特許第6939478号(P6939478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939478
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20210909BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20210909BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   G03G9/087 331
   G03G9/087 325
   G03G9/09
   G03G15/20 505
【請求項の数】8
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-229748(P2017-229748)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-101126(P2019-101126A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮島 謙史
(72)【発明者】
【氏名】平野 史朗
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−091995(JP,A)
【文献】 特開2017−181643(JP,A)
【文献】 特開2012−234103(JP,A)
【文献】 特開2017−181756(JP,A)
【文献】 特開2011−150257(JP,A)
【文献】 特開2016−031417(JP,A)
【文献】 特開2014−063066(JP,A)
【文献】 特開2015−001561(JP,A)
【文献】 特開2016−095326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上にカラートナー及びブラックトナーにより形成されたトナー画像を、定着装置を通過させて前記記録材の表面上に定着させる工程を有する画像形成方法であって、
前記定着装置が、
内周面及び外周面を有し、周方向に回転移動可能な帯状の加熱部材と、
前記加熱部材の内周面に接触するように配置された非回転のニップ形成部材と、
前記加熱部材の外周面に接触するように配置され、前記加熱部材を介して前記ニップ形成部材を押圧して前記加熱部材の外周面との間に定着ニップを形成する加圧部材と、
前記加熱部材を加熱する加熱装置と、を有し、
前記カラートナー及び前記ブラックトナーがそれぞれ、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、前記ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)が、下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする画像形成方法。
式(1):2≦C(CL)≦6
式(2):1≦C(BK)−C(CL)≦7
【請求項2】
下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
式(3):6≦C(BK)≦9
【請求項3】
下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
式(4):3≦C(CL)≦5
【請求項4】
下記式(5)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
式(5):2≦C(BK)−C(CL)≦4
【請求項5】
前記非晶性樹脂が、ビニル樹脂を含有すること特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記定着ニップ内での最大圧力が、50〜150kPaの範囲内であり、
前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の中央部よりも下流側にあることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の最下流部から前記定着ニップ形成範囲全体に対して25%の範囲内にあることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記加熱装置が、前記定着ニップが形成されている位置とは異なる位置で前記加熱部材を加熱することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法に関する。本発明は、特に、本発明は、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減でき、耐ドキュメントオフセット性に優れ、適度な光沢度のカラー画像及びブラック画像を形成でき、かつそれらの光沢度の差が小さい画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置において、消費電力の低減、印刷の高速化及び適応可能な紙種の拡大等の目的から、トナー画像の定着時に付与する熱エネルギーの低減が求められている。
【0003】
これに対して、定着装置において、定着ニップを形成する加熱部材として薄層の定着ベルトを用い、その内周面に配置されたニップ形成部材を定着ベルトの外周面側から加圧ローラーで押圧することにより定着ニップを形成する、いわゆるパッド定着方式の技術が提案されている。パッド定着方式によれば、従来の加熱ローラー方式と比較して定着装置を構成する部材の熱容量を小さくすることができるため、短いウォームアップタイムでトナー画像を定着することが可能になる。
【0004】
一方、トナーについては、より低温定着性を向上させることが求められており、その達成手段の一つとして、トナー粒子にシャープメルト性に優れる結晶性物質を含有させる技術が用いられている。この技術によれば、定着の際にトナー画像層の温度が結晶性物質の融点を超えたときに結晶成分が溶融し、結着樹脂と相溶することにより、結着樹脂の熱溶融を促進し、低温での定着が可能となる。
【0005】
このようなトナーと、上記パッド定着方式の定着装置とを組み合わせることで、定着時の熱エネルギーを大きく低減する技術が提案されている。
【0006】
例えば、ワックスを所定量以上含有するトナーを複数色用いて、記録材上に複数色のトナー像を重ねた形態で画像を形成する装置において、定着部材に接する最上層であるトナー画像層をワックス相溶量が低いトナーを用いて形成し、最下層であるトナー画像層をワックス相溶量の高いトナーを用いて形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。当該技術によれば、パッド定着システムとの組み合わせにおいて、最上層のトナー画像層がワックス相溶量の低いトナーで形成されているため分離性が良好となり、最下層のトナー画像層がワックス相溶量の高いトナーで形成されているため低温定着性が良好となり、ホットオフセット性等も良好になるとされている。
【0007】
しかしながら、上記従来の技術にあっては、例えば黒色等の単色で形成されたトナー画像が定着された記録材においては、上記効果が得られない。このため、記録材の一方の面に文字等のトナー付着量の少ない画像が形成され、他方の面に写真等のトナー付着量の多い画像が形成されている場合、それらが対向するようにして複数の印刷物が積層されると、トナー付着量の少ない画像がトナー付着量の多い画像へ付着してしまうという問題が発生する場合がある。
また、上記従来の技術にあっては、最下層のトナー画像層がワックス相溶量の高いトナーで形成されているため、例えば黒色等の単色画像を形成した場合、その光沢度が高くなってしまう。一方で、カラー画像は、最上層のトナー画像層がワックス相溶量の低いトナーで形成されているため光沢度が低くなり、黒色等の単色画像との間で光沢度の差が大きくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−31417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減でき、耐ドキュメントオフセット性に優れ、適度な光沢度のカラー画像及びブラック画像を形成でき、かつそれらの光沢度の差が小さい画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、記録材上にカラートナー及びブラックトナーにより形成されたトナー画像を、パッド定着方式の定着装置を通過させて定着させる工程を有する画像形成方法において、カラートナー及びブラックトナーがそれぞれ、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有し、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)とが所定の関係式を満たすことで、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減でき、耐ドキュメントオフセット性に優れ、適度な光沢度の画像を形成でき、カラー画像及びブラック画像の光沢度の差が小さい画像形成方法とすることができることを見いだした。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.記録材上にカラートナー及びブラックトナーにより形成されたトナー画像を、定着装置を通過させて前記記録材の表面上に定着させる工程を有する画像形成方法であって、
前記定着装置が、
内周面及び外周面を有し、周方向に回転移動可能な帯状の加熱部材と、
前記加熱部材の内周面に接触するように配置された非回転のニップ形成部材と、
前記加熱部材の外周面に接触するように配置され、前記加熱部材を介して前記ニップ形成部材を押圧して前記加熱部材の外周面との間に定着ニップを形成する加圧部材と、
前記加熱部材を加熱する加熱装置と、を有し、
前記カラートナー及び前記ブラックトナーがそれぞれ、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
前記カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、前記ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)が、下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする画像形成方法。
式(1):2≦C(CL)≦6
式(2):1≦C(BK)−C(CL)≦7
【0012】
2.下記式(3)を満たすことを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
式(3):6≦C(BK)≦9
【0013】
3.下記式(4)を満たすことを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成方法。
式(4):3≦C(CL)≦5
【0014】
4.下記式(5)を満たすことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
式(5):2≦C(BK)−C(CL)≦4
【0015】
5.前記非晶性樹脂が、ビニル樹脂を含有すること特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0016】
6.前記定着ニップ内での最大圧力が、50〜150kPaの範囲内であり、
前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の中央部よりも下流側にあることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0017】
7.前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の最下流部から前記定着ニップ形成範囲全体に対して25%の範囲内にあることを特徴とする第6項に記載の画像形成方法。
【0018】
8.前記加熱装置が、前記定着ニップが形成されている位置とは異なる位置で前記加熱部材を加熱することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減でき、耐ドキュメントオフセット性に優れ、適度な光沢度のカラー画像及びブラック画像を形成でき、かつそれらの光沢度の差が小さい画像形成方法を提供することができる。
【0020】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0021】
モノクロモードでの低温定着性を考えた場合には、ブラックトナーの低温定着温度は低いほど好ましい。しかしながら、ブラックトナーを過度に低温定着化すると、画像部分の光沢度が高くなることで文字画像の可読性が低下してしまう。また、トナー付着量の多いカラー画像部分と、ブラックトナーにより形成されるトナー付着量が少ない文字や細線等のブラック画像部分とが共存する印刷物においては、耐ドキュメントオフセット性が低下するという問題もある。
【0022】
本発明では、カラートナー及びブラックトナーがともに結晶性ポリエステル樹脂を含有し、結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数が、ブラックトナーに比べてカラートナーの方が少ない。これにより、カラートナーがより熱溶融しやすくなり、カラー画像とブラック画像との光沢差を小さくすることができる。
【0023】
また、カラートナーが、他の成分と相溶性の高い結晶性ポリエステル樹脂を結着樹脂として含有するため、十分な定着性が得られる。
【0024】
また、ブラックトナーは、カラートナーよりも結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数が多いため、ブラックトナーにより形成される画像部分が定着後に過度に軟化することが抑制される。これにより、カラー画像への付着が抑制され、耐ドキュメントオフセット性を向上することができたものと考えている。
【0025】
さらに、耐ドキュメントオフセット性は、カラートナー及びブラックトナーが同一の結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合よりも、互いに鎖長の異なる結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合の方が良好である。その理由は明らかではないが、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーは、定着後に再び結晶化することで耐ドキュメントオフセット性が良好になることが知られていることから、次のように推測される。すなわち、定着時に他の成分と相溶した結晶性ポリエステル樹脂は、疎水性や分子の柔軟性による移動のしやすさから、定着前にトナー粒子表面近傍に存在していた一部が定着後の画像の表面近傍に存在し、印刷物が複数積層された後に余熱等を受けてゆっくりと結晶化すると考えられる。この時に、カラートナー及びブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数が異なっていることで、カラートナーで形成された画像とブラックトナーで形成された画像とが一体となって結晶性ポリエステル樹脂が結晶化することが抑制され、耐ドキュメントオフセット性が向上したと考えられる。
【0026】
また、本発明においては、カラートナー及びブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数の差が7以下であるため、カラートナーにより形成される画像とブラックトナーにより形成される画像との光沢差を小さくすることができるとともに、ブラックトナーにより形成される画像の定着性を向上させることができる。
【0027】
さらに、本発明においては、定着装置が、定着ニップを形成する加熱部材を、加圧ローラーによりニップ形成部材に押圧する、いわゆるパッド定着方式であるため、定着ニップ内でトナー画像に十分に熱を与えた後に加圧するというように、加熱と加圧をある程度独立して制御することが可能になる。このような設計により、結晶性ポリエステル樹脂を用いることで軟化点が低下したトナーであっても過度に光沢度が高くなることを抑制できる。
【0028】
パッド定着方式でない定着装置を用いて定着を行う場合、十分な定着性を確保すると光沢度が過度に高くなってぎらつきのある画像となってしまう。一方、定着装置による圧を下げる等して光沢を抑えると定着性が不十分となり、低温定着性に劣るとともに、記録材への付着性も不足するために耐ドキュメントオフセット性も低下する。本発明のように、パッド定着方式の定着装置を用いることで、記録材への付着性を確保しつつ、定着後のトナー粒子の形状をある程度維持することができ、低温定着性と適度な光沢度の両立が実現できる。そして、パッド定着方式の定着装置を、上記トナーと組み合わせて用いることで、画像形成後の画像の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図
図2】本発明に係る定着装置の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の画像形成方法は、記録材上にカラートナー及びブラックトナーにより形成されたトナー画像を、定着装置を通過させて前記記録材の表面上に定着させる工程を有する画像形成方法であって、前記定着装置が、内周面及び外周面を有し、周方向に回転移動可能な帯状の加熱部材と、前記加熱部材の内周面に接触するように配置された非回転のニップ形成部材と、前記加熱部材の外周面に接触するように配置され、前記加熱部材を介して前記ニップ形成部材を押圧して前記加熱部材の外周面との間に定着ニップを形成する加圧部材と、前記加熱部材を加熱する加熱装置と、を有し、前記カラートナー及び前記ブラックトナーがそれぞれ、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、前記ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)が、後述する式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明においては、後述する式(3)を満たすことが好ましい。炭素数C(BK)が6以上であることにより、ブラック画像の結晶性ポリエステルの結晶化が進行しやすくなり、耐ドキュメントオフセット性が良好になり、炭素数C(BK)が9以下であることにより、ブラックトナーの定着性を向上させることができる。
また、本発明においては、後述する式(4)を満たすことが好ましい。炭素数C(CL)が3以上であることにより、カラートナーの耐熱保管性がさらに良好になるとともに、カラー画像同士の耐ドキュメントオフセット性を向上させることができる。炭素数C(CL)が5以下であることにより、より確実に低温定着性が得られる。
また、本発明においては、後述する式(5)を満たすことが好ましい。C(BK)−C(CL)の値が2以上であることにより、耐ドキュメントオフセット性をより向上させることができる。また、C(BK)−C(CL)の値が4以下であることにより、カラートナーとブラックトナーの定着性の関係や光沢度の差を適正な範囲とすることが容易になり、ブラックトナーの定着性が確保できることで耐ドキュメントオフセット性を向上させることができる。
また、本発明においては、前記非晶性樹脂が、ビニル樹脂を含有することが好ましい。非晶性樹脂がビニル樹脂、特にスチレン・アクリル樹脂を含有することで、定着画像とした後の結晶化をより確実に進めることができることから、耐ドキュメントオフセット性の向上が確実に得られる。
また、本発明においては、前記定着ニップ内での最大圧力が、50〜150kPaの範囲内であり、前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の中央部よりも下流側にあることが好ましい。定着ニップ内での最大圧力が50kPa以上であることにより、低温定着性を確保でき、150kPa以下であることにより、適正な光沢がより確実に得られる。また、定着ニップ内で最大圧力となる位置が、定着ニップ形成範囲の中央部よりも下流側にあることにより、十分にトナーが加熱されてから加圧されることで定着されるので、低い光沢度の画像であっても十分な低温定着性が得られる。
また、本発明においては、前記定着ニップ内で最大圧力となる位置が、記録材搬送方向において前記定着ニップ形成範囲の最下流部から前記定着ニップ形成範囲全体に対して25%の範囲内にあることが好ましい。これにより、より低い定着温度であっても十分な低温定着性が得られる。
また、本発明においては、前記加熱装置が、前記定着ニップが形成されている位置とは異なる位置で前記加熱部材を加熱することが好ましい。これにより、加熱部材の耐久性を向上させることができる。
【0031】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0032】
《画像形成方法》
本発明の画像形成方法は、記録材上にカラートナー及びブラックトナーにより形成されたトナー画像を、定着装置を通過させて前記記録材の表面上に定着させる工程を有する画像形成方法であって、定着装置が、内周面及び外周面を有し、周方向に回転移動可能な帯状の加熱部材と、加熱部材の内周面に接触するように配置された非回転のニップ形成部材と、加熱部材の外周面に接触するように配置され、加熱部材を介してニップ形成部材を押圧して加熱部材の外周面との間に定着ニップを形成する加圧部材と、加熱部材を加熱する加熱装置と、を有し、カラートナー及びブラックトナーがそれぞれ、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有し、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)が、下記式(1)及び式(2)を満たすことを特徴とする。
【0033】
式(1):2≦C(CL)≦6
式(2):1≦C(BK)−C(CL)≦7
【0034】
本発明において、ブラックトナーは、それを用いて形成される画像において黒色を呈する静電荷像現像用トナーであり、カラートナーは、それを用いて形成される画像において黒色以外の色を呈する静電荷像現像用トナーである。
【0035】
ここで、本発明の画像形成方法においては、カラー画像とブラック画像とを記録材の同一面上に形成するものとしても良いし、カラー画像を記録材の一方の面に形成してブラック画像を当該記録材の他方の面に形成するものとしても良いし、カラー画像とブラック画像とをそれぞれ別々の記録材にそれぞれ形成するものとしても良い。
【0036】
本発明の画像形成方法は、具体的には、例えば、後述するように構成される画像形成装置を用いて行うことができる。
すなわち、まず、感光体の表面を負に帯電させ、当該感光体の表面を画像信号に基づいて露光して静電潜像を形成し、感光体の表面にトナーを付与して現像する。次いで、各感光体上にそれぞれ現像された各色のトナー像を、回動する中間転写ベルト上に逐次転写(一次転写)させて、中間転写ベルト上にトナー像を形成する。記録材を二次転写部に給紙し、中間転写ベルトから記録材上へトナー像を転写(二次転写)して、記録材上にトナー画像(未定着画像)を形成する。このようにして記録材上に形成されたトナー画像を、定着装置を通過させて記録材の表面に定着させる。当該定着処理の後、記録材を装置外に排紙する。このようにして、記録材上に画像を形成することができる。なお、記録材上へのトナー画像の形成と、当該トナー画像の定着とは別個の装置を用いてそれぞれ行うものとしても良い。
【0037】
以下、本発明の画像形成方法に好適に用いられ、本発明に係る定着装置を備える画像形成装置、並びにカラートナー及びブラックトナーについて説明する。
【0038】
《画像形成装置》
図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置100について説明する。図1は、画像形成装置100の概略構成図である。
【0039】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成部10A〜10D、中間転写ベルト21、給紙ローラー22、タイミングローラー23、転写ローラー24、クリーニング装置25、排紙ローラー26、及び定着装置30を備える。
【0040】
画像形成部10A〜10Dの各々は、感光体11、帯電装置12、露光装置13、現像装置14及びクリーニング装置15を有する。画像形成部10A〜10Dの各々によって形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト21上に順々に転写され、中間転写ベルト21上で合成される。
【0041】
記録材20は、給紙ローラー22及びタイミングローラー23によって搬送される。中間転写ベルト21上のトナー像は、中間転写ベルト21と転写ローラー24との間で記録材20の表面に転写される。記録材20の表面には、トナー画像10が形成されることとなる。
【0042】
《定着装置》
図2を参照して、定着装置30について説明する。図2は、定着装置30の概略構成図である。
【0043】
定着装置30は、トナー画像10が表面20Aに形成された記録材20を定着ニップNに通過させ、加圧及び加熱によって、トナー画像10を記録材20の表面20A上に定着させる。具体的には、定着装置30は、加熱部材31、加熱装置32、ニップ形成部材33、潤滑剤塗布部材34、及び加圧部材36を備えるパッド定着方式の定着装置である。
【0044】
加熱部材31は、内周面31A及び外周面31Bを有する。加熱部材31は、無端ベルトの形状を有しており、周方向(矢印DR方向)に沿って回転移動可能である。加熱装置32、ニップ形成部材33、潤滑剤塗布部材34は、いずれも加熱部材31の内周面31Aの側に配置される。また、加熱部材31は、加圧部材36と接触して定着ニップNを形成し、加圧部材36が回転駆動することにより、加熱部材31が従動回転する。
【0045】
加熱装置32は、その構成要素として熱源32A及び加熱ローラー32Bを有する。熱源32Aは、例えばハロゲンヒーターやカーボンヒーターから構成され、通電されることで、加熱ローラー32Bを介して加熱部材31を加熱する。また、加熱装置32は、加熱部材31の回転により、従動回転する。
【0046】
加熱装置32は、定着ニップNが形成されている位置とは異なる位置で加熱部材31に接触し、これを加熱するように配置されている。加熱部材31の周方向(矢印DR)で見た場合、加熱部材31は、当該周方向における定着ニップNとは異なる位置(ここでは、定着ニップNの反対側の位置)で加熱装置32によって加熱されることとなる。これにより、加熱部材31がニップ形成部材33と摺動する位置と、加熱部材31が加熱される位置とを異ならせることができるため、加熱部材31の耐久性を向上させることができる。さらには、加熱装置32にかかる応力を低くすることが可能であるため、加熱装置32の芯金を薄くすることやローラーの素材の選択により熱容量を小さく、かつ熱伝導率を上げることが可能になる。よって、通紙時の温度低下から素早く復帰することが可能となる。また、ニップ形成部材33に関しても、形状や物性の調整(例えば、熱伝導率を低くすることや、摩擦係数を下げること)が容易になることで、圧力分布の緻密な制御を行うことや熱伝導によるエネルギーのロスを減らすことが可能になり、より低温定着性を向上させることができる。
【0047】
なお、加熱装置32は、定着ニップNとは異なる位置で加熱部材31を加熱するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、ニップ形成部材33の内部に設けられて、定着ニップNの位置で加熱部材31を加熱するように構成されているものとしても良い。
【0048】
潤滑剤塗布部材34は、定着ニップNの長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)に沿って延在する形状を有する。潤滑剤塗布部材34は、加熱部材31の内周面31Aに接触するように配置され、潤滑剤を内周面31Aに供給する。潤滑剤は、加熱部材31の回転移動によって、加熱部材31の内周面31Aとニップ形成部材33との間に供給される。
【0049】
ニップ形成部材33は、加熱部材31の内周面31Aに接触するように配置された非回転の部材である。また、ニップ形成部材33は、定着ニップNの長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)に沿って延在する形状を有し、定着装置30の筐体(図示略)等に直接又は支持部材等を介して取り付けられていることで所定位置に固定されている。ニップ形成部材33がこのように構成されていることで、加熱部材31が回転することで加熱部材31がニップ形成部材33に対して摺動する。
【0050】
ニップ形成部材33は、耐熱性を有する樹脂部材から形成することができ、例えば、LCP(Liquid Crystal Polymer;液晶ポリマー)、ポリイミド樹脂、PAI(Polyamide-imide;ポリアミドイミド樹脂)等が挙げられる。なお、ニップ形成部材33の形状は、図示例に限られるものではなく、例えば、定着ニップNの長手方向に沿って延在する円筒形状等であっても良く、その周面と加圧部材36との間に定着ニップNを形成するものであっても良い。
【0051】
また、ニップ形成部材33の内周面31Aに接する位置には、凸部33Cが設けられる。これにより、ニップ形成部材33と加圧部材36とにより形成される定着ニップNの形成範囲において局所的に圧力の高い位置を形成することができる。凸部33Cは、定着ニップNの長手方向(図2紙面に対して垂直な方向)に対して平行な方向に沿って直線状に延在する形状を有する。定着ニップN形成範囲内に発生する最大圧力は、適度な光沢を得る観点から、例えば、400kPa以下であることが好ましく、50〜150kPaの範囲内であることが好ましい。当該最大圧力は、凸部33Cの形状や加圧部材36の押圧力を調整することで制御することができる。
【0052】
また、凸部33Cは、記録材搬送方向において定着ニップN形成範囲の中央部よりも下流側であって、定着ニップN形成範囲の最下流部から定着ニップN形成範囲全体に対して25%の範囲内に配置されている。これにより、定着ニップN形成範囲において最大圧力となる位置を、記録材搬送方向中央部よりも下流側、かつ定着ニップN形成範囲の最下流部から定着ニップN形成範囲全体に対して25%の範囲内に配置することができる。当該最大圧力の位置は、凸部33Cの形状や加熱部材31の内周面31Aへの当接位置を調整することで制御することができる。
なお、定着ニップN形成範囲内の最大圧力の値及びその位置は、後述する実施例に記載の測定方法により求めることができる。
【0053】
ここで、定着装置30の電力消費量を少なくするための手法の1つとして、定着温度を低くすることが考えられる。定着温度を低くした場合には、画像品質(定着品質)の低下を抑制するために、何らかの対策を採ることが必要となる。その対策として、定着ニップN内の記録材搬送方向における一部分の圧接力を局所的に大きくした圧分布を形成するという手法が考えられる。この手法を採用した場合、溶融した記録材20上のトナーが急激に記録材20内へ染み込むとともに、凸部33Cに対応する箇所において加熱部材31とトナー画像の表面との間に剪断力(ずり力)が発生し、凸部33Cに対応する箇所においてトナー画像に剪断力が付与されるため、トナー画像と記録材20の表面20Aとの結びつきをより強固なものとすることが可能となる。
【0054】
なお、凸部33Cの形状は、図示例に限られるものではなく、その延在方向の両端に比べて、中央部が加圧部材36側又は加熱装置32側に位置するように、湾曲線の延在形状を有するように構成されていても良い。また、凸部33Cの形状は、定着ニップNの長手方向に対して平行な方向に沿って、比較的短めの長さを有する複数の直線部分が断続的に存在するように構成されていても良い。凸部33Cがこれらの形状である場合には、上記剪断力を長手方向の各位置において異ならせることが可能となる。
さらに、ニップ形成部材33は凸部33Cを有していなくても良く、この場合には、ニップ形成部材33の加熱部材31の内周面31Aに接する部分の形状を適宜変化させることで、定着ニップN形成範囲内の最大圧力の値及びその位置を調整することができる。例えば、ニップ形成部材33の表面形状が、加熱部材31の内周面31Aに接する位置において、加熱部材31側に凸、又は凹となるように形成されていても良い。
【0055】
加圧部材36からの押圧力は、定着ニップNを介してニップ形成部材33に付与される。ニップ形成部材33は所定位置で固定されていることによりこの押圧力に対抗する。
【0056】
加圧部材36は、加熱部材31の外周面31Bに接触するように配置される。加圧部材36は、ニップ形成部材33を、加熱部材31を介して押圧する。加圧部材36の外周面と加熱部材31の外周面31Bとの間に、所望のニップ幅を有する定着ニップNが形成される。
【0057】
加圧部材36は、芯金36Aと、芯金36Aの外表面を取り囲むように設けられた弾性層36Bとを有する。弾性層36Bは、例えば、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等から形成される。弾性層36Bの表層には、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の離型層が設けられていても良い。
【0058】
加圧部材36の長手方向における両端には、図示しない駆動機構が接続されており、加圧部材36は図2中の矢印方向(時計回り方向)に回転する。加圧部材36の回転力により、加熱部材31は従動回転する。加圧部材36の内部に、ハロゲンヒーター等の熱源が設けられていても良い。
【0059】
本発明の画像形成方法は、上記のように構成されたパッド定着方式の定着装置30を用いることにより、定着時の熱エネルギーの低減を図ることができる。さらに、未定着画像を低い圧力で定着させることが可能となるので、軟化点の低いトナーを用いた場合にも適度な光沢度の画像を形成することが可能になる。
【0060】
《カラートナー及びブラックトナー》
本発明に係るカラートナー及びブラックトナーは、結着樹脂として少なくとも非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する。カラートナー及びブラックトナーそれぞれは、各色に対応する着色剤を含有し、さらに離型剤等を含有することが好ましい。以下、カラートナーとブラックトナーとを区別する必要がない場合には、単にトナーと称することがある。
【0061】
また、本発明におけるトナーとは、トナー粒子の集合体をいう。また、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいう。なお、本発明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを区別する必要がない場合には、単にトナー粒子と称することがある。
【0062】
[トナー母体粒子]
本発明に係るトナーを構成するトナー母体粒子は、結着樹脂として、非晶性樹脂、及び直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位を有する結晶性ポリエステル樹脂とを含有し、各色に対応した着色剤を含有する。また、トナー母体粒子は、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の他の成分を含有しても良い。以下、トナー母体粒子を構成する各成分、及びトナー母体粒子の構造や物性等について説明する。
【0063】
[1]結晶性ポリエステル樹脂
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂としての結晶性ポリエステル樹脂を含有するため、加熱定着時に、当該結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂とが相溶し、トナーの低温定着性を向上させることができる。また、定着後に、結晶性ポリエステル樹脂が再び結晶化することにより、耐ドキュメントオフセット性を向上させることができる。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0065】
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tc)は、例えば、55〜90℃の範囲内であることが好ましく、70〜88℃の範囲内であることがより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点が55〜90℃の範囲内であれば、十分な低温定着性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
【0066】
また、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tc)は、示差熱量分析装置(DSC)を用いて以下の方法で測定することができる。
まず、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における結晶性樹脂に由来する吸熱ピーク(半値幅が15℃以内である吸熱ピーク)のピークトップの温度を融点(Tc)とする。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、例えば、1500〜25000の範囲内であることが好ましく、3000〜20000の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であると、低温定着性をより向上させることができる。
【0068】
ここで、本発明において、樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、以下の方法で測定することができる。
すなわち、装置「HLC−8320GPC」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZ−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流した。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行った。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出した。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。上記検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
【0069】
ブラックトナー及び各カラートナーにおける結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、それぞれ、結着樹脂全体に対して、例えば、1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、3〜20質量%の範囲内であることがより好ましく、6〜17質量%の範囲内であることが特に好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1質量%以上であると、非晶性樹脂との相溶により適度に可塑化し、低温定着性が向上しやすくなる。一方、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が30質量%以下であると、可塑化が適度に抑制されることにより、高温高湿環境下であっても画像ノイズがより抑制される。
【0070】
なお、結晶性ポリエステル樹脂の構成成分(構造単位)の構造及び各構成成分(各構成単位)の含有量(割合)は、例えば、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)測定や、メチル化反応Py−GC/MS(Gas Chromatography-Mass Spectrometry)測定により特定することができる。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂の合成方法は特に制限されず、例えば、公知のエステル化触媒を利用して、直鎖脂肪族ジオールと、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)とを重縮合する(エステル化する)ことによって得られる。
【0072】
製造の際に使用可能な触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;アミン化合物等が挙げられる。入手容易性等を考慮すると、例えば、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩や、テトラノルマルブチルチタネート(オルトチタン酸テトラブチル)、テトライソプロピルチタネート(チタンテトライソプロポキシド)、テトラメチルチタネート等を用いることが好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0073】
重縮合(エステル化)の温度は特に限定されるものではないが、例えば、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。また、重縮合(エステル化)の時間は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜15時間であることが好ましい。重縮合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしても良い。
【0074】
また、本発明の効果を損なわない限り、直鎖脂肪族ジオール以外の2価以上のアルコール(多価アルコール)をさらに用いても良い。かような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等が挙げられる。しかしながら、カラートナー及びブラックトナーのいずれの場合においても、定着後に結晶性ポリエステル樹脂の結晶化を進行させることで耐ドキュメントオフセット性の改善が図れるという観点から、結晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分は、直鎖脂肪族ジオールのみから構成されることが好ましい。
【0075】
結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる直鎖脂肪族ジオール及び多価カルボン酸の例としては、以下が挙げられる。
【0076】
[1−1]直鎖脂肪族ジオール
カラートナー及びブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)とが、下記式(1)及び式(2)を満たせば、いずれであっても良い。
式(1):2≦C(CL)≦6
式(2):1≦C(BK)−C(CL)≦7
【0077】
炭素数C(CL)が2以上であることで、耐ブロッキング性が向上し、炭素数C(CL)が6以下であることで、十分な定着性が得られ、適度な光沢度を得ることができる。また、上記炭素数C(CL)と炭素数C(BK)とが異なることで、カラー画像とブラック画像が対向して接した状態であるときに、その界面での結晶化が抑制され、耐ドキュメントオフセット性が向上する。また、炭素数C(CL)よりも炭素数C(BK)の方が大きいことで、ブラックトナーにより形成される文字画像の光沢度がカラー画像よりも僅かに低くなり、文字画像の可読性を向上させることができる。さらに、炭素数C(BK)と炭素数C(CL)の差が7以下であるため、カラー画像とブラック画像との光沢差を低減し、十分な定着性を発現させることができる。
【0078】
上記直鎖脂肪族ジオールとして具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール等の飽和脂肪族ジオール;2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール等の不飽和脂肪族ジオール等が挙げられるが、結晶構造の規則性が高い結晶性ポリエステル樹脂を得る観点から、飽和脂肪族ジオールが好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。2種以上を併用する場合には、上記炭素数C(CL)及びC(BK)は、各結晶性ポリエステル樹脂の調製において最も多く含有される直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数であるものとする。
【0079】
また、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3):6≦C(BK)≦9
【0080】
つまり、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等であることが好ましい。これにより、ブラック画像の結晶性ポリエステルの結晶化が進行しやすくなり、耐ドキュメントオフセット性が良好になり、かつブラックトナーの定着性を向上させることができる。
【0081】
また、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4):3≦C(CL)≦5
【0082】
つまり、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる直鎖脂肪族ジオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等であることが好ましい。これにより、カラートナーの耐熱保管性がさらに良好になるとともに、カラー画像同士の耐ドキュメントオフセット性を向上させることができ、さらに、より確実に低温定着性が得られる。
【0083】
また、カラートナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(CL)と、ブラックトナーに含有される結晶性ポリエステル樹脂における直鎖脂肪族ジオールに由来する構造単位の炭素数C(BK)とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。これにより、耐ドキュメントオフセット性をより向上させることができる。
式(5):2≦C(BK)−C(CL)≦4
【0084】
ブラックトナー及び各カラートナーにそれぞれ含有される結晶性ポリエステル樹脂を構成する直鎖脂肪族ジオールの含有量は、特に制限されないが、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体の全量に対し、10〜60質量%の範囲内であると好ましく、15〜50質量%の範囲内であるとより好ましい。これにより、結晶性ポリエステル樹脂の挙動を制御しやすくなるため、帯電性を制御しやすくなる。
【0085】
[1−2]多価カルボン酸
ブラックトナー及び各カラートナーに含まれる結晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸としては、特に制限されるものではない。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。また、2価のカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いても良い。さらに、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。上記多価カルボン酸は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0086】
中でも、ブラックトナー及び各カラートナー中の結晶性ポリエステル樹脂の挙動を制御し、トナー粒子の帯電性を制御しやすくする観点から、多価カルボン酸として、直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。同様の観点から、多価カルボン酸として、炭素数6〜20の範囲内の直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることがより好ましく、炭素数10〜15の範囲内の直鎖脂肪族ジカルボン酸を用いることが特に好ましい。
【0087】
また、多価カルボン酸としては、その炭素数が上記直鎖脂肪族ジオールの炭素数よりも3以上多いものが好ましい。多価カルボン酸の鎖長が長いことで、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が起こりやすくなり、高い耐ドキュメントオフセット性が得られる。また、多価カルボン酸の方が、直鎖脂肪族ジオールよりも結晶性が高い等の理由から、精製が容易であるため、純度の高い長鎖のモノマーを入手しやすいという点からも、多価カルボン酸の炭素数が直鎖脂肪族ジオールよりも炭素数よりも長いことが好ましい。
【0088】
[2]非晶性樹脂
非晶性樹脂は、トナー母体粒子に結着樹脂として含有されている。非晶性樹脂は、トナーに含有される結着樹脂の主成分であることが好ましい。結着樹脂が、主成分として非晶性樹脂を含有することにより、非晶性樹脂がトナー母体粒子表面に存在しやすくなる。その結果、非晶性樹脂の電気抵抗の高さに起因して、トナー母体粒子の帯電性を良好にすることができる。ここで、主成分とは、結着樹脂の中で最も含有割合が高い樹脂であることを意味する。非晶性樹脂は、結着樹脂全体に対して、例えば、50質量%以上であることが好ましく、70〜99質量%の範囲内であることがより好ましく、80〜97質量%の範囲内であることがさらに好ましく、83〜94質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0089】
ここで、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を行った際に、得られるDSC曲線に、ガラス転移が生じたことを示すベースラインのカーブは見られるが、上述した明確な吸熱ピークが見られない樹脂をいう。非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、30〜80℃の範囲内であることが好ましく、40〜65℃の範囲内であることが特に好ましい。上記ガラス転移温度は、当業者であれば、樹脂の組成によって制御することが可能である。
【0090】
また、非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差熱量分析装置(DSC)を用いて以下の方法で測定することができる。
まず、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られるDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とする。
【0091】
非晶性樹脂としては、本技術分野における従来公知の非晶性樹脂が用いられ得るが、中でも、非晶性ポリエステル樹脂又はビニル樹脂が好ましく、これらの樹脂を混合して用いても良い。
【0092】
本発明では、ブラックトナー及びカラートナーに含有される非晶性樹脂はそれぞれ、ビニル樹脂を含有することが好ましく、スチレン・アクリル樹脂を含有することがより好ましい。非晶性樹脂が、ビニル系樹脂、特にスチレン・アクリル樹脂を含有することで、トナー画像を定着した後の定着画像において結晶化をより確実に進めることができる。これにより、耐ドキュメントオフセット性の向上がより確実に得られ、ジオール成分の鎖長の違いによる顕著な向上効果も確実に得られる。スチレン・アクリル樹脂の含有量は、特に制限されるものではないが、画像濃度の環境依存性低減の観点から、非晶性樹脂の全量に対し、例えば50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0093】
[2−1]非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂であって、示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。また、非晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体は、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、例えば、NMR等の分析によって結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。
【0094】
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0095】
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
製造の際に使用可能な触媒、重縮合(エステル化)の温度、重縮合(エステル化)の時間は特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様である。
【0096】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000〜100000の範囲内であることが好ましく、5000〜50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。上記重量平均分子量(Mw)は、上記した方法により測定することができる。
【0097】
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0098】
[2−1−1]多価カルボン酸
多価カルボン酸としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用しても良い。
【0099】
上記不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸、炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸、アコニット酸等の不飽和脂肪族トリカルボン酸;4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸等の不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0100】
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p−フェニレン二酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸;メリト酸等の芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0101】
上記多価カルボン酸は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0102】
[2−1−2]多価アルコール
多価アルコールとしては、結晶性ポリエステル樹脂との相溶性制御の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性の樹脂を得ることができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用しても良い。
【0103】
上記不飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ブチン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオール等の不飽和脂肪族ジオール等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
【0104】
上記芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、これらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、1,3,5−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。これらの中でも、特に熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールA化合物を用いることが好ましい。
【0105】
また、3価以上の多価アルコールの炭素数は特に制限されないが、熱特性を適正化させやすいことから、炭素数3〜20の範囲内であることが好ましい。
【0106】
上記多価アルコールは、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0107】
[2−2]ビニル樹脂
ビニル樹脂とは、少なくともビニル単量体を用いた重合により得られる樹脂である。ビニル樹脂として、具体的には、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル共重合体樹脂(スチレン・アクリル樹脂)等が挙げられる。
【0108】
中でも、ビニル樹脂としては、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いて形成されるスチレン・アクリル共重合体樹脂が好ましい。なお、ビニル樹脂は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0109】
ビニル樹脂を形成するビニル単量体としては、例えば、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N−ビニル化合物類等を挙げることができる。ビニル単量体は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0110】
スチレン単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0111】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル(n−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、これらの誘導体等が挙げられる。
【0112】
ビニルエステル類としては、例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0113】
ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
【0114】
ビニルケトン類としては、例えば、ビニルケトン類として、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
【0115】
N−ビニル化合物類としては、例えば、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0116】
上記以外にも、ビニル単量体として、例えば、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸又はメタクリル酸誘導体等を用いることができる。
【0117】
また、ビニル単量体としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものがある。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらに、リン酸基を有する単量体としては、例えば、アシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0118】
さらに、ビニル単量体として多官能性ビニル類を使用し、架橋構造を有するビニル樹脂としても良い。多官能性ビニル類としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0119】
ビニル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫酸塩、過硫化物、アゾ化合物等の任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法等公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、アルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0120】
また、ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、10000〜100000の範囲内であることが好ましい。
【0121】
[3]着色剤
カラートナー及びブラックトナーは、結着樹脂(結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂)に加え、各色に応じた着色剤を含有する。
【0122】
各着色剤の含有量は、例えば、トナー母体粒子100質量部に対し、1〜30質量部の範囲内であることが好ましく、3〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。また、かような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
以下、各色の着色剤の種類について説明する。
【0123】
[3−1]ブラック系着色剤
ブラックトナーに用いられる着色剤としては、特に限られるものではなく、例えば、カーボンブラック、磁性体、染料、その他の顔料等を任意に使用することができる。カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物等を用いることができる。また、その他の顔料としては、例えば、チタンブラック、アニリンブラック等を用いることができる。
【0124】
[3−2]イエロー系着色剤
イエロートナーに用いられるオレンジ又はイエロー用の着色剤としては、特に限られるものではなく、例えば、有機顔料や染料等を用いることができる。
【0125】
有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー44、C.I.ソルベントイエロー77、C.I.ソルベントイエロー79、C.I.ソルベントイエロー81、C.I.ソルベントイエロー82、C.I.ソルベントイエロー93、C.I.ソルベントイエロー98、C.I.ソルベントイエロー103、C.I.ソルベントイエロー104、C.I.ソルベントイエロー112、C.I.ソルベントイエロー162等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0126】
[3−3]マゼンタ系着色剤
マゼンタトナーに用いられるマゼンタ又はレッド用の着色剤としては、特に限られるものではなく、例えば、有機顔料や染料等を用いることができる。
【0127】
有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、ピグメントレッド81;4、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド269等が挙げられる。また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、ソルベントレッド11、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド58、C.I.ソルベントレッド68、C.I.ソルベントレッド111、C.I.ソルベントレッド122等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0128】
[3−4]シアン系着色剤
シアントナーに用いられるグリーン又はシアン用の着色剤としては、特に限られるものではなく、例えば、有機顔料や染料等を用いることができる。
【0129】
有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントブルー76、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー69、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ソルベントブルー93、C.I.ソルベントブルー95等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0130】
[3−5]着色剤粒子の大きさ
トナー中での着色剤(粒子)の大きさとしては、特に制限されるものではないが、体積基準のメジアン径が、例えば、10〜1000nmの範囲内であることが好ましく、50〜500nmの範囲内であることがより好ましく、80〜300nmの範囲内であることが特に好ましい。粒径がこのような範囲内であると、高い色再現性を得ることができる他、高画質に必要な小径トナー粒子の形成に適する。なお、着色剤(粒子)の体積基準のメジアン径は、例えば、トナーを溶媒に溶解させた状態で、マイクロトラック(登録商標、以下同じ。)粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0131】
[4]離型剤
本発明で用いられるカラートナー及びブラックトナーのトナー母体粒子はそれぞれ、離型剤(ワックス)を含有することが好ましい。
【0132】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニル等のエステルワックス類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0133】
離型剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して、例えば、2〜20質量%の範囲内であることが好ましく、3〜18質量%の範囲内であることがより好ましく、5〜15質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0134】
また、離型剤の融点は、電子写真方式におけるトナーの低温定着性と離型性との観点から、例えば、50〜95℃の範囲内であることが好ましい。
【0135】
[5]荷電制御剤
本発明で用いられるブラックトナー及びカラートナーのトナー母体粒子は、必要に応じて、荷電制御剤を含有していても良い。荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩化合物等を挙げることができる。
【0136】
荷電制御剤の含有割合は、トナー母体粒子中の結着樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0137】
[6]トナー母体粒子の形態
トナー母体粒子は、いわゆる単層構造を有するものであっても良いし、コア・シェル構造(コア粒子の表面にシェル層を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであっても良い。コア・シェル構造のトナー母体粒子としては、着色剤や離型剤等を含有したガラス転移温度が比較的低い樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高いガラス転移温度を有する樹脂領域(シェル層)を有する形態であることが好ましい。なお、コア・シェル構造は、シェル層がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア粒子を完全に被覆せず、所々コア粒子が露出しているものも含む。
【0138】
上述のトナー母体粒子の形態(コア・シェル構造の断面構造)は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
【0139】
[7]トナー母体粒子の平均円形度
トナー母体粒子の平均円形度は、トナーとしての耐熱保管性、画像形成時の低温定着性、形成される画像の画質を向上させるという観点から、例えば、0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。
【0140】
ここで、上記平均円形度は「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−3000」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数4000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で計算される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0141】
[8]トナー母体粒子の粒子径
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、3〜10μmの範囲内であることが好ましい。体積基準のメジアン径を上記範囲とすることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できるとともに、トナーの消費量を、大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。また、トナー流動性も確保できる。ここで、トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0142】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
【0143】
[外添剤]
本発明に係るブラックトナー及びカラートナーは、帯電性能や流動性、又はクリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子表面に公知の無機粒子や有機粒子等の粒子、滑剤等を外添剤として含有することが好ましい。
【0144】
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子等の無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子等の無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子等の無機チタン酸化合物粒子等が挙げられる。また、滑剤としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。上記の中でも、シリカ粒子(球形シリカ)、アルミナ粒子、チタニア粒子等の無機酸化物粒子が好ましく用いられる。外添剤は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0145】
上記外添剤は、耐熱保管性及び環境安定性の観点から、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸又はシリコーンオイル等によって表面処理が施されていても良い。
【0146】
外添剤の添加量(2種以上使用する場合は、その合計量)は、外添剤を含むトナー全体の質量を100質量%として、例えば、0.05〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0147】
外添剤の粒径は特に制限されるものではないが、例えば、数平均一次粒子径2〜800nm程度の無機微粒子や、数平均一次粒子径10〜2000nm程度の有機微粒子等を用いることが好ましい。外添剤の数平均一次粒子径は、外添剤粒子の走査電子顕微鏡写真を2値化処理し、1万個について水平フェレ径を算出し、その平均を取ることで求めることができる。
【0148】
《トナーの製造方法》
以下、本発明において用いられるブラックトナー及びカラートナーの製造方法について説明する。
本発明において用いられるトナーを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法等の公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、粒子径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
【0149】
乳化凝集法とは、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の粒子(以下、結着樹脂粒子ともいう。)の分散液を、離型剤の粒子(以下、離型剤粒子ともいう。)の分散液と混合し、所望の粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー母体粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の粒子は、任意に着色剤、荷電制御剤等を含有していても良い。
【0150】
乳化凝集法によりトナーを製造する方法は、次の工程を有することが好ましい。
(a)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液を調製する工程(以下、調製工程とも称する。)
(b)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程とも称する。)
【0151】
以下、調製工程及び凝集・融着工程と、これら以外に任意で行われる各工程について詳述する。
【0152】
(a)調製工程
調製工程は、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程、非晶性樹脂粒子分散液調製工程、着色剤粒子分散液調製工程及び離型剤粒子分散液調製工程を含む。
【0153】
(a−1)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程は、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂を合成し、この結晶性ポリエステル樹脂を水性媒体中に微粒子状に分散させて結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
【0154】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は上記のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0155】
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の調製方法としては、例えば、溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、又は結晶性ポリエステル樹脂を酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後に脱溶剤処理を行う方法等が挙げられる。
【0156】
本発明において、水系媒体とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができる。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
【0157】
結晶性ポリエステル樹脂がカルボキシ基を有する場合、当該カルボキシ基をイオン解離させ、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるために、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等を添加しても良い。さらに、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていても良く、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子等が添加されていても良い。
【0158】
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、リン酸三カルシウム等のように酸やアルカリに可溶のものを使用することが好ましく、また、環境面の観点からは酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を用いることができる。また、分散安定性の向上のための樹脂粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂粒子等が挙げられる。
【0159】
結晶性ポリエステル樹脂の水系媒体への分散処理は、例えば、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、乳化分散機等を用いることができる。
【0160】
分散処理を行う際には、溶液を加熱することが好ましい。加熱条件は、特に限定されるものではないが、通常60〜200℃程度である。
【0161】
このように準備された結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、60〜1000nmの範囲内であることが好ましく、80〜500nmの範囲内であることがより好ましい。本発明において、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。なお、このメジアン径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさ等によって制御することができる。
【0162】
また、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液における結晶性ポリエステル樹脂粒子の含有量は、分散液全体に対して、例えば、10〜50質量%の範囲内であることが好ましく、15〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
【0163】
(a−2)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂粒子分散液調製工程では、非晶性ポリエステル樹脂の水系分散液及び/又はビニル樹脂の水系分散液を準備する。ここで、非晶性ポリエステル樹脂の水系分散液の調製方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様の方法が用いられるため、ここでは詳細な説明を省略し、以下では、ビニル樹脂粒子分散液の調製方法を説明する。
【0164】
ビニル樹脂粒子分散液の調製に当たっては、まず、ビニル樹脂の水系分散液を準備する。水系媒体中で例えば乳化重合を行い、ビニル樹脂を得た場合には、重合反応後の液をそのままビニル樹脂粒子分散液として用いることができる。
また、単離したビニル樹脂を必要に応じて粉砕した後、界面活性剤の存在下、超音波分散機等を用いて水系媒体中にビニル樹脂を分散させる方法を用いることもできる。
水系媒体及び界面活性剤としては、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様のものが用いられる。
【0165】
ビニル樹脂粒子分散液中のビニル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、60〜1000nmの範囲内であることが好ましく、80〜500nmの範囲内であることがより好ましい。本発明において、ビニル樹脂粒子分散液中のビニル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。なお、このメジアン径は、重合時の機械的エネルギーの大きさ等によって制御することができる。
【0166】
ビニル樹脂粒子分散液におけるビニル樹脂粒子の含有量は、分散液全体に対して、例えば、10〜50質量%の範囲内であることが好ましく、15〜40質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
【0167】
(a−3)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水性媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0168】
水系媒体は、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様のものが用いられる。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子等が添加されていても良い。
【0169】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用した分散機で行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様のものを用いることができる。
【0170】
着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、10〜300nmの範囲内であることが好ましい。本発明において、着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0171】
着色剤粒子分散液における着色剤の含有量は、分散液全体に対して、例えば、5〜45質量%の範囲内であることが好ましく、10〜30質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲であると、色再現性確保の効果がある。
【0172】
(a−4)離型剤粒子分散液調製工程
離型剤粒子分散液調製工程は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0173】
水系媒体は、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様のものが用いられる。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子等が添加されていても良い。
【0174】
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用した分散機で行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程と同様のものを用いることができる。
【0175】
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、10〜300nmの範囲内であることが好ましい。本発明において、離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、「UPA−150」(マイクロトラック社製)を用いて測定したものである。
【0176】
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、分散液全体に対して、例えば、5〜45質量%の範囲内であることが好ましく、8〜30質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲であると、ホットオフセット防止及び分離性確保の効果が得られる。
【0177】
(b)凝集・融着工程
この凝集・融着工程は、水系媒体中で前述の結晶性ポリエステル樹脂粒子、非晶性樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させる工程である。
【0178】
この工程では、まず、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液を混合し、水性媒体中にこれら粒子を分散させる。
次に、凝集剤を添加した後、非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。
【0179】
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属塩や第2族の金属の塩等の金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の二価の金属塩;鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。具体的な金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸アルミニウム等を挙げることができる。これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価又は三価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらの凝集剤は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0180】
凝集剤の使用量は、特に制限されるものではないが、例えば、トナー母体粒子を構成する結着樹脂の固形分100質量部に対して、例えば、0.1〜15質量部の範囲内であることが好ましく、1〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0181】
凝集・融着工程においては、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は、例えば、0.05℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、例えば、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集剤添加後の凝集用分散液が所望の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積基準のメジアン径が、例えば、4.5〜7.0μmの範囲内になるまで保持して、融着を継続させることが肝要である。当該体積基準のメジアン径は、上記トナー母体粒子の体積基準のメジアン径と同様にして、測定することができる。
【0182】
(c)熟成工程
熟成工程は、必要に応じて行われるものであって、上記凝集・融着工程によって得られた会合粒子を熱エネルギーにより所望の形状になるまで熟成させて、トナー母体粒子を形成させる熟成処理を行う工程である。
【0183】
熟成処理は、具体的には、会合粒子が分散された系を加熱撹拌し、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間等を調整することにより行う。
【0184】
(d)冷却工程
冷却工程は、トナー母体粒子の分散液を冷却処理する工程である。冷却処理の条件としては、例えば、1〜20℃/分の冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理の具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等を用いることができる。
【0185】
(e)濾過・洗浄工程
濾過・洗浄工程は、冷却されたトナー母体粒子の分散液から当該トナー母体粒子を固液分離し、固液分離によって得られたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー母体粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や凝集剤等の付着物を除去して洗浄する工程である。
【0186】
固液分離としては、特に限定されるものではなく、例えば、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法等を用いることができる。
【0187】
(f)乾燥工程
乾燥工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する工程であり、一般的に行われる公知のトナーの製造方法において採用される手段で行うことができる。
【0188】
具体的には、トナーケーキの乾燥に使用される乾燥機としては、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等を挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等を使用することが好ましい。
【0189】
(g)外添剤の添加工程
外添剤の添加工程は、必要に応じて、トナー母体粒子に対して外添剤を添加する工程である。
【0190】
外添剤の混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、サンプルミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0191】
《静電荷像現像用二成分現像剤》
上記ブラックトナー及びカラートナーは、それぞれ、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して静電荷像現像用二成分現像剤(以下、単に二成分現像剤又は現像剤ともいう。)として使用しても良い。
【0192】
キャリアとしては、例えば、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリア等を用いても良い。
【0193】
キャリアの体積平均粒子径としては、例えば、20〜100μmの範囲内であることが好ましく、25〜80μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの体積平均粒子径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定することができる。
【0194】
二成分現像剤は、上記キャリアとトナーとを、混合装置を用いて混合することにより調製することができる。混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合器等が挙げられる。
【0195】
二成分現像剤におけるトナーの含有量は、キャリア及びトナーの合計100質量%に対して、例えば、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0196】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0197】
《結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP1)の調製》
窒素導入管、脱水管、撹拌拌器及び熱電対を取り付けた四つ口フラスコに、下記組成の材料を入れ、180℃で4時間反応させた。
直鎖脂肪族ジオール:エチレングリコール 115質量部
1,12−ドデカンジカルボン酸 400質量部
エステル化触媒:Ti(OBu) 0.4質量部
【0198】
その後、上記系を10℃/hで210℃まで昇温し、210℃で5時間保持した後、減圧下(8kPa)にて1時間反応させることで結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000であった。
【0199】
上記調製した結晶性ポリエステル樹脂30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して100質量部/分の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて市販のアンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら0.1L/分の移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積基準のメジアン径が200nmの結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP1)を調製した。
【0200】
《結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP2)〜(CP10)の調製》
上記結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP1)の調製において、直鎖脂肪族ジオールの種類及び添加量を表Iに記載のとおりに変更した以外は同様にして、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP2)〜(CP10)を調製した。
【0201】
【表1】
【0202】
《非晶性樹脂粒子分散液(A1)の調製》
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水2733質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、ペルオキソ二硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃として、下記組成からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。次いで、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行った後、20℃まで冷却を行い、スチレン・アクリル樹脂からなる非晶性樹脂粒子分散液(A1)を調製した。
スチレン 600質量部
n−ブチルアクリレート 180質量部
メタクリル酸 40質量部
n−オクチルメルカプタン 8質量部
【0203】
得られた非晶性樹脂粒子分散液(A1)について、非晶性樹脂粒子の体積基準のメジアン径は150nm、ガラス転移点(Tg)は51℃、重量平均分子量(Mw)は32000であった。
【0204】
《非晶性樹脂粒子分散液(A2)の調製》
上記非晶性樹脂粒子分散液(A1)の調製において、n−オクチルメルカプタンの添加量を8質量部から14質量部に変更した以外は同様にして、非晶性樹脂粒子分散液(A2)を得た。
【0205】
《非晶性樹脂粒子分散液(A3)の調製》
上記非晶性樹脂粒子分散液(A1)の調製において、n−オクチルメルカプタンの添加量を8質量部から12質量部に変更した以外は同様にして、非晶性樹脂粒子分散液(A2)を得た。
【0206】
《非晶性樹脂粒子分散液(AP)の調製》
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を取り付けた反応容器に、下記成分を仕込んだ。
多価カルボン酸:フマル酸 1.8質量部
多価カルボン酸:テレフタル酸 29.2質量部
多価アルコール:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA−PO)
58.2質量部
多価アルコール:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物(BPO−EO)
6.7質量部
【0207】
得られた混合物の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、当該混合物が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒として、多価カルボン酸全量に対して0.006質量%となる量のジブチルスズオキシドを投入した。さらに、生成する水を留去しながら上記混合物の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、240℃に到達した時点で上記混合物にトリメリット酸1.6質量部を添加した。その後、さらに240℃に維持した状態で生成物の酸価が21mgKOH/gとなるまで脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は3600であり、ガラス転移点(Tg)は62℃であった。
【0208】
撹拌動力を与えるアンカー翼を備える反応容器に、メチルエチルケトン240質量部及びイソプロピルアルコール60質量部を添加し、窒素を反応容器内に送って反応容器内の空気を窒素に置換した。次いで、反応容器内の混合液をオイルバス装置により60℃に加熱しながら、上記得られた非晶性ポリエステル樹脂300質量部を当該混合液にゆっくりと添加し、撹拌しながら溶解させた。次いで、得られた混合液に20質量部の10質量%アンモニア水を添加した後、得られた混合液に撹拌しながら定量ポンプを用いて脱イオン水1500質量部を投入した。得られた混合液が乳白色を呈し、かつ撹拌粘度が低下することにより、乳化が行われたことを確認した。
【0209】
その後、得られた乳化液を、遠心力に基づく差圧によって汲み上げ、反応槽内の壁面上に濡れ壁を形成する撹拌翼、還流装置及び真空ポンプによる減圧装置が取り付けられたセパラブルフラスコへ移送した。反応槽内の壁温度を58℃とし、かつ減圧下の条件で撹拌を継続しながら乳化液中の溶媒及び分散媒を留去し、得られた分散液が1000質量部に達した時点を当該留去の終点とし、反応槽内圧を常圧にして、撹拌しながら分散液を常温まで冷却し、固形分率30質量%の非晶性樹脂粒子分散液(AP)を得た。
非晶性樹脂粒子分散液(AP)中に分散する非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積基準のメジアン径は162nmであった。
【0210】
《離型剤粒子分散液の調製》
下記成分を混合した溶液を95℃に加熱して、ウルトラタラックスT50(IKA製)にて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積基準のメジアン径100nmの離型剤粒子分散液を調製した。
エステルワックス(ニッサンエレクトールWEP−3、日油株式会社製、融点:73℃)
200質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 20質量部
イオン交換水 2200質量部
【0211】
《着色剤粒子分散液(Bk)の調製》
下記成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することにより、着色剤粒子分散液(Bk)を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)
200質量部
イオン交換水 1600質量部
【0212】
得られた着色剤粒子分散液(Bk)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
【0213】
《着色剤粒子分散液(Ye)の調製》
下記成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することにより、着色剤粒子分散液(Ye)を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
C.I.ピグメントイエロー74 200質量部
イオン交換水 1600質量部
【0214】
得られた着色剤粒子分散液(Ye)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は240nmであった。
【0215】
《着色剤粒子分散液(Ma)の調製》
下記成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することにより、着色剤粒子分散液(Ma)を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
C.I.ピグメントレッド269 200質量部
イオン交換水 1600質量部
【0216】
得られた着色剤粒分散液(Ma)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は200nmであった。
【0217】
《着色剤粒子分散液(Cy)の調製》
下記成分を混合した溶液をウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間処理することにより、着色剤粒子分散液(Cy)を調製した。
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 200質量部
イオン交換水 1600質量部
【0218】
得られた着色剤粒子分散液(Cy)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は180nmであった。
【0219】
《ブラック現像剤K1の調製》
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、上記調製した非晶性樹脂粒子分散液(A1)480質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP1)60質量部(固形分換算)、離型剤粒子分散液60質量部(固形分換算)、及び着色剤粒子分散液(Bk)48質量部(固形分換算)を投入した。その後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH(25℃換算)を10に調整した。
【0220】
次いで、塩化マグネシウム50質量部をイオン交換水50質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて上記系に添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)、平均円形度が0.957になった時点で10℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
【0221】
次いで、得られた分散液を固液分離した後、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。次いで、40℃で24時間乾燥させることにより、ブラックトナー母体粒子を得た。
【0222】
得られたブラックトナー母体粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加した。これを「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35m/sec、32℃で20分間混合する外添剤添加処理後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去することにより、ブラックトナーを得た。
【0223】
得られたブラックトナーに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、ブラック現像剤K1を得た。
【0224】
《ブラック現像剤K2〜K13の調製》
上記ブラック現像剤K1の調製において、非晶性樹脂粒子分散液及び結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液の種類を表IIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、ブラック現像剤K2〜K13を調製した。なお、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を添加しない場合には、非晶性樹脂粒子分散液の添加量を480質量部(固形分換算)から540質量部(固形分換算)に変更した。
【0225】
【表2】
【0226】
《イエロー現像剤Y1の調製》
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、上記調製した非晶性樹脂粒子分散液(A1)480質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(CP1)60質量部(固形分換算)、離型剤粒子分散液60質量部(固形分換算)、及び着色剤粒子分散液(Ye)36質量部(固形分換算)を投入した。その後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH(25℃換算)を10に調整した。
【0227】
次いで、塩化マグネシウム50質量部をイオン交換水50質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて上記系に添加した。昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmとなるように、撹拌速度を制御した。その後、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)、平均円形度が0.957になった時点で10℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
【0228】
次いで、得られた分散液を固液分離した後、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。次いで、40℃で24時間乾燥させることにより、イエロートナー母体粒子を得た。
【0229】
得られたイエロートナー母体粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加した。これを「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35m/sec、32℃で20分間混合する外添剤添加処理後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去することにより、カラートナーとしてイエロートナーを得た。
【0230】
得られたイエロートナーに対して、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合することにより、イエロー現像剤Y1を得た。
【0231】
《イエロー現像剤Y2〜Y8の調製》
上記イエロー現像剤Y1の調製において、非晶性樹脂粒子分散液及び結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を表IIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、イエロー現像剤Y2〜Y8を調製した。
【0232】
《マゼンタ現像剤M1の調製》
上記イエロー現像剤Y1の調製において、着色剤粒子分散液(Ye)の代わりに着色剤粒子分散液(Ma)を用いた以外は同様にして、マゼンタ現像剤M1を得た。
【0233】
《マゼンタ現像剤M2〜M8の調製》
上記マゼンタ現像剤M1の調製において、非晶性樹脂粒子分散液及び結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を表IIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、マゼンタ現像剤M2〜M8を調製した。
【0234】
《シアン現像剤C1の調製》
上記イエロー現像剤Y1の調製において、着色剤粒子分散液(Ye)の代わりに着色剤粒子分散液(Cy)を用いた以外は同様にして、シアン現像剤C1を得た。
【0235】
《シアン現像剤C2〜C8の調製》
上記シアン現像剤C1の調製において、非晶性樹脂粒子分散液及び結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を表IIIに記載のとおりに変更した以外は同様にして、シアン現像剤C2〜C8を調製した。
【0236】
【表3】
【0237】
《画像形成方法101〜153》
複写機「bizhub PRO(登録商標) C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着器を外した状態で未定着画像の形成を行えるように改造し、上記調製した各色の現像剤を表IV及び表Vに記載のとおりの組み合わせとなるようにそれぞれ装填した。それらを用いて未定着画像を形成した後、定着ニップ内の最大圧力を表IV及び表Vに記載のとおりに設定した単体定着器により当該未定着画像を定着させ、画像を形成した。当該単体定着器としては、図2に示す定着装置30と略同様に構成されているものを用い、ニップ形成部材の凸部の位置や形状、加圧部材の押圧力を調整することで、定着ニップ内の最大圧力の値及び位置を表IV及び表Vに記載のとおりに設定した。
【0238】
定着ニップ内の最大圧力の値及びその位置は、次のようにして測定した。
圧力の測定には、市販の圧力分布測定装置(ニッタ株式会社製PINCH)を使用した。センサーとしては、厚み180〜200μm、横幅約320mmのシート型センサー(PINCH A3−40)を用いた。これを室温で定着ニップに挟んで静止させ、圧力のピーク値(最大圧力)とその位置を測定した。センサーの分解能が約1mmであることから、加圧部材の側面に回転角度10°ごとに36点をマーキングし、マーキングした点と、圧力分布測定装置のシート型センサーの中心と、ニップ形成部材の幅手方向の中心と、が重なるように調整した。その後、加圧部材を前後5°の範囲で回転させ、圧力が最大となる点での圧力値を求めた。また、定着ニップ形成範囲は圧力測定によって圧力が検知された範囲と定義し、最も上流側を100%、最も下流側を0%として、最大圧力の位置を表した。同一の最大値となる点が2点以上あった場合には、マーキングした点に最も近い位置での測定値を採用する。マーキングした36点でそれぞれ同様の測定を行い、それらの最大値、ニップ形成範囲、最大圧力の位置のそれぞれの平均値が表IV及び表Vに記載のとおりとなるように設定した。
【0239】
【表4】
【0240】
【表5】
【0241】
《画像形成方法の評価》
上記画像形成方法101〜153のそれぞれについて、以下の評価を行った。評価結果を表VI及び表VIIに示す。
【0242】
(1)ブラックトナーの最低定着温度の評価
常温常湿(温度20℃、相対湿度50%)において、評価紙としての「CF80紙(80g/m)」のA3用紙に対し、ブラック現像剤によりトナー付着量4g/mの未定着ベタ画像を形成した。その未定着画像を上記単体定着器により、設定される定着温度を95℃から200℃まで5℃刻みで増加させるよう変更しながら定着処理を行い、各定着温度で得られたプリント物をそれぞれ目視確認した。ブラックトナーが単体定着器に付着して1回転後に白紙部分に付着するといった問題が生じることなく定着を行うことができた最も低い温度を最低定着温度とした。最低定着温度が140℃以下であるものを合格とした。
【0243】
(2)カラートナーの最低定着温度の評価
上記ブラックトナーの最低定着温度の評価において、形成する未定着ベタ画像を次のように変更した以外は同様にして、カラートナーの最低定着温度の評価を行った。
すなわち、イエロー現像剤によりトナー付着量4g/m、マゼンタ現像剤によりトナー付着量2g/m、シアン現像剤によりトナー付着量2g/mの未定着ベタ画像をそれぞれ形成して重ね合わせ画像を形成した。形成した重ね合わせ画像のトナー付着量の総量を測定し、トナー付着量が不足している場合には、イエロー現像剤のトナー付着量を増やしてトナー付着量の総量が8g/mとなるように調整した。
【0244】
(3)光沢度の評価
評価紙としての「PODグロスコート紙(128g/m)」のA3用紙に対し、上記ブラックトナー及びカラートナーの最低定着温度の評価と同様にして未定着画像をそれぞれ形成した。それらの未定着画像を上記単体定着器により、上記のようにして求めたブラックトナー及びカラートナーの最低定着温度のいずれか高い方の温度+20℃に設定した単体定着器により定着処理を行った。
【0245】
カラー画像の光沢度Gloss(CL)及びブラック画像の光沢度Gloss(BK)がいずれも40〜70の範囲内であり、かつその差が下記式を満たすものを合格とした。
−5≦Gloss(CL)−Gloss(BK)≦15
【0246】
なお、上記光沢度Gloss(CL)及びGloss(BK)は、光沢計「GMX−203」(村上色彩技術研究所杜製)を用いて測定角型を選択し、JIS Z 8741に準拠して、形成された画像の中央部及び四隅の5点について75°光沢度を測定し、その算術平均値により算出されたものである。
【0247】
(4)耐ドキュメントオフセット性の評価
第1の用紙(PODグロスコート紙(128g/m))に対し、上記光沢度の評価と同様にしてカラートナーの未定着画像を形成した。第2の用紙(PODグロスコート紙(128g/m))に対し、用紙の上半分にブラック現像剤により6.0ポイントのアルファベットを36行印字した未定着文字画像を形成し、用紙の下半分にブラック現像剤によりトナー付着量4g/mの未定着ベタ画像を形成した。光沢度の評価と同様にブラックトナー及びカラートナーの最低定着温度のいずれか高い方の温度+20℃に設定した単体定着器により上記形成した各画像に対して定着処理を行い、第1の用紙の一方の面上にカラー画像を、第2の用紙の一方の面上にブラックトナーの文字画像及びベタ画像を形成した。第1の用紙と第2の用紙とを互いに画像形成面が対向するように重ね合わせ、それらを各50枚の白紙のPODグロスコート紙(128g/m)で挟み込んで大理石テーブルの上に揃えて設置し、重ね合わせた画像形成面に対して19.6kPa(200g/cm)相当の圧力が加わるようにおもりを載せた。この状態で温度30℃、湿度80%RHの環境下に3日間放置した後、重ね合わせた第1の用紙と第2の用紙を剥離し、各画像を目視で確認し、画像欠損の度合いを下記基準に従って評価した。「4」以上を合格とした。
【0248】
10:光沢のムラが全く確認できない状態
9:ブラックトナーの文字画像と対向している部分のカラー画像の光沢がごく僅かに低下していることが確認できる
8:ブラックトナーの文字画像と対向している部分のカラー画像の光沢が低下しているが、文字としては認識することができない
7:ブラックトナーの文字画像と対向している部分のカラー画像の光沢が低下しており、角度によっては文字として認識できる状態まで光沢度の差がついている
6:ブラックトナーの文字画像と対向している部分のカラー画像の光沢が低下しており、文字として認識できる状態まで光沢度の差がついている
5:ブラックトナーの文字画像と対向している部分、及びブラックトナーのベタ画像と対向している部分ともにカラー画像の光沢が大きく低下していることが確認できる
4:ルーペによって拡大すると、ブラックトナーの文字画像が、対向するカラー画像にオフセットし、着色していることが確認できる
3:目視によってブラックトナーの文字画像が、対向するカラー画像にオフセットしていることが僅かに確認できる
2:目視によってブラックトナーの文字画像が、対向するカラー画像にオフセットしていることが多数確認できる
1:ブラックトナーの文字画像分及びベタ画像ともに、カラー画像にオフセットしている、又はカラートナーがブラックトナーのベタ画像にオフセットしていることが目視にて確認できる
【0249】
(5)耐熱保管性(篩通過率)の評価
各画像形成方法で用いられるカラー現像剤及びブラック現像剤に含有される各トナーのそれぞれについて、トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業株式会社製)を用いて室温で600回振とうした。その後、蓋を開けた状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、当該ガラス瓶中のトナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながら全量を載せた。これを「パウダーテスター」(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし、当該篩を押さえバー及びノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度で10秒間振動させ、篩を通過したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式によりトナーの篩通過率を算出した。得られた篩通過率に基づいてトナーの耐熱保管性を評価した。当該篩通過率が50%以上であるものを合格とした。なお、下記式中、Wは、篩上に載せたトナーの質量(g)を表し、Wは、振動後に篩上に残存したトナーの質量(g)を表す。
篩通過率(%)={(W−W)/W}×100
【0250】
【表6】
【0251】
【表7】
【0252】
表VI及び表VIIに示すように、画像形成方法101〜140は、画像形成方法141〜153と比較して各評価で優れた結果を示している。したがって、画像形成方法101〜140は、耐ドキュメントオフセット性に優れ、適度な光沢度のカラー画像及びブラック画像を形成でき、かつそれらの光沢度の差が小さいといえる。
また、画像形成方法101〜140は、図1に示す定着装置30を用いており、しかもカラートナー及びブラックトナーの最低定着温度は十分に低いため、トナー画像定着時の熱エネルギーを低減することができるといえる。
【符号の説明】
【0253】
20 記録材
30 定着装置
31 加熱部材
31A 内周面
31B 外周面
32 加熱装置
33 ニップ形成部材
36 加圧部材
N 定着ニップ
図1
図2