特許第6939414号(P6939414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939414
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】超音波デバイス、及び超音波測定装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20210909BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20210909BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H04R17/00 330F
   A61B8/14
   G01S7/521 A
   H04R17/00 332A
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-207578(P2017-207578)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-80249(P2019-80249A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 栄治
【審査官】 辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0115656(KR,A)
【文献】 特開2017−085426(JP,A)
【文献】 特開2002−271897(JP,A)
【文献】 特開2009−296055(JP,A)
【文献】 特開2016−072862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
A61B 8/14
G01S 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一開口と第二開口とを有する基板と、
前記基板に設けられ、前記第一開口及び前記第二開口を閉塞する支持膜と、
前記支持膜において前記基板の厚み方向から見た際に前記第一開口と重なる位置に設けられ、前記基板の厚み方向において一対の電極に挟まれた送信用圧電膜と、
前記支持膜において前記基板の厚み方向から見た際に前記第二開口と重なる位置に設けられ、前記基板の厚み方向において一対の電極に挟まれた受信用圧電膜と、
を備え、
前記基板の厚み方向に対する前記送信用圧電膜の厚み寸法は、前記受信用圧電膜の厚み寸法よりも大きく、
前記基板の厚み方向から見た際に、前記送信用圧電膜と当該送信用圧電膜を挟み込む前記一対の電極とが重なる面積を第一面積とし、前記受信用圧電膜と当該受信用圧電膜を挟み込む前記一対の電極とが重なる面積を第二面積とした際に、前記第二面積は前記第一面積よりも小さい
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波デバイスにおいて、
前記受信用圧電膜と、前記受信用圧電膜を挟み込む前記一対の電極とにより構成される受信トランスデューサーが複数設けられ、
複数の前記受信トランスデューサーは、直列接続されている
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の超音波デバイスと、
前記超音波デバイスを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波デバイス、及び超音波測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波の送信処理及び受信処理を行う超音波トランスデューサーとして、一対の電極により挟まれた圧電体を備え、電極間に電圧を印加して圧電体自身を振動させて超音波を送信したり、超音波が入力された圧電体からの出力電圧を検出することで超音波を受信したりする、いわゆるバルク型の圧電体を用いた超音波トランスデューサーが知られている。
しかしながら、このようなバルク型の圧電体では、圧電体の厚み寸法を厚く形成する必要があり、薄型化や小型化が困難となる。
【0003】
これに対して、開口を有する支持体の前記開口を覆うように設けられた振動膜と、振動膜上に設けられ、一対の電極により挟まれた圧電膜とにより構成された、薄膜型の圧電膜を用いた超音波トランスデューサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような超音波トランスデューサーでは、電極間への電圧印加によって振動膜を振動させて超音波を送信し、振動膜の振動により圧電膜からの出力電圧により超音波の受信を検出する。このような薄膜型の圧電体により振動膜を振動させる超音波トランスデューサーでは、バルク型の超音波トランスデューサーに比べて、超音波の送受信方向に対する厚み寸法を大幅に縮小でき、超音波測定装置の薄型化及び小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−271897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄膜型の超音波トランスデューサーでは、振動膜の振動により超音波を送信させた後、反射された超音波により振動される振動膜により圧電膜が歪むことで超音波の受信を検出する。この場合、超音波を送信させる際には、振動膜を大きく変位させることで高出力の超音波を出力し、超音波を受信する際には、振動膜の振動が小さい場合でも高感度に振動を検出して超音波の受信を検出する必要がある。したがって、それぞれの機能に応じた特性となるように、送信用の超音波トランスデューサーと受信用の超音波トランスデューサーとを構成する必要がある。したがって、上記特許文献1に記載のような超音波トランスデューサーを送受兼用の超音波トランスデューサーとしたり、送信用と受信用とで同一構成の超音波トランスデューサーを用いたりすると、超音波の送受信効率が低下するとの課題がある。
【0006】
本発明は、超音波の送受信効率が高い超音波デバイス、及び超音波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一適用例に係る超音波デバイスは、第一開口と第二開口とを有する基板と、前記基板に設けられ、前記第一開口及び前記第二開口を閉塞する支持膜と、前記支持膜において前記基板の厚み方向から見た際に前記第一開口と重なる位置に設けられ、前記基板の厚み方向において一対の電極に挟まれた送信用圧電膜と、前記支持膜において前記基板の厚み方向から見た際に前記第二開口と重なる位置に設けられ、前記基板の厚み方向において一対の電極に挟まれた受信用圧電膜と、を備え、前記基板の厚み方向に対する前記送信用圧電膜の厚み寸法は、前記受信用圧電膜の厚み寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本適用例では、超音波デバイスは、第一開口部を閉塞する支持膜と、送信用圧電膜と、当該送信用圧電膜を挟み込む一対の電極とにより送信用の超音波トランスデューサー(送信トランスデューサー)が構成される。また、第二開口部を閉塞する支持膜と、受信用圧電膜と、当該受信用圧電膜を挟み込む一対の電極とにより受信用の超音波トランスデューサー(受信トランスデューサー)が構成される。そして、送信トランスデューサーを構成する送信用圧電膜は、受信トランスデューサーを構成する受信用圧電膜の厚み寸法よりも大きく形成されている。
このような構成では、送信トランスデューサーと、受信トランスデューサーとがそれぞれ別体として設けられているので、送信トランスデューサーにおいては、超音波の送信に適した特性とし、受信トランスデューサーにおいては、超音波の受信に適した特性とすることができる。よって、1つの超音波トランスデューサーで、超音波の送信及び受信を行う場合に比べて、超音波の送受信効率を向上させることができる。つまり、超音波の送信においては、音圧の高い超音波を送信することができ、超音波の受信においては、高い受信効率で、高精度に超音波を受信できる。
【0009】
ところで、送信トランスデューサーでは、所定の印加電界に対して出力される超音波は、送信用圧電膜の厚み寸法が大きい程、大きい音圧が出力される。すなわち、送信トランスデューサーでは、超音波の送信効率を向上させるために、送信用圧電膜の厚み寸法を大きくすることが好ましい。
一方、受信トランスデューサーにおいて、音源からの所定の音圧に対する受信用圧電膜の変位量は、受信用圧電膜の厚み寸法が小さい程大きくなり、受信用圧電膜から出力される信号値も大きくなる。すなわち、受信トランスデューサーでは、超音波の受信効率を向上させるために、受信用圧電膜の厚み寸法を小さくすることが好ましい。
本適用例では、送信用圧電膜が、受信用圧電膜よりも厚み寸法が大きくなるように構成されている。つまり、1つの超音波トランスデューサーにより超音波の送受信を行う場合、或いは、同じ厚み寸法の圧電膜を用いて、送信用のトランスデューサーと受信用のトランスデューサーとを構成する場合等に比べて、送信トランスデューサーにおける超音波の送信効率を高く、受信トランスデューサーにおける超音波の受信効率を高くすることができ、超音波デバイスにおける送受信効率の向上を図れる。
【0010】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記基板の厚み方向から見た際に、前記送信用圧電膜と当該送信用圧電膜を挟み込む前記一対の電極とが重なる面積を第一面積とし、前記受信用圧電膜と当該受信用圧電膜を挟み込む前記一対の電極とが重なる面積を第二面積とした際に、前記第二面積は前記第一面積よりも小さいことが好ましい。
【0011】
超音波を受信した際に受信トランスデューサーから出力される受信信号は、受信用圧電膜が変形した際に発生する、当該受信用圧電膜を挟み込む一対の電極間の電位差となる。この電位差は、電極間の静電容量に対して反比例し、静電容量を小さくする程、電位差が大きくなる。また、電極間の静電容量は電極面積に比例し、電極面積が小さい程、静電容量は小さくなる。
本適用例では、基板の厚み方向から見た平面視において、受信用圧電膜と一対の電極とが重なる第二面積(電極面積)が、送信用圧電膜と一対の電極とが重なる第一面積(電極面積)よりも小さくなる。このため、受信トランスデューサーにおける電極間の静電容量が小さくなるので、受信トランスデューサーにおいて、超音波を受信した際の受信信号の電圧が大きくなり、受信効率の更なる向上を図れる。
【0012】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記受信用圧電膜と、前記第一の前記受信用圧電膜を挟み込む一対の電極とにより構成される受信トランスデューサーが複数設けられ、複数の前記受信トランスデューサーは、直列接続されていることが好ましい。
【0013】
本適用例では、複数の受信トランスデューサーが直列接続される。
このように、複数の受信トランスデューサーを直列接続すると、これらの各受信トランスデューサーで受信された受信信号が加算されて出力されることになり、受信信号の電圧を上げることができる。言い換えると、直列接続された複数の受信トランスデューサーにより1つの受信素子群が形成され、当該受信素子群における見かけ上の静電容量が、直列接続される受信トランスデューサーの数に応じて小さくなるので、受信信号の電圧を上げることができる。
【0014】
本発明の一適用例に係る超音波測定装置は、上述したような超音波デバイスと、前記超音波デバイスを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
本適用例では、上述したように、超音波デバイスにおける送受信効率を向上させることができる。したがって、このような超音波デバイスを制御部により制御することで、送受信効率の高い超音波の送受信処理を実施でき、その結果に基づいて精度の高い超音波測定を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る超音波デバイスの概略構成を示す図。
図2】第一実施形態の超音波デバイスの一部を拡大した拡大平面図。
図3図2におけるB−B線に沿った超音波デバイスの断面図。
図4】送信用圧電膜の厚み寸法と、送信トランスデューサーから出力される超音波の音圧との関係を示す図。
図5】受信用圧電膜の厚み寸法と、受信トランスデューサーで超音波を受信した際の第二振動部の変位量との関係を示す図。
図6】本発明の第二実施形態に係る超音波デバイスの一部を拡大した拡大平面図。
図7】本発明の第三実施形態に係る超音波デバイスの一部を拡大した拡大平面図。
図8図7におけるC−C線に沿った超音波デバイスの断面図。
図9】第三実施形態の超音波デバイス10Bの概略回路図。
図10】本発明の第四実施形態に係る距離センサーの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る超音デバイスについて、図面に基づいて説明する。
図1は、超音波デバイス10の概略構成を示す図である。なお、図1では、説明の便宜上、超音波トランスデューサー(送信トランスデューサー111,受信トランスデューサー121)の数を減らして表示しているが、実際にはより多くの超音波トランスデューサーがY方向及びX方向に沿って配置されている。
ここで、以下の説明において、超音波デバイス10の厚み方向をZ方向とし、Z方向に対して直交する2軸方向を、それぞれX軸及びY軸とする。
超音波デバイス10は、図1に示すように、Z方向を厚み方向とした例えば矩形平板状に形成されており、XY平面内に、超音波送信部11と、超音波受信部12と、信号電極線SLと、コモン電極線CLと、第一信号端子SAと、第二信号端子SBと、コモン端子CAと、が配置されて構成されている。そして、この超音波デバイス10は、超音波送信部11により、空気等の媒質に超音波を送信し、超音波受信部12により、空気中を伝搬して入力された超音波を受信する。
【0017】
超音波送信部11には、送信用の超音波トランスデューサー(以降、送信トランスデューサー111と略す)が複数設けられ、これら複数の送信トランスデューサー111が、Y方向に沿って配置されて構成される。
超音波受信部12には、受信用の超音波トランスデューサー(以降、受信トランスデューサー121と略す)が複数設けられ、これら複数の受信トランスデューサー121が、Y方向に沿って配置されて構成される。
本実施形態の超音波デバイス10では、複数の超音波送信部11及び超音波受信部12が、X方向に対して交互に配置されており、1つの超音波送信部11により1つの送信チャネルが構成され、1つの超音波受信部12により1つの受信チャネルが構成される。なお、複数の超音波送信部11により送信チャネルが構成されてもよく、同様に、複数の超音波受信部12により1つの受信チャネルが構成されてもよい。
また、超音波送信部11及び超音波受信部12の配置としても、上記のように、X方向に交互に配置される構成に限られず、例えば、超音波デバイス10のX方向の中心部を境として−X側に複数の超音波送信部11が配置され、+X側に複数の超音波受信部12が配置される構成などとしてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態の超音波デバイス10の一部(図1に示す領域A)を拡大した送信トランスデューサー111及び受信トランスデューサー121の拡大平面図である。図3は、図2におけるB−B線に沿った超音波デバイス10の断面図である。
超音波デバイス10は、図3に示すように、素子基板101と、素子基板101に積層された支持膜102と、支持膜102上に設けられた送信圧電素子112と、支持膜102上に設けられた受信圧電素子122と、を備えている。
素子基板101は、例えばSi等の半導体基板である。この素子基板101には、各送信トランスデューサー111の配置位置と重なる位置に設けられた第一開口101A、各受信トランスデューサー121の配置位置と重なる位置に設けられた第二開口101Bと、が設けられている。これらの第一開口101A及び第二開口101Bは、素子基板101の一面側(図3における−Z側)に設けられた支持膜102により閉塞されている。なお、第一開口101A及び第二開口101Bの開口幅(開口面積)は、送受信される超音波の周波数に基づいて設定される。
【0019】
支持膜102は、例えばSiOの単層や、SiO、ZrO、及びYSZ(イットリウム安定化ジルコニウム)の積層体等より構成され、素子基板101の−Z側の面全体を覆って設けられている。この支持膜102の厚み寸法は、素子基板101に対して十分小さい厚み寸法となる。なお、SiOのヤング率は75GPa程度である。また、ZrOのヤング率は200GPa程度である。
ここで、支持膜102のうち、素子基板101及び支持膜102の厚み方向(Z方向)から見た平面視において、第一開口101Aと重なる領域は第一振動部102Aを構成し、第二開口101Bと重なる領域は第二振動部102Bを構成する。つまり、第一振動部102Aは、第一開口101Aを囲う隔壁部101Cにより支持され、第二振動部102Bは、第二開口101Bを囲う隔壁部101Cにより支持されている。
【0020】
送信圧電素子112は、第一開口101Aを閉塞する第一振動部102Aとともに、送信トランスデューサー111を構成する。
この送信圧電素子112は、図2及び図3に示すように、送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、及び上部電極112Cの積層体により構成されており、第一振動部102A上に設けられる。送信下部電極112A及び上部電極112Cは、送信用圧電膜112Bを基板の厚み方向において挟み込む本発明の一対の電極を構成する。
【0021】
送信下部電極112Aは、Y方向に沿う直線状に形成されており、複数の送信トランスデューサー111に跨って設けられる。したがって、Y方向に並ぶ送信トランスデューサー111において、送信下部電極112Aは同電位となる。この送信下部電極112Aは、図1に示すように、信号電極線SLによって、支持膜102の±Y側の外周部に配置された対応する第一信号端子SAに接続される。
【0022】
送信用圧電膜112Bは、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体の薄膜により形成され、第一振動部102A上で送信下部電極112Aを覆うように構成される。この送信用圧電膜112Bの厚み寸法t(Z方向における寸法)は、後述する受信用圧電膜122Bの厚み寸法tよりも大きく形成されている。なお、図3に示すように、送信用圧電膜112Bの側面部を覆うように保護膜124が設けられる構成としてもよい。
上部電極112Cは、X方向に沿う直線状に形成されており、X方向に並ぶ複数の超音波トランスデューサー(送信トランスデューサー111及び受信トランスデューサー121)に跨って設けられる。また、各上部電極112Cは、コモン電極線CLによって接続されており、支持膜102の外周部(例えば±Y側)に設けられたコモン端子CAに接続されている(図1参照)。つまり、本実施形態では、上部電極112Cは、X方向に並ぶ送信圧電素子112と受信圧電素子122とにおいて共通の電極として機能し、各送信トランスデューサー111及び各受信トランスデューサー121に同一のコモン電位が印加される。
【0023】
受信圧電素子122は、第二開口101Bを閉塞する第二振動部102Bとともに、受信トランスデューサー121を構成する。
この受信圧電素子122は、図2及び図3に示すように、受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、及び上部電極112Cの積層体であり、第二振動部102B上に設けられる。すなわち、受信下部電極122A及び上部電極112Cは、受信用圧電膜122Bを基板の厚み方向において挟み込む一対の電極を構成する。
【0024】
受信下部電極122Aは、送信圧電素子112の送信下部電極112Aと同様、Y方向に沿う直線状に形成されており、複数の受信トランスデューサー121に跨って設けられる。したがって、Y方向に並ぶ受信トランスデューサー121において、受信下部電極122Aは同電位となる。この受信下部電極122Aは、図1に示すように、信号電極線SLによって、支持膜102の±Y側の外周部に配置された対応する第二信号端子SBに接続されている。
【0025】
受信用圧電膜122Bは、送信用圧電膜112Bと同様、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体の薄膜により形成され、第二振動部102B上で受信下部電極122Aを覆うように構成される。この受信用圧電膜122Bの厚み寸法tは、上述のように、送信用圧電膜112Bの厚み寸法tよりも小さい。
送信用圧電膜112B及び受信用圧電膜122Bを構成するPZTは、ZrとTiの組成比が52:48であることが高い圧電特性を得るうえで好ましい。また、モノクリニックな結晶構造を有していると、より高い圧電特性を得ることができる。圧電体はPZTに限らず、BiFeMnO−BaTiO、KNaNbOなどのPbフリー材料であってもよい。PZTのヤング率は、薄膜では80GPa程度である。
送信下部電極112A、受信下部電極122A、及び上部電極112Cは、導電性、材料の安定性、及びPZTへの薄膜応力の観点から、Ti、Ir、TiO、IrO、Ptのうち、複数の材料を複合させて用いることが好ましい。送信下部電極112A、受信下部電極122A、及び上部電極112Cのヤング率は200GPa程度である。
【0026】
このような構成の超音波デバイス10では、送信下部電極112A及び上部電極112Cの間に所定周波数の矩形波電圧が印加されることで、第一振動部102Aが振動され、送信トランスデューサー111において、第一振動部102Aから第一開口101A側(+Z側)に向かって超音波を送信させる。
また、対象物で反射された超音波(反射波)が、第二開口101Bから第二振動部102Bに入力されると、第二振動部102Bが当該反射波によって振動する。これにより、受信下部電極122Aから受信用圧電膜122Bの変形量(歪み量)に応じた出力電圧が出力され、超音波の受信が検出される。
【0027】
[送信用圧電膜112B及び受信用圧電膜122Bの厚み寸法]
次に、上述したような送信トランスデューサー111及び受信トランスデューサー121の寸法について、以下に説明する。
図4は、送信用圧電膜112Bの厚み寸法tと、送信トランスデューサー111から空気中に出力される超音波の音圧との関係を示す図である。
図4に示すように、送信トランスデューサー111に印加する電界を同一とした場合、送信用圧電膜112Bの厚み寸法tが大きくなるほど、送信トランスデューサー111から出力される超音波の音圧も大きくなる。
【0028】
図5は、受信用圧電膜122Bの厚み寸法tと、空気中を伝搬した超音波を受信トランスデューサー121で受信した際の第二振動部102Bの変位量との関係を示す図である。
図5に示すように、受信トランスデューサー121に入力する超音波の音圧を同一とした場合、受信用圧電膜122Bの厚み寸法tが小さくなるほど、第二振動部102Bの変位量が大きくなり、受信トランスデューサー121から出力される受信信号の電圧も高くなる。
【0029】
そして、本実施形態の超音波デバイス10において、送信用圧電膜112Bの厚み寸法tが、受信用圧電膜122Bの厚み寸法tに比べて大きく形成されている。ここで、送信用圧電膜112Bは、厚み寸法tが1.3μm以上の厚み寸法に形成され、受信用圧電膜122Bは、厚み寸法tが1.0μm以下の厚み寸法に形成されることが好ましい。このような構成とすることで、超音波の送信時に送信トランスデューサー111を用いて超音波を送信し、超音波の受信時に、受信トランスデューサー121を用いて超音波を受信することで、超音波の送受信効率を向上させることができる。
【0030】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の超音波デバイス10は、超音波を送信する送信トランスデューサー111と、超音波を受信する受信トランスデューサー121とを有し、送信トランスデューサー111を構成する送信用圧電膜112Bの厚み寸法tは、受信トランスデューサー121を構成する受信用圧電膜122Bの厚み寸法tよりも大きい。
このため、超音波の送信時に送信トランスデューサー111を用いて超音波を送信し、超音波の受信時に受信トランスデューサー121を用いて超音波を受信することで、超音波の送受信効率を向上させることができる。
また、超音波デバイスとして、送受兼用の超音波トランスデューサーを複数配置し、各超音波トランスデューサーにおける圧電膜の厚み寸法を同一寸法とする場合、超音波の送信及び受信の双方の感度を向上させる必要がある。この場合、送受兼用超音波トランスデューサーの圧電膜を薄くすると送信効率が低下し、厚くすると受信効率が低下するため、超音波の送信効率及び受信効率の双方を高めるには限界がある。これに対して、本実施形態では、上記のように、送信トランスデューサー111及び受信トランスデューサー121がそれぞれ別体であり、かつ、送信用圧電膜112B及び受信用圧電膜122Bが、送信及び受信のそれぞれの特性に応じた厚み寸法に形成されている。このため、送受兼用の超音波トランスデューサーを用いる場合に比べて、超音波の送信効率と受信効率との双方を大きく向上させることができる。
【0031】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。なお、以降の説明にあたり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
上記第一実施形態では、Z方向から見た平面視において、送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、及び上部電極112Cが重なる面積(第一面積)と、受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、及び上部電極112Cが重なる面積(第二面積)とが同一面積である例を示した。これに対して、第二実施形態では、第一面積と第二面積とが異なる点で上記第一実施形態と相違する。
【0032】
図6は、第二実施形態における超音波デバイス10Aの一部の概略平面図である。
本実施形態では、第一実施形態と同様、超音波デバイス10Aに、複数の超音波送信部11、及び複数の超音波受信部12が配置されている。また、超音波送信部11は、Y方向に並ぶ複数の送信トランスデューサー111により構成され、超音波受信部12は、Y方向に並ぶ複数の受信トランスデューサー131により構成されている。
【0033】
送信トランスデューサー111は、第一実施形態と同様に、第一振動部102Aと送信圧電素子112とにより構成され、送信圧電素子112は、第一振動部102A側から順に配置される送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、上部電極112Dにより構成されている。この上部電極112Dは、第一実施形態と同様、送信トランスデューサー111から受信トランスデューサー131に亘って設けられている。
ここで、本実施形態では、上部電極112Dのうち、送信圧電素子112を構成する部分(送信下部電極112A及び送信用圧電膜112Bと重なる部分)において電極幅が第一幅寸法Wに形成されている。
【0034】
一方、受信トランスデューサー131は、第二振動部102Bと受信圧電素子132とにより構成され、受信圧電素子132は、第一振動部102A側から順に配置される受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、上部電極112Dにより構成されている。ここで、上部電極112Dは、受信圧電素子132を構成する部分(受信下部電極122A及び受信用圧電膜122Bと重なる部分)において電極幅が第二幅寸法Wに形成されており、第二幅寸法Wは、第一幅寸法Wよりも小さい。なお、ここでは、受信下部電極122Aの幅寸法は、送信下部電極112Aの幅寸法と同寸法とする。
【0035】
ところで、送信圧電素子112において、電圧が印加されることで実質的に駆動される部分は、送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、及び上部電極112Dが重なり合う部分である。ここで、送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、及び上部電極112Dが重なり合う部分の面積を第一面積Pとする。
一方、受信圧電素子132の変位によって検出される電位差は、受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、及び上部電極112Dが重なり合う部分の電位差である。ここで、受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、及び上部電極112Dが重なり合う部分の面積を第二面積Pとする。
上述したように、本実施形態では、上部電極112Dは、送信圧電素子112において第一幅寸法Wの電極幅となり、受信圧電素子132において、第一幅寸法Wよりも小さい第二幅寸法Wの電極幅となる。このため、第二面積Pは第一面積Pよりも小さくなる。
【0036】
このような第二実施形態では、受信トランスデューサー131における受信効率をさらに向上させることが可能となる。
つまり、受信トランスデューサー131において超音波を受信した際に、受信トランスデューサー131から出力される受信信号は、受信用圧電膜122Bが変形した際に発生する、受信下部電極122Aと上部電極112Dとの電位差ΔVとなる。この電位差ΔVは、各電極122A,112Dの電荷をΔQ、受信電極(受信下部電極122A及び上部電極112D)の間の静電容量をCとして、次式(1)で示すことができる。
【0037】
[数1]
ΔV=ΔQ/C …(1)
【0038】
式(1)に示すように、受信信号の電圧を大きくするためには、静電容量Cを小さくすることが好ましい。また、静電容量Cは、一般に、受信電極間の誘電率をε、電極面積をS、受信電極間の距離をdとして、次式(2)に示す値となる。
【0039】
[数2]
C=εS/d …(2)
【0040】
式(1)及び式(2)より、受信トランスデューサー131では、電極面積Sを小さくするか、受信電極間の距離dを大きくすることで、電極間の静電容量Cが小さくなり、受信信号の電圧が増大することが分かる。しかしながら、電極間距離dを大きくすると、受信用圧電膜122BのZ方向の剛性が高くなり、図5に示すように、受信用圧電膜122Bが撓みにくくなる。この場合、受信用圧電膜122Bで生じる電位差も小さくなり、受信信号の電圧が低下する。
これに対して、電極面積Sを小さくする場合では、受信用圧電膜122Bの撓み易さを維持したまま、静電容量Cを小さくすることができる。よって、受信信号の電圧を好適に大きくすることができ、受信効率の更なる向上を図れる。
特に、超音波デバイス10Aにおいて、送信トランスデューサー111から超音波を送信し、その反射波を受信トランスデューサー131で受信する処理(超音波の送受信処理)を行う場合、反射波は空気等の媒質中を伝搬する間に減衰される。したがって、特に、受信トランスデューサー131における受信効率を高める必要がある。本実施形態では、上記構成により、受信トランスデューサー131の受信効率を向上させることができ、上記のような超音波の送受信処理を好適に実施することができる。
【0041】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。
上記第二実施形態では、受信トランスデューサー131において、受信電極間の静電容量Cを低減させるための構成として、受信下部電極122A、受信用圧電膜122B、及び上部電極112Dが重なる第二面積Pを、送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、及び上部電極112Dが重なる第一面積Pよりも小さくする例を示した。
これに対して、第三実施形態では、受信トランスデューサー131を直列に接続することで静電容量Cを低減させる点で、上記第二実施形態と相違している。
【0042】
図7は、第三実施形態に係る超音波デバイス10Bの一部を拡大した拡大平面図である。図8は、図7におけるC−C線における超音波デバイス10Bの断面図である。図9は、第三実施形態における超音波デバイス10Bの一部の回路図である。
本実施形態では、第一実施形態や第二実施形態と同様、超音波デバイス10Bに、複数の超音波送信部11、及び複数の超音波受信部12が配置されている。また、超音波送信部11は、Y方向に並ぶ複数の送信トランスデューサー111により構成され、超音波受信部12は、Y方向に並ぶ複数の受信トランスデューサー141により構成されている。
【0043】
本実施形態の送信トランスデューサー111における送信圧電素子112は、支持膜102側から順に配置される送信下部電極112A、送信用圧電膜112B、上部電極112Eにより構成されている。
ここで、本実施形態では、上部電極112Eには、第一上部電極112E1と、第二上部電極112E2が含まれる。第一上部電極112E1は、送信トランスデューサー111と、当該送信トランスデューサー111とX方向に隣り合う受信トランスデューサー141とで共通となる電極である。一方、第二上部電極112E2は、送信トランスデューサー111とコモン電極線CLとを接続する電極であり、平面視において、受信圧電素子142とは重ならない。
【0044】
そして、本実施形態の超音波受信部12では、Y方向に並ぶ複数の受信トランスデューサー141のうち、Y方向に隣り合う複数個(図7から図9に示す例では2つ)の受信トランスデューサー141により、1つの受信素子群141Aを構成し、Y方向に並ぶ複数の受信素子群141Aにより1つの受信チャネルが構成される。そして、本実施形態では、受信素子群141Aを構成する複数の受信トランスデューサー141は、直列に接続されている。
【0045】
具体的には、本実施形態では、Y方向に沿って、各受信トランスデューサー141とは重ならない位置に、受信信号電極線SL2が配置されており、この受信信号電極線SL2の両端部は、第二信号端子SBに接続されている。
そして、受信素子群141Aのうち、一端部(例えば+Y側の端部)に配置された受信トランスデューサー141の受信圧電素子142は、受信下部電極142A、受信用圧電膜122B、及び第一上部電極112E1により構成される。一方、受信素子群141Aのうち、他の受信トランスデューサー141の受信圧電素子142は、受信下部電極142A、受信用圧電膜122B、及び受信上部電極142Bにより構成される。
【0046】
受信素子群141Aのうち他端部(例えば−Y側の端部)に配置された受信トランスデューサー141の受信圧電素子142は、受信下部電極142Aが受信信号電極線SL2に接続される。また、受信上部電極142Bが、+Y側に隣り合う受信トランスデューサー141の受信下部電極142Aに接続される。
受信素子群141Aの一端部(例えば+Y側の端部)に配置された受信トランスデューサー141の受信圧電素子142では、上述したように、第一上部電極112E1に接続される。また、受信下部電極142Aが、−Y側に隣り合う受信トランスデューサー141の受信上部電極142Bに接続される。
そして、受信素子群141Aの両端部以外に配置される各受信トランスデューサー141は、受信下部電極142Aが、受信素子群141Aの他端側(例えば−Y側)に隣り合う受信トランスデューサー141の受信上部電極142Bに接続される。さらに、受信上部電極142Bが、受信素子群141Aの一端側(例えば+Y側)に隣り合う受信トランスデューサー141の受信下部電極142Aに接続される。なお、本実施形態のように、受信素子群141Aに含まれる受信トランスデューサー141が2つの場合は、受信信号電極線SL2に接続される受信トランスデューサー141の受信上部電極142Bと、コモン電極線CLに接続される受信トランスデューサー141の受信下部電極142Aとが接続される。
【0047】
このような構成の超音波デバイス10Bでは、図9に示すように、各受信トランスデューサー141における受信電極(受信下部電極142A及び受信上部電極142B(又は第一上部電極112E1))の間の静電容量がCである場合、n個の受信トランスデューサー141が直列接続された受信素子群141Aの見かけ上の静電容量は、C/n(本実施形態では、n=2)となる。したがって、本実施形態では、静電容量がC/nとなる各受信素子群141Aから受信信号が出力される構成となり、各受信素子群141Aから出力される受信信号は、単一の受信トランスデューサー141(静電容量C)で超音波を受信した際に出力される受信信号よりも電圧値が高い。つまり、受信素子群141Aから、直列接続された各受信トランスデューサー141から出力される信号を加算した受信信号が出力されることになる。
これにより、本実施形態においても、第二実施形態と同様、超音波受信部12における超音波の受信効率を高めることができる。
【0048】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態では、第一実施形態から第三実施形態で説明した超音波デバイス10,10A,10Bを備えた超音波測定装置の一例としての距離センサーについて説明する。
図10は、本実施形態に係る距離センサー100の概略構成を示す図である。なお、ここでは、超音波デバイス10を距離センサー100に組み込む例を示すが、第二実施形態の超音波デバイス10Aや、第三実施形態の超音波デバイス10Bが組み込まれる構成としてもよい。
本実施形態の距離センサー100は、図10に示すように、超音波デバイス10と、超音波デバイス10を制御する制御部20とにより構成されている。この制御部20は、超音波デバイス10を駆動させる駆動回路30と、演算部40とを含んで構成されている。また、制御部20には、その他、距離センサー100を制御するための各種データや各種プログラム等を記憶した記憶部を備えていてもよい。
【0049】
駆動回路30は、超音波デバイス10の駆動を制御するためのドライバー回路であり、例えば図10に示すように、コモン回路31、送信回路32、及び受信回路33等を備える。
コモン回路31は、コモン端子CAに接続され、上部電極112Cにコモン電位(例えば0V等)を印加する。
送信回路32は、第一信号端子SA及び演算部40に接続され、演算部40の制御に基づいて、送信下部電極112Aにパルス波形の駆動信号を出力し、各送信トランスデューサー111から超音波を送信させる。
受信回路33は、第二信号端子SB及び演算部40に接続され、各受信トランスデューサー121で超音波を受信した際の受信信号が入力される。この受信回路33は、例えばリニアノイズアンプ、A/Dコンバーター等を含んで構成されており、入力された受信信号のデジタル信号への変換、ノイズ成分の除去、所望信号レベルへの増幅等の各信号処理を実施した後、処理後の受信信号を演算部40に出力する。
【0050】
演算部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、駆動回路30を介して超音波デバイス10を制御し、超音波デバイス10により超音波の送受信処理を実施させる。
すなわち、演算部40は、送信回路32を制御して、超音波デバイス10の各送信トランスデューサー111に駆動信号を出力させて、超音波を送信させる。また、超音波が対象物に反射され、反射波が受信トランスデューサー121に入射されると、受信トランスデューサー121から出力された受信信号が受信回路33を介して取得される。そして、演算部40は、例えばToF(Time of Flight)法により、超音波デバイス10から超音波を送信した送信タイミングから、受信信号が受信されるまでの時間と、空気中における音速とを用いて、超音波デバイス10から対象物までの距離を算出する。
【0051】
上記のような本実施形態の距離センサー100では、第一実施形態で説明したような超音波デバイス10を備える。超音波デバイス10は、上述したように、送信トランスデューサー111における送信用圧電膜112Bの厚み寸法tが、受信トランスデューサー121における受信用圧電膜122Bの厚み寸法tよりも大きく、超音波の送受信効率が高い。したがって、演算部40は、超音波デバイス10により得られた精度の高い超音波の送受信結果に基づいて、超音波デバイス10から対象物までの距離を高精度に算出することができる。
【0052】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0053】
上記第二実施形態において、受信圧電素子132を構成する上部電極112Dの電極幅(第二幅寸法W)を、送信圧電素子112を構成する上部電極112Dの電極幅(第一幅寸法W)よりも小さくすることで、第二面積Pを第一面積Pよりも小さくしたが、これに限らない。例えば、受信下部電極122Aの電極幅を、送信下部電極112Aの電極幅よりも小さくすることで、第二面積Pを第一面積Pよりも小さくしてもよい。
或いは、受信圧電素子122の上部電極112Dの電極幅、及び受信下部電極122Aの電極幅の双方を、小さくする構成としてもよい。
【0054】
第二実施形態及び第三実施形態において、第二面積Pを小さくする構成、受信トランスデューサー141を直列接続する構成を例示したが、これらを組み合わせてもよい。すなわち、複数の受信トランスデューサーを直列接続に接続し、かつ、各受信トランスデューサーにおいて、受信下部電極、受信用圧電膜、及び受信上部電極が重なり合う面積を小さくする。この場合、静電容量Cがさらに低減され、より大きい電圧の受信信号を得ることができる。
【0055】
上記第一及び第二実施形態では、超音波デバイス10が、素子基板101の第一開口101Aから超音波を送信し、第二開口101Bから入射する超音波を受信する構成例を示したが、これに限定されない。例えば、第一開口101Aとは反対側(送信圧電素子112側)に超音波を送信し、第二開口101Bとは反対側(受信圧電素子122側)から入射する超音波を受信する構成としてもよい。
【0056】
上記第四実施形態では、超音波測定装置の一例として距離センサー100を例示したが、これに限定されない。例えば、超音波の送受信結果に応じて、構造体の内部断層像を測定する超音波測定装置等に適用することもできる。
【0057】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10,10A,10B…超音波デバイス、11…超音波送信部、12…超音波受信部、20…制御部、100…距離センサー(超音波測定装置)、101…素子基板、101A…第一開口、101B…第二開口、101C…隔壁部、102…支持膜、102A…第一振動部、102B…第二振動部、111…送信トランスデューサー、112…送信圧電素子、112A…送信下部電極、112B…送信用圧電膜、112C,112D,112E…上部電極、112E1…第一上部電極、112E2…第二上部電極、121,131,141…受信トランスデューサー、122,132,142…受信圧電素子、122A、142A…受信下部電極、122B…受信用圧電膜、141A…受信素子群、142B…受信上部電極、P…第一面積、P…第二面積、t…送信用圧電膜の厚み寸法、t…受信圧電膜の厚み寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10