特許第6939712号(P6939712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939712
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】端子の接合構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   H01R4/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-108610(P2018-108610)
(22)【出願日】2018年6月6日
(65)【公開番号】特開2019-212512(P2019-212512A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2020年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋和
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−015211(JP,A)
【文献】 特開2009−187683(JP,A)
【文献】 特開2009−199788(JP,A)
【文献】 米国特許第6352193(US,B1)
【文献】 特開2000−158153(JP,A)
【文献】 特開2004−195549(JP,A)
【文献】 特開2012−143808(JP,A)
【文献】 特開2013−208633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなり、電線に結合される結合部を有する第1部材と、
金属材料からなる第2部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の各々の端縁または側縁が互いに突き合わされた突き合わせ部を有しており、
前記突き合わせ部には、固相接合により接合された接合部が設けられている、
端子の接合構造。
【請求項2】
前記第1部材は、前記結合部から延在する延在部を有している、
請求項1に記載の端子の接合構造。
【請求項3】
前記電線を第1電線とし、前記延在部を第1延在部とし、前記結合部を第1結合部とするとき、
前記第2部材は、前記第1電線とは別の第2電線に結合される第2結合部及び前記第2結合部から延在する第2延在部を有しており、
前記第1延在部及び前記第2延在部の少なくとも一方には、貫通孔が設けられている、
請求項2に記載の端子の接合構造。
【請求項4】
前記接合部は、摩擦攪拌接合により固相接合されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の端子の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、電源回路から電源を供給する電線を複数の電線に分岐する電源分岐構造を備えるターミナルブロックが搭載されている(例えば、特許文献1参照)。同文献1に記載のターミナルブロックは、ターミナルブロック本体の端子載置部と、略L字状の分岐端子を有する第1の電線と、分岐端子の屈曲部に連結された端子を有する第2の電線と、分岐端子の先端部に連結された端子を有する第3の電線とを備えている。端子載置部には、2つのボルトが突設されている。分岐端子には、その屈曲部及び屈曲部から延びる先端部に、上記ボルトがそれぞれ挿通される挿通孔が設けられている。第2の電線の端子には、一方のボルトが挿通される挿通孔が設けられている。また、第3の電線の端子には、他方のボルトが挿通される挿通孔が設けられている。分岐端子の各挿通孔には、各ボルトが挿通されている。各ボルトにナットが螺合されることで、分岐端子と各端子とが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−19434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電源分岐構造においては、分岐端子と2つの端子とが厚さ方向において重ね合わされた状態でボルト及びナットにより連結されている。このため、分岐部分における端子の厚さ方向の体格が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、接合部における厚さ方向の体格の増大を抑制できる端子の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための端子の接合構造は、金属材料からなり、電線に結合される結合部を有する第1部材と、金属材料からなる第2部材と、を備え、前記第1部材及び前記第2部材の各々の端縁または側縁が互いに突き合わされた突き合わせ部を有しており、前記突き合わせ部には、固相接合により接合された接合部が設けられている。
【0007】
同構成によれば、第1部材及び第2部材の各々の端縁または側縁が互いに突き合わされた突き合わせ部に、固相接合により接合された接合部が設けられている。このため、例えば第1部材と第2部材とがそれらの厚さ方向に重ね合わされて接合された構成と比較して、接合部の厚さを薄くすることができる。
【0008】
また、接合部は固相接合により接合されている。すなわち、接合部では、塑性流動によって、第1部材の原子と第2部材の原子とが絡み合うアンカー効果が生じる。したがって、第1部材及び第2部材の接合の信頼性を高めることができる。
【0009】
上記端子の接合構造において、前記第1部材は、前記結合部から延在する延在部を有していることが好ましい。
上記端子の接合構造において、前記電線を第1電線とし、前記延在部を第1延在部とし、前記結合部を第1結合部とするとき、前記第2部材は、前記第1電線とは別の第2電線に結合される第2結合部及び前記第2結合部から延在する第2延在部を有しており、前記第1延在部及び前記第2延在部の少なくとも一方には、貫通孔が設けられていることが好ましい。
【0010】
同構成によれば、第1延在部及び第2延在部の少なくとも一方に設けられた貫通孔に対してボルトなどの締結部材を挿通して締結対象に締結することで、いずれも結合部を有する第1部材及び第2部材を1つの締結部材によって締結対象に締結することができる。
【0011】
上記端子の接合構造において、前記接合部は、摩擦攪拌接合により固相接合されていることが好ましい。
固相接合の一態様である圧接により第1部材と第2部材とが接合される場合、それらの接合面に酸化膜などの不純物が存在するために、接合強度を高めることが難しい。また、そうした不純物を除去しようとすると、工数が増大するといった別の問題が生じる。
【0012】
この点、上記構成によれば、接合部は第1部材と第2部材とが摩擦攪拌されることで接合されているため、上記不純物の除去を行うことなく接合強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合部における厚さ方向の体格の増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】端子の接合構造の一実施形態について、各結合部に各電線の端末が結合された状態の複合端子を示す平面図。
図2】同実施形態における複合端子の製造工程を説明する図であって、第1端子の側縁及び第2端子の端縁を突き合わせた状態を示す平面図。
図3】同実施形態における複合端子の製造工程を説明する図であって、第1端子及び第2端子の突き合わせ部が摩擦攪拌接合されている状態を示す断面図。
図4】第1変更例の複合端子を示す平面図。
図5】第2変更例の複合端子を示す平面図。
図6】第3変更例の複合端子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、複合端子30は、長尺板状の第1端子10と、第1端子10の長手方向(同図の左右方向であり、以下、長手方向X)の中央部の側縁に接合された端縁を有し、同長手方向Xに直交して延在する板状の第2端子20とを有しており、全体として平面視略T字状をなしている。複合端子30の3つの端部には、3つの電線(第1電線41,第2電線42,第3電線43)の端末がかしめられて結合される結合部11,12,21が設けられている。
【0016】
各電線41〜43は、芯線45と、芯線45の外周を覆う筒状の絶縁被覆46とを有している。各芯線45は、例えば、銅合金からなる複数の金属素線により構成されている。各絶縁被覆46は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)を押出成形することにより形成されている。
【0017】
第1端子10は、上記長手方向Xに沿って延在する平板状の延在部13を有している。延在部13の長手方向Xの両端には、一対の結合部11,12が設けられている。第1端子10は、例えばアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。
【0018】
各結合部11,12は、かしめられていない状態において、長手方向Xに直交する断面形状がU字状をなしている(図2参照)。すなわち、各結合部11,12は、各結合部11,12の周方向の一部において長手方向Xに沿って延在する切れ目11a,12aを有している。各切れ目11a,12aは、各結合部11,12の長手方向X全体にわたって延在している。
【0019】
第1電線41及び第2電線42の各芯線45の端末が結合部11,12に挿通された状態で結合部11,12をかしめて切れ目11a,12aを閉塞させることにより、第1電線41及び第2電線42の各芯線45の端末が各結合部11,12に結合される。
【0020】
第2端子20は、上記長手方向X及び第1端子10の延在部13の厚さ方向(図1における紙面に直交する方向)の双方に直交する直交方向(同図の上下方向であり、以下、直交方向Y)に沿って延在する延在部23を有している。延在部23の先端には、結合部21が設けられている。第2端子20は第1端子10と同一の金属板材により形成されている。
【0021】
結合部21は、かしめられていない状態において、直交方向Yに直交する断面形状がU字状をなしている(図2参照)。すなわち、第2端子20の結合部21は、同結合部21の周方向の一部において直交方向Yに沿って延在する切れ目21aを有している。切れ目21aは、結合部21の直交方向Y全体にわたって延在している。
【0022】
第3電線43の芯線45の端末が結合部21に挿通された状態で結合部21をかしめて切れ目21aを閉塞させることにより、芯線45の端末が結合部21に結合される。
なお、第1端子10の結合部11,12及び延在部13は、金属板材をプレス加工することにより一体形成されている。また、第2端子20の結合部21及び延在部23は、金属板材をプレス加工することにより一体形成されている。
【0023】
ここで、第1端子10の延在部13の側縁13Aと第2端子20の延在部23の端縁23Aとが互いに突き合わされた突き合わせ部30aには、摩擦攪拌接合により接合された接合部50が設けられている。
【0024】
本実施形態における第1端子10及び第2端子20が、本発明に係る第1部材及び第2部材にそれぞれ相当する。
次に、既存の第1端子10及び第2端子20から複合端子30を製造する工程について説明する。
【0025】
図2に示すように、まず、第1端子10の延在部13の側縁13Aと、第2端子20の延在部23の端縁23Aとを互いに突き合わせることにより突き合わせ部30aを形成する。
【0026】
続いて、図3に示すように、突き合わせ部30aの中央部に対して摩擦攪拌接合用の工具60を回転させつつ押し付ける。なお、工具60は、図示しない駆動部により回転駆動される円柱状のショルダー61と、ショルダー61の下面61aの中央部から突設されたプローブ62とを備えている。なお、ショルダー61の直径は、第2端子20の延在部23の幅(図2における長手方向Xの長さ)よりも大きい。また、プローブ62の外周面は凹凸形状を有している。
【0027】
ここで、回転するプローブ62の先端を押し付けることにより、上記突き合わせ部30aは、摩擦熱により軟化して塑性流動される。
更に、突き合わせ部30aには、回転するプローブ62の外周面によって摩擦熱が発生することに加えて、回転するショルダー61の下面61aによって摩擦熱が発生する。これにより、突き合わせ部30aが塑性流動されることで固相接合される。なお、ショルダー61の直径は、第2端子20の延在部23の幅よりも大きいため、突き合わせ部30aの長手方向X全体が接合される。
【0028】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)端子の接合構造は、金属材料からなり、第1電線41及び第2電線42の端末に結合される結合部11,12、及び各結合部11,12から延在する延在部13を有する第1端子10と、金属材料からなり、第3電線43の端末に結合される結合部21及び結合部21から延在する延在部23を有する第2端子20と、を備えている。また、第1端子10の延在部13の側縁13A及び第2端子20の延在部23の端縁23Aが互いに突き合わされた突き合わせ部30aを有している。突き合わせ部30aには、摩擦攪拌接合により接合された接合部50が設けられている。
【0029】
こうした構成によれば、第1端子10の側縁13Aと第2端子20の端縁23Aとが互いに突き合わされた突き合わせ部30aに、摩擦攪拌接合により接合された接合部50が設けられている。このため、例えば第1端子10と第2端子20とがそれらの厚さ方向に重ね合わされて接合された構成と比較して、接合部50の厚さを薄くすることができる。
【0030】
また、接合部50は摩擦攪拌接合により固相接合されている。すなわち、接合部50では、塑性流動によって、第1端子10の原子と第2端子20の原子とが絡み合うアンカー効果が生じる。したがって、第1端子10及び第2端子20の接合の信頼性を高めることができる。
【0031】
また、接合部50は摩擦攪拌接合されているため、接合部50の微細組織を均質にすることができる。このため、例えば、第1端子10と第2端子20とが重ね合わされて一括でボルト締結された構成と比較して、第1端子10と第2端子20との間の接触抵抗の増加を抑制することができる。
【0032】
ここで、固相接合の一態様である圧接により第1端子10と第2端子20とが接合される場合、それらの接合面に酸化膜などの不純物が存在するために、接合強度を高めることが難しい。また、そうした不純物を除去しようとすると、工数が増大するといった別の問題が生じる。
【0033】
この点、上記構成によれば、接合部50は第1端子10と第2端子20とが摩擦攪拌されることで接合されているため、上記不純物の除去を行うことなく接合強度を高めることができる。
【0034】
(2)複合端子30は、既存の第1端子10及び第2端子20が互いに摩擦攪拌接合されることにより構成されている。
同構成によれば、複合端子30の製造に際して、既存の第1端子10及び第2端子20同士を摩擦攪拌接合すればよいため、各電線41〜43の端末が結合可能な新規の複合端子を起工する必要がない。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
なお、以下の図4図6にそれぞれ示す第1変更例〜第3変更例において、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、対応する構成については、それぞれ「100」、「200」、「300」を加算した符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、第1端子110の延在部113の側縁113Aと、第2端子120の第1延在部123から屈曲して延在する第2延在部124の端縁124Aとを互いに突き合わせて接合するようにしてもよい。また、第1端子110の延在部113に、貫通孔113aを設けるようにしてもよい。
【0037】
こうした構成によれば、第1端子110の延在部113に設けられた貫通孔113aに対してボルトなどの締結部材を挿通して、複合端子130を締結対象に締結することで、結合部111,121をそれぞれ有する複合端子130を1つの締結部材によって締結対象に締結することができる。また、例えば、複数の電線をアース処理する場合、複合端子130を用いることで、各電線のアース処理を1箇所で行うことができる。なお、上記貫通孔113aに代えて、第2端子120の第1延在部123または第2延在部124に貫通孔を設けるようにしてもよい。
【0038】
図5に示すように、第1端子210の第1延在部213から屈曲して延在する第2延在部214の側縁214Aと、第2端子220の延在部223の端縁223Aとを互いに突き合わせて接合するようにしてもよい。このとき、第1端子210の結合部211を第1電線41の長さ方向の途中において露出した芯線45に対して結合するようにすれば、第1電線41を切断することなく、第1電線41から第2電線42を分岐させることができる。これにより、電線の分岐位置の自由度を高めることができる。
【0039】
図6に示すように、金属材料からなり、平板状をなす第2部材320の側縁320Aと、複数(この場合は3つ)の第1端子310の延在部313における端縁313Aとを互いに突き合わせて接合するようにしてもよい。
【0040】
・接合部50は、摩擦攪拌接合により接合されるものに限定されず、冷間圧接などの他の固相接合方法により接合されるものであってもよい。
・第1部材及び第2部材は、板状のものに限定されない。端縁または側縁が互いに固相接合できるものであればよく、棒材などであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
10,110,210,310…第1端子、11,12,21,111,121,211,221…結合部、11a,12a,21a…切れ目、13,23,113,223,313…延在部、13A,113A,214A,320A…側縁、20,120,220…第2端子、23A,124A,223A,313A…端縁、30,130…複合端子、30a…突き合わせ部、41…第1電線、42…第2電線、43…第3電線、45…芯線、46…絶縁被覆、50,150,250,350…接合部、60…工具、61…ショルダー、61a…下面、62…プローブ、113a…貫通孔、123,213…第1延在部、124,214…第2延在部、320…第2部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6