特許第6939306号(P6939306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939306
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20210909BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20210909BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-178882(P2017-178882)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-51676(P2019-51676A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康資
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161939(JP,A)
【文献】 実開昭55−063733(JP,U)
【文献】 特開2011−016327(JP,A)
【文献】 実開平06−007913(JP,U)
【文献】 特開平11−138547(JP,A)
【文献】 特開2008−037053(JP,A)
【文献】 実公昭46−023341(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 − 33/76
B29C 35/00 − 35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのビード部を加硫成形するビード成形面を有するビードリングを含むタイヤ加硫金型であって、
前記ビードリングは、前記ビード成形面に円周方向に合わせ目が現れるように嵌め合わされた内側リング片及び外側リング片を含み、
前記合わせ目は、前記内側リング片が前記外側リング片と接触する複数の接触部と、前記内側リング片が前記外側リング片から離間したエア抜き用の複数の離間部とを含み、
前記各離間部は、円周方向の長さが半径方向の幅よりも大きいスリット状であり、
前記離間部の円周方向の長さは、前記合わせ目の円周長さの5%以上である、
タイヤ加硫金型。
【請求項2】
タイヤのビード部を加硫成形するビード成形面を有するビードリングを含むタイヤ加硫金型であって、
前記ビードリングは、前記ビード成形面に円周方向に合わせ目が現れるように嵌め合わされた内側リング片及び外側リング片を含み、
前記合わせ目は、前記内側リング片が前記外側リング片と接触する複数の接触部と、前記内側リング片が前記外側リング片から離間したエア抜き用の複数の離間部とを含み、
前記各離間部は、円周方向の長さが半径方向の幅よりも大きいスリット状であり、
前記接触部は、4〜8つ設けられている、
タイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記各離間部の円周方向の長さは、前記各接触部の円周方向の長さよりも大きい、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
前記各接触部の円周方向の長さは、30mm以上である、請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
前記離間部の前記幅が0.1mm未満である、請求項1乃至4のいずれかに記載のタイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを加硫するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、タイヤのビード部のビードヒール面における加硫不良を減じるために、ビードリングの構造を改善したタイヤの加硫金型が提案されている。上記ビードリングは、2以上のリング片から形成され、一方側のリング片の分割面上に、スリット形成溝を具えている。スリット形成溝は、一方側のリング片の分割面と他方側のリング片の分割面との間で隙間が0.02〜0.08mmの排気スリットとして形成されている。上記排気スリットは、タイヤの加硫成形に際して、ビード部とビードリングのヒール成形面との間に残存する空気を排出するのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−161939号公報
【0004】
しかしながら、上記排気スリットには、加硫工程中にゴム部材から発生するガスや油分等が混入して固着する傾向があった。このため、上記ビードリングは、清掃時、排気スリットから固着したガスや油分を除去するのに大きな労力を費やしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ビードリングの清掃の労力を低減できるタイヤ加硫金型を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤのビード部を加硫成形するビード成形面を有するビードリングを含むタイヤ加硫金型であって、前記ビードリングは、前記ビード成形面に円周方向に合わせ目が現れるように嵌め合わされた内側リング片及び外側リング片を含み、前記合わせ目は、前記内側リング片が前記外側リング片と接触する複数の接触部と、前記内側リング片が前記外側リング片から離間したエア抜き用の複数の離間部とを含み、前記各離間部は、円周方向の長さが半径方向の幅よりも大きいスリット状である。
【0007】
本発明のタイヤ加硫金型において、前記各離間部の円周方向の長さは、前記各接触部の円周方向の長さよりも大きいのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤ加硫金型において、前記離間部の円周方向の長さは、前記合わせ目の円周長さの5%以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤ加硫金型において、前記接触部は、4〜8つ設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤ加硫金型において、前記離間部の前記幅が0.1mm未満であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ加硫金型のビードリングは、ビード成形面に円周方向に合わせ目が現れるように嵌め合わされた内側リング片及び外側リング片を含んでいる。合わせ目は、内側リング片が外側リング片と接触する複数の接触部と、内側リング片が外側リング片から離間したエア抜き用の複数の離間部とを含んでいる。各離間部は、円周方向の長さが半径方向の幅よりも大きいスリット状である。このような各離間部は、ゴム部材から発生するガスや油分等が固着しても、ビードリング清掃時に容易にこれらを除去することができるため、ビードリングの清掃の労力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のタイヤ加硫金型の断面図である。
図2】ビードリングの斜視図である。
図3】ビードリングの側面図である。
図4】内側リング片と外側リング片との合わせ目の部分拡大図である。
図5】比較例にタイヤ加硫金型の合わせ目の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ加硫金型1の断面図が示されている。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ加硫金型1は、その内側に、未加硫の生タイヤ2の外面2sを成形する成形面を具えている。生タイヤ2は、タイヤ加硫金型1内で加熱されるとともに、内側から、膨張したブラダー3によってタイヤ加硫金型1の成形面側に押圧される。これにより、生タイヤ2が加硫成形され、空気入りタイヤが得られる。
【0014】
生タイヤ2は、トレッド部4と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびるサイドウォール部5と、そのタイヤ半径方向内側に配されたビード部6とを具えている。生タイヤ2は、例えば、トロイド状のカーカスや、カーカスの外側に配されたベルト層等、公知の構成を具えることができる。
【0015】
本実施形態のタイヤ加硫金型1は、トレッドセグメント7、サイドウォールセグメント8及びビードリング10を含んでいる。
【0016】
トレッドセグメント7は、トレッド部4の外面を加硫成形する。サイドウォールセグメント8は、サイドウォール部5の外面を加硫成形する。トレッドセグメント7及びサイドウォールセグメント8は、空気入りタイヤを成形する一般的な金型の構成を具えており、ここでの詳細な説明は省略される。
【0017】
ビードリング10は、ビード部6を加硫成形するビード成形面10sを有している。本実施形態のビード成形面10sは、例えば、ビード部6のビードヒール面を含んで成形する。
【0018】
図2には、ビードリング10の斜視図が示されている。図3には、ビードリング10をビード成形面10s側からタイヤ軸方向に見た側面図が示されている。図2及び図3に示されるように、ビードリング10は、内側リング片11及び外側リング片12を含んでいる。外側リング片12は、内側リング片11のタイヤ半径方向外側に脱着自在に嵌合されている。内側リング片11及び外側リング片12は、円環状にのびている。内側リング片11と外側リング片12とは、ビード成形面10sに円周方向に合わせ目13が現れるように嵌合されている。
【0019】
図4には、内側リング片11と外側リング片12との合わせ目13の部分拡大図が示されている。図4に示されるように、合わせ目13は、内側リング片11が外側リング片12と接触する複数の接触部14と、内側リング片11が外側リング片12から離間したエア抜き用の複数の離間部15とを含む。接触部14と離間部15とは、円周方向に交互に設けられている。加硫成形時、ビード成形面10sとビード部6の外面との間の空気は、離間部15及びこれに接続された空気排出路(図示省略)を通って、金型外部へ排出される。なお、理解し易いように、図3及び図4において、離間部15は着色されている。
【0020】
各離間部15は、円周方向の長さL1が半径方向の幅d1よりも大きいスリット状である。各離間部15は、ゴム部材から発生するガスや油分等が固着しても、ビードリング清掃時に容易にこれらを除去することができるため、ビードリング10の清掃の労力を低減することができる。特に、内側リング片11と外側リング片12とを分解したときには、離間部15が円周方向に大きく露出するので、さらにビードリング10の清掃が容易になる。また、離間部15は、円周方向の幅が小さくかつ円周方向に多数設けられた従来のものと比較して、上記ガスや油分による汚れが詰まりにくく、長期に亘って高いエア抜き性能を発揮することができる、また、本発明の離間部15を有するビードリング10は、従来のものと比較して、離間部15の加工に要するコストを抑制することができる。
【0021】
本実施形態の離間部15は、例えば、一定の幅でビードリング10の円周方向に沿って延びている。このため、本実施形態の離間部15は、円周方向に沿って滑らかに湾曲した円弧状である。但し、離間部15は、このような態様に限定されるものではない。
【0022】
図3に示されるように、離間部15の円周方向の長さL1は、例えば、合わせ目の円周長さの少なくとも5%以上であるのが望ましい。このような離間部15は、十分に長い円周方向の長さを有するので、ガスや油分が固着しても詰まり難く、長期に亘ってエア抜き効果を発揮し、ビードリング10の清掃の頻度を低減させることができる。
【0023】
離間部15の上記長さL1が過度の大きい場合、内側リング片11と外側リング片12とが位置ずれし、成形されるタイヤのユニフォミティが悪化するおそれがある。内側リング片11と外側リング片12との位置ずれを抑制しつつ、上述の効果を得るために、離間部15の円周方向の長さL1は、好ましくは合わせ目13の円周長さの10%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
【0024】
同様の観点から、各離間部15の円周方向の長さL1は、各接触部14の円周方向の長さL2よりも大きいのが望ましい。また、各離間部15の上記L1は、互いに等しいのが望ましい。これにより、エア抜き効果が円周方向に亘って均等に得られ、ひいては成形されるタイヤのユニフォミティが向上し得る。
【0025】
図4に示されるように、離間部15の幅d1は、例えば、0.1mm未満であるのが望ましい。このような離間部15は、ビード部6の外面にバリが発生するのを抑制しつつ、エア抜き効果を発揮することができる。
【0026】
より具体的には、離間部15の幅d1は、より好ましくは0.08mm以下、より好ましくは0.06mm以下であり、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.04mm以上である。このような離間部15は、上記バリの発生を抑制しつつ、高いエア抜き効果を発揮することができる。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態の接触部14は、内側リング片11に設けられたタイヤ半径方向外側に突出する突部16が外側リング片12に接触して構成されている。他の態様では、例えば、外側リング片12に設けられたタイヤ半径方向内側に突出する突部が、内側リング片11に接触する態様でも良い。
【0028】
接触部14は、例えば、円周方向に等間隔で設けられているのが望ましい。これにより、内側リング片11と外側リング片12とを正確に嵌合させることができる。また、接触部14は、例えば、少なくとも3つ、より好ましくは4〜8つ設けられているのが望ましい。このような接触部14は、上述のエア抜き効果を得つつ、内側リング片11と外側リング片12との芯合わせを確実に行うことができ、両者の位置ずれを抑制することができる。
【0029】
同様の観点から、接触部14の円周方向の長さL2は、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下である。
【0030】
以上、本発明の一実施形態のタイヤ加硫金型が詳細に説明されたが、本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲において、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0031】
実施例として、図4に示されるように、スリット状に延びる離間部を有するビードリングを具えたタイヤ加硫金型が表1の仕様に基づき準備された。比較例として、図5に示されるように、ビードリングの内側リング片Aと外側リング片Bとの合わせ目aについて、円周方向の長さが半径方向の幅よりも小さい離間部bが円周方向に多数設けられたタイヤ加硫金型が準備された。各タイヤ加硫金型を用いて、一定本数のタイヤを加硫成形し、ビード部の外観不良率及びビードリングのメンテナンス性がテストされた。
【0032】
<ビード部の外観不良率>
サイズ235/45R19のタイヤが300本加硫成形され、ビード部とビードリングのヒール成形面との間に空気が残存して発生したビード部の外観不良の発生率が測定された。
【0033】
<ビードリングのメンテナンス性>
上記加硫成形後、各ビードリングを清掃し、ビードリングに固着した汚れを完全に除去するのに要した時間が測定された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が小さい程、ビードリングのメンテナンス性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0034】
【表1】
【0035】
テストの結果、比較例のタイヤ加硫金型は、離間部に汚れが詰まり易く、ビード部の外観不良率がやや高いことが確認できた。これに対し、実施例のタイヤ加硫金型は、比較例よりもビード部の外観不良率が低く、ビードリング清掃の頻度を低減できることが確認できた。また、実施例のタイヤ加硫金型は、離間部に付着した汚れを短時間で清掃でき、ビードリングのメンテナンス性が優れていることが確認できた。
【符号の説明】
【0036】
6 ビード部
10 ビードリング
10s ビード成形面
11 内側リング片
12 外側リング片
13 合わせ目
14 接触部
15 離間部
図1
図2
図3
図4
図5