(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調システムによって実現される在室者が快適と感じる環境の中には、人が眠気を感じる環境条件が存在する。このため、オフィスや自習室などの作業環境においては、在室者が一定温度の快適な環境に滞在し続けると、集中力が低下して作業効率を悪化させるおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、在室者が眠気を感じるのを防止することと、快適な室内環境を実現することとを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、室内空気の温度を調節する温度調節部(37)と、室内空気の温度を検出する内気温度検出部(45)と、内気温度検出部(45)によって検出される温度が目標温度に近づくように温度調節部(37)を制御する制御部(11)とを備える空調システム(1)を対象とする。
【0007】
制御部(11)は、目標温度を所定の基準温度よりも低い第1目標温度に下げる第1動作と、目標温度を基準温度よりも高い第2目標温度に上げる第2動作とを順に少なくとも1回ずつ行う第1モードを実行する。第2動作では、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで
徐々に上げる。第1動作において目標温度を第1目標温度に下げるまでの時間は、第2動作において目標温度を第2目標温度に上げるまでの時間よりも短い。
【0008】
この第1の態様では、第1動作において目標温度を相対的に短い時間で第1目標温度に下げる。そのことで、室内空気の温度が速やかに下げられて基準温度よりも低くなるから、室内温度を在室者(101)が涼しさを感じる温度にして、在室者(101)に冷涼な刺激を与えられる。これにより、在室者(101)が眠気を感じるのを防止することができる。
【0009】
また、この第1の態様では、第2動作において目標温度を相対的に長い時間をかけて
徐々に第2目標温度に上げる。そのことで、室内空気の温度が緩やかに上げられて基準温度よりも高くなるので、温度変化によって在室者(101)にかかる負担を軽減しながら、第1動作を行っている期間と第2動作を行っている期間との総期間における室内空気の平均温度を在室者(101)が快適な温度とすることができる。これにより、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様の空調システム(1)において、温度調節部(37)が、冷媒回路(17)に接続される室内熱交換器(37)によって構成されている、空調システム(1)である。当該空調システム(1)は、室内空気を搬送し、室内熱交換器(37)に通過させるファン(39)をさらに備える。制御部(11)は、室内熱交換器(37)が蒸発器として機能する冷房運転時に第1モードを実行する。そして、制御部(11)は、冷房運転時において、内気温度検出部(45)によって検出される温度が目標温度よりも所定の温度以上低くなったときに、室内熱交換器(37)を停止させると共に、ファン(39)を継続して運転させる。
【0011】
この第2の態様では、冷房運転時において、内気温度検出部(45)により検出される温度が目標温度よりも所定の温度以上低くなったときに、室内熱交換器(37)を停止すると共に、ファン(39)が継続して運転する。そのため、冷房運転時において、目標温度が内気温度検出部(45)によって検出される温度よりも所定の温度以上高く設定された場合、室内熱交換器(37)が停止されるが室内ファン(39)は運転する。そうなると、室内熱交換器(37)に付着した水分が送風によって室内に放たれるため、室内空気の湿度が上がり、在室者(101)に不快感を与えてしまう。
【0012】
これに対し、この第2の態様においても、第2動作では、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで
徐々に上げるので、冷房運転時において、内気温度検出部(45)により検出される温度が目標温度よりも所定温度以上低くなり難くし、室内熱交換器(37)が停止されるのを抑制できる。これにより、室内空気の湿度が上がることに起因して在室者(101)に不快感を与えないようにできる。
【0013】
本開示の第3の態様は、第2の態様の空調システム(1)において、第2動作での目標温度の上げ幅が、前記所定の温度未満の温度である、空調システム(1)である。
【0014】
本開示の第4の態様は、第1の態様の空調システム(1)において、温度調節部(37)が、冷媒回路(17)に接続される室内熱交換器(37)によって構成されている、空調システム(1)である。当該空調システム(1)は、室内空気を搬送し、室内熱交換器(37)に通過させるファン(39)をさらに備える。制御部(11)は、室内熱交換器(37)が放熱部として機能する暖房運転時に第1モードを実行する。そして、制御部(11)は、暖房運転時において、内気温度検出部(45)によって検出される温度が目標温度よりも所定の温度以上高くなったときに、室内熱交換器(37)を停止させると共に、ファン(39)を継続して運転させる。
【0015】
この第4の態様では、暖房運転時において、内気温度検出部(45)により検出される温度が目標温度よりも所定の温度以上高くなったときに、室内熱交換器(37)を停止すると共に、ファン(39)が継続して運転する。第1動作では、目標温度を相対的に短い時間で第1目標温度に下げるから、第1目標温度が内気温度検出部(45)によって検出される温度よりも所定の温度以上低く設定され易い。このことは、第1動作を開始した後に間もなくファン(39)が運転したまま室内熱交換器(37)を停止し、室内空気の温度を速やかに下げるのに寄与する。
【0016】
本開示の第5の態様は、第4の態様の空調システム(1)において、第1動作での前記目標温度の下げ幅が、前記所定の温度以上の温度である、空調システム(1)である。
【0017】
本開示の第6の態様は、第1〜第5の態様のいずれか1つの空調システム(1)において、制御部(11)が、在室者(101)が快適と感じる室内空気の快適温度を推定する、空調システム(1)である。ここで、基準温度は、制御部(11)によって推定される快適温度である。
【0018】
この第6の態様では、基準温度として制御部(11)により推定される快適温度を用いる。これによれば、第1動作を行っている期間と第2動作を行っている期間との総期間における室内空気の平均温度を在室者(101)が快適な温度とし易い。したがって、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0019】
本開示の第7の態様は、第6の態様の空調システム(1)において、制御部(11)が、室内空気の温度、室内空気の湿度、室内の照度、外気の温度および外気の湿度の少なくとも1つを含む環境情報に関するパラメータと、在室者(101)の温冷感に関するパラメータとに基づいて生成された学習モデルにより、快適温度を推定する、空調システム(1)である。
【0020】
この第7の態様では、基準温度に用いる快適温度を、環境情報と在室者(101)の温冷感とを関連付けた学習モデルによって推定する。それにより、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度を、快適温度として精度良く推定し、基準温度にすることができる。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0021】
本開示の第8の態様は、第6の態様の空調システム(1)において、外気温度を検出する外気温度検出部(53)と、快適温度と外気温度との関係を示す関係情報を記憶した記憶部(59)とを備える、空調システム(1)である。制御部(11)は、記憶部(59)に記憶された関係情報を用い、外気温度検出部(53)により検出される外気温度に基づいて快適温度を推定する。
【0022】
この第8の態様では、基準温度に用いる快適温度を、快適温度と外気温度との関係を示す関係情報を用いて、外気温度検出部(53)により検出される外気温度から推定する。それにより、一般的な快適温度を、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度として推定し、基準温度にすることができる。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0023】
本開示の第9の態様は、第6〜第8の態様のいずれか1つの空調システム(1)において、在室者(101)の個体差に関する情報が入力される入力部(9)を備える、空調システム(1)である。制御部(11)は、入力部(9)に入力された情報に基づいて基準温度を補正する。
【0024】
この第9の態様では、制御部(11)が在室者(101)の個体差に関する情報に基づいて基準温度を補正する。それにより、在室者(101)の個体差に関する情報が基準温度に反映されるので、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度を、精度良く基準温度として用いることができる。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0025】
本開示の第10の態様は、第1〜第9の態様のいずれか1つの空調システム(1)において、温度調節部(37)を有する室内ユニット(5)を備える、空調システム(1)である。内気温度検出部(45)は、室内ユニット(5)とは別部品に設けられている。
【0026】
この第10の態様では、内気温度検出部(45)が室内ユニット(5)とは別部品に設けられている。内気温度検出部(45)が設けられた別部品は、在室者(101)の近くに配置することが可能である。よって、在室者(101)の付近での室内空気の温度を内気温度検出部(45)により検出することができる。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0027】
本開示の第11の態様は、第1〜第10の態様のいずれか1つの空調システム(1)において、基準温度をTa、目標温度をTsとしたとき、第1動作を行っている一期間の基準温度と目標温度との温度差(Ta−Ts)の積算値と、第2動作を行っている一期間の目標温度と基準温度との温度差(Ts−Ta)の積算値とが等しい、空調システム(1)である。
【0028】
この第11の態様では、第1動作の目標温度および実行時間と第2動作の目標温度および実行時間が、第1動作を行っている一期間と第2動作を行っている一期間との総期間における室内空気の平均温度が基準温度となるように決定される。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0029】
本開示の第12の態様は、第1〜第11の態様のいずれか1つの空調システム(1)において、室内空気を換気する換気装置(7)と、室内の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素濃度検出部(49)とを備える、空調システム(1)である。制御部(11)は、二酸化炭素濃度検出部(49)により検出される二酸化炭素濃度が所定値以上になったときに、換気装置(7)を運転する。
【0030】
この第12の態様では、二酸化炭素濃度検出部(49)により検出される室内の二酸化炭素濃度が所定値以上になったときに、換気装置(7)を運転する。室内の二酸化炭素濃度が高いと、倦怠感や疲労度が増したり、眠気を招いたりする。換気装置(7)を運転すれば、室内空気が入れ替えられて室内の二酸化炭素濃度が下がるので、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
【0033】
この実施形態1の空調システム(1)は、在室者(101)の作業に対する集中力を維持するのに寄与するシステムであって、オフィスや自習室などの在室者(101)が作業を行う室内を対象とした空調を行うのに使用される。
【0034】
−空調システムの構成−
図1に示すように、空調システム(1)は、室外に設置される室外ユニット(3)と、室内に設置される室内ユニット(5)および換気装置(7)と、リモートコントローラ(9)と、各種のセンサ類(45,47,49,51,53,55)と、当該空調システム(1)の動作を総合的に制御する制御部(11)とを備える。
【0035】
〈室外ユニット、室内ユニット〉
室外ユニット(3)と室内ユニット(5)とは、連絡配管(13,15)により接続されて、
図2に示す冷媒回路(17)を構成している。冷媒回路(17)では、充填された冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。冷媒には、例えばR32冷媒が用いられる。冷媒回路(17)は、室外回路(19)と、室内回路(21)とを含む。
【0036】
室外ユニット(3)は、例えば、建物の屋上や建物脇の地面上、ベランダなどの屋外に設置される。室外ユニット(3)は、圧縮機(23)と、四方切換弁(25)と、室外熱交換器(27)と、膨張弁(29)と、室外ファン(31)とを有する。圧縮機(23)、四方切換弁(25)、室外熱交換器(27)および膨張弁(29)は、この順に冷媒配管(33)で接続されて室外回路(19)を構成している。
【0037】
圧縮機(23)は、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(23)は、例えば容量が可変なインバータ式に構成される。圧縮機(23)は、例えば回転式圧縮機である。室外ファン(31)は、室外熱交換器(27)の近傍に設置される。室外ファン(31)は、室外ファンモータ(35)によって駆動される。室外ファン(31)は、例えばプロペラファンによって構成される。室外ファン(31)は、外気を搬送し、室外熱交換器(27)に通過させる。
【0038】
室外熱交換器(27)は、室外ファン(31)によって搬送される外気と内部に流れる冷媒とを熱交換させる。室外熱交換器(27)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。膨張弁(29)は、開度が可変な制御弁である。膨張弁(29)は、内部に流れる冷媒を減圧する。膨張弁(29)は、例えば電子膨張弁により構成される。
【0039】
四方切換弁(25)は、冷媒回路(17)における冷媒の流路を第1状態(
図2の実線で示す状態)と第2状態(
図2の破線で示す状態)とに切り替える。第1状態の四方切換弁(25)は、圧縮機(23)の吐出部と室外熱交換器(27)とを連通させ、圧縮機(23)の吸入部と室内熱交換器(37)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(25)は、圧縮機(23)の吐出部と室内熱交換器(37)とを連通させ、圧縮機(23)の吸入部と室外熱交換器(27)とを連通させる。
【0040】
室内ユニット(5)は、例えば、室内の壁面や天井に取り付けられる。
図1に示す室内ユニット(5)は、壁面に取り付けられる壁掛け式のユニットである。室内ユニット(5)は、室内熱交換器(37)と、室内ファン(39)とを有する。室内熱交換器(37)は、室内回路(21)を構成している。室内ファン(39)は、室内熱交換器(37)の近傍に設置される。室内ファン(39)は、室内ファンモータ(41)によって駆動される。
【0041】
室内ファン(39)は、例えばクロスフローファンによって構成される。室内ファン(39)は、室内空気を搬送し、室内熱交換器(37)に通過させる。室内熱交換器(37)は、室内ファン(39)によって搬送される室内空気と内部を流れる冷媒とを熱交換させる。室内熱交換器(37)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。ここで、室内熱交換器(37)は、室内空気の温度を調節する温度調節部の一例である。
【0042】
冷媒回路(17)において、四方切換弁(25)が第1状態のときには、室外熱交換器(27)が凝縮器として機能し、室内熱交換器(37)が放熱器(蒸発器)として機能する冷凍サイクル(冷媒が
図2の実線矢印の方向に流れる冷凍サイクル)が行われる。また、冷媒回路(17)において、四方切換弁(25)が第2状態のときには、室外熱交換器(27)が放熱器(蒸発器)として機能し、室内熱交換器(37)が凝縮器として機能する冷凍サイクル(冷媒が
図2の破線矢印の方向に流れる冷凍サイクル)が行われる。
【0043】
<換気装置>
換気装置(7)は、例えば、室内の壁面や天井に取り付けられる。
図1に示す換気装置(7)は、壁面に取り付けられる壁掛け式の装置である。換気装置(7)は、換気ファン(43)と、必要に応じてダクトとを有する。換気ファン(43)は、室内に外部の空気を取り入れて、室内空気を外部に排出する。換気ファン(43)は、換気ファンモータ(不図示)によって駆動される。
【0044】
〈リモートコントローラ〉
リモートコントローラ(9)は、室内ユニット(5)とは別部品であって、在室者(101)が作業を行うデスク(103)上など、在室者(101)の付近に置かれることが多い。リモートコントローラ(9)は、在室者(101)が操作可能に構成されている。図示しないが、リモートコントローラ(9)は、在室者(101)が操作を行う操作部と、所定の情報を表示する表示部とを有する。リモートコントローラ(9)は、無線により制御部(11)に接続される。リモートコントローラ(9)は、操作信号を制御部(11)に出力する。
【0045】
操作部では、空調システム(1)のオンおよびオフや、運転モードおよび制御モードの切り換え、後述の集中力維持モードでの覚醒強さの設定、後述の基準温度に関する補正情報の入力を行える。操作部は、これら各種の操作を行うための複数のボタンを有する。複数のボタンには、後述の集中力維持モードをオンおよびオフするための集中ボタン、覚醒強さを設定するための選択ボタンが含まれる。
【0046】
集中力維持モードでの覚醒強さの設定としては、例えば「弱」、「中」および「強」の3パターンが用意されている。ここで、「覚醒強さ」とは、集中力維持モードでの在室者(101)への冷涼な刺激の強さの程度を表している。覚醒強さの設定の内容については、後に詳述する。
【0047】
操作部にて入力される補正情報は、在室者(101)の個体差に関する情報である。補正情報は、在室者(101)の暑さや寒さの体感に関する情報(暑がりであるや寒がりであるなどの抽象的な情報)であってもよい。また、補正情報は、+1.0℃や−1.0℃といった具体的な補正温度の情報であってもよい。また、補正情報は、在室者(101)の性別、年齢、代謝量、体脂肪率および血圧などといった温冷感に関係する個人パラメータであってもよい。
【0048】
表示部には、設定温度(基準温度)や室内空気の湿度、運転モードの情報などが表示される。運転モードの情報としては、冷房運転であるか暖房運転であるか、さらに後述の集中力維持モードが実行中であるか、集中力維持モードでの覚醒強さがいずれに設定されているかなどが挙げられる。
【0049】
〈センサ類〉
センサ類としては、内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、CO
2濃度センサ(49)、照度センサ(51)、外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)を備える。これら各センサ(45,47,49,51,53,55)は、有線または無線により制御部(11)に接続される。各センサ(45,47,49,51,53,55)は、検出信号を制御部(11)に出力する。ここで、室内温度センサ(47)は、内気温度検出部の一例である。CO
2濃度センサ(49)は、二酸化炭素濃度検出部の一例である。
【0050】
内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、CO
2濃度センサ(49)および照度センサ(51)は、例えば室内ユニット(5)に設けられている。室内温度センサ(45)は、室内ユニット(5)に吸い込まれる室内空気の温度を検出する。室内湿度センサ(47)は、室内ユニット(5)に吸い込まれる室内空気の湿度を検出する。CO
2濃度センサ(49)は、室内ユニット(5)に吸い込まれる室内空気のCO
2濃度(二酸化炭素濃度)を検出する。照度センサ(51)は、室内の明るさ(照度)を検出する。
【0051】
外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)は、例えば室外ユニット(3)に設けられている。外気温度センサ(53)は、室外ユニット(3)に吸い込まれる外気の温度を検出する。外気湿度センサ(55)は、室外ユニット(3)に吸い込まれる外気の湿度を検出する。
【0052】
<制御部>
制御部(11)は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。
図3に示すように、制御部(11)は、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)(57)と、中央演算処理装置上で実行される各種のプログラムやデータを記憶する記憶部(59)とを有する。記憶部(59)は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などによって構成されている。制御部(11)は、例えば室内ユニット(5)に内蔵されている。
【0053】
制御部(11)は、内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、CO
2濃度センサ(49)、照度センサ(51)、外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)の検知信号、リモートコントローラ(9)からの操作信号に基づいて、室外ユニット(3)(圧縮機(23)、四方切換弁(25)、膨張弁(29)、室外ファン(31))、室内ユニット(5)(室内ファン(39))および換気装置(7)(換気ファン(43))の制御量を計算する。制御部(11)は、計算した制御量に係る制御信号を室外ユニット(3)、室内ユニット(5)および換気装置(7)に出力する。
【0054】
記憶部(59)には、室内空気の湿度、室内空気のCO
2濃度、室内の照度、外気温度および外気湿度のうち少なくとも1つと、在室者(101)が快適と感じる室内空気の快適温度との関係を示す関係情報が記憶されている。関係情報としては、例えば、アダプティブコンフォートモデル(Adaptive Comfort Model)などとして知られる熱的快適性の適応モデルの情報が用いられる。
【0055】
在室者(101)の快適温度は、人の環境への適応能力により外気温度に応じて変動する。熱的快適性の適応モデルは、室内空気の温度と在室者(101)の温冷感の申告に基づいて統計情報から回帰分析によって得られるモデルであって、
図4のグラフで表されるような外気温度と快適温度との関係を示す情報である。
図4に示す熱的快適性の適応モデルでは、快適温度は、外気温度が高くなるほど高くなっている。
図4において、上下の二点鎖線の間の範囲は、統計上90%の人間が快適と感じる快適温度の範囲を示し、上下の一点鎖線の間の範囲は、統計上80%の人間が快適と感じる快適温度の範囲を示している。
【0056】
制御部(11)は、記憶部(59)に記憶された関係情報、この実施形態1では熱的快適性の適応モデルの情報を用い、外気温度センサ(53)によって検出される外気温度に基づいて、在室者(101)の快適温度を推定する。一般に、快適性に関する気温の概念として、人間にとって暑くもなく寒くもなく快適に感じる気温である中立温度という概念が知られている。
図4に示す熱的快適性の適応モデルにおいては、快適温度の範囲の中の実線NLで示した中間の温度を中立温度とみなすことができる。制御部(11)は、この熱的快適性の適応モデルにより外気温度から求められる中立温度を在室者(101)の快適温度と推定する。
【0057】
制御部(11)は、推定した快適温度に基づいて基準温度を自動で設定する。制御部(11)は、リモートコントローラ(9)により基準温度に関する補正情報が入力されていない場合、推定した快適温度を基準温度に設定する。制御部(11)は、リモートコントローラ(9)により基準温度に関する補正情報が入力されている場合、当該補正情報に基づいて基準温度を補正する。
【0058】
例えば、補正情報として、在室者(101)が暑がりとの情報が入力されている場合、基準温度を所定の温度だけ下げる補正を行い、在室者(101)が寒がりとの情報が入力されている場合、基準温度を所定の温度だけ上げる補正を行う。また、補正情報として、具体的な補正温度の情報が入力されている場合、当該補正温度に応じて基準温度を上げるまたは下げる補正を行う。また、補正情報として、温冷感に関係する個人パラメータが入力されている場合、当該個人パラメータに応じて決定される所定の温度だけ基準温度を上げるまたは下げる補正を行う。
【0059】
なお、制御部(11)は、リモートコントローラ(9)からの操作信号に基づいて基準温度を設定可能になっていてもよい。基準温度は、在室者がリモートコントローラ(9)を操作することにより手動で設定されてもよい。
【0060】
制御部(11)は、リモートコントローラ(9)からの操作信号に基づいて、指定された運転モード(冷房運転または暖房運転)で室外ユニット(3)および室内ユニット(5)の動作を制御し、上述した各種センサ(45,47,49,51,53,55)からの検出信号に基づいて、空調システム(1)の運転を制御する。
【0061】
制御部(11)は、複数の制御モードを有し、リモートコントローラ(9)からの操作信号により設定された制御モードに応じて室外ユニット(3)、室内ユニット(5)および換気装置(7)の動作を制御する。制御部(11)は、制御モードとして、在室者(101)の集中力を高めるための集中力維持モードと、集中力維持モードがオフのときに遷移する通常運転モードとを有する。ここで、「在室者(101)の集中力を高める」とは、在室者(101)が眠気を感じずに快適に過ごせるようにすることを意味する。ここで、集中力維持モードは、第1モードの一例である。
【0062】
また、制御部(11)は、CO
2センサによって検出される室内空気のCO
2濃度に基づいて、換気装置(7)の動作を制御する。CO
2濃度は、室内空気の質を評価する指標の1つである。室内空気のCO
2濃度が高いと、倦怠感や疲労度が増したり、眠気を招いたりする。このため、室内空気のCO
2濃度は、高くなり過ぎないようにすることが望ましい。
【0063】
制御部(11)は、CO
2濃度センサ(49)によって検出される室内のCO
2濃度が所定の第1基準値以上になったときに、換気装置(7)を運転する。第1基準値は、建築物の環境管理に関して定められている目安に従い、例えば1000ppmに設定される。また、制御部(11)は、CO
2濃度センサ(49)によって検出される室内空気のCO
2濃度が所定の第2基準値未満になったときに、換気装置(7)を停止する。第2基準値は、例えば900ppmに設定される。
【0064】
−空調システムの運転動作−
空調システム(1)は、リモートコントローラ(9)により設定される運転モードに従い、冷房運転と暖房運転とを切り換えて、室内空気の温度を調節する。集中力維持モードは、冷房運転時および暖房運転時のいずれにおいても、リモートコントローラ(9)で集中ボタンを押下する操作により実行し、集中ボタンの再操作により解除することが可能である。
【0065】
<冷房運転>
冷房運転では、四方切換弁(25)を第1状態とする。圧縮機(23)により圧縮された冷媒は、放熱器として機能する室外熱交換器(27)により放熱(凝縮)する。放熱した冷媒は、膨張弁(29)により減圧された後に、蒸発器として機能する室内熱交換器(37)を流れる。室内熱交換器(37)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(37)で冷却された室内空気は、室内ファン(39)により室内空間に送風される。蒸発した冷媒は圧縮機(23)に吸入される。冷房運転では、室内熱交換器(37)の付近で凝縮水が発生する。
【0066】
冷房運転時においては、内気温度センサ(45)によって検出される温度が目標温度よりも所定の第1温度以上低くなったときに、圧縮機(23)を停止させることで冷媒回路(17)を冷媒が流れないようにして、室内熱交換器(37)を停止させる。このとき、室内ファン(39)は運転させたままとする。この実施形態1において、室内熱交換器(37)を停止させる基準となる第1温度(室内空気の温度と目標温度との温度差)は、例えば1.0℃に設定される。室内熱交換器(37)の運転は、内気温度センサ(45)によって検出される温度が目標温度に到達したときに再開される。
【0067】
<暖房運転>
暖房運転では、四方切換弁(25)を第2状態とする。圧縮機(23)で圧縮された冷媒は、放熱器(凝縮器)として機能する室内熱交換器(37)を流れる。室内熱交換器(37)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。室内熱交換器(37)で加熱された室内空気は、室内ファン(39)により室内空間に送風される。凝縮した冷媒は、膨張弁(29)で減圧された後、室外熱交換器(27)で蒸発する。蒸発した冷媒は圧縮機(23)に吸入される。
【0068】
暖房運転時においては、内気温度センサ(45)によって検出される温度が目標温度よりも所定の第2温度以上高くなったときに、圧縮機(23)を停止させることで冷媒回路(17)を冷媒が流れないようにして、室内熱交換器(37)を停止させる。このとき、室内ファン(39)は運転させたままとする。この実施形態1において、室内熱交換器(37)を停止させる基準となる第2温度(室内空気の温度と目標温度との温度差)は、例えば1.0℃に設定される。室内熱交換器(37)の運転は、内気温度センサ(45)によって検出される温度が目標温度に到達したときに再開される。
【0069】
<通常運転モード>
通常運転モードでは、基準温度を目標温度に設定する。基準温度は、熱的快適性の適応モデルの情報を用いた推定制御に従い、外気温度センサ(53)によって検出される外気温度の変動に応じて変更されるので、目標温度は、外気温度の変動に応じて更新される。通常運転モードにおいては、内気温度センサ(45)によって検出される温度が目標温度に近づくように室内熱交換器(37)を制御する。
【0070】
<集中力維持モード>
集中力維持モードでは、第1動作と第2動作とを順に少なくとも1回ずつ行う。第1動作は、目標温度を基準温度よりも低い第1目標温度に下げる動作である。第2動作は、目標温度を基準温度よりも高い第2目標温度に上げる動作である。第1動作において目標温度を第1目標温度に下げるまでの時間は、第2動作において目標温度を第2目標温度に上げるまでの時間よりも短い。このことは、後述する第1動作および第2動作での制御で明らかにする。
【0071】
集中力維持モードにおいて、第1動作中は、内気温度センサ(45)によって検出される温度が第1目標温度に近づくように室内熱交換器(37)を制御し、第2動作中は、内気温度センサ(45)によって検出される温度が第2目標温度に近づくように室内熱交換器(37)を制御する。これら第1動作と第2動作とは、集中力維持モードを実行している間は、交互に繰り返し行われる。
【0072】
第1目標温度および第2目標温度は、リモートコントローラ(9)によって設定された覚醒強さに応じて決定される。覚醒強さの設定は、基準温度からの第1目標温度の下げ幅と、基準温度からの第2目標温度の上げ幅に反映される。これら第1目標温度の下げ幅および第2目標温度の上げ幅は、例えば第1目標温度と第2目標温度との温度差が3℃以下になるように設定される。このようにしたのは、室内空気の温度の変動幅が3℃を越えると、在室者(101)の身体に負担がかかるからである。
【0073】
覚醒強さ「弱」の設定は、例えば、基準温度からの第1目標温度の下げ幅を1.5℃とし、基準温度からの第2目標温度の上げ幅を1.5℃とする設定である。この設定の場合、第1目標温度は、基準温度よりも1.5℃だけ低い温度に設定され、第2目標温度は、基準温度よりも1.5℃だけ高い温度に設定される。このように、覚醒強さ「弱」の設定では、基準温度からの第1目標温度の下げ幅が比較的小さい。
【0074】
覚醒強さ「中」の設定は、例えば、基準温度からの第1目標温度の下げ幅を2.0℃とし、基準温度からの第2目標温度の上げ幅を1.0℃とする設定である。この設定の場合、第1目標温度は、基準温度よりも2.0℃だけ低い温度に設定され、第2目標温度は、基準温度よりも1.0℃だけ高い温度に設定される。このように、覚醒強さ「中」の設定では、基準温度からの第1目標温度の下げ幅が覚醒強さ「弱」の設定に比べて大きい。
【0075】
覚醒強さ「強」の設定は、例えば、基準温度からの第1目標温度の下げ幅を2.5℃とし、基準温度からの第2目標温度の上げ幅を0.5℃とする設定である。この設定の場合、第1目標温度は、基準温度よりも2.5℃だけ低い温度に設定され、第2目標温度は、基準温度よりも0.5℃だけ高い温度に設定される。このように、覚醒強さ「強」の設定では、基準温度からの第1目標温度の下げ幅が覚醒強さ「中」の設定に比べて大きい。
【0076】
第1動作では、目標温度を開始後直ぐに第1目標温度に設定する。これに対し、第2動作では、目標温度を開始後直ぐに第2目標温度には設定せず、第1目標温度から第2目標温度にまで段階的に上げる。具体的には、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで30秒毎に0.5℃ずつ徐々に上げる。目標温度の段階的な上げ幅を0.5℃としたのは、室内熱交換器(37)を停止させる基準となる第1温度(室内空気の温度と目標温度との温度差)が1.0℃に設定されているからである。このような制御によれば、冷房運転時において、室内熱交換器(37)が停止されるのを抑制できる。
【0077】
第1動作の実行時間と第2動作の実行時間とは、基準温度をTa、目標温度をTsとしたとき、第1動作を行っている一期間の基準温度Taと目標温度Tsとの温度差(Ta−Ts)の積算値と、第2動作を行っている一期間の目標温度Tsと基準温度Taとの温度差(Ts−Ta)の積算値とが等しくなるように設定される。
【0078】
具体的には、第1動作の実行時間と第2動作の実行時間とは、基準温度をTa、第1目標温度をTs1、第2目標温度をTs2、第1動作の実行時間をΔTL、第2動作の実行時間をΔTH、第2動作での目標温度の段階的な上げ幅をΔTrとしたとき、以下の関係式(1)を満たすように設定される。
【0079】
【数1】
ここで、N=(Ts2−Ts1)/ΔTrである。なお、N>1である。
【0080】
第1動作の実行時間ΔTLは、例えば4分以下に設定される。これは、室内空気の温度が冷涼な環境下において、在室者(101)の滞在する継続時間が4分を越えると寒さを感じやすいからである。この実施形態1において、第1動作の実行時間(ΔTL)は、例えば4分に設定される。
【0081】
第2動作の実行時間ΔTHは、上記関係式(1)に基づき、覚醒強さの設定に応じて設定される。
【0082】
覚醒強さ「弱」の設定(基準温度Taからの第1目標温度Ts1の下げ幅が1.5℃、基準温度Taからの第2目標温度Ts2の上げ幅が1.5℃、第1動作の実行時間ΔTLが4分、第2動作での目標温度の段階的な上げ幅ΔTrが0.5分である場合)において、第2動作の実行時間ΔTHは、上記関係式(1)より6.5分に設定される。
【0083】
覚醒強さ「中」の設定(基準温度Taからの第1目標温度Ts1の下げ幅が2.0℃、基準温度Taからの第2目標温度Ts2の上げ幅が1.0℃、第1動作の実行時間ΔTLが4分、第2動作での目標温度の段階的な上げ幅ΔTrが0.5分である場合)において、第2動作の実行時間ΔTHは、上記関係式(1)より11.75分に設定される。
【0084】
覚醒強さ「強」の設定(基準温度Taからの第1目標温度Ts1の下げ幅が2.5℃、基準温度Taからの第2目標温度Ts2の上げ幅が0.5℃、第1動作の実行時間ΔTLが4分、第2動作での目標温度の段階的な上げ幅ΔTrが0.5分である場合)において、第2動作の実行時間ΔTHは、上記関係式(1)より27.5分に設定される。
【0085】
−冷房運転時の集中力維持モード−
空調システム(1)による冷房運転時の集中力維持モードは、
図5に示すフローチャートに従って実行される。
【0086】
図5に示すように、冷房運転において、まず、スタートアップ後のステップC−ST01では、リモートコントローラ(9)からの操作信号に基づいて、集中ボタンが押下されたか否かを判定する。このステップC−ST01で集中ボタンが押下されていないと判定した場合(NOの場合)、リターンして当該ステップC−ST01を繰り返し行い、集中ボタンが押下されるのを監視する。
【0087】
また、このステップC−ST01で集中ボタンが押下されたと判定した場合(YESの場合)、次のステップC−ST02に進む。ステップC−ST02では、集中力維持モードの実行を開始する。次いで、ステップC−ST03に進む。また、ステップC−ST03以降のステップと同時に、後述する換気制御が実行される。
【0088】
ステップC−ST03では、各種センサ(45,47,49,51,53,55)の検出信号を読み込み、室内空気の温度、室内空気の湿度、室内の照度、外気温度および外気湿度といった室内および室外の環境情報を取得すると共に、リモートコントローラ(9)による設定情報を読み込み、基準温度に関する在室者(101)の補正情報および覚醒強さの設定情報などを取得する。次いで、ステップC−ST04に進む。
【0089】
ステップC−ST04では、熱的快適性の適応モデルの情報を用い、ステップC−ST03で取得した外気温度に基づいて、在室者(101)の快適温度(中立温度)を推定し、推定した快適温度を基準温度に設定する。このとき、リモートコントローラ(9)により基準温度に関する補正情報が設定されている場合には、その補正情報に基づいて基準温度を補正する。次いで、ステップC−ST05に進む。
【0090】
ステップC−ST05では、ステップC−ST04で設定した基準温度と、ステップC−ST03で取得した覚醒強さの設定情報とに基づいて、第1目標温度および第2目標温度を設定する。なお、第1動作の実行時間ΔTLおよび第2動作の実行時間ΔTHは、ステップC−ST03で取得した覚醒強さの設定情報に基づいて決定される。次いで、ステップC−ST06に進む。
【0091】
ステップC−ST06では、第1動作の実行を開始し、目標温度を第1目標温度に設定する。これにより、室内空気の温度が速やかに下げられて基準温度よりも低くなるから、室内温度を在室者(101)が涼しさを感じる温度として、在室者(101)に覚醒強さの設定に応じた冷涼な刺激を与えられる。次いで、ステップC−ST07に進む。
【0092】
ステップC−ST07では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが再度押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップC−ST07で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する。このステップC−ST07で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップC−ST08に進む。
【0093】
ステップC−ST08では、第1動作の実行時間(ΔTL)が経過しているか否かを判定する。このステップC−ST08で第1動作の実行時間(ΔTL)が経過していないと判定した場合(NOの場合)、ステップC−ST07に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは第1動作の実行時間が経過するまでステップC−ST07とステップC−ST08とを繰り返し行う。また、ステップC−ST08で第1動作の実行時間(ΔTL)が経過していると判定した場合(YESの場合)、ステップC−ST09に進む。
【0094】
ステップC−ST09では、第1動作に代えて第2動作の実行を開始し、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで段階的に上げる。
【0095】
このとき、目標温度が内気温度センサ(45)によって検出される温度よりも第1温度(1.0℃)以上高く設定された場合、室内熱交換器(37)は停止されるが室内ファン(39)は運転する状態になる。そうなると、室内熱交換器(37)に付着した水分が送風によって室内に放たれるため、室内空気の湿度が上がり、在室者(101)に不快感を与え兼ねない。この実施形態1においては、上述の如く、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで30秒毎に0.5℃ずつ徐々に上げるので、内気温度センサ(45)により検出される温度が目標温度よりも第1温度(1.0℃)以上低くなり難く、室内熱交換器(37)が停止するのを抑制できる。
【0096】
次いで、ステップC−ST10では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが再度押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップC−ST10で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する。このステップC−ST10で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップC−ST11に進む。
【0097】
ステップC−ST11では、第2動作の実行時間(ΔTH)が経過しているか否かを判定する。このステップC−ST11で第2動作の実行時間(ΔTH)が経過していないと判定した場合(NOの場合)、ステップC−ST10に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは第2動作の実行時間(ΔTH)が経過するまでステップC−ST10とステップC−ST11とを繰り返し行う。ステップC−ST11で第2動作の実行時間(ΔTH)が経過していると判定した場合(YESの場合)、ステップC−ST06に戻り、第2動作に代えて第1動作の実行を開始する。
【0098】
この冷房運転時の集中力維持モードでの第1動作および第2動作の繰り返し運転は、在室者(101)がリモートコントローラ(9)を操作して当該集中力維持モードを解除するまで実行される。この集中力維持モードの実行によれば、在室者に冷涼な刺激を周期的に与えながら、第1動作および第2動作を1回ずつ行う1サイクルでの総期間における室内空気の平均温度が快適温度に調整される。
【0099】
−暖房運転時の集中力維持モード−
空調システム(1)による暖房運転時の集中力維持モードは、
図6に示すフローチャートに従って実行される。
【0100】
図6に示すように、暖房運転において、まず、スタートアップ後のステップH−ST01では、リモートコントローラ(9)からの操作信号に基づいて、集中ボタンが押下されたか否かを判定する。このステップH−ST01で集中ボタンが押下されていないと判定した場合(NOの場合)、リターンして当該ステップC−ST01を繰り返し行い、集中ボタンが押下されるのを監視する。
【0101】
また、このステップH−ST01で集中ボタンが押下されたと判定した場合(YESの場合)、次のステップH−ST02に進む。ステップC−ST02では、集中力維持モードを開始する。次いで、ステップH−ST03に進む。また、ステップH−ST03以降のステップと同時に、後述する換気制御が実行される。
【0102】
ステップH−ST03では、各種センサ(45,47,49,51,53,55)の検出信号を読み込み、室内空気の温度、室内空気の湿度、室内の照度、外気温度および外気湿度といった室内および室外の環境情報を取得すると共に、リモートコントローラ(9)による設定情報を読み込み、基準温度に関する補正情報および覚醒強さの設定情報などを取得する。次いで、ステップH−ST04に進む。
【0103】
ステップH−ST04では、熱的快適性の適応モデルの情報を用い、ステップH−ST03で取得した外気温度に基づいて、在室者(101)の快適温度(中立温度)を推定し、推定した快適温度を基準温度に設定する。このとき、リモートコントローラ(9)により基準温度に関する補正情報が設定されている場合には、その補正情報に基づいて基準温度を補正する。
【0104】
次いで、ステップH−ST05に進む。ステップH−ST05では、ステップH−ST04で設定した基準温度と、ステップH−ST03で取得した覚醒強さの設定情報とに基づいて、第1目標温度および第2目標温度を設定する。なお、第1動作の実行時間ΔTLおよび第2動作の実行時間ΔTHは、ステップC−ST03で取得した覚醒強さの設定情報に基づいて決定される。次いで、ステップH−ST06に進む。
【0105】
ステップH−ST06では、第1動作の実行を開始し、目標温度を第1目標温度に設定する。
【0106】
このとき、覚醒強さがいずれの強度設定とされていても、第1目標温度が基準温度よりも1.5℃以上低いので、第1動作の実行が開始されて直ぐに、内気温度センサ(45)によって検出される温度が第2目標温度よりも第1温度(1.0℃)以上高くなり、室内熱交換器(37)が停止される。それにより、室内空気の温度が速やかに下げられて基準温度よりも低くなるから、室内空気の温度を在室者(101)が涼しさを感じる温度として、在室者(101)に覚醒強さの設定に応じた冷涼な刺激を与えられる。この第1動作では、内気温度センサ(45)によって検出される温度が第1目標温度にまで到達したら室内熱交換器(37)の運転を再開させる。次いで、ステップH−ST07に進む。
【0107】
ステップH−ST07では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップH−ST07で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する。このステップH−ST07で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップH−ST08に進む。
【0108】
ステップH−ST08では、第1動作の実行時間(ΔTL)が経過しているか否かを判定する。このステップH−ST08で第1動作の実行時間(ΔTL)が経過していないと判定した場合(NOの場合)、ステップH−ST07に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは第1動作の実行時間(ΔTL)が経過するまでステップH−ST07とステップH−ST08とを繰り返し行う。ステップH−ST08で第1動作の実行時間(ΔTL)が経過していると判定した場合(YESの場合)、ステップH−ST09に進む。
【0109】
ステップH−ST09では、第1動作に代えて第2動作の実行を開始し、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで段階的に上げる。
【0110】
このとき、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで急に上げた場合、空調システムの暖房運転により、室内空気の温度が急激に上昇する。室内空気の温度が急激に上昇すると、在室者(101)の血管が拡張されて、身体の放熱が促進されるため、深部体温が低下して、在室者(101)は眠気を感じ易くなる。この実施形態1においては、上述の如く、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで30秒毎に0.5℃ずつ徐々に上げるので、在室者(101)の血管が拡張するのが抑えられて、在室者(101)が眠気を感じ易くなるのを回避できる。
【0111】
次いで、ステップH−ST10では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが再度押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップH−ST10で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する。このステップH−ST10で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップH−ST11に進む。
【0112】
ステップH−ST12では、第2動作の実行時間(ΔTH)が経過しているか否かを判定する。このステップH−ST12で第2動作の実行時間(ΔTH)が経過していないと判定した場合(NOの場合)、ステップH−ST11に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは第2動作の実行時間(ΔTH)が経過するまでステップC−ST11とステップH−ST12とを繰り返し行う。ステップH−ST12で第2動作の実行時間(ΔTH)が経過していると判定した場合(YESの場合)、ステップH−ST06に戻り、第2動作に代えて第1動作の実行を開始する。
【0113】
この暖房運転時の集中力維持モードでの第1動作および第2動作の繰り返し運転は、在室者(101)がリモートコントローラ(9)を操作して当該集中力維持モードを解除するまで実行される。この集中力維持モードの実行によれば、在室者に冷涼な刺激を周期的に与えながら、第1動作および第2動作を1回ずつ行う1サイクルでの総期間における室内空気の平均温度が快適温度に調整される。
【0114】
以上のように、冷房運転時の集中力維持モードでの制御と、暖房運転時の集中力維持モードでの制御とは殆ど同じであるが、冷房運転時の集中力維持モードにおける第1動作は、室内熱交換器(37)を停止せずに行われるのに対し、暖房運転時の集中力維持モードにおける第1動作は、室内熱交換器(37)を停止させて行われる点、冷房運転時の集中力維持モードにおける第2動作は、室内熱交換器(37)の停止を回避するために目標温度を徐々に上げるのに対し、暖房運転時の集中力維持モードにおける第2動作は、在室者(101)が眠気を感じ易くなるのを回避するために目標温度を徐々に上げる点で異なる。
【0115】
<換気制御>
空調システム(1)による換気制御は、
図7に示すフローチャートに従って実行される。
【0116】
図5〜
図7に示すように、換気制御は、冷房運転時の集中力維持モードでのステップC−ST02または暖房運転時の集中力維持モードでのステップH−ST02で、集中力維持モードの実行が開始されると共に実行される。
【0117】
図7に示すように、まず、ステップV−ST01では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが再度押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップV−ST01で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する(
図5および
図6参照)。このステップV−ST01で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップV−ST02に進む。
【0118】
ステップV−ST02では、CO
2濃度センサ(49)によって検出される室内空気のCO
2濃度を取得する。次いで、ステップV−ST03に進む。
【0119】
ステップV−ST03では、室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)以上であるか否かを判定する。このステップV−ST03で室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)未満であると判定した場合(NOの場合)、ステップV−ST01に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)以上になるまでステップV−ST01〜ステップV−ST03を繰り返し行う。
【0120】
また、ステップV−ST03で室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)以上であると判定した場合(YESの場合)、ステップV−ST04に進む。ステップC−ST04では、換気装置(7)の運転を開始する。次いで、ステップV−ST05に進む。
【0121】
ステップV−ST05では、リモートコントローラ(9)で集中ボタンが再度押下されて集中力維持モードが解除されたか否かを判定する。このステップV−ST05で集中力維持モードが解除されたと判定した場合(YESの場合)、集中力維持モードを終了し、通常運転モードに遷移する(
図5および
図6参照)。このステップV−ST05で集中力維持モードが解除されていないと判定した場合(NOの場合)、ステップV−ST06に進む。
【0122】
ステップV−ST06では、CO
2濃度センサ(49)によって検出される室内空気のCO
2濃度を取得する。次いで、ステップV−ST07に進む。
【0123】
ステップV−ST07では、室内空気のCO
2濃度が第2基準値(900ppm)未満であるか否かを判定する。このステップV−ST07で室内空気のCO
2濃度が第2基準値(900ppm)以上であると判定した場合(NOの場合)、ステップV−ST04に戻り、集中力維持モードが解除されるかまたは室内空気のCO
2濃度が第2基準値(900ppm)未満になるまでステップV−ST04〜ステップV−ST07を繰り返し行う。
【0124】
また、ステップV−ST07で室内空気のCO
2濃度が第2基準値(900ppm)未満であると判定した場合(YESの場合)、リターンしてステップV−ST01以降のステップを再度行う。
【0125】
このように換気制御は、集中力維持モードが解除されるまで実行される。この換気制御の実行によれば、室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)以下に調整される。
【0126】
−実施形態1の効果−
この実施形態1の空調システム(1)では、第1動作において目標温度を相対的に短い時間で第1目標温度に下げる。そのことで、室内空気の温度が速やかに下げられて基準温度よりも低くなるから、室内温度を在室者(101)が涼しさを感じる温度にして、在室者(101)に冷涼な刺激を与えられる。これにより、在室者(101)が眠気を感じるのを防止することができる。
【0127】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、第2動作において目標温度を相対的に長い時間をかけて段階的に第2目標温度に上げる。そのことで、室内空気の温度が緩やかに上げられて基準温度よりも高くなるから、温度変化によって在室者(101)にかかる負担を軽減しながら、第1動作を行っている期間と第2動作を行っている期間との総期間における室内空気の平均温度を在室者(101)が快適な温度とすることができる。これにより、在室者(101)が快適な室内環境を実現することができる。
【0128】
したがって、この実施形態1の空調システム(1)によれば、在室者が眠気を感じるのを防止することと、快適な室内環境を実現することとを両立することができる。その結果、在室者の集中力を維持して、在室者の作業効率が悪化するのを抑制することができる。
【0129】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、冷房運転時において、内気温度センサ(45)により検出される温度が目標温度よりも所定の温度以上低くなったときに、室内熱交換器(37)を停止する。しかし、第2動作では、目標温度を第1目標温度から第2目標温度にまで段階的に上げるので、冷房運転時において、内気温度センサ(45)により検出される温度が目標温度よりも所定温度以上低くなり難くし、室内熱交換器(37)が停止されるのを抑制できる。これにより、室内空気の湿度が上がることに起因して在室者(101)に不快感を与えないようにできる。
【0130】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、暖房運転時において、内気温度センサ(45)により検出される温度が目標温度よりも第1温度(1.0℃)以上高くなったときに、室内熱交換器(37)を停止する。第1動作では、目標温度を開始後直ぐに第1目標温度に下げるから、第1目標温度を内気温度センサ(45)によって検出される温度よりも第1温度(1.0℃)以上低く設定される。これにより、第1動作を開始した後に間もなく室内熱交換器(37)が停止されるので、室内空気の温度を速やかに下げるのに寄与する。
【0131】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、快適温度と外気温度との関係を示す関係情報を用いて、外気温度センサ(45)により検出される外気温度から快適温度を推定し、推定した快適温度を基準温度として用いる。これによれば、一般的な快適温度を、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度として推定し、基準温度にすることができる。このことは、第1モードでの室内空気の温度制御により、不特定の在室者(101)が快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0132】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、在室者(101)の個体差に関する情報に基づいて基準温度を補正する。それにより、在室者(101)の個体差に関する情報が基準温度に反映されるので、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度を、精度良く基準温度として用いることができる。このことは、集中力維持モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0133】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、第1動作の目標温度および実行時間と第2動作の目標温度および実行時間が、上記関係式(1)に則り、第1動作を行っている一期間と第2動作を行っている一期間との総期間における室内空気の平均温度が基準温度となるように決定される。このことは、集中力維持モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0134】
また、この実施形態1の空調システム(1)では、CO
2濃度センサ(49)により検出される室内空気のCO
2濃度が第1基準値(1000ppm)以上になったときに、換気装置(7)を運転する。これによれば、必要に応じて室内空気が入れ替えられて室内のCO
2濃度が下がるので、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに好適である。
【0135】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。
【0136】
実施形態2の空調システム(1)は、実施形態1の空調システム(1)において、基準温度の設定方法を変更したものである。ここでは、この実施形態2の空調システム(1)について、実施形態1の空調システム(1)とは異なる点を説明する。
【0137】
空調システム(1)は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いて、基準温度を設定するようになっている。
【0138】
空調システム(1)の記憶部(59)には、室内の温度、室内の湿度、室内の照度、外気の温度および外気の湿度の少なくとも1つを含む環境情報に関するパラメータと、在室者(101)の温冷感に関するパラメータとに基づいて生成された学習モデルが記憶されている。この実施形態2において、学習モデルの環境情報に関するパラメータには、室内の温度、室内の湿度、室内の照度、外気の温度および外気の湿度に関するパラメータを含む。
【0139】
学習モデルは、在室者(101)が空調システム(1)の利用時に、在室者(101)の温冷感の情報をリモートコントローラ(9)の操作で入力することにより、その情報入力時における内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、照度センサ(51)、外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)の各検出値を環境情報のパラメータとして、在室者(101)の温冷感に関するパラメータと関連付けるスタンドアローンの学習により生成されてもよい。
【0140】
学習モデルは、ネットワークを介して複数の空調システム(1)と接続されたサーバにおいて、各空調システム(1)を利用する在室者(101)から収集した、内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、照度センサ(51)、外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)の各検出値と、在室者(101)の温冷感に関する情報とを、それぞれ環境情報のパラメータとそれに対する在室者(101)の温冷感に関するパラメータとして関連付ける学習により生成されてもよい。
【0141】
制御部(11)は、上記学習モデルを用い、内気温度センサ(45)、内気湿度センサ(47)、照度センサ(49)、外気温度センサ(53)および外気湿度センサ(55)により検出される室内の温度、室内の湿度、室内の照度、外気の温度および外気の湿度に基づいて、快適温度を推定する。制御部(11)は、学習モデルにより推定した快適温度を基準温度に設定する。制御部(11)は、必要に応じて基準温度に関する補正情報に基づき、基準温度を補正する。
【0142】
−実施形態2の効果−
この実施形態2の空調システム(1)では、基準温度に用いる快適温度を、環境情報と在室者(101)の温冷感とを関連付けた学習モデルによって推定する。それにより、在室者(101)が快適と感じる室内空気の温度を、快適温度として精度良く推定し、基準温度にすることができる。このことは、集中力維持モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0143】
《その他の実施形態》
上記実施形態1および上記実施形態2については、以下のような構成としてもよい。
【0144】
−第1変形例−
内気温度センサ(45)は、リモートコントローラ(9)に設けられていてもよい。このようにすれば、リモートコントローラ(9)は在室者(101)の近くに置かれることが多いので、在室者(101)の付近での室内空気の温度を検出することができる。このことは、集中力維持モードでの室内空気の温度制御により、在室者(101)にとって快適な室内環境を実現するのに有利である。
【0145】
なお、内気温度センサ(45)は、リモートコントローラ(9)でなくても、室内ユニット(5)とは別部品に設けられていてもよい。また、内気温度センサ(45)に限らず、内気湿度センサ(47)、照度センサ(49)、CO
2濃度センサ(51)も、リモートコントローラ(9)などの、室内ユニット(5)とは別部品に設けられていてもよい。
【0146】
−第2変形例−
実施形態1の空調システム(1)において、基準温度の設定に利用する熱的快適性の適応モデルなどの関係情報や、実施形態2の空調システム(1)において、基準温度の設定に利用する学習モデルは、当該空調システム(1)とネットワークを介して接続されるサーバが保有していてもよい。この場合、空調システム(1)は、関係情報や学習モデルの情報をサーバに要求し、サーバから基準温度の設定に必要な情報を取得すればよい。
【0147】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0148】
例えば、空調システム(1)は、室外ユニット(3)と室内ユニット(5)とが一対一のペア式である場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。空調システム(1)は、室外ユニット(3)に対して室内ユニット(5)が複数設けられるマルチ式であってもよい。
【0149】
集中力維持モードの第1動作では、目標温度を開始後直ぐに第1目標温度に下げるとしたが、これに限らない。集中力維持モードの第1動作では、目標温度を開始後直ぐに第1目標温度に下げなくてもよく、第1動作において目標温度を第1目標温度に下げるまでの時間が、第2動作において目標温度を第2目標温度に上げるまでの時間よりも短ければよい。
【0150】
集中力維持モードの実行時の換気制御では、換気装置(7)を運転させるCO
2濃度の第1基準値として1000ppmを、換気装置(7)を停止させるCO
2濃度の第2基準値として900ppmを例示したが、これに限らない。第1基準値を1000ppmに設定すること、第2基準値を900ppmに設定することは、換気制御を行うための設定の一例に過ぎず、これら第1基準値および第2基準値には、在室者にとって快適な室内環境を実現するのに好適であれば、任意の値を設定することが可能である。