(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、各ヒータの温度をそれぞれの目標温度が固定値であるため、各ヒータにおいて、温度が急激に上昇した場合には、オーバーシュートが発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、複数のヒータのそれぞれについてオーバーシュートを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、シートに現像剤像を形成する現像剤像形成部と、シートを加熱する加熱部と、前記加熱部の幅方向の中央部を含む第1領域に出力のピークを持ち、前記加熱部を加熱する第1ヒータと、前記加熱部の前記第1領域より端部側である第2領域に出力のピークを持ち、前記加熱部を加熱する第2ヒータと、前記第1領域の温度を検出する第1温度検出部と、前記第2領域の温度を検出する第2温度検出部と、制御部と、を備える。
前記制御部は、前記第1温度検出部の検出結果に基づいて、前記第1領域の温度を、シートを定着する第1定着温度に向けて上昇させるように前記第1ヒータへの通電を制御する第1通電処理と、前記第2温度検出部の検出結果に基づいて、前記第2領域の温度を、シートを定着する第2定着温度に向けて上昇させるように前記第2ヒータへの通電を制御する第2通電処理と、を実行可能であり、前記第1通電処理において、前記第1領域の温度が前記第1定着温度以下である第1目標温度になるように前記第1ヒータへの通電を制御し、かつ前記第1目標温度を第1勾配で上昇させ、前記第2通電処理において、前記第2領域の温度が前記第2定着温度以下である第2目標温度になるように前記第2ヒータへの通電を制御し、かつ前記第2目標温度を第2勾配で上昇させる。
【0007】
この構成によれば、第1目標温度を第1勾配で上昇させるとともに第2目標温度を第2勾配で上昇させることで、2つのヒータの温度が緩やかな勾配で上昇するため、各ヒータにおいてオーバーシュートを低減することができる。
【0008】
また、前記第1勾配と前記第2勾配は、異なる勾配であってもよい。
【0009】
これによれば、第1勾配と第2勾配を異なる勾配にすることで、2つのヒータが同時に定着温度に達することを抑制することが可能となるので、シートによって加熱部の温度が奪われて定着不良が生じるのを抑えることができる。
【0010】
また、前記第2定着温度は、前記第1定着温度よりも低く、前記第2勾配は、前記第1勾配よりも小さくてもよい。
【0011】
これによれば、定着温度が低い方のオーバーシュートの度合いを、定着温度が高い方よりも低減することができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記第1通電処理において、前記第1領域の温度と前記第1目標温度との偏差である第1偏差が小さいほど前記第1ヒータへの通電量が小さくなるように通電量を変更してもよい。
【0013】
これによれば、第1勾配で上昇していく第1目標温度に対して第1領域の温度を良好に近づけることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記第1通電処理において、前記第1目標温度を段階的に上げていくことで、前記第1目標温度を前記第1勾配で上昇させてもよい。
【0015】
また、前記制御部は、前記第2通電処理において、前記第2領域の温度と前記第2目標温度との偏差である第2偏差が小さいほど前記第2ヒータへの通電量が小さくなるように通電量を変更してもよい。
【0016】
これによれば、第2勾配で上昇していく第2目標温度に対して第2領域の温度を良好に近づけることができる。
【0017】
また、前記制御部は、前記第2通電処理において、前記第2目標温度を段階的に上げていくことで、前記第2目標温度を前記第2勾配で上昇させてもよい。
【0018】
また、前記制御部は、前記第1通電処理において、通電を開始するときに前記第1目標温度を第1初期温度に設定し、前記第1領域の温度が第1切替温度になったことに基づいて、前記第1目標温度を前記第1勾配で上昇させてもよい。
【0019】
また、前記制御部は、前記第2通電処理において、通電を開始するときに前記第2目標温度を第2初期温度に設定し、前記第2領域の温度が第2切替温度になったことに基づいて、前記第2目標温度を前記第2勾配で上昇させてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のヒータのそれぞれについてオーバーシュートを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、シートSに画像を形成する画像形成装置の一例であり、本体筐体2内に、シート供給部3と、現像剤像形成部の一例としてのプロセス部PRと、定着装置8と、制御部100とを備えている。
【0023】
シート供給部3は、シートSをプロセス部PRに供給するための機構であり、本体筐体2内の下部に設けられている。シート供給部3は、シートSを収容する供給トレイ31と、シート押圧板32と、供給機構33とを備えている。供給機構33は、ピックアップローラ33Aと、分離ローラ33Bと、第1搬送ローラ33Cと、レジストレーションローラ33Dとを備えている。シート供給部3では、供給トレイ31内のシートSが、シート押圧板32によってピックアップローラ33Aに寄せられ、ピックアップローラ33Aによって分離ローラ33Bに送られる。シートSは、分離ローラ33Bによって1枚に分離され、第1搬送ローラ33Cによって搬送される。レジストレーションローラ33Dは、シートSの先端の位置を揃えた後、プロセス部PRに向けてシートSを搬送する。ここでシートSの搬送される方向を搬送方向、シートSの面内で搬送方向に直交する方向を幅方向とする。
【0024】
プロセス部PRは、シートSに現像剤像を形成する機能を有している。プロセス部PRは、露光装置4と、プロセスカートリッジ5とを備えている。
【0025】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ光源や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4では、レーザ光源から出射される画像データに基づくレーザ光が、感光体ドラム61の表面で走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0026】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とを備えている。
【0027】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを備えている。現像ユニット7は、ドラムユニット6に着脱可能となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、乾式トナーである現像剤を収容する現像剤収容部74と、アジテータ75とを備えている。
【0028】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像剤収容部74内の現像剤は、アジテータ75によって撹拌されながら、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71の回転に伴って、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0029】
現像ローラ71上に担持された現像剤は、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、シート供給部3から供給されたシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を搬送されることで、感光体ドラム61上に形成された現像剤像がシートS上に転写される。
【0030】
定着装置8は、プロセス部PRから搬送されてくるシートS上に現像剤像を定着させる装置である。定着装置8は、シートSを加熱する加熱部81と、加熱部81との間でシートSを挟む加圧部82とを備えている。
【0031】
加熱部81は、回転可能な円筒状の加熱ローラであり、金属等からなっている。加熱部81の内側には、加熱部81を加熱する第1ヒータH1および第2ヒータH2が設けられている。加圧部82は、回転可能な加圧ローラであり、表面に弾性変形可能なゴム等からなる弾性層を有している。定着装置8では、現像剤像が転写されたシートSが、加熱部81と加圧部82の間で搬送されることで、現像剤像がシートS上に熱定着される。現像剤像が熱定着されたシートSは、第2搬送ローラ23および排出ローラ24によって排出トレイ22上に排出される。
【0032】
図2に示すように、定着装置8は、前述した加熱部81、第1ヒータH1および第2ヒータH2を備える他、第1温度検出部ST1と、第2温度検出部ST2とをさらに備えている。
【0033】
第1ヒータH1は、ハロゲンランプであり、加熱部81の幅方向の中央部を含む第1領域81Aに出力のピークを持っている(
図3参照)。第1ヒータH1は、ガラス管H11と、ガラス管H11内に設けられるフィラメントH12とを備えている。フィラメントH12は、幅方向の中央部が、幅方向の各端部に比べ、発光部が集中している。
【0034】
第2ヒータH2は、ハロゲンランプであり、加熱部81の第1領域81Aより端部側である第2領域81B,81Cに出力のピークを持っている(
図3参照)。第2ヒータH2は、ガラス管H21と、ガラス管H21内に設けられるフィラメントH22とを備えている。フィラメントH22は、幅方向の各端部において、幅方向の中央部に比べ、発光部が集中している。
【0035】
ここで、加熱部81の幅方向とは、加熱部81の回転軸線に沿った方向をいい、シートSの幅方向と同じ方向を意味する。加熱部81の第1領域81Aは、加熱部81の幅方向の中心を含む範囲であり、第2領域81Bは、加熱部81の一端側の第2領域81Bは、加熱部81の一端側の端縁81Dと第1領域81Aとの間の範囲である。加熱部81の他端側の第2領域81Cは、加熱部81の他端側の端縁81Eと第1領域81Aとの間の範囲である。
【0036】
図3に実線で示すように、第1ヒータH1の出力は、幅方向の中央が最も高くなり、幅方向の両端に向かうにつれて徐々に低くなる分布となっている。これにより、第1ヒータH1は、加熱部81の第1領域81Aに対する加熱能力が、第2領域81B,81Cに対する加熱能力よりも大きくなっている。第2ヒータH2の出力は、破線で示すように、幅方向の中央よりも端部側が高い分布となっている。これにより、第2ヒータH2は、加熱部81の第2領域81B,81Cに対する加熱能力が、第1領域81Aに対する加熱能力よりも大きくなっている。そして、第1ヒータH1の出力が最大となる範囲と、第2ヒータH2の出力が最大となる範囲が、重ならないように設定されている。
【0037】
第1ヒータH1の第2領域81B,81Cにおける出力は、第1領域81Aにおける出力の30%以下となり、第2ヒータH2の第1領域81Aにおける出力は、第2領域81B,81Cにおける出力の80%以下となっている。
【0038】
なお、各ヒータH1,H2の出力の検出方法としては、例えば、ヒータの光を検出する光センサを、ヒータから所定距離だけ離して配置し、その光量を検出する方法が挙げられる。ここで、所定距離は、ヒータから加熱部81の内周面までの距離である。
【0039】
図2に示すように、第1温度検出部ST1は、加熱部81の第1領域81Aの温度を検出するセンサである。第1温度検出部ST1は、加熱部81と非接触となっている。詳しくは、第1温度検出部ST1は、加熱部81の外周面から間隔を空けて配置されている。
【0040】
第2温度検出部ST2は、加熱部81の一端側の第2領域81Bの温度を検出するセンサである。第2温度検出部ST2は、加熱部81の第2領域81Bに接触している。第2温度検出部ST2は、定着装置8によって定着が可能なシートSの最大の領域SWから一端側の端縁81D側にずれている。
【0041】
なお、第1温度検出部ST1および第2温度検出部ST2としては、例えばサーミスタなどを用いることができる。
【0042】
図4に示すように、制御部100は、ASIC110と、通電回路120とを備えている。ASIC110は、CPU111と、ヒータコントローラ112とを有している。通電回路120は、入力された交流電圧を通電状態と非通電状態に切り替えるスイッチング回路等を備える回路であり、各ヒータH1,H2とASIC110とに接続されている。
【0043】
CPU111は、ASIC110内に機能として実装されている。CPU111は、シート供給部3の駆動・停止を制御するとともに、ヒータコントローラ112に対して第1領域81Aおよび第2領域81Bの各目標温度である第1目標温度TP1および第2目標温度TP2を出力している。第1目標温度TP1および第2目標温度TP2は、ヒータコントローラ112が第1ヒータH1および第2ヒータH2への通電制御を実行する場合のフィードバック処理における指令値である。
【0044】
ヒータコントローラ112は、ASIC110内に作り込まれた機能または回路であり、各温度検出部TS1,TS2での検出温度Ts1,Ts2が目標温度になるように、通電回路120を制御することで、各ヒータH1,H2への通電を行っている。詳しくは、ヒータコントローラ112は、検出温度Ts1,Ts2と目標温度とに基づいて、各ヒータH1,H2に通電する交流電圧のデューティ比を決定し、決定したデューティ比で通電回路120を制御するフィードバック処理を行う。なお、ヒータコントローラ112が行うフィードバック処理は、ASIC110の外部のチップに実装してもよく、CPU111で実行してもよい。
【0045】
制御部100は、第1ヒータH1への通電を制御する第1通電処理と、第2ヒータH2への通電を制御する第2通電処理とを実行する機能を有している。
【0046】
第1通電処理は、第1温度検出部ST1の検出結果に基づいて、第1領域81Aの温度を、シートSを定着する第1定着温度TH1に向けて上昇させるように第1ヒータH1への通電を制御する処理である。詳しくは、制御部100は、第1通電処理において、第1領域81Aの温度、つまり第1温度検出部ST1での検出温度である第1検出温度Ts1が、第1定着温度TH1以下である第1目標温度TP1になるように第1ヒータH1への通電を制御し、かつ第1目標温度TP1を第1勾配A1(
図7参照)で第1定着温度TH1に向けて上昇させる。
【0047】
より詳しくは、
図7に示すように、制御部100は、第1通電処理において、通電を開始するときには、第1目標温度TP1を、第1定着温度TH1よりも低い第1初期温度TF1に設定する。また、制御部100は、第1検出温度Ts1が第1初期温度TF1よりも低い第1切替温度TC1になったことに基づいて、第1目標温度TP1を段階的に上げていくことで、第1目標温度TP1を第1勾配A1で上昇させる。
【0048】
また、制御部100は、第1通電処理において、第1検出温度Ts1と第1目標温度TP1との偏差である第1偏差が小さいほど第1ヒータH1への通電量が小さくなるように通電量を変更している。さらに、制御部100は、第1通電処理において、第1検出温度Ts1が第1目標温度TP1以上になった場合には、第1ヒータH1への通電を停止する。
【0049】
第2通電処理は、第2温度検出部ST2の検出結果に基づいて、第2領域81Bの温度を、シートSを定着する第2定着温度TH2に向けて上昇させるように第2ヒータH2への通電を制御する処理である。第2定着温度TH2は、第1定着温度TH1よりも低い温度に設定されている。
【0050】
制御部100は、第2通電処理において、第2領域81Bの温度、つまり第2温度検出部ST2での検出温度である第2検出温度Ts2が、第2定着温度TH2以下である第2目標温度TP2になるように第2ヒータH2への通電を制御し、かつ第2目標温度TP2を第2勾配A2(
図7参照)で第2定着温度TH2に向けて上昇させる。第2勾配A2は、第1勾配A1よりも小さな勾配に設定されている。
【0051】
より詳しくは、
図7に示すように、制御部100は、第2通電処理において、通電を開始するときには、第2目標温度TP2を、第2定着温度TH2よりも低い第2初期温度TF2に設定する。また、制御部100は、第2検出温度Ts2が、第2初期温度TF2よりも低い第2切替温度TC2になったことに基づいて、第2目標温度TP2を段階的に上げていくことで、第2目標温度TP2を第2勾配A2で上昇させる。
【0052】
また、制御部100は、第2通電処理において、第2検出温度Ts2と第2目標温度TP2との偏差である第2偏差が小さいほど第2ヒータH2への通電量が小さくなるように通電量を変更している。さらに、制御部100は、第2通電処理において、第2検出温度Ts2が第2目標温度TP2以上になった場合には、第2ヒータH2への通電を停止する。
【0053】
なお、前述した定着温度TH1,TH2、初期温度TF1,TF2、切替温度TC1,TC2、勾配A1,A2などのパラメータは、実験やシミュレーション等により適宜設定すればよい。
【0054】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
制御部100は、印刷指令を受けたとき、加熱部81を定着温度にするために第1ヒータH1と第2ヒータH2の両方を点灯させる。このとき制御部100は、
図5に示す第1通電処理と、
図6に示す第2通電処理を同時に実行する。
【0055】
図5に示すように、第1通電処理において、制御部100は、まず、第1温度検出部ST1による第1検出温度Ts1の検出を開始する(S1)。ステップS1の後、制御部100は、第1検出温度Ts1がレディ温度TR以上であるか否かを判断する(S2)。
【0056】
ここで、レディ温度TRとは、レーザプリンタ1の状態を印刷指令ですぐに印刷できるような状態にしておくためのレディモードでの加熱部81の目標温度をいう。レディモードでは、加熱部81の温度がレディ温度TRとなるように、制御部100が第1ヒータH1または第2ヒータH2への通電を制御している。
【0057】
ステップS2においてTs1≧TRであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第1目標温度TP1を第1定着温度TH1に設定し(S3)、第1検出温度Ts1が第1目標温度TP1、つまり第1定着温度TH1になるように第1ヒータH1への通電制御を開始する(S4)。ステップS4において、第1定着温度TH1になるように通電制御を開始してから所定時間が経過したことに基づいて、シート供給部3からシートSを送り出し、プロセス部PRによってシートSに現像剤像を形成し、定着装置8によってシートS上に現像剤像を定着させる。所定時間は、第1定着温度TH1になるように通電制御を継続した場合に、シート供給部3から送り出されたシートSが定着装置8を通過するときに加熱部81が定着温度に到達するタイミングに設定される。
【0058】
ステップS4の後、制御部100は、印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したか否かを判断する(S5)。ステップS5において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS4で開始した通電制御を継続する。ステップS5において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、終了処理を実行し(S6)、本制御を終了する。ステップS6では、制御部100は、第1目標温度TP1をレディ温度TRに設定し、所定時間内に印刷指令が無かった場合には、第1目標温度TP1を0℃に設定することで、第1ヒータH1への通電を停止する。
【0059】
ステップS2においてTs1≧TRでないと判断した場合には(No)、制御部100は、第1目標温度TP1を第1初期温度TF1に設定し(S7)、第1検出温度Ts1が第1目標温度TP1、つまり第1初期温度TF1になるように第1ヒータH1への通電制御を開始する(S8)。
【0060】
ステップS8の後、制御部100は、第1検出温度Ts1が第1切替温度TC1以上になったか否かを判断する(S9)。ステップS9においてTs1≧TC1でないと判断した場合には(No)、制御部100は、第1目標温度TP1を第1初期温度TF1のままに維持して通電制御を継続する。
【0061】
ステップS9においてTs1≧TC1であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第1検出温度Ts1が第1切替温度TC1以上になってから第1所定時間TM1が経過したか否かを判断する(S10)。ステップS10において第1所定時間TM1が経過したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、第1目標温度TP1に第1所定温度αを加算した値を、新たな第1目標温度TP1として設定する(S11)。つまり、ステップS11において、第1目標温度TP1を段階的に上げる。
【0062】
なお、ステップS10において、制御部100は、例えばタイマで計測した経過時間が第1所定時間TM1以上であるか否かを判断する。制御部100は、ステップS8からステップS9に移行した際に、タイマによる計測を開始する。そして、制御部100は、タイマで計測した経過時間が第1所定時間TM1以上になると、タイマをリセットした後、再度タイマによる計測を開始する。
【0063】
ステップS11において、第1検出温度Ts1が所定の温度になったことに基づいて、シート供給部3からシートSを送り出し、プロセス部PRによってシートSに現像剤像を形成し、定着装置8によってシートS上に現像剤像を定着させる。所定の温度は、通電制御を継続した場合に、シート供給部3から送り出されたシートSが定着装置8を通過するときに加熱部81が定着温度に到達可能な温度に設定される。
【0064】
ステップS11の後、制御部100は、ステップS11にて第1所定温度αが加算された第1目標温度TP1が第1定着温度TH1になったか否かを判断する(S12)。ステップS12においてTP1=TH1でないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS10に戻る。つまり、制御部100は、第1目標温度TP1が第1定着温度TH1になるまで、第1目標温度TP1を第1所定時間TM1ごとに段階的に上げていくことで、第1目標温度TP1を第1勾配A1で上昇させる。さらに、制御部100は、第1勾配A1で上昇させる第1目標温度TP1に基づいて通電制御を継続する。
【0065】
第1勾配A1は、以下の式(1)で表すことができる。
A1=α/TM1 ・・・(1)
【0066】
また、第1所定温度αは、以下の式(2)で表すことができる。
α=(TH1−TF1)/n ・・・(2)
n:整数
【0067】
ステップS12においてTP1=TH1になったと判断した場合には(Yes)、制御部100は、印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したか否かを判断する(S5)。ステップS5において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、第1定着温度TH1に設定された第1目標温度TP1に基づいて通電制御を継続する。ステップS5において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、終了処理を実行する(S6)。
【0068】
図6に示す第2通電処理は、
図5に示す第1通電処理と略同様の処理であるため、以下に簡単に説明する。
図5に示すように、第2通電処理において、制御部100は、まず、前述したステップS1,S2と同様の処理であるステップS21,S22の処理を実行する。
【0069】
ステップS22においてTs1≧TRであると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第2目標温度TP2を第2定着温度TH2に設定し(S23)、第2検出温度Ts2が第2目標温度TP2、つまり第2定着温度TH2になるように第2ヒータH2への通電制御を開始する(S24)。
【0070】
ステップS24の後、制御部100は、印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したか否かを判断する(S25)。ステップS25において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了していないと判断した場合には(No)、制御部100は、通電制御を継続する。ステップS25において印刷指令に含まれる印刷ジョブが終了したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、終了処理を実行し(S26)、本制御を終了する。ステップS26では、制御部100は、第2目標温度TP2をレディ温度TRに設定し、所定時間内に印刷指令が無かった場合には、第2目標温度TP2を0℃に設定することで、第2ヒータH2への通電を停止する。
【0071】
なお、本実施形態では、第1ヒータH1に対するレディ温度と、第2ヒータH2に対するレディ温度を、同じ温度TRとしているが、本発明はこれに限定されず、第1ヒータH1に対するレディ温度と、第2ヒータH2に対するレディ温度は、異なる値であってもよい。
【0072】
ステップS22においてTs1≧TRでないと判断した場合には(No)、制御部100は、第2目標温度TP2を第2初期温度TF2に設定し(S27)、第2検出温度Ts2が第2目標温度TP2、つまり第2初期温度TF2になるように第2ヒータH2への通電制御を開始する(S28)。
【0073】
ステップS28の後、制御部100は、第2検出温度Ts2が第2切替温度TC2以上になったか否かを判断する(S29)。ステップS29においてTs2≧TC2でないと判断した場合には(No)、制御部100は、第2目標温度TP2を第2初期温度TF2のままに維持して通電制御を継続する。
【0074】
ステップS29においてTs2≧TC2であると判断した場合には(Yes)、制御部100は、第2検出温度Ts2が第2切替温度TC2以上になってから第2所定時間TM2が経過したか否かを判断する(S30)。ステップS30において第2所定時間TM2が経過したと判断した場合には(Yes)、制御部100は、第2目標温度TP2に第2所定温度βを加算した値を、新たな第2目標温度TP2として設定する(S31)。つまり、ステップS31において、第2目標温度TP2を段階的に上げる。
【0075】
なお、ステップS30においては、前述したように、例えばタイマで計測した経過時間が第2所定時間TM2以上であるか否かを判断してもよい。また、タイマのリセットも、前述と同じように行ってもよい。
【0076】
ステップS31の後、制御部100は、ステップS31にて第2所定温度βが加算された第2目標温度TP2が第2定着温度TH2になったか否かを判断する(S32)。ステップS32においてTP2=TH2でないと判断した場合には(No)、制御部100は、ステップS30に戻る。つまり、制御部100は、第2目標温度TP2が第2定着温度TH2になるまで、第2目標温度TP2を第2所定時間TM2ごとに段階的に上げていくことで、第2目標温度TP2を第2勾配A2で上昇させる。さらに、制御部100は、第2勾配A2で上昇させる第2目標温度TP2に基づいて通電制御を継続する。
【0077】
第2勾配A2は、以下の式(3)で表すことができる。
A2=β/TM2 ・・・(3)
【0078】
また、第2所定温度βは、以下の式(4)で表すことができる。
β=(TH2−TF2)/m ・・・(4)
m:整数
【0079】
ステップS32においてTP2=TH2になったと判断した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS25の処理に移行する。
【0080】
次に、制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
図7に示すように、制御部100は、第1検出温度Ts1がレディ温度TR未満であるときに印刷指令を受けると(時刻t1)、第1目標温度TP1を第1初期温度TF1に設定するとともに、第2目標温度TP2を第2初期温度TF2に設定する。そして、制御部100は、第1検出温度Ts1と第1目標温度TP1との偏差である第1偏差に基づいて第1ヒータH1への通電を制御するとともに、第2検出温度Ts2と第2目標温度TP2との偏差である第2偏差に基づいて第2ヒータH2への通電を制御する。
【0081】
第1検出温度Ts1が第1切替温度TC1に達すると(時刻t2)、制御部100は、時刻t2から第1所定時間TM1が経過したか否かを判断する。同様に、第2検出温度Ts2が第2切替温度TC2に達すると(時刻t3)、制御部100は、時刻t3から第2所定時間TM2が経過したか否かを判断する。
【0082】
時刻t2から第1所定時間TM1が経過すると(時刻t4)、制御部100は、第1目標温度TP1に第1所定温度αを加算して、新たな第1目標温度TP1を設定する。その後、制御部100は、第1所定時間TM1の経過ごとに第1所定温度αを加算することで、第1目標温度TP1を第1勾配A1で上昇させる。
【0083】
これにより、加熱部81の第1領域81Aの温度(第1検出温度Ts1)を第1勾配A1に対応した比較的緩やかな勾配で上昇させることができるので、第1領域81Aの温度が第1定着温度TH1に達した後のオーバーシュートを抑えることができる。
【0084】
同様に、時刻t3から第2所定時間TM2が経過すると(時刻t5)、制御部100は、第2目標温度TP2に第2所定温度βを加算して、新たな第2目標温度TP2を設定する。その後、制御部100は、第2所定時間TM2の経過ごとに第2所定温度βを加算することで、第2目標温度TP2を第2勾配A2で上昇させる。
【0085】
これにより、加熱部81の第2領域81Bの温度(第2検出温度Ts2)を第2勾配A2に対応した比較的緩やかな勾配で上昇させることができるので、第2領域81Bの温度が第2定着温度TH2に達した後のオーバーシュートを抑えることができる。
【0086】
以上、本実施形態によれば、前述した効果に加え、以下のような効果を得ることができる。
第2定着温度TH2を第1定着温度TH1よりも低く、第2勾配A2を第1勾配A1よりも小さく設定したので、定着温度が低い方の第2ヒータH2でのオーバーシュートの度合いを、定着温度が高い方の第1ヒータH1よりも低減することができる。
【0087】
第1通電処理において、第1領域81Aの温度と第1目標温度TP1との偏差である第1偏差が小さいほど第1ヒータH1への通電量が小さくなるように通電量を変更するので、第1勾配A1で上昇していく第1目標温度TP1に対して第1領域81Aの温度を良好に近づけることができる。
【0088】
第2通電処理において、第2領域81Bの温度と第2目標温度TP2との偏差である第2偏差が小さいほど第2ヒータH2への通電量が小さくなるように通電量を変更するので、第2勾配A2で上昇していく第2目標温度TP2に対して第2領域81Bの温度を良好に近づけることができる。
【0089】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0090】
前記実施形態では、第2勾配A2を第1勾配A1よりも小さな勾配に設定したが、本発明はこれに限定されず、第1勾配と第2勾配を同じ勾配に設定してもよいし、第2勾配A2を第1勾配A1よりも大きな勾配に設定してもよい。なお、第1勾配と第2勾配を異なる勾配に設定した場合には、2つのヒータが同時に定着温度に達することを抑制することが可能となるので、シートによって加熱部の温度が奪われて定着不良が生じるのを抑えることができる。
【0091】
前記実施形態では、通電制御の初期に検出される第1検出温度Ts1がレディ温度TR未満のときに、各目標温度TP1,TP2を徐々に上げていくような本発明に係る通電制御を実行したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係る通電制御は、通電制御の初期に検出される検出温度に関わらず、実行してもよいし、初期に検出される検出温度が、レディ温度よりも高い温度以下である場合に実行してもよい。
【0092】
シートSは、厚紙、はがき、薄紙などの用紙であってもよいし、OHPシートなどであってもよい。
【0093】
現像剤像形成部は、任意に構成される。例えば、LEDヘッドにより感光ドラムを露光するような現像剤像形成部であってもよい。
【0094】
前記実施形態では、加熱部として加熱ローラを例示したが、本発明はこれに限定されず、加熱部は、例えば、ヒータによって加熱される板状のニップ部材や、ニップ部材と加圧部との間で挟まれる定着ベルトなどであってもよい。
【0095】
前記実施形態では、ヒータとしてハロゲンランプを例示したが、本発明はこれに限定されず、ヒータは、例えば、カーボンヒータなどの固体発熱素子であってもよい。
【0096】
前記実施形態では、温度検出部としてサーミスタを例示したが、本発明はこれに限定されず、温度を検出するセンサであれば、どのようなものであってもよい。
【0097】
前記実施形態では、印刷指令を受けたときに1ヒータH1と第2ヒータH2の両方を点灯させるとしたが、第1ヒータH1と第2ヒータH2の両方を点灯させる場合は、例えばシートSが第1領域81Aおよび第2領域81B,81Cに接触するような幅広のシートである場合であるとして、印刷指令に基づいて判断するように構成してもよい。
なお、例えばシートSが第1領域81Aに接触するが、第2領域81B,81Cにはほとんど接触しないような狭幅のシートである場合には、制御部100は、第1通電処理のみを実行して第1ヒータH1のみを点灯させてもよいし、第2領域81B、81Cの定着温度を低く設定してもよい。
【0098】
前記実施形態では、第1ヒータH1と第2ヒータH2の2つのヒータを有する構成としたが、本発明はこれに限定されず、単一のヒータに対して目標温度を所定の勾配で上昇させるように構成してもよい。また、3つ以上のヒータを有する構成として、それぞれのヒータに対して目標温度を所定の勾配で上昇させるように構成してもよい。
【0099】
前記実施形態では、第1温度検出部ST1を加熱部81と非接触としたが、本発明はこれに限定されず、第1温度検出部は、加熱部に接触していてもよい。また、第2温度検出部を、加熱部と非接触としてもよい。
【0100】
前記実施形態では、レーザプリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
【0101】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。