(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像形成装置に収納されている用紙の残り枚数、前記画像形成装置に収納されているトナーの残量、および感光体の寿命到来までに印刷可能な用紙の枚数のうち少なくともいずれか1つと、前記印刷データの総ページ数とに基づいて、前記画像形成装置にて前記プリントジョブの全ての印刷物を出力できるか否かを判断する判断手段をさらに備えた、請求項3に記載の画像形成装置。
前記受付手段は、近距離無線通信により携帯端末から前記ユーザーを特定する情報を受信することにより、前記ログイン操作を受け付ける、請求項10に記載の画像形成システム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施の形態では、画像形成装置および他の画像形成装置がMFPである場合について説明する。画像形成装置および他の画像形成装置は、MFPの他、ファクシミリ装置、複写機、またはプリンターなどのMFP以外の画像形成装置であってもよい。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施の形態における画像形成システムの概略的な構成を示す図である。
【0028】
図1を参照して、本実施の形態における画像形成システムは、複数のMFP100と、複数の携帯端末200と、サーバー300と、複数の端末400とを備えている。複数のMFP100と、複数の携帯端末200、サーバー300、および複数の端末400の各々とは、ネットワークNTを通じて相互に接続されており、相互に通信を行う。
【0029】
ネットワークNTは、たとえば有線または無線のLAN(Local Area Network)などの専用回線を用いたものである。ネットワークNTは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)のプロトコルを用いて各種機器を接続する。ネットワークNTに接続された機器は、お互いに各種データのやり取りが可能となっている。ネットワークNTにはアクセスポイントAPが設けられている。ネットワークに接続された2つの機器が無線通信を行う場合、それらの機器はアクセスポイントAPを通じて無線通信を行うことが可能である。なお、画像形成システムは、ネットワークNTに接続された上述以外の機器を備えていてもよい。
【0030】
複数のMFP100の各々と複数の携帯端末200の各々とは、上述のネットワークNTを通じた通信に加えて、後述するNFC(Near Field Radio Communication)を用いて、アクセスポイントAPなどの中継機器を介さない直接の通信を相互に行うことが可能である。
【0031】
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるMFP100の構成を示すブロック図である。
【0032】
図2を参照して、MFP100は、
図1に示す複数のMFP100のうち任意のMFP100である。MFP100は、メイン回路110と、自動原稿搬送装置111と、原稿読取部112と、画像形成部113と、給紙部114と、後処理部115と、画像処理部116と、消耗品管理部117と、操作パネル120とを含んでいる。メイン回路110のCPU(Central Processing Unit)101と、自動原稿搬送装置111、原稿読取部112、画像形成部113、給紙部114、後処理部115、画像処理部116、消耗品管理部117、および操作パネル120の各々とは、相互に接続されている。
【0033】
メイン回路110は、CPU101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、記憶装置104と、通信インターフェース部105と、ファクシミリ部106とを含んでいる。CPU101には、ROM102、RAM103、記憶装置104、通信インターフェース部105、およびファクシミリ部106の各々が接続されている。
【0034】
CPU101は、スキャンジョブ、コピージョブ、メール送信ジョブ、およびプリントジョブなどの各種ジョブについて、MFP100全体の制御を行う。またCPU101は、ROM102に記憶された制御プログラムを実行する。
【0035】
ROM102は、たとえばフラッシュROMである。ROM102には、MFP100の動作を行うための各種プログラムと、各種固定データとが格納されている。ROM102は、書換え不可能なものであってもよい。
【0036】
RAM103は、CPU101のメインメモリである。RAM103は、CPU101が制御プログラムを実行するときに必要なデータや画像データを一時的に記憶するためなどに用いられる。RAM103は、MFP100が実行するジョブに関してユーザーから受け付けた設定を一時的に記憶する。
【0037】
記憶装置104は、たとえばHDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置であり、MFP100の動作に関する各種データを記憶する。
【0038】
通信インターフェース部105は、CPU101からの指示に従って、TCP/IPなどの通信プロトコルによって、ネットワークNTに接続された機器との通信を行う。
【0039】
ファクシミリ部106は、ファクシミリデータの送受信を制御する。
【0040】
自動原稿搬送装置111は、原稿読取部112の読み取り位置まで原稿を搬送する。
【0041】
原稿読取部112は、原稿の画像を読み取り、読み取った画像のデータを生成する。
【0042】
画像形成部113は、用紙に画像を形成する。
【0043】
給紙部114は、MFP100内部の搬送経路に沿って用紙を搬送する。
【0044】
後処理部115は、画像形成後の用紙に対して、ステープル処理、折り処理、パンチ処理などの必要な後処理を行う。
【0045】
画像処理部116は、プリントジョブの印刷データのRIP処理を行う。また画像処理部116は、他のMFP100に対してプリントジョブの印刷データを転送する際に必要な処理を行う。
【0046】
消耗品管理部117は、MFP100に収納されている用紙の残り枚数、MFP100に収納されているトナーの残量、または感光体の寿命到来までに印刷可能な用紙の枚数などを管理する。
【0047】
操作パネル120は、表示部121と、NFC通信部122と、操作部123とを含んでいる。表示部121は、タッチパネルディスプレイであり、各種情報を表示する。NFC通信部122は、NFC機能を有する機器(携帯端末200など)との間で近距離無線通信を行う。操作部123は、各種操作を受け付ける。操作部123は、表示部121に表示されたソフトウェアキー123aと、ハードウェアキー123bとを含んでいる。
【0048】
図3は、本発明の第1の実施の形態における携帯端末200の構成を示すブロック図である。
【0049】
図3を参照して、携帯端末200は、
図1に示す複数の携帯端末200のうち任意の携帯端末200である。携帯端末200は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、記憶装置204と、通信インターフェース部205と、操作部206と、表示部207と、NFC通信部208とを含んでいる。CPU201には、ROM202、RAM203、記憶装置204、通信インターフェース部205、操作部206、表示部207、およびNFC通信部208の各々がバスを介して接続されている。
【0050】
CPU201は、携帯端末200全体の制御を行う。またCPU201は、ROM202に記憶された制御プログラムを実行する。
【0051】
ROM202は、たとえばフラッシュROMである。ROM202には、携帯端末200の動作を行うための各種プログラムなどが格納されている。
【0052】
RAM203は、CPU201のメインメモリである。RAM203は、CPU201が制御プログラムを実行するときに必要なデータを一時的に記憶するためなどに用いられる。
【0053】
記憶装置204は、たとえばHDDなどの補助記憶装置であり、携帯端末200を所持するユーザーを特定する情報(ここでは、ユーザー名、ユーザーのログインID、およびユーザーのパスワード)や、携帯端末200の動作に関わる各種データなどを記憶する。
【0054】
通信インターフェース部205は、アクセスポイントAPとの間で無線通信を行う。
【0055】
操作部206は、ユーザーから携帯端末200に関する各種指示を受け付ける。
【0056】
表示部207は、携帯端末200に関する各種情報を表示する。
【0057】
NFC通信部208は、NFC機能を有する機器(MFP100など)との間で近距離無線通信を行う。
【0058】
図4は、本発明の第1の実施の形態におけるサーバー300の構成を示すブロック図である。
【0059】
図4を参照して、サーバー300は、ネットワークNT上の複数のMFP100を使用するユーザーの認証、およびネットワークNT上の複数のMFP100で実行するジョブの管理を行う。サーバー300は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、記憶装置304と、通信インターフェース部305と、操作部306と、表示部307などを含んでいる。CPU301には、ROM302、RAM303、記憶装置304、通信インターフェース部305、操作部306、および表示部307の各々がバスを介して接続されている。
【0060】
CPU301は、サーバー300全体の制御を行う。またCPU301は、ROM302に記憶された制御プログラムを実行する。
【0061】
ROM302は、たとえばフラッシュROMである。ROM302には、サーバー300の動作を行うための各種プログラムと、各種固定データとが格納されている。ROM302は、書換え不可能なものであってもよい。
【0062】
RAM303は、CPU301のメインメモリである。RAM303は、CPU301が制御プログラムを実行するときに必要なデータや画像データを一時的に記憶するためなどに用いられる。RAM303はCPU301のキャッシュメモリ領域を有していてもよい。
【0063】
記憶装置304は、たとえばHDDなどの補助記憶装置であり、ID(Identification)テーブル311やジョブテーブル312などのサーバー300の動作に関わる各種データなどを記憶する。
【0064】
通信インターフェース部305は、CPU301からの指示に従って、TCP/IPなどの通信プロトコルによって、ネットワークNTを介してMFP100との通信を行う。
【0065】
操作部306は、ユーザーからサーバー300に関する各種指示を受け付ける。
【0066】
表示部307は、サーバー300に関する各種情報を表示する。
【0067】
図5は、本発明の第1の実施の形態においてサーバー300の記憶装置304に記憶されているIDテーブル311の一例を示す図である。なお、
図5における「TB_A」、「TB_B」、および「TB_C」は、複数の携帯端末200のうちいずれかの携帯端末200に相当する。
図5における「PC_A」、「PC_B」、および「PC_C」は、複数の端末400のうちいずれかの端末400に相当する。
【0068】
図5を参照して、IDテーブル311は、ネットワークNT上の複数のMFP100を使用するユーザーの認証に用いられるテーブルである。IDテーブル311は、ユーザーを特定する情報(ここでは、ユーザー名、ユーザーのログインID、およびユーザーのパスワード)が記載される項目と、ユーザーが所有する携帯端末200または端末400を特定する情報(ここでは端末名および端末のIPアドレス)が記載される項目とを含んでいる。
【0069】
IDテーブル311によれば、たとえば「Satou」というユーザーは、「Abcdef」というログインIDと、「1dj2d9」というパスワードとを有している。また「Satou」というユーザーは、「PC_A」という端末400と、「TB_A」という携帯端末200とを所持している。「PC_A」という端末400のIPアドレスは「00.000.111.111」であり、「TB_A」という携帯端末200のIPアドレスは「00.000.111.222」である。
【0070】
IDテーブル311は、ユーザーを特定する情報と、そのユーザーが所持する外部機器の情報とが記載されたものであればよい。IDテーブル311の情報は、ユーザーまたは画像形成システムの管理者などによって管理される。
【0071】
図6は、本発明の第1の実施の形態においてサーバー300の記憶装置304に記憶されているジョブテーブル312の一例を示す図である。なお、
図6における「MFP_A」は、複数のMFP100のうちいずれかのMFP100(
図7におけるMFP100a)に相当する。
【0072】
図6を参照して、ジョブテーブル312は、ネットワークNT上の複数のMFP100で実行するジョブの管理に用いられるテーブルである。ジョブテーブル312は、ジョブを実行したユーザーの情報と、ジョブに関する情報(ここではジョブの種類およびサーバー300がジョブを受信した日時)が記載される項目と、ジョブの実行先が記載される項目と、ジョブの実行状態(進捗)が記載される項目とを含んでいる。ジョブテーブル312では、より上の位置に登録されているジョブである程、実行の優先順位が高くなっている(先に実行される)。
【0073】
ジョブテーブル312によれば、「MFP_A」という名前のMFP100には、3つのジョブが投入されている。「Okazaki」というユーザーが実行したプリントジョブは、3つのジョブのうち最も先に投入されたジョブであり、印刷物を出力中である。「Nakayama」というユーザーが実行したファクシミリ送信ジョブは、3つのジョブのうち2番目に投入されたジョブであり、送信待ちの状態である。「Takahara」というユーザーが実行したファクシミリ送信ジョブは、3つのジョブのうち最も後に投入されたジョブであり、印刷物を出力待ちの状態である。
【0074】
複数のMFP100の各々は、新たなジョブを受信した場合やジョブの状態が変化した場合などに、ジョブテーブル312に記載される情報をサーバー300に通知する。サーバー300は情報を通知された場合に、通知された情報をジョブテーブル312に登録したり、通知された情報の内容にジョブテーブル312を更新したりする。サーバー300は、MFP100から要求を受け付けた場合に、ジョブテーブル312に記載された情報のうち要求された情報をそのMFP100に送信する。
【0075】
なお、IDテーブル311およびジョブテーブル312は、サーバー300に記憶される代わりにMFP100に記憶されていてもよい。この場合、IDテーブル311およびジョブテーブル312を記憶しているMFP100が、ネットワークNT上の複数のMFP100を使用するユーザーの管理およびネットワークNT上の複数のMFP100で実行するジョブの管理を行う。
【0076】
続いて、本実施の形態における画像形成システムの動作について説明する。
【0077】
図7は、本発明の第1の実施の形態における画像形成システムの動作を概念的に示す図である。
【0078】
図7を参照して、ユーザーURは、複数の携帯端末200のうちの1つである携帯端末200aと、複数の端末400のうちの1つである端末400a(外部機器の一例)とを所持している。ユーザーURは、複数のMFP100のうちの1つであるMFP100a(画像形成装置の一例)に対して、端末400aを通じてログイン操作を行い、プリントジョブを投入(実行指示)する操作を行う。端末400aは、ユーザーURを特定する情報と、ユーザーURのプリントジョブの印刷データとをMFP100aに送信する(処理PR1)。
【0079】
MFP100aは、端末400aから受信したユーザーURを特定する情報をサーバー300に転送する。サーバー300は、受信した情報に基づいてIDテーブル311を用いてユーザーURを認証し、認証結果をMFP100aに通知する。MFP100aはユーザーURの認証に成功した場合、受信したプリントジョブの情報をサーバー300に通知する。サーバー300は、通知された情報をジョブテーブル312に登録する(処理PR2)。
【0080】
図8は、本発明の第1の実施の形態において、ユーザーURのプリントジョブが登録された直後のジョブテーブル312を示す図である。
【0081】
図8を参照して、ジョブテーブル312には、
図6の内容に対して「Miura」という名前のユーザーURが実行したプリントジョブが新たに登録されている。このジョブは印刷物を出力待ちの状態である。
【0082】
図7および
図8を参照して、MFP100aは、画像処理部116(変換手段の一例)を用いて、ユーザーURのプリントジョブの印刷データのRIP処理を開始する(処理PR3)。一方でMFP100aは、ユーザーURのプリントジョブの印刷物を直ちに出力することができない状況にある。先に実行すべき「Okazaki」、「Nakayama」、および「Takahara」のジョブが存在し、「Okazaki」のジョブを実行中であるためである。
【0083】
なお、MFP100aがユーザーURのプリントジョブの印刷物を直ちに出力することができない状況としては、上述のようにMFP100aが他のジョブを実行中であるという状況の他、MFP100aにジャム、用紙切れ、または消耗品の寿命到来などのトラブルが発生している状況であってもよい。MFP100aにトラブルが発生している状況では、MFP100aはトラブルの発生を通知する表示を操作パネル120に対して行ってもよい。
【0084】
図7を参照して、ユーザーURは、MFP100aに印刷物を取りに行き、MFP100aがユーザーURのプリントジョブの印刷物を直ちに出力することができない状況であることを知る(行動AC1)。ユーザーURは急いでおり、他のMFP100でプリントジョブの印刷物を直ちに出力することを望んでいる。ユーザーURは、複数のMFP100のうちの空いている(ジョブを実行していない)MFP100b(他の画像形成装置の一例)に行き、MFP100bの操作パネル120(受付手段の一例)に自らの携帯端末200aをタッチすることにより、MFP100bに対してログイン操作を行う(行動AC2)。
【0085】
MFP100bは、操作パネル120を通じてユーザーURからのログイン操作を受け付けた場合に、近距離無線通信により携帯端末200aからユーザーURを特定する情報を受信する(処理PR4)。
【0086】
MFP100bは、携帯端末200aから受信したユーザーURを特定する情報をサーバー300に転送する。サーバー300は、受信した情報に基づいてIDテーブル311を用いてユーザーURを認証し、認証結果をMFP100bに通知する。サーバー300はユーザーURの認証に成功した場合、ジョブテーブル312を参照し、出力待ちの状態のユーザーURのプリントジョブを検索する。サーバー300は、検索の結果、出力待ちの状態のユーザーURのプリントジョブが登録されていれば、そのプリントジョブの情報をMFP100bに送信する(処理PR5)。
【0087】
MFP100bは、出力待ちの状態のユーザーURのプリントジョブをサーバー300から受信した場合に、通信インターフェース部105(要求手段の一例)を用いて、受信したプリントジョブの実行先となっているMFP100aに対して、出力待ちの状態のユーザーURのプリントジョブの転送を要求する。MFP100aは、ユーザーURのプリントジョブの印刷データのRIP処理を行っている間に、MFP100bから転送の要求を受信する(処理PR6)。
【0088】
MFP100aは、MFP100bから転送の要求を受信した場合に、ユーザーURのプリントジョブをMFP100bに転送することを決定する。MFP100aは、ユーザーURのプリントジョブを転送することを決定した場合に(決定した後で)、画像処理部116(作成手段の一例)を用いて、変換後データおよび変換前データを作成する(処理PR7)。MFP100aは、通信インターフェース部105(送信手段の一例)を用いて、作成した変換後データおよび変換前データをMFP100bに送信する(処理PR8)。これにより、ユーザーURのプリントジョブはMFP100bに転送される。
【0089】
MFP100bは、変換後データおよび変換前データを受信すると、画像処理部116(他の変換手段の一例)を用いて、変換前データに対してRIP処理を行い、得られたラスターデータと、変換後データとを1つの印刷データに結合する(処理PR9)。MFP100bは、画像形成部113(出力手段の一例)を用いて、結合した印刷データの印刷物を出力する(処理PR10)。
【0090】
図9は、本発明の第1の実施の形態における変換後データおよび変換前データの作成方法、ならびにこれらの結合方法を示す図である。なお
図9において、RIP処理が完了した部分またはラスターデータはハッチングで示されており、RIP処理が完了していない部分またはベクターデータは白地で示されている。
【0091】
図9(a)を参照して、ユーザーURのプリントジョブの印刷データPDは、全部で8頁分の画像のベクターデータよりなっている。MFP100aは、印刷データPDを受信すると、ユーザーURのプリントジョブの印刷物を直ちに出力することができるか否かに関わらず、印刷データPDに対してRIP処理を行う。RIP処理とは、印刷データのベクターデータをラスターデータに変換する処理である。MFP100aは、印刷データPDに対して頁順にRIP処理を行う。
【0092】
MFP100aが印刷データをMFP100bに転送することを決定した時点(処理PR6の時点)で、MFP100aは1頁目の最初から4頁目の途中までRIP処理を完了している。言い換えれば、MFP100aは、1頁目から4頁目の途中までの印刷データPDの部分については、ベクターデータおよびラスターデータを有している。MFP100aは、4頁目の途中から8頁目の最後までの印刷データPDの部分については、ベクターデータのみを有しており、ラスターデータを有していない。
【0093】
処理PR7においてMFP100aは、画像処理部116を用いて、変換後データおよび変換前データを次の方法で作成する。MFP100aは、印刷データPDにおける変換後データとする部分PD1(第1の部分の一例)と、変換前データとする部分PD2(第2の部分の一例)との境界BRを頁単位で決定する。ここでは、MFP100aは4頁目の途中までRIP処理を完了しているので、4頁目と、その前頁である3頁目との間を境界BRとして決定する。その結果、部分PD1は、1頁目の最初から3頁目の最後までの部分となる。部分PD2は、印刷データPDにおける部分PD1を除外した残りであり、4頁目の最初から8頁目の最後までの部分となる。
【0094】
代替的な境界BRの決定方法として、MFP100aは、ユーザーURのプリントジョブをMFP100bに転送することを決定した後で、4頁目の最後までRIP処理を継続して行い、4頁目と、その後頁である5頁目との間を境界BRとして決定してもよい。
【0095】
図9(b)を参照して、次にMFP100aは、部分PD1に対応するラスターデータである変換後データDT1と、部分PD2のベクターデータである変換前データDT2とを作成する。変換後データDT1は、プリントジョブをMFP100bに転送することを決定した時点でRIP処理が完了している部分のラスターデータの少なくとも一部を含むものである。
【0096】
図9(c)を参照して、処理PR8において変換後データおよび変換前データを受信すると、処理PR9においてMFP100bは、画像処理部116を用いて次の処理を行う。MFP100bは、変換前データDT2に対してRIP処理を行い、部分PD2についてのラスターデータDT2aを得る。
【0097】
図9(d)を参照して、次にMFP100bは、RIP処理後のラスターデータDT2aと、変換後データDT1とを1つに結合し、データDTを得る。データDTは、印刷データPD全体のラスターデータに相当するものである。
【0098】
図10は、本発明の第1の実施の形態におけるMFP100aの動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、MFP100aのROM102に記憶されている制御プログラムをCPU101が実行することにより実現されるものである。
【0099】
図10を参照して、MFP100aのCPU101は、プリントジョブを受信したか否かを判別する(S101)。プリントジョブを受信したと判別するまで、CPU101はステップS101の処理を繰り返す。
【0100】
ステップS101において、プリントジョブを受信したと判別した場合(S101でYES)、CPU101は、受信したプリントジョブの情報をサーバー300に通知することにより、受信したプリントジョブの情報をジョブテーブルに登録する(S103)。続いてCPU101は、プリントジョブの印刷データのRIP処理を開始し(S105)、プリントジョブの印刷物を直ちに出力可能であるか否かを判別する(S107)。
【0101】
ステップS107において、プリントジョブの印刷物を直ちに出力可能であると判別した場合(S107でYES)、CPU101はプリントジョブの印刷物を出力し(S109)、処理を終了する。
【0102】
ステップS107において、プリントジョブの印刷物を直ちに出力可能でないと判別した場合(S107でNO)、CPU101は、プリントジョブの印刷物を直ちに出力可能でない旨を操作パネル120に表示し(S110)、プリントジョブの転送の要求を受け付けたか否かを判別する(S111)。
【0103】
ステップS111において、プリントジョブの転送の要求を受け付けないと判別した場合(S111でNO)、CPU101はステップS107の処理へ進む。
【0104】
ステップS111において、プリントジョブの転送の要求を受け付けたと判別した場合(S111でYES)、CPU101はプリントジョブのRIP処理を中断し(S113)、プリントジョブの印刷データに関する変換後データおよび変換前データを作成する(S115)。次にCPU101は、作成した変換後データおよび変換前データをプリントジョブの転送先であるMFP100bに送信し(S117)、処理を終了する。
【0105】
図11は、本発明の第1の実施の形態におけるMFP100bの動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、MFP100bのROM102に記憶されている制御プログラムをCPU101が実行することにより実現されるものである。
【0106】
図11を参照して、MFP100bのCPU101は、ログイン操作を受け付けたか否かを判別する(S201)。ログイン操作を受け付けたと判別するまで、CPU101はステップS201の処理を繰り返す。
【0107】
ステップS201において、ログイン操作を受け付けたと判別した場合(S201でYES)、CPU101は、ログイン操作を行ったユーザーを特定する情報をサーバー300に送信し(S203)、ユーザーの認証に成功したか否かを判別する(S205)
【0108】
ステップS205において、ユーザーの認証に成功したと判別した場合(S205でYES)、ユーザーの実行待ちのプリントジョブがあるか否かを判別する(S207)。
【0109】
ステップS205において、ユーザーの認証に失敗したと判別した場合(S205でNO)、またはステップS207において、ユーザーの実行待ちのプリントジョブが無いと判別した場合(S207でNO)、CPU101は処理を終了する。
【0110】
ステップS207において、ユーザーの実行待ちのプリントジョブがあると判別した場合(S207でYES)、CPU101は、ユーザーの実行待ちのプリントジョブの実行先であるMFP100aに対して、プリントジョブの転送を要求し(S209)、プリントジョブに関するデータ(変換後データおよび変換前データ)を受信したか否かを判別する(S211)。プリントジョブに関するデータを受信したと判別するまで、CPU101はステップS211の処理を繰り返す。
【0111】
ステップS211において、プリントジョブに関するデータを受信したと判別した場合(S211でYES)、CPU101は、受信したデータのうち変換前データに対してRIP処理を行い(S213)、RIP処理後のラスターデータと、受信した変換後データとを結合する(S215)。次にCPU101は、結合したデータの印刷物を出力し(S217)、処理を終了する。
【0112】
本実施の形態において、MFP100aは、プリントジョブの転送先であるMFP100bに対して、自機でRIP処理を行った部分のデータである変換後データDT1を送信する。これにより、MFP100bがプリントジョブの印刷データのRIP処理に要する時間を短縮することができ、MFP100bで印刷物を迅速に出力することができる。
【0114】
図12は、本発明の第2の実施の形態における画像形成システムの動作を概念的に示す図である。
【0115】
図12を参照して、本実施の形態における画像形成システムは、始めに
図7に示す第1の実施の形態における処理PR1〜PR3を行う。処理PR3においてMFP100aがユーザーURのプリントジョブの印刷データのRIP処理を開始した(処理PR3)後で、MFP100aが、ユーザーURとは別のユーザーUR1が所持する端末400bから新たなプリントジョブの印刷データを受信する(処理PR3A)。端末400bは、複数の端末400のうち端末400aとは異なる端末である。
【0116】
図13は、本発明の第2の実施の形態において、ユーザーUR1のプリントジョブが登録された直後のジョブテーブル312を示す図である。
【0117】
図12および
図13を参照して、
図8の内容に対して「Shoji」という名前のユーザーUR1が実行したプリントジョブが新たに登録されている。このジョブは優先度が高く設定されているため、「Miura」という名前のユーザーURのプリントジョブの前に割り込み、ユーザーURのプリントジョブよりも高い優先順位でジョブテーブル312に登録される。
【0118】
ユーザーUR1のプリントジョブが割り込んで登録されると、ユーザーUR1のプリントジョブに使用する用紙の分だけMFP100aの用紙の消費量が増加する。MFP100aに収納されている用紙の残り枚数が少ない場合には、ユーザーURのプリントジョブの印刷物の出力中に用紙切れとなり、MFP100aでユーザーURのプリントジョブの全ての印刷物を出力できなくなる事態となる。
【0119】
そこでMFP100aは、ユーザーURのプリントジョブよりも前に新たなプリントジョブが割り込んで登録された場合に、MFP100aに収納されている用紙の残り枚数(消耗品管理部117が管理する用紙の残り枚数)に基づいて、自機でユーザーURのプリントジョブの全ての印刷物を出力できるか否かを判断する(処理PR3B)。この判断はMFP100aのCPU101(判断手段の一例)を用いて行われる。
【0120】
なお、処理PR3BにおいてMFP100aは、MFP100に収納されている用紙の残り枚数、MFP100に収納されているトナーの残量、および感光体の寿命到来までに印刷可能な用紙の枚数のうち少なくともいずれか1つと、ユーザーURのプリントジョブの印刷データの総ページ数とに基づいて、自機でユーザーURのプリントジョブの全ての印刷物を出力できるか否かを判断すればよい。
【0121】
処理PR3Bにおいて自機でユーザーURのプリントジョブの全ての印刷物を出力できないと判断した場合に、MFP100aは、画像処理部116を用いて第1の変換前データを作成する(処理PR3C)。第1の変換前データは、ユーザーURのプリントジョブをMFP100bに転送することを決定するよりも前に作成される。
【0122】
続いて画像形成システムは、
図7に示す第1の実施の形態における処理PR4〜PR6を行う。処理PR6においてMFP100aがMFP100bから転送の要求を受信すると(処理PR6)、MFP100aは、ユーザーURのプリントジョブをMFP100bに転送することを決定する。MFP100aは、ユーザーURのプリントジョブを転送することを決定した後で、画像処理部116を用いて、変換後データと、第2の変換前データとを作成する(処理PR7A)。MFP100aは、作成した変換後データ、第1の変換前データ、第2の変換前データをMFP100bに送信(転送)する(処理PR8A)。
【0123】
MFP100bは、変換後データ、第1の変換前データ、および第2の変換前データを受信すると、画像処理部116を用いて、第1の変換前データおよび第2の変換前データに対してRIP処理を行い、得られたデータと、変換後データとを1つの印刷データに結合する(処理PR9A)。MFP100bは、画像形成部113を用いて、結合した印刷データの印刷物を出力する(処理PR10)。
【0124】
図14は、本発明の第2の実施の形態における変換後データ、第1の変換前データ、および第2の変換前データの作成方法を示す図である。
図15は、本発明の第2の実施の形態における変換後データ、第1の変換前データ、および第2の変換前データの結合方法を示す図である。なお
図14および
図15において、RIP処理が完了した部分またはラスターデータはハッチングで示されており、RIP処理が完了していない部分またはベクターデータは白地で示されている。
【0125】
図14(a)を参照して、MFP100aがユーザーURのプリントジョブの全ての印刷物を出力できないと判断した時点(処理PR3Bの時点)で、MFP100aは1頁目の最初から2頁目の最後までRIP処理を完了している。言い換えれば、MFP100aは、1頁目の最初から2頁目の最後までの印刷データPDの部分については、ベクターデータおよびラスターデータを有している。MFP100aは、3頁目の最初から8頁目の最後までの印刷データPDの部分については、ベクターデータのみを有しており、ラスターデータを有していない。
【0126】
処理PR3CにおいてMFP100aは、MFP100に収納されている用紙の残り枚数と、MFP100aで実行する予定のプリントジョブで使用する用紙の枚数などに基づいて、印刷データPDにおける印刷物を出力できない部分PD11(ここでは、印刷データPDにおける5頁目〜8頁目の部分PD11)を特定する。
【0127】
図14(b)を参照して、次にMFP100aは、部分PD11のベクターデータである第1の変換前データDT11を作成する。
【0128】
図14(c)を参照して、MFP100aが印刷データをMFP100bに転送することを決定した時点(処理PR6の時点)で、MFP100aは1頁目の最初から4頁目の途中までRIP処理を完了している。処理PR7AにおいてMFP100aは、画像処理部116を用いて、変換後データおよび第2の変換前データを次の方法で作成する。MFP100aは、第1の実施の形態と同様の方法で、4頁目と、その前頁である3頁目との間を、印刷データPDにおける変換後データとする部分PD1と、第2の変換前データとする部分PD12との境界BRとする。その結果、部分PD1は、1頁目の最初から3頁目の最後までの部分となる。部分PD12は、印刷データPDにおける部分PD1および部分PD11を除外した残りであり、4頁目の最初から4頁目の最後までの部分となる。
【0129】
図14(d)を参照して、次にMFP100aは、部分PD1に対応するラスターデータである変換後データDT1と、部分PD12のベクターデータである第2の変換前データDT12とを作成する。第1の変換前データDT11と第2の変換前データDT12とを合わせたものが、第1の実施の形態における変換前データDT2(
図9)に対応する。
【0130】
図15(a)を参照して、処理PR8Aにおいて変換後データDT1、第1の変換前データDT11、および第2の変換前データDT12を受信すると、処理PR9AにおいてMFP100bは、画像処理部116を用いて次の処理を行う。MFP100bは、第1の変換前データDT11および第2の変換前データDT12の各々に対してRIP処理を行い、部分PD11についてのラスターデータDT11aおよび部分PD12についてのラスターデータDT12aの各々を得る。
【0131】
図15(b)を参照して、次にMFP100bは、RIP処理後のラスターデータDT11aおよび11bと、変換後データDT1とを1つに結合し、データDTを得る。データDTは、印刷データPD全体のラスターデータに相当するものである。
【0132】
図16は、本発明の第2の実施の形態におけるMFP100aの動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、MFP100aのROM102に記憶されている制御プログラムをCPU101が実行することにより実現されるものである。
【0133】
図16を参照して、MFP100aのCPU101は、
図10に示す第1の実施の形態のフローチャートのステップS107において、プリントジョブの印刷物を直ちに出力可能であると判別した場合(S107でYES)、ステップS131以降の処理を行う。
【0134】
すなわち、ステップS131において、CPU101は、プリントジョブの全ての印刷物を出力できるか否かを判別する(S131)。
【0135】
ステップS131において、プリントジョブの全ての印刷物を出力できると判別した場合(S131でYES)、CPU101はステップS107の処理へ進む。
【0136】
ステップS131において、プリントジョブの少なくとも一部の印刷物を出力できないと判別した場合(S131でNO)、CPU101は、プリントジョブの印刷物を出力できない旨の表示を行い(S133)、プリントジョブの印刷データにおける印刷物を出力できない部分よりなる第1の変換前データを作成する(S135)。次にCPU101は、プリントジョブの転送の要求を受け付けたか否かを判別する(S111)。
【0137】
ステップS111において、プリントジョブの転送の要求を受け付けないと判別した場合(S111でNO)、CPU101はステップS107の処理へ進む。
【0138】
ステップS111において、プリントジョブの転送の要求を受け付けたと判別した場合(S111でYES)、CPU101はプリントジョブのRIP処理を中断し(S113)、プリントジョブの印刷データに関する変換後データおよび第2の変換前データを作成する(S137)。次にCPU101は、作成した変換後データ、第1の変換前データ、および第2の変換前データをプリントジョブの転送先であるMFP100bに送信し(S139)、処理を終了する。
【0139】
なお、本実施の形態における画像形成システムの上述以外の構成および動作は、第1の実施の形態における画像形成システムの構成および動作と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0140】
本実施の形態において、MFP100aは、MFP100aにてプリントジョブの全ての印刷物を出力できないと判断した場合に、プリントジョブをMFP100bに転送することを決定するよりも前に、変換前データの一部を作成する。これにより、プリントジョブをMFP100bに転送することを決定した後でMFP100bに送信するデータを作成する作業に要する時間を短縮することができ、MFP100bで印刷物を迅速に出力することができる。
【0142】
MFP100aは、MFP100aがユーザーURのプリントジョブの印刷物を直ちに出力することができない場合に、プリントジョブをMFP100bに転送することを決定してもよい。この場合、MFP100aは、転送先のMFP100からの転送の要求を受信することなく、予め設定された転送先のMFP100に対して、ユーザーURのプリントジョブの変換後データおよび変換前データを送信する。MFP100aは、転送先のMFP100の情報を操作パネル120に表示してもよい。その結果、簡易な制御によりプリントジョブの転送先で印刷物を迅速に出力することができる。
【0143】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアにより行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザーに提供することにしてもよい。プログラムは、CPUなどのコンピューターにより実行される。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0144】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。