特許第6939810号(P6939810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939810
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】複合部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20210909BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210909BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210909BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20210909BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   B32B27/40
   B32B27/34
   F16L11/06
   B32B1/08 B
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-547819(P2018-547819)
(86)(22)【出願日】2017年10月30日
(86)【国際出願番号】JP2017039077
(87)【国際公開番号】WO2018079768
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2020年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-212731(P2016-212731)
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】奥迫 隆
(72)【発明者】
【氏名】徳原 克彦
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】原 義智
【審査官】 櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−542476(JP,A)
【文献】 特開2007−216387(JP,A)
【文献】 特開平07−053824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン及びポリアミドエラストマーを含む第一部材と、含フッ素樹脂を含む第二部材とが、直接接触してなる複合部材であって、
前記第一部材中の熱可塑性ポリウレタン含有率が70質量%以上であり、ポリアミドエラストマー含有率が30質量%以下であり、
前記ポリアミドエラストマーが、下記式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、
下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は下記式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、
下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位と、
を含む複合部材。
【化10】

(xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、及びzは1〜20の整数をそれぞれ表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【請求項2】
前記第一部材中の熱可塑性ポリウレタン含有率が70質量%以上98質量%以下である請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
前記第一部材中のポリアミドエラストマー含有率が2質量%以上30質量%以下である請求項1又は2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記ポリアミドエラストマーが、ω−ラウリルラクタム、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種から形成されるポリアミド構成単位を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項5】
前記含フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合部材からなる積層体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合部材からなる積層チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦性及び低誘電特性等に優れているため、幅広い分野で用いられており、特に、耐薬品性に優れているため、薬液搬送用チューブが、重要な用途として挙げられる。しかしながら、含フッ素樹脂は、接着性、塗装性、印刷適性、染色性、柔軟性などの点で必ずしも十分に満足できるものではない。そのため、含フッ素樹脂と他の熱可塑性樹脂とを複合化した成形品が種々検討されている。例えば、反応性官能基を有する含フッ素系重合体と特定のアミン価を有するポリアミド系樹脂とを積層する方法が提案されている(例えば、特許文献1から2参照)。またエチレン・テトラフルオロエチレン樹脂の内層と、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂からなる中間層と、樹脂又はエラストマーからなる外層とを積層する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2004/110756号
【特許文献2】特開2007−216387号公報
【特許文献3】特開2011−62881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から2に記載の技術では、反応性官能基を有する含フッ素系重合体が必要であり、汎用の含フッ素系重合体に適用することは困難であった。また特許文献3に記載の技術では中間層を設けることが必要であった。
本発明は、含フッ素樹脂を含む部材と熱可塑性樹脂を含む部材とを有し、両部材間の接着性に優れる複合部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本発明は以下の態様を包含する。
熱可塑性ポリウレタン及びポリアミドエラストマーを含む第一部材と、含フッ素樹脂を含む第二部材とが、直接接触してなる複合部材である。
複合部材の好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
[1]前記第一部材のポリアミドエラストマー含有率が49質量%以下である複合部材。
[2]前記第一部材のポリアミドエラストマー含有率が30質量%以下である複合部材。
[3]前記ポリアミドエラストマーが、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、前記ハードセグメントが、ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(3)で表されるラクタム化合物からなる群から選択される少なくとも1種から形成されるポリアミド構成単位を有する複合部材。
【化1】

(式(2)及び(3)において、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
[4]前記ソフトセグメントが、ポリエーテル構成単位を有する複合部材。
[5]前記ポリアミドエラストマーが、ω−ラウリルラクタム、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種から形成されるポリアミド構成単位を有する複合部材。
[6]前記ソフトセグメントが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び下記式(5)に示されるXYX型トリブロックポリエーテルからなる群から選択される少なくとも1種から形成されるポリエーテル構成単位を有する複合部材。
【化2】

(式(5)において、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、及びzは1〜20の整数をそれぞれ表す。)
[7]前記ハードセグメントが、前記ポリアミド構成単位と下記式(4)で表されるジカルボン酸とから誘導される構成単位を含む複合部材。
【化3】

(式(4)において、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
[8]前記ポリアミドエラストマーが、下記式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、
下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は下記式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、
下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位と、
を含む複合部材。
【化4】

(xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、及びzは1〜20の整数をそれぞれ表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
[9]前記含フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である複合部材。
[10]複合部材からなる積層体。
[11]複合部材からなる積層チューブ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、含フッ素樹脂を含む部材と熱可塑性樹脂を含む部材とを有し、両部材間の接着性に優れる複合部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0008】
[複合部材]
本実施形態に係る複合部材は、熱可塑性ポリウレタン及びポリアミドエラストマーを含む第一部材と、含フッ素樹脂を含む第二部材とが直接接触してなる。第一部材が熱可塑性ポリウレタンに加えてポリアミドエラストマーを含み、含フッ素樹脂を含む第二部材と直接接触していることで、第一部材と第二部材とが強固に接着されて一体となった複合部材が形成される。更に複合部材を例えば、チューブ状に成形することで柔軟性、耐薬品性、耐傷つき性等に優れる積層チューブを構成することができる。
【0009】
[第一部材]
第一部材は、熱可塑性ポリウレタン及びポリアミドエラストマーを含む。第一部材の形態は目的等に応じて適宜選択され、ブロック、フィルム、チューブ、ブロー成形品、プレス成形品、多層射出成形品(DSI法、DRI法、インモールド成形、インサート成形、多色成形等)等のいずれであってもよい。第一部材の形態がフィルム状、チューブ状等の場合、その厚みは、例えば10μmから10mmとすることができる。
【0010】
1.熱可塑性ポリウレタン
第一部材に含まれる熱可塑性ポリウレタン(以下、単に「ポリウレタン」ともいう)には、特に制限なく、公知のものを使用することができる。
【0011】
ポリウレタンとしては、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られたポリウレタン;ポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られたポリウレタンなどを用いることができる。特にポリウレタンは、ジオールとジイソシアネート又はジオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるものであることが好ましい。
【0012】
ポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールなどが用いられる。
【0013】
縮合系ポリエステルポリオールには、ジカルボン酸とジオールを1種又は2種以上用いることにより得られるポリエステルジオールが好ましく用いられる。
【0014】
ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらのなかでもアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、縮合系ポリエステルポリオールの形成には、これらのジカルボン酸の少なくとも一部に代えて、これらのジカルボン酸の低級アルキルエステルを用いてもよい。
【0015】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールを挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらのなかでも3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの脂肪族ジオールからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0016】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を短鎖のジオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させて得られたポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールの製造原料である低分子ジオールとしては、ポリエステルジオールの製造原料として先に例示した低分子のジオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール、ポリオキシプロピレントリオール等のポリエーテルトリオール等が挙げられる。上記のほか、公知の各種のポリウレタン用ポリオールを使用することもできる。
ポリウレタンは、ポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールをソフトセグメントとする熱可塑性ポリウレタン、たとえば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂及び/又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂を好ましく用いることができ、接着性の観点からポリエステル系ポリウレタン樹脂をより好ましく用いることができる。
【0019】
ポリウレタンに使用するポリイソシアネートは特に制限されず、ジイソシアネートが好ましく用いられ、ポリウレタンや熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられているジイソシアネートのいずれもが使用できる。
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いることができ、これらのポリイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。それらのうちでもジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0020】
ポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤の種類は特に制限されず、通常のポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できる。鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いることが好ましい。
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いることが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いることがより好ましい。
【0021】
第一部材中のポリウレタンの含有率は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。またポリウレタンの含有率は、例えば100質量%未満であり、98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましい。
【0022】
2.ポリアミドエラストマー
ポリアミドエラストマーの第一の好ましい態様は、以下の通りである。
第一部材に含まれるポリアミドエラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、ハードセグメントがポリアミドの構成単位を有する。ポリアミドエラストマーのソフトセグメントはポリエーテルの構成単位を有することが好ましい。ソフトセグメントとしてポリエーテルの構成単位を有するポリアミドエラストマーとしては、ハードセグメントとソフトセグメントをエステル結合で結合したポリエーテルポリエステルポリアミドエラストマー、ハードセグメントとソフトセグメントをアミド結合で結合したポリエーテルポリアミドエラストマーが挙げられる。本発明の効果発現の観点から、ハードセグメントとソフトセグメントをアミド結合で結合したポリエーテルポリアミドエラストマーが好ましい。
【0023】
ハードセグメントにおけるポリアミド構成単位は、ポリアミド形成性モノマー[ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(3)で表されるラクタム化合物からなる群から選択される少なくとも1種]から形成される構成単位が好ましい。
【0024】
ハードセグメントは、両末端基にカルボキシル基を有するポリアミドから誘導することもでき、ポリアミド構成単位と、下記式(4)で表されるジカルボン酸とから誘導される構成単位を含むセグメントでもある。
【0025】
下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩のジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジアミン、3−メチルペンタン−1,5−ジアミン等の炭素数2〜20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物が挙げられる。
【0027】
ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩のジカルボン酸としては、後述する下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物と同様の化合物が挙げられる。
下記式(3)で表されるラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ラウリルラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、低吸水による寸法安定性、耐薬品性、機械特性の観点からω−ラウリルラクタム、11−アミノウンデカン酸又は12−アミノドデカン酸が好ましい。
下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物としては、脂肪族、脂環族及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸又はこれらの誘導体を用いることができる。
【0029】
下記式(4)で表されるジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることができる。
【0030】
下記式(4)で表されるジカルボン酸の存在下、上記ポリアミド構成単位を、常法により、開環重合又は重縮合させることによって両末端にカルボキシル基を有するポリアミドを得ることができる。ハードセグメントのジカルボン酸は、分子量調整剤として使用することができる。
【0031】
ハードセグメントの数平均分子量は、300〜15000であることが好ましく、柔軟性、成形性の観点から300〜6000であることがより好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0032】
ソフトセグメントは、ポリエーテルの構成単位を有することが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び下記式(5)に示されるXYX型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を用いることができ、これらの中でも下記式(5)に示されるXYX型トリブロックポリエーテルがより好ましい。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。ソフトセグメントの数平均分子量は、200〜6000であることが好ましく、650〜2000であることがより好ましい。
【0033】
下記式(5)において、x及びzは、それぞれ独立して、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数がより好ましく、1〜14の整数がさらに好ましく、1〜12の整数が特に好ましい。また、yは、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数がより好ましく、7〜35の整数がさらに好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。
【0034】
上記ハードセグメントと上記ソフトセグメントとの組み合わせとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組み合わせを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組み合わせ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組み合わせ及びラウリルラクタムの開環重縮合体/XYX型トリブロックポリエーテルの組み合わせが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/XYX型トリブロックポリエーテルの組み合わせが特に好ましい。
【0035】
【化5】
【0036】
上記式(2)〜(5)において、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、及びzは1〜20の整数をそれぞれ表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。
【0037】
上記ハードセグメントと上記ソフトセグメントとの割合(質量比)は、ハードセグメント/ソフトセグメント=95/5〜20/80であることが好ましい。この範囲であれば、成形体からのブリードアウトを回避しやすく、十分な柔軟性も確保しやすい。ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、95/5〜25/75であることがより好ましく、50/50〜30/70であることが特に好ましい。
【0038】
上記ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)が上記範囲より小さい場合、ポリアミド成分の結晶性が低くなる場合があり、強度、弾性率などの機械的物性が低下するので好ましくない場合がある。上記ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)が上記範囲より大きい場合、ゴム弾性や柔軟性などのエラストマーとしての機能、性能が発現しにくくなるために好ましくない場合がある。
【0039】
以上のようなポリアミドエラストマーの市販品としては、例えば、ダイセル・エボニック社製商品名「ダイアミド(登録商標)E1947」、「ダイアミド(登録商標)E47」、「ダイアミド(登録商標)E47H」、「ダイアミド(登録商標)E55」、「ダイアミド(登録商標)E55H」、「ダイアミド(登録商標)E62」、「ダイアミド(登録商標)E62H」、「ダイアミド(登録商標)E73K2」、「ダイアミド(登録商標)E75K2」、「ダイアミド(登録商標)EX9200」、「ダイアミド(登録商標)MSP-S」、「ダイアミド(登録商標)X4442W2」、「ダイアミド(登録商標)ZE7000」、「ダイアミド(登録商標)ZE7200」、「ベスタミド(登録商標)E47−S1」、「ベスタミド(登録商標)E47−S4」、「ベスタミド(登録商標)E55−S4」、「ベスタミド(登録商標)E58−S4」、「ベスタミド(登録商標)E62−S1」、「ベスタミド(登録商標)E62−S4」、「ベスタミド(登録商標)EX9200」、「ベスタミド(登録商標)EX9202」、ARKEMA社製商品名「Pebax」シリーズ、エムスケミー・ジャパン社製商品名「グリルフレックス(登録商標)EBG」、「グリルフレックス(登録商標)ELG」、「グリロン(登録商標)ELX」、宇部興産株式会社製商品名「UBESTA XPA(登録商標)」シリーズ、たとえば、「UBESTA XPA 9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1、同9040X2、同9048X2、同9040F2、同9048F2、同9068TF1、同9063TF1、同9055TF1、同9048TF1」(宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
この中でも、宇部興産株式会社製商品名「UBESTA XPA(登録商標)」シリーズが好ましい。
ポリアミドエラストマーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造方法として、一例を挙げると、ポリアミド形成性モノマー、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン及びジカルボン酸の三成分を、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができ、さらにポリアミド形成性モノマー、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン及びジカルボン酸の三成分を同時に、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができる。なお、ポリアミド形成性モノマーとジカルボン酸の二成分を先に重合させ、ついで、XYX型トリブロックポリエーテルジアミンを重合させる方法も利用できる。
【0041】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造に当たり、原料の仕込む方法に特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー及びXYX型トリブロックポリエーテルジアミンに対してポリアミド形成性モノマーが好ましくは20〜95質量%、さらに好ましくは25〜95質量%、特に好ましくは30〜50質量%の範囲、XYX型トリブロックポリエーテルジアミンが好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは5〜75質量%、特に好ましくは50〜70質量%の範囲である。原料のうち、XYX型トリブロックポリエーテルジアミンとジカルボン酸は、XYX型トリブロックポリエーテルジアミンのアミノ基とジカルボン酸のカルボキシル基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
【0042】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、重合温度が好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜280℃、特に好ましくは180〜250℃で行うことができる。重合温度が上記温度より低い場合重合反応が遅く、上記温度より高い場合熱分解が起きやすく良好な物性のポリマーが得られない場合がある。
【0043】
ポリエーテルポリアミドエラストマーは、ポリアミド形成性モノマーとしてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合での工程からなる方法で製造することができる。
【0044】
一方、ポリアミド形成性モノマーとしてラクタム、又はジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0045】
ポリエーテルポリアミドエラストマーは、重合時間が通常0.5〜30時間で製造することができる。重合時間が上記範囲より短いと、分子量の上昇が十分でなく、長いと熱分解による着色などが起こり、いずれの場合も所望の物性を有するポリエーテルポリアミドエラストマーが得られない場合がある。
【0046】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、回分式でも、連続式でも実施することができ、またバッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、必要に応じて分子量調節や成形加工時の溶融粘度安定のために、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのモノアミン及びジアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのモノカルボン酸、或はジカルボン酸などを添加することができる。これらの使用量は、最終的に得られるエラストマーの相対粘度が1.2〜3.5(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲になるように適宜添加することが好ましい。
【0048】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、上記のモノアミン及びジアミン、モノカルボン酸及びジカルボン酸などの添加量は、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの特性を阻害されない範囲とするのが好ましい。
【0049】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、必要に応じて触媒として、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などを、また触媒と耐熱剤の両方の効果をねらって亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物を添加することができる。添加量は、通常、仕込み原料に対して50〜3000ppmである。
【0050】
ポリアミドエラストマーの第二の好ましい態様は、以下の通りである。
第一部材に含まれるポリアミドエラストマーは、下記式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は下記式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、下記式(4)で表わされるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位とを含む重合体であることが好ましい。
【0051】
【化6】

上記式(1)〜(4)において、xは1〜20の整数、yは4〜50の整数、及びzは1〜20の整数をそれぞれ表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。
ポリアミドエラストマーを構成する第一構成単位は、式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される。式(1)で表されるジアミン化合物は、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物であり、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端にプロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることができる。
【0052】
式(1)において、x及びzは1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16、さらに好ましくは1〜14、特に好ましいのは1〜12であり、yは4〜50、好ましくは5〜45、より好ましくは6〜40、さらに好ましくは7〜35、特に好ましいのは8〜30である。またx、y及びzの組合せとしては、xが2〜6の範囲、yが6〜12の範囲、zが1〜5の範囲の組合せ、あるいはxが2〜10の範囲、yが13〜28の範囲、zが1〜9の範囲の組合せなどを好ましく例示することができる。
【0053】
ジアミン化合物の具体例としては、米国HUNTSMAN社製XTJ−533(上記式(1)において、xがおよそ12、yがおよそ11、zがおよそ11)、XTJ−536(式(1)において、xがおよそ8.5、yがおよそ17、zがおよそ7.5)、そしてXTJ−542(上記式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ9、zがおよそ2)などを挙げることができる。
【0054】
また、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物として、XYX−1(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ14、zがおよそ2)、XYX−2(式(1)において、xがおよそ5、yがおよそ14、zがおよそ4)、そしてXYX−3(上記式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ19、zがおよそ2)などを挙げることもできる。
【0055】
ポリアミドエラストマー中の第一構成単位の含有率は、例えば2〜87質量%であり、7〜78質量%であることが好ましい。
【0056】
第二構成単位は、式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される。式(2)において、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数2〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3〜18の上記炭化水素基又は炭素数3〜18のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数4〜15の上記炭化水素基又は炭素数4〜15のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の上記炭化水素基又は炭素数10〜15のアルキレン基である。
【0057】
式(3)においてRは炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数3〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数3〜20のアルキレン基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3〜18の上記炭化水素基又は炭素数3〜18のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数4〜15の上記炭化水素基又は炭素数4〜15のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数10〜15の上記炭化水素基又は炭素数10〜15のアルキレン基である。
【0058】
式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物は、ω−アミノカルボン酸であり、ω−アミノカルボン酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることができる。
【0059】
式(3)で表されるラクタム化合物の具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる
【0060】
ポリアミドエラストマー中の第二構成単位の含有率は、例えば10〜95質量%であり、15〜90質量%であることが好ましく、15〜85質量%であることがより好ましく、15〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
第三構成単位は、式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される。式(4)において、Rは、炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数1〜20の脂肪族、脂環族若しくは芳香族の炭化水素基又は炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜15の上記炭化水素基又は炭素数1〜15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜12の上記炭化水素基又は炭素数2〜12のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数4〜10の上記炭化水素基又は炭素数4〜10のアルキレン基である。また、mは0又は1を表す。
【0062】
ジカルボン酸化合物としては、脂肪族、脂環族及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸又はこれらの誘導体を用いることができる。
【0063】
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14〜48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、および、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることができる。
【0064】
ポリアミドエラストマーにおける第一構成単位と第三構成単位との合計量の割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜85質量%、さらに好ましくは15〜85質量%、特に好ましくは20〜85質量%、最も好ましくは30〜85質量である。
【0065】
ポリアミドエラストマーは、式(1)で表されるジアミン化合物以外の第二ジアミン化合物から誘導される第四構成単位をさらに含んでいてもよい。第二ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミン、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0066】
第二ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。
【0067】
ポリアミドエラストマーの詳細及びその製造方法は、例えば、特開2012−211251号公報を参照することができる。また、ポリアミドエラストマーは市販品を用いてもよい。市販品としては例えば「UBESTA XPA 9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1、同9040X2、同9048X2、同9040F2、同9048F2、同9068TF1、同9063TF1、同9055TF1、同9048TF1」(宇部興産株式会社製)などを使用することができる。
【0068】
第一部材中のポリアミドエラストマーの含有率は、49質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が最も好ましい。またポリアミドエラストマーの含有率は、例えば0.01質量%以上であることが好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましい。ポリアミドエラストマーの含有率が上記範囲であると、接着性により優れる複合部材を得ることができる。
【0069】
第一部材中のポリアミドエラストマーとポリウレタンの含有比(質量比)は、接着性の観点から、例えば1:10000〜3:7であり、1:50〜3:17が好ましく、1:20〜1:9がより好ましい。
【0070】
第一部材は、特性を損なわない範囲で、ポリウレタンを除く他の熱可塑性ポリマー、柔軟性を有する熱可塑性ポリマー、上記ポリアミドエラストマー以外のエラストマー、ゴムなどを含むことができる。またポリウレタン樹脂組成物は、その特性が阻害されない範囲で耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材などを含んでいてもよい。
【0071】
第一部材の製造方法としては、公知の種々の方法を使用することができる。例えば、第一部材を形成するポリウレタンおよびポリアミドエラストマー等を混合後、溶融混練し、押出成形、射出成形、プレス成形等を経て、第一部材に製造する事ができる。尚、溶融混練することなく、混合後、押出成形、射出成形、プレス成形等を経て、第一部材に製造する事もできる。また、混合は、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合するのが一般的である。溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等が使用されるのが一般的である。溶融混練法による場合は、ポリウレタンとポリアミドエラストマーとを、必要に応じてその他添加剤を所定の配合割合にて、均一に混合した後に溶融混練すればよい。溶融混練温度は、使用するポリウレタン及びポリアミドエラストマーの種類に応じて反応速度及び反応の選択性等を考慮して適宜選択できるが、140〜300℃であることが好ましく、150〜270℃であることがより好ましい。溶融混練は常圧下、減圧下、加圧下の何れの条件下で行ってもよく、その時間は、通常の二軸押出機での混練時間、例えば20秒〜3分程度であるが、これに限定されない。
【0072】
[第二部材]
第二部材は含フッ素樹脂を含む。第二部材の形態は目的等に応じて適宜選択され、ブロック、フィルム、チューブ、ブロー成形品、プレス成形品、多層射出成形品(DSI法、DRI法、インモールド成形、インサート成形、多色成形等)等のいずれであってもよい。第二部材の形態がフィルム状、チューブ状等の場合、その厚みは、例えば10μmから25mmとすることができる。
【0073】
含フッ素樹脂は、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素樹脂であれば特に限定されるものではない。
ここで含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CF=CFORf1で表されるペルフルオロアルキルビニルエーテル(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基を表す。)、CF=CF−OCH−Rf2(ここで、Rf2は、炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2を示す。)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0074】
上記一般式CF=CFORf1の具体例としては、
CF=CFOCF(パーフルオロ(メチルビニルエーテル):PMVE)、
CF=CFOCFCF(パーフルオロ(エチルビニルエーテル):PEVE)、
CF=CFOCFCFCF(パーフルオロ(プロピルビニルエーテル):PPVE)、
CF=CFOCFCFCFCF(パーフルオロ(ブチルビニルエーテル):PBVE)、
CF=CFO(CFF(パーフルオロ(オクチルビニルエーテル):POVE)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEと称する場合がある。)が挙げられる。これらの中でも、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFCFが好ましい。
【0075】
また、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)で表される化合物中のnが前記の値未満であると、含フッ素系重合体の改質(例えば、共重合体の成形時や成形品のクラック発生の抑制)が不十分となる場合があり、一方、前記の値を超えると重合反応性の点で不利となる場合がある。
具体的には、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH2=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、CH=CH(CFF又はCH=CF(CFHで表される化合物であって、式中のnは2〜4であることが、樹脂Bの薬液透過防止性と耐クラック性を両立することからより好ましい。
【0076】
含フッ素樹脂は、上記含フッ素単量体に加えて、さらに非フッ素含有単量体に基づく重合単位を含有してもよい。非フッ素含有単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2〜4のオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、クロトン酸メチル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロへキシルビニルエーテル(CHVE)、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0077】
含フッ素樹脂の中でも、耐熱性、耐薬品性、薬液透過防止性の面で、少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる重合体(ポリテトラフルオロエチレン)、
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)、
少なくともフッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる重合体(ポリフッ化ビニリデン)、
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びペルフルオロアルキルビニルエーテル単位(PAVE単位)からなる共重合体(テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)からなる共重合体(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)、ヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)及びフッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる共重合体(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体)、
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)及び/又は上記式CF=CFORf1で表されるペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE単位)からなる共重合体(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/PAVE共重合体、
少なくともクロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体、
並びに少なくともクロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、
ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0078】
少なくともフッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる共重合体(以下、「VDF共重合体」ともいう)としては、例えば、フッ化ビニリデン単独重合体(ポリフッ化ビニリデン(PVDF));VDF単位とTFE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が30〜99モル%、及びTFE単位の含有量が1〜70モル%である共重合体;VDF単位とTFE単位、及びトリクロロフルオロエチレン単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が10〜90モル%、TFE単位の含有量が0〜90モル%、及びトリクロロフルオロエチレン単位の含有量が0〜30モル%である共重合体;VDF単位とTFE単位、及びHFP単位からなる共重合体であって、VDF単位の含有量が10〜90モル%、TFE単位の含有量が0〜90モル%、及びHFP単位の含有量が0〜30モル%である共重合体(VDF/TFE/HFP共重合体)等が挙げられる。
上記VDF/TFE/HFP共重合体において、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量は15モル%以上84モル%以下、TFE単位の含有量は15モル%以上84モル%以下、及びHFP単位の含有量は0モル%以上30モル%以下であることが好ましい。
【0079】
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体としては(以下、「ETFE共重合体」ともいう)、例えば、TFE単位の含有量が20モル%以上である重合体が挙げられ、さらには、TFE単位の含有量が20〜80モル%、E単位の含有量が20〜80モル%及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0〜60モル%である共重合体等が挙げられる。
【0080】
上記共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体としては、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位及び/又は上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体が好ましく、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が20〜80モル%、E単位の含有量が20〜80モル%、上記一般式CH=CX(CF)nX(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位及び/又は上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位の合計含有量が0〜60モル%であることが好ましい。
【0082】
少なくともテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体としては、例えば、TFE単位とE単位、及び上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30〜70モル%、E単位の含有量が20〜55モル%、及び上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位の含有量が0〜10モル%である共重合体;TFE単位とE単位とHFP単位、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位からなる共重合体であって、TFE単位の含有量が30〜70モル%、E単位の含有量が20〜55モル%、HFP単位の含有量が1〜30モル%、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0〜10モル%である共重合体;TFE単位とE単位、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体であって、TFE単位の含有量が30〜70モル%、E単位の含有量が20〜55モル%、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位の含有量が0〜10モル%である共重合体等が挙げられる。
【0083】
少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)とヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)及び/又は上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体(以下、TFE/HFP/PAVE共重合体と称する場合がある。)としては、例えば、
TFE単位及びHFP単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下であり、好ましくは85モル%以上93モル%以下であり、HFP単位の含有量が5モル%以上30モル%以下であり、好ましくは7モル%以上15モル%以下である共重合体、
TFE単位及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体、
TFE単位とHFP単位、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、HFP単位と上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の合計含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体等が挙げられる。
【0084】
少なくともクロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体とは、CTFE単位[−CFCl−CF−]を有し、エチレン単位(E単位)及び/又は含フッ素単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体である(以下、「CTFE共重合体(1)」ともいう)。
上記CTFE共重合体(1)における含フッ素単量体としては、CTFE以外のものであれば特に限定されないが、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0085】
CTFE共重合体(1)としては特に限定されず、例えば、CTFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/VDF共重合体、CTFE/HFP共重合体、CTFE/E共重合体、CTFE/TFE/E共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE/TFE/VDF/PAVE共重合体等が挙げられ、これらの中でも、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体が好ましい。
【0086】
CTFE共重合体(1)におけるCTFE単位の含有量は、15〜70モル%であることが好ましく、18〜65モル%であることがより好ましい。一方、E単位及び/又は含フッ素単量体単位の含有量は、単量体全体に対して、30〜85モル%であることが好ましく、35〜82モル%であることがより好ましい。
【0087】
少なくともクロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体は、CTFE単位[−CFCl−CF−]及びTFE単位[−CF−CF−]、並びに、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体である(以下、「CTFE共重合体(2)」ともいう)。
【0088】
上記CTFE共重合体(2)における共重合可能な単量体としては、CTFE及びTFE以外のものであれば特に限定されないが、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2〜10の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等の含フッ素単量体やエチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2〜4のオレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)等のビニルエーテル等の非フッ素含有単量体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、耐熱性の観点からPPVEがさらに好ましい。
【0089】
CTFE共重合体(2)としては特に限定されず、例えば、CTFE/TFE共重合体、CTFE/TFE/HFP共重合体、CTFE/TFE/VDF共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/E共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE/TFE/VDF/PAVE共重合体等が挙げられ、これらの中でも、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体が好ましい。
【0090】
CTFE共重合体(2)中におけるCTFE単位及びTFE単位の合計含有量は、単量体全体に対して、90〜99.9モル%であることが好ましく、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位の含有量は、0.1〜10モル%であることが好ましい。上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位の含有量が、前記の値未満であると、成形性、耐環境応力割れ性に劣る場合があり、一方、前記の値を超えると、薬液低透過性、耐熱性、機械特性に劣る場合がある。
【0091】
CTFE共重合体(2)中のおけるCTFE単位の含有量は、上記CTFE単位とTFE単位との合計量100モル%に対して、15〜80モル%であること好ましく、17〜70モル%であることがより好ましく、19〜65モル%であることがさらに好ましい。CTFE単位の含有量が、前記の値未満であると、薬液低透過性が不十分となる場合があり、一方、前記の値を超えると、耐燃料クラック性が低下し、生産性が低下する場合がある。
【0092】
CTFE共重合体(2)において、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がPAVEである場合、PAVE単位の含有量は、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5〜7.0モル%であることが好ましく、1.0〜5.0モル%であることがより好ましい。
【0093】
CTFE/TFE共重合体(2)において、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がHFPとPAVEである場合、HFP単位とPAVE単位の合計含有量は、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5モル%以上7.0モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上5.0モル%以下であることがより好ましい。
【0094】
TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE共重合体(1)、CTFE共重合体(2)は、薬液透過防止性、特に含アルコールガソリンに対するバリア性に卓越して優れる。含アルコールガソリン透過係数は、イソオクタン、トルエン、及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE共重合体(1)やCTFE共重合体(2)の上記含アルコールガソリン透過係数は、1.5g・mm/(m・day)以下であることが好ましく、0.01g・mm/(m・day)以上1.0g・mm/(m・day)以下であることがより好ましく、0.02g・mm/(m・day)以上0.8g・mm/(m・day)以下であることがさらに好ましい。
【0095】
含フッ素樹脂は、重合体を構成する単量体を従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも主としてラジカル重合による方法が用いられる。すなわち重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、例えば有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光あるいは電離放射線等によって開始される。
【0096】
含フッ素樹脂の製造方法は特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置を使用して、回分式又は連続式操作として実施することができる。
【0097】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)等のアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の非フッ素系ジアシルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0098】
また、含フッ素樹脂の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0099】
重合条件については特に限定されず、重合温度は、0〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。重合体中のエチレン−エチレン連鎖生成による耐熱性の低下を避けるためには、一般に低温が好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1〜10MPaであることが好ましく、0.5〜3MPaであることがより好ましい。重合時間は1〜30時間であることが好ましい。
【0100】
また、含フッ素樹脂の分子量は特に限定されないが、室温で固体の重合体であり、それ自体、熱可塑性樹脂、エラストマー等として使用できるものが好ましい。分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御される。
【0101】
含フッ素樹脂の融点より50℃高い温度、及び5kg荷重におけるメルトフローレートは、0.5g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましい。
【0102】
また、含フッ素樹脂は、含フッ素単量体及びその他の単量体の種類、組成比等を選ぶ事によって、重合体の融点、ガラス転移点を調節することができる。
含フッ素樹脂の融点は、目的、用途、使用方法により適宜選択されるが、第一部材と共押出する場合、第一部材に含まれる樹脂の成形温度に近いことが好ましい。そのため、前記含フッ素単量体、その他の単量体と後記の官能基含有単量体の割合を適宜調節し、含フッ素樹脂の融点を最適化することが好ましい。
ここで、融点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料を予想される融点以上の温度に加熱し、次に、この試料を1分間あたり10℃の速度で降温し、30℃まで冷却、そのまま約1分間放置したのち1分間あたり10℃の速度で昇温することにより測定される融解曲線のピーク値の温度を融点と定義するものとする。
【0103】
本発明において使用される含フッ素樹脂は、アミノ基に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有していることが好ましい。当該官能基は、含フッ素樹脂の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また、当該官能基は、含フッ素樹脂中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類、含有量は、含フッ素系樹脂を含む第二部材に直接接触される第一部材の種類、形状、用途、要求される部材間接着性、接着方法、官能基導入方法等により適宜決定される。
【0104】
アミノ基に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、及びハロホルミル基から群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、エポキシ基、カーボネート基、及びハロホルミル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0105】
含フッ素樹脂に反応性を有する官能基を導入する方法としては、(i)含フッ素樹脂の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時に含フッ素樹脂の分子末端に官能基を導入する方法、(iii)反応性を有する官能基をグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を含フッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。複合部材における部材間接着性を考慮した場合、上記(i)、(ii)から製造される含フッ素樹脂が好ましい。(iii)については、特開平7−18035号公報、特開平7−25952号公報、特開平7−25954号公報、特開平7−173230号公報、特開平7−173446号公報、特開平7−173447号公報、特表平10−503236号公報による製造法を参照することができる。以下、(i)含フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法について説明する。
【0106】
(i)含フッ素樹脂の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の官能基含有単量体を重合単量体して用いる。官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
【0107】
官能基含有非フッ素単量体としては、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸(但し、フッ素は除く)、メタクリル酸、ハロゲン化メタクリル酸(但し、フッ素は除く)、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸(但し、フッ素は除く)、フマル酸、ハロゲン化フマル酸(但し、フッ素は除く)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸やそのエステル等誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のカルボキシル基含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。官能基含有非フッ素単量体は使用する含フッ素単量体との共重合反応性を考慮して決定される。適当な官能基含有非フッ素単量体を選択することにより、重合が良好に進行し、官能基含有非フッ素単量体の主鎖中に均一に導入しやすく、結果として未反応モノマーが少なくなり、不純物を減らすことができるという利点がある。
【0108】
官能基含有含フッ素単量体としては、一般式XC=CX5−(R−Y(ここで、Yは、−COOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボキシル基由来基、−SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、スルホン酸由来基、エポキシ基、及び−CNからなる群より選択される官能基を表し、X、X及びX5は、同一又は異なって、水素原子若しくはフッ素原子を表し(但し、X、X及びX5が同一に水素原子の場合、n=1であり、Rにフッ素原子を含む。)、Rは、炭素原子数1以上40以下のアルキレン基、炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素アルキレン基、又は、エーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基を表し、nは0又は1である。)で表される不飽和化合物等が挙げられる。
上記一般式におけるYであるカルボキシル基由来基としては、例えば、一般式−C(=O)Q(式中、Qは、−OR、−NH、F、Cl、Br又はIを表し、Rは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される基等が挙げられる。
上記一般式におけるYであるスルホン酸由来基としては、例えば、一般式−SO(式中Qは、−OR、−NH、F、Cl、Br又はIを表し、Rは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される基等が挙げられる。
前記Yは、−COOH、−SOH、−SONa、−SOF又は−CNが好ましい。
【0109】
官能基含有含フッ素単量体としては、例えば、カルボニル基を有する官能基である場合、パーフルオロアクリル酸フルオライド、1−フルオロアクリル酸フルオライド、アクリル酸フルオライド、1−トリフルオロメタクリル酸フルオライド、パーフルオロブテン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0110】
含フッ素樹脂中の官能基含有単量体の含有量は、十分な部材間接着性を確保し、使用環境条件により、部材間接着性の低下を招かず、耐熱性を十分に確保し、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等の発生を防止する観点から、全重合単位に対して、0.05モル%以上20モル%以下であることが好ましく、0.05モル%以上10モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以上5モル%以下であることがさらに好ましい。官能基含有単量体の含有量が前記範囲にあると、製造時の重合速度が低下せず、かつ含フッ素系重合体(E)は積層される相手材との接着性に優れたものとなる。官能基含有単量体の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択されるが、重合中に、官能基含有単量体が重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、当該官能基含有単量体の濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
また、上記含有量を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素樹脂と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0111】
(ii)重合開始剤等により含フッ素樹脂の分子末端に官能基を導入する方法において、官能基は、含フッ素系重合体の分子鎖の片末端又は両末端に導入される。末端に導入される官能基としては、カーボネート基、ハロホルミル基が好ましい。
【0112】
含フッ素樹脂の末端基として導入されるカーボネート基は、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R10基[R10は水素原子、有機基(例えば、炭素原子数1以上20以下アルキル基、エーテル結合を有する炭素原子数2以上20以下アルキル基等)、又はI、II、VII族元素である。]の構造のもので、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OC、−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHOCHCH等が挙げられる。ハロホルミル基は、具体的には−COZ[Zはハロゲン元素である。]の構造のもので、−COF、−COCl等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0113】
また、重合体の分子末端にカーボネート基を導入するためには、重合開始剤や連鎖移動剤を使用した種々の方法を採用できるが、パーオキサイド、特にパーオキシカーボネートやパーオキシエステルを重合開始剤として用いる方法が、経済性や耐熱性、耐薬品性等の性能の観点から好ましく採用できる。この方法によれば、パーオキサイドに由来するカルボニル基、例えば、パーオキシカーボネートに由来するカーボネート基、パーオキシエステルに由来するエステル基、又は、これらの官能基を変換してなるハロホルミル基等重合体末端に導入することができる。これらの重合開始剤のうち、パーオキシカーボネートを用いることが、重合温度を低くすることができ、開始反応に副反応を伴わないことからより好ましい。
【0114】
重合体の分子末端にハロホルミル基を導入するためには、種々の方法を採用できるが、例えば、前述のカーボネート基を末端に有する含フッ素系重合体のカーボネート基を加熱させ熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。
【0115】
パーオキシカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0116】
パーオキシカーボネートの使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合速度を適正に制御し、十分な重合速度を確保する観点から、重合によって得られる全重合体100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。重合体の分子末端のカーボネート基含有量は、重合条件を調整することによって制御できる。重合開始剤の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択される。
【0117】
含フッ素樹脂中の主鎖炭素原子数106個に対する末端官能基数は、十分な部材間接着性を確保し、使用環境条件により、部材間接着性の低下を招かず、耐熱性を十分に確保し、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等の発生を防止する観点から、150個以上3,000個以下であることが好ましく、200個以上2,000個以下であることがより好ましく、300個以上1,000個以下であることがさらに好ましい。また、上記官能基数を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素樹脂の混合物であって構わない。
【0118】
以上のように、本発明において使用される含フッ素樹脂は、アミノ基に対して反応性を有する官能基が導入された含フッ素樹脂であってもよい。上述の通り、官能基が導入された含フッ素樹脂は、それ自体、含フッ素樹脂特有の耐熱性、耐水性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、防汚性、薬液透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり、生産性やコストの面で有利である。
さらに、アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に含有されることにより、複合部材において、部材間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し、表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず、直接、他の部材との優れた部材間接着性を付与することができる。
【0119】
含フッ素樹脂組成物は、目的、用途等に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、あるいはカーボン等の種々の充填剤を配合できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外にまた他のフッ素系樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
【0120】
含フッ素樹脂組成物における含フッ素樹脂の含有率は、例えば70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0121】
本実施形態に係る複合部材は、第一部材と第二部材とが直接接触して形成される。複合部材の具体例としては、積層チューブ、多層フィルム、多層ブロー成形品、多層プレス成形品、多層射出成形品(DSI法、DRI法、インモールド成形、インサート成形、多色成形等)等の積層体が挙げられる。
【0122】
複合部材が積層チューブである場合、積層チューブは、第一部材からなる層と第二部材でからなる層とを含む少なくとも2層以上から構成される。積層チューブにおいて、好ましい実施様態としては、第一部材からなる層は、積層チューブの最外層に配置される。第一部材からなる層が最外層に配置されることにより、柔軟性、耐振動性に優れる積層チューブが得られる。
【0123】
積層チューブにおいて、第二部材からなる層を含むことは必須であり、積層チューブの第一部材からなる層に直接接してその内側に配置される。第二部材からなる層を有することで薬液透過防止性、耐薬品性等に優れる積層チューブを構成することができる。
【0124】
積層チューブの外径は、薬液等の流量を考慮し、肉厚は薬液透過性が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚みで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚みに設計されるが、限定されるものではない。外径は1.5〜150mm、内径は1〜100mm、肉厚は0.25〜25mmであることが好ましい。
【0125】
積層チューブでは、各層の厚みは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層チューブにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層チューブの薬液透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定される。一般には、第一部材からなる層及び第二部材からなる層の厚みは、積層チューブ全体の厚みに対してそれぞれ3〜90%であることが好ましい。薬液透過防止性及び柔軟性、コスト等を考慮して、第二部材からなる層の厚みは積層チューブ全体の厚みに対して、1〜50%であることがより好ましく、5〜30%であることがさらに好ましい。
【0126】
積層チューブにおける全体の層数は、第一部材からなる層及び第二部材からなる層を含む、少なくとも2層である限り、特に限定されない。積層チューブは、第一部材からなる層及び第二部材からなる層の2層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層チューブを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい
【0127】
積層チューブにおける上記以外の他の層を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリチオエーテル系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0128】
ポリアミド系樹脂として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンスクシナミド(ポリアミド44)、ポリテトラメチレングルタミド(ポリアミド45)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンスクシナミド(ポリアミド54)、ポリペンタメチレングルタミド(ポリアミド55)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミド5I)、ポリペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド5T(H))、ポリペンタメチレンナフタラミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンスクシナミド(ポリアミド64)、ポリヘキサメチレングルタミド(ポリアミド65)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリ2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミドM5T)、ポリ2−メチルペンタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM5I)、ポリ2−メチルペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM5T(H))、ポリ2−メチルペンタメチレンナフタラミド(ポリアミドM5N)、ポリノナメチレンオキサミド(ポリアミド92)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタルアミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリ2−メチルオクタメチレンオキサミド(ポリアミドM82)、ポリ2−メチルオクタメチレンアジパミド(ポリアミドM86)、ポリ2−メチルオクタメチレンアゼラミド(ポリアミドM89)、ポリ2−メチルオクタメチレンセバカミド(ポリアミドM810)、ポリ2−メチルオクタメチレンドデカミド(ポリアミドM812)、ポリ2−メチルオクタメチレンテレフタラミド(ポリアミドM8T)、ポリ2−メチルオクタメチレンイソフタルアミド(ポリアミドM8I)、ポリ2−メチルオクタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドM8T(H))、ポリ2−メチルオクタメチレンナフタラミド(ポリアミドM8N)、ポリトリメチルヘキサメチレンオキサミド(ポリアミドTMH2)、ポリトリメチルヘキサメチレンアジパミド(ポリアミドTMH6)、ポリトリメチルヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミドTMH9)、ポリトリメチルヘキサメチレンセバカミド(ポリアミドTMH10)、ポリトリメチルヘキサメチレンドデカミド(ポリアミドTMH12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドTMHT(H))、ポリトリメチルヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミドTMHN)、ポリデカメチレンオキサミド(ポリアミド102)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタルアミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタルアミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンドデカミド(ポリアミドIPD12)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体が挙げられる。なお、ポリアミド樹脂の具体例の上記括弧内の名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
【0129】
ポリオレフィン系樹脂として具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体(NBR)、ポリイソプレン(IR)、ブテン/イソプレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等が挙げられる。更に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂も挙げられる。
【0130】
ポリエステル系樹脂として具体的には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等が挙げられる。
【0131】
ポリエーテル系樹脂として具体的には、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等が挙げられる。
ポリサルホン系樹脂として具体的には、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等が挙げられる。
ポリチオエーテル系樹脂として具体的には、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等が挙げられる。
ポリケトン系樹脂として具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等が挙げられる。
ポリニトリル系樹脂として具体的には、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブダジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等が挙げられる。
ポリメタクリレート系樹脂として具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等が挙げられる。
ポリビニルエステル系樹脂として具体的には、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂として具体的には、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
セルロース系樹脂として具体的には、酢酸セルロース、酪酸セルロース等が挙げられる。
ポリイミド系樹脂として具体的には、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0132】
積層チューブにおいては第一部材を構成するポリウレタン樹脂組成物の溶融安定性の観点から、上記例示の熱可塑性樹脂のうち、融点が230℃以下のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリチオエ−テル系樹脂を使用することが好ましい。
【0133】
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
【0134】
本発明の積層チューブの層数は2層以上であるが、チューブ製造装置の機構から判断して8層以下であることが好ましく、2層〜7層であることがより好ましく、2層〜5層であることがさらに好ましい。
【0135】
積層チューブの製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層チューブあるいは、上記の方法により製造された積層チューブを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。積層チューブの成形方法としては、共押出成形によることが好ましい。
【0136】
また、得られる積層チューブが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合には、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層チューブを形成した後、前記チューブを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
【0137】
積層チューブは、波形領域を有するものであってもよい。波形領域は、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層チューブ全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にしたりすることが可能である。
【0138】
このように成形した積層チューブの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層チューブを後で挿入したり、あるいは積層チューブの上に筒状部材を被覆押出ししたりして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層チューブを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
【0139】
積層チューブは、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途が挙げられる。
【0140】
また、本発明の積層チューブは、薬液透過防止性に優れるため、薬液搬送用チューブと
して好適である。薬液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール、フェノール系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、含硫化水素オイル、ウインドウォッシャー液、エンジン冷却液、尿素溶液、グリセリン溶液、医薬剤、インク、塗料、飲料等が挙げられる。
積層チューブは、上記薬液を搬送するチューブとして好適であり、具体的には、冷却水用チューブ、冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、床暖房チューブ、消火器及び消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、インク、塗料散布チューブ、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、ORVRチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ等の燃料チューブ、オイルチューブ、ブレーキチューブ、ウインドウォッシャー液用チューブ、ラジエーターチューブ、石油掘削チューブ、ガソリンスタンド用地下埋設チューブ、その他薬液チューブが挙げられる。
【0141】
また、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−115、フロン−134A、フロン−32、フロン−123、フロン−124、フロン−125、フロン−143A、フロン−141b、フロン−142b、フロン−225、フロン−C318、フロン−502、塩化メチル、塩化エチル、空気、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、アルゴン、ヘリウム、キセノン等、各種ガス搬送用チューブとして利用可能である。
【実施例】
【0142】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0143】
[製造例1 ポリアミドエラストマー1(PAE−1)の製造]
攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を供えた70Lの圧力容器に、ε−カプロラクタム(宇部興産(株)社製) 14.3kg、アジピン酸(旭化成ケミカルズ社製) 0.74kg、エラスタミンRT−1000(米国ハンツマン社製、数平均分子量 約1000、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物) 10.0kg、次亜リン酸ナトリウム 11.2g、およびイルガノックス245(BASF社製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤)80gを仕込んだ。容器内を窒素置換した後、加熱を開始した。槽内温度が230℃に到達した時点から更に5時間加熱攪拌し、反応水を系外に留去しながら重合反応を行った。反応終了後、ポリマー取り出し口から無色透明のポリマーを水中へストランド状に吐出し、ペレタイザーによりカッティングを行って約13kgのPAE−1を得た。
【0144】
[製造例2 ポリアミドエラストマー2(PAE−2)の製造]
製造例1と同じ装置にて、ヘキサメチレンジアミン80%水溶液(旭化成ケミカルズ社製)4.88kg 、ドデカン二酸(宇部興産(株)社製) 9.87kg、エラスタミンRT−1000(米国ハンツマン社製、数平均分子量 約1000、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物)9.2kg、脱気水 1kg、亜リン酸 11.5g、イルガノックス245 69gを仕込んだ。容器内を窒素置換した後、窒素ガス気流下、加熱を開始した。槽内温度が230℃に到達した時点から更に5時間加熱攪拌し、反応水を系外に留去しながら重合反応を行った。2時間かけて下げた後、さらに3時間重合反応を行った。反応終了後、製造例1と同様の方法で抜き出して、約13kgのPAE−2を得た。
【0145】
[実施例及び比較例]
(第一部材、第二部材の作製)
表1及び表2の割合でポリウレタン樹脂とポリアミドエラストマーを混合し、単軸押出機を用いて溶融混練し、PAE−1,PAE−2については230℃、それ以外のポリアミドエラストマーを用いた場合は、200℃かつ、以下の条件でプレス成形し、厚み1mmの第一部材を得た。表1の参考例については170℃かつ以下の条件でプレス成形した。
含フッ素樹脂を250℃かつ以下の条件でプレス成形し、厚み1mmの第二部材を得た。
機械圧力:2MPa(予熱時)、5MPa(成形時)、250kg/cm(冷却時)
時間:120秒(予熱時)、120秒(成形時)、120秒(冷却時)
【0146】
(複合部材の作製)
第二部材の面半分を二重のアルミ箔で被覆して、その上に第一部材を積層し、温度を表1については260℃、表2については250℃とし、上記の圧力及び時間でプレス成形し、表1については厚み3mm、表2については厚み2mmの複合部材を得た。
【0147】
[評価]
(剥離試験)
得られた複合部材について、万能材料試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM III―200)を用い、50mm/分の引張速度にて180°剥離試験(JIS K6854−2に準拠)を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取った。また、剥離試験後の複合部材の剥離状態を目視で観察した。結果を表1及び表2に示す。
【0148】
【表1】

表1中、剥離とは、第一部材と第二部材との接触面で両者が剥離したことを示す。
【0149】
[表1で用いた材料]
ポリウレタン樹脂:エーテル系ポリウレタン樹脂
ポリアミドエラストマー:UBESTA XPA(商標) 9040X1(宇部興産株式会社製)
含フッ素樹脂:AH3000(旭硝子株式会社製、ETFE)
【0150】
表1の結果から、第一部材がポリウレタン樹脂及びポリアミドエラストマーを含むと、第一部材と第二部材との接着性が向上することがわかる。
【0151】
【表2】

表2中、母材破壊とは、第一部材及び第二部材の少なくとも一方が、破断破壊したことを示し、剥離とは、第一部材と第二部材との接触面で両者が剥離したことを示す。
また、質量%は、第一部材及び第二部材それぞれに対する値である。
【0152】
表2中の略号は、以下の通りである。
<熱可塑性ポリウレタン>
ET385−50:ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、製品名「エラストラン(商標)ET385−50」、BASF社製
1195A10TR:ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、製品名「エラストラン(商標)1195A10TR」BASF社製
ET690−10:ポリエステル系ポリウレタン樹脂、製品名「エラストラン(商標)ET690−10」、BASF社製
<ポリアミドエラストマー>
PEBAX3533:ラウリルラクタムの開環重縮合体及びポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むポリアミドエラストマー、製品名「PEBAX(商標)3533」ARKEMA社製
PAE1200U:ラウリルラクタムの開環重縮合体及び水素添加ダイマー酸に由来する構成単位を含むポリアミドエラストマー、製品名「UBE PAE1200U」、宇部興産株式会社製
9040X1:ラウリルラクタムの開環重縮合体及びXYX型トリブロックポリエーテル構造を有するポリアミドエラストマー、製品名「UBESTA XPA(登録商標)9040X1」、宇部興産株式会社製
PAE−1:製造例1で得られたPAE−1
PAE−2:製造例2で得られたPAE−2
<含フッ素樹脂>
AH2000:製品名「ETFE AH2000」、旭硝子株式会社製
【0153】
実施例4〜8から、第一部材として熱可塑性ポリウレタンに、ポリアミドエラストマーを配合すると、ポリアミドエラストマーの種類に関わらず、第一部材と第二部材との接着性が向上することがわかる。
実施例10〜13から、第一部材中のポリアミドエラストマーの量は、量が少ないほど剥離強度が高いことがわかる。
実施例4〜13から、第一部材中の熱可塑性ポリウレタンの種類に関わらず、さらにポリアミドエラストマーを配合すると、第一部材と第二部材との接着性が向上することがわかる。
それに対して、比較例2〜7から、第一部材として熱可塑性ポリウレタンのみを用いた場合及び第一部材としてポリアミドエラストマーのみを用いた場合は、第一部材と第二部材との接着性が十分でないことがわかる。