(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、前記比誘電率に影響を及ぼす指標の値に応じて前記測定値を変更した比誘電率の値を用いて前記ピーク間電圧を算出する、請求項1に記載の画像形成装置。
前記演算部は、前記指標を所定の基準値よりも大きくするときは、前記測定値よりも低く変更した比誘電率の値を用いて算出することで、前記ピーク間電圧が前記測定値に対応する値よりも高くなるようにする、請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
前記演算部は、前記指標が所定の基準値よりも大きいときは、前記測定値よりも高く変更した比誘電率の値を用いて算出することで、前記ピーク間電圧が前記測定値に対応する値よりも低くなるようにする、請求項6または請求項7に記載の画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリおよびこれらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置が知られている。画像形成装置では、一般に、表面に感光層が形成された感光体を帯電装置によって帯電させた後、露光装置により画像データに従った露光を感光体に行なうことにより感光体の表面に静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体に、現像バイアス電位が印加された現像ローラーからトナーが供給されることにより、感光体の表面に静電潜像に対応したトナー像が形成される。
【0003】
図13を参照して、感光体10の表面を帯電させる方式として、帯電ローラー11を感光体10の表面に接触または近接させて、直流電圧に交流電圧を重畳したピーク間電圧Vppの電圧を、帯電ローラー11に印加させて、感光体10の表面を帯電させるACローラー帯電方式が知られている。
【0004】
この方式では、帯電ローラー11に印加された電圧により、帯電ローラー11と感光体10との間に電位差が発生する。パッシェンの法則で決まる或る電位差以上になると、帯電ローラー11と感光体10との間で放電が起きる。これにより、感光体10が帯電する。
【0005】
帯電ローラー11により帯電された感光体10の表面の電位(以下、表面電位Voという)は、帯電ローラー11に印加される電圧のピーク間電圧Vppの大きさに応じて決定される。
【0006】
表面電位Voは、画像の品質に影響し、表面電位Voと現像バイアス電位との電位差が小さくなりすぎると、本来、白抜けとなるべき地肌部分にトナーが付着する現象(かぶり)が生じる。一方、表面電位Voと現像バイアス電位との電位差が大きくなりすぎると二成分現像剤に含まれるキャリアが感光体に付着する現象が生じる。また、表面電位Voと現像バイアス電位との電位差が小さくなりすぎたり大きくなりすぎたりするとすじ状の白抜けまたはトナーによるすじ状の汚れが印刷される現象(すじ)が生じる。
【0007】
さらに、帯電ローラー11に印加する電圧が大きすぎると、放電エネルギーが増加することによって、感光体10の感光膜の削れが促進され、感光体10の寿命の低下を招いてしまう。そのため、表面電位Voが所定の範囲内になるように、帯電ローラー11に印加する電圧が制御される。
【0008】
ピーク間電圧Vppを適正範囲に設定する方法として、特開2002−182455号公報(以下「特許文献1」という)に開示された方法が知られている。
図14を参照して、この方法の概略を以下で説明する。まず、画像形成装置100はピーク間電圧Vppを適正範囲に設定する制御(以下「帯電制御」という)の実行命令を受けると、以下のステップで帯電制御を実行する。
【0009】
ステップ1:未放電領域でピーク間電圧Vppの電圧を複数点印加し、それぞれの交流電流Iacを検出する。
【0010】
ステップ2:放電領域でも同様にピーク間電圧Vppの電圧を複数点印加し、それぞれの交流電流Iacを検出する。
【0011】
ステップ3:未放電領域の直線近似式Yβと、放電領域の直線近似式Yαとを最小二乗法により算出する。
【0012】
ステップ4:図示しないメモリーから目標放電量Dを読み込む。
ステップ5:Yβ上での電流とYα上での電流との差が、目標放量量Dとなるピーク間電圧Vppを算出する。
【0013】
ステップ6:算出したピーク間電圧Vppを帯電ローラー11に印加する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0029】
<第1の実施の形態>
[画像形成装置の内部構成]
図1を参照して、画像形成装置100の内部構造について説明する。
図1は、この実施の形態における画像形成装置100の内部構造の一例を示す図である。
【0030】
図1には、カラープリンターとしての画像形成装置100が示されている。以下では、カラープリンターとしての画像形成装置100について説明するが、画像形成装置100は、カラープリンターに限定されない。たとえば、画像形成装置100は、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリや複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
【0031】
画像形成装置100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、従動ローラー38と、駆動ローラー39と、ピックアップローラー41と、タイミングローラー42と、定着装置43とを備える。
【0032】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト30に沿って順に並べられている。画像形成ユニット1Yは、トナーボトル2Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Mは、トナーボトル2Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Cは、トナーボトル2Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット1Kは、トナーボトル2Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。
【0033】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。一次転写ローラー31は、回転可能に構成されている。トナー像と反対極性の転写電圧が一次転写ローラー31に印加されることによって、トナー像が画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kから中間転写ベルト30に転写される。
【0034】
カラー印刷モードの場合、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。一方、モノクロ印刷モードの場合、ブラック(BK)のトナー像が感光体10から中間転写ベルト30に転写される。
【0035】
中間転写ベルト30は、従動ローラー38および駆動ローラー39に張架されている。駆動ローラー39は、たとえばモーター(図示しない)によって回転駆動される。中間転写ベルト30および従動ローラー38は、駆動ローラー39に連動して回転する。これにより、中間転写ベルト30上のトナー像が二次転写ローラー33に搬送される。
【0036】
カセット37には、用紙Sがセットされる。用紙Sは、カセット37から1枚ずつピックアップローラー41およびタイミングローラー42によって搬送経路40に沿って二次転写ローラー33に送られる。二次転写ローラー33は、トナー像と反対極性の転写電圧を搬送中の用紙Sに印加する。これにより、トナー像は、中間転写ベルト30から二次転写ローラー33に引き付けられ、用紙Sの適切な位置に転写される。
【0037】
定着装置43は、自身を通過する用紙Sを加圧および加熱する。これにより、用紙S上に形成されているトナー像が用紙Sに定着する。その後、用紙Sは、トレー48に排紙される。
【0038】
[画像形成ユニットの内部構成]
図2を参照して、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの内部構造について説明する。
図2は、この実施の形態における画像形成装置100が備える画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの内部構造の一例を示す図である。
【0039】
図2に示されるように、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、ドラムユニット15と、露光装置12と、現像装置13とを備える。
【0040】
ドラムユニット15は、感光体10と、帯電ローラー11と、クリーニング装置17と、IC(Integrated Circuit)チップ18と、支持体19とを含む。ドラムユニット15は、画像形成装置100に対して着脱可能である。主要部品である感光体10が劣化した場合、画像形成装置100からドラムユニット15が取り外され、新たなドラムユニット15が画像形成装置100に装着される。
【0041】
支持体19は、感光体10と、帯電ローラー11と、クリーニング装置17と、ICチップ18とを支持することにより、これら各部材をユニット化する。
【0042】
感光体10は、アルミニウム等からなるドラム状(円筒状)の基体10aと、基体10aの外周面上に形成された感光層10bとを含む。感光体10の外周面上にトナー像が形成される。
【0043】
感光層10bは、有機材料で構成され、電荷発生層と電荷発生層の上に形成された電荷輸送層とを含む。電荷発生層は、露光により電荷を発生する層であり、電荷輸送層は、電荷発生層で発生した正孔を感光体10の表面まで輸送する層である。感光層10bは、電荷発生層および電荷輸送層の他に、電荷発生層よりも基体10a側に位置し、電荷発生層において生成した電子を基体10aに導くアンダーコート層と、電荷輸送層の上に形成され、電荷輸送層を保護するオーバーコート層とを含んでもよい。
【0044】
感光層10bのうちの電荷発生層は、電荷発生物質とバインダー樹脂を含有している。電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッドやダイアンブルー等のアゾ原料、ピレンキノンやアントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、バインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)及びポリビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。
【0045】
感光層10bのうちの電荷輸送層は、電荷輸送物質とバインダー樹脂を含有している。電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン及びポリ−9−ビニルアントラセン等の化合物を単独あるいは2種類以上混合したものが挙げられる。
【0046】
また、電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられる。
【0047】
帯電ローラー11は、感光体10の周面を一様に帯電する。帯電ローラー11は、感光体10の回転軸に沿った長尺状である。帯電ローラー11の回転軸は、感光体10の回転軸に平行である。
【0048】
帯電ローラー11は、金属(たとえば、ステンレス材)を用いた剛性を有する円柱状のシャフト11aと、シャフト11aの周面上に形成された導電性または半導電性の弾性材料からなる弾性層11bとを含む。弾性層11bは、その表面に導電性の樹脂材料からなる表面層を有していてもよい。
【0049】
弾性層11bは、例えば、エピクロルヒドリンゴム(ECO、CO等)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)や天然ゴム(NR)等といった弾性材料で構成される。
【0050】
また、弾性層11bを構成する弾性材料に混入される導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、更には各種イオン導電剤、例えば、テトラメチルアンモニウムパークロレート、トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が用いられる。
【0051】
クリーニング装置17は、感光体10に圧接される。クリーニング装置17は、トナー像の転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
【0052】
ICチップ18は、支持体19に取り付けられ、各種の情報を記憶する。ICチップ18が記憶する情報には、感光体10の使用開始からの累積回転数Rと、感光体10の感光層10bの比誘電率εpcと、感光層10bの膜厚dpc(new)と、帯電ローラー11の弾性層11bの厚みdrと、弾性層11bの比誘電率εrとが含まれる。
【0053】
ドラムユニット15は、感光体10の使用開始からの累積回転数をカウントするカウンター(図示せず)を備える。カウンターによりカウントされた累積回転数RがICチップ18に随時書き込まれる。
【0054】
感光層10bの比誘電率εpcは、感光層10bを構成する材料に依存し、予め感光体10ごとに測定される。
【0055】
たとえば、感光体10の出荷検査のときに感光層10bの比誘電率εpcおよび膜厚dpc(new)が測定され、その測定値を示す数字またはバーコードが感光体10に記載される。測定値が記載される箇所は、感光体10においてトナー像が形成される箇所以外の場所である。
【0056】
同様に、弾性層11bの比誘電率εrは、弾性層11bを構成する材料に依存し、予め帯電ローラー11ごとに測定される。弾性層11bの厚みdrも予め帯電ローラー11ごとに測定される。
【0057】
たとえば、帯電ローラー11の出荷検査のときに弾性層11bの比誘電率εrおよび厚みdrが測定され、その測定値を示す数字またはバーコードが帯電ローラー11に記載される。
【0058】
ドラムユニット15を組み立てる際に、作業者は、当該ドラムユニット15に組み込まれる感光体10ならびに帯電ローラー11に、それぞれ記載された比誘電率εpcおよび膜厚dpc(new)、ならびに、比誘電率εrおよび厚みdrを読み取り、読み取った比誘電率εpc、膜厚dpc(new)、比誘電率εrおよび厚みdrをICチップ18に書き込む。
【0059】
もしくは、比誘電率εpc、膜厚dpc(new)、比誘電率εrおよび厚みdrがバーコードで示される場合、バーコードから比誘電率εpc、膜厚dpc(new)、比誘電率εrおよび厚みdrを読み取り、読み取った比誘電率εpc、膜厚dpc(new)、比誘電率εrおよび厚みdrをICチップ18に書き込む装置を用いてもよい。
【0060】
なお、ICチップ18への比誘電率εpc、膜厚dpc(new)、比誘電率εrおよび厚みdrの書き込みは、上記の方法に限定されず、別の方法であってもよい。 また、第1の実施の形態においては、これらのうち帯電ローラー11の比誘電率εrのみを用いるので、ICチップ18には比誘電率εrのみが書込まれるようにしてもよい。
【0061】
露光装置12は、後述する制御装置60からの制御信号に応じて感光体10にレーザー光を照射し、入力された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、露光された部分において感光層10bの電荷発生層により電荷が発生し、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。
【0062】
現像装置13は、現像ローラー14を回転させながら、現像ローラー14に現像バイアスを印加し、現像ローラー14の表面にトナーを付着させる。これにより、トナーが現像ローラー14から感光体10に転写され、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。
【0063】
[画像形成装置のハードウェア構成]
図3を参照して、画像形成装置100のハードウェア構成の一例について説明する。
図3は、画像形成装置100の主要なハードウェア構成を示すブロック図である。
【0064】
図3に示されるように、画像形成装置100は、電源部50と、制御装置60と、センサ類70と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、操作パネル107と、記憶装置120とを含む。
【0065】
電源部50は、画像形成装置100の各部(たとえば、
図2の帯電ローラー11や現像装置13など)に電力を供給する。
【0066】
制御装置60は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのDSP、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0067】
制御装置60は、画像形成装置100の制御プログラム122を実行することで画像形成装置100の動作を制御する。制御装置60は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、記憶装置120またはROM102から制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0068】
制御装置60は、帯電ローラー11によって帯電された感光体10の表面電位Voがほぼ一定になるように、電源部50から帯電ローラー11に印加される電圧のピーク間電圧Vppの大きさを制御する。
【0069】
操作パネル107は、ディスプレイとタッチパネルとで構成されている。ディスプレイおよびタッチパネルは互いに重ねられている。操作パネル107は、たとえば、画像形成装置100に対する印刷操作やスキャン操作などを受け付ける。
【0070】
記憶装置120は、たとえば、ハードディスクや外付けの記憶装置などの記憶媒体である。記憶装置120は、画像形成装置100の制御プログラム122などを格納する。制御プログラム122の格納場所は記憶装置120に限定されず、制御プログラム122は、制御装置60の記憶領域(たとえば、キャッシュなど)、ROM102、RAM103、または、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0071】
制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う制御処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で画像形成装置100が構成されてもよい。
【0072】
[帯電ローラー11に印加する電圧の制御]
図4を参照して、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppの制御の詳細について説明する。
図4は、この実施の形態における画像形成装置における帯電ローラーに印加する電圧の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0073】
図4に示されるように、画像形成装置100は、ピーク間電圧Vppの制御に関する構成として、感光体10と、帯電ローラー11と、電源部50と、制御装置60と、センサ類70と、記憶装置120とを備える。記憶装置120は、感光体物性値記憶部91と、帯電ローラー物性値記憶部92とを含む。センサ類70は、温度センサー71と、湿度センサー72とを含む。
【0074】
温度センサー71は、感光体10の近傍に設置され、感光体10の周囲の温度Tを計測する。湿度センサー72は、感光体10の近傍に設置され、感光体10の周囲の相対湿度を計測する。
【0075】
電源部50は、帯電ローラー11のシャフト11aにピーク間電圧Vppの電圧を印加する。帯電ローラー11のシャフト11aに電圧が印加されると、帯電ローラー11の表面と感光体10の表面との間に電位差が生じる。当該電位差により、パッシェンの法則に従って、帯電ローラー11の表面と感光体10の表面との接触部分の近傍に放電が生じ、感光体10が帯電される。
【0076】
感光体物性値記憶部91は、感光体10の物性値を記憶する。具体的には、感光体物性値記憶部91は、感光体10の感光層10bの比誘電率εpcを記憶する。
【0077】
帯電ローラー物性値記憶部92は、帯電ローラー11の物性値を記憶する。具体的には、帯電ローラー物性値記憶部92は、帯電ローラー11の弾性層11bの厚みdrと、弾性層11bの比誘電率εrとを記憶する。
【0078】
なお、第1の実施の形態においては、帯電ローラー物性値記憶部92に記憶される比誘電率εrのみが用いられるため、帯電ローラー物性値記憶部92は、比誘電率εrのみを記憶させるようにしてもよい。また、記憶装置120は、感光体物性値記憶部91を含まないようにしてもよい。
【0079】
制御装置60は、情報取得部61と、演算部62と、電源制御部63とを含む。情報取得部61は、感光体10の物性値と、帯電ローラー11の物性値とを取得する物性値取得部として機能する。情報取得部61は、取得した感光体10の物性値を感光体物性値記憶部91に書き込み、取得した帯電ローラー11の物性値を帯電ローラー物性値記憶部92に書き込む。
【0080】
具体的には、情報取得部61は、画像形成装置100に装着されているドラムユニット15のICチップ18から、感光体10の感光層10bの比誘電率εpcおよび未使用時の膜厚と、帯電ローラー11の弾性層11bの厚みdrおよび比誘電率εrとを読み出す。情報取得部61は、読み出した比誘電率εpcを感光体物性値記憶部91に書き込み、読み出した厚みdrおよび比誘電率εrを帯電ローラー物性値記憶部92に書き込む。これにより、感光体物性値記憶部91は、画像形成装置100に装着されている感光体10の物性値を記憶することができる。また、帯電ローラー物性値記憶部92は、画像形成装置100に装着されている帯電ローラー11の物性値を記憶することができる。
【0081】
電源部50は、電源51と、電圧制御部52と、電流検知部53とを含む。電源51は、電力を供給する。電圧制御部52は、帯電ローラー11に印加する電圧を制御する。電流検知部53は、帯電ローラー11への電流の値を検知する。
【0082】
演算部62は、電流検知部53によって検知された電流の値と、温度センサー71によって検知された温度と、湿度センサー72によって検知された相対湿度と、プロセス速度と、帯電周波数とに基づいて、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppを算出する。プロセス速度は、印刷される用紙が送られる速度であり、当該用紙を送るローラー、たとえば、感光体10の周速度と等しい。感光体10の周速度と帯電ローラー11の周速度は、等しいので、帯電ローラー11の周速度は、プロセス速度と等しい。
【0083】
電源制御部63は、演算部62により算出されたピーク間電圧Vppの電圧が帯電ローラー11のシャフト11aに印加されるように電源部50の電圧制御部52を制御する。
【0084】
[第1の実施の形態の画像形成装置の処理の流れ]
次に、
図5を参照して、画像形成装置100における物性値の更新処理の流れについて説明する。
図5は、この実施の形態における画像形成装置100により実行される物性値の更新処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
図5で示されるように、情報取得部61は、画像形成装置100の電源がオンにされたときであるか否かを判断する(ステップS1)。電源がオンにされたときでない(ステップS1でNO)と判断した場合、情報取得部61は、ドラムユニット15を装着したときであるか否かを判断する(ステップS2)。ドラムユニット15を画像形成装置100に装着するためには、画像形成装置100が備える扉を開閉する必要がある。情報取得部61は、当該扉が開状態から閉状態に変化したことを検知したタイミングで、ドラムユニット15が画像形成装置100に装着されたものと判断すればよい。ドラムユニット15を装着したときでない(ステップS2でNO)と判断した場合、情報取得部61は、実行する処理をこの処理の呼出元に戻す。
【0086】
一方、電源がオンにされたときである(ステップS1でYES)と判断した場合、および、ドラムユニット15を装着したときである(ステップS2でYES)と判断した場合、情報取得部61は、ドラムユニット15のICチップ18から感光層10bの比誘電率εpcおよび未使用時の膜厚dpc(new)を読み出し、感光体物性値記憶部91に書き込む(ステップS3)。
【0087】
次に、情報取得部61は、ドラムユニット15のICチップ18から帯電ローラー11の弾性層11bの厚みdrおよび比誘電率εrを読み出し、帯電ローラー物性値記憶部92に書き込む(ステップS4)。
【0088】
これにより、感光体物性値記憶部91が記憶する感光体10の物性値は、現在装着されている感光体10に対応する値に更新される。同様に、帯電ローラー物性値記憶部92が記憶する物性値は、現在装着されている帯電ローラー11に対応する値に更新される。
【0089】
次に、
図6を参照して、画像形成装置100における帯電制御処理の流れについて説明する。
図6は、第1の実施の形態における画像形成装置100により実行される帯電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0090】
画像形成装置100は、印刷命令を受けると、
図6で示される帯電制御処理を実行する。画像形成装置100は、操作パネル107(
図3参照)または図示しないネットワークインターフェースによって、印刷命令を受け付けることができる。
【0091】
図6で示されるように、演算部62は、背景技術の欄の
図14で示したように、未放電領域でピーク間電圧Vppの電圧を複数点印加し、それぞれの交流電流Iacを検出する(ステップS21)。また、演算部62は、放電領域でも同様にピーク間電圧Vppの電圧を複数点印加し、それぞれの交流電流Iacを検出する(ステップS22)。
【0092】
次に、演算部62は、放電領域の直線近似式Yαと、未放電領域の直線近似式Yβとを最小二乗法により算出する(ステップS23)。
【0093】
ここで、背景技術とは異なり、演算部62は、帯電ローラー11の比誘電率εrを帯電ローラー物性値記憶部92から読出し、読出した比誘電率εrから目標放電量Dを特定する(ステップS24)。この特定方法については後述する。
【0094】
そして、演算部62は、Yα上での電流とYβ上での電流との差が、目標放量量Dとなるピーク間電圧Vppを算出する(ステップS25)。電源制御部63は、ステップS25で算出されたピーク間電圧Vppの電圧が帯電ローラー11に印加されるように、電源部50の電圧制御部52を制御する。これにより、帯電ローラー11にピーク間電圧Vppの電圧が印加される(ステップS26)。
【0095】
その後、露光装置12による露光処理、現像装置13による現像処理、中間転写ベルトへの一次転写処理、用紙Sへの二次転写処理および定着装置43による定着処理が実行される。これにより、印刷処理が完了する。
【0096】
[目標放電量Dの特定方法]
発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、目標放電量D、つまりピーク間電圧Vppを一定とした場合、帯電不良による印刷不良および感光体のライフの低下が発生する場合がある。発明者らは、この理由として、帯電ローラー11の比誘電率のばらつきが原因である可能性を考えた。
【0097】
帯電ローラー11の比誘電率とは、帯電ローラー11の誘電率と、真空の誘電率の比のことである。誘電率とは、物質内で電荷と、それによって与えられる力との関係を示す計数である。帯電ローラー11の比誘電率が高いと、帯電ローラー11の中での電荷が動き易く、一定のピーク間電圧Vppでは放電し易くなると考えられる。比誘電率が低いと、帯電ローラー11の中での電荷が動き難く、一定のピーク間電圧Vppでは放電し難くなると考えられる。
【0098】
そこで、帯電ローラー11の比誘電率を次の方法で測定した。
図7は、この実施の形態における帯電ローラー11の比誘電率の測定方法を説明するための図である。
図7(A)および
図7(B)を参照して、回転可能な金属ローラー22A,22B上に、帯電ローラー11を載せる。その上から駆動ローラー21で帯電ローラー11に荷重を掛ける。LCRメーター24(たとえば、エヌエフ回路設計ブロック社製のZM2372)の2つの端子を、それぞれ、金属ローラー22A(または金属ローラー22B)と、帯電ローラー11とに接続する。
【0099】
そして、モーター23により駆動ローラー21を一定の回転数で回転させることで、帯電ローラー11および金属ローラー22A,22Bを回転させつつ、LCRメーター24で一定の周波数の電圧を印加して、帯電ローラー11A〜11Gの比誘電率を測定したところ、表2で示すような値が得られた。このように、同一製法で製造した同種の帯電ローラー11A〜11Gであっても、比誘電率にばらつきがあることが分かった。
【0101】
そこで、帯電ローラー11の比誘電率が高い場合は、ピーク間電圧Vppが低くなるように目標放電量Dを低くし、比誘電率が低い場合は、ピーク間電圧Vppが高くなるように目標放電量Dを高くすることを考えた。
【0103】
具体的には、表3で示すような帯電ローラー11の比誘電率と目標放電量Dとを対応付けたルックアップテーブルを、画像形成装置100の記憶装置120に予め記憶させておく。そして、前述の
図6のステップS24で、帯電ローラー11の比誘電率εrを帯電ローラー物性値記憶部92から読出し、読出した比誘電率εrに対応する目標放電量Dを、このルックアップテーブルから読出す。
【0104】
なお、帯電ローラー11の比誘電率εrと目標放電量Dの関係式D=f(εr)を画像形成装置100の記憶装置120に予め記憶させておき、帯電ローラー物性値記憶部92から読出した比誘電率εrに対応する目標放電量Dをこの関係式から算出するようにしてもよい。
【0105】
帯電ローラー11A〜11Gをそれぞれ有するドラムユニット15A〜15Gについて、このように特定した目標放電量Dを用いて算出したピーク間電圧Vppの電圧を、帯電ローラー11A〜11Gにそれぞれ印加して、印刷の耐久試験を行なったところ、表4で示す結果が得られた。
【0107】
目標放電量Dを一定とした場合の前述の表1で示す結果と比較して、帯電ローラー11の比誘電率εrに応じて目標放電量Dを変えることでピーク間電圧Vppを変えることによって、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフを改善できることが分かった。
【0108】
また、発明者らは、同一の帯電ローラー11Aについて、この帯電ローラー11Aの比誘電率εrを用いて特定した目標放電量Dから算出したピーク間電圧Vppの電圧を印加した。この場合に、プロセス速度、周辺の温度/相対湿度、および、印加する電圧の周波数(「帯電周波数」という)を変化させて印刷の耐久試験を行なったところ、表5で示すように、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフの低下が発生することを見出した。
【0110】
帯電ローラー11の比誘電率は、帯電ローラー11内の電荷の動き易さである。このため、プロセス速度が遅いと、電荷が動き易くなるため、比誘電率が高くなり、ピーク間電圧は小さくて済むと考えられる。温度/相対湿度が高いと、電荷が動き難くなるため、比誘電率が低くなり、高いピーク間電圧が必要となると考えられる。帯電周波数が高いと、電荷が追随し難くなるため、比誘電率が低くなり、高いピーク間電圧が必要となると考えられる。
【0111】
そこで、プロセス速度、温度/相対湿度、および、帯電周波数を変化させながら、比誘電率を測定するという実験を行なった。
図8、
図9および
図10は、それぞれ、低温/低湿環境、中温/中湿環境、および、高温/高湿環境における帯電周波数およびプロセス速度に応じた比誘電率の変化を示す図である。
図8から
図10を参照して、図で示されるように、プロセス速度が遅いほど、比誘電率が高くなり、温度/相対湿度が高いほど、比誘電率は低くなり、帯電周波数が高いほど、比誘電率は低くなるという予想通りの結果が得られた。
【0113】
このため、表5の1行目から2行目のように、プロセス速度を遅くする(ここでは、160mm/sから80mm/sに変更する)場合は、表6の2行目で示すように、帯電ローラー物性値記憶部92に記憶されている比誘電率(ここでは、230)よりも増加させた値(ここでは、20増加させた250)を、目標放電量Dの特定に用いる比誘電率とする。
【0114】
また、表5の1行目から3行目のように、温度/相対湿度を低くする(ここでは、中温/中湿から低温/低湿に変更する)場合は、表6の3行目で示すように、帯電ローラー物性値記憶部92に記憶されている比誘電率(ここでは、230)よりも減少させた値(ここでは、30減少させた200)を、目標放電量Dの特定に用いる比誘電率とする。
【0115】
また、表5の1行目から3行目のように、帯電周波数を高くする(ここでは、1300Hzから2000Hzに変更する)場合は、表6の3行目で示すように、帯電ローラー物性値記憶部92に記憶されている比誘電率(ここでは、230)よりも減少させた値(ここでは、20減少させた210)を、目標放電量Dの特定に用いる比誘電率とする。
【0116】
これらのように変更した比誘電率を用いて目標放電量Dを特定し、ピーク間電圧Vppを算出して、算出したピーク間電圧Vppの電圧を帯電ローラー11に印加することで、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフを改善できることが分かった。
【0117】
なお、表6では、プロセス速度、温度/相対湿度、および、帯電周波数のいずれかを個別に変化させた場合に比誘電率をどの程度変化させるかの一例を示しているが、これらを組合せて変化させた場合であっても、組合せに応じて比誘電率を変更することで、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフを改善できる。
【0118】
たとえば、プロセス速度を160mm/sから80mm/sに変更するとともに、温度/相対湿度を中温/中湿から低温/低湿に変更した場合、比誘電率を、20増加させるとともに30減少させる、つまり、10減少させるようにする。
【0119】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態においては、
図4で示したように、画像形成装置100の電源部50は、電流検知部53を備え、電流検知部53で検知された電流の値を用いて、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppを算出するようにした。これに対し、第2の実施の形態においては、画像形成装置100Aは電流検知部53を備えないようにして、電流の値を用いずに、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppを算出する。
【0120】
図11は、第2の実施の形態における画像形成装置100Aにおける帯電ローラー11に印加する電圧の制御に関する構成を示すブロック図である。
図11に示されるように、画像形成装置100Aは、ピーク間電圧Vppの制御に関する構成として、感光体10と、帯電ローラー11と、電源部50Aと、制御装置60Aと、センサ類70Aと、記憶装置120Aとを備える。記憶装置120Aは、感光体物性値記憶部91Aと、帯電ローラー物性値記憶部92Aとを含む。センサ類70Aは、温度センサー71Aと、湿度センサー72Aとを含む。
【0121】
感光体物性値記憶部91Aおよび帯電ローラー物性値記憶部92A、ならびに、温度センサー71Aおよび湿度センサー72Aは、
図4で説明した、感光体物性値記憶部91および帯電ローラー物性値記憶部92、ならびに、温度センサー71および湿度センサー72と同様であるので説明は繰返さない。
【0122】
制御装置60Aは、情報取得部61Aと、膜厚推定部64と、演算部62Aと、電源制御部63Aとを含む。電源部50Aは、電源51Aと、電圧制御部52Aとを含む。情報取得部61A、電源51A、および、電圧制御部52Aは、
図4で説明した情報取得部61、電源51、および、電圧制御部52と同様であるので説明は繰返さない。
【0123】
さらに、情報取得部61Aは、膜厚推定部64からの要求を受けて、感光体10の使用開始からの累積回転数RをICチップ18から読み出し、読み出した累積回転数Rを膜厚推定部64に出力する。
【0124】
膜厚推定部64は、感光体10の感光層10bにおける現状の厚みdpcを推定することにより、膜厚取得部として機能する。膜厚推定部64は、感光体物性値記憶部91Aから感光層10bの初期の膜厚dpc(new)を読み出すとともに、情報取得部61Aから感光体10の累積回転数Rを受ける。膜厚推定部64は、式(1):dpc=dpc(new)−(C×R)に従って、膜厚dpcを算出する。
【0125】
式(1)において、係数Cは、単位回転数当たりの感光層10bの膜厚の減少量を示す定数であり、実験等により予め設定される。膜厚推定部64は、係数Cを予め記憶している。たとえば、Cが0.02μm/1000回、dpc(new)が40μm、累積回転数Rが100000回である場合、膜厚推定部64は、膜厚dpc=38μmと推定する。
【0126】
演算部62Aは、膜厚推定部64により推定された感光層10bの現状の厚みdpcと、感光体物性値記憶部91Aが記憶する感光層10bの比誘電率εpcと、帯電ローラー物性値記憶部92Aが記憶する弾性層11bの厚みdrおよび比誘電率εrと、温度センサー71Aにより測定された温度Tとに基づいて、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppを算出する。演算部62Aは、ピーク間電圧Vppを目的変数とし、厚みdpc,比誘電率εpc,厚みdr,比誘電率εrおよび温度Tを説明変数とする相関式(2):Vpp=f(εpc,dpc,εr,dr,T)に従って、ピーク間電圧Vppを算出する。
【0127】
電源制御部63Aは、演算部62Aにより算出されたピーク間電圧Vppの電圧が帯電ローラー11のシャフト11aに印加されるように電源部50Aの電圧制御部52Aを制御する。
【0128】
[第2の実施の形態の画像形成装置の処理の流れ]
次に、
図12を参照して、画像形成装置100Aにおける帯電制御処理の流れについて説明する。
図12は、第2の実施の形態における画像形成装置100Aにより実行される帯電制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0129】
画像形成装置100Aが印刷命令を受けると、
図12に示されるように、演算部62Aは、感光体物性値記憶部91Aから感光層10bの比誘電率εpcおよび未使用時の膜厚dpc(new)を読み出す(ステップS31)。
【0130】
次に、演算部62Aは、帯電ローラー物性値記憶部92Aから弾性層11bの厚みdrおよび比誘電率εrを読み出す(ステップS32)。
【0131】
膜厚推定部64は、感光層10bの未使用時の膜厚dpc(new)から前述の式(1)により膜厚dpcを算出する演算部62Aは、算出された膜厚dpcを取得する(ステップS33)。
【0132】
温度センサー71Aは、感光体10の周囲の温度Tを計測し、制御装置60Aに出力する。これにより、演算部62Aは、感光体10の周囲の温度Tを取得する(ステップS34)。
【0133】
演算部62Aは、ステップS31〜ステップS34にて取得した厚みdpc、比誘電率εpc、厚みdr、比誘電率εrおよび温度Tを相関式(2):Vpp=f(εpc,dpc,εr,dr,T)に代入して、帯電ローラー11に印加する電圧のピーク間電圧Vppを算出する(ステップS35)。
【0134】
次に、電源制御部63Aは、ステップS35で算出されたピーク間電圧Vppの電圧が帯電ローラー11に印加されるように、電源部50Aの電圧制御部52Aを制御する。これにより、帯電ローラー11にピーク間電圧Vppの電圧が印加される(ステップS36)。
【0135】
その後、露光装置12による露光処理、現像装置13による現像処理、中間転写ベルトへの一次転写処理、用紙Sへの二次転写処理および定着装置43による定着処理が実行される。これにより、印刷処理が完了する。
【0136】
同一の帯電ローラー11Aについて、この帯電ローラー11Aの比誘電率εrを用いて、
図12のように、ピーク間電圧Vppを算出して、このピーク間電圧Vppの電圧を帯電ローラー11Aに印加した。この場合に、プロセス速度、周辺の温度/相対湿度、および、印加する電圧の周波数(「帯電周波数」という)を変化させて印刷の耐久試験を行なったところ、表5と同様に、表7で示すように、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフの低下が発生することを見出した。
【0138】
そこで、
図8、
図9および
図10で示した実験の結果をしたがって、プロセス速度、温度/相対湿度、帯電周波数に応じて比誘電率を変化させた値を用いて、
図12のように、ピーク間電圧Vppを算出して、このピーク間電圧Vppの電圧を帯電ローラー11Aに印加した。これにより、表6と同様、表8で示されるように、変更した比誘電率を用いてピーク間電圧Vppを算出して、算出したピーク間電圧Vppの電圧を帯電ローラー11に印加することで、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフを改善できることが分かった。
【0140】
なお、表8では、プロセス速度、温度/相対湿度、および、帯電周波数のいずれかを個別に変化させた場合に比誘電率をどの程度変化させるかの一例を示しているが、これらを組合せて変化させた場合であっても、組合せに応じて比誘電率を変更することで、帯電不良による印刷不良および感光体10のライフを改善できる。
【0141】
なお、第2の実施の形態においては、膜厚推定部64が、感光体10の感光層10bにおける現状の厚みdpcを推定することにより、膜厚取得部として機能するようにした。しかし、これに限定されず、センサ類70Aが、膜厚センサー73を備えるようにして、膜厚センサー73が膜厚取得部として機能するようにしてもよい。
【0142】
膜厚センサー73は、感光体10が備える感光層10bの厚みdpcを検出する。膜厚センサー73は、たとえば、感光体10の表面に光を照射し、感光層10bの表面で反射した光と、感光層10bと基体10aとの界面において反射した光との位相差に基づき、感光層10bの厚みを検出する。たとえば、膜厚センサー73として、フィッシャーインストルメンツ製MPOR−FPを用いることができる。膜厚センサー73は、感光層10bの厚みdpcを計測し、制御装置60に出力する。これにより、演算部62Aは、感光層10bの厚みdpcを取得する。
【0143】
また、上記説明では、相関式Vpp=f(εpc,dpc,εr,dr,T)を用いたが、説明変数の個数はこれに限定されない。たとえば、帯電ローラー11の弾性層11bの厚みの製造ばらつきが小さい場合には、厚みdrを除外してもよい。
【0144】
また、感光体10の物性値として、比誘電率εpcの代わりに、比誘電率εpcに真空の誘電率を乗算した、感光層10bの誘電率を用いてもよい。同様に、帯電ローラー11の物性値として、比誘電率εrの代わりに、比誘電率εrに真空の誘電率を乗算した、弾性層11bの誘電率を用いてもよい。
【0145】
[効果]
(1) 以上説明したように、
図4,
図6,
図11,
図12で示したように、この開示における画像形成装置100,100Aは、表面に感光層10bが形成された感光体10と、感光体10との間の放電により感光体10の表面を帯電させる帯電ローラー11と、帯電ローラー11の予め測定された比誘電率の測定値εrを用いて帯電ローラー11に印加するピーク間電圧Vppを算出する演算部62,62Aと、演算部62,62Aによって算出されたピーク間電圧Vppとなるように帯電ローラー11に印加する電圧を制御する電源制御部63,63Aとを備える。これにより、帯電不良による印刷不良および感光体のライフを改善することができる。
【0146】
(2) 上述の(1)において、演算部62,62Aは、比誘電率εrに影響を及ぼす指標の値に応じて測定値を変更した比誘電率の値を用いてピーク間電圧Vppを算出する。
【0147】
(3) 上述の(2)において、指標は、帯電ローラー11に印加する電圧の周波数、または、感光体10の周速度(プロセス速度)である。演算部62,62Aは、指標を所定の基準値よりも大きくするときは、測定値よりも低く変更した比誘電率の値を用いて算出することで、ピーク間電圧Vppが測定値に対応する値よりも高くなるようにする。
【0148】
(4) 上述の(2)において、指標は、帯電ローラー11の周辺の温度T、または、帯電ローラー11の周辺の相対湿度である。演算部62,62Aは、指標が所定の基準値よりも大きいときは、測定値よりも高く変更した比誘電率の値を用いて算出することで、ピーク間電圧Vppが測定値に対応する値よりも低くなるようにする。
【0149】
(5) 上述の(1)から(4)において、演算部62,62Aは、感光体10および帯電ローラー11が駆動されるタイミングでピーク間電圧Vppを算出する。
【0150】
(6) 上述の(1)から(5)において、帯電ローラー11は、他の帯電ローラー11に交換可能であり、測定値εrは、各々の帯電ローラー11によって異なる。画像形成装置100,100Aは、測定値εrを特定する情報取得部61,61Aをさらに備える。演算部62,62Aは、情報取得部61,61Aによって特定された測定値εrを用いてピーク間電圧Vppを算出する。
【0151】
(7) この開示における制御方法は、画像形成装置100,100Aを制御する方法である。
図4,
図11で示したように、画像形成装置100,100Aは、表面に感光層10bが形成された感光体10と、感光体10との間の放電により感光体10の表面を帯電させる帯電ローラー11と、画像形成装置100,100Aの各部を制御する制御装置60,60Aとを備える。
図6,
図12で示したように、制御方法は、制御装置60,60Aが、帯電ローラー11の予め測定された比誘電率の測定値εrを用いて帯電ローラー11に印加するピーク間電圧Vppを算出するステップと、算出されたピーク間電圧Vppとなるように帯電ローラー11に印加する電圧を制御するステップとを含む。これにより、帯電不良による印刷不良および感光体のライフを改善することができる。
【0152】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。