(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
[
参考例]
まず、
図1(A)乃至(C)を参照して、全体構成を説明する。
図1は本発明の参考例に係る飛行体
からの吐出装置を概念的に示すもので、
図1(A)は吐出装置を搭載した飛行体全体の透視図、
図1(B)は飛行体に搭載される吐出装置の断面図、
図1(C)は、(B)をC方向から見た図である。
図1(A)において、100は飛行体を示している。飛行体100は、いわゆるマルチコプタ等の無人航空機であり、機体101は、機体胴部102と、機体胴部102から放射状に延びる4本の腕部103と、離着陸のための脚部107と、を備え、腕部103の先端に、それぞれモータ105を介して4つの回転翼104が設けられている。図示例では、回転翼104が4つのクアッドコプタを例示しているが、3つ(トライコプタ)、6
つ(ヘキサコプタ)等、公知の種々のマルチコプタが適用可能である。機体101のヨー軸は紙面上下方向、ロール軸は紙面左右方向、ピッチ軸は紙面の表裏方向であり、紙面上側の機体101の上方、紙面左側が機体101の前方である。
この飛行体100の機体101の外部、図示例では、機体胴部102の下面に、エアゾール容器を格納した吐出装置1が吐出装置支持部50を介して搭載されている。吐出装置1は長尺体で、長手方向をロール軸方向に向けて配置され、その前端部からノズル15が機体の前方に向けて突出している。
【0010】
吐出装置1は、
図1(B)に示すように、エアゾール容器10を有し、機体101に搭載された状態で、機体101の上からエアゾール容器10の内容物を吐出するものである。吐出される内容物は、液体だけでなく、ガス、空気等の気体、粉体等を吐出するもの、さらに、音(ホーン)等を吐出する場合も含まれる。音の吐出は、たとえば、気体を噴出させる際に音が出るように構成される。
エアゾール容器10は、スリーブ(収容部材)20に収容された状態で機体101に搭載される。スリーブ20には、エアゾール容器10から内容物を吐出させるための吐出駆動部30と、エアゾール容器10を回転させることによって内容物を攪拌する攪拌装置70が内蔵されている。スリーブ20とエアゾール容器10は一体として交換可能であり、以下の説明において、スリーブ20にエアゾール容器10を収容した状態の組立体をエアゾール容器組立体40と呼ぶものとする。以下、各部の構成について説明する。
【0011】
[エアゾール容器について]
エアゾール容器10は、内部に充填された液化ガスや圧縮ガスのガス圧によって、内容物を噴出する容器であり、既存の金属製のエアゾール容器が適用可能であるし、耐圧性を有するプラスチック製の容器を用いることもできる。エアゾール容器10には、吐出方向や吐出形態に応じて流路が形成された各種アクチュエータがステム12に装着される。図示例では、エアゾール容器10のステム12に、フランジ部14bを有するアクチュエータ14を装着した例を示している。アクチュエータ14は、ストレートの吐出流路を備えた直線状の本体部14aと、本体部14aから軸直角方向に張り出すフランジ部14bと、を備えた構成となっている。このアクチュエータ14の本体部14aに連結チューブ16を介して、噴射孔15a(
図1(C)参照)を備えたノズル15が接続されている。内容物を霧状に吐出するか、直線状の噴流として吐出するか、内容物の吐出形態、吐出方向に応じて、適宜選択される。
図示例では、エアゾール容器10を機体101の下面に水平に搭載して使用するので、封入される噴射剤と内容物の形態としては、原液が内袋に収容され、内袋外周と容器本体内周との間に噴射剤が収容された隔離型が用いられる。隔離型であれば、エアゾール容器の姿勢が、横向き(ステムの位置が横)、下向き(ステムの位置が下)であっても吐出可能である。
もっとも、隔離型に限定されるものではなく、吐出時のエアゾール容器10の姿勢が、ステム12が上向きで使用される場合には、ディップチューブを備えた二相系、三相系の容器、ステムが下向きで使用される場合には、ディップチューブを有さない二相系、三相系の容器を適用可能である。
なお、噴射剤としては、一般的な炭化水素(液化石油ガス)(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フッ化炭化水素(HFO−1234ZE)等の液化ガス、二酸化炭素(CO2)、窒素(N
2)、亜酸化窒素(N
2O)等の圧縮ガスが適用可能であるが、火災に対する安全性を考慮すると非引火性のフッ化炭化水素、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素等が好適であり、特に、環境負荷を考慮すると、窒素が好適である。
【0012】
[スリーブ20の構成]
スリーブ20の材料としては、アルミ等の金属、プラスチック、または炭素繊維等の強度の高い軽量の素材で構成される。また、硬質の材料に限らず、軟質の材料、たとえば、
シリコーンゴムやウレタンフォーム等のゴム材料を使用することもでき、要するにエアゾール容器10を収容する収容部の形状を保持することができる各種素材を用いることができる。「スリーブ」の用語は、円筒状のエアゾール容器10が収容される筒状の部材の意味で使用している。
スリーブ20は、エアゾール容器10より大径の円筒状のスリーブ本体21と、スリーブ本体21の一方の端部を覆う第1端部カバー部22と、他方の端部に設けられる第2端部カバー部23とで構成されている。
第1端部カバー部22はスリーブ本体21に対してねじ部を介して着脱可能にねじ込み固定される構成で、第2端部カバー部23はスリーブ本体21に対して取り外し不能に固定されている。第2端部カバー部23とスリーブ本体21が一体であってもよい。
第1端部カバー部22は、ドーム状のカバー本体222と、スリーブ本体21のめねじ部にねじ込まれるねじ筒部223とを備えた構成となっている。カバー本体222は、空力特性を考慮して先端に向かって徐々に小径となるように縮径された、先端が丸みを帯びた円錐状、あるいはドーム状の曲面となっている。このように空力特性のよい形状とすることにより、水平方向の風(横風)の影響が小さくなり、飛行の安定化を図ることができる。
エアゾール容器10の底部側に位置する第2端部カバー部23には、エアゾール容器10を回転駆動する攪拌装置70と、吐出駆動部30が収納されている。この第2端部カバー部23は、一端がスリーブ本体21の後端部(エアゾール容器10の底部側の端部)に固定される筒状部231と、筒状部231の他端を閉塞する端板232とを備えた構成となっている。
【0013】
[エアゾール容器10の支持構造]
スリーブ20の内径はエアゾール容器10の胴部11aの外径よりも大きく、スリーブ20の内壁には、エアゾール容器10を、スリーブ20の壁面から離間させて一定の距離をとって支持する径方向支持部21aが設けられている。径方向支持部21aは、軸方向に複数個所、図示例では3か所に設けられ、エアゾール容器10を、スリーブ20に対して、軸方向の移動は許容し、直交方向の移動は阻止するように支持している。個々の径方向支持部21aについては、
図2(A)に示すように、エアゾール容器10の胴部11aに対して周方向複数個所に部分接触するような支持構造としてもよいし、環状壁で全周を支持するような構成でもよい。エアゾール容器10の径方向の支持方法としては、エアゾール容器10の胴部11aを支持する構成以外に、エアゾール容器10の肩部と底部等の両端部を支持し、胴部11aをスリーブ20の内壁から離間状態に支持することもできる。
また、エアゾール容器10の胴部11aをスリーブ20の内壁と離間させないで支持するようにしてもよいが、スリーブ20の内壁からエアゾール容器10の胴部11aを離間
させることにより、離間スペースに断熱材や蓄熱材を介装することができる。
なお、スリーブ20は密閉構造ではなく、一部が通気する構造でもよい。例えば、網目構造、パンチングなどの構造を適用可能である。このようにすれば、エアゾール吐出時の自己冷却を外気で緩和させること、スリーブ20の軽量化を図れること等の効果がある。
一方、エアゾール容器10の底部11bは、第2端部カバー部23側に配置された攪拌装置70に支持され、エアゾール容器10の頭部側は、第1端部カバー部22に設けられた押圧部材221によって支持されている。
押圧部材221は、第1端部カバー部22の頂部からエアゾール容器10の中心軸方向にステム12に向かって突出する筒状体221aと、筒状体221aの一端に設けられ第1端部カバー部22に固定される端部フランジ部221bと備えている。押圧部材221の筒状体221aの内周には、アクチュエータ14とノズル15を連結する連結チューブ16が軸方向に摺動自在に挿入され、筒状体221aの先端面が、アクチュエータ14のフランジ部14bに当接あるいは近接している。この押圧部材221は、第2端部カバー部23と一体成形してもよい。
【0014】
次に、
図1(D)乃至(F)を参照して、吐出駆動部30と、攪拌装置70について説明する。
吐出駆動部30と攪拌装置70は、第2端部カバー部23内において、エアゾール容器10の底部11bから、エアゾール容器10の容器中心軸Nに沿って後方に向かって、攪拌装置70、吐出駆動部30の順に、直列に配置されている。吐出駆動部30は、第2端部カバー部23に対して固定され、攪拌装置70はエアゾール容器と共に軸方向には移動可能となっている。攪拌装置70はエアゾール容器10の底部11bに連結されてエアゾール容器10を回転駆動し、吐出駆動部30は、攪拌装置70を介して、エアゾール容器10を軸方向に移動させ、内容物の吐出、停止を制御する。
まず、吐出駆動部30について説明する。
吐出駆動部30は、エアゾール容器10を、攪拌装置70を介して、底部11b側から軸方向に押すことによって、エアゾール容器10を軸方向頭部側に移動させるようになっている。エアゾール容器10の移動によって、アクチュエータ14が押圧部材221の筒状体221aに押し付けられ、その反力で、ステム12がエアゾール容器10内に押し込まれ、エアゾール容器10内のバルブ機構が開弁するようになっている。バルブ機構が開弁すると、ガス圧によって内容物が自動的に吐出される。
吐出駆動部30は、回転駆動源であるモータ31と、このモータ31の回転を、攪拌装置70に連結される可動板32bの直線運動に変換するカム機構32と、を有している。モータ31とカム機構32は、第2端部カバー部23に固定されている。カム機構32は、モータ31によって回転駆動されるカム32aと、エアゾール容器10の容器中心軸N方向に直線方向に移動する従動側の可動板32bと、を有し、可動板32bには、カム32aのカム面に沿って移動するカムフォロワ32cが設けられている。図示例のカム32aは卵形の円板カムで、カム32aのカム軸はエアゾール容器10の中心軸に対して直交しており、カム32aの回転が、カムフォロワ32cを介して可動板32bの直線運動に変換される。カム32aは円板カムなので、カム32aにカムフォロワ32cを常時当接させるためのスプリング等の付勢手段が適宜設けられる。
カム32aは、通常は、最小径部分がカムフォロワ32cに当接していて、可動板32bが後退限位置にあり、エアゾール容器10のバルブ機構が閉弁状態で保持されている。モータ31によってカム32aを回転させることで、可動板32bが軸方向に前進する(
図1(D))。すなわち、後退限位置でカムフォロワ32cが当接するカム32aの接触位置は、回転中心からの径が小さく、前進限位置でカムフォロワ32cが当接するカム32aの接触位置は、回転中心から径が大きく設定されている。図示例では、カム32aの最大径部ではなく、最小径部から最大径部への移行部分で開弁するようになっているが、最大径部で開弁するように構成してもよい。
【0015】
[バルブの構成]
図2(B)には、上記吐出駆動部30によって開弁されるエアゾール容器10のバルブ機構13の一例を示している。
すなわち、ステム12には、先端開口部から軸方向に所定寸法延びる吐出流路12aが設けられ、ステム12の側面に弁孔となるステム孔12bが開口しており、このステム孔12bがマウンティングカップ11dの挿通孔の孔縁に装着されたガスケット13aの内周面によって封止されている。
通常は、ガス圧とスプリング13bの付勢力でステム12が突出方向に付勢され、弁体となるガスケット13aの内周縁を軸方向に押圧することで、ガスケット13aの内周面が弁座を構成するステム孔12bの孔縁に密接して閉弁状態に維持されている。
上記した吐出駆動部30のカム機構32によって、可動板32bが前進限に移動すると、エアゾール容器10が第1端部カバー部22側に移動し、フランジ付きのアクチュエータ14のフランジ部14bが押圧部材221の端面に当接し、その反力によってステム12が相対的に容器内方に向かって押し込まれる。ステム12が押し込まれると、ガスケッ
ト13aの内周縁が容器の内方に向けて撓み、ガスケット13aの内周面がステム孔12bの孔縁から離れて開弁し、ガス圧で押された内容物がステム12の吐出流路12aから吐出される。
図示例のバルブ機構13は一例であり、このような構成に限定されるものではなく、通常は閉弁状態を維持し、ステム12を押し込むことによって開弁する種々の構成を適用することができる。
この例では、カム機構32によってモータ31の回転運動を直線運動に変換するようになっているが、カム機構32に限定されるものではなく、たとえば、ねじ送り機構や、ラックとピニオン等、モータ31の回転運動を直線運動に変換する機構であれば適用可能である。また、回転モータではなく、直線駆動用のリニアモータや、電磁ソレノイド等の直線駆動源を用い、運動変換機構を用いることなく、エアゾール容器10を軸方向に移動させる構成とすることもできる。
【0016】
[攪拌装置70]
次に、
図1(D)に戻って、攪拌装置70について説明する。
攪拌装置70は、吐出駆動部30とエアゾール容器10の間に直列に配置されている。この実施形態では、エアゾール容器10を、その中心軸を中心として回転運動させる構成で、エアゾール容器10の底部を所定の保持力で保持する容器保持部72と、容器保持部72を回転駆動するモータ74と、備えている。
容器保持部72は、エアゾール容器10の底部11bに当接する円板部72aと、円板部72aの外径端部からエアゾール容器10の胴部11aの底部側の端部を保持する環状凸部72bと、円板部72aのモータ側の面の中央部に設けられる連結軸部72cとを備えている。環状凸部72bには、容器胴部との摩擦力を高める滑り止め材73が装着されている。モータ74は、出力軸74aがエアゾール容器10の容器中心軸Nに合致するように配置され、容器保持部72に設けられた連結軸部72cに連結されている。モータ74の吐出駆動部30側の端面は、吐出駆動部30の可動板32bに連結されている。
【0017】
[吐出駆動部の3方式]
図1に示した吐出駆動部30は一例であって、吐出駆動部30の構成としては、
図3に示す3つの方式のいずれかを適用することができる。
図3において、スリーブ20については、簡略化して四角で示している。
図3(A)は、スリーブ20に対してエアゾール容器10のアクチュエータ14側を固定し、エアゾール容器10の底部11bに当接する当接部材30Bを駆動部30Aによって押し上げる構成である。
図1の吐出駆動部30は、この方式の一例である。この方式は、ステム12に装着されるアクチュエータ14側は固定されているため、吐出位置精度が高くなる。また、様々な径のエアゾール容器10に対応できる。
図3(B)は、スリーブ20に対してエアゾール容器10を固定し、吐出駆動部30でアクチュエータ14を介してステム12を押し下げる構成である。すなわち、吐出駆動部30は、アクチュエータ14に当接する当接部材30Bを駆動部30Aにて押し下げる方向に駆動する。
このようにすれば、機械機構をエアゾール容器10の片側に集中できるので、コンパクトで交換しやすい構造となる。また、様々な高さのエアゾール容器10に対応できる。
なお、
図3(A)、(B)の駆動部30Aの構成は、直線方向に駆動する機構であればよく、回転モータの回転運動を直線方向に変換するカムやねじ送り機構等の運動変換機構を用いることができるし、回転モータではなく、直線駆動用のリニアモータや、電磁ソレノイド等を用いることができる。
図3(C)は、エアゾール容器10の内部のバルブではなく、外部弁30Cによって制御するようにしたものである。図では、外部弁30Cを概念的に記載したもので、電磁弁等によって開閉駆動する構成とすることができる。外部弁30Cを用いた場合、管路30Dにエアゾール容器10のステム12を接続するだけなので、エアゾール容器10の取付
けが容易で、開閉制御も容易となる。既存のエアゾール容器10を使用する場合には、たとえば、エアゾール容器10を組み付ける際に、ステム12を押し込んで内部のバルブを常時開の状態に保持するように構成する。
【0018】
[電気設備]
次に、
図1(A)に戻って、上記吐出駆動部30及び攪拌装置70を駆動するための電気設備について説明する。
図1(A)には、飛行体に搭載される電気設備について、概念的に記載している。
吐出駆動部30及び攪拌装置70を制御する制御装置である吐出装置制御部210は、飛行体100の飛行を制御する飛行制御部110とは別に設けられており、飛行制御部110と共に、機体101側に設けられている。また、吐出駆動部30及び攪拌装置70を駆動するための吐出装置用電源211が、飛行体100を駆動するための電源(飛行制御部110に組み込まれているものとし、図示せず)とは別に設けられ、機体101側に搭載されている。
また、吐出装置1を遠隔操作するためのアンテナを含む吐出装置用通信部212が、飛行体100を遠隔操作するためのアンテナを含む飛行用通信部112とは別に設けられ、機体101に搭載されている。
吐出装置制御部210、吐出装置用通信部212及び吐出装置用電源211は、飛行制御部110、飛行用通信部112及び飛行用電源の一部、あるいは全てに、その役割を持たせてもよい。
図2(C)は、飛行制御部110に配置されている電源を共用する例である。
【0019】
[機体との支持構造]
吐出装置1を飛行体100の機体101に支持する吐出装置支持部50は、特に図示しないが、たとえば、スライドレールとT形溝のスライド式の嵌合構造、バヨネット結合のような回転方向に掛け外しが可能な構成としてもよいし、ねじ止め、クリップ結合、クランプ等、取り外しと取り付けを容易化した種々の支持手段を適用可能であり、吐出装置支持部50にジンバル等の方向変更装置を備えていてもよい。
また、吐出装置支持部50には、機体101側に配置された吐出装置制御部210及び吐出装置用電源211と吐出駆動部30のモータ31および攪拌装置70のモータ等と電気的に接続する電気接点を設けてもよいし、スリーブ20から機体101に配置されたコネクタにケーブルなどで直接接続してもよい。他にも、スリーブ20内に二次電池などの電源および無線通信機を有し、機体101側に配置された飛行制御部110からの電気信号を無線通信により、スリーブ20内の吐出装置制御部210と送受信してもよい。
【0020】
次に、本発明の飛行体
からの吐出装置の作用について説明する。
[交換作業]
予め、
図1(B)に示すような、スリーブ20内にエアゾール容器10を収容した交換用のエアゾール容器組立体40を準備しておく。交換作業は、吐出装置支持部50からエアゾール容器組立体40を外し、新たなエアゾール容器組立体40を装着する。吐出装置支持部50を、たとえば、工具を使用することなく手動操作で容易に着脱できる構成としておくことにより、容易に交換することができる。交換後のエアゾール容器組立体40は、スリーブ20からエアゾール容器10を取り出し、ガス及び内容物を完全に放出させて廃棄する。スリーブ20は繰り返し利用することができる。また、この実施形態では、スリーブ20を機体101に固定したまま、エアゾール容器10のみを交換することもできる。
【0021】
[撒布作業]
次に、散布作業について、
図4を参照して説明する。
図4(A)は、吐出装置を搭載した飛行体の操縦端末と吐出操作端末の遠隔操作例を示す説明図、(B)は簡単な制御ブロ
ック図である。
撒布作業は、たとえば
図4(A)に示すように、飛行体100の飛行は操縦端末120により遠隔操作され、吐出装置1は、吐出操作端末160により遠隔操作される。操作端末160は飛行体100に搭載されたカメラ106のコントローラとしても使用される。吐出操作端末160には、たとえば、吐出ボタン163、停止ボタン164、攪拌ボタン165及び停止ボタン166が設けられる。
操作者は、吐出ボタン163を押すと吐出操作の前に、攪拌ボタン165を押して、一定時間、エアゾール容器10の内容物を攪拌することで、内容物を良く混ぜて均一化させる。
すなわち、
図4(B)に示すように、攪拌ボタン165を押すと、攪拌指令信号が送信され、飛行体100に搭載された吐出装置用通信部212に受信され、吐出装置制御部210により攪拌装置70が駆動され、エアゾール容器10が回転し、容器内部に内容物の旋回流が生じ、内容物が攪拌される。停止ボタン166を押すと、停止指令信号が送信され、攪拌装置70のモータ74が停止され、攪拌が停止される。
攪拌後、内容物を吐出する。すなわち、ディスプレイ167上の画像を見ながら、吐出ボタン163を押すと、吐出指令信号が送信され、飛行体100に搭載された吐出装置用通信部212に受信され、吐出装置制御部210により吐出駆動部30が駆動し、エアゾール容器10のステム12が押し込まれて内容物が吐出される。停止ボタン164を押すと、停止指令信号が送信され、吐出駆動部30によってステム12の押し込みが開放されて吐出が停止する。
【0022】
攪拌と吐出の関係については、吐出装置制御部210によって、以下のように制御することができる。
・第1の制御例
第1の制御例は、吐出動作を開始する際に、吐出前に、自動的に一定時間攪拌する攪拌工程を実行し、攪拌工程後にエアゾール容器10の内容物を吐出させるように制御する。
すなわち、吐出ボタン163が押され、吐出指令信号が飛行体100の吐出装置用通信部212を介して吐出装置制御部210に入力する。吐出装置制御部210は、攪拌装置70を駆動し、所定時間経過すると攪拌装置70を停止すると共に吐出駆動部30を駆動して吐出動作を開始し、停止ボタン166が押されるまで吐出動作を持続する。停止ボタン164が押されると、停止指令信号が吐出装置用通信部212を介して吐出装置制御部210に入力され、吐出装置制御部210から吐出停止信号が出力され、吐出駆動部30を停止動作させて吐出を停止する。
吐出装置制御部210は、特に図示しないが、ハードウェア資源であるCPU、メモリ、インターフェース等を有し、CPUがメモリに記憶されたプログラムを読み出して、上記一連の手順を実行する。
【0023】
・第2の制御例
第2の制御例としては、エアゾール容器内の内容物を攪拌する攪拌工程中に、エアゾール容器の内容物を吐出させる。
すなわち、吐出ボタン163が押され、吐出指令信号が飛行体100の吐出装置用通信部212を介して吐出装置制御部210に入力する。吐出装置制御部210は、まず、攪拌装置70を駆動する。所定時間経過すると攪拌装置70を停止せず吐出駆動部30を駆動して吐出動作を開始し、停止ボタン166が押されるまで吐出動作を持続する。これによって、攪拌工程中にエアゾール容器の内容物が吐出される。
そして、停止ボタン164が押されると、停止指令信号が吐出装置用通信部212を介して吐出装置制御部210に入力され、吐出装置制御部210から吐出停止信号が出力され、吐出駆動部30を停止動作させて吐出を停止する。
この吐出装置制御部210で実行される一連の手順が、予め、プログラムとしてメモリに記憶しておくことによって、自動的に処理することができる。
なお、この実施形態1では、攪拌装置70はエアゾール容器10を回転させる構成で、エアゾール容器10を回転させながら軸方向に移動させてアクチュエータ14のフランジ部14bを押圧部材221に押し付けるので、接触部に摩擦トルクが発生する。しかし、攪拌装置70の容器保持部とエアゾール容器10の底部11bとの摩擦保持トルクを大きくしておけば、回転させながら吐出させることが可能である。
【0024】
第3の制御例
第3の制御例としては、複数回の吐出を、間隔をあけて連続的に行うように制御する。すなわち、攪拌、吐出、攪拌、吐出を、繰り返し連続的に行う。
吐出ボタン163が押され、吐出指令信号が飛行体100の吐出装置用通信部212を介して吐出装置制御部210に入力すると、攪拌装置70を駆動し、所定時間経過すると攪拌装置70を停止させると共に吐出駆動部30を駆動して吐出動作を開始する。さらに、所定時間経過すると、吐出駆動部30を停止動作させると共に、再び攪拌装置70を駆動して攪拌する。この攪拌、吐出の手順を、停止ボタン166が押されるまで繰り返し、停止ボタン166が押されると停止する。
このようにすれば、吐出される内容物を、より均質に保つことができる。
また、吐出と停止の切り替えは、ボタン等の操作部の手動操作だけでなく、予め記憶されたプログラムに従って、自動的に切り替えることもできる。たとえば、飛行航路を予めプログラムしておいて、GPSからの信号によって、地図上の位置及び高度計によって高さを検出し、所定の位置に達すると吐出を開始し、所定のエリアの吐出が終了すると吐出を停止するようにすることもでき、この吐出動作の前に攪拌工程を組み込むようにすればよい。
【0025】
次に、本発明の吐出装置の実施形態について説明する。以下の説明では上記
参考例と異なる部分についてのみ説明するものとし、同一の構成部分については、同一の符号を付して説明は省略するものとする。
[実施形態
1]
図5は、本発明の実施形態
1に係る飛行体
からの吐出装置を示している。
図5(A)は、飛行体
からの吐出装置の断面図、(B)及び(C)は主要構成を示す図であり、(B)は、攪拌工程の説明図、(C)は、吐出工程の説明図である。
この実施形態
1では、
図5(A)に示すように、攪拌装置270は、エアゾール容器10の容器中心軸Nをモータ271の回転中心軸Mに対して偏心させ、エアゾール容器10を回転中心軸Mに対して振れ回り(旋回)させることにより内容物を攪拌する構成となっている点で、
参考例と相違する。
すなわち、
図5(B)に示すように、攪拌装置270のモータ271によって回転駆動される動力伝達板275の回転中心軸Mが、スリーブ20の中心軸に合致しており、この回転中心軸Mと、軸直角方向に所定距離だけ離れた偏心位置に、容器保持部72の連結軸部72cが連結されている。この連結軸部72cはエアゾール容器10の容器中心軸Nと一致しており、エアゾール容器10の容器中心軸Nは回転中心軸Mから所定距離だけ偏心する構成となっている。
一方、エアゾール容器10の頭部側においては、ステム12が回転中心軸Mから偏心しているので、ステム12及びステム12に連結されるアクチュエータ14の本体部14a、および本体部14aに接続される連結チューブ16も旋回するので、押圧部材2221の筒状体2221aが、旋回部分と干渉しないように拡径され、第1端部カバー部22に固定される筒状体2221aの端部に、筒状体2221aの孔径を、連結チューブ16の外径程度に絞った内向きフランジ部2221bとを備えている。
また、アクチュエータ14のフランジ部14bを幅広し、押圧部材2221の筒状体2221aとの当接範囲を拡大して、軸方向の保持を可能としている。また、連結チューブ16の、押圧部材2221の筒状体2221aに挿入されたチューブの端部は、内向きフランジ部2221bによって、回転中心軸M上に保持された部分から、アクチュエータ1
4の本体部14aとの接続端に向かって傾斜するように曲げられている。
【0026】
攪拌工程
攪拌する際には、
図5(B)に示すように、
参考例と同様、吐出駆動部30による吐出動作はせず、すなわち、可動板32bが後退限位置にあり、エアゾール容器10が閉弁状態を維持した状態で、攪拌装置270のモータ271を回転駆動させる。モータ271を回転させると、動力伝達板275、連結軸部72cを介して、エアゾール容器10は、回転中心軸Mの回りを旋回し、内容物を攪拌する。この実施形態
1の場合、エアゾール容器10は自転せず、旋回するだけであり、アクチュエータ14及び連結チューブ16のアクチュエータ14との接続端部も旋回する。連結チューブ16については、押圧部材2221の内向きフランジ部2221bと接触部を中心に、アクチュエータ14との接続端部がすりこぎ運動をし、スリーブ20から外に突出した部分は、回転中心軸上の位置に保持される。
吐出工程
吐出工程では、
図5(C)に示すように、攪拌装置270を停止し、吐出駆動部30を動作させる。すなわち、吐出モータ31によってカム32aを回転させることで、エアゾール容器10を、軸方向前方に向かって前進させる。このエアゾール容器10の移動によって、ステム12に装着されたアクチュエータ14が押圧部材2221の筒状体によって保持されたアクチュエータ14側に向かって、軸方向に移動させる。そして、アクチュエータ14側からの反力によって、ステム12をエアゾール容器10内に押し込み、開弁させ、内容物が吐出される。
【0027】
[実施形態
2]
図6は、本発明の実施形態
2に係る飛行体
からの吐出装置を示している。
図6(A)は、吐出装置の断面図、(B)は吐出装置の主要構成示す図、(C)は攪拌工程の説明図、(D)は吐出工程の説明図である。
この実施形態
2では、攪拌装置370は、エアゾール容器を往復運動させることにより内容物を攪拌する構成となっている点で、
参考例と相違する。
すなわち、
図6(A)及び(B)に示すように、攪拌装置370は、第2端部カバー部23内において、吐出駆動部30とエアゾール容器10の間に、直列的に配置されている。吐出駆動部30のフレーム301は、スリーブ20の第2端部カバー部23に固定され、攪拌装置370を介してエアゾール容器10に接続され、エアゾール容器10を、攪拌装置370を介して、所定の吐出ストローク(容器内のバルブの開弁させるストローク)だけ駆動する。一方、攪拌装置370は、吐出駆動部30の吐出動作前の状態、すなわちエアゾール容器10が閉弁状態で、吐出ストロークに達しない範囲で、エアゾール容器10を往復駆動させる構成となっている。
攪拌装置370は、軸方向に可動の可動フレーム371を有し、この可動フレーム371に吐出駆動部30の可動板32bが連結されている。可動フレーム371には、回転駆動源であるモータ―372と、モータ372の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構であるカム機構373が取り付けられ、カム機構373によってエアゾール容器10を保持する容器保持部72を直線移動させる。
カム機構373は、吐出駆動部30と同様に、モータ372によって回転駆動されるカム373aと、カム373aの回転によって直線方向に移動するカムフォロワ373bを備え、カムフォロワ373bが、容器保持部72に連結されている。
攪拌工程
攪拌工程では、
図6(B),(C)に示すように、吐出駆動部30のカム32aが非吐
出位置で(閉弁位置)、攪拌装置370を駆動する。
攪拌装置370を駆動すると、モータ372によってカム373aが回転し、カムフォロワ373b、容器保持部374を介して、エアゾール容器10が往復移動する。これによって、エアゾール容器10内の内容物は、軸方向に揺すられて攪拌される。所定時間攪
拌した後、攪拌を停止する。停止状態では、攪拌装置のカムの最小径部分にカムフォロワ373bが当接する。
吐出工程
吐出工程では、
図6(D)に示すように、攪拌装置370は停止した状態で、吐出駆動部30のモータ31によってカム32aが回転駆動し、カムフォロワ32cを介して可動板32bが直線駆動され、可動板32bによって攪拌装置370を介してエアゾール容器10が直線移動し、ステム12が、アクチュエータ14によって所定量押し込まれ、内容物が吐出される。
【0028】
実施形態
2の変形例
図7には、実施形態
2の変形例を示している。
図7(A)は飛行体
からの吐出装置の断面図、(B)は主要構成を示す図、(C)は攪拌工程の説明図、(D)は(B)の吐出工程の説明図である。
この実施形態
2では、実施形態
1のカム機構の攪拌装置を省略し、吐出駆動部330のカム機構を攪拌装置として利用したものである。
図7(A)及び(B)に示すように、吐出駆動部330の構成は、
参考例及び
実施形態1の吐出駆動部30と同様に、回転駆動源であるモータ31と、このモータ31の回転を、攪拌装置70に連結される可動板32bの直線運動に変換するカム機構32と、を有している。モータ31とカム機構32は、第2端部カバー部23に固定されたフレーム301に組付けられている。カム機構32は、モータ31によって回転駆動されるカム32aと、エアゾール容器10の底部11bを支持する容器保持部72によって構成され、容器保持部72には、カム32aのカム面に沿って移動するカムフォロワ32cが設けられている。
攪拌工程では、
図7(C)に示すように、吐出駆動部30のカム32aの回転角度θ1を小さくし、エアゾール容器のストロークを吐出ストロークよりも短い範囲で往復させ、内容物を吐出させることなく振動させて攪拌する。
一方、吐出時には、
図7(D)に示すように、吐出駆動部30のカム32aの回転角度θ2を大きくして、エアゾール容器の吐出ストロークだけ移動させ、吐出動作を行うように制御する。
このようなカム32aの駆動は、吐出装置制御部210によって行われる。すなわち、攪拌工程でのカム32aに回転角度θ2と、吐出工程でのカム32aの回転角度θ1を予め設定しておき、カム32aを回転するモータ31の駆動を制御する。カム32aの回転角度は、たとえば、モータ31に内蔵のロータリーエンコーダによって原点位置からの回転角度を検出して制御する。
【0029】
[実施形態
3]
図8は、本発明の実施形態
3に係る飛行体
からの吐出装置を示すもので、(A)は吐出装置の断面図、(B)は攪拌工程の説明図、(C)は(B)のエアゾール容器を中心軸方向から見た図である。
この実施形態
3では、エアゾール容器10を揺動させることにより内容物を攪拌する構成となっている。
図8(A)及び(B)に示すように、基本的な構成は、実施形態
1と同一である。相違点は、実施形態
1と異なり、モータ31を連続回転させず、
図8(C)に示すように、360°以下の揺動角度θ4の範囲で、回転方向を反転させる揺動モードを備えた構成となっている。このように、回転方向に反転運動を繰り返すことで、旋回流が反転し、効率的に攪拌することができる。
モータ31の制御は、たとえばモータ31に内蔵のロータリーエンコーダによって原点位置Oからの回転角度を検出し、所定角度ごとにモータを逆転させるように制御する。
【0030】
[実施形態
4]
図9は、本発明の実施形態
4に係る飛行体
からの吐出装置を示すもので、(A)は吐出装置の断面図、(B)は攪拌工程の説明図、(C)は吐出工程の説明図である。
この実施形態
4では、攪拌装置570は、エアゾール容器を振動子である超音波振動子572により加振することによって内容物を振動させ攪拌する構成となっている。
この例は、吐出駆動部30のエアゾール容器10を保持する容器保持部72に、エアゾール容器10の胴部11aを所定長さ保持する筒状部574を設け、この筒状部574の内周に超音波振動子572を配置し、超音波振動子572をエアゾール容器10の胴部11aに接触させたものである。超音波振動子572を用いれば、内容物が分子レベルで加速化され、攪拌効果が高い。
攪拌工程
攪拌工程では、
図9(B)に示すように、吐出駆動部30が吐出停止状態で超音波振動子572を振動させ、内容物を攪拌する。
吐出工程
吐出工程では、
図9(C)に示すように、超音波振動子572を停止した状態で、
参考例と同様に、吐出駆動部30を駆動してエアゾール容器10を軸方向に移動させ、内容物が吐出される。
【0031】
[実施形態
5]
図10は、本発明の実施形態
5に係る飛行体
からの吐出装置の断面図である。
この実施形態
5では、吐出駆動部30の構成は、
参考例と同様であり、攪拌装置670が、エアゾール容器10をスリーブ20に収納したエアゾール容器組立体40全体を揺動する構成となっている点で相違する。
すなわち、スリーブ20を、飛行体の機体下面に対して、固定支点671と、可動支点672の2点で支持し、固定支点671を中心に揺動可能としたものである。可動支点672は、機体101に設けられた駆動板673の偏心軸674と、リンク675を介して連結され、駆動板673を不図示のモータによって回転駆動することによって、可動支点672を揺動させる構成となっている。
エアゾール容器10を揺動させると、ノズル15の向きが変化するので、吐出時には、一定の方向、たとえば、水平方向となるように設定される。
【0032】
[実施形態
6]
図11は、本発明の実施形態
6に係る飛行体
からの吐出装置を示すもので、(A)は吐出装置の断面図、(B)は攪拌工程の説明図である。
この実施形態
6は、
図11(A)及び(B)に示すように、基本的な構成は、実施形態
1と同一である。相違点は、攪拌装置270により攪拌することで起こる反力を相殺する手段を設けた例である。
具体的には、攪拌装置270の動力伝達板275に、偏心回転時に生じる反力を相殺する重り(バランスウェイト)278を設けたものである。
すなわち、エアゾール容器10は、回転中心軸Mに対して旋回するので、その遠心力が飛行体100に作用して飛行体100が移動してしまう。そこで、動力伝達板275の、回転中心軸Mに対して、連結軸と対称位置に、エアゾール容器10に作用する遠心力とバランスをとるように、重り278を配置した。重り278の位置および質量は、エアゾール容器10に作用する遠心力とバランスをとるように、適宜選択される。
このようにすれば、偏心させた状態でも、飛行体に対して作用する反力を相殺し飛行体を安定させることができる。
【0033】
[実施形態
7]
図12は、本発明の実施形態
7に係る飛行体
からの吐出装置の断面図である。
この実施形態
7は、基本的な構成は、実施形態
5と同一である。相違点は、攪拌装置670と共に、エアゾール容器10を加熱するための加熱手段である温度調節装置80を設
けた例である。
この温度調節装置80は、エアゾール容器10の温度が低い場合に、エアゾール容器10を加熱し、攪拌効果を高めるために設けられる。
この例では、温度調節装置80は、エアゾール容器10の胴部11aにコイル状に巻き
付けられた熱媒体パイプ81と、水等の熱媒体を貯留するリザーバ82と、リザーバ82内の熱媒体を熱媒体パイプ81内に供給しリザーバ82に戻して循環させるポンプ83と、リザーバ82内の熱媒体を加熱、冷却するペルチェ素子84と、エアゾール容器10の温度を検知する温度センサ85とを備えている。また、冷却が必要な場合に、ペルチェ素子84からの熱を放熱するためのヒートシンク86と、ヒートシンク86の熱の冷却させるためのファン87とを備えている。
熱媒体パイプ81は、伸縮性のある熱伝導性に富む材質でできていて、パイプ同士が連結しあって筒状の構造体となっているのが好適である。 ペルチェ素子84は、電極の反転によって冷却加熱の切り替えが可能である。
本実施形態では、撹拌時に温度センサ85によって検知されたエアゾール容器10の温度が、所定温度以下の場合に、ペルチェ素子84に電流を流してリザーバ82内の熱媒体を加熱し、ポンプ83を駆動して熱媒体パイプ81内に加熱された熱媒体を循環させる。熱媒体パイプ81を流れる熱媒体によってエアゾール容器10が加熱される。
加熱された状態で、攪拌装置670により、エアゾール容器組立体40全体を揺動することによって、内容物の攪拌する。このように、温度調節装置80を設けておけば、環境温度が低い場合でも、温度調節装置80によって加熱した状態で攪拌することにより、攪拌効率を高めることができる。
このエアゾール容器10の温度調節は、環境温度によって冷えている場合だけでなく、吐出時の気化熱等による温度低下に対しても、有効である。
また、この温度調節装置80の場合、ペルチェ素子84を用いているので、温度が高くなり過ぎた場合には、冷却することもできる。
この実施形態
7では、温度調節装置80を実施形態6の攪拌装置670と組み合わせた例について説明したが、たとえば、
参考例(
図1)、実施形態
2(
図6、
図7)、実施形態
3(
図7)、実施形態
5(
図9)についても適用可能である。
また、加熱手段として、特に図示しないが、エアゾール容器10に、ジュール熱によって発熱するフィルムヒータを巻き付けたり、鉄粉等の酸化熱を利用した発熱体を巻き付けるようにすれば、上記実施形態
1(
図5)、実施形態
4(
図8)、実施形態
6(
図10)のようにエアゾール容器が旋回するような構成でも適用可能であり、攪拌装置に応じて、種々の加熱手段を選択すればよい。
【0034】
その他の実施形態
上記実施形態1乃至
7では、飛行体100の機体101に対してエアゾール容器10を
偏心回転、往復、揺動、振動等、相対運動させてエアゾール容器10の内容物の慣性力に変動を加え、内容物を攪拌する構成となっているが、機体101自体を回転、往復、揺動等させて、エアゾール容器10の内容物を攪拌するようにしてもよい。すなわち、飛行モードの中に、攪拌モードを設け、攪拌モードを実行すると、回転翼の各モータを制御して、一定時間、攪拌動作を行う。たとえば、ヨー軸を中心に回転させれば、エアゾール容器をヨー軸を中心に旋回させることができ、回転と逆回転を繰り返せば揺動させることができ、前進、後退を繰り返せば、エアゾール容器を往復させることができる。このような運動を、攪拌モードとして、予めプログラムしておいて、攪拌ボタンを押すと、攪拌モードを実行させることにより、攪拌動作を行わせることができる。この場合は、飛行体の飛行制御部が攪拌手段を構成する。
【0035】
なお、上記実施形態では、エアゾール容器をスリーブに格納して飛行体に搭載しているが、必ずしもスリーブに格納して搭載する必要はなく、たとえば、胴部を把持する把持手
段によって、エアゾール容器を飛行体に搭載するようになっていてもよい。すなわち、エアゾール容器が、外部空間に露出した状態で飛行体に搭載され、攪拌装置がエアゾール容器を運動させて内容物を攪拌するように構成される。攪拌装置としては、
偏心回転、旋回、往復、振動、揺動等の機構を把持手段との間で適宜選択することができる。
【0036】
また、上記各実施形態では、液体物噴出装置が搭載される飛行体としてマルチコプタを使用する例について説明したが、本発明の移動体
からの吐出装置は、ヘリコプターにも適用できるし、回転翼(ロータ)を用いる飛行体だけではなく、固定翼機、飛行船、滑空機等の無人航空機に適用することができるし、無人に限らず有人航空機にも適用可能である。また、飛行体に限らず、軌道上を走行する車両、路面を走行するような車両、水上を移動する船、水中を移動する潜水艦等、無人あるいは有人の各種移動体に広く適用することができる。