(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
拡大側に位置する拡大側結像面と中間像を共役にする第1レンズユニットと、前記中間像と縮小側に位置する縮小側結像面とを共役にする第2レンズユニットと、からなり、
前記第1レンズユニットは、少なくとも2枚の非球面レンズと、3枚のレンズを接合した接合レンズと、を備え、
前記接合レンズは、前記拡大側結像面の側から前記中間像の側に向かって第1の正レンズ、負レンズ、および、第2の正レンズからなり、
前記第1レンズユニットのレンズエレメント数をNum1、前記第2レンズユニットのレンズエレメント数をNum2、前記第1の正レンズのd線の屈折率をn1、アッベ数をνd1、前記負レンズのd線の屈折率をn2、アッベ数をνd2、前記第2の正レンズのd線の屈折率をn3、アッベ数をνd3としたときに、以下の条件式(1)から条件式(6)の全てを満足することを特徴とする投写光学系。
Num2 ≦ 7 ・・(1)
1.5 ≦ Num1/Num2 ≦ 2.5 ・・(2)
n2−n1 > 0.15 ・・・(3)
n2−n3 > 0.2 ・・・(4)
νd1−νd2 > 30 ・・・(5)
νd3−νd2 > 30 ・・・(6)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係る投写光学系およびこれを備える投写型画像表示装置について詳細に説明する。
【0021】
(投写型画像表示装置)
図1は本発明の投写光学系を備えるプロジェクターの概略構成図である。
図1に示すように、プロジェクター(投写型画像表示装置)1は、スクリーンSに投写する画像光を生成する画像光生成光学系2と、画像光を拡大して投写する投写光学系3と、画像光生成光学系2の動作を制御する制御部4とを備える。
【0022】
(画像光生成光学系および制御部)
画像光生成光学系2は、光源10、第1インテグレーターレンズ11、第2インテグレーターレンズ12、偏光変換素子13、重畳レンズ14を備える。光源10は、例えば、超高圧水銀ランプ、固体光源等で構成される。第1インテグレーターレンズ11および第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子をそれぞれ有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12の各レンズ素子の近傍に集光させる。
【0023】
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を、第2インテグレーターレンズ12を介して、後述する液晶パネル18R、液晶パネル18G、および、液晶パネル18Bの表示領域上で重畳させる。
【0024】
また、画像光生成光学系2は、第1ダイクロイックミラー15、反射ミラー16およびフィールドレンズ17R、および、液晶パネル18Rを備える。第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射した光線の一部であるR光を反射させ、重畳レンズ14から入射した光線の一部であるG光およびB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16およびフィールドレンズ17Rを経て、液晶パネル18Rへ入射する。液晶パネル18Rは画像表示素子である。液晶パネル18RはR光を画像信号に応じて変調することにより、赤色の画像を形成する。
【0025】
さらに、画像光生成光学系2は、第2ダイクロイックミラー21、フィールドレンズ17G、および、液晶パネル18Gを備える。第2ダイクロイックミラー21は、第1ダイクロイックミラー15からの光線の一部であるG光を反射させ、第1ダイクロイックミラー15からの光線の一部であるB光を透過させる。第2ダイクロイックミラー21で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、液晶パネル18Gへ入射する。液晶パネル18Gは画像表示素子である。液晶パネル18GはG光を画像信号に応じて変調することにより、緑色の画像を形成する。
【0026】
また、画像光生成光学系2は、リレーレンズ22、反射ミラー23、リレーレンズ24、反射ミラー25、およびフィールドレンズ17B、および、液晶パネル18Gを備える。第2ダイクロイックミラー21を透過したB光は、リレーレンズ22、反射ミラー23、リレーレンズ24、反射ミラー25、およびフィールドレンズ17Bを経て、液晶パネル18Bへ入射する。液晶パネル18Bは画像表示素子である。液晶パネル18BはB光を画像信号に応じて変調することにより、青色の画像を形成する。
【0027】
液晶パネル18R、液晶パネル18G、および、液晶パネル18Bは、クロスダイクロイックプリズム19を3方向から囲んでいる。クロスダイクロイックプリズム19は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して画像光を生成する。
【0028】
ここで、クロスダイクロイックプリズム19は投写光学系3の一部分を構成する。投写光学系3は、クロスダイクロイックプリズム19が合成した画像光(各液晶パネル18R、18G、18Bが形成した画像)をスクリーンSに拡大して投写する。
【0029】
制御部4は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部6と、画像処理部6から出力される画像信号に基づいて液晶パネル18R、液晶パネル18Gおよび液晶パネル18Bを駆動する表示駆動部7とを備える。
【0030】
画像処理部6は、外部の機器から入力された画像信号を各色の諧調等を含む画像信号に変換する。表示駆動部7は、画像処理部6から出力された各色の画像信号に基づいて液晶パネル18R、液晶パネル18Gおよび液晶パネル18を動作させる。これにより、画像処理部6は、画像信号に対応した画像を液晶パネル18R、液晶パネル18Gおよび液晶パネル18Gに表示する。
【0031】
(投写光学系)
次に、投写光学系3を説明する。以下では、プロジェクター1に搭載される投写光学系3の構成例として実施例1〜3を説明する。
【0032】
(実施例1)
図2は実施例1の投写光学系の構成図(光線図)である。
図3は実施例1の投写光学系のレンズデータを示す図である。
図4は実施例1の投写光学系の非球面レンズの非球面データを示す図である。
図2に示すように、本例の投写光学系3Aは、拡大側結像面であるスクリーンSと中間像30を共役にする第1レンズユニットLU1と、中間像30と縮小側結像面である液晶パネル18(18R、18G、18B)とを共役にする第2レンズユニットLU2とからなる。投写光学系3Aは、14のレンズエレメントを備える。
【0033】
第1レンズユニットLU1は9つのレンズエレメントを備える。すなわち、第1レンズユニットLU1は、スクリーンSの側から中間像30の側に向かって、第1レンズユニット第1レンズL1、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、第1レンズユニット第5レンズL5、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、第1レンズユニット第8レンズL8、および、第1レンズユニット第9レンズL9を備える。
【0034】
第1レンズユニット第1レンズL1はスクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。また、第1レンズユニット第1レンズL1は負のパワーを備える負レンズである。さらに、第1レンズユニット第1レンズL1は樹脂製である。第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3は、それぞれ負レンズである。第1レンズユニット第4レンズL4(最小有効径レンズ)は、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントの中で最もレンズ有効径が小さい。第1レンズユニット第4レンズL4は、負レンズであり、スクリーンSの側に凹面を備える。第1レンズユニット第5レンズL5は、正のパワーを備える正レンズであり、スクリーンSの側および中間像30の側の両面が凸形状である。
【0035】
第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8は、接合されて第1レンズユニット接合レンズSL1を構成している。第1レンズユニット第6レンズL6は正レンズ(第1の正レンズ)であり、第1レンズユニット第7レンズL7は負レンズであり、第1レンズユニット第8レンズL8は正レンズ(第2の正レンズ)である。第1レンズユニット第9レンズL9は、スクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。第1レンズユニット第9レンズL9は樹脂製である。第1レンズユニット第9レンズL9は正レンズである。
【0036】
第2レンズユニットLU2は5つのレンズエレメントを備える。すなわち、第2レンズユニットLU2は中間像30の側から液晶パネル18の側に向かって第2レンズユニット第1レンズL10(中間像側レンズ)、第2レンズユニット第2レンズL11、第2レンズユニット第3レンズL12、第2レンズユニット第4レンズL13、および、第2レンズユニット第5レンズL14(縮小側結像面側レンズ)を備える。第2レンズユニット第5レンズL14と液晶パネル18との間にはクロスダイクロイックプリズム19が配置されている。
【0037】
第2レンズユニット第1レンズL10は正レンズである。第2レンズユニット第3レンズL12と第2レンズユニット第4レンズL13とは接合されて第2レンズユニット接合レンズSL2を構成している。第2レンズユニット第5レンズL14は正レンズである。
【0038】
図2に示すように、投写光学系3Aでは、中間像30を間に挟んだ両側に位置する第1レンズユニットLU1と第2レンズユニットLU2との間を通過する軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸に接近する。中間像30における軸外光の合焦位置Pは、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。
【0039】
ここで、投写光学系3AでスクリーンSへの投写サイズを変える場合には、第1レンズユニット第1レンズL1を固定した状態で、第1レンズユニット第1レンズL1の中間像30の側の隣に位置する第1移動レンズ群MG1と、第1移動レンズ群MG1の中間像30の側の隣に位置する第2移動レンズ群MG2とを光軸L方向に相対移動させて、スクリーンSにピントを合わせるフォーカシングを行う。
【0040】
第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、および、第1レンズユニット第5レンズL5からなる。第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第1レンズL1の側から2枚の負レンズを備えるものである。すなわち、第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3はそれぞれ負レンズである。
【0041】
第2移動レンズ群MG2は、第1レンズユニット接合レンズSL1、および、第1レンズユニット第9レンズL9からなる。第2移動レンズ群MG2は、少なくとも1枚の正レンズを備えるものである。本例では、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第8レンズL8、第1レンズユニット第9レンズL9、が正レンズである。
【0042】
ここで、焦点距離を|f|、最大画角(半画角)をω、FナンバーをFNo、有効像円径をφとしたときに、投写光学系3Aのデータは以下のとおりである。
|f|=2.85
ω=71.3°
FNo=1.9
φ=17mm
【0043】
また、投写光学系3Aのレンズデータは
図3に示すとおりである。
図3において、レンズ番号の列は、
図2の各レンズに付された符号である。面番号に*を付した面は非球面である。Rは曲率半径である。dは軸上面間隔(mm)(レンズ厚又はレンズ間隔)である。ndは屈折率である。νdはアッベ数である。軸上面間隔Aは、スクリーンSと第1レンズユニット第1レンズL1との間の距離である。軸上面間隔Bは、第1レンズユニット第1レンズL1と第1移動レンズ群MG1との間の距離である。軸上面間隔Cは、第1移動レンズ群MG1と第2移動レンズ群MG2との間の距離である。軸上面間隔Dは、第2移動レンズ群MG2と第2レンズユニットLU2との間の距離である。軸上面間隔Aは投写サイズにより変化し、軸上面間隔B、C、Dは投写サイズを変えた場合のフォーカシングにより変化する。
【0044】
投写サイズを変えてフォーカシングを行った場合の軸上面間隔A、B、C、Dは以下の通りである。なお、第1レンズユニット第1レンズL1とスクリーンSとの間の距離である軸上面間隔Aを500mmとしたときのフォーカシング後の各レンズエレメントの位置をポジション1とし、軸上面間隔Aを400mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション2とし、軸上面間隔Aを700mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション3とする。
ポジション1 ポジション2 ポジション3
A 500 400 700
B 6.889 7.018 6.756
C 0.341 0.2 0.487
D 46.845 46.857 46.832
【0045】
次に、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)および第1レンズユニット第9レンズL9の各非球面(面番号15、16)の非球面データは
図4に示すとおりである。
図4において、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)では、非球面形状を規定するための奇数次非球面式の各係数を示す。第1レンズユニット第9レンズL9の各非球面(面番号15、16)では、非球面形状を規定するための偶数次非球面式の各係数を示す。
【0046】
ここで、本例の投写光学系3Aは、第1レンズユニットLU1のレンズエレメント数をNum1、前記第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数をNum2としたときに、以下の条件式(1)および条件式(2)を満足する。
Num2 ≦ 7 ・・(1)
1.5 ≦ Num1/Num2 ≦ 2.5 ・・(2)
【0047】
すなわち、
Num1=9、Num2=5、であり
1.5 ≦ (Num1/Num2=1.8) ≦ 2.5
である。
【0048】
投写光学系3Aは、条件式(1)を満たすので、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数の上限が規定される。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制しやすい。また、条件式(1)および条件式(2)を満たすので、投写光学系3Aのレンズ全系のレンズエレメント数の上限が規定される。よって、レンズ全系のレンズエレメント数を抑制しやすく、レンズ全系の全長を抑制しやすい。本例では、投写光学系3Aのレンズ全系のレンズエレメント数は14である。また、条件式(2)を満たすので、第1レンズユニットLU1のエレメント数が第2レンズユニットLU2よりも多くなる。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制したことにより第2レンズユニットLU2の側で発生した像面湾曲および歪曲収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正することが容易となる。
【0049】
また、第1レンズユニットLU1は、少なくとも2枚の非球面レンズを備える。本例では、第1レンズユニット第1レンズL1および第1レンズユニット第9レンズL9が非球面レンズである。これにより、第2レンズユニットLU2の側で発生した収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正しやすい。また、非球面レンズである第1レンズユニット第1レンズL1が、第1レンズユニットLU1の最もスクリーンSの側に配置されているので、歪曲収差を良好に補正できる。さらに、非球面レンズである第1レンズユニット第9レンズL9が、第1レンズユニットLU1の最も中間像30の側に配置されているので、像面湾曲を良好に補正できる。また、2枚の非球面レンズは、それぞれが樹脂製(プラスチックレンズ)なので、硝子製のレンズを用いた場合と比較して、投写光学系3Aの製造コストを抑制できる。
【0050】
さらに、本例では、3枚のレンズ(第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8)を接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備える。また、第1レンズユニット接合レンズSL1は、第1レンズユニット第6レンズL6の屈折率をn1、アッベ数をνd1、第1レンズユニット第7レンズL7の屈折率をn2、アッベ数をνd2、第1レンズユニット第8レンズL8の屈折率をn3、アッベ数をνd3としたときに、以下の条件式(3)から条件式(6)の全てを満たす。
n2−n1 > 0.15 ・・・(3)
n2−n3 > 0.2 ・・・(4)
νd1−νd2 > 30 ・・・(5)
νd3−νd2 > 30 ・・・(6)
【0051】
すなわち、条件式(3)から条件式(6)の値は以下のとおりである
n2−n1=(1.85478−1.61801)=0.23677 > 0.2
n2−n3=(1.85478−1.61801)=0.23677 > 0.2
νd1−νd2=(63.33−24.8)=38.53 > 30
νd3−νd2(63.33−24.8)=38.53 > 30
【0052】
第1レンズユニット接合レンズSL1を構成する3枚のレンズの屈折率およびアッベ数が条件式(3)〜条件式(6)を満たせば、倍率色収差を良好に補正できる。また、投写光学系3Aは、3枚のレンズを接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備えるので、3枚のレンズを個別に配置する場合と比較して、各レンズエレメントの偏心や倒れを防止できる。これにより、ボケやフレアーが偏在して発生することを抑制できる。
【0053】
また、本例では、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントのうち最もレンズ有効径が小さい第1レンズユニット第4レンズL4がスクリーンSの側に凹面を有する負レンズである。そして、第1レンズユニットLU1の焦点距離をf1U、第1レンズユニット第4レンズL4焦点距離をf2としたときに、以下の条件式(7)を満足する。
−50 < f2/f1U < −5 ・・・(7)
【0054】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである
−50 < f2/f1U=(−35.90/4.90)=−7.327 < −5
【0055】
第1レンズユニットLU1の最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4をスクリーンSの側に凹面を有する負レンズとすれば、第2レンズユニットLU2の全長や、第2レンズユニットLU2を構成する各レンズエレメントのレンズ径の拡大を抑制しながら、必要な光量を取り込むことが容易となる。また、条件式(7)を満足すれば、最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径の拡大を抑制しながら、フォーカシング時の性能劣化を抑えることが容易となる。すなわち、条件式(7)が下限を超えると、必要な光量を取り込むために最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径をより大きくする必要がある。また、条件式(7)が下限を超えるとフォーカス時に非点収差の変動が大きくなりやすい。条件式(7)が上限を超えると周辺のコマ収差の補正が困難となる。
【0056】
さらに、本例では、第2レンズユニットLU2と第1レンズユニットLU1との間における軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸Lに接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正しやすい。また、中間像30における軸外光の合焦位置は、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正することがより容易となる。
【0057】
また、本例では、第2レンズユニットLU2のレンズエレメントのうち、最も中間像30の側に位置する第2レンズユニット第1レンズL10、および、最も液晶パネルの側に位置する第2レンズユニット第5レンズL14は、正レンズである。そして、第2レンズユニット第1レンズL10のd線の屈折率をnc1とし、第2レンズユニット第5レンズL14のd線の屈折率をnc2、とし、第2レンズユニット第5レンズL14の部分分散比をθg,Fとしたときに、以下の条件式(8)から条件式(10)を満足する。
nc1 > 1.8 ・・・(8)
nc2 > 1.8 ・・・(9)
θg,F > 0.58 ・・・(10)
【0058】
すなわち、条件式(8)から条件式(10)の値は以下のとおりである
nc1=1.8061 > 1.8
nc2=1.8061 > 1.8
θg,F=0.5883 > 0.58
【0059】
条件式(8)、条件式(9)を満たすので、第2レンズユニット第1レンズL10および第2レンズユニット第5レンズL14では、屈折率が比較的高く設定される。従って、第2レンズユニットLU2の枚数を少なくした場合でも、中間像30を形成しやすい。ここで、第2レンズユニット第1レンズL10および第2レンズユニット第5レンズL14の屈折率を高くした場合には、第2レンズユニットLU2で色収差が発生しやすくなる。これに対して、第2レンズユニット第5レンズL14の部分分散比が条件式(10)を満たせば、第2レンズユニットLU2で倍率色収差および軸上色収差が発生することを抑制できる。
【0060】
また、本例では、投写光学系3Aのレンズ全系のd線の焦点距離の絶対値を|f|、バックフォーカス空気換算値をBF、としたときに以下の条件式(10)を満足する。
BF/|f| > 6 ・・・(11)
【0061】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである。
BF/|f|=(22.25/|2.85|)=7.8 > 6
【0062】
条件式(7)を満たすので、投写光学系3Aは、半画角が60°以上の広角でバックフォーカスの長いレンズ系となる。
【0063】
図5の上段の図は投写光学系3Aのレンズエレメントがポジション1にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図5の中段の図は投写光学系3Aのレンズエレメントがポジション2にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図5の下段の図は投写光学系3Aのレンズエレメントがポジション3にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)である。
図5に示すように、投写光学系3Aでは、球面収差、非点収差および歪曲収差が良好に補正されている。
【0064】
なお、上記の例では、第1レンズユニットLU1において非球面を備えるレンズは第1レンズユニット第1レンズL1と第1レンズユニット第9レンズL9の2枚であるが、第1レンズユニットLUでは、これらの2枚のレンズに加えて、他のレンズに非球面を備えてもよい。
【0065】
また、投写光学系3Aをプロジェクター1に組み込む際には、レンズエレメントの間にミラーを配置して、これらの間の光路(光軸L)を折り曲げることができる。
【0066】
(実施例2)
図6は実施例2の投写光学系の構成図(光線図)である。
図7は実施例2の投写光学系のレンズデータを示す図である。
図8は実施例2の投写光学系の非球面レンズの非球面データを示す図である。
図6に示すように、本例の投写光学系3Bは、拡大側結像面であるスクリーンSと中間像30を共役にする第1レンズユニットLU1と、中間像30と縮小側結像面である液晶パネル18(18R、18G、18B)とを共役にする第2レンズユニットLU2とからなる。投写光学系3Bは、14のレンズエレメントを備える。
【0067】
第1レンズユニットLU1は10のレンズエレメントを備える。すなわち、第1レンズユニットLU1は、スクリーンSの側から中間像30の側に向かって、第1レンズユニット第1レンズL1、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、第1レンズユニット第5レンズL5、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、第1レンズユニット第8レンズL8、および、第1レンズユニット第9レンズL9、第1レンズユニット第10レンズL10を備える。
【0068】
第1レンズユニット第1レンズL1はスクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。また、第1レンズユニット第1レンズL1は負のパワーを備える負レンズである。さらに、第1レンズユニット第1レンズL1は樹脂製である。第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3は、それぞれ負レンズである。第1レンズユニット第4レンズL4(最小有効径レンズ)は、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントの中で最もレンズ有効径が小さい。第1レンズユニット第4レンズL4は、負レンズであり、スクリーンSの側に凹面を備える。第1レンズユニット第5レンズL5は、正のパワーを備える正レンズであり、スクリーンSの側および中間像30の側の両面が凸形状である。
【0069】
第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8は、接合されて第1レンズユニット接合レンズSL1を構成している。第1レンズユニット第6レンズL6は正レンズ(第1の正レンズ)であり、第1レンズユニット第7レンズL7は負レンズであり、第1レンズユニット第8レンズL8は正レンズ(第2の正レンズ)である。第1レンズユニット第9レンズL9は、スクリーンSの側に凸面を備える正レンズである。第1レンズユニット第10レンズL10は、スクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。第1レンズユニット第10レンズL10は樹脂製である。
【0070】
第2レンズユニットLU2は5つのレンズエレメントを備える。すなわち、第2レンズユニットLU2は中間像30の側から液晶パネル18の側に向かって第2レンズユニット第1レンズL11(中間像側レンズ)、第2レンズユニット第2レンズL12、第2レンズユニット第3レンズL13、第2レンズユニット第4レンズL14、および、第2レンズユニット第5レンズL15(縮小側結像面側レンズ)を備える。第2レンズユニット第5レンズL15と液晶パネル18との間にはクロスダイクロイックプリズム19が配置されている。
【0071】
第2レンズユニット第1レンズL11は正レンズである。第2レンズユニット第2レンズL12は中間像30の側および液晶パネル18の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。第2レンズユニット第3レンズL13と第2レンズユニット第4レンズL14とは接合されて第2レンズユニット接合レンズSL2を構成している。第2レンズユニット第5レンズL15は正レンズである。
【0072】
図6に示すように、投写光学系3Bでは、中間像30を間に挟んだ両側に位置する第1レンズユニットLU1と第2レンズユニットLU2との間を通過する軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸に接近する。中間像30における軸外光の合焦位置Pは、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。
【0073】
ここで、投写光学系3BでスクリーンSへの投写サイズを変える場合には、第1レンズユニット第1レンズL1を固定した状態で、第1レンズユニット第1レンズL1の中間像30の側の隣に位置する第1移動レンズ群MG1と、第1移動レンズ群MG1の中間像30の側の隣に位置する第2移動レンズ群MG2とを光軸L方向に相対移動させて、スクリーンSにピントを合わせるフォーカシングを行う。
【0074】
第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、および、第1レンズユニット第5レンズL5からなる。第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第1レンズL1の側から2枚の負レンズを備えるものである。すなわち、第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3はそれぞれ負レンズである。
【0075】
第2移動レンズ群MG2は、第1レンズユニット接合レンズSL1、第1レンズユニット第9レンズL9および、第1レンズユニット第10レンズL10からなる。第2移動レンズ群MG2は、少なくとも1枚の正レンズを備えるものである。本例では、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第8レンズL8、第1レンズユニット第9レンズL9、第1レンズユニット第10レンズL10が正レンズである。
【0076】
ここで、焦点距離を|f|、最大画角(半画角)をω、FナンバーをFNo、有効像円径をφとしたときに、投写光学系3Bのデータは以下のとおりである。
|f|=2.8
ω=71.9°
FNo=1.7
φ=17mm
【0077】
また、投写光学系3Bのレンズデータは
図7に示すとおりである。
図7において、レンズ番号の列は、
図6の各レンズに付された符号である。面番号に*を付した面は非球面である。Rは曲率半径である。dは軸上面間隔(mm)(レンズ厚又はレンズ間隔)である。ndは屈折率である。νdはアッベ数である。軸上面間隔Aは、スクリーンSと第1レンズユニット第1レンズL1との間の距離である。軸上面間隔Bは、第1レンズユニット第1レンズL1と第1移動レンズ群MG1との間の距離である。軸上面間隔Cは、第1移動レンズ群MG1と第2移動レンズ群MG2との間の距離である。軸上面間隔Dは、第2移動レンズ群MG2と第2レンズユニットLU2との間の距離である。軸上面間隔Aは投写サイズにより変化し、軸上面間隔B、C、Dは投写サイズを変えた場合のフォーカシングにより変化する。
【0078】
投写サイズを変えてフォーカシングを行った場合の軸上面間隔A、B、C、Dは以下の通りである。なお、第1レンズユニット第1レンズL1とスクリーンSとの間の距離である軸上面間隔Aを500mmとしたときのフォーカシング後の各レンズエレメントの位置をポジション1とし、軸上面間隔Aを400mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション2とし、軸上面間隔Aを700mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション3とする。
ポジション1 ポジション2 ポジション3
A 500 400 700
B 9.029 9.066 8.964
C 0.855 0.8 0.93
D 47.627 47.645 47.617
【0079】
次に、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)および第1レンズユニット第10レンズL10の各非球面(面番号15、16)の非球面データは
図8に示すとおりである。
図8において、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)では、非球面形状を規定するための奇数次非球面式の各係数を示す。第1レンズユニット第10レンズL10の各非球面(面番号17、18)、第2レンズユニット第2レンズL12の各非球面(面番号21、22)では、非球面形状を規定するための偶数次非球面式の各係数を示す。
【0080】
ここで、本例の投写光学系3Bは、第1レンズユニットLU1のレンズエレメント数をNum1、前記第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数をNum2としたときに、以下の条件式(1)および条件式(2)を満足する。
Num2 ≦ 7 ・・(1)
1.5 ≦ Num1/Num2 ≦ 2.5 ・・(2)
【0081】
すなわち、
Num1=10、Num2=5、であり
1.5 ≦ (Num1/Num2=2) ≦ 2.5
である。
【0082】
投写光学系3Bは、条件式(1)を満たすので、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数の上限が規定される。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制しやすい。また、条件式(1)および条件式(2)を満たすので、投写光学系3Bのレンズ全系のレンズエレメント数の上限が規定される。よって、レンズ全系のレンズエレメント数を抑制しやすく、レンズ全系の全長を抑制しやすい。本例では、投写光学系3Bのレンズ全系のレンズエレメント数は14である。また、条件式(2)を満たすので、第1レンズユニットLU1のエレメント数が第2レンズユニットLU2よりも多くなる。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制したことにより第2レンズユニットLU2の側で発生した像面湾曲および歪曲収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正することが容易となる。
【0083】
また、第1レンズユニットLU1は、少なくとも2枚の非球面レンズを備える。本例では、第1レンズユニット第1レンズL1および第1レンズユニット第10レンズL10が非球面レンズである。これにより、第2レンズユニットLU2の側で発生した収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正しやすい。また、非球面レンズである第1レンズユニット第1レンズL1が、第1レンズユニットLU1の最もスクリーンSの側に配置されているので、歪曲収差を良好に補正できる。さらに、非球面レンズである第1レンズユニット第10レンズL10が、第1レンズユニットLU1の最も中間像30の側に配置されているので、像面湾曲を良好に補正できる。また、2枚の非球面レンズは、それぞれが樹脂製(プラスチックレンズ)なので、硝子製のレンズを用いた場合と比較して、投写光学系3Bの製造コストを抑制できる。
【0084】
さらに、本例では、3枚のレンズ(第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8)を接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備える。また、第1レンズユニット接合レンズSL1は、第1レンズユニット第6レンズL6の屈折率をn1、アッベ数をνd1、第1レンズユニット第7レンズL7の屈折率をn2、アッベ数をνd2、第1レンズユニット第8レンズL8の屈折率をn3、アッベ数をνd3としたときに、以下の条件式(3)から条件式(6)の全てを満たす。
n2−n1 > 0.15 ・・・(3)
n2−n3 > 0.2 ・・・(4)
νd1−νd2 > 30 ・・・(5)
νd3−νd2 > 30 ・・・(6)
【0085】
すなわち、条件式(3)から条件式(6)の値は以下のとおりである
n2−n1=(1.80518−1.623)=0.18218 > 0.15
n2−n3=(1.80518−1.49701)=0.30817 > 0.2
νd1−νd2=(58.17−25.43)=32.74 > 30
νd3−νd2(81.55−25.43)=56.12 > 30
【0086】
第1レンズユニット接合レンズSL1を構成する3枚のレンズの屈折率およびアッベ数が条件式(3)〜条件式(6)を満たせば、倍率色収差を良好に補正できる。また、投写光学系3Bは、3枚のレンズを接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備えるので、3枚のレンズを個別に配置する場合と比較して、各レンズエレメントの偏心や倒れを防止できる。これにより、ボケやフレアーが偏在して発生することを抑制できる。
【0087】
また、本例では、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントのうち最もレンズ有効径が小さい第1レンズユニット第4レンズL4がスクリーンSの側に凹面を有する負レンズである。そして、第1レンズユニットLU1の焦点距離をf1U、第1レンズユニット第4レンズL4焦点距離をf2としたときに、以下の条件式(7)を満足する。
−50 < f2/f1U < −5 ・・・(7)
【0088】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである
−50 < f2/f1U=(−33.5/4.4)=−7.614 < −5
【0089】
第1レンズユニットLU1の最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4をスクリーンSの側に凹面を有する負レンズとすれば、第2レンズユニットLU2の全長や、第2レンズユニットLU2を構成する各レンズエレメントのレンズ径の拡大を抑制しながら、必要な光量を取り込むことが容易となる。また、条件式(7)を満足すれば、最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径の拡大を抑制しながら、フォーカシング時の性能劣化を抑えることが容易となる。すなわち、条件式(7)が下限を超えると、必要な光量を取り込むために最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径をより大きくする必要がある。また、条件式(7)が下限を超えるとフォーカス時に非点収差の変動が大きくなりやすい。条件式(7)が上限を超えると周辺のコマ収差の補正が困難となる。
【0090】
さらに、本例では、第2レンズユニットLU2と第1レンズユニットLU1との間における軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸Lに接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正しやすい。また、中間像30における軸外光の合焦位置は、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正することがより容易となる。
【0091】
また、本例では、第2レンズユニットLU2のレンズエレメントのうち、最も中間像30の側に位置する第2レンズユニット第1レンズL11、および、最も液晶パネルの側に位置する第2レンズユニット第5レンズL15は、正レンズである。そして、第2レンズユニット第1レンズL11のd線の屈折率をnc1とし、第2レンズユニット第5レンズL15のd線の屈折率をnc2、とし、第2レンズユニット第5レンズL15の部分分散比をθg,Fとしたときに、以下の条件式(8)から条件式(10)を満足する。
nc1 > 1.8 ・・・(8)
nc2 > 1.8 ・・・(9)
θg,F > 0.58 ・・・(10)
【0092】
すなわち、条件式(8)から条件式(10)の値は以下のとおりである
nc1=1.92286 > 1.8
nc2=1.92286 > 1.8
θg,F=0.6388 > 0.58
【0093】
条件式(8)、条件式(9)を満たすので、第2レンズユニット第1レンズL11および第2レンズユニット第5レンズL15では、屈折率が比較的高く設定される。従って、第2レンズユニットLU2の枚数を少なくした場合でも、中間像30を形成しやすい。ここで、第2レンズユニット第1レンズL11および第2レンズユニット第5レンズL15の屈折率を高くした場合には、第2レンズユニットLU2で色収差が発生しやすくなる。これに対して、第2レンズユニット第5レンズL15の部分分散比が条件式(10)を満たせば、第2レンズユニットLU2で倍率色収差および軸上色収差が発生することを抑制できる。
【0094】
また、本例では、投写光学系3Bのレンズ全系のd線の焦点距離の絶対値を|f|、バックフォーカス空気換算値をBF、としたときに以下の条件式(10)を満足する。
BF/|f| > 6 ・・・(11)
【0095】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである。
BF/|f|=(22.24/|2.8|)=7.9 > 6
【0096】
条件式(7)を満たすので、投写光学系3Bは、半画角が60°以上の広角でバックフォーカスの長いレンズ系となる。
【0097】
図9の上段の図は投写光学系3Bのレンズエレメントがポジション1にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図9の中段の図は投写光学系3Bのレンズエレメントがポジション2にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図9の下段の図は投写光学系3Bのレンズエレメントがポジション3にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)である。
図9に示すように、投写光学系3Bでは、球面収差、非点収差および歪曲収差が良好に補正されている。
【0098】
なお、上記の例では、第1レンズユニットLU1において非球面を備えるレンズは第1レンズユニット第1レンズL1と第1レンズユニット第10レンズL10の2枚であるが、第1レンズユニットLU1では、これらの2枚のレンズに加えて、他のレンズに非球面を備えてもよい。
【0099】
また、投写光学系3Bをプロジェクター1に組み込む際には、レンズエレメントの間にミラーを配置して、これらの間の光路(光軸L)を折り曲げることができる。
【0100】
(実施例3)
図10は実施例3の投写光学系の構成図(光線図)である。
図11は実施例3の投写光学系のレンズデータを示す図である。
図12は実施例3の投写光学系の非球面レンズの非球面データを示す図である。
図10に示すように、本例の投写光学系3Cは、拡大側結像面であるスクリーンSと中間像30を共役にする第1レンズユニットLU1と、中間像30と縮小側結像面である液晶パネル18(18R、18G、18B)とを共役にする第2レンズユニットLU2とからなる。投写光学系3Cは、14のレンズエレメントを備える。
【0101】
第1レンズユニットLU1は9つのレンズエレメントを備える。すなわち、第1レンズユニットLU1は、スクリーンSの側から中間像30の側に向かって、第1レンズユニット第1レンズL1、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、第1レンズユニット第5レンズL5、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、第1レンズユニット第8レンズL8、および、第1レンズユニット第9レンズL9を備える。
【0102】
第1レンズユニット第1レンズL1はスクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。また、第1レンズユニット第1レンズL1は負のパワーを備える負レンズである。さらに、第1レンズユニット第1レンズL1は樹脂製である。第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3は、それぞれ負レンズである。第1レンズユニット第4レンズL4(最小有効径レンズ)は、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントの中で最もレンズ有効径が小さい。第1レンズユニット第4レンズL4は、負レンズであり、スクリーンSの側に凹面を備える。第1レンズユニット第5レンズL5は、正のパワーを備える正レンズであり、スクリーンSの側および中間像30の側の両面が凸形状である。
【0103】
第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8は、接合されて第1レンズユニット接合レンズSL1を構成している。第1レンズユニット第6レンズL6は正レンズ(第1の正レンズ)であり、第1レンズユニット第7レンズL7は負レンズであり、第1レンズユニット第8レンズL8は正レンズ(第2の正レンズ)である。第1レンズユニット第9レンズL9は、スクリーンSの側および中間像30の側の両面に非球面形状を備える非球面レンズである。第1レンズユニット第9レンズL9は樹脂製である。第1レンズユニット第9レンズL9は正レンズである。
【0104】
第2レンズユニットLU2は5つのレンズエレメントを備える。すなわち、第2レンズユニットLU2は中間像30の側から液晶パネル18の側に向かって第2レンズユニット第1レンズL10(中間像側レンズ)、第2レンズユニット第2レンズL11、第2レンズユニット第3レンズL12、第2レンズユニット第4レンズL13、および、第2レンズユニット第5レンズL14(縮小側結像面側レンズ)を備える。第2レンズユニット第5レンズL14と液晶パネル18との間にはクロスダイクロイックプリズム19が配置されている。
【0105】
第2レンズユニット第1レンズL10は正レンズである。第2レンズユニット第3レンズL12と第2レンズユニット第4レンズL13とは接合されて第2レンズユニット接合レンズSL2を構成している。第2レンズユニット第5レンズL14は正レンズである。
【0106】
図10に示すように、投写光学系3Cでは、中間像30を間に挟んだ両側に位置する第1レンズユニットLU1と第2レンズユニットLU2との間を通過する軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸に接近する。中間像30における軸外光の合焦位置Pは、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。
【0107】
ここで、投写光学系3CでスクリーンSへの投写サイズを変える場合には、第1レンズユニット第1レンズL1を固定した状態で、第1レンズユニット第1レンズL1の中間像30の側の隣に位置する第1移動レンズ群MG1と、第1移動レンズ群MG1の中間像30の側の隣に位置する第2移動レンズ群MG2とを光軸L方向に相対移動させて、スクリーンSにピントを合わせるフォーカシングを行う。
【0108】
第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第2レンズL2、第1レンズユニット第3レンズL3、第1レンズユニット第4レンズL4、および、第1レンズユニット第5レンズL5からなる。第1移動レンズ群MG1は、第1レンズユニット第1レンズL1の側から2枚の負レンズを備えるものである。すなわち、第1レンズユニット第2レンズL2および第1レンズユニット第3レンズL3はそれぞれ負レンズである。
【0109】
第2移動レンズ群MG2は、第1レンズユニット接合レンズSL1、および、第1レンズユニット第9レンズL9からなる。第2移動レンズ群MG2は、少なくとも1枚の正レンズを備えるものである。本例では、第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第8レンズL8、第1レンズユニット第9レンズL9、が正レンズである。
【0110】
ここで、焦点距離を|f|、最大画角(半画角)をω、FナンバーをFNo、有効像円径をφとしたときに、投写光学系3Cのデータは以下のとおりである。
|f|=2.85
ω=70.55°
FNo=2
φ=16.3
【0111】
また、投写光学系3Cのレンズデータは
図11に示すとおりである。
図11において、レンズ番号の列は、
図10の各レンズに付された符号である。面番号に*を付した面は非球面である。Rは曲率半径である。dは軸上面間隔(mm)(レンズ厚又はレンズ間隔)である。ndは屈折率である。νdはアッベ数である。軸上面間隔Aは、スクリーンSと第1レンズユニット第1レンズL1との間の距離である。軸上面間隔Bは、第1レンズユニット第1レンズL1と第1移動レンズ群MG1との間の距離である。軸上面間隔Cは、第1移動レンズ群MG1と第2移動レンズ群MG2との間の距離である。軸上面間隔Dは、第2移動レンズ群MG2と第2レンズユニットLU2との間の距離である。軸上面間隔Aは投写サイズにより変化し、軸上面間隔B、C、Dは投写サイズを変えた場合のフォーカシングにより変化する。
【0112】
投写サイズを変えてフォーカシングを行った場合の軸上面間隔A、B、C、Dは以下の通りである。なお、第1レンズユニット第1レンズL1とスクリーンSとの間の距離である軸上面間隔Aを500mmとしたときのフォーカシング後の各レンズエレメントの位置をポジション1とし、軸上面間隔Aを400mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション2とし、軸上面間隔Aを700mmとしたときの各レンズエレメントの位置をポジション3とする。
ポジション1 ポジション2 ポジション3
A 500 400 700
B 9.690 9.836 9.500
C 2.156 2.000 2.360
D 40.870 40.880 40.856
【0113】
次に、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)および第1レンズユニット第9レンズL9の各非球面(面番号15、16)の非球面データは
図12に示すとおりである。
図12において、第1レンズユニット第1レンズL1の各非球面(面番号1、2)では、非球面形状を規定するための奇数次非球面式の各係数を示す。第1レンズユニット第9レンズL9の各非球面(面番号15、16)では、非球面形状を規定するための偶数次非球面式の各係数を示す。
【0114】
ここで、本例の投写光学系3Cは、第1レンズユニットLU1のレンズエレメント数をNum1、前記第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数をNum2としたときに、以下の条件式(1)および条件式(2)を満足する。
Num2 ≦ 7 ・・(1)
1.5 ≦ Num1/Num2 ≦ 2.5 ・・(2)
【0115】
すなわち、
Num1=9、Num2=5、であり
1.5 ≦ (Num1/Num2=1.8) ≦ 2.5
である。
【0116】
投写光学系3Cは、条件式(1)を満たすので、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数の上限が規定される。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制しやすい。また、条件式(1)および条件式(2)を満たすので、投写光学系3Cのレンズ全系のレンズエレメント数の上限が規定される。よって、レンズ全系のレンズエレメント数を抑制しやすく、レンズ全系の全長を抑制しやすい。本例では、投写光学系3Cのレンズ全系のレンズエレメント数は14である。また、条件式(2)を満たすので、第1レンズユニットLU1のエレメント数が第2レンズユニットLU2よりも多くなる。従って、第2レンズユニットLU2のレンズエレメント数を抑制したことにより第2レンズユニットLU2の側で発生した像面湾曲および歪曲収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正することが容易となる。
【0117】
また、第1レンズユニットLU1は、少なくとも2枚の非球面レンズを備える。本例では、第1レンズユニット第1レンズL1および第1レンズユニット第9レンズL9が非球面レンズである。これにより、第2レンズユニットLU2の側で発生した収差を、第1レンズユニットLU1の側で補正しやすい。また、非球面レンズである第1レンズユニット第1レンズL1が、第1レンズユニットLU1の最もスクリーンSの側に配置されているので、歪曲収差を良好に補正できる。さらに、非球面レンズである第1レンズユニット第9レンズL9が、第1レンズユニットLU1の最も中間像30の側に配置されているので、像面湾曲を良好に補正できる。また、2枚の非球面レンズは、それぞれが樹脂製(プラスチックレンズ)なので、硝子製のレンズを用いた場合と比較して、投写光学系3Cの製造コストを抑制できる。
【0118】
さらに、本例では、3枚のレンズ(第1レンズユニット第6レンズL6、第1レンズユニット第7レンズL7、および、第1レンズユニット第8レンズL8)を接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備える。また、第1レンズユニット接合レンズSL1は、第1レンズユニット第6レンズL6の屈折率をn1、アッベ数をνd1、第1レンズユニット第7レンズL7の屈折率をn2、アッベ数をνd2、第1レンズユニット第8レンズL8の屈折率をn3、アッベ数をνd3としたときに、以下の条件式(3)から条件式(6)の全てを満たす。
n2−n1 > 0.15 ・・・(3)
n2−n3 > 0.2 ・・・(4)
νd1−νd2 > 30 ・・・(5)
νd3−νd2 > 30 ・・・(6)
【0119】
すなわち、条件式(3)から条件式(6)の値は以下のとおりである
n2−n1=(1.85478−1.61801)=0.23677 > 0.2
n2−n3=(1.85478−1.61801)=0.23677 > 0.2
νd1−νd2=(63.33−24.8)=38.53 > 30
νd3−νd2(63.33−24.8)=38.53 > 30
【0120】
第1レンズユニット接合レンズSL1を構成する3枚のレンズの屈折率およびアッベ数が条件式(3)〜条件式(6)を満たせば、倍率色収差を良好に補正できる。また、投写光学系3Cは、3枚のレンズを接合した第1レンズユニット接合レンズSL1を備えるので、3枚のレンズを個別に配置する場合と比較して、各レンズエレメントの偏心や倒れを防止できる。これにより、ボケやフレアーが偏在して発生することを抑制できる。
【0121】
また、本例では、第1レンズユニットLU1を構成するレンズエレメントのうち最もレンズ有効径が小さい第1レンズユニット第4レンズL4がスクリーンSの側に凹面を有する負レンズである。そして、第1レンズユニットLU1の焦点距離をf1U、第1レンズユニット第4レンズL4焦点距離をf2としたときに、以下の条件式(7)を満足する。
−50 < f2/f1U < −5 ・・・(7)
【0122】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである
−50 < f2/f1U=(−69.09/4)=−17.272 < −5
【0123】
第1レンズユニットLU1の最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4をスクリーンSの側に凹面を有する負レンズとすれば、第2レンズユニットLU2の全長や、第2レンズユニットLU2を構成する各レンズエレメントのレンズ径の拡大を抑制しながら、必要な光量を取り込むことが容易となる。また、条件式(7)を満足すれば、最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径の拡大を抑制しながら、フォーカシング時の性能劣化を抑えることが容易となる。すなわち、条件式(7)が下限を超えると、必要な光量を取り込むために最小有効径レンズである第1レンズユニット第4レンズL4のレンズ径をより大きくする必要がある。また、条件式(7)が下限を超えるとフォーカス時に非点収差の変動が大きくなりやすい。条件式(7)が上限を超えると周辺のコマ収差の補正が困難となる。
【0124】
さらに、本例では、第2レンズユニットLU2と第1レンズユニットLU1との間における軸外の光線の主光線は、第2レンズユニットLU2の側から第1レンズユニットLU1の側に向かって光軸Lに接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正しやすい。また、中間像30における軸外光の合焦位置は、軸外に向かって第2レンズユニットLU2に接近する。これにより、第1レンズユニットLU1の側で発生する歪曲収差を、第2レンズユニットLU2の側で補正することがより容易となる。
【0125】
また、本例では、第2レンズユニットLU2のレンズエレメントのうち、最も中間像30の側に位置する第2レンズユニット第1レンズL10、および、最も液晶パネルの側に位置する第2レンズユニット第5レンズL14は、正レンズである。そして、第2レンズユニット第1レンズL10のd線の屈折率をnc1とし、第2レンズユニット第5レンズL14のd線の屈折率をnc2、とし、第2レンズユニット第5レンズL14の部分分散比をθg,Fとしたときに、以下の条件式(8)から条件式(10)を満足する。
nc1 > 1.8 ・・・(8)
nc2 > 1.8 ・・・(9)
θg,F > 0.58 ・・・(10)
【0126】
すなわち、条件式(8)から条件式(10)の値は以下のとおりである。
nc1=1.84666 > 1.8
nc2=1.80610 > 1.8
θg,F=0.5883 > 0.58
【0127】
条件式(8)、条件式(9)を満たすので、第2レンズユニット第1レンズL10および第2レンズユニット第5レンズL14では、屈折率が比較的高く設定される。従って、第2レンズユニットLU2の枚数を少なくした場合でも、中間像30を形成しやすい。ここで、第2レンズユニット第1レンズL10および第2レンズユニット第5レンズL14の屈折率を高くした場合には、第2レンズユニットLU2で色収差が発生しやすくなる。これに対して、第2レンズユニット第5レンズL14の部分分散比が条件式(10)を満たせば、第2レンズユニットLU2で倍率色収差および軸上色収差が発生することを抑制できる。
【0128】
また、本例では、投写光学系3Cのレンズ全系のd線の焦点距離の絶対値を|f|、バックフォーカス空気換算値をBF、としたときに以下の条件式(10)を満足する。
BF/|f| > 6 ・・・(11)
【0129】
すなわち、条件式(7)の値は以下のとおりである。
BF/|f|=(26.262/|2.85|)=9.2 > 6
【0130】
条件式(7)を満たすので、投写光学系3Cは、半画角が60°以上の広角でバックフォーカスの長いレンズ系となる。
【0131】
図13の上段の図は投写光学系3Cのレンズエレメントがポジション1にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図13の中段の図は投写光学系3Cのレンズエレメントがポジション2にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)であり、
図13の下段の図は投写光学系3Cのレンズエレメントがポジション3にある場合の収差図(球面収差、非点収差および歪曲収差)である。
図13に示すように、投写光学系3Cでは、球面収差、非点収差および歪曲収差が良好に補正されている。
【0132】
なお、上記の例では、第1レンズユニットLU1において非球面を備えるレンズは第1レンズユニット第1レンズL1と第1レンズユニット第9レンズL9の2枚であるが、第1レンズユニットLUでは、これらの2枚のレンズに加えて、他のレンズに非球面を備えてもよい。
【0133】
また、投写光学系3Cをプロジェクター1に組み込む際には、レンズエレメントの間にミラーを配置して、これらの間の光路(光軸L)を折り曲げることができる。