性部材、機器側弾性部材)
574…ベアリング(摩擦低減部材)
83…カバー部材
84…第2粘弾性部材(弾性部材、筐体側弾性部材)
86,87…第3粘弾性部材(弾性部材、筐体側弾性部材)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7