特許第6939346号(P6939346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939346
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20210909BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20210909BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20210909BHJP
   F04B 43/04 20060101ALI20210909BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20210909BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B41J2/045
   B41J2/14 301
   B41J2/14 607
   F04B43/04 B
   B05C11/10
   B81B3/00
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-189285(P2017-189285)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-63704(P2019-63704A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須貝 圭吾
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−008163(JP,A)
【文献】 特開2012−144990(JP,A)
【文献】 特開昭57−024262(JP,A)
【文献】 特開昭55−000246(JP,A)
【文献】 特開昭54−151034(JP,A)
【文献】 特開2015−096322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 − 5/04
7/00 −21/00
B41J 2/015− 2/16
2/205
B81B 1/00 − 7/04
F04B43/00 −47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射装置であって、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターの変位量を拡大する拡大変位機構であって、
液体が封入されている液体室と、
前記液体室の壁面の一部を構成し、前記アクチュエーターの変位に応じて変位して、前記液体に圧力を付与する第1壁部と、
前記液体室の壁面の一部を構成し、前記液体に面している面積が、前記液体に面している前記第1壁部の面積よりも小さく、前記第1壁部が変位して前記液体に圧力を付与したときに、前記液体の圧力によって、前記液体室から離れる方向である第1方向に、前記第1方向とは反対の第2方向に働く弾性力が生じる状態で変位する第2壁部と、を備える、拡大変位機構と、
ノズルに連通し、前記ノズルから吐出される吐出液体が収容されている圧力室と、
前記圧力室に接続され、前記吐出液体が流通する流路と、を備え、
前記アクチュエーターは、前記拡大変位機構の前記第1壁部を変位させて前記第2壁部を変位させることによって、前記圧力室の容積を変更して、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせ、
前記拡大変位機構の前記第2壁部の前記液体室とは反対側の壁面は、前記圧力室の壁面の一部を構成しており、
前記第2壁部は、前記アクチュエーターが、前記第1壁部を変位させたときに、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせるとともに、前記流路を閉塞するように変位する、液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1の液体噴射装置であって、
前記流路は、前記圧力室に前記吐出液体を供給する供給流路を含み、
前記液体噴射装置は、前記供給流路を通じて前記圧力室に前記吐出液体を圧送する供給部を備える、液体噴射装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体噴射装置であって、
前記流路は、さらに、前記圧力室から前記吐出液体を流出させる排出流路を含み、
前記液体噴射装置は、前記排出流路を通じて排出された前記吐出液体を、前記圧力室に循環させる循環部を備える、液体噴射装置。
【請求項4】
請求項から請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
複数の前記ノズルと、複数の前記圧力室と、複数の前記拡大変位機構と、を備えている、液体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記第2壁部は、前記液体の圧力によって前記第1方向に変位したときに、前記第2方向に働く前記弾性力が生じるように撓み変形するダイヤフラムによって構成されている、液体噴射装置
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体噴射装置であって、
前記液体室には、前記液体とともに、前記液体に圧力が付与されたときの前記液体の体積の変化を抑制するフィラーが封入されている、液体噴射装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡大変位機構およびそれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電素子などのアクチュエーターの変位量を機械的に拡大して伝達するための拡大変位機構が提案されている。例えば、下記の特許文献1の拡大変位機構では、アクチュエーターによって大径のピストンを押して液体に圧力を生じさせ、その圧力によって、液体に面する面積が大径のピストンよりも小さい小径のピストンを変位させている。特許文献1の拡大変位機構によれば、パスカルの原理によって、小径のピストンの変位量が、大径のピストンの変位量よりも増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−301354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、圧電素子を急激に収縮させて、大径のピストンを引き戻した場合には、小径のピストンの変位が大径のピストンの変位に十分に追従できず、液体の圧力が急激に低下して液体中に気泡が生じさせてしまう可能性があった。一旦、液体中にそうした気泡が生じると、圧電素子の駆動タイミングに対する小径のピストンの運動の追従性が低下してしまう。このように、拡大変位機構においては、アクチュエーターの変位に対する応答性を高めることについて、依然として改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
液体噴射装置であって、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターの変位量を拡大する拡大変位機構であって、
液体が封入されている液体室と、
前記液体室の壁面の一部を構成し、前記アクチュエーターの変位に応じて変位して、前記液体に圧力を付与する第1壁部と、
前記液体室の壁面の一部を構成し、前記液体に面している面積が、前記液体に面している前記第1壁部の面積よりも小さく、前記第1壁部が変位して前記液体に圧力を付与したときに、前記液体の圧力によって、前記液体室から離れる方向である第1方向に、前記第1方向とは反対の第2方向に働く弾性力が生じる状態で変位する第2壁部と、を備える、拡大変位機構と、
ノズルに連通し、前記ノズルから吐出される吐出液体が収容されている圧力室と、
前記圧力室に接続され、前記吐出液体が流通する流路と、を備え、
前記アクチュエーターは、前記拡大変位機構の前記第1壁部を変位させて前記第2壁部を変位させることによって、前記圧力室の容積を変更して、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせ、
前記拡大変位機構の前記第2壁部の前記液体室とは反対側の壁面は、前記圧力室の壁面の一部を構成しており、
前記第2壁部は、前記アクチュエーターが、前記第1壁部を変位させたときに、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせるとともに、前記流路を閉塞するように変位する、液体噴射装置。
【0006】
[1]本発明の第1の形態によれば、アクチュエーターの変位量を拡大する拡大変位機構が提供される。この形態の拡大変位機構は、液体が封入されている液体室と;前記液体室の壁面の一部を構成し、前記アクチュエーターの変位に応じて変位して、前記液体に圧力を付与する第1壁部と;前記液体室の壁面の一部を構成し、前記液体に面している面積が、前記液体に面している前記第1壁部の面積よりも小さく、前記第1壁部が変位して前記液体に圧力を付与したときに、前記液体の圧力によって、前記液体室から離れる方向である第1方向に、前記第1方向とは反対の第2方向に働く弾性力が生じる状態で変位する第2壁部と;を備える。
この形態の拡大変位機構によれば、第2壁部が第1方向に変位したときに生じる第2方向に働く弾性力によって、第1壁部を変位前の位置に戻す方向に変位させたときに、第2壁部が第2方向へと変位することが促進される。よって、アクチュエーターによる第1壁部の変位に対する第2壁部の応答性が高められる。そのため、例えば、第2壁部を第1方向に変位させた後、液体室の容積が拡大される方向に第1壁部を変位させたときに、第2壁部の第2方向への変位が遅れることによって、液体室の圧力が低下して、液体中に気泡が生じてしまうことが抑制される。
【0007】
[2]上記形態の拡大変位機構において、前記第2壁部は、前記液体の圧力によって前記第1方向に変位したときに、前記第2方向に働く前記弾性力が生じるように撓み変形するダイヤフラムによって構成されてよい。
この形態の拡大変位機構によれば、ダイヤフラムによって第2壁部を簡易に構成することができる。
【0008】
[3]上記形態の拡大変位機構において、前記第2壁部は、弾性部材によって支持されており、前記弾性部材は、前記第1壁部が変位して前記液体に圧力を付与したときに、前記第2方向に働く弾性力が生じるように弾性変形して、前記第2壁部の位置を前記第1方向に移動させてよい。
この形態の拡大変位機構によれば、第2壁部を第2方向に変位させる弾性力を弾性部材によって簡易に生じさせることができる。
【0009】
[4]上記形態の拡大変位機構において、前記液体室には、前記液体とともに、前記液体に圧力が付与されたときの前記液体の体積の変化を抑制するフィラーが封入されてよい。
この形態の拡大変位機構によれば、フィラーによって液体室の液体の圧縮を抑制することができるため、アクチュエーターの駆動力が液体の圧縮によって吸収されてしまうことを抑制することができる。よって、第1壁部から第2壁部へと圧力を効率よく伝達させることができる。
【0010】
[5]本発明の第2の形態によれば、液体噴射装置が提供される。この形態の液体噴射装置は、上記の各形態の拡大変位機構と;前記アクチュエーターと;ノズルに連通し、前記ノズルから吐出される吐出液体が収容されている圧力室と;前記圧力室に接続され、前記吐出液体が流通する流路と;を備える。前記アクチュエーターは、前記拡大変位機構の前記第1壁部を変位させて前記第2壁部を変位させることによって、前記圧力室の容積を変更して、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせる。
この形態の液体噴射装置によれば、拡大変位機構によってアクチュエーターの変位量を拡大できるため、吐出液体を吐出するための圧力を効率的に増大させることができる。また、アクチュエーターの変位に対する拡大変位機構の応答性が高められているため、液体吐出の精度が高められる。
【0011】
[6]上記形態の液体噴射装置において、前記拡大変位機構の前記第2壁部の前記液体室とは反対側の壁面は、前記圧力室の壁面の一部を構成しており;前記第2壁部は、前記アクチュエーターが、前記第1壁部を変位させたときに、前記吐出液体を前記ノズルから吐出させるための圧力を前記圧力室内に生じさせるとともに、前記流路を閉塞するように変位してよい。
この形態の液体噴射装置によれば、第2壁部の変位によって生じさせた吐出液体をノズルから吐出するための圧力が、流路へと逃げてしまうことが抑制される。よって、吐出液体の吐出効率を高めることができる。
【0012】
[7]上記形態の液体噴射装置において、前記流路は、前記圧力室に前記吐出液体を供給する供給流路を含み、前記液体噴射装置は、前記供給流路を通じて前記圧力室に前記吐出液体を圧送する供給部を備えてよい。
この形態の液体噴射装置によれば、供給部による圧力室への吐出液体の圧送によって、圧力室内の圧力を適切に制御することができる。
【0013】
[8]上記形態の液体噴射装置において、前記流路は、さらに、前記圧力室から前記吐出液体を流出させる排出流路を含み、前記液体噴射装置は、前記排出流路を通じて排出された前記吐出液体を、前記供給流路を通じて前記圧力室に循環させる循環部を備えてよい。
この形態の液体噴射装置によれば、圧力室における滞留に起因する吐出液体の劣化が抑制される。また、排出流路を通じて圧力室から排出された吐出液体が再利用されるため、吐出液体の利用効率を高めることができる。
【0014】
[9]上記形態の液体噴射装置は、複数の前記ノズルと、複数の前記圧力室と、複数の前記拡大変位機構と、を備えてよい。
この形態の液体噴射装置によれば、複数のノズルのそれぞれからの吐出液体の吐出を効率よく実行できる。
【0015】
本発明は、拡大変位機構や、それを備える液体噴射装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、アクチュエーターの変位量を拡大して伝達する方法や、アクチュエーターの変位量の制御方法、液体噴射装置以外の拡大変位機構を備える種々の装置等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の拡大変位機構を備える変位発生装置の構成を示す概略図。
図2】第1実施形態の拡大変位機構20Aの動作特性を示す第1の説明図。
図3】第1実施形態の拡大変位機構20Aの動作特性を示す第2の説明図。
図4】第2実施形態における拡大変位機構の構成を示す概略図。
図5】第3実施形態における液体噴射装置の全体構成を示す概略ブロック図。
図6】第3実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図7】第4実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図8】第5実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図9】第6実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図10】第7実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図11】第8実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図12】第9実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図13】第10実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図14】第11実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図15】第12実施形態のヘッド部の内部構成を模式的に示す概略断面図。
図16】第13実施形態における液体噴射装置の全体構成を示す概略ブロック図。
図17】第13実施形態のヘッド部の内部構成を示す概略断面図。
図18】第14実施形態のヘッド部の内部構成を示す概略断面図。
図19】第15実施形態の拡大変位機構を備える変位発生装置の構成を示す概略図。
図20】第16実施形態の拡大変位機構を備える変位発生装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の拡大変位機構20Aを備える変位発生装置10Aの構成を示す概略図である。変位発生装置10Aは、拡大変位機構20Aに加えて、筐体11と、アクチュエーター15と、を備える。変位発生装置10Aは、アクチュエーター15によって発生させた変位を拡大変位機構20Aによって拡大して、変位発生装置10Aに接続されている外部負荷(図示は省略)へと伝達する。筐体11の内部には、アクチュエーター15が収容される駆動室12と、拡大変位機構20Aの構成要素の一つである液体室21と、が設けられている。
【0018】
アクチュエーター15は、伸縮運動によって変位を発生させる。第1実施形態では、アクチュエーター15は、印加される電圧に応じて伸縮変形して変位を発生させる圧電素子(ピエゾ素子)によって構成される。アクチュエーター15の伸縮方向における第1端部15aは、固定部13を介して筐体11に固定されている。アクチュエーター15の伸縮変形によって、第1端部15aとは反対側の第2端部15bの位置が移動する。アクチュエーター15の変位量は、アクチュエーター15の伸縮変形による第2端部15bの移動量である。
【0019】
第1実施形態の拡大変位機構20Aは、液体室21と、液体22と、第1壁部23と、第2壁部24と、によって構成される。液体室21は、上述したように筐体11の内部に設けられた中空部位であり、第1壁部23と第2壁部24とによって封止されている。液体室21には、液体22が封入されている。
【0020】
液体22の種類は特に限定されない。液体22は、液状の流動性を有するものであればよい。液体22は、例えば、水や、油、液体金属、フッ素系不活性液体、液状樹脂であってもよいし、スライムなどのゲル状の流動体であってもよい。なお、液体22は、後述する圧力の伝達効率を高めるために、与圧された状態で液体室21に充填されていることが望ましい。また、液体22は、圧力が変化したときのキャビテーションによる気泡の発生が抑制されるように、予め脱泡処理が施されていることが望ましい。なお、拡大変位機構20Aには、例えば、液体室21の一部の壁部を、液体22の圧力に応じて撓み変形する部材によって構成することによって、液体室21の圧力状態を確認するためのインジケーター部が設けられてもよい。
【0021】
第1壁部23は、液体室21と駆動室12とを気密に隔てる壁部である。第1壁部23の外周端は、筐体11に固定されている。第1壁部23の第1壁面23aは、液体室21の液体22に面しており、液体室21の壁面の一部を構成している。第1壁面23aの反対側の第2壁面23bは、連結部14を介してアクチュエーター15の第2端部15bに連結されている。第1壁部23は、アクチュエーター15の変位に応じて厚み方向に撓み変形するダイヤフラムとして機能する。第1実施形態では、第1壁部23は、ゴム製の膜状の部材によって構成されている。なお、第1壁部23は、ゴム製の部材によって構成されていなくてもよい。第1壁部23は、他の樹脂部材によって構成されてもよいし、金属板によって構成されてもよい。
【0022】
第2壁部24は、液体室21と外部とを気密に隔てる壁部である。第2壁部24の外周端は、筐体11に固定されている。第2壁部24の第1壁面24aは、液体室21の液体22に面しており、液体室21の壁面の一部を構成している。第1壁面24aの反対側の第2壁面24bは、上述した外部負荷(図示は省略)に接続される。第2壁部24は、液体室21の圧力の変化に応じて厚み方向に撓み変形するダイヤフラムとして機能する。第2壁部24は、撓み変形させたときに、復元力として弾性力が生じる部材によって構成されている。第1実施形態では、第2壁部24は、ゴム製の膜状の部材によって構成されている。なお、第2壁部24は、ゴム製の部材によって構成されていなくてもよく、他の樹脂部材によって構成されてもよいし、金属によって構成されてもよい。
【0023】
第2壁部24は、第1壁部23が変位して液体室21の液体22の圧力が高められたときに、液体室21から離れる方向である第1方向D1に、第1方向D1とは反対の第2方向D2に働く弾性力が生じる状態で変位する。第1方向D1は、第2壁部24の厚み方向に沿った方向であり、液体室21から第2壁部24に向かう方向である。第1実施形態では、第2壁部24の変位によって生じる第2方向D2に働く弾性力は、第2壁部24の撓み変形に対する復元力として生じる。
【0024】
拡大変位機構20Aでは、第2壁部24の第1壁面24aが液体室21の液体22に面している面積S2が、第1壁部23の第1壁面23aが液体室21の液体22に面している面積S1よりも小さい。第1壁部23の面積S1は、第1壁部23の変位方向に直交する仮想平面に、第1壁面23aの液体22に面している領域を、当該変位方向に投影した領域の面積である。同様に、第2壁部24の面積S2は、第2壁部24の変位方向に直交する仮想平面に、第1壁面24aの液体22に面している領域を、当該変位方向に投影した領域の面積である。
【0025】
拡大変位機構20Aでは、上記のように、第1壁部23の面積S1と第2壁部24の面積S2と間に差が設けられている。そのため、パスカルの原理に従って、第2壁部24の変位量Dp2は、面積S1,S2の差に応じて第1壁部23の変位量Dp1よりも拡大される。また、拡大変位機構20Aによれば、アクチュエーター15が伸縮したときに第2壁部24に第2方向D2への弾性力が生じている。そのため、アクチュエーター15が収縮するときの第2壁部24の第2方向D2への変位が、その弾性力に補助され、第1壁部23の変位に遅れてしまうことが抑制される。よって、アクチュエーター15を高速に収縮させた場合であっても、第2壁部24の応答遅れに起因して液体室21内の圧力が急激に低下して、液体22中に気泡が生じてしまうことが抑制される。
【0026】
図2および図3は、本発明の発明者の実験によって検証された拡大変位機構20Aの動作特性を示す説明図である。図2には、アクチュエーター15に印加される駆動電圧に対する第1壁部23と第2壁部24の変位量の変化を示すグラフDs,Dfが図示されている。一点鎖線のグラフDfは、第1壁部23の変位量を示しており、実線のグラフDsは、第2壁部24の変位量を示している。拡大変位機構20Aでは、駆動電圧の増加に対して、各壁部23,24の変位量は線形的に増加することが確認された。また、第2壁部24の変位量は、同じ駆動電圧に対して、面積S1,S2(図1)の差に応じて、第1壁部23の変位量よりも拡大されることが確認された。
【0027】
図3には、アクチュエーター15に印加される駆動電圧に対する第1壁部23と第2壁部24の変位速度の変化を示すグラフが図示されている。図3のグラフでは、第1方向D1(図1)に変位するときの変位速度が正(+)であり、第2方向D2(図1)に変位するときの変位速度が負(−)である。一点鎖線のグラフVfaおよび二点鎖線のグラフVfbは、第1壁部23の変位速度を示しており、実線のグラフVsaおよび破線のグラフVsbは、第2壁部24の変位速度を示している。拡大変位機構20Aでは、第1方向D1へ変位するときの第2壁部24の変位速度は、変位量と同様に、面積S1,S2の差に応じて、第1壁部23の変位速度よりも増大されることが確認された。また、第2方向D2へ変位するときの第2壁部24の変位速度も、第1方向D1に変位するときとほぼ同様な比率で、第1壁部23の変位速度よりも増大されることが確認された。
【0028】
以上のように、第1実施形態における拡大変位機構20Aによれば、パスカルの原理を利用して、アクチュエーター15の変位量を簡易に拡大させることができる。また、第2壁部24が第1方向D1に変位するときに生じる第2方向D2に働く弾性力によって、アクチュエーター15の変位に対する第2壁部24の応答性が高められている。その他に、第1実施形態の拡大変位機構20Aやそれを備える変位発生装置10Aによれば、上記実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0029】
2.第2実施形態:
図4を参照して、第2実施形態における拡大変位機構20Bの構成を説明する。図4は、第2実施形態の拡大変位機構20Bを備える変位発生装置10Bの構成を示す概略図である。第2実施形態の変位発生装置10Bの構成は、第1実施形態の拡大変位機構20Aに代えて、第2実施形態の拡大変位機構20Bを備えている点以外は、第1実施形態の変位発生装置10Aの構成とほぼ同じである。第2実施形態の拡大変位機構20Bの構成は、液体22中に、フィラー25が分散されている点以外は、第1実施形態の拡大変位機構20Aの構成とほぼ同じである。
【0030】
フィラー25は、液体22より圧縮率が小さい材料を粒子状にした部材によって構成される。フィラー25は、例えば、金属や樹脂、セラミックス、ガラスなどによって構成されてもよい。第2実施形態の拡大変位機構20Bによれば、フィラー25によって、アクチュエーター15から付与される圧力が液体22の体積の圧縮によって吸収されてしまうことが抑制される。そのため、液体室21を介した第1壁部23から第2壁部24への圧力の伝達効率が高められ、アクチュエーター15の変位に対する拡大変位機構20Bの応答性が高められる。その他に、第2実施形態の拡大変位機構20Bやそれを備える変位発生装置10Bによれば、上記の第1実施形態および第2実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0031】
3.第3実施形態:
図5は、第3実施形態における液体噴射装置100Cの全体構成を示す概略ブロック図である。液体噴射装置100Cは、第3実施形態の拡大変位機構20Cを備えるヘッド部30Cと、制御部101と、供給部110と、を備える。
【0032】
ヘッド部30Cは、第3実施形態の拡大変位機構20Cを利用して吐出液体DLを吐出する。吐出液体DLは、例えば、所定の粘度を有するインクである。ヘッド部30Cの動作は、制御部101により制御される。ヘッド部30Cの構成および第3実施形態の拡大変位機構20Cの構成については後述する。
【0033】
制御部101は、CPUやメモリーを備えたコンピューターとして構成されており、メモリーに記憶された制御プログラムや命令をCPUが読み出して実行することにより、液体噴射装置100Cを制御するための種々の機能を実現する。制御プログラムは、一時的でない有形な種々の記録媒体に記録されていてもよい。制御部101は、回路によって構成されていてもよい。
【0034】
供給部110は、ヘッド部30Cに吐出液体DLを供給する。供給部110は、タンク111と、圧力調整部115と、供給路116と、によって構成される。タンク111には、吐出液体DLが収容されている。タンク111内の吐出液体DLは、ヘッド部30Cに接続されている供給路116を通じてヘッド部30Cに供給される。
【0035】
圧力調整部115は、供給路116に設けられており、供給路116を通じてヘッド部30Cに供給される吐出液体DLの圧力を予め決められた圧力に調整する。圧力調整部115は、タンク111から吐出液体DLを吸引するポンプや、ヘッド部30C側の圧力が所定の圧力になるように開閉するバルブなどによって構成される(図示は省略)。
【0036】
図6は、第3実施形態のヘッド部30Cの内部構成を模式的に示す概略断面図である。ヘッド部30Cは、金属製の筐体31を備える。ヘッド部30Cは、筐体31内部に、第3実施形態の拡大変位機構20Cに加えて、ノズル32と、圧力室33と、供給流路35と、駆動室40と、アクチュエーター41と、を備える。
【0037】
ノズル32は、圧力室33に連通し、筐体31の外部に開口する貫通孔として設けられている。第3実施形態では、ヘッド部30Cは重力方向に吐出液体DLを吐出するため、ノズル32は重力方向に開口している。
【0038】
圧力室33は、ノズル32から吐出される吐出液体DLを収容する。圧力室33は、吐出液体DLが流通する流路である供給流路35を介して、供給部110の供給路116に接続されている。圧力室33には、供給流路35を通じて、供給部110から吐出液体DLが圧送される。ノズル32からの吐出液体DLの吐出をおこなわないときの圧力室33の圧力は、供給部110の圧力調整部115(図5)によって、ノズル32のメニスカス耐圧以下の圧力に調整される。
【0039】
駆動室40は、拡大変位機構20Cを挟んで圧力室33の重力方向上方に設けられている。駆動室40は、アクチュエーター41を収容している。アクチュエーター41は、拡大変位機構20Cを介して、圧力室33の容積を変更して、ノズル32から吐出液体DLを吐出させるための圧力を圧力室33に発生させる(後述)。第3実施形態では、アクチュエーター41は、第1実施形態で説明したアクチュエーター15と同様に、伸縮変形するピエゾ素子によって構成される。アクチュエーター41の伸縮方向における第1端部41aは、固定部42を介して筐体31に固定されている。
【0040】
拡大変位機構20Cは、第2実施形態の拡大変位機構20Bと同様な構成を有している。拡大変位機構20Cは、液体22が充填されている液体室21と、厚み方向に撓み変形するダイヤフラムとして構成されている第1壁部23および第2壁部24と、を備える。
【0041】
液体室21は、駆動室40と圧力室33との間の気密な中空空間として構成されている。なお、液体室21の液体22には、第2実施形態で説明したのと同様なフィラー25が分散されている。
【0042】
第1壁部23は、駆動室40と液体室21とを気密に隔てている。第1壁部23の外周端は、筐体31に固定されている。第1壁部23の第1壁面23aは、液体室21の壁面の一部を構成しており、液体22に面している。第1壁部23の第2壁面23bは、連結部43を介してアクチュエーター41の伸縮方向における第2端部41bに連結されている。
【0043】
第2壁部24は、圧力室33と液体室21とを気密に隔てている。第2壁部24の外周端は、筐体31に固定されている。第2壁部24の第1壁面24aは、液体室21の壁面の一部を構成しており、液体22に面している。第2壁部24の第2壁面24bは、圧力室33の壁面の一部を構成しており、吐出液体DLに面している。なお、第2壁部24は、その中央部がノズル32に向かい合うように配置されていることが望ましい。
【0044】
ヘッド部30Cでは、アクチュエーター41が瞬発的に伸長して、第1壁部23が、破線で図示されているように変位したときに、液体室21の液体22から受ける圧力により、第2壁部24が、破線で図示されているように、第1方向D1に変位する。これによって、圧力室33内の圧力がメニスカス耐圧以上に高められて、ノズル32から吐出液体DLが吐出される。
【0045】
ここで、第2壁部24の第1壁面24aが液体室21の液体22に面している面積S2は、第1壁部23の第1壁面23aが液体室21の液体22に面している面積S1よりも小さい。そのため、第1実施形態において説明したのと同様に、第2壁部24の変位量Dp2は、第1壁部23の変位量Dp1より拡大される。従って、ヘッド部30Cでは、簡素な構成の拡大変位機構20Cによって、圧力室33内に、より大きな吐出圧力を簡易に発生させることができる。また、ヘッド部30Cでは、伸縮変形量の小さい小型なアクチュエーター41を採用しても、拡大変位機構20Cによって、第2壁部24の変位量を補償することができる。よって、拡大変位機構20Cを用いれば、アクチュエーター41を小型化して、ヘッド部30Cを小型化することが可能である。
【0046】
加えて、拡大変位機構20Cでは、第1実施形態でも説明したように、第2壁部24は第2方向D2に働く弾性力が生じる状態で、第1方向D1に変位する。そのため、その弾性力によって、アクチュエーター41が収縮する方向に変位したときの第2壁部24の第2方向D2への変位の追従性が高められている。これによって、アクチュエーター41が瞬発的に収縮しても、液体室21の圧力が低下して液体22中に気泡が生じてしまうことが抑制される。よって、ヘッド部30Cを安定的に駆動させることができる。液体噴射装置100Cでは、アクチュエーター41を高速で伸縮を繰り返させる場合があるため、こうした気泡の発生の抑制効果によって得られるメリットは大きい。
【0047】
また、ヘッド部30Cによれば、上記のように第2壁部24の応答遅れが抑制されることによって、圧力室33における負圧の発生タイミングが狙いとするタイミングから遅れてしまうことを抑制できる。そのため、ノズル32からの吐出液体DLの吐出が開始された後に、適切なタイミングで圧力室33に負圧を発生させることができ、ノズル32から吐出された吐出液体DLが無駄に尾を引くことや、吐出に伴って無駄にミストが発生することを抑制できる。よって、吐出液体DLの吐出量の精度が高められ、液滴の飛翔状態の悪化が抑制される。
【0048】
以上のように、第3実施形態の液体噴射装置100Cによれば、パスカルの原理を応用した拡大変位機構20Cを備えていることによって、吐出液体DLの吐出性能を高めることができる。また、アクチュエーター41の小型化が可能であり、ヘッド部30Cの小型化が可能である。その他に、第3実施形態の液体噴射装置100Cによれば、上記の第1実施形態や第2実施形態、本第3実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0049】
4.第4実施形態:
図7を参照して、第4実施形態における拡大変位機構20Dおよびそれを備える液体噴射装置100Dの構成を説明する。図7は、第4実施形態のヘッド部30Dの内部構成を示す概略断面図である。第4実施形態の液体噴射装置100Dの構成は、第3実施形態のヘッド部30Cの代わりに第4実施形態のヘッド部30Dを備えている点以外は、第3実施形態の液体噴射装置100Cの構成とほぼ同じである。第4実施形態のヘッド部30Dの構成は、第3実施形態の拡大変位機構20Cとは一部の構成が異なる第4実施形態の拡大変位機構20Dを備えている点以外は、第3実施形態のヘッド部30Cの構成とほぼ同じである。第4実施形態の拡大変位機構20Dの構成は、第2壁部24の代わりに、第2壁部24Dおよび第2壁部24Dを支持する弾性部材26a,26bを備えている点が、第3実施形態の拡大変位機構20Cの構成と異なる。
【0050】
第4実施形態の第2壁部24Dは、例えば、金属板によって構成される。第2壁部24Dは、アクチュエーター41が伸長したときに液体室21の液体22を介して受ける圧力による厚み方向への撓み変形の発生が抑制される程度の剛性を有していることが望ましい。第2壁部24Dは、金属板に限らず、他の部材によって構成されてもよい。第2壁部24Dは、例えば、樹脂板によって構成されてもよい。第2壁部24Dの壁面24a,24bには、撓み変形を抑制するためのリブが形成されていてもよい。
【0051】
第2壁部24Dは、その外周端部が2つの弾性部材26a,26bに支持されることによって、厚み方向に変位可能な状態で筐体31に固定されている。2つの弾性部材26a,26bはそれぞれ、第2壁部24Dの中央部を囲む枠状の形状を有している。第2壁部24Dの外周端部は、第1弾性部材26aおよび第2弾性部材26bによって、第2壁部24Dの厚み方向に挟まれる。
【0052】
第1弾性部材26aは、液体室21の壁部の一部を構成しており、第2壁部24Dを第1壁面24a側から支持する。第1弾性部材26aは、液体室21からの液体の漏洩を防止するシール部としても機能する。第2弾性部材26bは、圧力室33の壁部の一部を構成しており、第2壁部24Dを第2壁面24b側から支持する。第2弾性部材26bは、圧力室33からの吐出液体DLの漏洩を防止するシール部としても機能する。
【0053】
第2壁部24Dの第1壁面24aが液体室21の液体22に面している面積S2は、第1壁部23の第1壁面23aが液体室21の液体22に面している面積S1よりも小さい。なお、第2壁部24Dの第1壁面24aにおいて、液体室21の液体22に面している領域は、第1弾性部材26aによって囲まれている領域である。
【0054】
アクチュエーター41が伸長して、第1壁部23が、破線で図示されているように液体室21に向かう方向に変位すると、液体室21の液体22から第2壁部24Dが圧力を受ける。すると、第1弾性部材26aが第2壁部24Dの厚み方向に伸長するとともに、第2弾性部材26bが第2壁部24Dの厚み方向に収縮し、第2壁部24Dが、破線で図示されているように、第1方向D1に変位する。このように、第4実施形態の拡大変位機構20Dでは、第1壁部23が変位して液体22に圧力を付与したときに、弾性部材26a,26bが、第2方向D2に働く弾性力が生じるように弾性変形して、第2壁部24Dの位置を第1方向D1に移動させる。
【0055】
第4実施形態の拡大変位機構20Dによれば、上記の各実施形態で説明したのと同様に、第2壁部24Dの変位量Dp2が、面積S1,S2の差に応じて、第1壁部23の変位量Dp1よりも拡大される。また、第2壁部24Dが、弾性部材26a,26bによって、第2方向D2に弾性力が生じる状態で、第1方向D1に変位するため、アクチュエーター41の収縮に対する第2壁部24Dの応答遅れの発生が抑制される。
【0056】
第4実施形態の拡大変位機構20Dでは、第2壁部24Dが変位するときの第2壁部24Dの撓み変形が抑制されているため、液体22から伝達される圧力が、第2壁部24Dのそうした撓み変形によって吸収されてしまうことが抑制されている。そのため、第4実施形態のヘッド部30Dによれば、アクチュエーター41によって生じる圧力を効率的に圧力室33まで伝達される。よって、ヘッド部30Dによる吐出液体DLの吐出性能が、より高められる。
【0057】
なお、第4実施形態の拡大変位機構20Dにおいては、第1弾性部材26aと第2弾性部材26bとが、第2壁部24Dの外周において互いに連結されている構成が採用されてもよい。また、第4実施形態の拡大変位機構20Dにおいては、2つの弾性部材26a,26bのうちのいずれか一方は省略されてもよい。なお、第2弾性部材26bが省略される場合には、第2壁部24Dの脱落や液体室21からの液体22の漏洩および圧力室33からの吐出液体DLの漏洩が抑制されるように、第2壁部24Dは第1弾性部材26aに接着されていることが望ましい。
【0058】
以上のように、第4実施形態の拡大変位機構20Dによれば、第2壁部24Dを支持する弾性部材26a,26bの弾性変形によって、アクチュエーター41を収縮させるときの第2壁部24Dの応答遅れの発生を抑制することができる。その他に、第4実施形態の拡大変位機構20Dおよびそれを備える液体噴射装置100Dによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0059】
5.第5実施形態:
図8を参照して、第5実施形態における拡大変位機構20Eおよびそれを備える液体噴射装置100Eの構成を説明する。図8は、第5実施形態のヘッド部30Eの内部構成を示す概略断面図である。第5実施形態の液体噴射装置100Eの構成は、第4実施形態のヘッド部30Dの代わりに第5実施形態のヘッド部30Eを備えている点以外は、第4実施形態の液体噴射装置100Dの構成とほぼ同じである。第5実施形態のヘッド部30Eの構成は、第4実施形態の拡大変位機構20Dとは一部の構成が異なる第5実施形態の拡大変位機構20Eを備えている点以外は、第4実施形態のヘッド部30Dの構成とほぼ同じである。第5実施形態の拡大変位機構20Eの構成は、第1壁部23の代わりに、第1壁部23Eおよび第1壁部23Eを支持する弾性部材27を備えている点が、第4実施形態の拡大変位機構20Dの構成と異なる。
【0060】
第5実施形態の第1壁部23Eは、例えば、金属板によって構成される。第1壁部23Eは、アクチュエーター41が伸長したときに厚み方向への撓み変形の発生が抑制される程度の剛性を有していることが望ましい。第1壁部23Eは、金属板に限らず、他の部材によって構成されてもよい。第1壁部23Eは、例えば、樹脂板によって構成されてもよい。第1壁部23Eの壁面23a,23bには、撓み変形を抑制するためのリブが形成されていてもよい。
【0061】
第1壁部23Eは、弾性部材27を介して、厚み方向に変位可能な状態で筐体31に固定されている。弾性部材27は、第1壁部23Eの中央部を囲む枠状の形状を有している。弾性部材27は、アクチュエーター41に対する反力が生じるように、第1壁部23Eの第1壁面23a側から、第1壁部23Eの外周端部を支持している。弾性部材27は、液体室21の壁部の一部を構成しており、液体室21からの液体の漏洩を防止するシール部としても機能する。アクチュエーター41が伸長すると、弾性部材27が圧縮されることによって、第1壁部23Eは、破線で図示されているように、撓み変形が抑制された状態で、液体室21に向かって変位する。
【0062】
第5実施形態の拡大変位機構20Eによれば、アクチュエーター41の推進力が第1壁部23Eの撓み変形によって吸収されてしまうことが抑制される。また、弾性部材27の弾性力によって、アクチュエーター41の収縮に対する第1壁部23Eの追従性を高めることができる。その他に、第5実施形態の拡大変位機構20Eおよびそれを備える第5実施形態の液体噴射装置100Eによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0063】
6.第6実施形態:
図9を参照して、第6実施形態における拡大変位機構20Fおよびそれを備える液体噴射装置100Fの構成を説明する。図9は、第6実施形態のヘッド部30Fの内部構成を示す概略断面図である。第6実施形態の液体噴射装置100Fの構成は、第5実施形態のヘッド部30Eの代わりに第6実施形態のヘッド部30Fを備えている点以外は、第5実施形態の液体噴射装置100Eの構成とほぼ同じである。第6実施形態のヘッド部30Fの構成は、第3弾性部材26cが追加されている点が、第5実施形態のヘッド部30Eの構成と異なる。第6実施形態のヘッド部30Fの構成は、以下に説明する点以外は第5実施形態のヘッド部30Eの構成とほぼ同じである。
【0064】
第6実施形態のヘッド部30Fが備える第6実施形態の拡大変位機構20Fには、第3弾性部材26cが追加されている。第3弾性部材26cは、第2弾性部材26bの外側において、第2壁部24Dの外周端部に対して、第2方向D2に弾性力を付与するように配置されている。第3弾性部材26cは、例えば、第2弾性部材26bを囲むように配置した皿ばねによって構成される。第3弾性部材26cは、コイルスプリングによって構成されてもよい。
【0065】
なお、第6実施形態のヘッド部30Fの筐体31には、3つの弾性部材26a,26b,26cを配置するための空間が、第2壁部24Dの外周を囲むように設けられている。第3弾性部材26cは、第1弾性部材26aおよび第2弾性部材26bによってシールされた空間に配置されているため、液体22や吐出液体DLに接触することによる劣化が抑制される。
【0066】
第6実施形態の拡大変位機構20Fによれば、第3弾性部材26cの弾性力によって、アクチュエーター41が収縮するときの第2壁部24Dの追従性を高めることができる。その他に、第6実施形態の拡大変位機構20Fおよびそれを備える第6実施形態の液体噴射装置100Fによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0067】
7.第7実施形態:
図10を参照して、第7実施形態における拡大変位機構20Gおよびそれを備える液体噴射装置100Gの構成を説明する。図10は、第7実施形態のヘッド部30Gの内部構成を示す概略断面図である。第7実施形態の液体噴射装置100Gの構成は、第5実施形態のヘッド部30Eの代わりに第7実施形態のヘッド部30Gを備えている点以外は、第5実施形態の液体噴射装置100Eの構成とほぼ同じである。第7実施形態のヘッド部30Gの構成は、第2壁部24Dに相当する第2壁部24Gが圧力室33の壁面の一部を構成していない点が第5実施形態のヘッド部30Eの構成と異なる。第7実施形態のヘッド部30Gの構成は、以下に説明する点以外は第5実施形態のヘッド部30Eの構成とほぼ同じである。
【0068】
第7実施形態のヘッド部30Gの筐体31には、液体室21と圧力室33との間に中間室38が設けられている。第7実施形態の拡大変位機構20Gが備える第2壁部24Gの第2壁面24bは、中間室38の壁面の一部を構成している。その第2壁面24bの中央部には、ピストン運動によって圧力室33の吐出液体DLをノズル32から吐出させるピストン50が連結されている。
【0069】
ピストン50は、第2壁面24bに直交する方向に突起するように、その後端部が第2壁面24bに連結されている。ピストン50の先端部は、圧力室33に配置されている。ノズル32からの吐出液体DLの吐出効率を高めるために、ピストン50の先端部は、ノズル32に向かい合うように配置されていることが望ましい。
【0070】
なお、中間室38と圧力室33との間に設けられたピストン50が挿通される貫通孔39には、ピストン50の外周に気密に接して、吐出液体DLが中間室38へと漏洩することを抑制するシール部が設けられている(図示は省略)。ピストン50は、当該シール部を擦りながら上下に往復移動する。
【0071】
第7実施形態の拡大変位機構20Gの第2弾性部材26bGは、中間室38において、ピストン50の外周を囲むように配置されている。第2弾性部材26bGは、第2壁部24Dに第2方向D2に弾性力を付与するように、第2壁部24Gを下方から支持している。第7実施形態では、第2弾性部材26bGは、皿ばねによって構成される。第2弾性部材26bGは、コイルスプリングによって構成されてもよい。
【0072】
ヘッド部30Gでは、アクチュエーター41の瞬発的な伸縮に応じて、ピストン50の先端部が圧力室33内で第1方向D1および第2方向D2に瞬発的に変位することによって、ノズル32から吐出液体DLが吐出される。ピストン50の変位量は、拡大変位機構20Gによって、第1壁部23Eと第2壁部24Gとがそれぞれ液体室21の液体22に接している面積の差に応じて、アクチュエーター41の変位量よりも拡大される。また、アクチュエーター41の収縮時には、ピストン50の第2方向D2への移動は、第1弾性部材26aおよび第2弾性部材26bGの弾性力に補助される。よって、アクチュエーター41の駆動に対するピストン50の応答遅れの発生が抑制される。
【0073】
第7実施形態のヘッド部30Gでは、径が小さいピストン50の瞬発的な鋭い変位によって、ノズル32から吐出液体DLを吐出することができる。ヘッド部30Gによれば、高粘度の吐出液体DLの吐出を効率的におこなうことができる。第7実施形態の拡大変位機構20Gでは、液体室21と圧力室33との間に中間室38が設けられていることによって、液体室21への吐出液体DLの進入および圧力室33への液体22の進入が抑制されている。また、第2弾性部材26bGが中間室38に配置されていることによって、第2弾性部材26bGが液体22や吐出液体DLに曝されて劣化してしまうことが抑制されている。その他に、第7実施形態の拡大変位機構20Gおよびそれを備える第7実施形態の液体噴射装置100Gによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0074】
8.第8実施形態:
図11を参照して、第8実施形態における拡大変位機構20Hおよびそれを備える液体噴射装置100Hの構成を説明する。図11は、第8実施形態のヘッド部30Hの内部構成を示す概略断面図である。第8実施形態の液体噴射装置100Hの構成は、第7実施形態のヘッド部30Gの代わりに、第8実施形態のヘッド部30Hを備えている点以外は、第7実施形態の液体噴射装置100Gの構成とほぼ同じである。第8実施形態のヘッド部30Hの構成は、形状が異なるピストン55を備え、ピストン55に弾性力を付与する構成が変更されている点が、第7実施形態のヘッド部30Gの構成と異なる。第8実施形態のヘッド部30Hの構成は、以下に説明する点以外は第7実施形態のヘッド部30Gの構成とほぼ同じである。
【0075】
第8実施形態の拡大変位機構20Hは、第1弾性部材26aが省略され、第7実施形態で説明した中間室38と液体室21とが一体化された構成を有している。拡大変位機構20Hは、第7実施形態の第2壁部24Gの代わりに、液体室21内に配置されている第2壁部24Hを備えている。第2壁部24Gの第2壁面24bの中央部には、第7実施形態で説明したピストン50の代わりに、ピストン55が連結されている。第2壁部24Hは、ピストン55が挿通されている貫通孔39を閉塞する液体室21の壁部として機能しており、液体室21の壁面の一部を構成していると解釈できる。なお、第2壁部24Hの第1壁面24aにおける液体22に面する領域の面積S2は、第1壁部23Eの第1壁面23aにおける液体22に面する領域の面積S1よりも小さい。
【0076】
第2壁部24Hは、液体室21においてピストン55の周囲を囲むように配置された弾性部材28によって、下方から支持されている。第7実施形態では、弾性部材28は、樹脂ゴムによって構成されており、液体室21からの液体22の漏洩を抑制するためのシール部としても機能する。なお、弾性部材28は、皿ばねやコイルスプリングによって構成されてもよい。この場合には、貫通孔39内に設けられるシール部によって、液体22がシールされることが望ましい。
【0077】
第8実施形態のピストン55の先端部には、ピストン55の中心軸に交差する方向に張り出している張出部56が設けられている。張出部56は、貫通孔39の開口径よりも大きい幅を有するように張り出している。張出部56は、ピストン55が第2方向D2に移動したときに、貫通孔39を閉塞するように、液体室21の上面に接触する。張出部56は、ピストン55の第2方向D2への移動範囲を規定するストッパー部として機能する。
【0078】
なお、張出部56が液体室21の上面に到達した状態では、第2壁部24Hを支持している弾性部材28は圧縮されて、第2壁部24Hに第2方向D2への弾性力を付与する状態になっていることが望ましい。これによって、液体室21と圧力室33との間のシール性が高められる。
【0079】
拡大変位機構20Hの第2壁部24Hは、弾性部材28からの弾性力を受けた状態で液体室21内において変位する。アクチュエーター41が伸長すると、第2壁部24Hは、第1壁面24aにおいて液体22から受ける圧力によって、弾性部材28の圧縮による第2方向D2への弾性力が生じる状態で、第1方向D1に変位する。第2壁部24Hが第1方向D1に変位すると、ピストン55の張出部56の変位によってノズル32から吐出液体DLが吐出される。アクチュエーター41が収縮すると、第2壁部24Hは、弾性部材28の弾性力に補助されて、第2方向D2に変位する。
【0080】
第8実施形態の拡大変位機構20Hによれば、第7実施形態の拡大変位機構20Gよりも簡易な構成で、第2壁部24Gを、第2方向D2に働く弾性力が生じる状態で第1方向D1に変位させることができる。また、第8実施形態のヘッド部30Hによれば、ピストン55の張出部56によって、ノズル32から吐出される吐出液体DLの吐出量を増大させることができる。その他に、第8実施形態の拡大変位機構20Hおよびそれを備える液体噴射装置100Hによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0081】
9.第9実施形態:
図12を参照して、第9実施形態における拡大変位機構20Iおよびそれを備える液体噴射装置100Iの構成を説明する。図12は、第9実施形態のヘッド部30Iの内部構成を示す概略断面図である。第9実施形態の液体噴射装置100Iの構成は、第8実施形態のヘッド部30Hの代わりに、第9実施形態のヘッド部30Iを備えている点以外は、第8実施形態の液体噴射装置100Hの構成とほぼ同じである。第9実施形態のヘッド部30Iの構成は、追加弾性部材28sと支持壁部29とが追加されている点と、ピストン55から張出部56が省略されている点とが、第8実施形態のヘッド部30Hの構成と異なる。第9実施形態のヘッド部30Iの構成は、以下に説明する点以外は第8実施形態のヘッド部30Hの構成とほぼ同じである。
【0082】
第9実施形態の拡大変位機構20Iでは、アクチュエーター41が伸長していない初期状態において、第2壁部24Hに対して第1方向D1に弾性力を付与する追加弾性部材28sが、第2壁部24Hの上方に配置されている。第9実施形態の液体室21には、第2壁部24Hの上方に、追加弾性部材28sを上方から受け止めるための支持壁部29が、設けられている。追加弾性部材28sは、第2壁部24Hと支持壁部29とに挟まれて圧縮された状態で配置されている。第9実施形態では、追加弾性部材28sは、皿ばねによって構成されている。追加弾性部材28sは、皿ばねによって構成されていなくてもよい。追加弾性部材28sは、例えば、スプリングコイルによって構成されてもよい。
【0083】
第9実施形態の拡大変位機構20Iによれば、張出部56が省略されていても、弾性部材28が追加弾性部材28sの弾性力によって初期的に圧縮されているため、弾性部材28による液体室21のシール性が高められた状態が維持される。また、第9実施形態のヘッド部30Iによれば、張出部56が省略されていることによって、圧力室33においてピストン55が吐出液体DLから受ける抵抗が低減されている。そのため、ピストン55を効率よく高速に運動させることができる。その他に、第9実施形態の拡大変位機構20Iおよびそれを備える液体噴射装置100Iによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0084】
10.第10実施形態:
図13を参照して、第10実施形態における拡大変位機構20Jおよびそれを備える液体噴射装置100Jの構成を説明する。図13は、第10実施形態のヘッド部30Jの内部構成を示す概略断面図である。第10実施形態の液体噴射装置100Jの構成は、第3実施形態のヘッド部30Cの代わりに、第10実施形態のヘッド部30Jを備えている点以外は、第3実施形態の液体噴射装置100Cの構成とほぼ同じである。第10実施形態のヘッド部30Jの構成は、主に、アクチュエーター41の伸縮方向および第1壁部23の変位方向が変更されている点が、第3実施形態のヘッド部30Cの構成と異なる。第10実施形態のヘッド部30Jの構成は、以下に説明する点以外は、第3実施形態のヘッド部30Cの構成と基本的に同じである。
【0085】
第10実施形態のヘッド部30Jでは、アクチュエーター41は、その伸縮方向が、液体室21から圧力室33に向かう方向(つまり、重力方向)にほぼ直交するように配置されている。また、第10実施形態の拡大変位機構20Jでは、第1壁部23は、その変位方向が、第2壁部24の変位方向とほぼ直交するように重力方向に沿って配置されている。拡大変位機構20Jは、重力方向に沿った高さが、水平方向に沿った幅よりも大きく構成されている。
【0086】
第10実施形態の拡大変位機構20Jによれば、第1壁部23の重力方向における幅を大きくとることによって、液体22に面する領域の面積S1を、第2壁部24の液体22に面する領域の面積S2よりも大きくすることができる。従って、拡大変位機構20Jを水平方向においてコンパクトに構成することができる。よって、複数のノズル32を水平方向に配列する場合に、拡大変位機構20Jによって、ノズル32同士の間隔が広がってしまうことを抑制できる。その他に、第10実施形態の拡大変位機構20Jおよびそれを備える液体噴射装置100Jによれば、上記の各実施形態中において説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0087】
11.第11実施形態:
図14を参照して、第11実施形態における拡大変位機構20Kおよびそれを備える液体噴射装置100Kの構成を説明する。図14は、第11実施形態のヘッド部30Kの内部構成を示す概略断面図である。第11実施形態の液体噴射装置100Kの構成は、第10実施形態のヘッド部30Jの代わりに、第11実施形態のヘッド部30Kを備えている点以外は、第10実施形態の液体噴射装置100Jの構成とほぼ同じである。第11実施形態のヘッド部30Kの構成は、第4実施形態で説明した第2壁部24Dおよび弾性部材26a,26b(図7)の構成が適用されている第11実施形態の拡大変位機構20Kを備えている点以外は、第10実施形態のヘッド部30Jの構成と基本的に同じである。第11実施形態の拡大変位機構20Kおよびそれを備える液体噴射装置100Kにおいても、上記の各実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0088】
12.第12実施形態:
図15を参照して、第12実施形態における拡大変位機構20Lおよびそれを備える液体噴射装置100Lの構成を説明する。図15は、第12実施形態のヘッド部30Lの内部構成を示す概略断面図である。第12実施形態の液体噴射装置100Lの構成は、第11実施形態のヘッド部30Kの代わりに、第12実施形態のヘッド部30Lを備えている点以外は、第11実施形態の液体噴射装置100Kの構成とほぼ同じである。第12実施形態のヘッド部30Lの構成は、第2壁部24Dが、第1壁部23と同様に重力方向に沿って配置されるように配置され、圧力室33の側壁面を構成している点以外は、第11実施形態のヘッド部30Kの構成と基本的に同じである。なお、第2壁部24Dは、第1壁部23よりも下方にオフセットされた位置に設けられている。第12実施形態のヘッド部30Lによれば、第2壁部24Dの変位方向と異なる方向に吐出液体DLを吐出することができる。また、第12実施形態の拡大変位機構20Lおよびそれを備える液体噴射装置100Lによっても、上記の各実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0089】
13.第13実施形態:
図16は、第13実施形態における液体噴射装置100Mの全体構成を示す概略ブロック図である。第13実施形態の液体噴射装置100Mは、以下に説明する点以外は、第3実施形態の液体噴射装置100C(図5)の構成ほぼ同じである。液体噴射装置100Mの供給部110は、圧力調整部115の代わりに、加圧ポンプ117を備えており、第3実施形態のヘッド部30Cの代わりに第13実施形態のヘッド部30Mを備えている。また、液体噴射装置100Mは、循環部120を備えている。循環部120は、排出路121と、液体貯留部122と、負圧発生源123と、循環路124と、を備えている。
【0090】
加圧ポンプ117は、タンク111内の吐出液体DLを、供給路116を通じてヘッド部30Mに圧送する。ヘッド部30Mの構成については後述する。排出路121は、ヘッド部30Mと液体貯留部122とを接続している。ヘッド部30Mによって吐出されなかった吐出液体DLは、排出路121を通じて液体貯留部122に排出される。液体貯留部122には、負圧発生源123が接続されている。負圧発生源123は、液体貯留部122内を負圧にすることにより、排出路121を通じてヘッド部30Mから吐出液体DLを吸引する。負圧発生源123は、各種のポンプによって構成される。
【0091】
液体噴射装置100Mでは、加圧ポンプ117による加圧と負圧発生源123による減圧とによって、ヘッド部30Mの圧力室33(後に参照する図17において図示)の圧力が調整される。液体噴射装置100Mでは、加圧ポンプ117および負圧発生源123のいずれか一方を省略してもよい。加圧ポンプ117が省略される場合には、負圧発生源123がタンク111からヘッド部30Mへと吐出液体DLを圧送するための圧力を発生させる供給部110の一構成要素として機能していると解釈できる。
【0092】
循環路124は、排出路121を通じてヘッド部30Mから排出された吐出液体DLを、ヘッド部30Mの圧力室33に循環させるための流路である。循環路124は、液体貯留部122とタンク111とを接続している。排出路121を通じて液体貯留部122に貯留された吐出液体DLは、循環路124を通じてタンク111に戻され、再び、供給路116を通じて、ヘッド部30Mの圧力室33に供給される。なお、循環路124には、液体貯留部122から液体を吸引するためのポンプが備えられていてもよい。
【0093】
液体噴射装置100Mでは、循環路124を備えていることによって、ヘッド部30Mから流出した吐出液体DLを再利用することができる。よって、吐出液体DLが無駄に消費されてしまうことを抑制することができ、吐出液体DLの利用効率を高めることができる。なお、液体貯留部122やタンク111には、再利用される吐出液体DLの濃度や粘度、温度など、種々の状態を調整する調整部が設けられていてもよい。また、排出路121や循環路124には、吐出液体DLに含まれる気泡や異物を除去するためのフィルター部が設けられていてもよい。
【0094】
図17は、第13実施形態のヘッド部30Mの内部構成を示す概略断面図である。第13実施形態のヘッド部30Mの構成は、排出流路60が追加されている点が、第3実施形態のヘッド部30Cの構成と異なる。第13実施形態のヘッド部30Mの構成は、以下に説明する点以外は第3実施形態のヘッド部30Cの構成とほぼ同じであり、ヘッド部30Mは、第3実施形態で説明した拡大変位機構20Cを備える。
【0095】
排出流路60は、吐出液体DLが流通する流路のひとつである。排出流路60は、筐体31内に設けられており、圧力室33に接続されている。圧力室33の吐出液体DLは、排出流路60を通じて、排出路121に流出する。
【0096】
液体噴射装置100Mのヘッド部30Mでは、圧力室33において、供給流路35から排出流路60へと向かう吐出液体DLの流れを生じさせることができる。よって、ヘッド部30M内での吐出液体DL内の沈降成分の堆積や吐出液体DLの溶媒成分の蒸発に伴う濃度変化など、ヘッド部30Mにおける吐出液体DLの滞留によって生じる吐出液体DLの劣化が抑制される。そのため、そうした圧力室33の吐出液体DLの劣化に起因する吐出不良の発生が抑制される。また、液体噴射装置100Mでは、圧力室33に気泡が生じてしまったとしても、その気泡を、吐出液体DLとともに、排出流路60から排出させることができる。よって、圧力室33の気泡に起因する吐出不良の発生が抑制される。その他に、拡大変位機構20Cを備える第13実施形態の液体噴射装置100Mによれば、上記の各実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0097】
14.第14実施形態:
図18を参照して、第14実施形態における液体噴射装置100Nの構成を説明する。図18は、第14実施形態のヘッド部30Nの内部構成を示す概略断面図である。第14実施形態の液体噴射装置100Nの構成は、第13実施形態のヘッド部30Mの代わりに、第14実施形態のヘッド部30Nを備えている点以外は、第13実施形態の液体噴射装置100Mの構成とほぼ同じである。第14実施形態のヘッド部30Nの構成は、拡大変位機構20Cの第2壁部24が変位したときに、圧力室33に接続されている流路である供給流路35および排出流路60が圧力室33に対して閉塞される点が、第13実施形態のヘッド部30Mの構成と異なる。第14実施形態のヘッド部30Nの構成は、以下に説明する点以外は第13実施形態のヘッド部30Mの構成とほぼ同じである。
【0098】
第14実施形態のヘッド部30Nでは、アクチュエーター41が伸長したときに、第2壁部24は、第2壁面24bが供給流路35および排出流路60の開口端部に接触して、供給流路35および排出流路60が圧力室33に対してほぼ閉塞されるように、ノズル32に向かって撓む。これによって、供給流路35および排出流路60のそれぞれと圧力室33との間の接続が遮断され、ノズル32から吐出液体DLを吐出するために圧力室33内に生じさせた圧力が各流路35,60へと抜けてしまうことを抑制することができる。よって、ヘッド部30Nにおける吐出液体DLの吐出効率を高めることができる。また、圧送撓み変形した第2壁部24によってノズル32が閉塞された状態にあれば、加圧ポンプ117(図16)によって供給路116を通じて供給流路35に供給される吐出液体DLの圧力が高めても、ノズル32からの吐出液体DLの漏洩が抑制される。よって、供給流路35における吐出液体DLの圧力を高めることによって、供給流路35が開かれた後の圧力室33への吐出液体DLの充填時間を短縮することができる。その他に、拡大変位機構20Cを備える第14実施形態の液体噴射装置100Nによれば、上記の各実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0099】
15.第15実施形態:
図19は、第15実施形態の拡大変位機構20Pを備える変位発生装置10Pの構成を示す概略図である。第15実施形態の変位発生装置10Pの構成は、第2実施形態の拡大変位機構20Bに代えて、第15実施形態の拡大変位機構20Pを備えている点以外は、第2実施形態の変位発生装置10Bの構成とほぼ同じである。第15実施形態の拡大変位機構20Pの構成は、第1壁部23の第1壁面23aに凸構造65が設けられている点以外は、第2実施形態の拡大変位機構20Bの構成とほぼ同じである。
【0100】
第15実施形態の拡大変位機構20Pでは、第1壁部23の第1壁面23aに、凸構造65が、第1壁部23の変位方向に突出するように設けられている。第15実施形態では、凸構造65は、第2壁部24に向かって延びている円柱形状を有している。凸構造65の形状は、円柱形状には限定されない。凸構造65は、例えば、直方体形状を有していてもよい。また、第1壁部23には、複数の凸構造65が設けられてもよい。
【0101】
拡大変位機構20Pでは、液体室21において液体22を収容可能な空間容積が、その凸構造65の体積の分だけ低減されており、液体室21に充填される液体22の量が低減されている。従って、アクチュエーター41の伸縮によって生じる圧力が、第2壁部24に伝達することなく、液体22の体積の圧縮によって吸収されてしまうことが抑制される。よって、アクチュエーター41の駆動力を効率よく第2壁部24に伝達することができる。その他に、第15実施形態の拡大変位機構20Pによれば、第1実施形態や第2実施形態、第15実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。なお、第15実施形態の凸構造65は、第1実施形態の拡大変位機構20Aや、第3実施形態およびそれ以降の実施形態の拡大変位機構20C〜20Nに適用されてもよい。
【0102】
16.第16実施形態:
図20を参照して、第16実施形態における拡大変位機構20Qの構成を説明する。図20は、第16実施形態の拡大変位機構20Qを備える変位発生装置10Qの構成を示す概略図である。第16実施形態の変位発生装置10Qの構成は、第2実施形態の拡大変位機構20Bに代えて、第16実施形態の拡大変位機構20Qを備えている点以外は、第2実施形態の変位発生装置10Bの構成とほぼ同じである。第16実施形態の拡大変位機構20Qは、調整部70を備えている点以外は、第2実施形態の拡大変位機構20Bの構成とほぼ同じである。
【0103】
第16実施形態の拡大変位機構20Qは、その変位特性を調整するための調整部70が設けられている。調整部70は、調整ネジ71と、筐体11に設けられたネジ穴72と、押圧板73と、によって構成される。調整ネジ71は、駆動室12まで貫通しているネジ穴72に挿通されている。調整ネジ71は、その先端部が、駆動室12に配置されている押圧板73を介してアクチュエーター15の第1端部15aを押圧するように、ネジ穴72に取り付けられている。
【0104】
拡大変位機構20Qでは、調整部70の調整ネジ71を回転させて、駆動室12に突出している調整ネジ71の長さを増加させることによって、アクチュエーター15の位置を液体室21に向かって移動させることができる。調整ネジ71によってアクチュエーター15の位置を変化させれば、アクチュエーター15が伸長していないときの初期状態における第1壁部23の液体室21に向かう方向への変位量および第2壁部24の液体室21から離れる方向への変位量が変化する。よって、拡大変位機構20Qでは、調整部70の調整ネジ71の回転によって、第1壁部23および第2壁部24の初期状態での変位量を調整することができ、それによって、拡大変位機構20Qの変位特性を調整することができる。その他に、第16実施形態の拡大変位機構20Qによれば、第1実施形態や第2実施形態、第16実施形態中で説明した種々の作用効果を奏することができる。なお、第16実施形態の調整部70は、第1実施形態の拡大変位機構20Aや、第3実施形態およびそれ以降の各実施形態における拡大変位機構20C〜20Nに適用されてもよい。
【0105】
17.他の実施形態:
上記の各実施形態で説明した種々の構成は、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記の各実施形態と同様に、発明を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0106】
17−1.他の実施形態1:
上記の各実施形態において、アクチュエーター41は、ピエゾ素子によって構成されていなくてもよい。アクチュエーター41は、例えば、例えば、エアシリンダーやソレノイド、磁歪素子などによって構成されてもよい。
【0107】
17−2.他の実施形態2:
上記の各実施形態において、液体22に分散されているフィラー25は省略されてもよい。また、上記の各実施形態において、液体室21中に、フィラー25の沈降を抑制するために、液体22を攪拌する攪拌機構が設けられてもよい。
【0108】
17−3.他の実施形態3:
上記の第5実施形態、第6実施形態、第7実施形態、第8実施形態、第9実施形態の液体噴射装置100E〜100Iにおいて、第1壁部23Eが、第10実施形態や第11実施形態で説明したように、重力方向に沿って配置されてもよい。
【0109】
17−4.他の実施形態4:
上記の第13実施形態の液体噴射装置100Mのヘッド部30Mにおいて、上記の第4実施形態、第5実施形態、第6実施形態、第7実施形態、第8実施形態、第9実施形態、第10実施形態、第11実施形態、第12実施形態の拡大変位機構20D〜20Lの構成が適用されてもよい。
【0110】
17−5.他の実施形態5:
上記の第3実施形態から第14実施形態の液体噴射装置10C〜10Nにおいて、ヘッド部30C〜30Nは、複数のノズル32が配列されている構成を有していてもよい。この場合には、筐体31内に、ノズル32の数に対応する数の複数の圧力室33と、複数の拡大変位機構20C〜20Lと、が設けられているものとしてもよい。また、各ノズル32からは、例えば、組成や濃度、含有成分、色などが異なる吐出液体DLが吐出されてもよい。
【0111】
17−6.他の実施形態6:
上記の第14実施形態において、排出流路60は省略されていてもよい。
【0112】
17−7.他の実施形態7:
本発明は、インクを吐出する液体噴射装置に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置に本発明は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体噴射装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体噴射装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体噴射装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体噴射装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドを備える液体噴射装置。
【0113】
本明細書において、「液体」とは、液体噴射装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であればよく、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。液体の代表的な例としてはインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。また、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。
【0114】
17−8.他の実施形態8:
上記実施形態において、ソフトウェアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ハードウェアによって実現されてもよい。また、ハードウェアによって実現された機能及び処理の一部又は全部は、ソフトウェアによって実現されてもよい。ハードウェアとしては、例えば、集積回路、ディスクリート回路、または、それらの回路を組み合わせた回路モジュールなど、各種回路を用いることができる。
【0115】
本発明は、上述の実施形態(他の実施形態を含む)や実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須ではないと説明されているものに限らず、その技術的特徴が本明細書中に必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
10A…変位発生装置、10B…変位発生装置、10P…変位発生装置、10Q…変位発生装置、11…筐体、12…駆動室、13…固定部、14…連結部、15…アクチュエーター、15a…第1端部、15b…第2端部、20A…拡大変位機構、20B…拡大変位機構、20C…拡大変位機構、20D…拡大変位機構、20E…拡大変位機構、20F…拡大変位機構、20G…拡大変位機構、20H…拡大変位機構、20I…拡大変位機構、20J…拡大変位機構、20K…拡大変位機構、20L…拡大変位機構、20P…拡大変位機構、20Q…拡大変位機構、21…液体室、22…液体、23…第1壁部、23E…第1壁部、23a…第1壁面、23b…第2壁面、24…第2壁部、24D…第2壁部、24G…第2壁部、24H…第2壁部、24a…第1壁面、24b…第2壁面、25…フィラー、26a…第1弾性部材、26b…第2弾性部材、26bG…第2弾性部材、26c…第3弾性部材、27…弾性部材、28…弾性部材、28s…追加弾性部材、29…支持壁部、30C…ヘッド部、30D…ヘッド部、30E…ヘッド部、30F…ヘッド部、30G…ヘッド部、30H…ヘッド部、30I…ヘッド部、30J…ヘッド部、30K…ヘッド部、30L…ヘッド部、30M…ヘッド部、30N…ヘッド部、31…筐体、32…ノズル、33…圧力室、35…供給流路、38…中間室、39…貫通孔、40…駆動室、41…アクチュエーター、41a…第1端部、41b…第2端部、42…固定部、43…連結部、50…ピストン、55…ピストン、56…張出部、60…排出流路、65…凸構造、70…調整部、71…調整ネジ、72…ネジ穴、73…押圧板、100C…液体噴射装置、100D…液体噴射装置、100E…液体噴射装置、100F…液体噴射装置、100G…液体噴射装置、100H…液体噴射装置、100I…液体噴射装置、100J…液体噴射装置、100K…液体噴射装置、100L…液体噴射装置、100M…液体噴射装置、100N…液体噴射装置、101…制御部、110…供給部、111…タンク、115…圧力調整部、116…供給路、117…加圧ポンプ、120…循環部、121…排出路、122…液体貯留部、123…負圧発生源、124…循環路、D1…第1方向、D2…第2方向、DL…吐出液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20