特許第6939701号(P6939701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939701
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】エネルギー分散型蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20210909BHJP
   H05G 1/34 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   G01N23/223
   H05G1/34 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-97764(P2018-97764)
(22)【出願日】2018年5月22日
(65)【公開番号】特開2019-203739(P2019-203739A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 剛志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佑多
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−120897(JP,A)
【文献】 特開平05−188018(JP,A)
【文献】 特開平11−304586(JP,A)
【文献】 特開平10−179573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0109536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 − G01N 23/2276
H05G 1/00 − H05G 2/00
H03F 1/00 − H03F 3/45
H03F 3/50 − H03F 3/52
H03F 3/62 − H03F 3/64
H03F 3/68 − H03F 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管から試料にX線を照射し、試料から発生する蛍光X線を検出器で検出することにより分析を行うエネルギー分散型蛍光X線分析装置であって、
指示値に基づいて前記X線管に流れる管電流を制御するとともに、前記X線管からモニター値としての信号が入力される電源制御部と、
前記モニター値が前記電源制御部から入力され、当該モニター値に基づいて決定した前記指示値を前記電源制御部に出力するコントロール部とを備え、
前記コントロール部は、
前記モニター値を第1増幅率で増幅させる第1増幅部と、
前記モニター値を前記第1増幅率よりも大きい第2増幅率で増幅させる第2増幅部と、
前記第1増幅部及び前記第2増幅部でそれぞれ増幅された前記モニター値が入力されるADコンバータとを有し、
前記第1増幅部又は前記第2増幅部のいずれかで増幅され、前記ADコンバータによりAD変換された前記モニター値に基づいて、前記指示値を決定することを特徴とするエネルギー分散型蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記コントロール部は、前記管電流に応じて、前記第1増幅部又は前記第2増幅部のいずれで増幅された前記モニター値を用いるかを選択するモニター値選択処理部を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー分散型蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記コントロール部は、前記管電流を閾値と比較するコンパレータを有し、前記コンパレータによる比較結果に応じて、前記第1増幅部又は前記第2増幅部で前記モニター値が増幅されることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー分散型蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管から試料にX線を照射し、試料から発生する蛍光X線を検出器で検出することにより分析を行うエネルギー分散型蛍光X線分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、試料を分析する装置としてエネルギー分散型蛍光X線分析装置が利用されている。エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、X線管から試料に向けてX線が照射されるとともに、試料から発生する蛍光X線が検出器で検出される。そして、検出器からの検出信号に基づいて、スペクトルが作成される。また、このスペクトルに基づいて、試料の分析が行われる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このようなエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いる場合において、検出器に入射する蛍光X線の量が多いと、スペクトル上で試料を構成する元素以外の位置にピークが出現することがある。そのため、エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、検出器に入射する蛍光X線の量をモニタし、その蛍光X線の量に応じてX線管に流れる管電流の値を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2522224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエネルギー分散型蛍光X線分析装置では、試料の種類によっては、管電流を正確に調整できないという不具合が生じることがあった。
【0006】
具体的には、分析対象の試料が、金属材料など、発生する蛍光X線の量が多い試料である場合には、管電流を極力下げた状態で制御(フィードバック制御)する必要がある。しかし、従来の装置は、管電流を単一の回路で制御しているため、管電流の細かな制御(微調整)が困難であった。
【0007】
例えば、管電流を0〜1000μAの範囲で制御可能な装置を用いる場合であって、金属材料を分析する場合には、管電流を数μAに設定する必要がある。しかし、従来の装置では、数μA単位の制御が困難であり、制御指示値と実際の管電流の値との間にずれが生じてしまう。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、X線管に流れる管電流を精度よく調整できるエネルギー分散型蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置は、X線管から試料にX線を照射し、試料から発生する蛍光X線を検出器で検出することにより分析を行うエネルギー分散型蛍光X線分析装置である。前記エネルギー分散型蛍光X線分析装置は、電源制御部と、コントロール部とを備える。前記電源制御部は、指示値に基づいて前記X線管に流れる管電流を制御するとともに、前記X線管からモニター値としての信号が入力される。前記コントロール部には、前記モニター値が前記電源制御部から入力される。前記コントロール部は、当該モニター値に基づいて決定した前記指示値を前記電源制御部に出力する。前記コントロール部は、第1増幅部と、第2増幅部と、ADコンバータとを有する。前記第1増幅部は、前記モニター値を第1増幅率で増幅させる。前記第2増幅部は、前記モニター値を前記第1増幅率よりも大きい第2増幅率で増幅させる。前記ADコンバータには、前記第1増幅部及び前記第2増幅部でそれぞれ増幅された前記モニター値が入力される。前記コントロール部は、前記第1増幅部又は前記第2増幅部のいずれかで増幅され、前記ADコンバータによりAD変換された前記モニター値に基づいて、前記指示値を決定する。
【0010】
このような構成によれば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、第1増幅部において、モニター値が第1増幅率で増幅され、第2増幅部において、モニター値が第1増幅率よりも大きい第2増幅率で増幅される。そして、これらのモニター値がADコンバータによりAD変換される。コントロール部は、これらのAD変換されたモニター値に基づいて、X線管に流れる管電流の指示値を決定する。電源制御部は、その指示値に基づいてX線管に流れる管電流を制御する。
【0011】
そのため、コントロール部において、管電流の指示値を精度よく決定できる。そして、電源制御部は、その指示値に基づいてX線管に流れる管電流を精度よく調整できる。
【0012】
例えば、管電流の設定値が大きい場合には、コントロール部において、第1増幅部で増幅されて、ADコンバータでAD変換さたモニター値に基づいて管電流を決定すれば、管電流の指示値を正確に決定できる。また、管電流の設定値が小さい場合には、コントロール部において、第2増幅部で増幅されて、ADコンバータでAD変換されたモニター値に基づいて管電流を決定すれば、管電流の指示値を正確に決定できる。そして、電源制御部において、これらの指示値に基づいてX線管に流れる管電流を精度よく調整できる。
このように、本発明に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置によれば、X線管に流れる管電流を精度よく調整できる。
【0013】
(2)また、前記コントロール部は、モニター値選択処理部を有してもよい。前記モニター値選択処理部は、前記管電流に応じて、前記第1増幅部又は前記第2増幅部のいずれで増幅された前記モニター値を用いるかを選択する。
【0014】
このような構成によれば、モニター値選択処理部により適切なモニター値を選択することで、そのモニター値に基づいて管電流の指示値を正確に決定できる。
【0015】
(3)また、前記コントロール部は、前記管電流を閾値と比較するコンパレータを有してもよい。前記コントロール部では、前記コンパレータによる比較結果に応じて、前記第1増幅部又は前記第2増幅部で前記モニター値が増幅されてもよい。
【0016】
このような構成によれば、コンパレータにより適切なモニター値を選択できる。そして、そのモニター値に基づいて指示値を正確に決定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、第1増幅部において、モニター値が第1増幅率で増幅され、第2増幅部において、モニター値が第1増幅率よりも大きい第2増幅率で増幅される。そして、これらのモニター値がADコンバータによりAD変換される。コントロール部は、これらのAD変換されたモニター値に基づいて、X線管に流れる管電流の指示値を決定する。電源制御部は、その指示値に基づいてX線管に流れる管電流を制御する。そのため、コントロール部において、管電流の指示値を精度よく決定できる。そして、電源制御部は、その指示値に基づいてX線管に流れる管電流を精度よく制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置の構成例を示した概略図である。
図2】コントロール部の構成例を示した回路図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置のコントロール部の構成例を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.エネルギー分散型蛍光X線分析装置の全体構成
図1は、本発明の第1実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置1の構成例を示した概略図である。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置1は、X線管2と、検出器3と、電源4と、電源制御部5と、コントロール部6とを備えている。
【0020】
X線管2は、フィラメント21と、ターゲット22と、フィラメントケーブル23とを備えている。フィラメント21とターゲット22とは、互いに間隔を隔てて配置されている。フィラメントケーブル23は、フィラメント21に連続している。
検出器3は、入射する蛍光X線を検出し、検出した蛍光X線に応じて検出信号を得るように構成されている。
電源4は、フィラメントケーブル23に接続されている。
【0021】
電源制御部5は、電源4の動作を制御する。電源制御部5には、ターゲット22で発生する管電流の値(モニター値の信号)が入力される。なお、電源制御部5には、モニター値の信号として、X線管2における管電圧の値が入力されてもよい。
【0022】
コントロール部6は、電源制御部5に対して、電源4を制御するための指示値の信号を出力する。また、コントロール部6には、電源制御部5から、モニター値の信号が入力される。なお、コントロール部6の詳細な構成については、後述する。
【0023】
エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、コントロール部6から入力された指示値に基づいて、電源制御部5により電源4の動作が制御される。これにより、フィラメント21からターゲット22に対して熱電子が放出され、この熱電子がターゲット22に衝突することによりX線が発生する。このようにして、X線管2でX線が発生する。
【0024】
X線管2で発生したX線(励起X線)は、サンプル(試料)に向けて照射される。そして、励起X線により励起されたサンプルから蛍光X線が放射される。試料からの蛍光X線は、検出器3で検出される。そして、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、検出器3からの検出信号に基づいて、スペクトルが作成される。
【0025】
このように、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、電源制御部5により電源4の動作が制御されることにより、X線管2からサンプルに向けてX線が照射される。
【0026】
このとき、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、X線管2を流れる管電流の値が設定(算出)されており、この設定された管電流になるように、フィードバック制御が行われている。具体的には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、まず、検出器3に入射する蛍光X線の量がモニタされ、その蛍光X線の量に応じてX線管2に流れる管電流の値が設定(算出)される。例えば、サンプルが、金属材料など、発生する蛍光X線の量が多いサンプルである場合には、X線管2に流れる管電流の値が低く設定される。そして、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1では、管電流がその値となるように、フィードバック制御が行われる。
【0027】
2.コントロール部の構成
図2は、コントロール部6の構成例を示した回路図である。
コントロール部6は、第1増幅部61と、第2増幅部62と、ADコンバータ63と、DAコンバータ64と、制御部65とを備えている。コントロール部6は、X線管2の管電流をフィードバック制御するためのフィードバック制御回路を構成している。
【0028】
第1増幅部61は、入力された信号を増幅するためのオペアンプ回路(演算増幅器)である。第1増幅部61は、入力された信号を一定の増幅率で増幅する。第1増幅部61には、電源制御部5からのモニター値が入力される。
【0029】
第2増幅部62は、第1増幅部に対して並列な状態で配置されている。第2増幅部62は、入力された信号を増幅するためのオペアンプ回路(演算増幅器)である。第2増幅部62は、入力された信号を、第1増幅部61の増幅率よりも大きい増幅率で増幅する。第2増幅部62には、電源制御部5からのモニター値が入力される。
【0030】
ADコンバータ63は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。ADコンバータ63には、第1増幅部61及び第2増幅部62でそれぞれ増幅されたモニター値が入力される。
DAコンバータ64は、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。DAコンバータ64には、制御部65からの信号(指示値)が入力される。
【0031】
制御部65は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部65には、ADコンバータ63でAD変換されたモニター値が入力される。制御部65は、CPUがプログラムを実行することにより、モニター値選択処理部651などとして機能する。
モニター値選択処理部651は、ADコンバータ63から入力されるモニター値を選択する処理を行う。
【0032】
3.コントロール部によるフィードバック制御
上記したように、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1において、検出器3に入射する蛍光X線の量がモニタされ、その蛍光X線の量に応じてX線管2に流れる管電流の値が設定されると、その値(設定値)で管電流が流れるように、コントロール部6においてフィードバック制御が行われる。
【0033】
具体的には、まず、ターゲット22で発生する管電流の値がモニター値として電源制御部5に入力される。そして、電源制御部5に入力されたモニター値が、第1増幅部61及び第2増幅部62のそれぞれに入力される。
第1増幅部61では、入力されたモニター値が一定の増幅率で増幅される。第1増幅部61で増幅されたモニター値は、ADコンバータ63に入力される。
【0034】
また、第2増幅部62では、入力されたモニター値が、第1増幅部61の増幅率よりも大きい増幅率で増幅される。第2増幅部62で増幅されたモニター値は、ADコンバータ63に入力される。
【0035】
ADコンバータ63では、第1増幅部61で増幅されたモニター値、及び、第2増幅部62で増幅されたモニター値のそれぞれがAD変換される。そして、これらの信号が制御部65に入力される。
【0036】
モニター値選択処理部651は、これらのモニター値(第1増幅部61で増幅されたモニター値、及び、第2増幅部62で増幅されたモニター値)のうち、いずれのモニター値を用いるかを選択する。具体的には、モニター値選択処理部651は、X線管2に流れる管電流として設定された設定値に応じて、いずれのモニター値を用いるかを選択する。
【0037】
例えば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1で分析されるサンプルが、金属材料以外である場合など、サンプルで発生する蛍光X線の量が比較的少ない場合には、X線管2に流れる管電流として、通常の範囲内で設定値が設定される。この場合、モニター値選択処理部651は、第1増幅部61で増幅され、ADコンバータ63でAD変換されたモニター値を選択する。
【0038】
一方、例えば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1で分析されるサンプルが、金属材料である場合など、サンプルで発生する蛍光X線の量が多い場合には、X線管2に流れる管電流として、極めて小さい値で設定値が設定される。この場合、モニター値選択処理部651は、第2増幅部62で増幅され、ADコンバータ63でAD変換されたモニター値を選択する。
【0039】
また、制御部65は、モニター値選択処理部651が選択したモニター値に基づいて、指示値を決定する。このとき、制御部65は、X線管2の管電流が設定値に近づくように、指示値を決定する。
【0040】
制御部65で決定された指示値は、DAコンバータ64に入力されてDA変換され、電源制御部5に入力される。電源制御部5は、入力された指示値に基づいて、電源4の動作を制御することで、X線管2に流れる管電流を制御する。
【0041】
そして、コントロール部6では、上記した電源制御部5からのモニター値の入力、及び、電源制御部5への指示値の出力が繰り返されて、フィードバック制御が行われる。
【0042】
4.作用効果
(1)本実施形態によれば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1のコントロール部6では、第1増幅部61において、モニター値が第1増幅率で増幅され、第2増幅部62において、モニター値が第1増幅率よりも大きい第2増幅率で増幅される。そして、これらのモニター値がADコンバータ63によりAD変換される。制御部65は、AD変換されたモニター値に基づいて、X線管2に流れる管電流の指示値を決定する。電源制御部5は、その指示値に基づいて、電源4の動作を制御して、X線管2に流れる管電流を制御する。
【0043】
そのため、コントロール部6において、管電流の指示値を精度よく決定できる。そして、電源制御部5は、その指示値に基づいてX線管2に流れる管電流を精度よく調整できる。
【0044】
(2)また、本実施形態によれば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1において、コントロール部6は、制御部65を備えている。制御部65は、モニター値選択処理部651として機能する。モニター値選択処理部651は、X線管2に流れる管電流として設定された設定値に応じて、第1増幅部61で増幅されたモニター値、及び、第2増幅部62で増幅されたモニター値のうち、いずれのモニター値を用いるかを選択する。
【0045】
そのため、モニター値選択処理部651により適切なモニター値を選択することで、そのモニター値に基づいて、X線管2の管電流の指示値を正確に決定できる。
【0046】
5.第2実施形態
以下では、図3を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、上記と同様の符号を用いることにより説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置1のコントロール部6の構成例を示した回路図である。
【0047】
第2実施形態のエネルギー分散型蛍光X線分析装置1におけるコントロール部6は、コンパレータ66を備えている。また、コントロール部6において、制御部65は、モニター値選択処理部651としては機能しない。
【0048】
コンパレータ66は、第1増幅部61及び第2増幅部62と、電源制御部5との間に設けられている。コンパレータ66には、電源制御部5からモニター値が入力される。コンパレータ66は、X線管2の管電流を閾値と比較する。
【0049】
第2実施形態では、電源制御部5からのモニター値は、コンパレータ66に入力される。コンパレータ66は、X線管2に流れる管電流として設定された設定値を閾値と比較する。そして、その比較結果に応じて、第1増幅部61及び第2増幅部62のいずれかにモニター値を入力する。
【0050】
例えば、サンプルが金属材料以外である場合などであって、サンプルで発生する蛍光X線の量が比較的少ない場合には、X線管2に流れる管電流として、通常の範囲内で設定値が設定される。この場合、コンパレータ66は、設定値を閾値と比較し、モニター値を第1増幅部61に入力することを選択する。そして、第1増幅部61でモニター値が増幅され、そのモニター値がAD変換されて、制御部65に入力される。
【0051】
一方、例えば、サンプルが金属材料である場合などであって、サンプルで発生する蛍光X線の量が多い場合には、X線管2に流れる管電流として、極めて小さい値で設定値が設定される。この場合、コンパレータ66は、設定値を閾値と比較し、モニター値を第2増幅部62に入力することを選択する。そして、第2増幅部62でモニター値が増幅され、そのモニター値がAD変換されて、制御部65に入力される。
制御部65は、入力されたモニター値に基づいて、指示値を決定する。また、指示値は、DAコンバータ64でDA変換されて、電源制御部5に入力される。
【0052】
このように、第2実施形態によれば、コントロール部6は、コンパレータ66を備えている。コントロール部6では、コンパレータ66は、コンパレータ66による比較結果に応じて、第1増幅部61又は第2増幅部62でモニター値が増幅される。
【0053】
そのため、コンパレータ66により、適切なモニター値を選択できる。そして、制御部65により、そのモニター値に基づいて管電流の指示値を正確に決定できる。
【符号の説明】
【0054】
1 エネルギー分散型蛍光X線分析装置
2 X線管
3 検出器
5 電源制御部
6 コントロール部
61 第1増幅部
62 第2増幅部
63 ADコンバータ
65 制御部
66 コンパレータ
651 モニター値選択処理部
図1
図2
図3