(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に開示の技術を適用すれば紙粉の影響を低減したり、スキューを少なく抑えたりすることはできるが、それでも突発ズレを完全に無くすことはできない。そして、この突発ズレは、用紙単位に突然発生するため、有効な対策を行うには、まず、突発ズレの発生を的確に予測することが重要になる。しかし、突発ズレを的確に予測する処理は、処理量も多くまたメモリ等の資源も多く必要とする。そのため、これを装置単独で行うと装置の負担が大きいという問題がある。なお、突発ズレに限らず、各種の装置において生じる障害についても、装置に大きな負担をかけることなく障害の発生を発生前に予測して、適切な対策を講じることが望まれる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、装置の負担を軽減しつつ、装置で生じる突発ズレ等の障害の発生を的確に予測することのできる障害予測システム、該システムで使用されるサーバおよびそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]判定対象の装置とサーバが連携して前記装置で生じる所定の障害の発生を予測する障害予測システムであって、
前記サーバは、
前記障害の発生を予測するためのデータを複数の装置から収集する収集部と、
前記収集部が収集した前記データを解析して、予め定めた標準の予測モデルを一の装置に対応するように調整するための重要特徴量を導出する解析部と、
前記解析部が導出した前記重要特徴量を前記一の装置に送信する重要特徴量送信部と
を有し、
前記装置は、
前記サーバに自装置の前記データを送信する送信部と、
前記サーバから前記重要特徴量を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記重要特徴量で前記標準の予測モデルを調整する調整部と、
前記調整部で調整後の予測モデルに自装置の前記データを適用して前記障害の発生を予測する予測部と、
を有
し、
前記解析部は、前記一の装置で前記障害が発生する確率が所定値以上の場合は、前記確率が前記所定値未満の場合に比べて、調整後の前記予測モデルによる検知精度が高まるように前記重要特徴量を設定する ことを特徴とする障害予測システム。
【0012】
上記発明では、サーバは各装置から収集したデータに基づいて、標準の予測モデルを一の装置に適用するように調整するための重要特徴量を導出して該当の装置に送信し、これを受信した装置は該受信した重要特徴量で標準の予測モデルを自装置に合うように調整し、調整後の予測モデルに測定値等を代入して障害の発生を予測する。このように、サーバと装置が役割分担し連携するので、装置の負担を少なく抑えつつ、高い精度の予測を行うことができる。
【0014】
上記発明では、サーバの解析部は、一の装置からのデータに基づいて、その装置で障害が発生する可能性が高まっていることが分かった場合に、予測モデルによる障害の検知精度(感度)が高まるように、重要特徴量を設定する。
[2]判定対象の装置とサーバが連携して前記装置で生じる所定の障害の発生を予測する障害予測システムであって、
前記サーバは、
前記障害の発生を予測するためのデータを複数の装置から収集する収集部と、
前記収集部が収集した前記データを解析して、予め定めた標準の予測モデルを一の装置に対応するように調整するための重要特徴量を導出する解析部と、
前記解析部が導出した前記重要特徴量を前記一の装置に送信する重要特徴量送信部と
を有し、
前記装置は、
前記サーバに自装置の前記データを送信する送信部と、
前記サーバから前記重要特徴量を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記重要特徴量で前記標準の予測モデルを調整する調整部と、
前記調整部で調整後の予測モデルに自装置の前記データを適用して前記障害の発生を予測する予測部と、
を有し、
前記解析部は、複数の装置から収集したデータから所定の属性毎に障害の発生に関する傾向を認識し、この傾向を加味して一の装置からのデータに基づいて該一の装置に関する重要特徴量を導出する
ことを特徴とする障害予測システム。
【0015】
[3]前記予測モデルに適用する前記データは、前記装置が備えるセンサの測定値を含み、
前記重要特徴量は、前記測定値と比較される閾値、および、前記閾値との比較結果に与える重みを含む、
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の障害予測システム。
【0016】
上記発明では、重要特徴量を閾値および重み(実施の形態でのゲイン)とすることで、センサの特性のズレやばらつきに対応するように予測モデルを調整することができる。
【0017】
[4]前記装置は、前記予測部により前記障害が発生すると予測された場合に、前記障害の発生を回避する処理を行う障害回避部をさらに有する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の障害予測システム。
【0018】
[5]前記装置は、障害の発生が予測されたジョブを、前記障害回避部で障害の発生を回避する措置を施して実行する
ことを特徴とする[4]に記載の障害予測システム。
[
6]前記装置は、前記障害の原因を特定する原因特定部をさらに有する
ことを特徴とする[1]乃至[
5]のいずれか1つに記載の障害予測システム。
[7]前記原因特定部は、重要特徴量を加味して前記障害の原因を特定する
ことを特徴とする[6]に記載の障害予測システム。
【0019】
[
8]前記装置は用紙上に画像を形成する画像形成装置であり、
前記障害は、用紙の搬送不良による画像の位置ズレである
ことを特徴とする[1]乃至[
7]のいずれか1つに記載の障害予測システム。
【0020】
[
9]判定対象の装置とサーバが連携して前記装置で生じる所定の障害の発生を予測する障害予測システムの前記サーバであって、
判定対象の装置で生じる障害の発生を予測するためのデータを複数の装置から収集する収集部と、
前記収集部が収集した前記データを解析して、予め定めた標準の予測モデルを一の装置に対応するように調整するための重要特徴量を導出する解析部と、
前記重要特徴量で前記標準の予測モデルを調整し、該調整後の予測モデルに自装置の前記データを適用して前記障害の発生を予測する前記一の装置に、前記解析部が導出した前記重要特徴量を送信する重要特徴量送信部と、
を有
し、
前記解析部は、前記一の装置で前記障害が発生する確率が所定値以上の場合は、前記確率が前記所定値未満の場合に比べて、調整後の前記予測モデルによる検知精度が高まるように前記重要特徴量を設定する
ことを特徴とするサーバ。
【0022】
[
10]前記予測モデルに適用する前記データは、前記装置が備えるセンサの測定値を含み、
前記重要特徴量は、前記測定値と比較される閾値、および、前記閾値との比較結果に与える重みを含む、
ことを特徴とする[
9]に記載のサーバ。
【0023】
[
11]前記装置は用紙上に画像を形成する画像形成装置であり、
前記障害は、用紙の搬送不良による画像の位置ズレである
ことを特徴とする[
9]または[10]に記載のサーバ。
【0024】
[
12]判定対象の装置とサーバが連携して前記装置で生じる所定の障害の発生を予測する障害予測システムの前記サーバで実行されるプログラムであって、
前記サーバが、判定対象の装置で生じる障害の発生を予測するためのデータを複数の装置から収集する収集ステップと、
前記サーバが、前記収集ステップで収集した前記データを解析して、予め定めた標準の予測モデルを一の装置に対応するように調整するための重要特徴量を導出する解析ステップと、
前記重要特徴量で前記標準の予測モデルを調整し、該調整後の予測モデルに自装置の前記データを適用して前記障害の発生を予測する前記一の装置に、前記サーバが前記解析ステップで導出した前記重要特徴量を送信する送信ステップと、
を有
し、
前記解析ステップでは、前記一の装置で前記障害が発生する確率が所定値以上の場合は、前記確率が前記所定値未満の場合に比べて、調整後の前記予測モデルによる検知精度が高まるように前記重要特徴量を設定する
ことを特徴とするプログラム。
【0026】
[13]前記予測モデルに適用する前記データは、前記装置が備えるセンサの測定値を含み、
前記重要特徴量は、前記測定値と比較される閾値、および、前記閾値との比較結果に与える重みを含む、
ことを特徴とす
る[12]に記載のプログラム。
【0027】
[14]前記装置は用紙上に画像を形成する画像形成装置であり、
前記障害は、用紙の搬送不良による画像の位置ズレである
ことを特徴とする[
12]または[13]に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る障害予測システム、サーバおよびプログラムによれば、装置の負担を軽減しつつ、装置で生じる突発ズレ等の障害の発生を的確に予測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る障害予測システム2の構成例を示す図である。障害予測システム2は、判定対象の装置である画像形成装置10と、サーバ50を備えている。画像形成装置10とサーバ50は社内ネットワークに接続されている。以後、画像形成装置10をMFPとも記す。
【0032】
サーバ50はさらに社外の広域ネットワークにも接続されている。広域ネットワークには、画像形成装置10と同一機種や他の機種の世界各地の画像形成装置が多数接続されている。また、
図1では社内ネットワーク側の画像形成装置10を1台のみ示したが、複数台であってもよい(通常は複数台)。社内ネットワークには、画像形成装置10の販売会社のコンピュータ装置70等も接続されている。
【0033】
障害予測システム2では、画像形成装置10とサーバ50が連携して、画像形成装置10で発生する所定の障害の発生を予測する。すなわち、予測のためのすべての解析を画像形成装置10で行うと、画像形成装置10の負担(メモリ等の資源や処理時間)が大きいので、画像形成装置10とサーバ50に負担を分散させている。
【0034】
ここでは、障害の発生を予測するための標準の予測モデルを各画像形成装置10に配布しておき、該標準の予測モデルを個々の画像形成装置10に対応するように調整するための重要特徴量をサーバ50が導出する。
【0035】
図1に示す障害予測システム2では、画像形成装置10が障害の発生を予測した場合にアラームを販売会社のコンピュータ装置70に通知する等が行われる。
【0036】
図2は、障害予測システム2の他の構成例を示している。
図2では、サーバ50は広域ネットワークに接続されておらず、社内ネットワークのみに接続されている。
図1に示すシステムと同様にして障害の発生を予測するが、サーバ50は、社内ネットワークに接続された画像形成装置10からのみデータの収集を行う。
【0037】
本実施の形態では、予測対象の障害が、突発ズレである場合を例に説明する。画像形成装置10は、突発ズレの要因と考えられる用紙のスキューや紙粉による搬送ローラのスリップを検出するためのセンサを有している。
【0038】
図3は、画像形成装置10の用紙搬送経路に配置したセンサ群の一例を示している。給紙トレイからレジストローラ41までの間の搬送路の適所には、搬送路の幅方向の中心に配置されて搬送される用紙の先端を検知する先端検知センサ42と、搬送路の幅方向の中心に対して左右対象に所定距離離して配置された一対の傾きセンサ43(R,L)が設けてある。たとえば、これらのセンサは搬送路を挟んで搬送路の上方と下方に対向して配置された発光部と受光部で構成された光センサになっている。
【0039】
図3の例では、先端検知センサ42は、上流から順に先端検知センサ42a、42b、42cの3個が設けてあり、傾きセンサ43は、上流側の傾きセンサ43a(R,L)と下流側の傾きセンサ43b(R,L)が設けてある。
【0040】
図4は、用紙4が正常に搬送されている場合とスリップしている場合に先端検知センサ42a〜42cが用紙の先端を検出する時間差の例を示している。正常な場合、用紙4の先端が上流の先端検知センサ42aで検出されてからその下流の先端検知センサ42bで検出されるまでの時間差は100ms、用紙4の先端が先端検知センサ42bで検出されてからその下流の先端検知センサ42cで検出されるまでの時間差は300msになっている。
【0041】
一方、スリップがある場合は、正常な場合に比べて各時間差が長くなる。
図4の例では、用紙4の先端が先端検知センサ42aで検出されてから先端検知センサ42bで検出されるまでの時間差が120msと正常な場合に比べて20ms長くなっており、先端検知センサ42aと先端検知センサ42bの間の搬送路でスリップが生じていることがわかる。
【0042】
図5は、用紙4がスキュー無しに搬送されている場合とスキューした状態で搬送されている場合の傾きセンサ43a(R,L)の出力例を示している。用紙を検出中はセンサの出力値がHighになる。スキュー無しの場合、左右一対の傾きセンサ43a(R,L)は、同時に用紙の先端を検出する。一方、用紙がスキューしている場合は、右の傾きセンサ43a(R)が用紙の先端を検出するタイミングと左の傾きセンサ43a(L)が用紙の先端を検出するタイミングにズレ(時間差)が生じる。
図5に示したスキューありの例は、用紙先端の右角より用紙先端の左角が上流になる向きに用紙がスキューしている場合の信号例となっている。
【0043】
図6は、画像形成装置10の概略構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を有している。CPU11にはバスを通じてROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、不揮発メモリ14、ハードディスク装置15、画像読取部16、自動原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)17、プリンタ部18、画像処理部19、操作パネル20、ファクシミリ通信部23、ネットワーク通信部24などが接続されている。操作パネル20は、操作部21と表示部22を備えている。
【0044】
CPU11は、OSプログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。ROM12やハードディスク装置15には、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が各種処理を実行することで画像形成装置10の各機能が実現される。
【0045】
RAM13は、CPU11がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。RAM13には、ハードディスク装置15から読み出されたプログラムも格納される。
【0046】
不揮発メモリ14は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、各種設定情報の保存などに使用される。
【0047】
ハードディスク装置15は、大容量不揮発の記憶装置であり、ジョブ、ジョブのデータ、画像データなどのほか各種のプログラムやデータが記憶される。またハードディスク装置15には標準の予測モデル38が記憶されている。
【0048】
画像読取部16は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。画像読取部16は、例えば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動ユニットと、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0049】
自動原稿搬送部17は、原稿台にセットされた原稿をその最上のものから1枚ずつ順に繰り出して搬送し、画像読取部16の読み取り位置を通過させて所定の排紙位置へ排紙する機能を果たす。画像読取部16は、プラテンガラス上に載置された原稿を読み取る機能と、自動原稿搬送部17によって搬送される原稿を順次読み取る機能を備えている。
【0050】
プリンタ部18は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は他の方式でもかまわない。プリンタ部18は、前述した傾きセンサ43、傾きセンサ43などの各種センサを備えている。
【0051】
なお、プリンタ部18は、転写位置より下流に配置されて搬送中の用紙および用紙上の画像を読み取るラインセンサを有することが望ましい。該ラインセンサによる読み取り画像から用紙上の画像が突発ズレを起こしているかを確認することができる。
【0052】
画像処理部19は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理などを行う。
【0053】
操作パネル20は、操作部21と表示部20を備えている。表示部22は各種の操作画面を表示する機能を果たし、液晶ディスプレイなどで構成される。操作部21はユーザから各種の操作を受けるスタートボタンやテンキーなど各種のハードキーと、表示部22の表示面に設けられたタッチスクリーンで構成される。
【0054】
ファクシミリ通信部22は、ファクシミリ機能を備えた装置と電話回線を通じて画像データを送受信する機能を果たす。
【0055】
ネットワーク通信部24は、ネットワークを通じてPC5や各種の外部装置との間で通信する機能を果たす。
【0056】
このほか画像形成装置10は、装置の各部の動作状況を検出するセンサ、装置内外の温度や湿度を検出するセンサ、日時の情報を取得する機能などを備えている。
【0057】
CPU11は、プログラムを実行することで、データ送信部31、重要特徴量受信部32、調整部33、予測部34、障害回避部35、原因特定部36、通知部37としての機能を果たす。
【0058】
データ送信部31は、自装置の先端検知センサ42、傾きセンサ43等のセンサの測定値、装置内外の温度、湿度、装置の動作状態、設置位置などの各種のデータを収集し、ネットワーク通信部24を用いてサーバ50へ繰り返し送信する機能を果たす。たとえば、1日1回、直近1日分のデータを送信する。
【0059】
重要特徴量受信部32は、サーバ50から重要特徴量をネットワーク通信部24にて受信しハードディスク装置15あるいは不揮発メモリ14に記憶させる機能を果たす。
【0060】
調整部33は、サーバ50から受信した重要特徴量により予測モデル38を自装置にフィットするように調整する機能を果たす。
【0061】
予測部34は、重要特徴量を用いて調整後の予測モデルに自装置の先端検知センサ42や傾きセンサ43が計測した測定値等を代入して演算を行い、突発ズレの障害が生じるか否かを予測する。該予測は、たとえば、画像形成動作の実行中に用紙毎に行われる。
【0062】
障害回避部35は、予測部34の予測結果が、突発ズレの発生ありの場合に、その突発ズレの発生を未然に防ぐための措置を実行する。たとえば、用紙の位置ズレに対応するように画像の転写位置を用紙の幅方向にシフトさせる自動補正を行う。
【0063】
原因特定部36は、突発ズレ発生の原因を特定する。たとえば、原因が、給紙トレイから用紙をピックアップする際に生じたスキューであるか、用紙セット時に生じた用紙先端のダメージによるスキューであるか、搬送途中で生じたスキューであるか、紙粉による搬送ローラのスリップであるか等を特定する。原因特定部36は、重要特徴量および先端検知センサ42や傾きセンサ43などの測定値に基づいて該特定を行う。
【0064】
通知部37は、突発ズレが発生することが予測される場合に、アラームで画像形成装置10のユーザに通知したり、販売会社のコンピュータ装置70に通知したりする。
【0065】
図7は、サーバ50の概略構成を示している。サーバ50は、当該サーバ50の動作を統括的に制御する制御部としてのCPU51を有している。CPU51にはバスを通じてROM52、RAM53、不揮発メモリ54、ハードディスク装置55、操作部56、表示部57、ネットワーク通信部58などが接続されている。
【0066】
CPU51は、OSプログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどの各種プログラムを実行する。ROM52やハードディスク装置55には、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU51が各種処理を実行することでプリントサーバ50の各機能が実現される。
【0067】
RAM53は、CPU51がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリなどとして使用される。RAM13には、ハードディスク装置55から読み出されたプログラムも格納される。
【0068】
不揮発メモリ54は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、各種設定情報の保存などに使用される。
【0069】
ハードディスク装置55は、大容量不揮発の記憶装置であり、各種のプログラムやデータを記憶する。ハードディスク装置55には、各画像形成装置10から収集したデータなども保存される。
【0070】
表示部57は、各種の操作画面、設定画面等を表示する機能を果たす。表示部57は液晶ディスプレイなどで構成される。操作部56は各種の操作を受ける機能を果たす。ネットワーク通信部58は、ネットワークを通じて画像形成装置10や販売会社のコンピュータ装置70、その他の各種の外部装置と通信する機能を果たす。
【0071】
CPU51は、プログラムの実行により、収集部61、解析部62、重要特徴量送信部63としての機能を果たす。
【0072】
収集部61は、障害(ここでは突発ズレ)の発生を予測するためのデータを複数の画像形成装置10から収集する。収集したデータはハードディスク装置55に順次に蓄積される。
【0073】
解析部62は、収集部61が収集しハードディスク装置55に蓄積されているデータを解析して、標準の予測モデル38を、着目する画像形成装置10に対応するように調整するための重要特徴量を導出する。ここでは、重要特徴量は社内ネットワークに接続されている画像形成装置10のそれぞれについて導出される。
【0074】
重要特徴量送信部63は、解析部62が導出した重要特徴量を該当の画像形成装置10へ送信する。サーバ50が重要特徴量を導出して画像形成装置10へ送信する動作は、1週間に1度、月に1度などでよく、送信の周期はシステムや画像形成装置10の状態に応じて任意に設定すればよい。
【0075】
次に、障害予測システム2の動作について説明する。
【0076】
図8は、障害予測システム2が行う障害発生の予測に係る動作を示すシーケンス図である。各画像形成装置10は、障害(突発ズレ)の発生に関連するデータとして、各種のセンサの測定値や設置環境、機械デバイスのばらつき情報などをサーバ50へ逐次送信する(P1)。
【0077】
サーバ50は社内ネットワークに接続された画像形成装置10のみならず、広域ネットワークを介して接続された世界各地の多数の画像形成装置10からデータを収集する(P2)。
【0078】
サーバ50は、多数の画像形成装置10から収集したデータおよび着目する画像形成装置10から受信したデータに基づいて、標準の予測モデル38を、着目する一の画像形成装置10に対応するように調整するための重要特徴量を導出し(P4)、これを着目する画像形成装置10へ送信する(P5)。
【0079】
画像形成装置10はサーバ50から重要特徴量を受信し(P6)、この受信した重要特徴量で標準の予測モデル38を調整して自装置にフィットさせる(P7)。そして、調整後の予測モデルに各センサの測定値等を代入して演算を行って障害の発生を予測する(P8)。
【0080】
なお、サーバ50は、社内ネットワークや広域ネットワークに接続された多数の画像形成装置10からデータを収集することで、設置地域や設置からの経過時間などの属性毎に障害の発生に関する傾向を認識する。そして、着目する画像形成装置10から受信したデータと着目する画像形成装置10の属性に対応する傾向とを総合的に判断して、着目する画像形成装置10に対する重要特徴量を導出する。これにより、着目する画像形成装置10からのデータのみに基づいて重要特徴量を導出する場合に比べて、より的確な(傾向に基づく予測を含めて)重要特徴量を導出することができる。
【0081】
なお、
図1の構成のように世界各地の画像形成装置10からデータを収集することが望ましいが、
図2の構成のように社内ネットワークに接続された画像形成装置10からデータを収集する構成であっても、多数の画像形成装置10が社内ネットワークに接続されていれば、それらから傾向を分析することができる。
【0082】
画像形成装置10の障害回避部35は、突発ズレの発生が予測された場合に、これを回避するための措置を実行する。たとえば、用紙のスキュー量やスキュー方向に応じて、画像の転写位置を用紙の幅方向にシフトさせる。さらに通知部37は、突発ズレに関するアラームをユーザや販売会社のコンピュータ装置70に通知する。ここでは、障害回避部35が突発ズレを防ぐように自動的に回避措置を実行してもなお突発ズレの発生が予測される場合に、アラームで画像形成装置10のユーザに突発ズレの発生を通知してクリーニング等を指示する。それでもまだ突発ズレの発生が予測される、あるいは実際に発生する場合は販売会社のコンピュータ装置70へ通知する。実際に突発ズレが生じたことは、前述のラインセンサで検出したり、目視確認したユーザからその旨の入力操作を受けて認識したりする。
【0083】
なお、ここでは、予測モデル38を重要特徴量で調整した後、この調整後の予測モデルを用いて障害の発生を予測する例を示したが、調整と予測を同時に行うようにしてもよい。たとえば、予測モデルの関数に与えるパラメータを、各センサの測定値、それぞれのセンサに対する閾値、それぞれのセンサに対するゲイン、とし、これらすべてを同時に予測モデルに投入して、予測結果を演算するようにしてもよい。
【0084】
次に、突発ズレを予測する場合の重要特徴量について説明する。標準の予測モデル38は、画像形成装置10の環境が予め定めた理想の温度・湿度であり、各センサや機械デバイス(DCモータやクラッチなど)が予め定めた理想の特性を有するなどの条件が整う場合に、突発ズレの発生を的確に予測できるように作成されている。
【0085】
実際の装置では、温度や湿度は周辺環境や装置の稼動状況に応じて変動する。また、センサやモータ等の特性にもばらつきがある。そのため、標準の予測モデル38にセンサの測定値を代入しただけでは、的確な予測はできない。
【0086】
重要特徴量は、標準の予測モデル38を、各画像形成装置10の周辺環境、センサ・機械デバイスの特性やばらつきを加味して調整するための調整値である。ここでは、重要特徴量は、閾値とゲインとする。閾値は、各センサによる測定値と比較される値であり、たとえば、測定値が閾値を超えると突発ズレが生じるといった判断を行う。ゲインは、閾値に基づく判断に対する感度(重み、あるいは信頼性)である。
【0087】
予測モデルでは、多数の項目の測定値に基づいて総合的に突発ズレの発生を予測する。そのため、傾きセンサ43aに対する重要特徴量、傾きセンサ43bに対する重要特徴量、というようにそれぞれのセンサの測定値等に対して重要特徴量(閾値とゲイン)を導出する。
【0088】
<閾値について>
たとえば、標準の予測モデル38では、センサAの測定値が100を超えると突発ズレが発生すると判断するように設定されているが、着目する画像形成装置10ではセンサAの出力値の平均値が理想の値から+20のずれがあることを画像形成装置10から収集したデータに基づいて認識されたとする。この場合、センサAに対する閾値として120を設定する。
【0089】
<ゲインについて>
特定の状態をセンサAで測定した場合の出力値が安定して同じ値ならばセンサAの信頼性は高く、センサAの出力値と閾値との比較による判断結果の信頼性も高いと言える。このような場合にはゲインを大きくし(たとえば、1にする)、センサAの出力値と閾値との比較による判断結果が、突発ズレの総合判断に寄与する割合を高める。
【0090】
一方、特定の状態をセンサAで測定した場合の出力値が同じ値に安定せず、ばらつきがある場合(分散している場合)には、センサAの信頼性やセンサAの出力値と閾値との比較による判断結果の信頼性は下がる。このような場合は、ゲインを小さくし(たとえば、0.7)、センサAの出力値と閾値との比較による判断結果が、突発ズレの総合判断に寄与する割合を小さくする。
【0091】
さらに、直近の所定期間に収集したデータの各測定値から、スキュー量が大きい状態が頻繁となって突発ズレの生じる可能性が高まっていることが分かる場合(突発ズレの発生確率が所定値以上の場合)には、ゲインを大きくして、予測モデルの感度を高めて、検知精度を上げる。一方、直近の所定期間に収集したデータの各測定値から、スキュー量が小さい状態が続き、突発ズレの生じる可能性が低いことが分かる場合(突発ズレの発生確率が所定値未満の場合)には、ゲインを小さくして感度を下げ、突発ズレの発生の誤検知を防ぐ、というように重要特徴量を導出する。ここではゲインで検知精度を調整する例を示したが、閾値の設定の仕方で検知精度を調整してもよい。
【0092】
次に、サーバ50が重要特徴量を導出する際の手順の一例を示す。
(1)各機械(画像形成装置10)からのデータを取得する。
(a)突発ズレに関連する全センサの測定値(最大、最小、平均値)
(b)周辺環境値
(c)機械の中のデバイスのうち、ばらつきの有る箇所の情報
【0093】
(2)各センサの測定値に関するバラツキを(a)〜(c)の情報をもとに5段階にカテゴライズする。
1.+に大きくズレ
2.+に小さくズレ
3.ズレほぼなし
4.−に小さくズレ
5.−に大きくズレ
このとき、世界各地(あるいは社内ネットワークに接続された多数)の画像形成装置10から収集したデータに基づいて認識した傾向と、着目する一の画像形成装置10から収集したデータとに基づいて、該着目する画像形成装置10の所定の項目の測定値に対する重要特徴量を決定する。たとえば、亜熱帯地方に設置した画像形成装置10では、センサAの値が小さくなる傾向がある場合に、着目する画像形成装置10も亜熱帯地方にあり、該着目する画像形成装置10から収集したデータのみに基づけば、センサAについて、「1.+に大きくズレ」に分類するところを、上記の傾向を考慮して「2.+に小さくズレ」に修正するといったことを行う。
【0094】
(3)上記のカテゴライズに基づいて、この機械の各センサの測定値に対する閾値とゲインを決定する。なお、閾値に係るカテゴライズとゲインに係るカテゴライズは別々に行うことが望ましい。ゲインについては、出力値のばらつき(分散)の程度や直近所定期間のデータに基づく突発ズレの発生可能性の高低に基づいてカテゴライズする。
【0095】
次に、突発ズレ発生の原因の特定について説明する。
(A)搬送中の用紙のスキューを検出する傾きセンサ43がスキューを検出した(左右のセンサが用紙先端を検出したタイミングに差異(時間差)が生じた)場合、その差異を検出した傾きセンサ43が搬送経路のどの位置にあるか等によって原因箇所を特定する。
【0096】
(A−1)給紙トレイの近くの傾きセンサ43で差異が検出された場合
用紙トレイから用紙をピックアップする際にダブルフィード防止のためにファンで用紙に向けて送った風の影響で用紙がスキュー気味に給紙された、もしくは、用紙トレイに用紙を補給する際に用紙先端に与えた折れ等のダメージ箇所が引っ掛かってスキューしたと特定する。
【0097】
(A−2)搬送経路の途中の傾きセンサ43で差異が検出された場合
差異の検出された傾きセンサ43のある箇所周辺の搬送ローラに問題があると特定する。たとえば、紙粉、汚れ、磨耗、ダメージ(メカ的な故障)などがその搬送ローラに生じていると考えられる。
【0098】
(B)一の先端検知センサ42が用紙先端を検知してから次の先端検知センサ42が用紙先端を検知するまでの時間差が正常時より長い場合
それらの先端検知センサ42の間にある搬送ローラに問題がある。
たとえば、紙粉、汚れ、磨耗、ダメージ(メカ的な故障)などがその搬送ローラに生じていると考えられる。
【0099】
なお、突発ズレ発生の原因を特定する場合においても、重要特徴量(閾値やゲイン)を使用することでセンサの出力値のズレやばらつきが判断結果に影響しないようにする。
【0100】
このように障害予測システム2では、サーバ50が各画像形成装置10から収集したデータに基づいて重要特徴量を導出してこれを画像形成装置10に通知し、画像形成装置10は通知された重要特徴量を用いて標準の予測モデル38を自装置のセンサや機械デバイスの特性・ばらつきに対応するように調整し、調整後の予測モデルを用いて突発ズレの発生を予測するので、画像形成装置10が単独ですべての処理を行う場合に比べて、画像形成装置10での処理や資源の負担を軽減しつつ、予測の検知精度を高く維持することができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0102】
実施の形態では、突発ズレを例に説明したが、発生を予測する障害はこれに限定されるものではない。また、重要特徴量を閾値とゲインとする例を説明したが、標準の予測モデルを各装置にフィットさせるために有効な調整値であれば、閾値とゲインに限定されるものではない。予測モデルの関数に含まれる任意の係数の値などでもよい。