(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、照明装置の一態様として投光装置を例示する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は本実施形態に係る投光装置1の構成を示す斜視図である。
図2は投光装置1の構成を示す図であり、
図2(A)は正面図、
図2(B)は背面図、
図2(C)は側面図、
図2(D)は底面図である。
投光装置1は、照射対象に照明光をあてて投光照明する照明装置であり、装置本体2と、当該装置本体2を支持する取付アーム4と、を備えている。
装置本体2は、出射口6Aが正面(前面)に開口した概略円筒状の筐体6と、当該出射口6Aを覆う前面カバー8と、を備えている。本実施形態では、筐体6は、熱伝導率が高い例えばアルミニウムを用いたダイキャスト成型によって形成されている。筐体6の背面部6Bは、
図2(C)に示すように、背後に向かって膨出し、その表面には多数の通気孔9が形成されている。
取付アーム4は、投光装置1の設置箇所に取り付けられ、また装置本体2を傾動自在に支持することで、投光装置1の取付角度が変更自在になっている。
【0029】
図3は
図2(A)におけるIII−III線の断面図である。
図4は
図2(A)において反射鏡ユニット10を除いた状態の投光装置1を示す図である。
投光装置1は、
図3、及び
図4に示すように、反射鏡ユニット10と、複数のレーザー光源ユニット12と、蛍光部材14と、が装置本体2に設けられている。
反射鏡ユニット10は、凹状の反射面10Aを有する反射型光学部材である。本実施形態では、反射面10Aは焦点fを基準に光学設計された放物面であり、焦点fから出る光を、反射面10Aの光軸Kに平行に反射する。本実施形態の反射鏡ユニット10は、底部側が分離可能に構成されているが、これについては後述する。
【0030】
レーザー光源ユニット12のそれぞれは、レーザー光R(
図5)を出射するレーザー光出射手段であり、レーザー光源17と、レンズ18と、放熱部材19と、を備えている。
レーザー光源17は、レーザー光Rを出射する部材であり、本実施形態のレーザー光源17には、青色のレーザー光Rを出力する半導体レーザー(いわゆるレーザーダイオード(LD))が用いられている。
レンズ18は、レーザー光源17のレーザー光Rを制御する光学素子である。本実施形態のレンズ18は、反射面10Aの焦点fにレーザー光Rを集光する。
放熱部材19は、レーザー光源17の熱を放熱するヒートシンク部材であり、多数の放熱フィンを備えている。
これらのレーザー光源ユニット12は、
図4に示すように、筐体6の通気孔9に放熱部材19を対面させた状態で配置され、レーザー光源17が効率良く冷却されるようになっている。
なお、レーザー光源17のそれぞれには、ファイバーレーザーを用いてもよい。また、レーザー光源17のそれぞれには、1つのレーザー光源のレーザー光を複数に分岐する光分岐回路の各分岐路の出射端を用いることもできる。
【0031】
蛍光部材14は、
図5に示すように、励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体20と、この蛍光体20を保持する蛍光保持部22と、を備え、蛍光体20を反射面10Aの焦点fに位置させて配置されている。
本実施形態の蛍光体20には、YAG−Ce単結晶が用いられている。YAG−Ce単結晶は、Ceが添加されたYAG(Y
3Al
5O
12)単結晶であり、青色の励起光によって励起されて黄色の蛍光を発する蛍光体である。YAG−Ce単結晶は、温度変化に対する蛍光光量の変化(特に、温度上昇に伴う蛍光光量の低下)が小さな特性を有する。したがって、複数のレーザー光Rの照射によって蛍光体20の温度が上昇した場合でも、照明に十分な蛍光光量が維持される。
【0032】
蛍光保持部22は薄い円筒状を成し、蛍光保持部22に保持されている。この蛍光保持部22は、反射鏡ユニット10(反射面10A)の開放面10Bに沿って延びる細い棒状の支持バー26(
図4)に支持されている。この支持バー26は、高熱伝導性材(本実施形態では、アルミニウム材)から形成されており、その端部26Aは、反射鏡ユニット10の開放縁部10Cに設けられた支持部材取付部28に保持されている。この支持部材取付部28も、支持バー26と同様に、高熱伝導性材(本実施形態では、アルミニウム材)から形成されている。
【0033】
この蛍光保持部22は、平面状の反射面である平面反射面22Aを有し、この平面反射面22Aに蛍光体20が保持されている。蛍光体20にレーザー光Rが励起光として照射された場合、蛍光体20のレーザー照射箇所E(
図6)では、蛍光体20を透過したレーザー光Rが平面反射面22Aによって反射面10Aの側に反射される。この結果、反射面10Aの側に平面反射面22Aによって反射されたレーザー光Rと蛍光との混合光がレーザー照射箇所Eから発せられることになる。本実施形態では、レーザー光Rが青色であり、蛍光が黄色なので、混合光は白色光となる。また、この蛍光部材14では、レーザー照射箇所Eが発する白色光の配光は、蛍光体20へのレーザー光の入射角α(
図5)によらず、概ねランバート配光となっている。
【0034】
また、
図4に示すように、光軸Kの方向からみたレーザー光源ユニット12の配置は、レーザー光源ユニット12のいずれについても、反射面10Aの光軸Kを挟んだ対向位置Mに他のレーザー光源ユニット12が位置しない配置となっている。
この配置により、蛍光部材14の平面反射面22Aで反射面10Aの側に正反射されたレーザー光Rによって、いずれかのレーザー光源ユニット12が照射されてしまうことがない。
【0035】
図5は、反射鏡ユニット10、レーザー光源ユニット12、及び蛍光部材14のレイアウト図である。なお、同図において、レーザー光源ユニット12が備える放熱部材19を省略している。
【0036】
同図に示すように、反射鏡ユニット10は、内側に上記反射面10Aが設けられたカップ状(凹体形状)に形成されており、レーザー光源ユニット12のそれぞれは、蛍光部材14からみて反射面10Aの裏側の位置(反射面10Aに隠れた位置)に配置されている。反射鏡ユニット10の反射面10Aの内には、
図1、及び
図5に示すように、表裏に貫通する孔部16が形成されている。孔部16は、レーザー光源ユニット12から焦点fに向かって照射されたレーザー光Rを通す光透過部である。本実施形態では、孔部16は、
図1、及び
図2(A)に示すように、光軸Kを中心とした円環のスリット状に形成されている。なお、本実施形態の反射鏡ユニット10は、この円環のスリット状の孔部16によって分離可能に分割されている。
【0037】
焦点fには、上述の通り、蛍光部材14の蛍光体20が配置されており、また、各レーザー光源ユニット12が焦点fにレーザー光Rを照射する。これにより、蛍光体20のレーザー照射箇所E、すなわち焦点fにおいて、ランバート配光の白色光の発光が生じる。そして、焦点fに生じた白色光が反射面10Aに入射し、当該反射面10Aによって制御されることで光軸Kに略平行な平行光となり、この平行光が照明光として出射される。
【0038】
一般に、焦点fでの発光が点光源に近くなるほど、照明光の平行度が高くなり、例えば100メートル以上先といった遠方での照明光の拡がりが抑えられるので、当該遠方の照射対象を高照度で照明することが可能になる。そこで本実施形態では、次のようにして、焦点fでの発光を点光源に近付け、遠方での拡がりを抑えている。
【0039】
すなわち、レーザー光源ユニット12のそれぞれには、上述の通り、レンズ18が設けられている。レンズ18は、焦点fにレーザー光Rを集光する集光レンズである。本実施形態のレンズ18は、焦点fでの照射スポット径を、光学設計において点光源とみなせる大きさ以下としており、焦点fでの発光が、光学設計において点光源とみなせるようになっている。
【0040】
さらに、
図5に示すように、レーザー光源ユニット12のそれぞれは、反射面10Aの光軸Kに垂直な同一の平面Qに配置されている。この配置によれば、焦点fから同じ距離、及び、同じ角度でレーザー光源ユニット12のそれぞれが配置される。
これにより、焦点fでのレーザー光源ユニット12のそれぞれの照射スポット形状G(
図6)のばらつきが抑えられる。そして、焦点fでは、略同一形状の照射スポット形状G、及び照射スポット径でレーザー光Rが重なるので、これらが重なってできる照射スポット形状Gのぼけも抑えられ、レーザー光Rの重なりによって照射スポット径が拡がってしまう事もない。すなわち、複数のレーザー光源ユニット12のレーザー光が焦点fに照射されても、焦点fでの照射スポット径の拡がりが抑えられるので、焦点fでの発光のサイズは、1つのレーザー光Rを照射したときの発光のサイズと同程度に抑えられる。これにより、焦点fでの発光のサイズが、点光源とみなせる程度の大きさに維持される。
また、本実施形態のレーザー光源ユニット12の配置によれば、レンズ18のそれぞれにも同一のものが用いられるので、コスト削減も図られる。
【0041】
ここで、反射面10Aの焦点fに配置された蛍光部材14には、レーザー光Rが光軸Kに対し所定の入射角αで入射される。入射角αは、ゼロ度に近づくほど、レーザー光源ユニット12が光軸Kに集まって配置され、入射角αが10度以下になると、これらの配置が困難となる。一方で入射角αが大きくなるほど、レーザー照射箇所Eでの照射スポット形状Gが延びるので発光のサイズが大きくなり、入射角αが60度以上になると、発光のサイズが、光学設計において点光源とみなせる大きさを超えてしまう。
そこで、投光装置1では、レーザー光Rが10度〜60度の範囲の入射角α(本実施形態では、入射角α=45度)で蛍光部材14に照射されている。
【0042】
図6は、レーザー光源ユニット12のレーザー光Rの光束断面形状Tと、照射スポット形状Gとの関係を説明するための図である。
本実施形態のレーザー光源ユニット12が出射するレーザー光Rは、光束断面形状Tが真円ではなく、
図6に示すように、短手方向D1を有した形状になっている。なお、光束断面形状Tは、レーザー光Rの進行方向に垂直な垂直断面C1内における当該レーザー光Rのビーム形状である。
一方、レーザー光Rを蛍光体20に入射角αで斜めに入射させた場合、レーザー照射箇所Eには光束断面形状Tが斜投影されるので、照射スポット形状Gは、レーザー光Rの進行方向からみて光軸Kが位置する方向Hに光束断面形状Tが伸びるように変形した形状となる。このとき、光束断面形状Tが短手方向D1に伸びれば、他の方向(特に、光束断面形状Tの長手方向D2)に伸びる場合よりも、照射スポット形状Gの短手方向の長さが、長手方向の長さに近付けられるので、レンズ18で集光したときの照射スポット径を小さくできる。
そこで、本実施形態では、蛍光体20の照射箇所への斜投影によりレーザー光Rの光束断面形状Tが短手方向D1に変形する姿勢でレーザー光源ユニット12のそれぞれが配置されている。
【0043】
さて、上述の通り、本実施形態の反射鏡ユニット10は、円環のスリット状の孔部16によって分割され、底部が分離可能に構成されている。具体的には、
図3に示すように、反射鏡ユニット10は、底部側の底部側ユニット52と、開放縁部10Cを含む上部側ユニット54とに分割されている。底部側ユニット52の背後には、光軸Kに平行に引き出し操作自在な操作バー56が連結されている。
この操作バー56を背後側に引き出すことで、底部側ユニット52が光軸Kに沿って、装置本体2の背面部6Bの側、すなわち、焦点fから遠ざかる方向に移動する。底部側ユニット52が焦点fから遠ざかることで、この底部側ユニット52の反射面10Aで反射する光は非平行光となり、照明光の配光が可変される。
【0044】
本実施形態では、反射面10Aが放物面なので、底部側ユニット52の背後側への移動量が大きくなるほど、この底部側ユニット52の反射面10Aで反射した光は、光軸Kに対して大きなビーム角で拡がる光となる。これにより、照明光のビーム角を、略平行光から所定の角度の間で可変することができようになる。
【0045】
図7は、投光装置1の配光特性として、当該投光装置1のビーム角特性を示す図である。なお、同図では、ビーク角特性として、投光装置1の1/2照度角度、及び1/10照度角度が用いられている。
同図に示すように、本実施形態の投光装置1は、反射鏡ユニット10の底部側ユニット52の移動量がゼロ(mm)の場合、1/2照度角度が1.0(度)であり、略平行光に近い照明光が得られている。そして、底部側ユニット52の背後側への移動量が大きくなるほど、1/2照度角度、及び1/10照度角度も大きくなり、移動量が5(mm)のときには1/2照度角度は14.5(度)まで拡げられる。
【0046】
ところで、反射鏡ユニット10の反射面10Aに占める底部側ユニット52の割合が小さいほど、すなわち、反射面10Aにおいて、円環スリット状の孔部16の形成位置が焦点fの側から遠ざかるほど、底部側ユニット52の移動によって可変される光量が小さくなる。そして、蛍光部材14からみて光軸Kに対する孔部16の角度(すなわち、入射角α)が30度を下回ると、底部側ユニット52で制御される光量が小さくなり過ぎて、十分な照明光の配光変化が得られない。
一方、蛍光部材14からみて光軸Kに対する孔部16の角度(すなわち、入射角α)が60度以上になると、蛍光部材14での照射スポット径が大きくなり、発光が点光源とみなせなくなる。
そこで、投光装置1では、レーザー光Rの入射角αが、上述した10度〜60度よりも更に範囲が狭い30度〜60度の範囲に設定されている(本実施形態では、上述の通り、入射角α=45度)。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0048】
本実施形態の投光装置1では、レーザー光源ユニット12のそれぞれが、蛍光体20からみて同じ角度、かつ同じ距離に配置されている。
これにより、複数のレーザー光Rの重なりによる照射スポット形状Gのぼけが抑えられ、また、照射スポット径が拡がってしまう事もない。したがって、蛍光体20での発光のサイズが、光学設計において点光源とみなせる大きさに維持されるので、反射面10Aでの制御に生じる誤差も抑えられる。また、蛍光体20には、複数の方向からレーザー光Rが照射されて重ねられるので、照明光の照度ムラが抑えられる。さらに、レンズ18のそれぞれには同一のものが用いられるので、コスト削減も図られる。
【0049】
本実施形態の投光装置1では、レーザー光源ユニット12のそれぞれは、蛍光体20からみて反射面10Aの裏側であり、かつ反射面10Aの光軸Kに垂直な同一の面Qに配置され、反射鏡ユニット10を表裏に貫通した孔部16を通じて蛍光体20にレーザー光Rを照射する構成とした。
この構成によれば、反射面10Aの裏側に複数のレーザー光源ユニット12の配置が配置されるので、投光装置1のコンパクト化が図られる。
【0050】
本実施形態の投光装置1では、反射面10Aの光軸Kに対し、レーザー光Rを10度〜60度の入射角αで蛍光体20に照射する構成とした。
この構成によれば、レーザー光源ユニット12を光軸Kの周りに配置可能しつつ、蛍光体20での発光のサイズを、光学設計において点光源とみなせる大きさに抑えることができる。
【0051】
本実施形態の投光装置1では、レーザー光源ユニット12は、反射面10Aの光軸Kを挟んだ対向位置に他のレーザー光源ユニット12が位置しないように配置されている。
この配置により、蛍光部材14の平面反射面22Aで反射面10Aの側に正反射されたレーザー光Rによって、いずれかのレーザー光源ユニット12が照射されてしまうことがない。
【0052】
本実施形態の投光装置1では、反射面10Aの底部側の底部側ユニット52が分離可能であり、反射面10Aの光軸Kに沿って焦点fから遠ざかる方向に移動する操作バー56が底部側ユニット52に連結されている。
これにより、投光装置1の照明光のビーム角を可変できる。
また本実施形態の投光装置1では、孔部16が円環スリット状に形成され、当該円環スリット状の孔部によって底部側ユニット52が分離される。これにより、底部側ユニット52を分離するためのスリットが孔部16と兼用されるので、底部側ユニット52に孔部16を開口させる必要がなく、当該底部側ユニット52の反射面10Aの面積が孔部16によって減少してしまうことがない。
【0053】
本実施形態の投光装置1では、反射面10Aの光軸Kに対し、レーザー光Rを30度〜60度の入射角αで蛍光体20に照射する構成とした。
この構成によれば、底部側ユニット52の移動によって十分な照明光の配光変化を実現しつつ、蛍光部材14での発光を、光学設計において点光源とみなせる大きさに維持できる。
【0054】
本実施形態の投光装置1では、蛍光体20は、平面反射面22Aに保持されている。
これにより、レーザー光Rと蛍光とを混合させた光を照明光に利用できるので、レーザー光R、及び蛍光体20を適宜に選択することで、照明光の色を任意に変更できる。
【0055】
本実施形態の投光装置1では、レーザー光源ユニット12のそれぞれは、蛍光体20のレーザー照射箇所E(すなわち、焦点f)への斜投影により光束断面形状Tの短手方向D1が伸びる姿勢で配置されている。
これにより、照射スポット形状Gの短手方向の長さが、長手方向の長さに近付けられるので、レンズ18で集光したときの照射スポット径を小さくできる。
【0056】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係る投光装置100の構成を示す斜視図である。
図9は、投光装置100の反射面10Aの一部を切欠した斜視図である。なお、これらの図において、第1実施形態で説明した部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態の投光装置100は、蛍光部材14、及び、レーザー光源ユニット12の組が反射鏡ユニット110に対して移動することで、照明光の配光が可変される。
【0057】
詳述すると、
図8に示すように、投光装置100の装置本体106には、反射面10Aが形成された反射鏡ユニット110が設けられており、この反射鏡ユニット110は、第1実施形態の反射鏡ユニット10とは異なり、分割されておらず、かつ、筐体6に不動状態で固定されている。
【0058】
図10は、反射鏡ユニット110、レーザー光源ユニット12、及び蛍光部材14のレイアウト図である。
図9、及び
図10に示すように、レーザー光源ユニット12のそれぞれは、反射面10Aの裏側に配置されている。具体的には、反射鏡ユニット110の裏側には、これらレーザー光源ユニット12が取り付けられる取付部170を備えている。
この取付部170には、反射面10Aの光軸Kと同軸に延び、当該反射面10Aの底部を表裏に貫通する貫通軸部172が設けられている。そして、貫通軸部172の先端には、反射面10Aの前面の開放面10Bに向かって延びる複数本の支持棒174が設けられ、これらの支持棒174が蛍光部材14を反射面10Aの焦点fで支持している。これら貫通軸部172、及び支持棒174は、高熱電導性材である例えばアルミニウム材によって形成されている。
【0059】
また取付部170の背後には、光軸Kに平行に移動自在な操作バー156が連結されている。この操作バー156が移動することで、取付部170と一体となって、レーザー光源ユニット12、及び、蛍光部材14が、反射面10Aに対して相対的に移動する。反射面10Aには、レーザー光源ユニット12のレーザー光Rを通す孔部116が、光軸Kからみて反射面10Aの径方向に延びたスリット状に形成されている。これにより、操作バー156の移動に伴って、レーザー光源ユニット12が移動しても、レーザー光が反射面10Aに遮られることなく、孔部116を通って蛍光部材14に照射される。
【0060】
また、操作バー156の移動に伴って、蛍光部材14と反射面10Aとの距離が可変され、照明光の配光も第1実施形態と同様に可変される。
【0061】
本実施形態の投光装置100によれば、次のような効果を奏する。
【0062】
すなわち、本実施形態の投光装置100では、反射面10Aの光軸Kに沿って、当該反射面10Aに対し、蛍光体20、及びレーザー光源ユニット12が相対的に移動する。
これにより、照明光の配光が可変できる。また、蛍光体20とレーザー光源ユニット12との相対的位置関係は変わらないので、照射スポット形状G、及び照射スポット径が変わることもない。
【0063】
また、本実施形態の投光装置100では、孔部116は、光軸Kからみて反射面10Aの径方向に延びるスリット状なので、レーザー光源ユニット12が光軸Kに沿って移動した場合でも、レーザー光Rが反射面10Aに遮られることがない。
【0064】
[第3実施形態]
本実施形態では、第1実施形態または第2実施形態の投光装置1、100において、反射鏡ユニット10、110の構成を異にした投光装置を説明する。
図11は本実施形態に係る反射鏡ユニット410の構成をレーザー光源ユニット12とともに示す背面図であり、
図12は
図11におけるXII−XII断面線図である。なお、
図11では、構成の把握を容易にするために、1組のレーザー光源ユニット12及び孔部416を示しているが、実際には、本実施形態の投光装置には、第2実施形態と同様に、複数組のレーザー光源ユニット12及び孔部416が設けられている。また
図11、及び
図12において、第1実施形態または第2実施形態で既に説明した部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図11、及び
図12に示すように、反射鏡ユニット410の反射面410Aは凹状を成し、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、反射面410Aの裏面の側にレーザー光源ユニット12が配置され、正面の側に蛍光体20が配置され、また反射面410Aにレーザー光源ユニット12のレーザー光Rを通す孔部416が形成されている。
【0066】
また反射面410Aは、
図12に示すように、当該凹状の底部側に配置された底部側反射領域411Aと、凹状の開放縁部410C(開放端)の側に配置された開放端側反射領域411Bとの2つの反射領域を有している。
これら底部側反射領域411A、及び開放端側反射領域411Bは共に、同一の焦点f、及び曲率を有する放物面であり、換言すれば、同一の放物面を底部側と開放端側とに2分したものに相当する。
そして、反射面410Aでは、底部側反射領域411Aの焦点fに上記蛍光体20が配置される一方で、開放端側反射領域411Bが、この焦点fの側に光軸Kの方向に距離δだけ底部側反射領域411Aよりもオフセットした(ずれた)位置に配置されている。
【0067】
図13は本実施形態の投光装置から数メートル離れた箇所での照度分布をシミュレーション解析した結果を示す図であり、
図13(A)は底部側反射領域411Aの反射による照度分布を示し、
図13(B)は開放端側反射領域411Bの反射による照度分布を示し、
図13(C)は反射面410Aの反射による照度分布を示す。また
図13(D)は開放端側反射領域411Bがオフセットしていない反射面(すなわち第1実施形態及び第2実施形態の反射面10A)の反射による照度分布を示す図である。なお、それぞれの照度分布は、その分布における最大照度を基準にした相対値で示されている。
【0068】
本実施形態の反射面410Aでは、底部側反射領域411Aの焦点fに上記蛍光体20が配置されているため、
図12に示すように、底部側反射領域411Aの反射光L1が略平行光となる。このため、底部側反射領域411Aの反射光L1の照度分布は、
図13(A)に示すように、光軸Kを中心した中心部G1が高くなる分布(すなわち、蛍光体20の輝度分布が投影された分布)となる。
【0069】
一方、開放端側反射領域411Bは焦点fから僅かにずれて配置されているため、この開放端側反射領域411Bの反射光L2は、
図12に示すように、光軸Kに対し所定角度θで拡げる。このため、開放端側反射領域411Bの反射光L2の照度分布は、
図13(B)に示すように、光軸Kを中心した中心部G1よりも、当該中心部G1を囲む環状の外周部G2で高くなる分布となる。
【0070】
したがって、反射面410Aの反射による照度分布は、
図13(C)に示すように、中心部G1から周辺部G2の広い範囲に亘って照度が略均一(いわゆるフラットトップ)な分布となる。
一方、開放端側反射領域411Bがオフセットしてない場合、反射面での反射光は全て平行光になるため、
図13(D)に示すように、反射光の照度分布は、蛍光体20の照度分布にしたがい、中心部G1よりも更に狭い範囲G3に照度が集中した分布となる。
【0071】
図14は被照射面の色度分布を示す図であり、
図14(A)は本実施形態の投光装置の色分布を示し、
図14(B)は反射面410Aにおいて開放端側反射領域411Bがオフセットしていない場合の色分布を示す。なお、これらは色彩輝度計によって測定されたものである。
投光装置では、蛍光体20にレーザー光Rを入射して白色光を得ているものの、蛍光体20の粒子径等の影響により、白色光に色ムラが生じてる場合があり、この場合、
図14(B)に示すように、白色光の色ムラが被照射面にも投影される。
これに対し、本実施形態の反射面410Aでは、底部側反射領域411Aの反射光L1と開放端側反射領域411Bの反射光L2との混光によって被照射面が照明されるので、
図14(A)に示すように、色ムラが打ち消されることとなる。
【0072】
このように、本実施形態によれば、反射面410Aが、同一の放物面を底部側と開放端側とに分けて成る底部側反射領域411Aと開放端側反射領域411Bとを有し、開放端側反射領域411Bが、反射光L2が拡がるように底部側反射領域411Aに対して光軸Kの方向にオフセットした(ずれた)位置に配置されている。
これにより、フラットトップな照度分布が得られ、広い範囲を均一な照度で照明することができ、また被照射面の色ムラも抑えられる。これにより、高品位な照明が実現できる。
【0073】
[第4実施形態]
図15は、本実施形態に係る投光装置500の構成を示す斜視図である。なお、同図において、第1〜第3実施形態のいずれかで説明した部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
同図に示すように、投光装置500は、第1実施形態の投光装置1が複数本の支持バー26を備えているのに対し、1本の支持バー526を備えている。支持バー526は、高熱伝導性材から形成され、第1実施形態の支持バー26よりも幅広な細長い板状に形成されている。反射面10Aの開放縁部10Cには、一対の支持部材取付部528が設けられており、支持バー526の両方の端部526Aが、これら支持部材取付部528に固定されている。
【0074】
図16は、レーザー光源17から蛍光体20の間のレーザー光Rの光束断面形状Tの変化を概略的に示す図である。また同図において、
図16(A)は垂直断面C1をレーザー光Rの進行方向から視た図である。
前掲
図6、及び
図16に示すように、レーザー光Rの光束断面形状Tは、蛍光体20の直前の垂直断面C1において、長手方向D2と短手方向D1とを有した形状(略矩形、或いは略楕円形)となっている。
【0075】
詳述すると、本実施形態において、レーザー光源17であるレーザーダイオードは、レーザー光の出射面が略矩形状に形成されている。このため、
図16に示すように、この出射面から出射された直後の垂直断面C2では、出射面の形状がレーザー光Rの光束断面形状Tに反映され、当該光束断面形状Tが長手方向Db及び短手方向Daを有する形状となる。また、レーザー光源ユニット12は、上述の通り、レンズ18を備え、レーザー光源17のレーザー光Rが当該レンズ18によって蛍光体20に集光される。
図16では、垂直断面C3の光束断面形状Tが、レンズ18から出射された直後のレーザー光Rの断面形を示している。
【0076】
ここで、レンズ18には、非球面レンズが用いられており、レーザー光Rの光束断面形状Tが長手方向Db及び短手方向Daを有し、また、レーザー光Rの長手方向Db及び短手方向Daは拡がり角が異なり、短手方向Daの拡がり角は長手方向Dbの拡がり角よりも大きいため、非点収差が生じる。本実施形態では、レーザー光Rの長手方向Dbに合わせてレンズ18の焦点fが設定されているため、短手方向Daの光成分Raについては焦点fがずれており、蛍光体20よりも手前の位置Pで当該光成分Raが焦点を結んでいる。
このため、レーザー光Rの長手方向Db及び短手方向Daは、蛍光体20の直前の垂直断面C1において逆転し、長手方向Dbが短手方向D1となり、短手方向Daが長手方向D2となる。
【0077】
本実施形態では、
図16(A)に示すように、レンズ18の焦点距離、またはレーザー光源17とレンズ18との離間距離は、レーザー光源17から出射された直後のレーザー光Rの長手方向Dbの長さΔDbが、蛍光体20において当該蛍光体20の径Nよりも小さくなるように設定されている。この場合、蛍光体20の径Nの大きさによっては、レーザー光源17から出射された直後のレーザー光Rの短手方向Daの長さΔDaが、蛍光体20において当該蛍光体20の径Nよりも大きくなることがあり、何ら対策を施さなければ、レーザー光Rの一部のレーザー光成分R1(
図16(A))が蛍光体20に収まらずに、直接外部に出射されてしまう、という問題がある。
そこで本実施形態の投光装置500では、蛍光体20を支持する支持バー526が、蛍光体20に収まりきらないレーザー光成分R1を遮蔽しており、係る構成について以下に詳述する。
【0078】
図17は反射面10Aの構成を模式的に示す図であり、
図18は蛍光体20を支持バー526とともに模式的に示す図である。
本実施形態では、反射面10Aは、レーザー光Rの短手方向Daが焦点を結ぶ位置Pよりもレンズ18の側に反射面10Aが配置されており、この反射面10Aの孔部516に裏側から入射するレーザー光Rの光束断面形状Tは、垂直断面C3における光束断面形状Tと同様に、長手方向Db及び短手方向Daを有した形状となっている。そして、複数のレーザー光源ユニット12のそれぞれは、
図17に示すように、孔部516を通るときのレーザー光Rの長手方向Dbが同一方向に揃う姿勢で配置されており、この結果、
図18に示すように、蛍光体20においては、各レーザー光Rの長手方向D2が同一の方向Fに揃うようになっている。
【0079】
一方、支持バー526は、少なくとも蛍光体20の径Nが収まる幅Wを有し、なおかつ、蛍光体20においてレーザー光Rの長手方向D2が延びる方向Fに延在している。
これにより、全てのレーザー光Rにおいて、蛍光体20の径Nに収まらないレーザー光成分R1が支持バー526によって遮蔽されるので、レーザー光成分R1が被照射面に出射されることはなく、当該レーザー光成分R1による輝点が被照射面に発生することがない。
【0080】
また、本実施形態では、
図17に示すように、反射面10Aの孔部516が、そこを通るレーザー光Rの長手方向Dbに長い矩形状(図示例では角丸四角形)であって、レーザー光Rの光束断面形状Tよりも一回り大きな(すなわち、レーザー光Rを遮蔽しない大きさの)開口によって形成されている。これにより、例えば孔部516の形状を、レーザー光Rの長手方向Dbの長さに合わせた径の円形とした場合よりも孔部516の開口面積を減らせるので、反射面10Aの反射面積の減少が抑えられ、光の利用効率の低下を抑制できる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、支持バー526は、蛍光体20が収まる幅Wを有し、かつ、蛍光体20におけるレーザー光Rの光束断面形状Tの長手方向D2に延在してする構成とした。
これにより、蛍光体20の径Nに収まらないレーザー光成分R1が支持バー526によって遮蔽されるので、レーザー光成分R1が被照射面に出射されることはなく、当該レーザー光成分R1による輝点が被照射面に発生することがない。
【0082】
また本実施形態によれば、複数のレーザー光源ユニット12のそれぞれは、レーザー光源17が出射するレーザー光Rの長手方向Dbが同一方向に揃う姿勢で配置されているので、これら全てのレーザー光Rのレーザー光成分R1を同じ1本の支持バー526で遮蔽することができる。これにより、反射面10Aを横断する支持バー526の数が抑えられ、当該支持バー526による照明光の遮蔽を抑えることができる。
【0083】
また本実施形態では、レーザー光源ユニット12ごとに設けられた孔部516は、そこを通過するレーザー光Rの光束断面形状Tの長手方向Dbに延び、当該レーザー光Rを遮蔽しない大きさの矩形状に形成されている。
これにより、反射面10Aの反射面積の減少が抑えられ、光の利用効率の低下が抑えられる。
【0084】
なお、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の要旨の範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0085】
上述した第1実施形態において、蛍光部材14が前面カバー8に設けられてもよい。
【0086】
上述した第1〜第4実施形態において、レーザー光源ユニット12のそれぞれが放熱部材19を備える構成を例示したが、これに限らない。すなわち、
図19に示す投光装置200のように、レーザー光源ユニット112が1つの放熱部材280に設けられてもよい。
【0087】
上述した第1〜第4実施形態において、レーザー光源ユニット12のそれぞれが、反射面10Aの光軸Kに垂直な同一の平面Qに配置された場合を例示した。しかしながら、レーザー光源ユニット12は、
図20に示す投光装置300のように、反射面10Aの光軸Kに垂直な複数の平面Q1、Q2・・・の面上のそれぞれに、複数のレーザー光源ユニット12が配置されてもよい。
これにより、投光装置300の高出力化が可能になる。
【0088】
また、本発明は、投光装置に限らず、任意の照明装置に適用できる。