(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抵抗値を有する二つ以上の前記導電部材が、前記バスラインと前記有機エレクトロルミネッセンス素子のそれぞれの前記第1電極との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
前記抵抗値を有する二つ以上の前記導電部材が、前記バスラインと前記印加電源部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
前記バスラインに接続されている二つ以上の前記導電部材が、二つ以上の前記有機エレクトロルミネッセンス素子に印加する電圧の差が0.3V以内となるように調整するための異なる抵抗値を有していることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
前記基材上に開口部を有する絶縁層が設けられ、前記開口部に、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子又は前記導電部材が配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
前記導電部材が、少なくともポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
前記画素ユニットが、格子状の前記バスラインで囲まれた複数の領域内にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む画素ユニットを有し、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、基材上に、少なくとも、第1電極と、発光層を含む有機機能層と、第2電極とを有し、前記画素ユニットが、発光色が異なる複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子を同一面上に配置した構成を有し、かつ、
前記有機エレクトロルミネッセンスデバイス全体に単一の回路で一定の電圧を印加する単一の印加電源部と、複数の前記有機エレクトロルミネッセンス素子のそれぞれの第1電極に電圧を印加するバスラインとを有し、前記印加電源部と前記有機エレクトロルミネッセンス素子の間に印加する電圧を調整する抵抗値を有する導電部材が配置されている箇所と配置されていない箇所があることにより、各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光が調整された個別駆動をすることを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0037】
本発明の実施形態としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記抵抗値を有する二つ以上の前記導電部材が、一方の前記バスラインの結合部と前記有機エレクトロルミネッセンス素子のそれぞれの前記第1電極の引出電極との間に配置されている実施形態1であることが、より発光品質の低下や発光輝度差の発現を抑制することができる点で、好ましい構成である。
【0038】
また、前記抵抗値を有する二つ以上の導電部材が、前記バスラインと前記印加電源部との間に配置されている実施形態2とすることにより、より簡易な構成で、光品質の低下や発光輝度差の発現を抑制することができる有機ELデバイスを得ることができる点で好ましい。
【0039】
また、具体的には、バスラインに接続されている二つ以上の前記導電部材が、二つ以上の前記有機エレクトロルミネッセンス素子間に印加する電圧の差が0.3V以内となるように調整するための異なる抵抗値を有していることが、発光色の異なる複数の有機EL素子間の発光輝度差を縮小することができ、安定した品質を得ることができる点で好ましい。
【0040】
前記基材上に開口部を有する絶縁層が設けられ、前記開口部に、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子又は前記導電部材が配置されていることが、各有機EL素子間、又は導電部材間を完全に分離することにより、短絡等を効果的に防止でき、安定した駆動を実現することができる点で好ましい。
【0041】
また、導電部材が、少なくともポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物を含有することが、湿式塗布適性を付与でき、簡便な方法で、所望の抵抗値を有する導電部材を形成することができる点で好ましい。
【0042】
また、前記画素ユニットが、格子状の前記バスラインで囲まれた複数の領域内にそれぞれ配置されている構成であることが、高精細な静止画像を表示することができる点で好ましい態様である。
【0043】
また、本発明の有機ELデバイスは、駆動方法を簡便な構成とし、複数の発光色を均一で安定した発光を可能とするものであり、特に、屋外広告やポスター等の静止画像表示分野に有効に適用することができる。
【0044】
本発明の有機ELデバイスの製造方法は、少なくとも有機エレクトロルミネッセンス素子のそれぞれに印加する電圧を調整する抵抗値を有する導電部材を、湿式塗布方式により形成することが、製造手段として大型設備を必要とせず、低コストで安定して製造することができる。
【0045】
さらに、少なくとも、絶縁層、有機エレクトロルミネッセンス素子、第1電極用の引出電極、バスラインの結合部及びバスラインを、湿式塗布方式により形成すること、湿式塗布方式として、インクジェット印刷方式を適用することがより好ましい実施形態である。
【0046】
以下、本発明の構成要素、及び本発明を実施するための形態について、図を交えて詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。なお、各図の説明において、構成要素の末尾に括弧内で記載した数字は、各図における符号を表す。
【0047】
《有機ELデバイスの基本構成》
本発明の有機ELデバイスは、基材上に、第1電極と、発光層を含む有機機能層と、第2電極とを有する発光色の異なる有機EL素子を複数個有し、複数の有機EL素子のそれぞれの第1電極に電圧を印加するバスラインと、有機EL素子のそれぞれに印加する電圧を調整する抵抗値を有する導電部材と、有機EL素子に電圧を印加する印加電源部とから構成されていることを特徴とする。
【0048】
はじめに、有機ELデバイスの全体構成について説明する。
【0049】
図1は、本発明の複数の画素ユニットより構成される有機ELデバイスの全体構成の一例を示す概略配置図(実施形態1)である。
【0050】
図1で示す有機ELデバイス(20)の好ましい実施形態1では、縦方向に複数のバスラインV(14V)と、横方向に複数のバスラインH(14H)を格子状に配置し、その各ブロック内に画素ユニット(PU)を形成している。バスラインには、単一の簡単な構成からなる印加電源(18)が接続され、単一条件の電圧を印加する。
【0051】
ここでいう「バスライン」とは、その詳細は後述するが、印加電源より、各有機EL素子に電力を供給するための信号線である。また、「導電部材」とは、抵抗値を調整することが可能な導電性材料で、異なる抵抗値を有し、各有機EL素子への付与電圧を調整する機能を有している。
【0052】
A行及びD行の1列目〜4列目までは、例えば、後述する
図3に示す画素ユニット(PU)と同一構成で、三つの有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)と各有機EL素子とバスライン間にそれぞれ導電部材(16R、16G、16B)が配置されている構成で、主に、白発光表示する画素ユニット(PU)群である。
【0053】
これに対し、導電部材(16R、16G、16B)の形成を行わないことにより、各発光色の表示が可能となる。B行−1列では、赤発光有機EL素子のみ、導電部材(16R)を設けて赤発光させ、同様にB行−2列目では緑発光、B行−3列目は青発光させる。
【0054】
C行−1列目では、赤発光有機EL素子系列のみ導電部材の形成を行わないことにより、シアン発光させ、同様に、C行−2列目ではマゼンタ発光、C行−3列目はイエロー発光させる。また、全ての導電部材(16R、16G、16B)を除くことにより、黒表示を行う。本発明の機ELデバイス(20)では、静止画像の表示分野への適用が有効であり、上記のような構成とすることが好ましい。
【0055】
図2は、本発明の有機ELデバイスの代表的な構成である実施形態1と実施形態2を構成する有機EL素子系列の基本的構成を示す概略図である。
【0056】
第1の好ましい形態である実施形態1は、画素ユニット(PU)が、格子状の前記バスライン(14)で囲まれた複数の領域内にそれぞれ配置されている。
【0057】
図2の(a)に示す構成は、有機ELデバイスを構成する画素ユニット(PU)において、一つの有機EL素子、例えば、
図1に記載の赤発光の有機EL素子(EL
R)を含む構成を示すものであり、特定の抵抗値を有する導電部材(16)が、バスライン(14)と有機EL素子(EL)のそれぞれの第1電極の引出電極(17)との間に配置されている構成である。
【0058】
第2の好ましい形態である実施形態2は、
図2の(b)で示すように、本発明に係る特定の抵抗値を有する導電部材(16)が、有機EL素子(EL)上に形成されているバスライン(14)と印加電源部(18)との間に配置されている構成である。
図2の(b)でも、例えば、後述の
図7に示すような、有機EL素子を含む一つの系列構成を示している。
【0059】
次いで、本発明に係る実施形態1及び実施形態2で表される各有機ELデバイスの詳細な構成について、図を交えて説明する。
【0060】
(実施形態1)
図3は、本発明の有機ELデバイスを構成する画素ユニットの実施形態1の具体的な構成の一例を示す概略上面図である。
【0061】
図3には、有機ELデバイスを構成する一つの画素ユニット(PU)の構成を示してある。
【0062】
図3で示すように、本発明の実施形態1で表される有機ELデバイスは、基材(不図示)上に、縦方向に配置されているバスラインV(14V)と、横方向に配置されているバスラインH(14H)とが格子状に交差して形成される領域内に、画素ユニット(PU)を形成する。
【0063】
画層ユニット(PU)は、少なくとも発光色が異なる複数の有機EL素子(EL)、
図3では、赤発光の有機EL素子(EL
R)、緑発光の有機EL素子(EL
G)及び青発光の有機EL素子(ELB)の三つの有機EL素子が、同一平面上に配置されている。これらの各有機EL素子の第1電極を除く有機機能層ユニットは、各開口部(11A、11B、11C)の全面に、同一面積で形成されている。
【0064】
各有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)を構成する第1電極(2)は、その一方の端部から第1電極の引出電極(17)が延長して形成されており、第1電極の引出電極(17)の一方の端部が抵抗値を有する導電部材(16R、16G、16B)の下部で接続している。詳細な構成については、
図5で説明する。
【0065】
この各導電部材(16R、16G、16B)は、印加電源(18)に接続されて一定の電圧が印加されている単一のバスラインV(14V)より、バスラインHを経由してそれぞれ最適の発光を得るための電圧が異なる各有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)に最適の電圧を印加する機能を有しており、それぞれ導電部材は印加する電圧を調整するため個別の抵抗値を有している。導電部材とバスラインの具体的な接続構造についても、後述の
図5で説明する。
【0066】
各導電部材に付与される抵抗値は、有機EL素子の特性や発光面積により異なるが、おおむね1〜500Ωの範囲内であり、好ましくは2〜300Ωの範囲内であり、更に好ましくは5〜150Ωの範囲内である。
【0067】
一方、横方向に配置されているバスラインH(14H)と、抵抗値の異なる各導電部材(16R、16G、16B)とは、
図3で示すような構成で接続されている。
【0068】
基材(不図示)上に形成されている絶縁層(13)面には、二つの開放部として、有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)形成用の有機EL素子形成用開口部(11A、11B、11C)と、各導電部材(16R、16G、16B)を形成する導電部材形成用開口部(12A、12B、12C)が設けられている。なお、
図3においては、第2電極の記載は省略してある。
【0069】
図4は、基材上に形成した絶縁層と、絶縁層面に形成した2種の開口部(11、12)の一例を示す概略斜視図である。
【0070】
一つ開口部は、各有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)がその全面に配置されている有機EL素子形成用開口部(11)である。
【0071】
もう一方の開口部は、導電部材(16R、16G、16B)を全面に配置するための導電部材形成用開口部(12)である。
【0072】
図4で示すような各開口部の形成方法は、基材(1)上に、バスライン(14)、第1電極(2)、その引出電極(17)等を形成した後、有機EL素子形成用開口部(11)と、導電部材形成用開口部(12)を形成する領域以外に絶縁層(13)を形成する。詳細については後述する
図9及び
図10で示す。
【0073】
この各開口部(11及び12)を介して、有機EL素子(EL)の有機機能性ユニット(U)や、導電部材(16)を、例えば、湿式塗布方式等を用いて形成する。
【0074】
この開口部を湿式塗布方式、例えば、インクジェット印刷方式を用いた有機ELデバイスの形成方法では、各構成部位を、マスク等を介しての形成が不要となり、所定の位置に、高い精度でかつ簡便な装置により形成することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明の有機ELデバイスの実施形態1の特徴は、縦及び横方向に配置した格子状のバスラインで囲まれた複数の領域内にそれぞれ画素ユニットを配置し、抵抗値を有する導電部材を、バスラインと有機EL素子の第1電極の引出電極との間に配置する。そして、共通のバスラインより電圧を印加し、次いで、各有機EL素子に印加する電圧を調整するそれぞれ異なる抵抗値を有する導電部材により各有機EL素子の発光条件を制御することにより、TFT等の複雑な発光制御を必要とせずに、簡易な方法で、発光を制御する方法である。本発明の有機ELデバイスでは、各画素ユニットでの発光は、動画等の表示するための可変発光方式ではなく、ポスター等で代表される静止画像を表示することを主なターゲットしているため、簡便な制御方法で、かつ大型設備を必要としない湿式塗布方式で作製することができるため、低コストで製造することが可能となった。
【0076】
次いで、実施形態1で表される有機ELデバイスについて、その具体的な構成について説明する。
【0077】
図5は、
図3で示す画素ユニット(PU)の切断面A−A´における構成を表す概略断面図であり、基材(1)上に設けた2本のバスライン(14H)間に、一つの画素ユニット(PU)を形成している実施形態1の一例を示してある。
【0078】
詳細な製造フローは後述するが、
図5で示すように、基材(1)上の横方向に、2本のバスラインH(14H)が形成されている。
【0079】
また、有機EL素子の発光領域(LA)には、有機EL素子用の第1電極(2)、有機機能層ユニット(U)、第2電極(6)が形成されている。
【0080】
また、
図5で示すように、基材(1)上の有機EL素子形成用開口部(11)と導電部材形成用開口部(12)を除く領域には、絶縁層(13A、13B、13C)が形成されている。
【0081】
有機EL素子の具体的な構成としては、バスラインH(14H)を有する側には、有機EL素子形成用開口部(11)から絶縁層(13A)に入り込む形態で、第1電極(2)が形成され、第1電極の端部が有機EL素子形成用開口部(11)に露出しないような構成としている。また、第1電極の他方側は、第1電極の引出電極(17)が延長されており、導電部材形成用開口部(12)にその端部が露出するように形成されている。
【0082】
有機EL素子形成用開口部(11)の全面には、発光層を含む有機機能層ユニット(U)が形成されている。一方、導電部材形成用開口部(12)には、第1電極の引出電極(17)の端部と、バスラインH(14H)の端部とを被覆接続する構成で、所望の抵抗値を有する導電部材(16)が全面に形成されている。
【0083】
この導電部材(16)を形成した導電部材形成用開口部(12)の上部は、その後に形成する第2電極(7、陰極)と導電部材(16)との短絡を防止するための絶縁層(13D)が設けられている。
【0084】
有機EL素子形成用開口部(11)と、導電部材形成用開口部(12)の上部には、第2電極(7、陰極)が全面に形成され、その全域を被覆する構成で、封止用接着層(7)と、最表部に封止基板(8)が設けられて、有機ELデバイス(20)を構成している。
【0085】
このような構成においては、第1電極(2)、有機機能層ユニット(U)及び第2電極(7)の全てが存在する領域が、発光エリア(LA)である。
【0086】
図6は、
図3で示す画素ユニットの切断面B−B´における構成を表す概略断面図で、基材(1)上に、三つの有機EL素子が同一平面上に配置されている実施形態1の構成例を示してある。
【0087】
図6では、基材(1)上に、絶縁層(13)で被覆されている一対の縦のバスラインV(14V)間に、三つの有機EL素子形成用開口部(11A、11BB、11C)を有し、それぞれの有機EL素子形成用開口部の全域に赤発光有機EL素子(EL
R)、緑発光有機EL素子(EL
G)、青発光有機EL素子(EL
B)が形成され、各有機EL素子間には絶縁層(13、バンクともいう。)が設けられ、各有機EL素子の形成領域を分離している。この時、
図7と同様に、各第1電極(2)は、有機EL素子形成用開口部より広くし、その端部が絶縁層(13)内に位置するように形成されている。
【0088】
これらの有機EL素子形成用開口部(11A、11BB、11C)上には、共通の第2電極(6、陰極)が形成され、更にその上部に、全域を被覆する構成で、封止用接着層(7)と、最表部に封止基板(8)が設けられて、有機ELデバイス(20)を構成している。
【0089】
(実施形態2)
本発明の有機ELデバイスの実施形態2としては、抵抗値を有する導電部材が、バスラインと印加電源部との間に配置されている構成を挙げることができる。
【0090】
図7は、本発明の実施形態2で表される有機ELデバイスを構成する画素ユニットの一例を表す概略側面図である。
【0091】
図7に示すように、各有機EL素子(EL
R、EL
G、EL
B)の第1電極の全面と接触する形態でバスライン(14)を形成し、各バスライン(14)の端部が導電部材(16R、16G、16B)に接続され、各導電部材(16R、16G、16B)には、印加電源(18)より電圧が供給される。実施形態1と同様に、印加電源より供給される単一条件の電圧に対し、それぞれ抵抗値の異なる導電部材を介して、各有機EL素子の最適の電圧に調整して、バスラインを介して供給する方法である。
【0092】
その他の付随する条件は、実施形態1で説明した方法を適宜選択して適用することができる。
【0093】
《有機ELデバイスの構成材料》
次いで、上記説明した有機ELデバイスの各構成要素の詳細について説明する。
【0094】
[有機EL素子の基本構成]
はじめに、有機EL素子の基本的な構成について、図を交えて説明する。
【0095】
図8は、本発明に適用可能な有機EL素子の有機機能層ユニットを含めた基本的な構成を示す概略断面図である。
【0096】
図8で示す本発明に係る有機EL素子(EL)は、光透過性を有する基材(1)、例えば、ガラス基材又はフレキシブル性樹脂基材上に、第1電極(2)、発光層(4)及び二つの有機機能層群(3及び5)を積層した構造の有機機能層ユニット(U)、第2電極(6)等の構成を示してある。
【0097】
図8において、光透過性を有する基材(1)上の発光エリア(LA)に、第1電極として陽極(2)を形成されている。第1電極(2)の一方の端部は、前記
図5で示したように、絶縁層内部に形成されている。他方の側では、第1電極(2)が延長されて、第1電極の引出電極(17)を構成している。この発光エリア(LA)は、有機EL素子形成用開口部(11)に同一領域である。
【0098】
一方、陽極(2)の上部の有機EL素子形成用開口部(11)の全領域には、例えば、正孔注入層、正孔輸送層等から構成される第1の有機機能層群1(3)、発光層(4)及び、例えば、電子輸送層、電子注入層等から構成される第2の有機機能層群2(5)が積層されて、有機機能層ユニット(U)を構成している。
【0099】
そして、有機機能層ユニット(U)を含めた上面領域に、第2電極として、陰極(6)が全面にわたり設けられている。そして、上記積層体全体を被覆する構造で、封止用接着層(7)及び封止基板(8)が設けられて、有機EL素子(EL)を構成している。
【0100】
有機EL素子(EL)における発光エリア(LA)とは、
図8で示すように、第1電極である陽極(2)と、有機機能層ユニット(U)、特には発光層(4)と、第2電極である陰極(6)の全てが、同一面上に存在する領域をいう。
【0101】
[有機EL素子の構成要素]
はじめに、本発明の有機ELデバイスを構成する有機EL素子の各構成要素の詳細について説明する。
【0102】
はじめに、本発明に適用が可能な有機EL素子(EL)の構成の一例を示すが、これらの構成に限定されるものではない。なお、括弧内に記載している数字は、
図8で示した有機EL素子の各構成要素の符号に相当する。
【0103】
(i)第1電極(2、陽極)/発光層(4)/第2電極(6、陰極)
(ii)第1電極(2、陽極)/有機機能層ユニット(U)〔有機機能層群1(3、正孔注入輸送層)/発光層(4)/有機機能層群2(5)〕/第2電極(6、陰極)
(iii)第1電極(2、陽極)/有機機能層ユニット(U)〔有機機能層群1(3、正孔注入層/正孔輸送層)/発光層(4)/有機機能層群2(5、電子輸送層/電子注入層)〕/第2電極(6、陰極)
(iv)第1電極(2、陽極)/有機機能層ユニット(U)〔有機機能層群1(3、正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層)/発光層(4)/有機機能層群2(5、正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層)〕/第2電極(6、陰極)
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
【0104】
また、タンデム型の有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/009087号、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0105】
更に、有機EL素子を構成する各層について説明する。
【0106】
〔基材〕
有機EL素子(EL)に適用可能な基材(1)としては、特に制限はなく、例えば、ガラス、樹脂基材等の種類を挙げることができ、好ましくは、有機EL素子にフレキシブル性を付与することができる観点からフレキシブル性樹脂基材である。
【0107】
本発明に適用可能なフレキシブル性を備えた樹脂基材を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)及びアペル(商品名、三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0108】
これら樹脂基材のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムがフレキシブル性を有する樹脂基材として好ましく用いられる。
【0109】
また、上記の樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0110】
本発明に適用可能な樹脂基材は、従来公知の一般的な製膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂材料を押出機により加熱溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。また、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基材の搬送方向(縦軸方向、MD方向)、又は樹脂基材の搬送方向と直角の方向(横軸方向、TD方向)に延伸することにより、延伸樹脂基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内であることが好ましい。
【0111】
樹脂基材の厚さとしては、3〜200μmの範囲内にある薄膜の樹脂基材であることが好ましく、より好ましくは10〜150μmの範囲内であり、特に好ましくは、20〜120μmの範囲内である。
【0112】
また、本発明に適用可能な光透過性を有する基材であるガラス基材としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
【0113】
〔第1電極:陽極〕
有機EL素子を構成する第1電極(以下、陽極ともいう)としては、酸化物半導体又は薄膜の金属若しくは合金で構成されていることが好ましい形態であり、例えば、Ag、Au等の金属又は金属を主成分とする合金、CuI、あるいはインジウム・スズの複合酸化物(ITO)、SnO
2及びZnO等の酸化物半導体を挙げることができる。
【0114】
陽極を、銀を主成分として構成する場合、銀の純度としては、99%以上であることが好ましい。また、銀の安定性を確保するためにパラジウム(Pd)、銅(Cu)及び金(Au)等が添加されていてもよい。
【0115】
陽極として銀を主成分として構成する場合には、銀単独で形成しても、又は銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよい。そのような合金としては、例えば、銀・マグネシウム(Ag・Mg)、銀・銅(Ag・Cu)、銀・パラジウム(Ag・Pd)、銀・パラジウム・銅(Ag・Pd・Cu)、銀・インジウム(Ag・In)などが挙げられる。
【0116】
上記陽極を構成する各構成材料の中でも、本発明に係る有機EL素子を構成する陽極としては、インジウム・スズの複合酸化物(ITO)又は銀を主成分として構成し、厚さが2〜20nmの範囲内にある光透過性を有する陽極とすることが好ましく、より好ましくは厚さが4〜12nmの範囲内である。厚さが20nm以下であれば、光透過性を有する陽極の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、高い光透過率が維持されるため好ましい。
【0117】
本発明でいうインジウム・スズの複合酸化物(ITO)又は銀を主成分として構成されている層とは、陽極中のITO又は銀の含有量が60質量%以上であることをいい、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくはITO又は銀の含有量が98質量%以上である。また、本発明に係る光透過性を有する陽極でいう「光透過性」とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
【0118】
光透過性を有する陽極においては、ITO又は銀が主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
【0119】
また、本発明においては、陽極が、銀を主成分として構成する光透過性を有する陽極である場合には、形成する光透過性を有する陽極の銀膜の均一性を高める観点から、その下部に、下地層を設けることができる。下地層としては、特に制限はないが、窒素原子又は硫黄原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましく、当該下地層上に、光透過性を有する陽極を形成する方法が好ましい態様である。
【0120】
また、本発明に係る第1電極の引出電極(17)は、上記第1電極を延長する形態で同様の材料で形成する。本発明においては、第1電極(2)と引出電極(17)との区別は、発光領域を構成する電極を第1電極(2)と定義し、それ以外で導電部材(16)と接続する電極を引出電極(17)と定義する。
【0121】
〔発光層〕
有機EL素子(EL)を構成する発光層(4)には、発光材料としてリン光発光性化合物、又は蛍光発光性化合物を用いることができるが、本発明においては、特に、発光材料としてリン光発光化合物が含有されている構成が好ましい。
【0122】
この発光層は、電極又は電子輸送層から注入された電子と、正孔輸送層から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接する層との界面であってもよい。
【0123】
このような発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。
【0124】
発光層の厚さの総和は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内がさらに好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
【0125】
また発光層は、複数の発光材料を混合してもよく、リン光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)とを同一発光層中に混合して用いてもよい。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光材料(発光ドーパントともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0126】
以上のような発光層は、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット印刷法等の公知の方法により形成することができるが、本発明においては、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷方式等の湿式塗布方式で形成することが好ましく、特に、インクジェット印刷方式で形成することが好ましい。
【0127】
〈ホスト化合物〉
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらにリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
【0128】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種のホスト化合物を用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0129】
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
【0130】
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2001−357977号公報、同2002−8860号公報、同2002−43056号公報、同2002−105445号公報、同2002−352957号公報、同2002−231453号公報、同2002−234888号公報、同2002−260861号公報、同2002−305083号公報、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2012/023947号、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0131】
〈発光材料〉
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料又はリン光発光ドーパントともいう。)及び蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光材料ともいう。)が挙げられるが、特に、リン光発光性化合物を用いることが、高い発光効率を得ることができる観点から好ましい。
【0132】
〈1〉リン光発光性化合物
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)でリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率が0.1以上の化合物である。
【0133】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されればよい。
【0134】
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0135】
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、2種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であってもよい。
【0136】
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
【0137】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78, 1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0138】
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2009/000673号、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0139】
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
【0140】
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/073149号、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−363552号公報等に記載の化合物も挙げることができる。
【0141】
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
【0142】
上記説明したリン光発光性化合物は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of
Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載されている参考文献等に開示されている方法を適用することにより合成することができる。
【0143】
〈2〉蛍光発光性化合物
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0144】
〔発光層を除く有機機能層群〕
次いで、発光層を除く有機機能層群を構成する各層の代表例として、電荷注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び阻止層の順に、その構成を説明する。
【0145】
(電荷注入層)
電荷注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
【0146】
電荷注入層としては、一般には、正孔注入層であれば、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、電子注入層であれば陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させることができるが、本発明においては、光透過性を有する電極に隣接して電荷注入層を配置させることを特徴とする。また、中間電極で用いられる場合は、隣接する電子注入層及び正孔注入層の少なくとも一方が、本発明の要件を満たしていれば良い。
【0147】
正孔注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、一方の電極である陽極に隣接して配置される層であり、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0148】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン):PSS(ポリスチレンスルホン酸)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
【0149】
トリアリールアミン誘導体としては、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(略称:α−NPD)に代表されるベンジジン型や、4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン)(略称:MTDATA)に代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
【0150】
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
【0151】
電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、陰極と発光層との間に設けられる層のことであり、陰極が本発明に係る光透過性を有する電極で構成されている場合には、当該光透過性を有する電極に隣接して設けられ、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0152】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデン、酸化アルミニウム等に代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、本発明における光透過性を有する電極が陰極の場合は、金属錯体等の有機材料が特に好適に用いられる。電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、構成材料にもよるが、その層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
【0153】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層の機能を有する。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0154】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー及びチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0155】
正孔輸送材料としては、上記記載の化合物を使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができ、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0156】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(略称:TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン及びN−フェニルカルバゾール等が挙げられる。
【0157】
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法を含む印刷法及びLB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができるが、本発明においては、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等の湿式塗布方式を適用することが好ましい。
。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0158】
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープすることにより、p性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報及びJ.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0159】
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0160】
(電子輸送層)
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料から構成され、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
【0161】
単層構造の電子輸送層及び積層構造の電子輸送層において、発光層に隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層に伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0162】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq
3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
【0163】
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、グラビアコート法、インクジェット印刷法を含む印刷法及びLB法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができるが、本発明においては、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等の湿式塗布方式により形成することが好ましい。
【0164】
電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる単一構造であってもよい。
【0165】
(阻止層)
阻止層としては、正孔阻止層及び電子阻止層が挙げられ、上記説明したキャリア輸送機能層ユニット3の各構成層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層等を挙げることができる。
【0166】
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0167】
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に適用する正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0168】
〔第2電極:陰極〕
陰極は、有機機能層群や発光層に電子を供給するために機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物若しくはこれらの混合物が用いられる。具体的には、 蒸着法等の乾式形成方法を用いる場合には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、イットリウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO
2及びSnO
2等の酸化物半導体などが挙げられる。
【0169】
また、湿式塗布方式を用いて形成する場合には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物(PEDOT:PSS)や銀ナノインク等を用いて、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等により形成することができる。
【0170】
陰極は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができる。また、第2電極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
【0171】
なお、有機EL素子が、陰極側からも発光光Lを取り出す、両面発光型の場合には、光透過性の良好な陰極を選択して構成すればよい。
【0172】
〔封止部材〕
有機EL素子を封止するのに用いられる封止手段としては、例えば、フレキシブル封止部材と、陰極及び透明基板とを封止用接着剤で接着する方法を挙げることができる。
【0173】
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また透明性及び電気絶縁性は特に限定されない。
【0174】
具体的には、フレキシブル性を備えた薄膜ガラス板、ポリマー板、フィルム、金属フィルム(金属箔)等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属フィルムとしては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。
【0175】
本発明においては、封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。さらに、ポリマーフィルムは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3ml/m
2・24h・atm(1atmは、1.01325×10
5Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましい。
【0176】
封止用接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0177】
《有機ELデバイスの有機EL素子を除く構成要素》
次いで、本発明の有機ELデバイスの有機EL素子を除く主要な構成要素の詳細について説明する。
【0178】
〔バスライン〕
本発明でいうバスラインとは、一般には、電子デバイスの機能を接続するための信号線といわれているが、本発明の有機ELデバイスにおいては、印加電源より、各有機EL素子を構成する第1電極に電力を供給するための配線をバスラインと称す。
【0179】
バスラインを構成する材料としては、高い導電性を有する金属材料であり、基材への密着性や腐食防止の観点から、モリブデンクラッドアルミニウム(略称:MAM、モリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo))やモリブデンクラッド銅(略称:MCM、モリブデン(Mo)/銅(Cu)/モリブデン(Mo))等を挙げることができる。
【0180】
〔導電部材(抵抗材料)〕
本発明に係る導電部材は、抵抗値を調整することが可能な導電性材料で構成され、特に制限はなく、公知の導電性物質を適用できる。
【0181】
導電性材料として、無機系材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、若しくはコバルトなどの金属、又はインジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))、若しくは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))、若しくはアンチモン−スズ酸化物(ATO)などの金属酸化物が例示でき、これらの金属、又は金属酸化物を粒子状態で含む、金属ナノインク(銀ナノインク等)を用いることが、湿式塗布適性を付与することができる点で好ましい。銀ナノインクは、市販品としても入手することができ、バンドー化学社製のSR6000、SW1020、(株)C−ink社製のコロイダルインクJB0420B、三菱製紙社製の銀ナノインクであるNBSIJ−MU01、NBSIJ−FD02、NBSIJ−KC01等を挙げることができる。
【0182】
また、有機系材料としては、導電性カーボンナノチューブやグラフェンなどの導電性炭素材料、ポリチオフェン又はポリアニリンなどの導電性高分子などが例示できるが、その中でも、屈曲性に優れるという特徴と、透明性と導電性にも優れるという特徴を有する点で有機導電性高分子のポリチオフェンの一種であるPEDOT/PSSが好適に用いることができる。PEDOT/PSSとは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物である。
【0183】
導電部材の厚さは、適用する導電部材の導電性や透明性等、及び導電部材として必要とされる抵抗値を達成するのに必要とされる厚さで形成する。
【0184】
〔絶縁層〕
本発明に係る絶縁層の形成材料としては、種々の絶縁材料を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム・ストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウム・マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウム・ビスマス、タンタル酸ストロンチウム・ビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの無機窒化物も好適に用いることができる。
【0185】
無機酸化皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などの乾式形成法や、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェット印刷方式などのパターニングによる方法などの湿式形成法が挙げられ、材料に応じて使用できる。これらのうち好ましいのは、インクジェット印刷方式である。
【0186】
また、有機化合物としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン、ポリマー体、エラストマー体を含むホスファゼン化合物、等を用いることもできる。また、市販品としては、ダイセル社製のセルビーナス等を挙げることができる。
【0187】
《有機ELデバイスの製造方法》
一般に、有機EL素子は、例えば、化学蒸着法や真空蒸着法等を用いた乾式形成方法や、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット印刷法等の湿式塗布方法等、公知の薄膜形成方法を適用することにより形成することができるが、その中でも、本発明の有機ELデバイスの製造方法としては、少なくとも有機エレクトロルミネッセンス素子のそれぞれに印加する電圧を調整する抵抗値を有する導電部材を、湿式塗布方式により形成することを特徴とする。更に好ましくは、少なくとも、絶縁層、有機エレクトロルミネッセンス素子、第1電極用の引出電極、バスラインを、湿式塗布方式により形成することである。
【0188】
また、湿式塗布方式としては、特に、インクジェット印刷法(インクジェットプリント法ともいう。)を適用することが好ましい。
【0189】
〔有機ELデバイスの製造フロー〕
以下、有機ELデバイスの製造方法の一例として、実施形態1の構成を有する有機ELデバイスを、湿式塗布方式としてインクジェット印刷法を用いて製造する工程フローについて、図を交えて説明する。
【0190】
図9及び
図10は、
図3で示す構成の有機ELデバイスで、
図5で説明したA−A´切断面における構成からなる画素ユニットの製造工程を示すフロー図である。
【0191】
図9には、バスライン(14)の形成から導電部材(16)を形成するまでの前半の製造工程のフローを示す図である。
【0192】
〈ステップ1:バスラインの形成〉
図9の(a)で示すように、はじめに、基材(1)上に、
図3及び
図5で示すような所定の位置に、バスライン(14H)を、形成用インク、例えば、導電性を有するMOM(モリブデン/アルミニウム/モリブデン)を含むインクを、インクジェットヘッドより、所定の位置に吐出して形成する。
【0193】
〈ステップ2:第1電極(陽極)及びその引出電極の形成〉
次いで、
図9の(b)で示すように、
図3及び
図5で記載した位置に、第1電極(2)及び引出電極(17)を、インクジェットヘッド(30)より、例えば、ITO等を吐出して形成する。この時、第1電極(2)の左側端部は、次工程で形成する絶縁部材(13A)にその一部が侵入する位置に形成し、第1電極(2)より延長した引出電極(17)の右側端部は、次工程で形成する導電部材形成用開口部(12)にその一部が露出する位置に形成する。
【0194】
〈ステップ3:絶縁部材の付与と各開口部の形成〉
次いで、
図9の(c)で示すように、上記形成したバスライン(14H)、引出電極(17)上に、インクジェットヘッド(30)より、絶縁性材料、例えば、透明封止剤である脂環式エポキシ化合物を含むインク等を吐出して、絶縁部材(13A、13B、13C)を付与して、
図4で示すような有機EL素子形成用開口部(11)及び導電部材形成用開口部(12)を形成する。
【0195】
この時、有機EL素子形成用開口部(11)では、第1電極(2)の端部が絶縁部材(13A)内に配置され、二つの絶縁部材(13B及び13C)で形成される導電部材形成用開口部(12)には、引出電極(17)の端部と、バスライン(14H)の端部が露出している形態をとる。
【0196】
〈ステップ4:有機機能層ユニットの形成〉
次いで、
図9の(d)で示すように、有機EL素子形成用開口部(11)の全領域に、インクジェットヘッド(30)より、各有機機能層形成用材料を含むインクを順次吐出して、有機機能層ユニット(U)を形成する。
【0197】
〈ステップ5:導電部材の形成〉
次いで、
図9の(e)で示すように、引出電極(17)の端部とバスライン(14)の端部が露出している導電部材形成用開口部(12)の全領域に、インクジェットヘッド(30)より、抵抗調整用の導電部材として、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物(PEDOT:PSS)や銀ナノインクを吐出して、導電部材(16)を形成して、引出電極(17)、導電部材(16)及びバスライン(14)を接続する。
【0198】
この時、抵抗値の異なる導電部材(16R、16G、16B)は、インクの吐出量を変化させ、適宜層厚を調整することにより、所望の抵抗値を有する導電部材を形成することができる。また、必要に応じて、形成する面積を適宜変更して、所望の抵抗値を得てもよい。
【0199】
図10は、導電部材(16)を封止する絶縁層(13D)の形成から封止基板(8)を付与するまでの後半の製造工程を示す図である。
【0200】
〈ステップ6:導電部材を封止する絶縁層の形成〉
次いで、
図10の(a)で示すように、前記ステップ5で形成した導電部材(16)と、次のステップ7で形成する第2電極(6、陰極)との短絡を防止するため、インクジェットヘッド(30)より、例えば、透明封止剤である脂環式エポキシ化合物を含むインク等を吐出して、導電部材形成用開口部(12)の上部に第4の絶縁層(13D)を形成する。
【0201】
〈ステップ7:第2電極の形成〉
次いで、
図10の(b)で示すように、画素ユニットの全面に、インクジェットヘッド(30)より、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物(PEDOT:PSS)や銀ナノインクを吐出して、ベタ状の第2電極(6)を形成する。
【0202】
〈ステップ8:封止用接着層の形成〉
次いで、
図10の(c)で示すように、画素ユニットの全面に、インクジェットヘッド(30)より、例えば、熱硬化型接着剤等の封止用接着剤を吐出して、封止用接着層(7)を形成する。
【0203】
〈ステップ9:封止基板の付与〉
最後に、
図10の(d)で示すように、封止用接着層(7)上に、例えば、樹脂で構成されている封止基板(8)を付与して、有機ELデバイスを作製する。
【0204】
〔有機ELデバイスの形成手段〕
一般に、有機EL素子を含む各構成部材は、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット印刷法等の公知の方法により形成することができるが、本発明においては、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等の湿式塗布方式により形成することを特徴とし、その中でも、特に、主要構成部材をインクジェット印刷法により形成することが好ましい実施形態である。
【0205】
(インクジェット印刷法)
以下、インクジェット印刷法による形成方法について、その一例を、図を交えて説明する。
【0206】
図11は、湿式塗布方式の一例であるインクジェット印刷方式を用いた有機EL素子の形成方法の一例を示す概略図である。
【0207】
図11は、インクジェットヘッド(30)を用いた湿式塗布装置を用いて、基材(1)上の有機EL素子形成用開口部(11)内に、有機EL素子形成材料を含むインクを吐出する方法の一例を示してある。
【0208】
図11に示すように、一例として、基材(1)を連続的に搬送しながら、インクジェットヘッド(30)により有機EL素子形成材料を含むインクを、インク液滴として順次射出して、有機EL素子の有機機能層群(U)を形成する。また、絶縁層、有機エレクトロルミネッセンス素子、第1電極用の引出電極、バスラインの結合部及びバスラインも、同様の方法で形成することができる。
【0209】
本発明の有機ELデバイスの製造方法に適用可能なインクジェットヘッド(30)としては、特に限定はなく、例えばインク圧力室に圧電素子を備えた振動板を有しており、この振動板によるインク圧力室の圧力変化でインク液を吐出させる剪断モード型(ピエゾ型)のヘッドでもよいし、発熱素子を有しており、この発熱素子からの熱エネルギーによりインク液の膜沸騰による急激な体積変化によりノズルからインク液を吐出させるサーマルタイプのヘッドであってもよい。
【0210】
インクジェットヘッド(30)には、射出用のインク液の供給機構などが接続されている。インク液の供給はタンク(38A)により行われる。インクジェットヘッド(30)内のインク液圧力を常に一定に保つようにこの例ではタンク液面を一定にする。その方法としては、インク液をタンク(38A)からオーバーフローさせてタンク(38B)に自然流下で戻している。タンク(38B)からタンク(38A)へのインク液の供給は、ポンプ(31)により行われており、射出条件に合わせて安定的にタンク(38A)の液面が一定となるように制御されている。
【0211】
なお、ポンプ(31)からタンク(38A)へインク液を戻す際には、フィルター(32)を通してから行われている。このように、インク液はインクジェットヘッド(30)へ供給される前に絶対濾過精度又は準絶対濾過精度が0.05〜50μmの濾材を少なくとも1回は通過させることが好ましい。
【0212】
また、インクジェットヘッド(30)の洗浄作業や液体充填作業などを実施するためにタンク(36)よりインク液が、タンク(37)より洗浄溶媒がポンプ(39)によりインクジェットヘッド(30)へ強制的に供給可能となっている。インクジェットヘッド(30)に対してこうしたタンクポンプ類は複数に分けても良いし、配管の分岐を使用しても良い、またそれらの組み合わせでもかまわない。
図11では配管分岐(13)を使用している。さらにインクジェットヘッド(30)内のエアーを十分に除去するためにタンク(36)よりポンプ(39)にてインクジェット(30)へインク液を強制的に送液しながら下記に記すエアー抜き配管からインク液を抜き出して廃液タンク(34)に送ることもある。
【0213】
図12は、インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略外観図である。
【0214】
図12の(a)は、本発明に適用可能なインクジェットヘッド(100)を示す概略斜視図であり、
図12の(b)は、インクジェットヘッド(100)の底面図である。
【0215】
本発明に適用可能なインクジェットヘッド(100)は、インクジェットプリンタ(図示略)に搭載されるものであり、インクをノズルから吐出させるヘッドチップと、このヘッドチップが配設された配線基板と、この配線基板とフレキシブル基板を介して接続された駆動回路基板と、ヘッドチップのチャネルにフィルターを介してインクを導入するマニホールドと、内側にマニホールドが収納された筐体(56)と、この筐体(56)の底面開口を塞ぐように取り付けられたキャップ受板(57)と、マニホールドの第1インクポート及び第2インクポートに取り付けられた第1及び第2ジョイント(81a、81b)と、マニホールドの第3インクポートに取り付けられた第3ジョイント(82)と、筐体(56)に取り付けられたカバー部材(59)とを備えている。また、筐体(56)をプリンタ本体側に取り付けるための取り付け用孔(68)がそれぞれ形成されている。
【0216】
また、
図12の(b)で示すキャップ受板(57)は、キャップ受板取り付け部(62)の形状に対応して、外形が左右方向に長尺な略矩形板状として形成され、その略中央部に複数のノズルが配置されているノズルプレート(61)を露出させるため、左右方向に長尺なノズル用開口部(71)が設けられている。また、
図12の(a)で示すインクジェットヘッド内部の具体的な構造に関しては、例えば、特開2012−140017号公報に記載されている
図2等を参照することができる。
【0217】
図12にはインクジェットヘッドの代表例を示したが、そのほかにも、例えば、特開2012−140017号公報、特開2013−010227号公報、特開2014−058171号公報、特開2014−097644号公報、特開2015−142979号公報、特開2015−142980号公報、特開2016−002675号公報、特開2016−002682号公報、特開2016−107401号公報、特開2017−109476号公報、特開2017−177626号公報等に記載されている構成からなるインクジェットヘッドを適宜選択して適用することができる。
【0218】
(インク液の調製)
本発明の有機ELデバイスの製造方法においては、絶縁層、有機EL素子、第1電極用の引出電極、バスラインの結合部及びバスラインの形成に用いる各インク液では、上記の各構成材料をそのままインク液として使用する方法の他、インクジェット印刷方式に適性を有するインク液とするため、構成材料をインク溶媒等に溶解してインク液を調製する、及び各種機能性添加剤を含有させることができる。
【0219】
〈インク溶媒〉
本発明係るインク液を調製する場合、公知の各種有機溶媒を用いることが好ましい。本発明に係るインク液にY適用可能な有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0220】
〈その他の添加剤〉
本発明のインク液には、本発明の目的効果を損なわない範囲で、吐出安定性、プリントヘッド適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、溶媒、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防バイ剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。